説明

コンバイン

【課題】ラジエータの冷却性能を低下させることなくコンデンサの冷却を行う。
【解決手段】防塵ケース13の内部でラジエータ52の外側の上部に並列する位置にコンデンサ55を配置し、このコンデンサ55とラジエータ52との間に電動ファン56を備えた。この電動ファン56は、コンデンサ55を通過する送風を行うことで、防塵ケース13の防塵網14に付着したワラなどの塵埃を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体に備えたエンジンの機体外側にラジエータファンとラジエータとを配置し、このラジエータに冷却風を供給する防塵ケースの防塵網を前記ラジエータの機体外側位置に備えているコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成されたコンバインとして特許文献1には、防塵ケース(文献では、エンジンカバー)に防塵網(文献では除塵カバー)を備え、防塵ケースの内部にコンデンサと、オイルクーラと、電動ファンとが配置され、更に、機体中央側にラジエータと吸引ファンとエンジンとを配置した構成が記載されている。コンデンサと、オイルクーラと、ラジエータとは側面視で重なり合う位置に配置され、電動ファンはコンデンサとオイルクーラとの中心位置に配置されている。
【0003】
この特許文献1では、吸引ファンの吸引力により防塵ケースの外部から吸引した空気を、コンデンサ、オイルクーラ、ラジエータ夫々を順次通過させる形態で夫々の冷却を行うように構成されている。また、このコンバインでは第1タイマの時間が経過すると吸引ファンを停止させ、電動ファンを駆動することでオイルクーラ、コンデンサの順に空気を機体外方に送り出して防塵用カバーに付着した塵埃を除去する除塵制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010‐223325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
キャビンを備えたコンバインでは、空調のためのエアーコンディショナーの冷媒の放熱を行うためのコンデンサと、油圧系の作動油の冷却のためのオイルクーラとをラジエータの近傍に配置することで、防塵網を介して吸引した空気を供給できるように構成されている。
【0006】
ラジエータの冷却性能を考えると、ラジエータの熱交換面の全面を覆う位置にコンデンサを配置することは好ましくはなく、コンデンサの合理的な配置が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、ラジエータの冷却性能を低下させることなくコンデンサの冷却を行うコンバインを構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、走行機体に備えたエンジンの機体外側にラジエータファンとラジエータとを配置し、このラジエータに冷却風を供給する防塵ケースの防塵網を前記ラジエータの機体外側位置に備えているコンバインであって、
前記防塵ケースの内部で、機体幅方向において前記ラジエータの外側の上部と並列する位置に空調用のコンデンサを配置している点にある。
【0009】
この構成によると、ラジエータの外側の上部に機体幅方向に並列するようにコンデンサが配置されるので、コンデンサで加熱された空気がラジエータの上部に送られることになり、このコンデンサで加熱された空気がラジエータの熱交換面の全面に送られる不都合が抑制される。また、コンバインでは空調用の機器がキャビン等、防塵ケースより上方位置に配置されるため、空調機とコンデンサとの間で熱媒体を循環させるための配管の寸法も短くできる。
従って、ラジエータの冷却性能を低下させることなく、コンデンサの冷却を行えるコンバインが構成された。
【0010】
本発明は、前記防塵ケースの内部において前記ラジエータの外側で、前記コンデンサの下側にオイルクーラが配置されても良い。
【0011】
例えば、コンデンサとオイルクーラとが全体的に重なり合う位置関係に配置される構成では、ラジエータに供給される冷却風が、コンデンサとオイルクーラとを通過することになり、冷却風の流れが阻害されることになるが、コンデンサとオイルクーラとを上下に配置することでコンデンサを通過した冷却風を直接的にラジエータに供給し、かつ、オイルクーラを通過した冷却風を直接的にラジエータに供給することが可能となり、冷却風を良好に流してラジエータの冷却を阻害することがない。
【0012】
本発明は、前記ラジエータと前記コンデンサとの間に電動ファンを備えても良い。
【0013】
これによると、電動ファンが吸気方向に駆動されるものでも、排気方向に駆動されるものでも、コンデンサに空気を供給して良好な熱交換を実現する。特に、電動ファンを排気方向に駆動した場合には防塵ケースの防塵網に付着したワラや塵埃等を風圧により吹き飛ばすことが可能となる。
【0014】
本発明は、前記防塵ケースが開閉自在に構成され、この防塵ケースに前記電動ファンが支持されても良い。
【0015】
これによると、防塵ケースを開放操作した際には、防塵ケースと共に電動ファンが移動することになり、ラジエータの近傍を大きく開放してラジエータや電動ファン等のメンテンスが容易に行える。
【0016】
本発明は、前記走行機体に備えたアンローダの作動時に、前記防塵ケースの内部の空気を機体外側に排出する方向に前記電動ファンを駆動するファン制御手段を備えても良い。
【0017】
これによると、アンロードを作動させた場合には、ファン制御手段が防塵ケースの内部の空気を機体外側に排出する方向に電動ファンを駆動することになり、防塵網の外面に付着したワラ等の塵埃を風圧により吹き飛ばして、冷却性能を高く維持する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】コンバインの全体平面図である。
【図3】コンバインの前部の右側面の一部切り欠き側面図である。
【図4】キャビンの横断平面図である。
【図5】エンジンボンネットと防塵ケースとの部位の断面図である。
【図6】防塵ケースの内部の構成を示す側面図である。
【図7】防塵ケースとエンジンボンネットとの内部構成を示す縦断正面図である。
【図8】開放操作時のエンジンボンネット等を示す縦断正面図である。
【図9】下部ステップの姿勢切換の構成を示す側面図である。
【図10】下部補助ステップの姿勢切換の構成を示す正面図である
【図11】電動ファンの制御構成を示すブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1、図2に示すように、左右一対のクローラ走行装置1によって走行する走行機体2の前端に刈取部3を油圧シリンダ(図示せず)で昇降自在に備えると共に、刈取部3で刈り取られた刈取穀稈が供給される脱穀装置4と、この脱穀装置4から送られる穀粒を貯留するグレンタンク5とを走行機体2の左右位置に並列的に配置し、グレンタンク5には穀粒を排出するアンローダ6を備え、走行機体2の前部位置に作業者が搭乗する運転部を構成するキャビンCを備えて自脱型のコンバインが構成されている。尚、この実施形態では自脱型のコンバインを示しているが、本発明は自脱型コンバインだけを対象とするものではなく、コンバインは普通型のものであっても良い。
【0020】
このコンバインでは、キャビンCの下部に配置されているエンジンEから刈取部3へ伝えられる駆動力を断続する刈取クラッチ(図示せず)と、エンジンから脱穀装置4へ伝えられる駆動力を断続する脱穀クラッチ(図示せず)とを備えている。また、脱穀装置4には、脱穀装置4の選別処理によって得られた穀粒をグレンタンク5に供給する揚穀装置7を備えている。
【0021】
グレンタンク5には底スクリュー5Sを備えている。アンローダ6は、底スクリュー5Sからの穀粒を上方に送る縦搬送オーガ6Aと、穀粒を横方向に送る横搬送オーガ6Bとを備えて構成され、この縦搬送オーガ6Aと横搬送オーガ6Bとの内部には搬送スクリュー6Sを備えている。底スクリュー5Sと縦搬送オーガ6Aの搬送スクリュー6Sと横搬送オーガ6Bの搬送スクリュー6Sとは連動しており、エンジンEから底スクリュー5Sに伝えられる駆動力を断続するベルトテンション式の排出クラッチ8を備えている。
【0022】
このコンバインで収穫作業を行う場合には、刈取クラッチと脱穀クラッチとを入り操作してエンジンEの駆動力で刈取部3と脱穀装置4とを駆動すると共に、クローラ走行装置1を駆動して走行機体2を走行させる操作が行われる。これにより、刈取部3で穀稈の株元を切断して穀稈の刈取りを行い、刈取穀稈を脱穀装置4に搬送して脱穀処理を行い、この脱穀処理により得られた処理物から穀粒を選別し、揚穀装置7によりグレンタンク5に貯留する作動が自動的に行われる。
【0023】
また、グレンタンク5から穀粒を排出する場合には、排出クラッチ8を入り操作してエンジンEの駆動力をグレンタンク5の底スクリュー5Sとアンローダ6の搬送スクリュー6Sとを駆動することによりグレンタンク5に貯留された穀粒がアンローダ6の先端から送り出される。
【0024】
〔キャビン内部〕
キャビンCの内部には、図3〜図7に示すように、作業者が搭乗するように走行機体2の前端の前部フレーム10に支持される搭乗ステップ11が形成され、この搭乗ステップ11の後方位置には、エンジンEの上方を覆うよう左右方向と下方とに開放する構造のエンジンボンネット12が設けられている。このエンジンボンネット12の機体外端位置には、エンジンボンネット12の上面より高い位置に上面を有する防塵ケース13が備えられ、この防塵ケース13の外面位置にはワラ等の塵埃の吸引を阻止する防塵網14が形成されている。
【0025】
また、キャビンCの内部には、エンジンボンネット12の上面に回転ブラケット15を介して運転座席16が支持され、この運転座席16の前方のフロントパネルFPにステアリングレバー17、メータ18等を備え、運転座席16の側方のサイドパネルSPには主変速レバー19、副変速レバー20、排出クラッチレバー21、刈取クラッチレバー22、脱穀クラッチレバー23等を備えている。
【0026】
運転座席16はシートベース16Aとシートバック16Bとを一体形成した構成を有しており、回転ブラケット15は、縦向き姿勢の縦軸芯Pを中心にして180度回転自在に運転座席16を支持する。これにより運転座席16を縦軸芯Pを中心にして180度回転させることで、シートバック16Bを前方に向ける姿勢に設定できる。
【0027】
ステアリングレバー17は、非操作状態で中立姿勢を維持するように中立付勢され、左右の何れかの方向に揺動操作することで走行機体2の操向・旋回を行い、前後の何れかの方向に操作することで刈取部3の昇降を行う。主変速レバー19は、静油圧式の無段変速装置(図示せず)と連係しており、走行機体2を停車させる中立位置と、この中立位置から前方側に形成される前進変速域と、中立位置から後方側に形成される後進変速域とにおいて無段階の変速を実現する。
【0028】
刈取クラッチレバー22は、刈取クラッチの断続操作を行い、脱穀クラッチレバー23は脱穀クラッチの断続操作を行うように構成され、刈取クラッチレバー22と脱穀クラッチレバー23との操作により刈取クラッチと脱穀クラッチとを入り操作して刈取部3と脱穀装置4とにエンジンEからの駆動力を伝えて収穫作業を可能にする。また、排出クラッチレバー21は排出クラッチ8の断続操作を行うものであり、入り位置(図11の「入」位置)に設定されることで排出クラッチ8を入り状態にして穀粒の排出を実現し、切り位置(図11の「切」位置)に設定されることで排出クラッチ8を切り状態に設定する。
【0029】
〔キャビン〕
キャビンCは、上部のルーフ部25と、前部のフロントガラス26と、後部のリヤガラス27と、左側部のサイドガラス30とを備えると共に、右側部に開閉自在にドア28を備えて構成され、ルーフ部25には空調装置29を備えている。また、フロントガラス26は、左右両端に連なる縦壁状のフロントサイドガラス26Aを備えており、リヤガラス27は、左右両端に連なる縦壁状のリヤサイドガラス27Aを備えている。特に、右側のフロントサイドガラス26Aと、右側のリヤサイドガラス27Aと、閉じ姿勢にあるドア28とは縦向き姿勢となる共通の仮想平面上に配置され、この仮想平面上に防塵ケース13の機体外側の壁面が配置される。尚、フロントガラス26と、後部のリヤガラス27と、左側部のサイドガラス30とは透明樹脂で構成しても良い。
【0030】
また、キャビンCの右側部の前部にはルーフ部25から搭乗ステップ11に達する長さの前部縦フレーム31を備え、後部にはルーフ部25から防塵ケース13の上部位置に達する長さの後部縦フレーム32を備えており、この前部縦フレーム31と後部縦フレーム32との間の空間にドア28が配置されている。このドア28は枠状のドアフレーム28Aにガラス板28Bを嵌め込んだ構造を有しており、このドアフレーム28Aの前部を前部縦フレーム31に対してヒンジ33を介して縦向き姿勢のヒンジ軸芯Qを中心にして開閉自在に支持し、このドア28の後部位置にドアノブ34を備えている。
【0031】
尚、このドアフレーム28Aの後部の下側が防塵ケース13の外縁に沿う形状に成形され、ドア28の外周にはウエザーストリップが備えられている。従って、ドア28を閉じた状態では、ドアフレーム28Aの外周のウエザーストリップが前部縦フレーム31の内周面と、後部縦フレーム32の内周面と、防塵ケース13の上面とに密着して雨水等の浸入を阻止し、ドア28を開放した場合には搭乗ステップ11の側方を大きく開放して運転者の乗降が可能になると共に、防塵ケース13の上方を露出させる。
【0032】
このコンバインでは、キャビンCのルーフ部25の後端近くにプレクリーナ36が備えられ、このプレクリーナ36に支柱状の吸気パイプ37を介して接続するエアークリーナ38が運転座席16の後方位置に配置され、このエアークリーナ38からの空気を下部吸気ホース39を介してエンジンEの吸気系に供給する吸気構成を備えている。
【0033】
〔補助ステップ〕
搭乗ステップ11は前部フレーム10の上面に備えられるため、比較的高い位置に形成されることになり、図9、図10に示すように、運転者が搭乗ステップ11に搭乗する際に足を掛けるための上部補助ステップ41と下部補助ステップ42とが前部フレーム10の側面に配置されている。
【0034】
特に、下部補助ステップ42には前後一対のアーム42Aを有し、この一対のアーム42Aが前後向き姿勢の揺動支軸43を中心にして前部フレーム10に支持されることで、図9(b)、図10(b)に示すように突出端が側方に張り出す使用姿勢と、図9(a)、図10(a)に示すように突出端が上方に向かう格納姿勢とに切換自在となるように構成されている。また、キャビンCのドア28が開放姿勢にある状態で、下部補助ステップ42を使用姿勢に設定し、キャビンCのドア28が閉じ姿勢にある状態で下部補助ステップ42を格納姿勢に設定する連動機構Lを備えている。
【0035】
連動機構Lは、ドア28の開閉時にヒンジ軸芯Qと同軸芯で回転するヒンジ軸44の回転力を前後向き姿勢の軸芯回りでの回転力に変換するベベルギヤ機構45と、このベベルギヤ機構45からの回転力が伝えられる前後向き姿勢の中間軸46と、この中間軸46と一体的に揺動する中間アーム47と、この中間アーム47の揺動力を下部補助ステップ42に伝える操作ロッド48とを備えている。尚、ベベルギヤ機構45は前部フレーム10の外側部の支持ブラケット40に支持され、上部補助ステップ41は前部フレーム10の外側面に直接支持されている。
【0036】
これにより、キャビンCのドア28を開放姿勢に操作した場合には、この操作に連係して下部補助ステップ42が使用姿勢に設定され、運転者が容易に足を掛けてキャビン内への乗り込みや、キャビンCから地面へ移動を可能にし、キャビンCのドア28が閉じ姿勢に操作された場合には、この操作力を連動機構Lが下部補助ステップ42に伝えることで、この下部補助ステップ42が格納姿勢に設定され、下部補助ステップ42が植立穀稈や畦に接触する不都合を解消している。
【0037】
〔エンジンボンネットの開閉構造〕
図7、図8に示すように、前部フレーム10の機体外側位置で、前後向き姿勢の開閉軸芯Rの軸芯上に一対のブラケット49が備えられ、この一対のブラケット49に対して、防塵ケース13の機体外側の下部を揺動自在に支持している。この支持構成により、エンジンボンネット12の上部を機体外方に引き出す形態でエンジンボンネット12と防塵ケース13と運転座席16とが一体的に開閉軸芯Rを中心にして揺動し、エンジンEの上方を大きく開放できるように構成されている。
【0038】
エンジンボンネット12を開放する際には、運転座席16の移動を可能にするためにキャビンCのドア28が開放され、エンジンボンネット12を開放する操作の際に運転座席16のシートバック16Bが、キャビンCの後部縦フレーム32に接触しないように、縦軸芯Pを中心に180度回転させ、シートバック16Bを前方に向かわせる姿勢に設定される。
【0039】
〔防塵ケースの内部構造〕
エンジンEは、水冷式のディーゼルエンジンが用いられ、クランク軸を機体左右方向に設定した姿勢で走行機体2に対してゴム等の防振マウントを介して支持されている。図5〜図8に示すように、防塵ケース13は防塵網14を有する広い吸気面で吸引した冷却風を、エンジンボンネット12の方向に案内するダクトとして機能するものであり、エンジンボンネット12の内部で機体外方位置にはエンジンEの冷却水がウオータホース51によって給排されるラジエータ52が配置されている。
【0040】
ラジエータ52とエンジンEとの間にはエンジンEの駆動力が伝えられる無端ベルトによって駆動されるラジエータファン53が配置され、ラジエータファン53の外周を取り囲む位置にシュラウド54が配置され、このシュラウド54はラジエータ52に支持されている。ラジエータ52を基準にして機体外面側の上部位置には、機体幅方向でラジエータの上部と並列するコンデンサ55が配置され、このコンデンサ55とラジエータ52との間には、電動モータ56Mの駆動力で回転する電動ファン56が配置されている。
【0041】
また、コンデンサ55の下方には、機体幅方向でラジエータ52の下部と並列するオイルクーラ57が配置され、このオイルクーラ57は、コンデンサ55よりラジエータ52に近い位置に配置されている。コンデンサ55とオイルクーラ57との上下方向の寸法は略等しく、側面視においてラジエータ52の上側の略半分の領域にコンデンサ55が並列し、下側の略半分にオイルクーラ57が並列し、コンデンサ55の下部の一部と、オイルクーラ57の上部とが側面視で重なり合う位置に夫々が配置されている。
【0042】
特に、コンデンサ55の下方の空間にオイルクーラ57を配置することで、平面視においてコンデンサ55とオイルクーラ57とが重なり合う位置に配置することも可能であり、このように配置した構成では、コンデンサ55とオイルクーラ57との機体外方への突出量を小さくして防塵ケース13の小型化も可能にできる。
【0043】
コンデンサ55は前述した空調装置29から供給される熱媒体の放熱を行うように熱媒配管58により空調装置29に接続しており、オイルクーラ57は、前述した無段変速装置等に使用されるオイルの冷却を行うようにオイル配管59により油路系に接続している。
【0044】
コンデンサ55は上部ブラケット55Aにより防塵ケース13の内面に支持され、電動ファン56はコンデンサ55に対してファンシュラウド56Aを介して支持される形態で防塵ケース13の内面に支持され、オイルクーラ57は下部ブラケット57Aにより防塵ケース13の内面に支持されている。このように、コンデンサ55と電動ファン56とオイルクーラ57とが防塵ケース13の内面に支持されているため、エンジンボンネット12が開閉軸芯Rを中心にして開放する際に、防塵ケース13と一体的に外方に揺動する。この開放を実現するように熱媒配管58の一部とオイル配管59との一部に可撓性材料のものが用いられている。尚、オイルクーラ57をラジエータ52に支持する構成を採用しても良い。
【0045】
図11に示すように、排出クラッチレバー21が「入」位置に操作されたことを検出(排出クラッチレバー21が「切」位置では非検出)する排出レバーセンサ61を備え、この排出レバーセンサ61の検出信号が入力し、電動ファン56の電動モータ56Mを制御する制御装置62(ファン制御手段の一例)を備えて除塵制御系が構成されている。この除塵制御系では、排出クラッチレバー21が入り位置に操作されたことを制御装置62が判別した場合に電動ファン56の電動モータ56Mに電力を供給するように制御形態が設定されている。尚、この除塵制御系では、底スクリュー5Sが回転したことを判別する回転センサ等、アンローダ6の作動を検出するセンサを備え、このセンサによりアンローダ6の作動を検出した場合に、電動ファン56を駆動するように構成しても良い。
【0046】
ラジエータファン53は、エンジンEの稼動時に常に冷却風を吸引する方向に回転を行うように作動方向が設定され(図5を参照)、電動ファン56が駆動されない状況においては、防塵網14を介して防塵ケース13の内部に吸引した上部の冷却風がコンデンサ55と電動ファン56とを通過し、ラジエータ52の上部に供給される。また、防塵ケース13の内部に吸引した下部の冷却風はオイルクーラ57を通過し、ラジエータ52の下部に供給される。これにより、コンデンサ55とオイルクーラ57とラジエータ52とに冷却風を供給して、これらの冷却を良好に行える。
【0047】
そして、排出クラッチレバー21が入り位置に操作され、アンローダ6が作動する場合には、この操作を排出レバーセンサ61が検出し制御装置62が電動ファン56を作動させることで、ラジエータファン53の吸気による空気の流れに抗して、防塵ケース13の内部の空気を機体外方に送ることになる。このため、機体外方に送られる空気がコンデンサ55を通過し、防塵網14から機体外方に送り出されることになり、防塵網14の外面に付着したワラなどの塵埃を風圧で吹き飛ばし、防塵網14の空気の流れを良好にする。また、アンローダ6の作動により穀粒が排出される場合には、多量の塵埃が発生するため、アンローダ6の作動時には継続して電動ファン56を作動させることで、穀粒の排出に伴って発生する塵埃が防塵網14に付着する不都合を良好に抑制できる。
【0048】
特に、ラジエータ52の外側の上部に並列してコンデンサ55が配置されるので、コンデンサ55で加熱された空気がラジエータ52の冷却面の全面に送られる不都合を阻止する。また、空調装置29がキャビンCの上部に配置されるため、このコンデンサ55をラジエータ52の下部に配置するものと比較すると、空調装置29とコンデンサ55との間に配置される熱媒配管58の長さの短縮も実現する。
【0049】
更に、このコンバインでは、オイルクーラ57に対してオイルを送る油圧機器が走行機体2の下側に配置されるため、例えば、オイルクーラ57をラジエータ52の上部に配置するものと比較すると、オイル配管59の長さの短縮も実現する
【0050】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
【0051】
(a)ラジエータ52の上部に並列する位置に電動ファン56を配置し、コンデンサ55を備えない構成を採用する。つまり、キャビンCを備えないコンバインを構成する場合に、本発明の構成の一部を備えることで、防塵網14に付着したワラや塵埃等を電動ファン56からの風で吹き飛ばす機能を利用できる。
【0052】
(b)電動ファン56をラジエータ52の外面側に支持し、コンデンサ55だけを防塵ケース13に支持する構成を採用する。この構成によると、エンジンボンネット12と防塵ケース13とが開放操作された場合に、電動ファン56とコンデンサ55とを大きく離間させ、この電動ファン56とコンデンサ55との対向する面のメンテナンスや点検を良好に行える。
【0053】
(c)電動ファン56とコンデンサ55とをラジエータ52に支持し、オイルクーラ57のみを防塵ケース13に備える。この構成によると、エンジンボンネット12と防塵ケース13とが開放操作された場合に、コンデンサ55の下側とオイルクーラ57の上側との間の空間を大きく開放してメンテナンスや点検を良好に行える。
【0054】
(d)電動ファン56を駆動するための人為操作型の専用のスイッチを備える。このように専用のスイッチを備えることで、任意のタイミングで電動ファン56を駆動して防塵網14に付着したワラや塵埃の除去が可能となる。
【0055】
(e)防塵ケース13の外面に形成された防塵網14の外面に接触する状態でワイパーと同様に作動する除去部材を備え、ドア28の開閉操作に連係して下部補助ステップ42を揺動させる連動機構Lの作動力を除去部材に伝える機構を備える。このように構成することにより、ドア28の開閉操作に連係して防塵網14の外面に付着したワラや塵埃等を除去できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、防塵ケースと、空調用のコンデンサを備えたコンバインに利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
2 走行機体
6 アンローダ
13 防塵ケース
14 防塵網
52 ラジエータ
53 ラジエータファン
55 コンデンサ
56 電動ファン
57 オイルクーラ
62 ファン制御手段(制御装置)
E エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に備えたエンジンの機体外側にラジエータファンとラジエータとを配置し、このラジエータに冷却風を供給する防塵ケースの防塵網を前記ラジエータの機体外側位置に備えているコンバインであって、
前記防塵ケースの内部で、機体幅方向において前記ラジエータの外側の上部と並列する位置に空調用のコンデンサを配置しているコンバイン。
【請求項2】
前記防塵ケースの内部において前記ラジエータの外側で、前記コンデンサの下側にオイルクーラが配置されている請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記ラジエータと前記コンデンサとの間に電動ファンを備えている請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記防塵ケースが開閉自在に構成され、この防塵ケースに前記電動ファンが支持されている請求項3記載のコンバイン。
【請求項5】
前記走行機体に備えたアンローダの作動時に、前記防塵ケースの内部の空気を機体外側に排出する方向に前記電動ファンを駆動するファン制御手段を備えている請求項3又は4記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−48576(P2013−48576A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187747(P2011−187747)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】