説明

コンピュータ、その制御方法及びプログラム

【課題】MBRとバックアップセクタデータを検証し、正常にリードできない又は不正であるときに、自動的に復旧し起動処理を実行する。
【解決手段】シャットダウンを検知した場合に、MBRとバックアップMBRのリードを行い、MBRのデータとバックアップMBRのデータとが同一でないときにMBRをバックアップMBRにコピーするか、バックアップMBRが正常にリードできない又は不正であるときにMBRをバックアップMBRにコピーするかする。コンピュータの電源をオンした場合に、バックアップMBRが正常にリードできない又は不正であるときにMBRをバックアップMBRにコピーする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンピュータ、及びコンピュータの制御方法に係わり、特にMBR(Master Boot Record)をバックアップMBRにコピーする又はバックアップMBRからMBRにコピーするコンピュータ、及びコンピュータにおけるMBRバックアップと復旧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PC/AT互換機で使用されるディスクドライブにおける、先頭セクタをマスターブートレコード(MBR)と呼称する。MBRには、ブートストラップローダ、パーティションテーブル、ブートシグニチャが格納されている。
【0003】
PC/AT互換機のBIOS(Basic Input Output System)は、ブートストラップローダを利用して、パーティションテーブルから起動フラグの設定された基本領域を検索し、そこに記録されているブートローダをメモリにロードしてPCを起動する。MBRが破壊された場合、PCの起動ができなくなる。
【0004】
PCベースのPOSシステムでは24時間×365日稼動するシステムも少なからず存在する。一般に販売されているハードディスクでは、このような長時間の連続稼動の環境を想定していない製品も販売され、使用されているケースも存在する。そのため、ハードディスクメーカーでも障害原因を完全に特定できないケースもある。
【0005】
MBRのパーティションテーブルが破壊されていると、PC起動に失敗するだけでなく全てのデータを失う可能性がある。シリコンディスクにおけるMBR破損の障害については、現時点で市場が成長段階にあるため、ノウハウの蓄積が足りず、障害原因は明確化されているとは必ずしもいえない。
【0006】
本願発明に関連する技術としては、特許文献1には、バックアップデータの異常判定方法及び異常時の異常処理方法に関する発明の記載があり、制御用データとチェック用データとを照合し、どちらが異常であるかを判定し、異常である方のデータを修復することの記載がある。特許文献2にはプロテクトされ隠れた緊急起動ディレクトリーに関する発明の記載があり、主OSのバックアップOSを設け、主OSの起動及び実行ができない場合にバックアップOSをロードすることの記載がある。また、特許文献3にはコンピュータOSの修復方法に関する発明の記載があり、コンピュータが起動するごとにOSブートプログラムファイルを検査して破壊部分を修復するとともに、システムはハードディスクブート情報等も検査して破壊部分を修復することの記載がある。また、初回バックアップ時にブートセクタの情報をバックアップすることの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−095868号公報(段落0026等)
【特許文献2】特表2006−513490号公報(段落0011等)
【特許文献3】特表2006−527423号公報(段落0014、0029、0030、0036等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、MBRを自動的に復旧する手段がなかった。そのため、大容量のハードディスクであっても、先頭のMBRが1セクタのみ破損しただけでPCが起動できず、別システムを利用して専用のソフトウエア等で復旧を行って、データを復旧する必要がある。
【0009】
本発明の目的は、マスターブートレコード(以下MBR)の自動バックアップと自動復旧を行い、マスターブートレコード破壊によるパーソナルコンピュータ(以下PCもしくはPC/AT互換機)の起動時の不具合を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係わるコンピュータの制御方法は、MBR(Master Boot Record)と、該MBRがコピーされるバックアップMBRと、OSとが記憶される記憶部を備えたコンピュータの制御方法において、
前記OSは、シャットダウンを検知した場合に、前記MBRと前記バックアップMBRのリードを行い、次の(1)、(2)、(3)のうちのいずれかの処理を行う、コンピュータの制御方法である。
【0011】
(1) 前記MBRと前記バックアップMBRとが正常にリードできるが、前記MBRのデータと前記バックアップMBRのデータとが同一でないときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(2) 前記MBRが正常にリードできるが、前記バックアップMBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(3)前記バックアップMBRが正常にリードできるが、前記MBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記バックアップMBRを前記MBRにコピーする
また、本発明に係わるコンピュータの制御方法は、MBR(Master Boot Record)及び該MBRがコピーされるバックアップMBRが記憶される記憶部と、BIOSが記憶されたメモリとを備えたコンピュータの制御方法において、
前記BIOSは、前記コンピュータの電源をオンした場合に、前記MBRと前記バックアップMBRのリードを行い、次の(1)、(2)のうちのいずれかの処理を行う、コンピュータの制御方法である。
【0012】
(1) 前記MBRと前記バックアップMBRとが正常にリードできるが、前記MBRのデータと前記バックアップMBRのデータとが同一でないときに前記バックアップMBRを前記MBRにコピーする
(2) 前記MBRが正常にリードできるが、前記バックアップMBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
本発明に係わるコンピュータは、MBR(Master Boot Record)と、該MBRがコピーされるバックアップMBRと、OSとが記憶される記憶部を備えたコンピュータにおいて、
前記OSは、シャットダウンを検知した場合に、前記MBRと前記バックアップMBRのリードを行い、次の(1)、(2)、(3)のうちのいずれかの処理を行うコンピュータである。
【0013】
(1) 前記MBRと前記バックアップMBRとが正常にリードできるが、前記MBRのデータと前記バックアップMBRのデータとが同一でないときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(2) 前記MBRが正常にリードできるが、前記バックアップMBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(3)前記バックアップMBRが正常にリードできるが、前記MBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記バックアップMBRを前記MBRにコピーする
また本発明に係わるコンピュータは、MBR(Master Boot Record)及び該MBRがコピーされるバックアップMBRが記憶される記憶部と、BIOSが記憶されたメモリとを備えたコンピュータにおいて、
前記BIOSは、前記コンピュータの電源をオンした場合に、前記MBRと前記バックアップMBRのリードを行い、次の(1)、(2)のうちのいずれかの処理を行うコンピュータである。
【0014】
(1) 前記MBRと前記バックアップMBRとが正常にリードできるが、前記MBRのデータと前記バックアップMBRのデータとが同一でないときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(2) 前記MBRが正常にリードできるが、前記バックアップMBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
本発明に係わるプログラムは、MBR(Master Boot Record)と、該MBRがコピーされるバックアップMBRと、OSとが記憶される記憶部を備えたコンピュータに、
シャットダウンを検知した場合に、前記MBRと前記バックアップMBRのリードを行い、次の(1)、(2)、(3)のうちのいずれかの処理を行わせるプログラムである。
【0015】
(1) 前記MBRと前記バックアップMBRとが正常にリードできるが、前記MBRのデータと前記バックアップMBRのデータとが同一でないときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(2) 前記MBRが正常にリードできるが、前記バックアップMBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(3)前記バックアップMBRが正常にリードできるが、前記MBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記バックアップMBRを前記MBRにコピーする
また本発明に係わるプログラムは、MBR(Master Boot Record)及び該MBRがコピーされるバックアップMBRが記憶される記憶部と、BIOSが記憶されたメモリとを備えたコンピュータに、
電源をオンした場合に、前記MBRと前記バックアップMBRのリードを行い、次の(1)、(2)のうちのいずれかの処理を行わせるプログラムである。
【0016】
(1) 前記MBRと前記バックアップMBRとが正常にリードできるが、前記MBRのデータと前記バックアップMBRのデータとが同一でないときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(2) 前記MBRが正常にリードできるが、前記バックアップMBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、OSシャットダウン時に、バックアップされたセクターデータとMBRを検証し自動復旧することができる。また電源オン時にBIOSプログラムでMBRとバックアップセクタデータを検証し、MBRが正常にリードできない又は不正であるときに、自動的に復旧し起動処理を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一般的なPC/AT互換機における、PC起動におけるBIOSからOSへの起動処理フローを簡易的に説明するフローチャートである。
【図2】図1のステップS101をステップS201に置き換えることで、正常なMBRもしくはバックアップMBRから起動するフローを示すフローチャートである。
【図3】図2のステップS201の詳細を示すフローチャートである。
【図4】OSとしてWindows(登録商標)を利用した場合のシャットダウン時のディスク監視サービスにおける終了時のフローチャートである。
【図5】本発明に係わる実施例として、OSにMicrosoft社のWindows XP Embeddedを選択した場合の、図3に示されるBIOSプログラムと、図4に示されるサービスプログラムの実装位置を示すブロック図である。
【図6】新規PCを最初に起動したときに、MBRがバックアップMBRにコピーされるシーケンスを示す図である。
【図7】Windows(OS)起動中にユーザーアプリケーション等によって、MBRが変更された場合のシーケンスを示す図である。
【図8】PC電源オン時にMBRが破損した場合に、バックアップMBR(LBA=15)のセクターデータをMBRとして起動しているシーケンスを示す図である。
【図9】本実施形態に係わるコンピュータの一構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係わる典型的な一実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
図1は一般的なPC/AT互換機における、PC起動におけるBIOSからOSへの起動処理フローを簡易的に説明するフローチャートである。
【0021】
図1に示すように、BIOSが起動すると、まずMBRをロードする(ステップS101)。その後、ブートストラップローダを起動し(ステップS102)、パーティションテーブルから起動すべきパーティションを検索する(ステップS103)。さらに、ブートローダをロードし(ステップS104)、制御をブートローダに受け渡し(ステップS105)、OSを起動させる。
【0022】
図2は、図1のステップS101をステップS201に置き換えることで、正常なMBRもしくはバックアップMBRから起動するフローを示すフローチャートである。図3は、具体的にBIOSの図2のステップS201の詳細を示している。
【0023】
本実施形態では、バックアップMBRのLogical Block Address(以下、LBAという)を15としている。
【0024】
まず図3に示すように、MBRのLBA 0 (MBR(LBA=0))をロードする(ステップS301)。そして、ステップS302の「エラー?」判定では、ディスクのリードエラー発生であるか、不正なMBRであるかが判定される。リードエラーの発生の原因は、ディスクのハード的な不良、MBRのデータ不良が挙げられる。また不正なMBRであるかどうかは、例えば(1)全てが0xffff、0x0000で埋められていないか、(2)ブートシグナチャと呼ばれる、最終WORDデータがAA55hであるか、(3)パーティションテーブルにおけるパーティション情報が重複しないか、(4)パーティションテーブルにおけるサイズの合計がディスク容量を超えないかにより判定される。
【0025】
ディスクのリードエラー発生、不正なMBRでない場合には(ステップS302のNo)、バックアップMBRのLBA 15 (バックアップMBR(LBA=15))をロードする(ステップS303)。そして、ステップS304の「エラー?」判定では、バックアップMBRにおいて、ディスクのリードエラー発生であるか、不正なMBRであるか、MBRがバックアップされていないかが判定される。
【0026】
ディスクのリードエラー発生であるか、不正なMBRであるか、又はMBRがバックアップされていないと判定された場合は(ステップS304のYes)、バックアップMBRへMBRのデータを上書き(コピー)する(ステップS305)。ステップS306でライトエラーかどうか判定され、ライトエラーでない場合は(ステップS306のNo)、バックアップMBRが作成され、MBRロードが終了する。
【0027】
ディスクのリードエラー発生、不正なMBRでなく、MBRがバックアップされていると判定された場合は(ステップS304のNo)、ステップS307で、MBRとバックアップMBRとを比較し、MBRとバックアップMBRとが等しい場合にはMBRロードが終了する。一方、MBRとバックアップMBRとが一致しない場合にはMBRへバックアップMBRのデータを上書き(コピー)する(ステップS310)。
【0028】
ステップS302において、ディスクのリードエラー発生(正常なリードでない)、不正なMBRである場合には(ステップS302のYes)、バックアップMBRのLBA 15をロードする(ステップS308)。そして、ステップS309の「エラー?」判定では、バックアップMBRにおいて、ディスクのリードエラー発生であるか、不正なMBRであるか、MBRがバックアップされていないかが判定される。
【0029】
ディスクのリードエラー発生、不正なMBRでなく、MBRがバックアップされていると判定された場合は(ステップS309のNo)、MBRへバックアップMBRのデータを上書きする(ステップS310)。ステップS311でライトエラーかどうか判定され、ライトエラーでない場合は(ステップS311のNo)、バックアップMBRをMBRとしてロードする。
【0030】
ステップS309において、ディスクのリードエラー発生、不正なMBRであるか、又はMBRがバックアップされていないと判定された場合は(ステップS309のYes)、MBRロードはできない。同様に、ステップS311において、ライトエラーの場合は(ステップS311のYes)、MBRロードはできない。
【0031】
図4はOSとしてWindows(登録商標)を利用した場合のシャットダウン時のディスク監視サービスにおける終了時のフローチャートである。
【0032】
OS起動後に任意のアプリケーションからディスクのパーティションテーブル等を更新した場合に、MBRは変更される可能性がある。そのため、MBRとバックアップMBRが異なることになるが、これを認識していないBIOSが勝手にバックアップMBRからMBRを復旧してしまうようなことになると、実質MBRが修正できないということになってしまう。OS上からMBRの適切な変更が加えられた場合、OS終了(シャットダウン時)にバックアップMBRを更新する処理が必要となる。
【0033】
図4に示すように、OSはシャットダウンを検知したとき、MBRのLBA 0をリードする(ステップS401)。そして、ステップS402において、ディスクのリードエラー発生、不正なMBRであるかが判定される。ディスクのリードエラー発生がなく、不正なMBRでない場合には(ステップS402のNo)、バックアップMBRのLBA 15をリードする(ステップS403)。そして、ステップS404において、ディスクのリードエラー発生がないかどうか、不正なMBRでないか、MBRがバックアップされているかが判定される。
【0034】
ディスクのリードエラー発生がなく、不正なMBRでなく、MBRがバックアップされていると判定された場合は(ステップS404のNo)、ステップS405で、MBRとバックアップMBRとを比較し、MBRとバックアップMBRとが等しい場合には、プログラムが終了する。
【0035】
一方、ディスクのリードエラー発生があり、不正なMBRであり、又はMBRがバックアップされていないと判定された場合は(ステップS404のYes)、MBRのLBA 0をバックアップMBRのLBA 15へコピーし(ステップS406)、プログラムを終了する。
【0036】
また同様に、ステップS405で、MBRとバックアップMBRとを比較し、MBRとバックアップMBRとが一致しない場合にも、MBRのLBA 0をバックアップMBRのLBA 15へコピーし(ステップS406)、プログラムを終了する。
【0037】
ステップS402において、ディスクのリードエラー発生があり、又は不正なMBRである場合には(ステップS402のYes)、バックアップMBRのLBA 15をリードする(ステップS407)。そして、ステップS408において、ディスクのリードエラー発生がなく、不正なMBRであるか、MBRがバックアップされているかが判定される。ディスクのリードエラー発生がなく、不正なMBRでなく、MBRがバックアップされていると判定された場合は(ステップS408のNo)、バックアップMBRのLBA 15をMBRのLBA 0へコピーし(ステップS409)、プログラムを終了する。
【実施例】
【0038】
図5は本発明に係わる実施例として、OSにMicrosoft社のWindows XP Embeddedを選択した場合の、図3に示されるBIOSプログラムと、図4に示されるサービスプログラムの実装位置を示すブロック図である。PC/AT互換機16には、Windows アプリケーション11,Windows システムサービス12,Windows XPカーネルプログラム13,Windows デバイスドライバ14及びBIOS15が搭載されている。
シャットダウンを検出して、バックアップMBRを更新するディスク監視サービス17はWindowsシステムサービス12として実装されたプログラム(ソフトウエア)として提供する。
【0039】
BIOS拡張18となっている部分は、BIOS15に組み込まれた機能として提供する。
【0040】
図6では、新規PCを最初に起動したときに、MBRがバックアップMBRにコピーされるシーケンスを示している。
【0041】
図6に示すように、新規コンピュータ(PC)の電源が最初にオンし(ステップS601)、ディスクドライブが正常に起動すると(ステップS602)、BIOSはMBRをバックアップMBRにコピーするように指示する(ステップS603)。すると、ディスクドライブでMBRのLBA 0をリードし、バックアップMBRのLBA 15へライトする(ステップS604)。こうして、MBRのLBA 0 のセクターデータがバックアップMBRのLBA 15にコピーされる。こうして実行される処理は、図3のステップS305に相当する。BIOSがステップS603を実行すると、ブートローダを起動する(ステップS605)。その後、Windows OSが起動し(ステップS606)、ディスク監視サービスが起動する(ステップS607)。
【0042】
図7では、Windows(OS)起動中にユーザーアプリケーション等によって、MBRが変更された場合のシーケンスを示している。
【0043】
図7において、PC本体の電源がオンし、Windows OSが起動中で、ディスク監視サービスが起動中に(ステップS701−S703)、ステップS704でディスク構成変更(例えば、空き領域にパーティションの追加)を実施した場合、ステップ705でパーティションテーブルの更新が実施され、ステップS706では実際にMBRへの書込み処理(MBRのLBA 0へライトする)が実施される。
【0044】
この場合、Windows(OS)シャットダウン(ステップS707)をディスク監視サービスが検出し、MBRの変更を検出すると、ディスクドライブへMBRをバックアップMBRにコピーするように指示する(ステップS708)。すると、ディスクドライブでMBRのLBA 0をリードし、バックアップMBRのLBA 15へライトし(ステップS710)、バックアップMBRへコピーする。実行される処理は、図4のステップS406に相当する。
【0045】
ステップS708の処理後に、ディスク監視サービスが終了すると(ステップS709)、Windows OSがPC電源オフを命令し(ステップS711)、BIOSがPC電源オフを実行し(ステップS712)、PC電源がオフされる(ステップS713)。
【0046】
図8では、PC電源オン時にMBRが破損した場合に、バックアップMBRのLBA 15のセクターデータをMBRとして起動しているシーケンスを示している。
【0047】
図8において、PC本体の電源がオンすると(ステップS801)、ディスクドライブがディスク起動を実行する(ステップS802)。そして、ステップS803のように、電源ON時にMBRが破損したとする。ここでは、MBRのLBA 0が正常に読み出せない状態を想定し(ステップS804)、BIOSはディスクのリードエラーを検出する(ステップS805)。
【0048】
BIOSはステップS806で、バックアップMBRからMBRへのコピーを指示し、ステップS807でバックアップMBRのLBA 15を読み出し、MBRのLBA 0に書き戻す(ステップS807)。バックアップMBRのLBA 15を読み出し、MBRのLBA 0に書き戻すと同時に、MBRとしてOSのブートローダを起動し、Windows OSを起動し、ディスク監視サービスを起動する(ステップS808−S810)。
【0049】
図9は本実施形態に係わるコンピュータの一構成例を示す図である。本実施形態のコンピュータはBIOSプログラムが記憶されたメモリとなるBIOS ROM21、液晶ディスプレイ等の表示部22、メモリとなるRAM23、CPU24、ハードディスク等のディスク装置(記憶部となる)25、各部を接続するバス26を備えている。図3に示されるBIOSプログラムはBIOS ROM21に記憶され、図4に示されるサービスプログラムはディスク装置25に記憶される。
図3に示されるBIOSプログラムと図4に示されるサービスプログラムはCPU104で動作させることで、MBRバックアップと復旧動作を実現することができる。MBRバックアップと復旧動作の処理に必要な情報はRAM23に記憶される。
【0050】
ハードディスクにおけるMBR破損を原因としたOS起動障害の場合、MBRを再書込みすると復旧するケースが実際に確認されている。本実施形態では大容量ディスクがその寿命を迎えようとするタイミングでMBRが破損した場合に、一時的にも復旧することでPC起動を可能とし、大容量ディスクに記録されているファイルデータを保全することができる。この場合OSがBIOSから復旧履歴を取得して、ユーザーに通知することで、ハードディスクが完全に動作しなくなるような障害以前に、ディスク交換等の適切な手段を講じることができる。
【0051】
また、ハードディスク以外のシリコンディスク(フラッシュメモリーに記録するタイプのSSD: Solid State Disk)でも同様にMBRが破損する障害が発生しているが、この場合もMBRのみ復旧することで正常にPCは起動し、全データファイルが読み取り可能となる。
【0052】
そのため、本実施形態の構成は、一般的なPCで使用される外部記憶としてのディスクドライブ全般に有効である。
【0053】
以上説明した実施例では、バックアップMBRをLBA=15にバックアップする方法を示している。しかしながら、一般的なPC/AT互換機では、LBA=1〜LBA=15までが予約(未使用)となっているので、この15セクタに、
・複数バックアップして信頼性を高める。
・複数世代をバックアップする。
などの実施例も可能である。
【0054】
図4に示されるOSシャットダウン時の処理では、LBA=1〜LBA=15以外でもファイルシステム中に、ファイルとしてバックアップする方法も可能である。
【0055】
本実施形態では、PCのディスクBIOSとOSが連携し、起動確認されたMBRを自動的に予約セクタにバックアップする。OSシャットダウン時に、バックアップされたセクターデータとMBRを検証し自動復旧する。PC起動時にBIOSプログラムでMBRとバックアップセクタデータを検証し、MBRが破壊されている場合は、バックアップセクタから自動的に復旧し起動処理を実行する。
【0056】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下の構成には限られない。
【0057】
(付記1)
MBR(Master Boot Record)と、該MBRがコピーされるバックアップMBRと、OSとが記憶される記憶部を備えたコンピュータの制御方法において、
前記OSは、シャットダウンを検知した場合に、前記MBRと前記バックアップMBRのリードを行い、次の(1)、(2)、(3)のうちのいずれかの処理を行う、コンピュータの制御方法。
(1) 前記MBRと前記バックアップMBRとが正常にリードできるが、前記MBRのデータと前記バックアップMBRのデータとが同一でないときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(2) 前記MBRが正常にリードできるが、前記バックアップMBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(3)前記バックアップMBRが正常にリードできるが、前記MBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記バックアップMBRを前記MBRにコピーする
【0058】
(付記2)
MBR(Master Boot Record)及び該MBRがコピーされるバックアップMBRが記憶される記憶部と、BIOSが記憶されたメモリとを備えたコンピュータの制御方法において、
前記BIOSは、前記コンピュータの電源をオンした場合に、前記MBRと前記バックアップMBRのリードを行い、次の(1)、(2)のうちのいずれかの処理を行う、コンピュータの制御方法。
(1) 前記MBRと前記バックアップMBRとが正常にリードできるが、前記MBRのデータと前記バックアップMBRのデータとが同一でないときに前記バックアップMBRを前記MBRにコピーする
(2) 前記MBRが正常にリードできるが、前記バックアップMBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
【0059】
(付記3)
MBR(Master Boot Record)と、該MBRがコピーされるバックアップMBRと、OSとが記憶される記憶部を備えたコンピュータにおいて、
前記OSは、シャットダウンを検知した場合に、前記MBRと前記バックアップMBRのリードを行い、次の(1)、(2)、(3)のうちのいずれかの処理を行うコンピュータ。
(1) 前記MBRと前記バックアップMBRとが正常にリードできるが、前記MBRのデータと前記バックアップMBRのデータとが同一でないときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(2) 前記MBRが正常にリードできるが、前記バックアップMBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(3)前記バックアップMBRが正常にリードできるが、前記MBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記バックアップMBRを前記MBRにコピーする
【0060】
(付記4)
MBR(Master Boot Record)及び該MBRがコピーされるバックアップMBRが記憶される記憶部と、BIOSが記憶されたメモリとを備えたコンピュータにおいて、
前記BIOSは、前記コンピュータの電源をオンした場合に、前記MBRと前記バックアップMBRのリードを行い、次の(1)、(2)のうちのいずれかの処理を行うコンピュータ。
(1) 前記MBRと前記バックアップMBRとが正常にリードできるが、前記MBRのデータと前記バックアップMBRのデータとが同一でないときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(2) 前記MBRが正常にリードできるが、前記バックアップMBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
【0061】
(付記5)
MBR(Master Boot Record)と、該MBRがコピーされるバックアップMBRと、OSとが記憶される記憶部を備えたコンピュータに、
シャットダウンを検知した場合に、前記MBRと前記バックアップMBRのリードを行い、次の(1)、(2)、(3)のうちのいずれかの処理を行わせるプログラム。
(1) 前記MBRと前記バックアップMBRとが正常にリードできるが、前記MBRのデータと前記バックアップMBRのデータとが同一でないときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(2) 前記MBRが正常にリードできるが、前記バックアップMBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(3)前記バックアップMBRが正常にリードできるが、前記MBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記バックアップMBRを前記MBRにコピーする
【0062】
(付記6)
MBR(Master Boot Record)及び該MBRがコピーされるバックアップMBRが記憶される記憶部と、BIOSが記憶されたメモリとを備えたコンピュータに、
電源をオンした場合に、前記MBRと前記バックアップMBRのリードを行い、次の(1)、(2)のうちのいずれかの処理を行わせるプログラム。
(1) 前記MBRと前記バックアップMBRとが正常にリードできるが、前記MBRのデータと前記バックアップMBRのデータとが同一でないときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(2) 前記MBRが正常にリードできるが、前記バックアップMBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明はコンピュータ、及びコンピュータの制御方法に係わり、特にPC/AT互換機を利用するシステムに個人用、業務用を問わず適用される。
【符号の説明】
【0064】
11 Windows アプリケーション
12 Windowsシステムサービス
13 Windows XPカーネルプログラム
14 Windowsデバイスドライバ
15 BIOS
16 PC/AT互換機
17 ディスク監視サービス
18 BIOS拡張

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MBR(Master Boot Record)と、該MBRがコピーされるバックアップMBRと、OSとが記憶される記憶部を備えたコンピュータの制御方法において、
前記OSは、シャットダウンを検知した場合に、前記MBRと前記バックアップMBRのリードを行い、次の(1)、(2)、(3)のうちのいずれかの処理を行う、コンピュータの制御方法。
(1) 前記MBRと前記バックアップMBRとが正常にリードできるが、前記MBRのデータと前記バックアップMBRのデータとが同一でないときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(2) 前記MBRが正常にリードできるが、前記バックアップMBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(3)前記バックアップMBRが正常にリードできるが、前記MBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記バックアップMBRを前記MBRにコピーする
【請求項2】
MBR(Master Boot Record)及び該MBRがコピーされるバックアップMBRが記憶される記憶部と、BIOSが記憶されたメモリとを備えたコンピュータの制御方法において、
前記BIOSは、前記コンピュータの電源をオンした場合に、前記MBRと前記バックアップMBRのリードを行い、次の(1)、(2)のうちのいずれかの処理を行う、コンピュータの制御方法。
(1) 前記MBRと前記バックアップMBRとが正常にリードできるが、前記MBRのデータと前記バックアップMBRのデータとが同一でないときに前記バックアップMBRを前記MBRにコピーする
(2) 前記MBRが正常にリードできるが、前記バックアップMBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
【請求項3】
MBR(Master Boot Record)と、該MBRがコピーされるバックアップMBRと、OSとが記憶される記憶部を備えたコンピュータにおいて、
前記OSは、シャットダウンを検知した場合に、前記MBRと前記バックアップMBRのリードを行い、次の(1)、(2)、(3)のうちのいずれかの処理を行うコンピュータ。
(1) 前記MBRと前記バックアップMBRとが正常にリードできるが、前記MBRのデータと前記バックアップMBRのデータとが同一でないときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(2) 前記MBRが正常にリードできるが、前記バックアップMBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(3)前記バックアップMBRが正常にリードできるが、前記MBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記バックアップMBRを前記MBRにコピーする
【請求項4】
MBR(Master Boot Record)及び該MBRがコピーされるバックアップMBRが記憶される記憶部と、BIOSが記憶されたメモリとを備えたコンピュータにおいて、
前記BIOSは、前記コンピュータの電源をオンした場合に、前記MBRと前記バックアップMBRのリードを行い、次の(1)、(2)のうちのいずれかの処理を行うコンピュータ。
(1) 前記MBRと前記バックアップMBRとが正常にリードできるが、前記MBRのデータと前記バックアップMBRのデータとが同一でないときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(2) 前記MBRが正常にリードできるが、前記バックアップMBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
【請求項5】
MBR(Master Boot Record)と、該MBRがコピーされるバックアップMBRと、OSとが記憶される記憶部を備えたコンピュータに、
シャットダウンを検知した場合に、前記MBRと前記バックアップMBRのリードを行い、次の(1)、(2)、(3)のうちのいずれかの処理を行わせるプログラム。
(1) 前記MBRと前記バックアップMBRとが正常にリードできるが、前記MBRのデータと前記バックアップMBRのデータとが同一でないときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(2) 前記MBRが正常にリードできるが、前記バックアップMBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(3)前記バックアップMBRが正常にリードできるが、前記MBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記バックアップMBRを前記MBRにコピーする
【請求項6】
MBR(Master Boot Record)及び該MBRがコピーされるバックアップMBRが記憶される記憶部と、BIOSが記憶されたメモリとを備えたコンピュータに、
電源をオンした場合に、前記MBRと前記バックアップMBRのリードを行い、次の(1)、(2)のうちのいずれかの処理を行わせるプログラム。
(1) 前記MBRと前記バックアップMBRとが正常にリードできるが、前記MBRのデータと前記バックアップMBRのデータとが同一でないときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする
(2) 前記MBRが正常にリードできるが、前記バックアップMBRが正常にリードできない又は不正であるときに前記MBRを前記バックアップMBRにコピーする

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−243199(P2012−243199A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114695(P2011−114695)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【特許番号】特許第5077726号(P5077726)
【特許公報発行日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】