コンバイン
【課題】排出オーガの収納時に発生する無駄な時間を省き、速やかに作業に復帰することを可能とし、穀粒搬送作業を潤滑に進めることのできるコンバインを提供する。
【解決手段】縦排出オーガ15aと横排出オーガ15bから構成される穀粒排出オーガ15と、該穀粒排出オーガ15を旋回させる旋回装置34と、前記穀粒排出オーガ15を昇降させる昇降装置30とを備えたコンバインにおいて、前記横排出オーガ15bの旋回角度と仰角を測定するための測定手段35及び37を備え、排出位置を検知するとともに、排出位置から予め設定した機体干渉を避ける位置までの水平方向と垂直方向の距離を演算し、旋回装置34と昇降装置30を同時に駆動して機体干渉を避ける位置まで到達するように前記旋回34装置及び昇降装置30を制御した。
【解決手段】縦排出オーガ15aと横排出オーガ15bから構成される穀粒排出オーガ15と、該穀粒排出オーガ15を旋回させる旋回装置34と、前記穀粒排出オーガ15を昇降させる昇降装置30とを備えたコンバインにおいて、前記横排出オーガ15bの旋回角度と仰角を測定するための測定手段35及び37を備え、排出位置を検知するとともに、排出位置から予め設定した機体干渉を避ける位置までの水平方向と垂直方向の距離を演算し、旋回装置34と昇降装置30を同時に駆動して機体干渉を避ける位置まで到達するように前記旋回34装置及び昇降装置30を制御した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの技術、特に穀粒をトラックやフレコンバック等に搬送するための排出オーガの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、穀物を貯留するグレンタンク、および該穀物をトラックの荷台等に移送するための排出オーガを備えたコンバインが知られている。また、排出オーガを上下方向に移動可能且つ左右方向に旋回可能に構成し、排出オーガの使用(排出)位置を予め設定しておき、使用時には該使用位置へ自動的に旋回するオートセット機能や、使用後にオーガレスト位置まで自動的に旋回・載置固定するオートリターン機能を備えたコンバインも知られている(特許文献1・2参照)。
【特許文献1】特開平10−127153号公報
【特許文献2】特開2002−300811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のコンバインにおいては、排出オーガを自動的に排出位置にセットしたり、排出位置から格納位置にリターンさせたりする場合、上昇動作と旋回動作が重複しないように、時間的に分割して順次動作させていた。例えば、上昇制御時間に3秒割り当て、3秒経過しないと旋回動作が開始しないように設定していた。そのため、自動動作の上昇位置を低めに設定していた場合には、上部オーガ筒が設定上昇位置に上昇しきったにもかかわらず、上昇信号出力時間(3秒)が経過していないので、排出オーガは動きが停止したままになってしまい、しばらく停止した後、旋回動作を開始するといった現象が生じていた(図11参照)。
このことは、排出オーガの停止時に、オペレータが故障と錯覚したりする不都合があり、又セットまたはリターン時間が必要以上に多くかかるという原因となっていた。
そこで本発明は、斯かる課題に鑑み、排出オーガの収納時に発生する無駄な時間を省き、速やかに作業に復帰することを可能とし、穀粒搬送作業を潤滑に進めることのできるコンバインを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、縦排出オーガと横排出オーガから構成される穀粒排出オーガと、該穀粒排出オーガを旋回させる旋回装置と、前記穀粒排出オーガを昇降させる昇降装置とを備えたコンバインにおいて、前記横排出オーガの旋回角度と仰角を測定するための測定手段を備え、排出位置を検知するとともに、排出位置から予め設定した機体干渉を避ける位置までの水平方向と垂直方向の距離を演算し、旋回装置と昇降装置を同時に駆動して機体干渉を避ける位置まで到達するように前記旋回装置及び昇降装置を制御したものである。
【0006】
請求項2においては、前記旋回装置と昇降装置のいずれか一方の移動速度に対して、他方の移動速度を変更するように制御したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0008】
請求項1においては、旋回および昇降を交互に行う場合に比べ、移動時間を短縮することが可能となり、無駄な動きがなく、作業効率を向上できる。
【0009】
請求項2においては、目標地点まで移動する際の旋回モータまたは昇降シリンダの一方のアクチュエータの作動時間に他方のアクチュエータの作動時間を同期させることにより、最短距離での移動が可能となる。そして、制御も簡単に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図、図2はコンバインの平面図、図3はエンジンから排出オーガまでの動力伝達経路を示す模式図である。図4は排出オーガの移動経路を示した模式図、図5はオーガコントローラの模式図、図6は排出オーガの旋回機構の側面図、図7は排出オーガ先端部の斜視図、図8はレベリングディスク及びガイド板の関係を示す側面図、図9はレベリングディスク、ガイド板及び崩れ防止板の関係を示す側面図、図10はレベリングディスクの平面図、図11は従来技術における排出オーガの移動経路を示した模式図である。
【実施例1】
【0011】
まず、本発明に係わるコンバインの全体構成について、図1及び図2を用いて説明する。
クローラ式走行装置1上には機体フレーム2が載置され、該機体フレーム2前端には引起し・刈取部3が昇降可能に配設されている。該引起し・刈取部3は前端に分草板4を突出して穀稈を分草し、その後部の引起しケース5を立設して該引起しケースより突出したタイン6の回転により穀稈を引き起こし、前記分草板4後部に配設した刈刃7にて株元を刈り取るようにしている。
【0012】
刈り取られた穀稈は、上部搬送装置、下部搬送装置、縦搬送装置8、にて後部に搬送され、該縦搬送装置8の上端から株元がフィードチェーン9に受け継がれ、脱穀部12内に穀稈が搬送される。そして、該フィードチェーン9後端には排藁チェーン18が配設され、該排藁チェーン18後部下方には排藁カッター装置、拡散コンベアなどからなる排藁処理部19が形成され、排藁を切断して藁片にした後、拡散しながら圃場に均一放出するようにしている。
【0013】
また、前記脱穀部12側部には選別後の精粒を貯留するグレンタンク13が配設され、該グレンタンク13前部には運転室14が配設される一方、グレンタンク13後部には排出オーガ15の縦排出オーガ15aが立設され、該縦排出オーガ15aを中心にしてグレンタンク13が側方へ回動可能とし、本機内部側に配置した駆動系や油圧系のメンテナンスを容易にしている。
また、機体フレームの上方であって、運転室14の後方で進行方向左側にオーガレスト52を立設している。本実施例のオーガレスト52は、主にレスト部52aと支柱部52bで構成される。レスト部52aは正面視略U字型に形成され、排出オーガ15の横排出オーガ15bが載置される。
【0014】
そして、前記グレンタンク13の底部には排出コンベア16が前後方向に配設され、該排出コンベア16から前記排出オーガ15に動力が伝達されて、排出オーガ15先端よりトラック等へグレンタンク13内の穀粒を排出できるようにしている。更に脱穀部12下方には、選別部17が配設され、脱穀部12から流下する穀粒や藁屑など(以下「処理物」)とする)から穀粒を選別し、前記グレンタンク13に搬送するようにしている。
【0015】
次に図3を用いてエンジンからグレンタンク及び排出オーガへの駆動力伝達経路について説明する。
エンジン101の前方出力軸101bは、クローラ式走行装置1を駆動するための走行用ミッションケースの入力軸と連結され、クローラ式走行装置1へ駆動力を伝達する。一方、後方出力軸101aには、脱穀部12(図1に図示)や選別部(図示せず)へ駆動力を伝達するためのプーリ102・102・102と、グレンタンク13及び排出オーガ15へ駆動力を伝達するためのプーリ103とが嵌設される。
【0016】
グレンタンク13の底部前面はエンジン101の略後方に位置し、該グレンタンク13の低部前面には駆動ケース104が配設されている。そして、駆動ケース入力軸105が機体前方へ突出し、駆動ケース入力軸105の前端にはプーリ106が嵌設される。
前記後方出力軸101a後端に嵌設されたプーリ103と、駆動ケース入力軸105前端に嵌設されたプーリ106とにVベルト107のテンションプーリを兼ねるオーガクラッチ118が設けられ、駆動力を駆動ケース104より下流側へ伝達・遮断可能に構成される。
駆動ケース104内には互いに噛合する平歯車108a・108bが収納されており、平歯車108bは排出コンベア16の前端に嵌設された回転軸であるコンベア駆動軸56に外嵌固定される。また、平歯車108bの歯数は平歯車108aの歯数より多くなるよう構成されているので、スクリュー式の排出コンベア1の回転数はエンジン101の回転数より小さくなり、穀物を排出する際に大きな回転トルクを発生可能である。
なお、本実施例では駆動ケース104内の減速機構として二枚の平歯車108a・108bを使用したが、三枚以上使用しても良く、平歯車の個数は限定されない。
【0017】
排出コンベア16の後端にはベベルギア109が嵌設され、縦排出オーガ15a内のスクリュー式の縦送りコンベア110下端に嵌設されたベベルギア111と噛合している。一方、縦送りコンベア110上端にはベベルギア112が嵌設され、該ベベルギア112と噛合するベベルギア113、チェーンやスプロケットを内設する中間ケース114、続いてベベルギア115・116を経て横排出オーガ15b内のスクリュー式の横送りコンベア117を回転駆動する。
【0018】
このように構成することにより、グレンタンク13に貯留された穀粒は排出コンベア16により後方に搬送され、グレンタンク13後方に位置する縦排出オーガ15aを経て、排出オーガ15先端から強制的に排出可能となる。
【0019】
次に、図6及び図7を用いて排出オーガ15各部の構造、および排出オーガ15の操作手段について説明する。
【0020】
図6に示すように、横排出オーガ15bの根元(基部)側は縦排出オーガ15aの上端に上下回動可能に枢着される。オーガ回動シリンダ(昇降装置)30は、一端が縦排出オーガ15a側面より突設されたブラケット31に回動可能に枢着され、他端が横排出オーガ15b側面より突設されたブラケット32に回動可能に枢着される。該オーガ回動シリンダ30の伸縮により、横排出オーガ15bは上下方向に回動する。前記縦排出オーガ15aの上端には横排出オーガ15bの仰角を検出するためにポテンショメータ等で構成された測定手段である回転角度センサ37が取り付けられている。
縦排出オーガ15aの中途部には平歯車33aが外嵌固定されており、モータ等より構成されるアクチュエータ(旋回装置)34の回転軸34aに嵌設された平歯車33bと互いに噛合している。該アクチュエータ34を作動させることにより、縦排出オーガ15aおよび横排出オーガ15bは一体的に旋回する。また、平歯車33bと同軸に測定手段である回転角度センサ35が設けられる。回転角度センサ35はレゾルバ、回転式ポテンショメータ、ロータリーエンコーダなどであり、該回転角度センサ35により、排出オーガ15の旋回角度を検知することが可能となる。
【0021】
このように、前記横排出オーガの旋回角度と仰角を測定するための回転角度センサ35及び37を備えたことにより、旋回角度及び仰角を常に把握できることで、横オーガを自動収納する際の旋回装置及び昇降装置の動作を制御することが可能となる。
【0022】
図7に示すように、横排出オーガ15bの先端には排出ケース36が設けられている。該排出ケース36内には、横送りコンベア117を軸支するためにボールベアリングなどからなる軸受け部が形成されている。排出ケース36はその下面が開口しており、該開口部から下方に延長投口60が突設されている。該延長投口60は側面視略台形状に構成しており、横排出オーガ15b先端側をカバーするように設けてあり、側面視下端部にはステ−61を設けている。該ステー61は、平面視略コの字型に構成されており、延長投口60の下部から基部側方向へ突出するように配置され、ボルト等によって延長投口60下端部に固設されている。
【0023】
該延長投口60のカバーしていない部分、すなわち延長投口60から下方を覆うように投口シート62を設けている。投口シート62は透明な材質(合成樹脂等)で構成されており、前記ステー61にボルト等によって固定され、投口部内部を目視できるような構成になっている。該投口シート62は運転室14側から内部が見えるように配置しており、投口シート62の内面には詰まりセンサ63を配置する。
該詰まりセンサ63は上端部を前記ステー61に固設しており、延長投口60側の面に傾斜を付け上向きとなった箇所に詰まりを感知するスイッチ63aを設けている。
このように構成することにより、フレコンバック等に排出する際でも、コンバインの操縦者が運転室から穀粒の流れを目視確認することが可能となる。
【0024】
また、投口シート62の合わせ面は運転室14側に配置している。穀粒が排出される際、横排出オーガを移動してきた穀粒は慣性力により延長投口60側に落下しやすいため、反対側に設けられた合わせ面から漏れることが無くなる。
このように構成することにより、排出ケース36の下面から落下した穀物を周囲に飛散させず、穀物排出口38の直下近傍に集中して排出することが可能である。
【0025】
図8及び図9に示すように、揚穀コンベア20(図1)上端に連通した穀粒投入口の延長上のグレンタンク13内にはレベリングディスク72が設けてあり、該レベリングディスク72を回転させることで、穀粒投入口から投入される穀粒をグレンタンク13内部に略均等に飛散できるようにしている。該レベリングディスク72は平板部72a、斜板部72b、及び打ち出し羽根72cから構成される形状を呈しており、前記平板部72aの略中央には回動軸73が固設され、該回動軸73を中心にレベリングディスク72を回動可能にしている。
このように構成することにより、レベリングディスク72上に投入される穀粒をグレンタンク13内部全体に拡散することができ、均一化する作業が不要で、グレンタンク13の内部容積を十分に生かして、グレンタンク13を効率よく使用できるのである。
【0026】
また、図8に示すように、穀粒投入口と反対側の前記レベリングディスク72の外周を囲むように略円錐台形状のガイド板74を設けている。
該ガイド板74はレベリングディスク72の平板部72aの底面より下側からガイド板74の始端部を配置されており、ガイド板74の傾斜部の角度βはグレンタンク13内に収容した穀粒の安息角αより大きくなるように設定している。
このように構成することにより、ガイド板74に当たった穀粒は、図8に示す矢印方向に導かれることとなり、レベリングディスク72より上方に溜めることができ、グレンタンク13の充填率が向上する。
【0027】
また、図9に示すように、グレンタンク13内に崩れ防止板75を設けることも可能である。崩れ防止板75は穀粒投入口からの投入方向と直角方向に配置され、崩れ防止板75の上端位置とガイド板74を結ぶ配置角γは穀粒の安息角αより大きくなり、ガイド板74の傾斜部の角度βより小さくなるよう構成している。該崩れ防止板75は、安息角より大きな角度で穀粒が堆積した場合に、上層の穀粒が滑り落ちるのを防ぎ、レベリングディスク72上方に穀粒を溜めることが可能となる。
このように構成することにより、グレンタンク13の充填率が向上する。さらに崩れ防止板75を設けることで充填率が向上する。
【0028】
次に、排出オーガ15の旋回・昇降制御について説明する。
図5に示すように、オートリターン作業などの排出オーガの旋回・上昇制御を行う制御部であるオーガコントローラ53は、主にCPU54とデータ記憶部55とで構成される。
CPU54は各種入力信号および後述するデータ記憶部55に記憶された各種データを基にオートリターンに関する演算処理を行い、各種出力信号を出力する。
データ記憶部55は、排出オーガ15のオートリターンに関する種々のデータが記憶される。また、該データには、排出オーガ15と、コンバインの他の構成部材との干渉を考慮した情報も含まれる。
具体的には、運転室14のキャビン14a等は、オーガレスト52に載置固定されたときの横排出オーガ15bの高さよりも上方に突出しており、横排出オーガ15bをオーガレスト52からわずかに上昇させただけで旋回させると、横排出オーガ15bがキャビン14aに接触し、変形・破損の原因となる。
そこで、横排出オーガ15bとキャビン14aやその他の構成部材とが干渉する可能性のある位置に対応するオーガ角度をデータ記憶部55に記憶させておき、該位置の直前位置を記憶させる。
なお、本実施例では該データ記憶部55としてEEPROM(Electrionically Erasable and Programmable Read Only Memory:不揮発性半導体メモリの一種で、電気的に内容を書き込み可能な読み出し専用記憶装置)を用いたが、その他の形式のROMや他の記憶媒体などでも良い。
【0029】
本発明におけるオートリターン制御の場合、オートリターンスイッチ51がオンになったことを示す信号がCPU54に入力される。
CPU54では、現在の排出オーガ15の旋回角度及び仰角を回転角度センサ35及び回転角度センサ37からの入力信号から求めるとともに、予めEEPRAMに記憶されたキャビン等との接触の可能性のある位置の直前の位置Pとの差を求め、角速度を後述する最適経路の決定方法に基づいて決定する。また、CPU54は前記選択方法により決定された旋回角速度及び昇降角速度を、アクチュエータ34及びオーガ回動シリンダ30の作動速度に変換して同時に出力し、求められた目標地点まで排出オーガ15を旋回させる。
このように構成することにより、旋回および昇降を交互に行う場合に比べ、移動時間を短縮することが可能となる。
【0030】
次に、排出オーガ15の最適経路の決定方法について、図4を用いて説明する。
前述した通り、縦排出オーガ15aの中途部には排出オーガ15の旋回角度を検出するための回転角度センサ35が、縦排出オーガの上端には横排出オーガ15bの仰角を検出するための回転角度センサ37がそれぞれ設けられている。ここで、排出オーガ15のある地点での旋回角度をθ、仰角をφで表し、排出オーガ15の位置を(θ、φ)で表すこととする。
図4中の点線はグレンタンク13や運転室14のキャビン14aなど、排出オーガの移動の障害となる障害物を表したものである。横排出オーガ15bを移動させる場合、グレンタンク13や運転室14などに接触しないように移動させる必要がある。そこで、図に示すように、グレンタンク13や運転室14のキャビン14aなどの障害物に当たる直前の位置P(θ1、φ1)までの最短経路を選択し、位置Pからオーガレストのある位置までは予め入力しておいた、障害物を避ける最短経路で移動させる構成としている。
【0031】
次に、位置Pまでの最短経路の選択について説明する。
障害物に当たる直前の位置Pにおける(θ1、φ1)を予め記憶させておくことにより、現在の位置(θ、φ)から位置Pまでの角度差(θ−θ1、φ−φ1)を計算し、位置Aに同時刻に移動し終わるように角速度ω1、ω2を設定する。
例えばω1の数値を設定した場合、ω2は数式1で表される。
【0032】
【数1】
【0033】
また、例えば、図4に示す位置A(θA、φA)から位置P(θ1、φ1)まで移動する場合には、位置Pまでの角度差(RA1、RA2)は、数式2で表される。
【0034】
【数2】
【0035】
また、角速度ω1が設定されている場合は、ω2は数式3で表される。
【0036】
【数3】
【0037】
同様に、図4に示す位置B(θB、φB)から位置P(θ1、φ1)まで移動する場合には、位置Pまでの角度差(RB1、RB2)は数式4で表される。
【0038】
【数4】
【0039】
また、角速度ω1が設定されている場合は、ω2は数式5で表される。
【0040】
【数5】
【0041】
旋回角速度ω1及び昇降角速度ω2を以上の方法で設定し、前記アクチュエータ34及びオーガ回動シリンダ30が前記旋回角速度及び昇降角速度を達成できるように制御して出力することにより、排出オーガ15は図4に示す最短経路を通って位置Pまで移動することが可能となるのである。
【0042】
このように構成することにより、目標地点まで移動する際の旋回モータの作動時間に昇降シリンダの作動時間を同期させることにより、最短距離での移動が可能となる。
なお、前記と逆に、昇降シリンダの作動時間に旋回モータの作動時間を同期させる構成とすることも可能であり、また、水平移動または垂直移動の一方の移動距離が他方の移動距離よりも短い場合には、長い距離を移動させるアクチュエータの最高速度を基準として、短い移動距離の速度を変更する構成であってもよい。つまり、ある位置から位置Pまで移動させるのに必要な水平方向の移動時間と垂直方向の移動時間を演算して、長いほうの移動時間に合わせて短いほうの移動速度を演算して駆動する構成とすることもできる。
【0043】
なお、旋回モータ及び昇降シリンダの駆動速度制御は、旋回モータの駆動電圧をPWM制御したり、昇降バルブの作動電圧をPWM制御したりするものであり、その駆動制御は限定するものではない。また、本実施例では、一定の旋回角速度及び昇降角速度で位置Pまで移動することとしたが、位置Pに近づくにつれて、旋回角速度及び昇降角速度を同じ割合で減少させるような構成とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図。
【図2】コンバインの平面図。
【図3】エンジンから排出オーガまでの動力伝達経路を示す模式図。
【図4】排出オーガの移動経路を示した模式図。
【図5】オーガコントローラの模式図。
【図6】排出オーガの旋回機構の側面図。
【図7】排出オーガ先端部の斜視図。
【図8】レベリングディスク及びガイド板の関係を示す側面図。
【図9】レベリングディスク、ガイド板及び崩れ防止板の関係を示す側面図。
【図10】レベリングディスクの平面図。
【図11】従来技術における排出オーガの移動経路を示した模式図。
【符号の説明】
【0045】
1 クローラ式走行装置
2 機体フレーム
13 グレンタンク
14 運転室
15 排出オーガ
30 オーガ回動シリンダ
34 アクチュエータ
35 回転角度センサ
37 回転角度センサ
60 延長投口
62 投口シート
63 詰まりセンサ
72 レベリングディスク
74 ガイド板
75 崩れ防止板
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの技術、特に穀粒をトラックやフレコンバック等に搬送するための排出オーガの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、穀物を貯留するグレンタンク、および該穀物をトラックの荷台等に移送するための排出オーガを備えたコンバインが知られている。また、排出オーガを上下方向に移動可能且つ左右方向に旋回可能に構成し、排出オーガの使用(排出)位置を予め設定しておき、使用時には該使用位置へ自動的に旋回するオートセット機能や、使用後にオーガレスト位置まで自動的に旋回・載置固定するオートリターン機能を備えたコンバインも知られている(特許文献1・2参照)。
【特許文献1】特開平10−127153号公報
【特許文献2】特開2002−300811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のコンバインにおいては、排出オーガを自動的に排出位置にセットしたり、排出位置から格納位置にリターンさせたりする場合、上昇動作と旋回動作が重複しないように、時間的に分割して順次動作させていた。例えば、上昇制御時間に3秒割り当て、3秒経過しないと旋回動作が開始しないように設定していた。そのため、自動動作の上昇位置を低めに設定していた場合には、上部オーガ筒が設定上昇位置に上昇しきったにもかかわらず、上昇信号出力時間(3秒)が経過していないので、排出オーガは動きが停止したままになってしまい、しばらく停止した後、旋回動作を開始するといった現象が生じていた(図11参照)。
このことは、排出オーガの停止時に、オペレータが故障と錯覚したりする不都合があり、又セットまたはリターン時間が必要以上に多くかかるという原因となっていた。
そこで本発明は、斯かる課題に鑑み、排出オーガの収納時に発生する無駄な時間を省き、速やかに作業に復帰することを可能とし、穀粒搬送作業を潤滑に進めることのできるコンバインを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、縦排出オーガと横排出オーガから構成される穀粒排出オーガと、該穀粒排出オーガを旋回させる旋回装置と、前記穀粒排出オーガを昇降させる昇降装置とを備えたコンバインにおいて、前記横排出オーガの旋回角度と仰角を測定するための測定手段を備え、排出位置を検知するとともに、排出位置から予め設定した機体干渉を避ける位置までの水平方向と垂直方向の距離を演算し、旋回装置と昇降装置を同時に駆動して機体干渉を避ける位置まで到達するように前記旋回装置及び昇降装置を制御したものである。
【0006】
請求項2においては、前記旋回装置と昇降装置のいずれか一方の移動速度に対して、他方の移動速度を変更するように制御したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0008】
請求項1においては、旋回および昇降を交互に行う場合に比べ、移動時間を短縮することが可能となり、無駄な動きがなく、作業効率を向上できる。
【0009】
請求項2においては、目標地点まで移動する際の旋回モータまたは昇降シリンダの一方のアクチュエータの作動時間に他方のアクチュエータの作動時間を同期させることにより、最短距離での移動が可能となる。そして、制御も簡単に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図、図2はコンバインの平面図、図3はエンジンから排出オーガまでの動力伝達経路を示す模式図である。図4は排出オーガの移動経路を示した模式図、図5はオーガコントローラの模式図、図6は排出オーガの旋回機構の側面図、図7は排出オーガ先端部の斜視図、図8はレベリングディスク及びガイド板の関係を示す側面図、図9はレベリングディスク、ガイド板及び崩れ防止板の関係を示す側面図、図10はレベリングディスクの平面図、図11は従来技術における排出オーガの移動経路を示した模式図である。
【実施例1】
【0011】
まず、本発明に係わるコンバインの全体構成について、図1及び図2を用いて説明する。
クローラ式走行装置1上には機体フレーム2が載置され、該機体フレーム2前端には引起し・刈取部3が昇降可能に配設されている。該引起し・刈取部3は前端に分草板4を突出して穀稈を分草し、その後部の引起しケース5を立設して該引起しケースより突出したタイン6の回転により穀稈を引き起こし、前記分草板4後部に配設した刈刃7にて株元を刈り取るようにしている。
【0012】
刈り取られた穀稈は、上部搬送装置、下部搬送装置、縦搬送装置8、にて後部に搬送され、該縦搬送装置8の上端から株元がフィードチェーン9に受け継がれ、脱穀部12内に穀稈が搬送される。そして、該フィードチェーン9後端には排藁チェーン18が配設され、該排藁チェーン18後部下方には排藁カッター装置、拡散コンベアなどからなる排藁処理部19が形成され、排藁を切断して藁片にした後、拡散しながら圃場に均一放出するようにしている。
【0013】
また、前記脱穀部12側部には選別後の精粒を貯留するグレンタンク13が配設され、該グレンタンク13前部には運転室14が配設される一方、グレンタンク13後部には排出オーガ15の縦排出オーガ15aが立設され、該縦排出オーガ15aを中心にしてグレンタンク13が側方へ回動可能とし、本機内部側に配置した駆動系や油圧系のメンテナンスを容易にしている。
また、機体フレームの上方であって、運転室14の後方で進行方向左側にオーガレスト52を立設している。本実施例のオーガレスト52は、主にレスト部52aと支柱部52bで構成される。レスト部52aは正面視略U字型に形成され、排出オーガ15の横排出オーガ15bが載置される。
【0014】
そして、前記グレンタンク13の底部には排出コンベア16が前後方向に配設され、該排出コンベア16から前記排出オーガ15に動力が伝達されて、排出オーガ15先端よりトラック等へグレンタンク13内の穀粒を排出できるようにしている。更に脱穀部12下方には、選別部17が配設され、脱穀部12から流下する穀粒や藁屑など(以下「処理物」)とする)から穀粒を選別し、前記グレンタンク13に搬送するようにしている。
【0015】
次に図3を用いてエンジンからグレンタンク及び排出オーガへの駆動力伝達経路について説明する。
エンジン101の前方出力軸101bは、クローラ式走行装置1を駆動するための走行用ミッションケースの入力軸と連結され、クローラ式走行装置1へ駆動力を伝達する。一方、後方出力軸101aには、脱穀部12(図1に図示)や選別部(図示せず)へ駆動力を伝達するためのプーリ102・102・102と、グレンタンク13及び排出オーガ15へ駆動力を伝達するためのプーリ103とが嵌設される。
【0016】
グレンタンク13の底部前面はエンジン101の略後方に位置し、該グレンタンク13の低部前面には駆動ケース104が配設されている。そして、駆動ケース入力軸105が機体前方へ突出し、駆動ケース入力軸105の前端にはプーリ106が嵌設される。
前記後方出力軸101a後端に嵌設されたプーリ103と、駆動ケース入力軸105前端に嵌設されたプーリ106とにVベルト107のテンションプーリを兼ねるオーガクラッチ118が設けられ、駆動力を駆動ケース104より下流側へ伝達・遮断可能に構成される。
駆動ケース104内には互いに噛合する平歯車108a・108bが収納されており、平歯車108bは排出コンベア16の前端に嵌設された回転軸であるコンベア駆動軸56に外嵌固定される。また、平歯車108bの歯数は平歯車108aの歯数より多くなるよう構成されているので、スクリュー式の排出コンベア1の回転数はエンジン101の回転数より小さくなり、穀物を排出する際に大きな回転トルクを発生可能である。
なお、本実施例では駆動ケース104内の減速機構として二枚の平歯車108a・108bを使用したが、三枚以上使用しても良く、平歯車の個数は限定されない。
【0017】
排出コンベア16の後端にはベベルギア109が嵌設され、縦排出オーガ15a内のスクリュー式の縦送りコンベア110下端に嵌設されたベベルギア111と噛合している。一方、縦送りコンベア110上端にはベベルギア112が嵌設され、該ベベルギア112と噛合するベベルギア113、チェーンやスプロケットを内設する中間ケース114、続いてベベルギア115・116を経て横排出オーガ15b内のスクリュー式の横送りコンベア117を回転駆動する。
【0018】
このように構成することにより、グレンタンク13に貯留された穀粒は排出コンベア16により後方に搬送され、グレンタンク13後方に位置する縦排出オーガ15aを経て、排出オーガ15先端から強制的に排出可能となる。
【0019】
次に、図6及び図7を用いて排出オーガ15各部の構造、および排出オーガ15の操作手段について説明する。
【0020】
図6に示すように、横排出オーガ15bの根元(基部)側は縦排出オーガ15aの上端に上下回動可能に枢着される。オーガ回動シリンダ(昇降装置)30は、一端が縦排出オーガ15a側面より突設されたブラケット31に回動可能に枢着され、他端が横排出オーガ15b側面より突設されたブラケット32に回動可能に枢着される。該オーガ回動シリンダ30の伸縮により、横排出オーガ15bは上下方向に回動する。前記縦排出オーガ15aの上端には横排出オーガ15bの仰角を検出するためにポテンショメータ等で構成された測定手段である回転角度センサ37が取り付けられている。
縦排出オーガ15aの中途部には平歯車33aが外嵌固定されており、モータ等より構成されるアクチュエータ(旋回装置)34の回転軸34aに嵌設された平歯車33bと互いに噛合している。該アクチュエータ34を作動させることにより、縦排出オーガ15aおよび横排出オーガ15bは一体的に旋回する。また、平歯車33bと同軸に測定手段である回転角度センサ35が設けられる。回転角度センサ35はレゾルバ、回転式ポテンショメータ、ロータリーエンコーダなどであり、該回転角度センサ35により、排出オーガ15の旋回角度を検知することが可能となる。
【0021】
このように、前記横排出オーガの旋回角度と仰角を測定するための回転角度センサ35及び37を備えたことにより、旋回角度及び仰角を常に把握できることで、横オーガを自動収納する際の旋回装置及び昇降装置の動作を制御することが可能となる。
【0022】
図7に示すように、横排出オーガ15bの先端には排出ケース36が設けられている。該排出ケース36内には、横送りコンベア117を軸支するためにボールベアリングなどからなる軸受け部が形成されている。排出ケース36はその下面が開口しており、該開口部から下方に延長投口60が突設されている。該延長投口60は側面視略台形状に構成しており、横排出オーガ15b先端側をカバーするように設けてあり、側面視下端部にはステ−61を設けている。該ステー61は、平面視略コの字型に構成されており、延長投口60の下部から基部側方向へ突出するように配置され、ボルト等によって延長投口60下端部に固設されている。
【0023】
該延長投口60のカバーしていない部分、すなわち延長投口60から下方を覆うように投口シート62を設けている。投口シート62は透明な材質(合成樹脂等)で構成されており、前記ステー61にボルト等によって固定され、投口部内部を目視できるような構成になっている。該投口シート62は運転室14側から内部が見えるように配置しており、投口シート62の内面には詰まりセンサ63を配置する。
該詰まりセンサ63は上端部を前記ステー61に固設しており、延長投口60側の面に傾斜を付け上向きとなった箇所に詰まりを感知するスイッチ63aを設けている。
このように構成することにより、フレコンバック等に排出する際でも、コンバインの操縦者が運転室から穀粒の流れを目視確認することが可能となる。
【0024】
また、投口シート62の合わせ面は運転室14側に配置している。穀粒が排出される際、横排出オーガを移動してきた穀粒は慣性力により延長投口60側に落下しやすいため、反対側に設けられた合わせ面から漏れることが無くなる。
このように構成することにより、排出ケース36の下面から落下した穀物を周囲に飛散させず、穀物排出口38の直下近傍に集中して排出することが可能である。
【0025】
図8及び図9に示すように、揚穀コンベア20(図1)上端に連通した穀粒投入口の延長上のグレンタンク13内にはレベリングディスク72が設けてあり、該レベリングディスク72を回転させることで、穀粒投入口から投入される穀粒をグレンタンク13内部に略均等に飛散できるようにしている。該レベリングディスク72は平板部72a、斜板部72b、及び打ち出し羽根72cから構成される形状を呈しており、前記平板部72aの略中央には回動軸73が固設され、該回動軸73を中心にレベリングディスク72を回動可能にしている。
このように構成することにより、レベリングディスク72上に投入される穀粒をグレンタンク13内部全体に拡散することができ、均一化する作業が不要で、グレンタンク13の内部容積を十分に生かして、グレンタンク13を効率よく使用できるのである。
【0026】
また、図8に示すように、穀粒投入口と反対側の前記レベリングディスク72の外周を囲むように略円錐台形状のガイド板74を設けている。
該ガイド板74はレベリングディスク72の平板部72aの底面より下側からガイド板74の始端部を配置されており、ガイド板74の傾斜部の角度βはグレンタンク13内に収容した穀粒の安息角αより大きくなるように設定している。
このように構成することにより、ガイド板74に当たった穀粒は、図8に示す矢印方向に導かれることとなり、レベリングディスク72より上方に溜めることができ、グレンタンク13の充填率が向上する。
【0027】
また、図9に示すように、グレンタンク13内に崩れ防止板75を設けることも可能である。崩れ防止板75は穀粒投入口からの投入方向と直角方向に配置され、崩れ防止板75の上端位置とガイド板74を結ぶ配置角γは穀粒の安息角αより大きくなり、ガイド板74の傾斜部の角度βより小さくなるよう構成している。該崩れ防止板75は、安息角より大きな角度で穀粒が堆積した場合に、上層の穀粒が滑り落ちるのを防ぎ、レベリングディスク72上方に穀粒を溜めることが可能となる。
このように構成することにより、グレンタンク13の充填率が向上する。さらに崩れ防止板75を設けることで充填率が向上する。
【0028】
次に、排出オーガ15の旋回・昇降制御について説明する。
図5に示すように、オートリターン作業などの排出オーガの旋回・上昇制御を行う制御部であるオーガコントローラ53は、主にCPU54とデータ記憶部55とで構成される。
CPU54は各種入力信号および後述するデータ記憶部55に記憶された各種データを基にオートリターンに関する演算処理を行い、各種出力信号を出力する。
データ記憶部55は、排出オーガ15のオートリターンに関する種々のデータが記憶される。また、該データには、排出オーガ15と、コンバインの他の構成部材との干渉を考慮した情報も含まれる。
具体的には、運転室14のキャビン14a等は、オーガレスト52に載置固定されたときの横排出オーガ15bの高さよりも上方に突出しており、横排出オーガ15bをオーガレスト52からわずかに上昇させただけで旋回させると、横排出オーガ15bがキャビン14aに接触し、変形・破損の原因となる。
そこで、横排出オーガ15bとキャビン14aやその他の構成部材とが干渉する可能性のある位置に対応するオーガ角度をデータ記憶部55に記憶させておき、該位置の直前位置を記憶させる。
なお、本実施例では該データ記憶部55としてEEPROM(Electrionically Erasable and Programmable Read Only Memory:不揮発性半導体メモリの一種で、電気的に内容を書き込み可能な読み出し専用記憶装置)を用いたが、その他の形式のROMや他の記憶媒体などでも良い。
【0029】
本発明におけるオートリターン制御の場合、オートリターンスイッチ51がオンになったことを示す信号がCPU54に入力される。
CPU54では、現在の排出オーガ15の旋回角度及び仰角を回転角度センサ35及び回転角度センサ37からの入力信号から求めるとともに、予めEEPRAMに記憶されたキャビン等との接触の可能性のある位置の直前の位置Pとの差を求め、角速度を後述する最適経路の決定方法に基づいて決定する。また、CPU54は前記選択方法により決定された旋回角速度及び昇降角速度を、アクチュエータ34及びオーガ回動シリンダ30の作動速度に変換して同時に出力し、求められた目標地点まで排出オーガ15を旋回させる。
このように構成することにより、旋回および昇降を交互に行う場合に比べ、移動時間を短縮することが可能となる。
【0030】
次に、排出オーガ15の最適経路の決定方法について、図4を用いて説明する。
前述した通り、縦排出オーガ15aの中途部には排出オーガ15の旋回角度を検出するための回転角度センサ35が、縦排出オーガの上端には横排出オーガ15bの仰角を検出するための回転角度センサ37がそれぞれ設けられている。ここで、排出オーガ15のある地点での旋回角度をθ、仰角をφで表し、排出オーガ15の位置を(θ、φ)で表すこととする。
図4中の点線はグレンタンク13や運転室14のキャビン14aなど、排出オーガの移動の障害となる障害物を表したものである。横排出オーガ15bを移動させる場合、グレンタンク13や運転室14などに接触しないように移動させる必要がある。そこで、図に示すように、グレンタンク13や運転室14のキャビン14aなどの障害物に当たる直前の位置P(θ1、φ1)までの最短経路を選択し、位置Pからオーガレストのある位置までは予め入力しておいた、障害物を避ける最短経路で移動させる構成としている。
【0031】
次に、位置Pまでの最短経路の選択について説明する。
障害物に当たる直前の位置Pにおける(θ1、φ1)を予め記憶させておくことにより、現在の位置(θ、φ)から位置Pまでの角度差(θ−θ1、φ−φ1)を計算し、位置Aに同時刻に移動し終わるように角速度ω1、ω2を設定する。
例えばω1の数値を設定した場合、ω2は数式1で表される。
【0032】
【数1】
【0033】
また、例えば、図4に示す位置A(θA、φA)から位置P(θ1、φ1)まで移動する場合には、位置Pまでの角度差(RA1、RA2)は、数式2で表される。
【0034】
【数2】
【0035】
また、角速度ω1が設定されている場合は、ω2は数式3で表される。
【0036】
【数3】
【0037】
同様に、図4に示す位置B(θB、φB)から位置P(θ1、φ1)まで移動する場合には、位置Pまでの角度差(RB1、RB2)は数式4で表される。
【0038】
【数4】
【0039】
また、角速度ω1が設定されている場合は、ω2は数式5で表される。
【0040】
【数5】
【0041】
旋回角速度ω1及び昇降角速度ω2を以上の方法で設定し、前記アクチュエータ34及びオーガ回動シリンダ30が前記旋回角速度及び昇降角速度を達成できるように制御して出力することにより、排出オーガ15は図4に示す最短経路を通って位置Pまで移動することが可能となるのである。
【0042】
このように構成することにより、目標地点まで移動する際の旋回モータの作動時間に昇降シリンダの作動時間を同期させることにより、最短距離での移動が可能となる。
なお、前記と逆に、昇降シリンダの作動時間に旋回モータの作動時間を同期させる構成とすることも可能であり、また、水平移動または垂直移動の一方の移動距離が他方の移動距離よりも短い場合には、長い距離を移動させるアクチュエータの最高速度を基準として、短い移動距離の速度を変更する構成であってもよい。つまり、ある位置から位置Pまで移動させるのに必要な水平方向の移動時間と垂直方向の移動時間を演算して、長いほうの移動時間に合わせて短いほうの移動速度を演算して駆動する構成とすることもできる。
【0043】
なお、旋回モータ及び昇降シリンダの駆動速度制御は、旋回モータの駆動電圧をPWM制御したり、昇降バルブの作動電圧をPWM制御したりするものであり、その駆動制御は限定するものではない。また、本実施例では、一定の旋回角速度及び昇降角速度で位置Pまで移動することとしたが、位置Pに近づくにつれて、旋回角速度及び昇降角速度を同じ割合で減少させるような構成とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図。
【図2】コンバインの平面図。
【図3】エンジンから排出オーガまでの動力伝達経路を示す模式図。
【図4】排出オーガの移動経路を示した模式図。
【図5】オーガコントローラの模式図。
【図6】排出オーガの旋回機構の側面図。
【図7】排出オーガ先端部の斜視図。
【図8】レベリングディスク及びガイド板の関係を示す側面図。
【図9】レベリングディスク、ガイド板及び崩れ防止板の関係を示す側面図。
【図10】レベリングディスクの平面図。
【図11】従来技術における排出オーガの移動経路を示した模式図。
【符号の説明】
【0045】
1 クローラ式走行装置
2 機体フレーム
13 グレンタンク
14 運転室
15 排出オーガ
30 オーガ回動シリンダ
34 アクチュエータ
35 回転角度センサ
37 回転角度センサ
60 延長投口
62 投口シート
63 詰まりセンサ
72 レベリングディスク
74 ガイド板
75 崩れ防止板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦排出オーガと横排出オーガから構成される穀粒排出オーガと、該穀粒排出オーガを旋回させる旋回装置と、前記穀粒排出オーガを昇降させる昇降装置とを備えたコンバインにおいて、
前記横排出オーガの旋回角度と仰角を測定するための測定手段を備え、排出位置を検知するとともに、排出位置から予め設定した機体干渉を避ける位置までの水平方向と垂直方向の距離を演算し、旋回装置と昇降装置を同時に駆動して機体干渉を避ける位置まで到達するように前記旋回装置及び昇降装置を制御したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記旋回装置と昇降装置のいずれか一方の移動速度に対して、他方の移動速度を変更するように制御したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項1】
縦排出オーガと横排出オーガから構成される穀粒排出オーガと、該穀粒排出オーガを旋回させる旋回装置と、前記穀粒排出オーガを昇降させる昇降装置とを備えたコンバインにおいて、
前記横排出オーガの旋回角度と仰角を測定するための測定手段を備え、排出位置を検知するとともに、排出位置から予め設定した機体干渉を避ける位置までの水平方向と垂直方向の距離を演算し、旋回装置と昇降装置を同時に駆動して機体干渉を避ける位置まで到達するように前記旋回装置及び昇降装置を制御したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記旋回装置と昇降装置のいずれか一方の移動速度に対して、他方の移動速度を変更するように制御したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−244230(P2007−244230A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69050(P2006−69050)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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