説明

コンバイン

【課題】刈取切替レバーが入り位置で速度切替レバーが高速位置となったまま走行しないようにする上で、経済的に、且つ、手間を掛けないで実施できるようにする。
【解決手段】刈取部の刈取駆動を入切り自在な刈取切替レバー20を設け、エンジン駆動によって走行自在な走行装置の走行速度を、刈取部による刈取作業に適した低速と、走行装置の移動に適した高速とに切替自在な速度切替レバー30を設けてあるコンバインであって、刈取切替レバー20が入り位置で、且つ、速度切替レバー30が高速位置の場合に、エンジンの駆動を停止させる駆動停止手段が設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取部の刈取駆動を入切り自在な刈取切替レバーを設け、エンジン駆動によって走行自在な走行装置の走行速度を、前記刈取部による刈取作業に適した低速と、前記走行装置の移動に適した高速とに切替自在な速度切替レバーを設けてあるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
前記刈取部によって刈取駆動を行う場合には、走行装置の走行速度が刈取作業に適した低速となるように、速度切替レバーを低速位置に操作すると共に、刈取切替レバーを入り位置に操作する。(以後、第1レバー切替状態という。)
その結果、コンバインは、刈取作業に適した低速走行で、刈取部の刈取駆動を好ましい状態に維持して、効率よく刈取作業を実施できる。
また、刈取を中止して移動のみを行う場合には、刈取切替レバーを切り位置に操作すると共に、走行装置の走行速度が移動に適した高速となるように、速度切替レバーは、高速位置に操作する。(以後、第2レバー切替状態という。)
その結果、コンバインは、刈取部の駆動を停止させた安定した状態で、効率的に走行して刈取時に比べて高速に移動することができる。
【0003】
また、両切替レバーの操作位置の組合せは、上述の第1・第2レバー切替状態の他に、速度切替レバーが低速位置で、刈取切替レバーが切り位置となる場合(以後、第3レバー切替状態という)や、逆に、速度切替レバーが高速位置で、刈取切替レバーが入り位置となる場合(以後、第4レバー切替状態という)が考えられる。
前記第3レバー切替状態においては、単に、走行が低速になる程度で、実害が伴うことがないが、前記第4レバー切替状態においては、刈取部が刈取駆動状態のまま、走行装置が刈取時より速い速度で移動するから、刈取部の刈取性能が充分発揮できないことが懸念され、その状態のまま走行を継続するのは好ましくない。
【0004】
そこで、従来、この種のコンバインとしては、走行装置の前進と後進とを切り替える方向切替レバーと、走行速度を切り替える速度切替レバーとを、操作方向がほぼ同一線上になるように縦列配置すると共に、方向切替レバーの後進位置に、速度切替レバーの高速位置が最も近い位置となるレバー設定を行ってあるものにおいて、速度切替レバーが、高速位置にあるときには、方向切替レバーを後進位置に操作できなくする構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。具体的には、両切替レバーにわたって突っ張ってその動きを阻止するロッド形状の牽制部材を、切替レバーに取り付けておくといったものである。
この従来技術を、上述の好ましくないレバー切替状態(前記第4レバー切替状態)にならないために、刈取切替レバーと速度切替レバーとの関係に適用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−329564号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来のコンバインによれば、切替レバーに取り付けてある牽制部材は、両切替レバーどうしが禁止状態になるのを両切替レバーにわたって突っ張ることで阻止するものであるから、牽制部材は、レバー操作によって座屈しない充分な強度を備えている必要があることと、両切替レバー間で位置ズレせずに確実に前記牽制作用を発揮できるように位置確保される必要がある。
そのためには、部品としての高い寸法精度と強度が要求され、更に、前記牽制部材の位置ズレ点検や位置調整等のメンテナンスを頻繁に行う必要があり、コストが高くつき、維持管理の手間がかかりやすい問題点がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、刈取切替レバーが入り位置で速度切替レバーが高速位置となったまま走行しないようにする上で、経済的に、且つ、手間を掛けないで実施できるコンバインを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の特徴構成は、刈取部の刈取駆動を入切り自在な刈取切替レバーを設け、
エンジン駆動によって走行自在な走行装置の走行速度を、前記刈取部による刈取作業に適した低速と、前記走行装置の移動に適した高速とに切替自在な速度切替レバーを設けてあるコンバインであって、
前記刈取切替レバーが入り位置で、且つ、前記速度切替レバーが高速位置の場合に、エンジンの駆動を停止させる駆動停止手段が設けてあるところにある。
【0009】
本発明の第1の特徴構成によれば、前記刈取切替レバーが入り位置で、且つ、前記速度切替レバーが高速位置の場合には、前記駆動停止手段によってエンジンの駆動は停止されるから、コンバインの走行は停止される。従って、刈取切替レバーが入り位置で速度切替レバーが高速位置となったまま走行することを未然に防止できるようになる。
そして、駆動停止手段としては、例えば、切替レバー位置を検出するスイッチや、スイッチの検出結果をもとに制御を行うマイコン等の簡単な構成を採用できるから、従来のような、刈取切替レバーと速度切替レバーとの間で力を受けて相互の位置規制を行う強度部品からなる牽制部材を使用する必要が無い。
更には、牽制部材を使用しないから、その位置ズレ点検や位置調整等のメンテナンスも必要なくなり、維持管理の手間の軽減を図ることができる。
その結果、前述の好ましくないレバー切替状態のまま高速走行しないようにする上で、経済的に、且つ、手間を掛けないで実施することができる。
【0010】
本発明の第2の特徴構成は、前記駆動停止手段は、前記刈取切替レバーの切り位置を検出して検出状態となるスイッチを備え、前記スイッチの非検出状態を前記刈取切替レバーの入り位置として扱う制御手段を備えているところにある。
【0011】
刈取切替レバーは、操作範囲の一端側が「切り」で他端側が「入り」とされるが、レバー操作範囲での中間位置においては、入切り状態が不確定な状態となる可能性がある。
本発明の第2の特徴構成によれば、駆動停止手段に備えた制御手段は、前記刈取切替レバーの切り位置を検出して検出状態となるスイッチの非検出状態を前記刈取切替レバーの入り位置として扱うから、刈取部が刈取駆動している可能性のある切り位置以外のレバー操作範囲は、すべて入り位置の扱いとなり、エンジンの駆動停止のタイミングをより確実にコントロールすることができる。
【0012】
本発明の第3の特徴構成は、前記刈取切替レバーと前記速度切替レバーとは、互いのレバースライド溝部が縦列状態となるように配置してあり、
前記刈取切替レバーの入り位置と、前記速度切替レバーの高速位置とは、前記両レバースライド溝部の互いに隣合う端部にそれぞれ配置してあるところにある。
【0013】
本発明の第3の特徴構成によれば、刈取切替レバーが入り位置にあり、前記速度切替レバーが高速位置にある状態では、互いの切替レバーどうしの間隔が最も小さくなるから、物理的に互いの切替レバーの操作がし難くなる。従って、操作性の面から、極力、刈取切替レバーと速度切替レバーとが近接した状態となる操作を実施し難くし、刈取部の駆動と高速走行とが同時に実施されるのを未然に防止できるようになる。
また、両切替レバーどうしが近接した位置に操作する運転者への注意喚起にもなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】コンバインの全体左側面図
【図2】運転部を示す平面図
【図3】各部への駆動力の伝動系のギアトレインを示す図
【図4】レバーの設置状況を示す左側面図
【図5】レバーの設置状況を示す左側面図
【図6】レバーの設置状況を示す平面図
【図7】レバーの設置状況を示す正面図
【図8】レバーの設置状況を示す正面図
【図9】制御装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のコンバインの一例である自脱型コンバインを示している。
【0016】
〔コンバインの全体構成〕
本発明に係るコンバインは、稲、麦などを収穫する自脱型のコンバインであって、図1に示すごとく、機体の骨格である機体フレーム1と、機体を支持する左右一対のクローラ式の走行装置2と、機体フレーム1の前部に連結された刈取部3と、機体フレーム1の後部に設けた脱穀装置4及びグレンタンク5と、を備えている。
脱穀装置4は、フィードチェーン9を機体の左横側に備えている。また、機体フレーム1の前部には、機体右側に運転座席6Aを有する運転部6を備えてある。
【0017】
エンジンE(図3参照)は運転部6の下方に備えられている。また、機体フレーム1の前端部には走行伝動装置7が備えられている。エンジンEから出力された駆動力は、走行伝動装置7によって変速されて走行装置2に伝達される。これにより走行装置2が駆動し、コンバインは走行する。
【0018】
〔エンジン駆動力の伝動系〕
エンジンEの駆動力が走行装置2、刈取部3、脱穀装置4に伝達される伝動系を図3に基づいて説明する。
【0019】
図3に示すごとく、エンジンEの出力軸と脱穀装置4の入力軸とは脱穀クラッチ4Aを介して伝動ベルトで連係されており、エンジンEの駆動力は、脱穀フィードチェーン9(図1参照)や不図示の扱胴や選別装置等に伝達される。
【0020】
続いて、エンジンEの駆動力が走行装置2、刈取部3に伝達される構造について説明する。
走行伝動装置7は、走行主変速部としての静油圧式無段変速装置(以下、「HST」と称する)50と走行ミッション部60とを備えている。エンジンEの出力軸とHST50の入力軸53とは伝動ベルトで連係されている。これにより、エンジンEの駆動力はHST50に伝達される。HST50は、変速ケースTCに収容されている。また、HST50は、容量が可変であってアキシャルプランジャ形の油圧ポンプ51と、油圧ポンプ51からの圧油によって駆動されるアキシャルプランジャ形の油圧モータ52と、を備えている。入力軸53は、油圧ポンプ51に連結されており、変速ケースTCに回転自在に支持されている。HST50に伝達されたエンジンEの駆動力は、HST50によって前進駆動力または後進駆動力に変換され、油圧モータ52に連結された出力軸54から出力される。
尚、HST50は、前進側においても後進側においても、駆動力をHST操作レバー55によって無段階に変速することが可能である(図2、図4参照)。
【0021】
走行ミッション部60は、変速ケースTCの走行機体下方側に隣接配設したミッションケースMCに収容してある。走行ミッション部60は、走行副変速部61、旋回伝動装置62、駆動伝達軸63を備えている。HST50の出力軸54は、変速ケースTCとミッションケースMCとに亘って回転自在に支持されている。ミッションケースMC内において、出力軸54と、刈取部3の側への入力軸及び走行副変速部61の入力軸とが各別にギア連係されている。これにより、HST50から出力された駆動力は、刈取部3と走行副変速部61とに各別に伝達される。
【0022】
前記刈取部3へは、刈取クラッチ3Aを介してHST50からの駆動力が伝達される。
刈取クラッチ3Aの切替操作は、刈取切替レバー20(図2、図4参照)によって、「入」と「切」とに切り替えることができる。
因みに、前記脱穀クラッチ4Aの切替操作は、前記刈取切替レバー20と並列に配置された脱穀切替レバー40(図2、図4参照)によって、「入」と「切」とに切り替えることができる。
【0023】
走行副変速部61は、HST50から伝達された駆動力を三種類の減速比で三段に減速し、前記駆動伝達軸63に伝達する。
走行副変速部61での減速は、前記走行装置2の走行速度を、前記刈取部3による刈取作業に適した「低速」と「中速」、及び、前記走行装置2の移動に適した「高速」との三種類で、他に、駆動力の伝達を断つ「ニュートラル」に切り換えることも可能である。
走行副変速部61の切替操作は、速度切替レバー30によって実施される(図2、図4参照)。
因みに、前記「低速」は、倒れた状態の刈取穀稈に対する刈取作業に適し、前記「中速」は、通常状態の刈取穀稈に対する刈取作業に適している。
【0024】
前述の各レバーは、前記運転部6の操作パネル6Bに配置してあり、運転部6でそれぞれの操作が実施される。
前記運転部6には、図2に示すように、運転座席6Aと、運転座席6Aの前方と側方(左側)に配置した前記操作パネル6Bとが設けられており、運転部6の右足元部には、走行ブレーキペダル6Cが配置されている。
【0025】
前記操作パネル6Bの内、前方の操作パネル6Baには、液晶表示パネル部10や、キースイッチ11や、ステアリングレバー12を備えてある。
液晶表示パネル部10には、例えば、走行速度や各レバーの状態等のコンバイン走行情報が表示される。キースイッチ11には、駆動用キーを挿入して回転操作することでエンジンEを始動させることができる。前記ステアリングレバー12は、前後左右の十字操作ができるように構成されており、前後操作によって刈取部3の昇降操作が実施でき、左右操作によって走行装置2の旋回操作が実施できる。
【0026】
前記操作パネル6Bの内、側方の操作パネル6Bbは、図2に示すように、左縁部13と後縁部14とが堤防状に高く形成してあると共に、それらに囲まれた中央パネル部15は、図2、図4に示すように、前後中間部が谷部16となる前後二つの傾斜面15a,15bを備えて構成してある。また、図には示さない固定部において、操作パネル6は、機体フレーム1の一部に取り付けられている。
前記側方の操作パネル6Bbには、図2に示すように、前後に細長形状のレバースライド溝部Hを、対応するレバー毎にそれぞれ設けてあり、各レバースライド溝部Hを、下方から貫通する状態に各レバーは設けられている。
前記速度切替レバー30と前記刈取切替レバー20とは、互いのレバースライド溝部H30、H20が前後に縦列状態となるように、最も運転座席6A側に配置してある。
【0027】
前方の速度切替レバー30は、前記刈取切替レバー20とほぼ同じ高さ(互いの操作部30c,20cの揺動軌跡の最高点どうしの高さ)となるように形成してある。前後方向の揺動機構は、図4、図5、図7に示すように、速度切替レバー30の下端部の筒部30dを、固定側に支持された横軸30aに回転自在に外嵌させて構成してある。前記筒部30dには、筒軸芯方向視で前記速度切替レバー30と交差するリンク部30eが固着してあり、更に、リンク部30eの先端部には、走行副変速部61に繋がったリンクロッド30fが取り付けてある。従って、速度切替レバー30を前後に揺動させると、筒部30dを介して一体に上下揺動するリンク部30eから、前記リンクロッド30fに操作力が作用して前記走行副変速部61を切り替えることができる。
【0028】
また、レバー前方から後方への順で、切替位置が「低速」、「ニュートラル」、「中速」、「高速」となるように構成されている。
前記速度切替レバー30の後方に配置されている前記刈取切替レバー20は、操作部20cが前方側に位置するように屈曲させた形状に形成してある。前後方向の揺動機構は、図4、図5、図6、図8に示すように、刈取切替レバー20と、その下端部に一端部を固着された横軸20aと、横軸20aの他端部に固着されたリンク部20dと、リンク部20dの先端部と刈取クラッチ3Aとにわたって設けられたリンクロッド20eとを設けて構成してある。従って、刈取切替レバー20を前後に揺動させると、軸部20aを介して一体に上下揺動するリンク部20dから、前記リンクロッド20eに操作力が作用して前記刈取クラッチ3Aを切り替えることができる。
尚、横軸20aは、その長手方向での中間部に、前記脱穀切替レバー40の揺動機構を構成する横筒軸40aが外嵌させてあり、この横筒軸40aを介して、回転自在に機体フレーム1に支持されている。
【0029】
一方、前記横筒軸40aは、図8に示すように、機体フレーム1に備えた支持筒部1aに内嵌状態で回転自在に支持されている。横筒軸40aの一端側に固着されている脱穀切替レバー40の前後揺動操作によって、横筒軸40aの他端部に一体に固着されているリンク部40bから、リンクワイヤ40dを介して脱穀クラッチ4Aに操作力が伝達される。
【0030】
また、前記刈取切替レバー20は、前方に「入」、後方に「切」の切替位置が設定されている。
前記刈取切替レバー20の「入」と、前記速度切替レバー30の「高速」とは、前記両レバースライド溝部H20、H30の互いに隣合う端部にそれぞれ配置してあるから、それらの位置に両切替レバー20、30が操作されようとした場合、ほぼ同じ高さの両操作部20c,30cどうしが極めて近接した位置になり、図4,図5に示すように、操作しにくい位置関係を作りだしている。
【0031】
前記HST操作レバー55と前記脱穀切替レバー40とは、前記速度切替レバー30と刈取切替レバー20の左側に並列に配置してある。
前方のHST操作レバー55のレバースライド溝部H55は、上下中間部に溝幅方向に沿った屈曲部を備えるクランク形状に形成してある。HST操作レバー55は、全切替レバーの内で、最も操作部55cの高さが高くなるように形成してある。また、クランク部分が「停止」位置で、その前方側が「前進」、後方側が「後進」となるように構成されている。
前記HST操作レバー55の後方に配置されている前記脱穀切替レバー40は、操作部40cが前方側に位置するように屈曲させた形状に形成してある。また、前方に「入」、後方に「切」の切替位置が設定されている。
【0032】
また、脱穀切替レバー40の左側には、前後方向に揺動操作自在にアクセルレバー56が設けてある。
【0033】
また、先に説明した刈取切替レバー20と脱穀切替レバー40の揺動機構を構成する横軸20aと横筒軸40aは、図6,図8に示すように、そのリンク部20d,40b側の端部、及び、リンク部20d,40b、及び、リンクロッド20e、リンクワイヤ40dが、それぞれ前記側方の操作パネル6Bbの側面部から外方に露出する状態に設けられている。
また、それら刈取切替レバー20と脱穀切替レバー40との露出部の近傍には、図6に示すように、前記側方の操作パネル6Bbの外側に間隔をあけて、前記グレンタンク5の籾を排出する為のオーガ19(図1参照)を、格納状態で支持する受け台18が、機体フレーム1上に立設してあるが、この受け台18の上下中間部は、操作パネル6B下方に立ち上がっている機体フレーム1の立設部1bに対して、連結部材18aを介して支持されている。
【0034】
〔エンジンの駆動制御系〕
当該コンバインには、前記刈取切替レバー20が「入」で、且つ、前記速度切替レバー30が「高速」となる禁止状態の場合に、エンジンEの駆動を停止させる駆動停止手段70が設けてある。前記禁止状態においては、刈取部3の刈取性能が充分発揮できないことに加えて、刈取部3が地面に強く接触して損傷の原因となることが懸念され、その状態のまま走行を継続するのを未然に防止する為に、前記駆動停止手段70が設けてある。
前記駆動停止手段70は、前記速度切替レバー30の「高速」位置を検出して検出状態となるスイッチS1(例えば、リミットスイッチ)と、前記刈取切替レバー20の「切」位置を検出して検出状態となるスイッチS2(例えば、リミットスイッチ)と、両スイッチS1,S2からの検出信号を受けて、それらの信号が停止条件に合致した時に運転中のエンジンEを停止させるマイコンからなる制御手段70aとを設けて構成されている。
前記制御手段70aは、前記スイッチS2の非検出状態を前記刈取切替レバー20の「入」位置として扱うように構成されており、スイッチS1の検出状態と、スイッチS2の非検出状態とが同時に再現される状態を停止条件としている。
尚、駆動停止手段70には属さないが、スイッチとしては、HST操作レバー55の「停止」を検出するスイッチS3と、脱穀クラッチ4Aの「切」を検出するスイッチS4と、走行ブレーキペダル6Cが踏まれていることを検出するスイッチS5とが設けられており、前記制御手段70aに検出信号を送信自在に構成されている(図9参照)。
【0035】
具体的な両スイッチS1,S2の配置は、図4〜8に示す。
前記スイッチS1は、操作パネル6Bにおけるレバースライド溝H30の後端部下面側において、機体フレーム1に固定してあり、速度切替レバー30を、横軸30a周り後方側終端まで揺動操作させることで、竿部分に設けた当接板30bが、前記スイッチS1の検知部に当接して検出状態に切り替え、速度切替レバー30が「高速」位置であることを制御手段70aに発信する。その結果、制御手段70aでは、前記禁止状態を構成する二つの条件の内の一条件が整ったと扱う。
前記スイッチS2は、操作パネル6Bにおけるレバースライド溝H20の前端部下面側において、機体フレーム1に固定してあり、刈取切替レバー20を、横軸20a周り後方側終端まで揺動操作させることで、横軸20aに設けた当接板20bが、前記スイッチS2の検知部に当接して検出状態に切り替わり、スイッチS2の検出信号を制御手段70aに発信する。これを受けて、刈取切替レバー20は「切」位置であるとし、前記禁止状態でないものと扱う。また、スイッチS2が検出状態でない状態、即ち、前記刈取切替レバー20が、後方側終端になく、検出信号が送信されない状態においては、前記制御手段70aでは、前記禁止状態を構成する二つの条件の内の一条件が整ったと扱う。
よって、スイッチS1の検出状態と、スイッチS2の非検出状態とが重なったと前記制御手段70aにおいて認識されたら、制御装置71からエンジン停止回路72に出力されて、前記エンジンEへの燃料(ディーゼルエンジンの場合が燃料であり、ガソリンエンジンの場合は、電気又は燃料)の供給が絶たれ、エンジンEが停止する。
即ち、速度切替レバー30が「高速」位置に切り替えられている状態で刈取切替レバー20が「入」位置に操作された場合、及び、刈取切替レバー20が「入」位置に切り替えられている状態で速度切替レバー30が「高速」位置に操作された場合の何れの場合にもエンジンEを停止させる。
【0036】
因みに、前記制御手段70aによってエンジンEの停止処理が実行された後、再度、エンジンEを始動させるには、該当する各レバーを、通常の始動時のセッティング状態にした後、前記走行ブレーキペダル6Cを踏み込んで、キースイッチ11に挿入した駆動用キーを回転させることで実施される。
ここにいう各レバーの始動時セッティング状態とは、図9に示す各レバーのセッティング状態の内で、脱穀切替レバー40を「切」位置に合わせ、HST操作レバー55を「停止」位置に合わせ、速度切替レバー30を、「ニュートラル」位置に合わせる(又は、刈取切替レバー20を「切」位置に合わせる)ことをいう。
【0037】
当該実施形態のコンバインによれば、駆動停止手段70の作用により、刈取切替レバー20が「入」位置で速度切替レバー30が「高速」位置となったまま走行することを未然に防止できるようになる。
そして、駆動停止手段70としては、スイッチS1、S2と制御手段70aとの簡単な構成を採用でき、コストダウンを図れると共に、メンテナンス等の維持管理の手間の軽減をも図ることができる。
更には、刈取切替レバー20と速度切替レバー30との配置として、刈取切替レバー20が「入」位置で、速度切替レバー30が「高速」位置となる「停止条件」を満たす状態で互いの切替レバーどうしが接近して操作がし難くなるように配置してあることで、物理的な操作面からも、刈取部の駆動と高速走行とが同時に実施されるのを未然に防止できるようになる。
【0038】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0039】
〈1〉 各レバー20,30,40,55,56は、先の実施形態で説明した機構によって操作されるものに限らず、変更が可能である。
また、各レバー20,30,40,55,56の配置は、変更が可能である。
【0040】
〈2〉 前記駆動停止手段70は、速度切替レバー30が「高速」位置に切り替えられている状態で刈取切替レバー20が「入」位置に操作された場合と、刈取切替レバー20が「入」位置に切り替えられている状態で速度切替レバー30が「高速」位置に操作された場合との何れか一方の場合にのみエンジンEを停止させるように構成してもよい。
【0041】
〈3〉 前記駆動停止手段70を構成するスイッチは、先の実施形態で説明したリミットスイッチに限るものではなく、他のセンサを採用することができる。
また、前記刈取切替レバー20の「切」位置を検出して検出状態となるスイッチS2に替えて、前記刈取切替レバー20の「入」位置を検出して検出状態となるスイッチを採用してもよい。この場合、制御手段70aによる制御は、スイッチS1が「高速」位置を検出し、スイッチS2が「入」位置を検出した場合をエンジンの停止条件となるように実施する必要がある。
【0042】
〈4〉 前記速度切替レバーは、先の実施形態において30番の記号を付した構成のものに限るものではなく、例えば、30番で示した構成に替えて、HST操作レバー55によって構成するものであってもよい。
【0043】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
当該コンバインは、自脱型に替えて普通型のものにも利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
2 走行装置
3 刈取部
20 刈取切替レバー
30 速度切替レバー
70 駆動停止手段
70a 制御手段
H20 刈取切替レバーのレバースライド溝部
H30 速度切替レバーのレバースライド溝部
E エンジン
S2 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取部の刈取駆動を入切り自在な刈取切替レバーを設け、
エンジン駆動によって走行自在な走行装置の走行速度を、前記刈取部による刈取作業に適した低速と、前記走行装置の移動に適した高速とに切替自在な速度切替レバーを設けてあるコンバインであって、
前記刈取切替レバーが入り位置で、且つ、前記速度切替レバーが高速位置の場合に、エンジンの駆動を停止させる駆動停止手段が設けてあるコンバイン。
【請求項2】
前記駆動停止手段は、前記刈取切替レバーの切り位置を検出して検出状態となるスイッチを備え、前記スイッチの非検出状態を前記刈取切替レバーの入り位置として扱う制御手段を備えている請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記刈取切替レバーと前記速度切替レバーとは、互いのレバースライド溝部が縦列状態となるように配置してあり、
前記刈取切替レバーの入り位置と、前記速度切替レバーの高速位置とは、前記両レバースライド溝部の互いに隣合う端部にそれぞれ配置してある請求項1又は2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−60954(P2012−60954A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209451(P2010−209451)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】