説明

コンバイン

【課題】排出オーガを安全に操作できるコンバインを提供することを目的とする。
【解決手段】選別後の穀粒を貯留するグレンタンク8と、グレンタンク8に貯溜された穀粒を排出可能とし、昇降・旋回可能な排出オーガ18と、排出オーガ18を操作手段から送信される信号に基づいて、排出・昇降・旋回可能に制御する制御部39とを備えるコンバインであって、前記操作手段として、制御部39に有線で信号を送信するオーガ操作リモコン37および本機側操作部42と、制御部39に無線で信号を送信する携帯電話機38とを備え、制御部39は、オーガ操作リモコン37および本機側操作部42および携帯電話機38の内、一の操作手段の信号に基づいて、排出オーガ18が排出または昇降または旋回の動作中に、他の操作手段の信号を検知すると、排出オーガ18の前記動作を停止させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの技術に関し、より詳細には、排出オーガの動作に係る制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、選別後の穀粒を貯留するグレンタンクと、前記グレンタンクに貯溜された穀粒を排出可能とし、昇降・旋回可能な排出オーガと、前記排出オーガを操作手段から送信される信号に基づいて、排出・昇降・旋回可能に制御する制御部とを備えるコンバインの技術は公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記従来のコンバインは、操縦室に設けられた操作具などによって排出オーガを操作できるとともに、携帯電話機によって排出オーガを遠隔操作できるため、排出オーガの操作性に優れている。
【特許文献1】特開2007−312614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来のコンバインでは、操作具および携帯電話機の内、一方の操作手段の信号に基づいて、排出オーガが穀粒排出または昇降または旋回中に、制御部が他方の操作手段の信号を検知した場合、複数の操作手段の同時操作によって排出オーガが誤作動する可能性がある。例えば、排出オーガが誤って昇降・旋回した場合、穀粒を運搬するトラックや電柱などに衝突する可能性がある。
【0005】
本発明は以上の状況に鑑み、排出オーガを安全に操作できるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上のとおりであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
すなわち、請求項1においては、選別後の穀粒を貯留するグレンタンクと、前記グレンタンクに貯溜された穀粒を排出可能とし、昇降・旋回可能な排出オーガと、前記排出オーガを操作手段から送信される信号に基づいて、排出・昇降・旋回可能に制御する制御部とを備えるコンバインであって、前記操作手段として、前記制御部に有線で信号を送信する有線操作手段と、前記制御部に無線で信号を送信する無線操作手段とを備え、前記制御部は、前記操作手段の内、一の操作手段の信号に基づいて、前記排出オーガが排出または昇降または旋回の動作中に、他の操作手段の信号を検知すると、前記排出オーガの前記動作を停止させるものである。
【0008】
請求項2においては、選別後の穀粒を貯留するグレンタンクと、前記グレンタンクに貯溜された穀粒を排出可能とし、昇降・旋回可能な排出オーガと、前記排出オーガを操作手段から送信される信号に基づいて、排出・昇降・旋回可能に制御する制御部とを備えるコンバインであって、前記操作手段として、前記制御部に有線で信号を送信する有線操作手段と、前記制御部に無線で信号を送信する無線操作手段とを備え、前記制御部は、前記有線操作手段の信号に基づく排出オーガの動作を、前記無線操作手段の信号に基づく排出オーガの動作よりも、優先的に実行するものである。
【0009】
請求項3においては、前記制御部には、前記操作手段の内、一の操作手段の信号のみを検知するように切替可能とする検知切替手段が接続されているものである。
【0010】
請求項4においては、前記無線操作手段は、携帯電話機であるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、一の操作手段の信号に基づいて排出オーガが排出または昇降または旋回の動作中に、制御部が他の操作手段の信号を検知すると、排出オーガの動作が自動的に停止するため、複数の操作手段の同時操作による排出オーガの誤作動を防止して、排出オーガを安全に操作できる。
【0013】
請求項2においては、有線操作手段は、ケーブルなどを介して制御部との間で信号を送受信するため、無線操作手段よりも送受信の確実性に優れる。このため、有線操作手段の信号に基づく排出オーガの動作を、無線操作手段の信号に基づく排出オーガの動作よりも、優先的に実行することにより、排出オーガを確実に操作することができる。これにより、排出オーガの誤作動を防止して、排出オーガを安全に操作できる。
【0014】
請求項3においては、検知切替手段によって制御部が一の操作手段の信号のみ検知して、他の検知手段の信号を検知しないようにできるため、複数の操作手段の同時操作による排出オーガの誤作動を防止して、排出オーガを安全に操作できる。
【0015】
請求項4においては、一般に普及している携帯電話機は取り扱いが容易であるため、排出オーガを容易に操作できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るコンバインを示した側面図、図2は同じく平面図、図3は排出オーガを示した側面図、図4は排出オーガの先端部を示した斜視図、図5は排出オーガの制御ブロック図、図6は携帯電話機を示した正面図、図7は排出オーガの自動停止に係る制御フロー図、図8は排出オーガの優先実行に係る制御フロー図である。
【0017】
先ず、本発明の一実施例に係るコンバインの全体構成について、図1および図2を用いて説明する。
【0018】
図1および図2に示すように、コンバインは、トラックフレーム1の左右にクローラ式走行装置2が配設され、前進または後進走行可能となっている。トラックフレーム1上には、機体フレーム3が配設され、機体フレーム3の前部には、穀稈を刈り取ってコンバインの機体(以下、「機体」という。)後方へ搬送する刈取部6が配設されている。機体フレーム3上の左側部には、扱胴12、フィードチェン13などを備え、刈取部6からの刈取穀稈を脱穀する脱穀部4が配設されている。
【0019】
脱穀部4の下方には、揺動選別装置14、唐箕ファン15などを備え、脱穀部4で脱穀された穀粒を選別する選別部5が配設されている。脱穀部4の後方には、排藁チェン16などを備え、脱穀部4で脱穀された穀稈を排藁として機外へ排出する排藁処理部7が配設されている。脱穀部4の右方には、一番揚穀コンベア17によって搬送された選別後の穀粒を貯溜するグレンタンク8が配設されている。
【0020】
グレンタンク8の底部には、排出コンベア35が前後方向に配設され、グレンタンク8の後方から上方にかけては、排出オーガ18が配設され、グレンタンク8に貯溜された穀粒を排出オーガ18の先端部の排出ケース32(排出口33)から機体外部に排出できるようになっている。排出オーガ18は、後部側を支点に上下・水平方向にそれぞれ昇降・旋回可能となっている。グレンタンク8の前方には、運転操作部20、運転席21などを備える運転キャビン9が配設されている。
【0021】
運転キャビン9の下方には、コンバインの駆動源となるエンジン10、トランスミッション11が配設されている。
【0022】
次に、排出オーガ18について、図3および図4を用いて説明する。
【0023】
図3に示すように、排出オーガ18は、縦オーガ筒22内に設けられる縦排出コンベア23と、横オーガ筒24内に設けられる横排出コンベア25とを備えている。
【0024】
縦オーガ筒22は、グレンタンク8の後方に垂直方向(縦方向)に立設され、下端部がグレンタンク8底部に連通接続され、上端部が横オーガ筒24の基部に連通接続されている。縦オーガ筒22は、電動モータなどの旋回用アクチュエータ26によって左右方向(水平方向)に回動可能となっている。
具体的には、旋回用アクチュエータ26の回転軸26aに固設された駆動ギア27が、縦オーガ筒22の上下中途部に外嵌固定された従動ギア28に噛合し、旋回用アクチュエータ26が回転駆動して縦オーガ筒22が左右方向(水平方向)に回動可能となっている。駆動ギア27の回転軸には、排出オーガ18の旋回角度を検知する回転式ポテンショメータなどの旋回角度検知センサ29が取り付けられている。
【0025】
このような構成により、縦オーガ筒22が左右方向(水平方向)に回動可能となって、排出オーガ18が左右方向(水平方向)に旋回可能となる。
【0026】
横オーガ筒24は、縦オーガ筒22の上端部から水平方向(横方向)に延設され、基部が縦オーガ筒22の上端部に上下方向に回動可能に支持されている。横オーガ筒24は、油圧シリンダなどの昇降用アクチュエータ30によって上下方向に回動可能となっている。
具体的には、縦オーガ筒22に突設されるブラケット22aと、横オーガ筒24に突設されるブラケット24aとに、昇降用アクチュエータ30の両端部がそれぞれ回動自在に取り付けられ、昇降用アクチュエータ30が伸縮して横オーガ筒24が基部側を回動軸として上下方向に回動可能となっている。横オーガ筒24の基部(回動軸)には、横オーガ筒24の昇降角度を検知する回転式ポテンショメータなどの昇降角度検知センサ31が取り付けられている。
【0027】
このような構成により、横オーガ筒24が上下方向に回動可能となって、排出オーガ18が上下方向に昇降可能となる。
【0028】
縦排出コンベア23は、縦オーガ筒22内に立設され、縦オーガ筒22内で穀粒を垂直方向(縦方向)に搬送するようになっている。縦排出コンベア23の下端部は、排出コンベア35の後端部とベベルギヤなどを介して連動連結されている。
【0029】
横排出コンベア25は、横オーガ筒24内に横設され、横オーガ筒24内で穀粒を水平方向(横方向)に搬送するようになっている。横排出コンベア25の基部側端部は、縦排出コンベア23の上端部とベベルギヤなどを介して連動連結されている。
【0030】
このような構成により、エンジン10からの動力が排出コンベア35に伝達された後、縦排出コンベア23、横排出コンベア25の順に伝達される。
【0031】
また、エンジン10から排出コンベア35までの動力伝達経路上には、ベルトテンションクラッチなどのオーガクラッチ36(図5参照)が設けられ、オーガクラッチ36が「入」・「切」されることにより、エンジン10から排出コンベア35への動力が伝達あるいは遮断されるようになっている。
【0032】
図4に示すように、横オーガ筒24の先端部には、排出ケース32が設けられている。排出ケース32の下面は、開口して穀粒を排出する排出口33となっている。排出口33には、筒形状のスリーブ34が取り付けられ、排出口33から排出される穀粒を周囲に飛び散らさずに、排出口33直下に集中して排出できるようになっている。
【0033】
このような構成により、オーガクラッチ36が「入」の場合には、エンジン10からの動力が排出コンベア35に伝達されて、縦排出コンベア23、横排出コンベア25が駆動する。そうすると、グレンタンク8内の穀粒が縦オーガ筒22内から横オーガ筒24内を経由して、排出ケース32の排出口33から機体外部へ排出される。一方、オーガクラッチ36が「切」の場合には、エンジン10からの動力が排出コンベア35に伝達されないため、縦排出コンベア23、横排出コンベア25が駆動せず、グレンタンク8内の穀粒は排出されない。
【0034】
次に、排出オーガ18の制御ブロックについて、図5および図6を加えて説明する。
【0035】
図5に示すように、コンバインでは、オーガ操作リモコン37、携帯電話機38、本機側操作部42から送信される信号に基づいて、制御部39が排出オーガ18を排出・昇降・旋回可能に制御するようになっている。
【0036】
制御部39は、CPU39a、各種データを記憶するROMやRAMなどのデータ記憶部39b、携帯電話機38からの信号を受信する受信部39cなどで構成されている。
【0037】
CPU39aは、各種入力信号やデータ記憶部39bに記憶されている各種データに基づいて、演算処理を行って各種信号を出力するものである。CPU39aには、制御部39を構成する他の装置(データ記憶部39b、受信部39c)が接続されているとともに、旋回用アクチュエータ26、旋回角度検知センサ29、昇降用アクチュエータ30、昇降角度検知センサ31、オーガクラッチ36、オーガ操作リモコン37、検知切替スイッチ41、本機側操作部42、優先実行スイッチ43が接続されている。
【0038】
受信部39cは、携帯電話機38から無線で送信された信号を受信するものである。受信部39cが受信した携帯電話機38からの信号は、CPU39aに入力されるようになっている。受信部39cとCPU39aとは、所定の長さを有するケーブルなどで接続されている。これにより、受信部39cを受信感度の良好な箇所(例えば、運転席21近傍、排出オーガ18の先端部、機体後部など)に配設することができる。
【0039】
検知切替手段となるトグルスイッチなどの検知切替スイッチ41は、制御部39がオーガ操作リモコン37、携帯電話機38、本機側操作部42の内、一の操作手段の信号のみを検知するように切替可能とするものである。
具体的には、検知切替スイッチ41のハンドル41aを傾倒操作することにより、制御部39がオーガ操作リモコン37および本機側操作部42の信号を検知せずに、携帯電話機38のみの信号を検知するか(例えば、図5に示すハンドル41a位置A)、または、携帯電話機38および本機側操作部42の信号を検知せずに、オーガ操作リモコン37のみの信号を検知するか(例えば、図5に示すハンドル41a位置B)、または、携帯電話機38およびオーガ操作リモコン37の信号を検知せずに、本機側操作部42のみの信号を検知するか(例えば、図5に示すハンドル41a位置C)、または、オーガ操作リモコン37、携帯電話機38、本機側操作部42のいずれの信号をも検知するか(例えば、図5に示すハンドル41a位置D)が切替可能となっている。
【0040】
有線操作手段となるオーガ操作リモコン37および本機側操作部42は、制御部39に有線で信号を送信する操作手段である。オーガ操作リモコン37は、排出ケース32の側面に配設され(図4参照)、オーガ操作レバー37aと、オーガクラッチボタン37bとを備え、これらが制御部39とケーブルなどで接続されている。本機側操作部42は、運転席21の側部に配設され、オーガ操作レバー42aと、オーガクラッチボタン42bとを備え、これらが制御部39とケーブルなどで接続されている。
なお、オーガ操作リモコン37と本機側操作部42とは略同一構成であるため、以下ではオーガ操作リモコン37について詳細に説明し、本機側操作部42についての詳細な説明は省略する。
【0041】
オーガ操作レバー37aは、排出オーガ18を上昇、下降、左旋回、右旋回操作するものである。オーガ操作レバー37aを中立位置からそれぞれ上方、下方、左方、右方に傾倒させている間だけ、排出オーガ18がそれぞれ上昇、下降、左旋回、右旋回し、オーガ操作レバー37aを中立位置に戻すと、排出オーガ18の上昇、下降、左旋回、右旋回がそれぞれ停止するようになっている。
【0042】
オーガクラッチボタン37bは、オーガクラッチ36を「入」・「切」操作するものである。オーガクラッチボタン37bを押している間だけ、オーガクラッチ36が「入」となり、オーガクラッチボタン37bを離すと、オーガクラッチ36が「切」となるようになっている。
【0043】
無線操作手段となる携帯電話機38は、制御部39に無線で信号を送信する操作手段である。携帯電話機38は、各種操作ボタンと、送信部38fとを備えている。各種操作ボタンは、排出オーガ18を操作する上昇ボタン38aと、下降ボタン38bと、左旋回ボタン38cと、右旋回ボタン38dと、オーガクラッチボタン38eとを備えている(図6参照)。
【0044】
上昇ボタン38aは、排出オーガ18を上昇操作するものである。上昇ボタン38aを押している間だけ、排出オーガ18が上昇し、上昇ボタン38aを離すと排出オーガ18の上昇が停止するようになっている。
下降ボタン38bは、排出オーガ18を下降操作するものである。下降ボタン38bを押している間だけ、排出オーガ18が下降し、下降ボタン38bを離すと排出オーガ18の下降が停止するようになっている。
【0045】
左旋回ボタン38cは、排出オーガ18を左旋回操作するものである。左旋回ボタン38cを押している間だけ、排出オーガ18が左旋回し、左旋回ボタン38cを離すと排出オーガ18の左旋回が停止するようになっている。
右旋回ボタン38dは、排出オーガ18を右旋回操作するものである。右旋回ボタン38dを押している間だけ、排出オーガ18が右旋回し、右旋回ボタン38dを離すと排出オーガ18の右旋回が停止するようになっている。
【0046】
オーガクラッチボタン38eは、オーガクラッチ36を「入」・「切」操作するものである。オーガクラッチボタン38eを押している間だけ、オーガクラッチ36が「入」となり、オーガクラッチボタン38eを離すと、オーガクラッチ36が「切」となるようになっている。
【0047】
送信部38fは、上昇・下降・左旋回・右旋回ボタン38a・38b・38c・38d、およびオーガクラッチボタン38eが押されたことを示す信号を、制御部39に無線で送信するものである。
【0048】
ここで、携帯電話機38(送信部38f)と制御部39(受信部39c)との間の無線通信方式は、例えば、赤外線通信、Bluetooth(ブルートゥース)通信などとされる。特に、Bluetooth(ブルートゥース)通信による場合、携帯電話機38と制御部39との間に障害物があっても通信可能であるため、排出オーガ18の操作性が向上する。
【0049】
次に、排出オーガ18の制御フローについて、図5、図7、図8を用いて説明する。
【0050】
図5に示すように、携帯電話機38において、上昇ボタン38a(または下降ボタン38b)を押すと、上昇ボタン38a(または下降ボタン38b)が押されたことを示す信号が、送信部38fによって制御部39に無線で送信される。
【0051】
そうすると、制御部39では、上昇ボタン38a(または下降ボタン38b)が押されたことを示す信号が、受信部39cによって受信されてCPU39aに入力される。そして、CPU39aが昇降用アクチュエータ30を伸長(または収縮)する信号を出力して、排出オーガ18が上昇(または下降)する。
【0052】
その後、上昇ボタン38a(または下降ボタン38b)を離すと、携帯電話機38から上昇ボタン38a(または下降ボタン38b)が押されたことを示す信号が、制御部39に送信されなくなる。
【0053】
そうすると、制御部39では、CPU39aが昇降用アクチュエータ30を伸長(または収縮)する信号を出力しなくなって、排出オーガ18の上昇(または下降)が停止する。
【0054】
次に、左旋回ボタン38c(または右旋回ボタン38d)を押すと、左旋回ボタン38c(または右旋回ボタン38d)が押されたことを示す信号が、送信部38fによって制御部39に無線で送信される。
【0055】
そうすると、制御部39では、左旋回ボタン38c(または右旋回ボタン38d)が押されたことを示す信号が、受信部39cによって受信されてCPU39aに入力される。そして、CPU39aが旋回用アクチュエータ26を一の方向(または他の方向)に回転駆動する信号を出力して、排出オーガ18が左旋回(または右旋回)する。
【0056】
その後、左旋回ボタン38c(または右旋回ボタン38d)を離すと、携帯電話機38から左旋回ボタン38c(または右旋回ボタン38d)が押されたことを示す信号が、制御部39に送信されなくなる。
【0057】
そうすると、制御部39では、CPU39aが旋回用アクチュエータ26を一の方向(または他の方向)に回転駆動する信号を出力しなくなって、排出オーガ18の左旋回(または右旋回)が停止する。
【0058】
次に、オーガクラッチボタン38eを押すと、オーガクラッチボタン38eが押されたことを示す信号が、送信部38fによって制御部39に無線で送信される。
【0059】
そうすると、制御部39では、オーガクラッチボタン38eが押されたことを示す信号が、受信部39cによって受信されてCPU39aに入力される。そして、CPU39aがオーガクラッチ36を「入」とする信号を出力して、エンジン10から排出コンベア35へ動力が伝達され、排出オーガ18が穀粒を排出する。
【0060】
その後、オーガクラッチボタン38eを離すと、携帯電話機38からオーガクラッチボタン38eが押されたことを示す信号が、制御部39に送信されなくなる。
【0061】
そうすると、制御部39では、CPU39aがオーガクラッチ36を「入」とする信号を出力しなくなって、エンジン10から排出コンベア35への動力が遮断され、排出オーガ18による穀粒の排出が停止する(排出オーガ18は穀粒を排出しない)。
【0062】
一方、オーガ操作リモコン37において、オーガ操作レバー37aを中立位置から上方(または下方)に傾倒すると、オーガ操作レバー37aが上方(または下方)に傾倒されたことを示す信号が、オーガ操作リモコン37から制御部39に有線で送信される。
【0063】
そうすると、制御部39では、オーガ操作レバー37aが上方(または下方)に傾倒されたことを示す信号がCPU39aに入力される。そして、CPU39aが昇降用アクチュエータ30を伸長(または収縮)する信号を出力して、排出オーガ18が上昇(または下降)する。
【0064】
その後、オーガ操作レバー37aから手を放すとオーガ操作レバー37aが自動的に中立位置に戻り、オーガ操作リモコン37からオーガ操作レバー37aが上方(または下方)に傾倒されたことを示す信号が、制御部39に送信されなくなる。
【0065】
そうすると、制御部39では、CPU39aが昇降用アクチュエータ30を伸長(または収縮)する信号を出力しなくなって、排出オーガ18の上昇(または下降)が停止する。
【0066】
次に、オーガ操作レバー37aを中立位置から左方(または右方)に傾倒すると、オーガ操作レバー37aが左方(または右方)に傾倒されたことを示す信号が、オーガ操作リモコン37から制御部39に有線で送信される。
【0067】
そうすると、制御部39では、オーガ操作レバー37aが左方(または右方)に傾倒されたことを示す信号がCPU39aに入力される。そして、CPU39aが旋回用アクチュエータ26を一の方向(または他の方向)に回転駆動する信号を出力して、排出オーガ18が左旋回(または右旋回)する。
【0068】
その後、オーガ操作レバー37aから手を放すとオーガ操作レバー37aが自動的に中立位置に戻り、オーガ操作リモコン37からオーガ操作レバー37aが左方(または右方)に傾倒されたことを示す信号が、制御部39に送信されなくなる。
【0069】
そうすると、制御部39では、CPU39aが旋回用アクチュエータ26を一の方向(または他の方向)に回転駆動する信号を出力しなくなって、排出オーガ18の左旋回(または右旋回)が停止する。
【0070】
次に、オーガクラッチボタン37bを押すと、オーガクラッチボタン37bが押されたことを示す信号が、オーガ操作リモコン37から制御部39に有線で送信される。
【0071】
そうすると、制御部39では、オーガクラッチボタン37bが押されたことを示す信号がCPU39aに入力される。そして、CPU39aがオーガクラッチ36を「入」とする信号を出力して、エンジン10から排出コンベア35へ動力が伝達され、排出オーガ18が穀粒を排出する。
【0072】
その後、オーガクラッチボタン37bを離すと、オーガ操作リモコン37からオーガクラッチボタン37bが押されたことを示す信号が、制御部39に送信されなくなる。
【0073】
そうすると、制御部39では、CPU39aがオーガクラッチ36を「入」とする信号を出力しなくなって、エンジン10から排出コンベア35への動力が遮断され、排出オーガ18による穀粒の排出が停止する(排出オーガ18は穀粒を排出しない)。
【0074】
ここで、制御部39は、オーガ操作リモコン37、本機側操作部42、携帯電話機38の内、一の操作手段の信号に基づいて、排出オーガ18が排出、上昇、下降、左旋回、右旋回(以下、単に「動作」ともいう。)中に、他の操作手段の信号を検知すると、排出オーガ18の動作を停止させるようになっている。
【0075】
具体的には、図7に示すように、一の操作手段が操作されると(S1)、一の操作手段の信号に基づいて排出オーガ18が動作する(S2)。そして、排出オーガ18が動作中に、他の操作手段が操作されると(S3:Y)、他の操作手段の信号が制御部39に送信されてCPU39aに入力される。
【0076】
そうすると、排出オーガ18が伸縮中の場合は、CPU39aが昇降用アクチュエータ30を伸縮する信号を出力しなくなって、排出オーガ18の伸縮が停止する(S4)。
また、排出オーガ18が旋回中の場合は、CPU39aが旋回用アクチュエータ26を回転駆動する信号を出力しなくなって、排出オーガ18の昇降が停止する(S4)。
また、オーガクラッチ36が「入」となって、排出オーガ18が穀粒を排出中の場合は、CPU39aがオーガクラッチ36を「入」とする信号を出力しなくなって、排出オーガ18の穀粒の排出が停止する(S4)。
また、排出オーガ18が昇降しながら穀粒を排出中の場合は、排出オーガ18の伸縮が停止するとともに、排出オーガ18の穀粒の排出が停止する(S4)。
また、排出オーガ18が旋回しながら穀粒を排出中の場合は、排出オーガ18の旋回が停止するとともに、排出オーガ18の穀粒の排出が停止する(S4)。
【0077】
一方、排出オーガ18が動作中に、他の操作手段が操作されない場合は(S3:N)、他の操作手段の信号が制御部39に送信されず、排出オーガ18は動作を継続する(S5)。
【0078】
また、制御部39は、有線操作手段(オーガ操作リモコン37、本機側操作部42)の信号に基づく排出オーガ18の動作を、無線操作手段(携帯電話機38)の信号に基づく排出オーガ18の動作よりも、優先的に実行(以下、単に「優先実行」ともいう。)するようになっている。制御部39が優先実行をするか否かは、優先実行スイッチ43(図5参照)を「入」・「切」することにより切替可能となっている。優先実行スイッチ43は、優先実行をするか否かを切替可能とする優先実行手段となるトグルスイッチなどである。
【0079】
具体的には、図8に示すように、優先実行スイッチ43が「入」とされると(S6:Y)、制御部39は優先実行を行う(S7)。一方、優先実行スイッチ43が「切」とされると(S6:N)、制御部39は優先実行を行わない(S8)。
【0080】
そして、制御部39が優先実行を行う場合で(S7)、有線操作手段(オーガ操作リモコン37、本機側操作部42)が操作されると(S9:Y)、有線操作手段(オーガ操作リモコン37、本機側操作部42)の信号に基づいて排出オーガ18が動作する(S10)。
ここで、排出オーガ18が動作中に(S10)、無線操作手段(携帯電話機38)が操作されても(S11)、制御部39は、有線操作手段(オーガ操作リモコン37、本機側操作部42)の信号に基づく排出オーガ18の動作を継続する(S12)。
【0081】
一方、制御部39が優先実行を行う場合で(S7)、有線操作手段(オーガ操作リモコン37、本機側操作部42)が操作されず(S9:N)、無線操作手段(携帯電話機38)が操作されると(S13)、無線操作手段(携帯電話機38)の信号に基づいて排出オーガ18が動作する(S14)。
ここで、排出オーガ18が動作中に(S14)、有線操作手段(オーガ操作リモコン37、本機側操作部42)が操作されると(S15:Y)、制御部39は、有線操作手段(オーガ操作リモコン37、本機側操作部42)の信号に基づいて排出オーガ18を動作させる(S10)。一方、排出オーガ18が動作中に(S14)、有線操作手段(オーガ操作リモコン37、本機側操作部42)が操作されない場合は(S15:N)、制御部39は、無線操作手段(携帯電話機38)の信号に基づく排出オーガ18の動作を継続する(S16)。
【0082】
以上のように、本発明の一実施例に係るコンバインは、選別後の穀粒を貯留するグレンタンク8と、グレンタンク8に貯溜された穀粒を排出可能とし、昇降・旋回可能な排出オーガ18と、排出オーガ18を操作手段から送信される信号に基づいて、排出・昇降・旋回可能に制御する制御部39とを備えるコンバインであって、前記操作手段として、制御部39に有線で信号を送信するオーガ操作リモコン37および本機側操作部42と、制御部39に無線で信号を送信する携帯電話機38とを備え、制御部39は、オーガ操作リモコン37、本機側操作部42、携帯電話機38の内、一の操作手段の信号に基づいて、排出オーガ18が排出または昇降または旋回の動作中に、他の操作手段の信号を検知すると、排出オーガ18の前記動作を停止させるものである。
【0083】
このような構成により、一の操作手段の信号に基づいて排出オーガ18が排出または昇降または旋回の動作中に、制御部39が他の操作手段の信号を検知すると、排出オーガ18の動作が自動的に停止するため、複数の操作手段の同時操作による排出オーガ18の誤作動を防止して、排出オーガ18を安全に操作できる。
【0084】
また、選別後の穀粒を貯留するグレンタンク8と、グレンタンク8に貯溜された穀粒を排出可能とし、昇降・旋回可能な排出オーガ18と、排出オーガ18を操作手段から送信される信号に基づいて、排出・昇降・旋回可能に制御する制御部39とを備えるコンバインであって、前記操作手段として、制御部39に有線で信号を送信するオーガ操作リモコン37および本機側操作部42と、制御部39に無線で信号を送信する携帯電話機38とを備え、制御部39は、オーガ操作リモコン37および本機側操作部42の信号に基づく排出オーガ18の動作を、携帯電話機38の信号に基づく排出オーガ18の動作よりも、優先的に実行するものである。
【0085】
このような構成により、オーガ操作リモコン37および本機側操作部42はケーブルなどを介して制御部39との間で信号を送受信するため、携帯電話機38よりも送受信の確実性に優れる。このため、オーガ操作リモコン37および本機側操作部42の信号に基づく排出オーガ18の動作を、携帯電話機38の信号に基づく排出オーガ18の動作よりも、優先的に実行することにより、排出オーガ18を確実に操作することができる。これにより、排出オーガ18の誤作動を防止して、排出オーガ18を安全に操作できる。
【0086】
また、制御部39には、オーガ操作リモコン37、本機側操作部42、携帯電話機38の内、一の操作手段の信号のみを検知するように切替可能な検知切替スイッチ41が接続されているものである。
【0087】
このような構成により、検知切替スイッチ41によって制御部39が一の操作手段の信号のみ検知して、他の検知手段の信号を検知しないようにできるため、複数の操作手段の同時操作による排出オーガ18の誤作動を防止して、排出オーガ18を安全に操作できる。
【0088】
また、無線操作手段は、携帯電話機38であるものである。
【0089】
このような構成により、一般に普及している携帯電話機38は取り扱いが容易であるため、排出オーガ18を容易に操作できる。
【0090】
なお、上記実施の形態は上記に限定されるものではなく、例えば次のように変更してもよい。
【0091】
有線操作手段は、運転キャビン9内などに設けられる有線リモコンなどでもよい。
【0092】
また、有線操作手段として、オーガ操作リモコン37または本機側操作部42のどちらか一方のみを備える構成でもよい。
【0093】
また、無線操作手段は、赤外線通信、またはBluetooth(ブルートゥース)通信が可能な携帯電話、PHS、専用端末機などでもよい。
【0094】
また、携帯電話機38において、上昇・下降・左旋回・右旋回ボタン、オーガクラッチボタンは、任意の操作ボタンに設定できる。
【0095】
また、携帯電話機38の任意の操作ボタンを押すと、排出オーガ18が自動的に予め設定されている所定の位置(例えば、排出オーガ18の排出作業位置、収納位置など)まで昇降・旋回するようにしてもよい。これにより、排出オーガ18を確実に操作して、排出オーガ18を安全に操作できる。
【0096】
また、無線操作手段として複数の携帯電話機を使用することもできる。これにより、使用中の携帯電話機が紛失や故障などで使用できなくなった場合でも、予備の携帯電話機を使用できるため、排出オーガ18の作業が中断することがない。
【0097】
また、排出オーガ18が動作中であることや動作が停止したことを示す情報を、携帯電話機38の表示画面に表示させてもよい。これにより、排出オーガ18の動作状況を正確に把握できるため、排出オーガ18を確実に操作して、排出オーガ18を安全に操作できる。
【0098】
また、検知切替スイッチ41および優先実行スイッチ43は、トグルスイッチに限定するものではない。例えば、ロッカースイッチ、押しボタンスイッチでもよい。
【0099】
また、機体の動きをセンサにより検知(例えば、速度検知センサによりコンバインの走行を検知するなど)して、排出オーガ18が動作中に機体が動くと排出オーガ18の動作を停止するようにしてもよい。これにより、コンバインの走行中に排出オーガ18が動作しないため、排出オーガ18を安全に操作できる。
【0100】
また、グレンタンク8の残穀粒量をセンサにより検知して、携帯電話機38の表示画面に表示させてもよい。これにより、手元の携帯電話機38によりグレンタンク8の残穀粒量を知ることができるため、排出オーガ18の作業性が向上する。
【0101】
また、燃料タンクの残燃料量、エンジン10の回転数をセンサにより検知して、携帯電話機38の表示画面に表示させてもよい。さらに、エンジン10の負荷率を携帯電話機38の表示画面に表示させてもよい。
【0102】
また、操作手段に音声を認識するマイクなどを設け、音声を信号に変換して制御部39に送信するようにしてもよい。
【0103】
また、排出オーガ18の昇降・旋回速度は、作業者が任意に設定できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の一実施例に係るコンバインを示した側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】排出オーガを示した側面図。
【図4】排出オーガの先端部を示した斜視図。
【図5】排出オーガの制御ブロック図。
【図6】携帯電話機を示した正面図。
【図7】排出オーガの自動停止に係る制御フロー図。
【図8】排出オーガの優先実行に係る制御フロー図。
【符号の説明】
【0105】
8 グレンタンク
18 排出オーガ
37 オーガ操作リモコン(有線操作手段)
38 携帯電話機(無線操作手段)
39 制御部
41 検知切替スイッチ(検知切替手段)
42 本機側操作部(有線操作手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選別後の穀粒を貯留するグレンタンクと、前記グレンタンクに貯溜された穀粒を排出可能とし、昇降・旋回可能な排出オーガと、前記排出オーガを操作手段から送信される信号に基づいて、排出・昇降・旋回可能に制御する制御部とを備えるコンバインであって、
前記操作手段として、前記制御部に有線で信号を送信する有線操作手段と、前記制御部に無線で信号を送信する無線操作手段とを備え、
前記制御部は、前記操作手段の内、一の操作手段の信号に基づいて、前記排出オーガが排出または昇降または旋回の動作中に、他の操作手段の信号を検知すると、前記排出オーガの前記動作を停止させることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
選別後の穀粒を貯留するグレンタンクと、前記グレンタンクに貯溜された穀粒を排出可能とし、昇降・旋回可能な排出オーガと、前記排出オーガを操作手段から送信される信号に基づいて、排出・昇降・旋回可能に制御する制御部とを備えるコンバインであって、
前記操作手段として、前記制御部に有線で信号を送信する有線操作手段と、前記制御部に無線で信号を送信する無線操作手段とを備え、
前記制御部は、前記有線操作手段の信号に基づく排出オーガの動作を、前記無線操作手段の信号に基づく排出オーガの動作よりも、優先的に実行することを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
前記制御部には、前記操作手段の内、一の操作手段の信号のみを検知するように切替可能とする検知切替手段が接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記無線操作手段は、携帯電話機であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−225674(P2009−225674A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71623(P2008−71623)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】