説明

コンベヤベルトのローラ乗り越え抵抗力測定装置

【課題】コンベヤの設置現場での測定が可能であるとともに、複数方向に対する測定データを得ることのできるコンベヤベルトのローラ乗り越え抵抗力測定装置を提供する。
【解決手段】測定用ローラ11の支軸11bの両端と支持部材12の各支持壁12aとの間に設けた検出器13により、測定用ローラ11上を移動するコンベヤベルトAから測定用ローラ11に加わる力を検出するようにしたので、測定用ローラ11の支軸11bを介して検出した力をローラ乗り越え抵抗力として測定することができる。これにより、支持部材12に取付けられた測定用ローラ11を現場のベルトコンベヤに容易に設置することができる。また、等速自在継手11cを介して連結された各測定用ローラ11が互いに一体に回転することから、検出器13を各測定用ローラ11ごとに設ける必要がなく、装置全体がコンベヤベルトの幅方向に大型化することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種運搬物を搬送するためのコンベヤベルトのローラ乗り越え抵抗力を測定するコンベヤベルトのローラ乗り越え抵抗力測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種運搬物を搬送するコンベヤベルトをとしては、互いに搬送方向に間隔をおいて配置された複数のローラと、各ローラに支持されながら搬送方向に移動するコンベヤベルトとを備え、ローラをコンベヤベルトの幅方向複数箇所に配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、前記コンベヤベルトがローラ上を移動する際、ローラにはコンベヤベルトがローラを乗り越える際の力が抵抗となり、この抵抗力が大きいとコンベヤ駆動用モータの消費電力も大きくなる。また、この抵抗力はコンベヤベルトの構造や物性により変わるため、ローラ乗り越え抵抗力を測定することは、駆動モータの消費電力の少ないコンベヤベルトを開発する上で有効である。
【0004】
そこで、例えば図5に示すように、一対のドラム1に巻き掛けられたコンベヤベルト2の内側の面に測定用ローラ3を配置し、測定用ローラ3を配置した部分のコンベヤベルト2に上方から加圧ローラ4を押し付けて荷重Fを付与し、コンベヤベルト2から測定用ローラ3に加わるコンベヤベルト2の長手方向(水平方向)の力を測定するようにした測定装置がある。この場合、測定用ローラ3はコンベヤベルト2の長手方向に揺動可能な支持部材5によって支持されるとともに、ロードセル6に連結された一対の連結部材7によってコンベヤの移動方向への移動を拘束されており、測定用ローラに加わるコンベヤベルト2の移動方向の力を各ロードセル6によって検出するようになっている。
【特許文献1】特開2001−253519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記ローラ乗り越え抵抗力は、採石現場等に設置されたコンベヤベルトを稼働させながら測定することにより、実際の使用状態に近い条件での測定が可能になるが、前述の測定装置は、サンプル用のコンベヤベルト2を巻き掛けるドラム1など、実際のベルトコンベヤでは用いられない多くの構成を備えているため、装置が大型であるとともに、実験室に設置してサンプル用のコンベヤベルト2の測定を行うものであるため、現場に設置されたコンベヤベルトの測定を行うことができなかった。また、前記測定装置では、コンベヤベルト2の移動方向に揺動可能な測定用ローラ3によって水平方向の力しか測定できないため、複数方向に対する測定データが得られないという問題点もあった。
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コンベヤの設置現場での測定が可能であるとともに、複数方向に対する測定データを得ることのできるコンベヤベルトのローラ乗り越え抵抗力測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記目的を達成するために、コンベヤベルトの幅方向の複数箇所に配置される測定用ローラと、測定用ローラを回転自在に支持する支持部材とを備え、測定用ローラ上を移動するコンベヤベルトから測定用ローラに加わる力をローラ乗り越え抵抗力として測定するコンベヤベルトのローラ乗り越え抵抗力測定装置において、前記測定用ローラの支軸と支持部材との間に設けられ、少なくともコンベヤベルトの長手方向の力とコンベヤベルトの厚さ方向の力を検出する検出器を備え、各測定用ローラの支軸を互いに等速自在継手を介して連結するとともに、何れか一つの測定用ローラの支軸と支持部材との間に検出器を設けている。
【0008】
これにより、測定用ローラの支軸と支持部材との間に設けた検出器により、測定用ローラ上を移動するコンベヤベルトから測定用ローラに加わる力が検出されることから、測定用ローラの支軸を介して検出した力をローラ乗り越え抵抗力として測定することが可能となり、現場のベルトコンベヤに容易に設置することができる。この場合、少なくともコンベヤベルトの長手方向の力とコンベヤベルトの厚さ方向の力を検出することができるので、複数方向に対する測定データを得ることができる。また、等速自在継手を介して連結された複数の測定用ローラが互いに一体に回転することから、検出器を各測定用ローラごとに設ける必要がなく、装置全体がコンベヤベルトの幅方向に大型化することがない。この場合、各測定用ローラが互いに一体に回転することにより、各測定用ローラの全体に加わる力を複合して検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測定用ローラの支軸を介して検出した力をローラ乗り越え抵抗力として測定することができるので、現場のベルトコンベヤに容易に設置することができる。これにより、ベルトコンベヤの設置現場での測定が可能になり、実際の使用状態に近い条件での測定が可能になる。この場合、複数方向に対する測定データを得ることができるので、ローラ乗り越え抵抗力をより的確に測定することができる。また、装置全体がコンベヤベルトの幅方向に大型化することがないので、既設のベルトコンベヤに設置する場合に極めて有利である。この場合、各測定用ローラの全体に加わる力を複合して検出することができるので、実際の使用条件における測定をより的確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1乃至図4は本発明の一実施形態を示すもので、図1はローラ乗り越え抵抗力測定装置の斜視図、図2はその正面断面図、図3はベルトコンベヤの部分平面図、図4はその部分側面図である。
【0011】
同図に示すローラ乗り越え抵抗力測定装置10は、コンベヤベルトAの幅方向に並設された3つの測定用ローラ11と、各測定用ローラ11を回転自在に支持する支持部材12と、測定用ローラ11上を移動するコンベヤベルトAから測定用ローラ11に加わる力を検出する検出器13とを備えている。
【0012】
各測定用ローラ11は、円筒状のローラ本体11aと、ローラ本体11aに固定された支軸11bとからなり、互いに支軸11b同士を周知の等速自在継手11cを介して直列に連結されている。
【0013】
支持部材12は、長手方向両端にそれぞれ側壁12aを立設した板状の部材からなり、各側壁12aの間には各測定用ローラ11が軸方向に並ぶように配置されている。支持部材12には各測定用ローラ11の軸方向両側の支軸11bを回動自在に支持する複数の支持板12bが設けられ、各支持板12bはそれぞれスライダ12cを介して支持部材12にコンベヤベルトAの幅方向に移動自在に設けられている。この場合、スライダ12cはコンベヤベルトAの長手方向の移動を規制されている。また、支持部材12には、コンベヤベルトAの幅方向両側の測定用ローラ11がコンベヤベルトAの幅方向外側に向かって上り傾斜をなすように設けられている。
【0014】
検出器13は、直交座標系(X,Y,Z)の軸方向にそれぞれ加わる力及びこれらの軸回りにそれぞれ働くトルクの6分力を検出する周知の回転型分力検出器からなり、コンベヤベルトAの幅方向一端側に位置する測定用ローラ11の支軸11bの一端と支持部材12の一方の側壁12aとの間に配置されている。即ち、検出器13は、軸方向一端を支持壁12aに固定され、その軸方向他端には支軸11bが固定されている。
【0015】
以上のように構成されたローラ乗り越え抵抗力測定装置10は、図3に示すようにコンベヤベルトAを備えたベルトコンベヤ20に設けられる。ベルトコンベヤ20にはコンベヤベルトAの幅方向3箇所に配置されたガイドローラ21が設けられるとともに、各ガイドローラ21はコンベヤベルトAの幅方向に亘って延びる支持部材22により回転自在に支持され、コンベヤベルトAの幅方向両端側のガイドローラ21はそれぞれコンベヤベルトAの幅方向外側に向かって上り傾斜をなすように設けられている。これらガイドローラ21はコンベヤベルトAの長手方向所定間隔ごとに設けられており、測定装置10はコンベヤベルトAの長手方向に隣り合うガイドローラ21の間に設けられている。この場合、等速自在継手11cを介して連結された各測定用ローラ11が互いに一体に回転することから、検出器13を各測定用ローラ11ごとに設ける必要がなく、装置全体がコンベヤベルトAの幅方向に大型化することがない。
【0016】
また、測定装置10により、コンベヤベルトAのローラ乗り越え抵抗力を測定する場合、図4に示すように測定用ローラ11上を移動するコンベヤベルトAから測定用ローラ11に力が加わると、X軸方向(コンベヤベルトAの長手方向)、Y軸方向(コンベヤベルトAの厚さ方向)、Z軸方向(コンベヤベルトAの幅方向)、X,Y,Z軸方向回りにそれぞれ働くトルクの6分力がローラ乗り越え抵抗力として測定される。
【0017】
このように、本実施形態のローラ乗り越え抵抗力測定装置10によれば、測定用ローラ11の支軸11bと支持部材12の側壁12aとの間に設けた検出器13により、測定用ローラ11上を移動するコンベヤベルトAから測定用ローラ11に加わる力を検出するようにしたので、測定用ローラ11の支軸11bを介して検出した力をローラ乗り越え抵抗力として測定することができる。これにより、支持部材12に取付けられた測定用ローラ11を現場のベルトコンベヤ20に容易に設置することができるので、ベルトコンベヤ20の設置現場での測定が可能になり、実際の使用状態に近い条件での測定が可能になる。
【0018】
この場合、検出器13として回転型分力検出器を用いたので、X軸方向(コンベヤベルトAの長手方向)、Y軸方向(コンベヤベルトAの厚さ方向)、Z軸方向(コンベヤベルトAの幅方向)、X,Y,Z軸方向回りにそれぞれ働くトルクの6分力をローラ乗り越え抵抗力として測定することができ、複数方向に対する測定データを得ることができる。
【0019】
また、各測定用ローラ11を互いに等速自在継手11cを介して連結し、コンベヤベルトAの幅方向一端側の測定用ローラ11と支持部材12との間に検出器13を設けたので、コンベヤベルトAの幅方向両側の測定用ローラ11を傾斜させる場合でも各測定用ローラ11を互いに一体に回転させることができるとともに、検出器13を各測定用ローラ11ごとに設ける必要がないので、装置全体がコンベヤベルトAの幅方向に大型化することがなく、既設のベルトコンベヤ20に設置する場合に極めて有利である。この場合、各測定用ローラ11が互いに一体に回転することにより、各測定用ローラ11の全体に加わる力を複合して検出することができるので、実際の使用条件における測定をより的確に行うことができる。
【0020】
更に、各測定用ローラ11をコンベヤベルトAの幅方向に移動自在に設けたので、各測定用ローラ11が互いに連結されていてもコンベヤベルトAの幅方向の力を確実に検出することができ、複数方向に対する測定データを得る場合に極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態を示すローラ乗り越え抵抗力測定装置の斜視図
【図2】ローラ乗り越え抵抗力測定装置の正面断面図
【図3】ベルトコンベヤの部分平面図
【図4】ベルトコンベヤの部分側面図
【図5】従来例を示すローラ乗り越え抵抗力測定装置の斜視図
【符号の説明】
【0022】
10…ローラ乗り越え抵抗力測定装置、11…測定用ローラ、11b…支軸、11c…等速自在継手、12…支持部材、13…検出器、A…コンベヤベルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤベルトの幅方向の複数箇所に配置される測定用ローラと、測定用ローラを回転自在に支持する支持部材とを備え、測定用ローラ上を移動するコンベヤベルトから測定用ローラに加わる力をローラ乗り越え抵抗力として測定するコンベヤベルトのローラ乗り越え抵抗力測定装置において、
前記測定用ローラの支軸と支持部材との間に設けられ、少なくともコンベヤベルトの長手方向の力とコンベヤベルトの厚さ方向の力を検出する検出器を備え、
各測定用ローラの支軸を互いに等速自在継手を介して連結するとともに、何れか一つの測定用ローラの支軸と支持部材との間に検出器を設けた
ことを特徴とするコンベヤベルトのローラ乗り越え抵抗力測定装置。
【請求項2】
前記各測定用ローラをコンベヤベルトの幅方向に移動自在に設けた
ことを特徴とする請求項1記載のコンベヤベルトのローラ乗り越え抵抗力測定装置。
【請求項3】
前記検出器として、直交座標系(X,Y,Z)の軸方向にそれぞれ加わる力及びこれらの軸回りにそれぞれ働くトルクの6分力を検出する回転型分力検出器を用いた
ことを特徴とする請求項1または2記載のコンベヤベルトのローラ乗り越え抵抗力測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−273719(P2008−273719A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121734(P2007−121734)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】