説明

コンプレッサドレン水の油分凝集促進方法、及び産業用洗浄液の浄化処理促進方法

【課題】 コンプレッサドレン水の油水分離装置における問題点を解消し、電解性能及び電気伝導度を安定化できるとともに、配管に設けられた浮上分離槽や吸着処理槽の性能を最大限発揮させる。
【解決手段】 吸着処理槽の下流側の浄化された処理水の一部を電解槽に導入して電解質を供給し、得られた電解水を吸着処理槽の上流側に混入させることにより、ドレン水の油分を凝集させると共に吸着処理槽に流入するドレン水の油濃度を減らす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンプレッサ等から排出される帯電した油粒子を含むドレン水を油水分離して放流可能な処理水とするためのドレン水処理装置、及び産業用洗浄液の浄化処理促進装置における油分凝集促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等で使用されるコンプレッサー等からはドレントラップを介して常時ドレン水が排出されている。ドレン水は油分を含むので、ドレン配管に油水分離装置を設けて油分の分離を行い環境基準を満たす一定の品質まで水質を改善してから放流する必要がある。一般的に、油水分離の方法としては、比重差による浮上分離、疎水コロイドに少量のイオンを加える凝析、微細気泡による凝集(補集)、活性炭や吸着材による吸着などの方法が知られている。
【0003】
ドレン水に含まれる微細な油粒子は、単純な油粒子と帯電した油粒子とからなるが、高圧コンプレッサーやレシプロ型コンプレッサーから排出されるドレンでは帯電した油粒子の割合が多く浮上分離しにくい。一方吸着材による油水分離方法は、吸着材を定期的に交換する必要がある。特に高濃度ドレンや高乳化度のドレン等を処理する場合、比重差による分離には長い時間がかかり、吸着材による分離では吸着材の寿命を著しく縮めるので処理が難しかった。
【0004】
そこで金属陽イオンにより油粒子の電荷を除去する電解槽を浮上処理槽や吸着槽と組合せて、より効率的に油分を処理することが試みられている。例えばこのような組合せの一例として、ドレン原液をまず前処理槽に導入して油粒子を吸着又は浮上分離(粗処理)させ、次に電解槽で原液に直接荷電して電解析出凝集させた後、さらに気泡等で凝集させてから後処理槽に導入し油分を吸着分離させるドレン処理機が知られている。別の方法としては、比重差で油分を浮上分離する独立の分離槽で一定時間前処理した後、ドレン処理機で処理する方法も知られている。
【0005】
特開2003−260307号公報記載の発明は、ドレン水を貯溜する前処理槽と、前処理槽内のドレン水をドレン水位に応じて一定量ずつ下流に給送するドレン送り込み手段と、金属イオンを供給可能な電極を有する電解槽と、空気吹き込み口及び空気吹き込み手段を備えた空気吹き込み槽と、油吸着材を充填した吸着処理槽とを有し、電解槽と空気吹き込み槽の間には逆止弁を設け、さらに前記ドレン送り込み手段の作動に連動して前記電極及び空気吹き込み手段を一定時間作動させる制御手段を設けたことを特徴とする油水分離システムを提案している。すなわちドレン配管内に電解槽を設置し、ドレン水を一定量ずつ下流側に圧送することにより電解層においてドレン水に一定量のイオンを供給し、油分を凝集浮上分離させることで、下流の処理槽における吸着材の有効利用を図った。そしてドレンの量や水質等に応じて通電時間を変化させることで、処理水の品質向上と省資源化を図っていた。
【特許文献1】特開2003−260307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
原液に直接荷電して電解析出凝集させる従来の電解槽では、後処理の前にドレン原液に直接電極を挿入して荷電していたため、ドレン水に含まれる不純物により電極が汚れ、出力が低下して電解析出性能が下がったり、電気伝導度が安定しないために制御が難しくなって、最悪の場合は吸着処理に悪影響を及ぼすなどの問題があった。
【0007】
また処理機の前段に浮上分離槽を設けても、分離槽を高濃度ドレンや高乳化度ドレンなど、比重差による浮上分離に時間のかかる水質の場合、充分な前処理をすることができず、処理機の吸着性能に悪影響を及ぼしていた。
【0008】
本発明はドレン排水の油水分離装置における上記の問題点を解消し、電解性能及び電気伝導度を安定化できるとともに、配管に設けられた浮上分離槽や吸着処理槽の性能を最大限発揮させるコンプレッサドレン水の油分凝集促進方法を提供する。さらに本発明は、簡易な産業用洗浄液の浄化処理促進方法を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、コンプレッサドレン水の油水分離装置において油分の処理を促進させる方法であって、吸着処理槽にドレン水を通す工程と、処理されたドレン水を分流させて電解装置に導入し、電解質を供給する工程と、電解処理された処理水の一部をドレン配管の前記処理槽の上流側に混入させる工程を含む方法により、上記の課題を解決する。
【0010】
すなわち、吸着処理槽の下流側の浄化された処理水を電解水の原料として使用し、生成した電解水を吸着処理槽の上流側に混入させて、ドレン水の油分を凝集させると共に吸着処理槽に流入するドレン水の油濃度を減らす。分流手段とは例えば本管のドレン水の1/2を還流管へ配分する周知の定量チャンバーであり、電解装置とは例えば電極を有する電解槽と、該本体と還流管とをつなぐ支管からなる装置である。
【0011】
請求項2記載の発明は、ドレン本管に少なくとも1個の吸着処理槽を有するドレン処理機において、前記吸着処理槽の下流側に処理水の一定割合を分流させる手段と、分流させた処理水を前記吸着処理槽の上流側に混入させる還流管を設け、該還流管又はその支管に、電解装置と、前記電解槽内のドレン水位に応じてドレン水を一定量ずつ還流管の下流側に給送するドレン送り込み手段とを設けたことを特徴とする、コンプレッサドレン水の油分凝集処理装置により、上記の課題を解決する。
【0012】
ドレン送り込み手段とは、例えば前記支管分岐部よりも下流側の還流管に設けられ、前記電解槽のフロート弁を収容した圧送ユニットと、電解槽の上部に設けられた圧縮空気供給手段とからなり、好ましくは前記本管の還流管出口接続位置の前後には一対の逆止弁が設けられている。前記圧送ユニットは、例えば還流管の入口側を上部に、出口側を下部に接続した略円筒形の容器に、電解槽の基準水面と同じ高さで作動するフロート弁を収容してなる装置である。
【0013】
請求項3記載の発明は、吸着処理槽にドレン水を通す工程と、処理されたドレン水の一部を分流させて電解装置に導入し、油分を電解析出凝集させる工程と、電解処理された処理水を洗浄箇所若しくはドレン本管の前記処理槽の上流側に混入させる工程を含む産業用洗浄液の浄化処理促進方法により、上記の課題を解決する。
【0014】
すなわち、吸着処理槽で処理されたドレン水を原料として生成した電解水を、洗浄箇所若しくは前記処理槽の上流側に混入させて、油分を凝集させ洗浄液の機能を高めると共に吸着処理槽に流入するドレン水の油濃度を減らす。
【0015】
請求項4記載の発明は、少なくとも1個の吸着処理槽及び前記吸着処理槽の下流側にあって処理水の一定割合を分流させる手段を有する洗浄液処理管と、前記分流手段で分流させた処理水を洗浄箇所若しくは前記吸着処理槽の上流側に混入させる還流管を設け、該還流管又はその支管に、電解装置と、前記電解槽内のドレン水位に応じてドレン水を一定量ずつ還流管の下流側に給送するドレン送り込み手段とを設けたことを特徴とする産業用洗浄液の浄化処理促進システムにより、上記の課題を解決する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の油分処理促進装置は、油分吸着後の浄化処理水で電解水を作り、電解槽の上流部で原液に混入する方式のため、ドレン水に含まれる不純物により電極が汚れる心配がなく、安定した電解析出が可能になった。また、電気伝導度が安定しているため、電解析出量の管理がしやすくなった。
【0017】
本発明では平衡状態では後処理槽3にはドレントラップの排出量よりも多くのドレン水が流れており、油分が希釈されている分吸着材の負担を減らし、かつ吸着材の能力をまんべんなく発揮させるので、これまでよりも吸着材を長持ちさせることができる。また希釈の効果により、処理水の品質を安定させる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の具体的な実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の好適な実施例の油水分離装置全体の構成を示す。図1において、1は前処理槽、2は後処理槽、3は分流手段である定量チャンバー、4は電解槽、5は圧送ユニットである。実線はドレン配管、鎖線は空気配管を表しており、ドレン配管のうちP1はドレン本管、P2は還流管である。空気配管P3、P4には電磁弁E1及びE2が設けられ、図示しない制御手段により制御されている。C1ないしC3は配管内のドレン水の逆流を防止する逆止弁であり、C4及びC5はドレン管に大気圧を供給するための弁である。またD1、D2はドレン水の凍結防止用のドレンバルブである。
【0020】
本実施例では、ドレントラップから排出されたドレン水は前処理槽1で処理されたのち、還流管P2との合流部Jにおいて電解水を混合され、後処理槽2に導入される。後処理槽2の処理水の一部が定量チャンバー3で分流されて電解水の作成に使用され、ドレン本管P1と合流する。ドレン本管P1において合流部Jの前後には逆止弁C2、C3が配設され、還流管P2の作用によりドレン水が逆流するのを防ぐ。
【0021】
本実施例の各部を詳細に説明すると、前処理槽1は本実施例では吸着処理槽であり、コンプレッサからドレン水と共に排出される圧縮空気を大気中に放出し、ドレン水に元々粗大な油粒子として含まれる油分を比較的孔径の大きい吸着材に吸着させて処理する機能を有する。後処理槽2は円筒状の吸着槽の下部に入口が、上部に出口が設けられてドレンが下から上へ流通する。その中にドレンの通過できる開口を適当な位置に設けた多数の仕切体が設けられ、比較的孔径の小さい油吸着材が充填されている。
【0022】
後処理槽2の出口配管は分流手段である定量チャンバー3において分岐しており、一方は処理水出口へ、他方は逆止弁C1を経て還流管P2へそれぞれ接続されている。後処理槽2の出口からは入口に流入したドレン水と同量の処理水が排出され、このうち定量チャンバー3に貯溜されない分が、処理水出口から系外に排出される。定量チャンバー3における分流率は1/2となっている。この割合が大きいほど希釈効果が高くなるけれどもドレン処理量は減少する。なお定量チャンバー3には品質管理用のサンプリングバルブが設けられることもある。
【0023】
本実施例の電解槽4は、電極を兼ねる略円筒形の外筒と内筒の二重構造の容器からなり、処理水出入口が底部に設けられ、分流した処理水の圧力により容器内に処理水が出入りするようになっている。底部から流入した処理水に電極から金属イオンが供給され、電解質の豊富な状態となる。圧送ユニット5は上部に入口、下部に出口を有する略円筒形の容器で、内部にドレン液面の上昇を検出して図示しない制御手段に出力するレベルスイッチが収容されている。電解槽4と圧送ユニット5の容積はほぼ等しくなっている。
【0024】
本実施例では、電解槽4の上部には配管P3が接続され、電磁弁E1を経て圧縮空気配管に連通している。電磁弁E1は図示しない制御手段の制御により配管P3の接続先を圧縮空気源と大気との間で切換える。また電解槽4の電極への通電を電磁弁E1に連動させてもよい。また電解槽4と圧送ユニット5の間において還流管P2から配管P4が延び電磁弁E2に通じている。電磁弁E2は制御手段の制御により配管P4を大気開放しまたは閉鎖する。還流管P2の終端は合流部Jにおいてドレン配管P1と合流している。
【0025】
この装置を作動させると、通常は電磁弁E1、E2が大気側に接続されて大気圧が供給されているため、水頭圧によって、定量チャンバー3から処理水のおよそ半分が電解槽4に流入し、また合流部Jから前処理槽1で処理されたドレン水の一部が圧送ユニット5に流入する。そして定量チャンバー3、電解槽4、圧送ユニット5が徐々に満たされ、その間に電解槽4の電極から電解質が供給される
【0026】
圧送ユニット5の水位が所定の上限レベルに達すると、前記制御手段が電磁弁E1を圧縮空気供給位置、E2を閉鎖位置に切換える。すると電解槽4の上部に圧縮空気が供給され、内部の電解処理水が下方の出入口から排出され、逆止弁C1の作用により還流管P2内を圧送ユニット5側へ送られる。電解水は圧送ユニット5内でドレン水と混合しながら合流部Jを経て、逆止弁C2及びC3の作用により後処理槽2に向けて供給される。圧送ユニット5内の水位が低下すると、内部のレベルスイッチが作動し、制御手段が電磁弁E1、E2を大気供給位置に戻すので、装置は通常の状態に戻り、処理水およびドレン水が再び還流管P2に流入する
【0027】
このように電解処理水が圧送ユニット5内でドレン水と混合され、合流部Jからドレン本管P1に戻されるので、後処理の前のドレン中の油分の凝集作用が促進され、処理水の一部を還流させていても一定水質までの処理時間は少なくてすむ。
【0028】
本実施例では前処理槽1は吸着処理槽であり、還流管との合流部Jは前処理槽1の下流側に設けたが、合流部Jを前処理槽1の入口側に設ければ前処理槽1が浮上式であっても充分な粗処理をすることができる。前処理槽1を浮上式とすることにより、吸着式の場合の吸着材のコストが不要になるという利点がある。また、後処理槽2も浮上式とすることが可能である。従って本発明は前処理槽1、後処理槽2の種類に拘わらず適用できる。
【0029】
本発明の浄化処理促進方法は、コンプレッサドレン水の処理に限らず、同様の構成により、機械製造における切削・塗装部の洗浄など産業用洗浄液の浄化処理促進にも利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明ではドレン水等の処理において電解水を混合して吸着材の寿命を延ばし、また安価に安定した電解析出効果を維持することができる。また浮上式処理槽を効率的に用いて吸着材の使用量を減らすことができる。さらにドレン水を希釈することにより、処理性能の向上を図ることも可能である。従って産業上多大な利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明を使用した油水分離装置の概略図である。
【符号の説明】
【0032】
1 前処理槽
2 後処理槽
3 定量チャンバー
4 電解槽
5 圧送ユニット
P1 ドレン配管
P2 還流管
P3、P4 空気配管
J 合流部
C1〜C3 逆止弁
D1、D2 ドレンバルブ
E1、E2 電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着処理槽にドレン水を通す工程と、処理されたドレン水の一部を分流させて電解槽に導入し、電解質を供給する工程と、電解処理された処理水をドレン配管の前記処理槽の上流側に混入させる工程を含むコンプレッサドレン水の油分凝集促進方法。
【請求項2】
ドレン本管に少なくとも1個の吸着処理槽を有するドレン水処理装置において、前記吸着処理槽の下流側に処理水の一定割合を分流させる手段と、分流させた処理水を前記吸着処理槽の上流側に混入させる還流管を設け、該還流管又はその支管に、金属イオンを供給可能な電極を有する電解槽と、前記電解槽内のドレン水位に応じてドレン水を一定量ずつ還流管の下流側に給送するドレン送り込み手段とを設けたことを特徴とする、油分凝集促進装置。
【請求項3】
吸着処理槽にドレン水を通す工程と、処理されたドレン水の一部を分流させて電解槽に導入し、油分を電解析出凝集させる工程と、電解処理された処理水を洗浄箇所若しくはドレン本管の前記処理槽の上流側に混入させる工程を含む産業用洗浄液の浄化処理促進方法。
【請求項4】
少なくとも1個の吸着処理槽及び前記吸着処理槽の下流側にあって処理水の一定割合を分流させる手段を有する洗浄液処理管と、前記分流手段で分流させた処理水を洗浄箇所若しくは前記吸着処理槽の上流側に混入させる還流管を設け、該還流管又はその支管に、金属イオンを供給可能な電極を有する電解槽と、前記電解槽内のドレン水位に応じてドレン水を一定量ずつ還流管の下流側に給送するドレン送り込み手段とを設けたことを特徴とする産業用洗浄液の浄化処理促進システム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−26519(P2006−26519A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208426(P2004−208426)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】