コーティングされたステント―バルーンアセンブリの製造方法
カテーテルアセンブリのバルーン上にステントを取り付けまたは圧着した後に、ステントをコーティングする方法が開示されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントをコーティングする方法に関する。特に、カテーテルアセンブリのバルーン上に取り付けられたステントをコーティングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、薬剤を送付できるよう改良されている。薬剤や治療剤を含浸させた高分子担体が、ステント上にコーティングされる。コーティングの従来の方法は、例えば、溶媒と、溶媒中で溶解したポリマーと、それらの混合物中で分散された治療薬剤とを含む配合物中に、ステントを浸すかまたは当該配合物をステントに吹き付けるかによって、当該配合物を塗布する方法である。その溶媒は蒸発してもよく、ステント支柱の表面上には、ポリマー中に浸透した、ポリマーや治療薬剤のコーティングが残される。ステント上に当該配合物を浸し塗りしたり吹き付けたりすると、ステントの全表面、すなわち内腔(内側)と外面(外側)の両方の表面、がコーティングで完全にカバーされてもよい。しかし、ステントの内腔表面をコーティングすると、ステントの送付能力およびコーティングの機械的な完全性に悪影響をもたらす。さらに、治療上の観点からは、ステントの内側の表面上の治療薬剤は、血流によって洗い流され、通常わずかな治療上の影響をもたらしうる。一方、ステントの外側の表面上の薬剤は、内腔とは対照的に、細胞組織へと直接送付される。ステントをコーティングするポリマーはまた、身体からの反応を引き起こす。異物の量を減少させることは、益あるのみである。
【0003】
簡潔に言うと、カテーテルアセンブリの膨張可能なバルーンが、コーティングされたステントの中空の穴の中に挿入される。ステントは、圧着プロセスによってしっかりとバルーン上に取り付けられる。バルーンが膨張してステントが体内に埋め込まれ、バルーンは収縮し、そしてステントの内腔から引っ張り出される。ステントの内側のポリマーコーティングは、ステントと、ステントが送付のために圧着されるカテーテルアセンブリのバルーンとの間の摩擦係数を増加させうる。さらに、「粘り気のある」または「粘着性のある」粘度を有するポリマーもある。ポリマー材の摩擦係数が増加するか、またはポリマー材がカテーテルバルーンに粘着するかした場合、バルーンが収縮した後ステントがうまく離れない可能性がある。ステントコーティングがバルーンに粘着した場合、ステントの配置の後に続くバルーンの収縮と引き抜きプロセスの間に、コーティングまたはその一部が、ステントから剥がれ落とされることもありうる。粘着性のあるポリマーステントは、配置後にバルーンによる広範な剪断損傷を受けることがあり、その結果、血栓形成性のステント表面やまた塞栓性の細片も生じうる。バルーンが拡張されると、ステントコーティングは伸張できるが、そのような剪断応力の結果として剥離することもある。
【0004】
従って、ステントの内側表面のコーティングを除去すると有益である。ステントの内側表面上のコーティングを除去するために、圧着後コーティングプロセスが提案されている。簡潔に言うと、バルーン上にステントを取り付けた後、ステントはコーティングの配合物の中に浸されるかまたは配合物がステント上に吹き付けられてもよい。ステントの内側表面上にはコーティングがされないにしても、ステントの支柱の間のバルーンの表面上にもまたコーティングは付着している。この種のコーティングでは、バルーンに対するステントの粘着の問題や、バルーンの拡張、収縮と引き抜きに際してのコーティングの不具合の形成の問題はなくならず、実際上、そのような問題はさらに悪化することもある。
【0005】
バルーン上にステントを取り付けるに先立って、ステントをコーティングすると、ステントの外側表面上のコーティングもまた損傷されうる。柔らかいポリマーコーティングに対し様々な方向に圧力をかけすぎることによって、ステント圧着用具によりステントのコーティングに不具合が生じうる。より硬質または脆性のポリマーは圧着圧力の下でコーティングの不具合や亀裂を生じうる。ステントの圧着は、ステントの保持力がそれに依存しているという点で、製造段階において決定的に重要な工程である。ステントの圧着は、ステントを送付カテーテルまたは送付バルーンに取り付けて、医師が治療部位にステントを送付しようと望むまでステントがカテーテルまたはバルーンに取り付けられたままでいるようにする動作である。現在のステント圧着技術は高度である。少し前は、あるプロセスではロール圧着機が使用された。当該圧着機では、その固有の剪断作用のせいで、多くのポリマーコーティングが損傷された。次に登場したのは、基本的にはドリルチャックである部分の中に取り付けられた金属の掴み具を使用したコレット圧着機である。その掴み具は径方向にのみ動く。この動きはコーティングを剪断するとは考えられていなかった、というのは、それはステント表面に対して法線力をかけるに過ぎないからである。しかしステントの形状によっては、圧着の間にステント支柱がはさみ状になるものもある。そのような形状では、圧着機が法線力しかかけていないとしても、ステント支柱のはさみ状の動作により、剪断力がかかる。最終的に、絞りまたはスライド楔型の着機により、主には法線力がかけられるものの若干の接線方向の剪断力がかかることになる。
【0006】
ロール圧着機を使用するには、まずステントは、カテーテルのバルーン部分の上にゆるくスライドされる。このアセンブリは、ロール圧着機のプレートの間に配置される。自動式のロール圧着機では、これらのプレートが一体となって、規定の量の力がかけられる。その後、これらのプレートは、カテーテルに垂直な方向に、設定された距離を前後に動く。カテーテルはこの動きの下で前後に回転し、そしてステントの直径は減少する。このプロセスは2以上の工程に分解することができ、それぞれで独自のレベルの力と、並進運動の距離と、サイクル数とを有することができる。薬剤送付コーティングを有するステントについては、当該プロセスでは、カテーテルまたはカテーテル壁に対して垂直な方向に、ステントに相当大きな剪断力がかけられる。さらに、ステントが圧着されるにつれ、ステント表面と圧着プレートとの間に相対運動が加わる。結果として、当該圧着プロセスはステントコーティングに損傷を加える傾向がある。
【0007】
コレット圧着機は概念的には同等にシンプルである。標準的なドリルチャックコレットには、いくつかのパイ片の形状をした掴み具が備わっている。これらの掴み具は、外側の輪が回転されると、径方向に動く。当該圧着機を使用するには、ステントはカテーテルのバルーン部分の上にゆるく配置され、掴み具の間の中心スペースに挿入される。外側の輪を回転させると、掴み具は内側に向かって動かされる。当該装置の問題点は、圧着の終点の決定または設定にある。ある方式では、掴み具が完全に閉まると、それらは接して、既知の直径の中央の穴が残るように設計される。当該アプローチによると、コレットを回転させてコレット止めに至らしめることで、ステントが既知の外径にまで圧着される。これは理想的にも見えるが、問題もある。ステントの支柱は、その厚さに許容誤差を有する。さらに、不従順なバルーンを折り畳むプロセスは、必ずしも再現可能ではない。その結果として、コレット圧着機は、それぞれのステントに異なる量の力をかけて、最終的に同一の寸法にする。この力や最終的な圧着後の直径が注意深く設定されない限り、ステントやバルーンの寸法のバラツキによって、ステントコーティングまたはバルーンに損傷が引き起こされうる。
【0008】
さらに、コレットの掴み具は径方向に動くが、掴み具が圧着するに従い、それらは互いに近づく。この作用は、支柱のはさみ状の動きと共に、コーティングに接線方向の剪断力をかけ、これもまた損傷を引き起こしうる。最後に、コレット圧着機の実際の接触表面は、掴み具の先端である。これらの表面はかなり微細で、圧着の終点において円筒面を形成するにすぎない。その前段階では、ステント表面にかかる負荷は途切れている。
【0009】
楔をスライドさせる型、または絞り型の圧着機においては、隣接したパイ片形状部は内側にねじれて動き、それはカメラの絞りの箔によく似ている。この圧着機は異なった2種類の終点を有するように設計されてもよい。それは最後にある一つの直径で終わるようにしてもよいし、固定された力はかけるが最後の直径は変動するようにしてもよい。コレット圧着機に関する上記の議論の通り、固定されたレベルの力を加えることには利点がある、というのは、支柱やバルーンの寸法がばらついても圧着力は変化しないからである。スライドする楔によりまず法線力がかかるが、それはステントコーティングに対して最も損傷が少ない。楔が互いにスライドすると、いくらかの接線力がかかる。しかし、剪断損傷は、コレット圧着機によるそれと比較して同等かまたは少ない。最後に、楔をスライドさせる型の圧着機だと、ステントの内側表面をほぼ円筒状にすることができ、それは圧着の際も同様である。これは、ステントの外側表面全体に対して圧着負荷が分配されていることを意味する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在の全てのステント圧着方法は純金属製のステントのために生み出された。ステントの金属、例えばステンレス鋼、には耐性があり、酷使されてもよい。圧着が強すぎる場合、通常は、ステントではなく、下部のバルーンが損傷される。しかし、ポリマーコーティングには別の課題がある。
【0011】
本発明の方法では、バルーンにステントを圧着または取り付けた後に、ステントの外側表面をコーティングすることによって、解決策が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
カテーテルアセンブリのバルーン上に
ステントを取り付ける工程と、
その後、前記ステント上にステントコーティングを形成する工程であって、ステントが覆うようにとりつけられバルーン表面部にはいかなるステントコーティングも存在しない工程を備える、 コーティングされたステント―バルーンアセンブリの製造方法が提供される。
【0013】
カテーテルアセンブリのバルーン上に犠牲層を形成する工程と、
その後、ャップによって分けられた支柱を含むステントをバルーン上に取り付ける工程と、
その後、前記ステント上にステントコーティングを形成する工程と、
その後、前記犠牲層を除去する工程と、を備える、
コーティングされたステント―バルーンアセンブリの製造方法が提供される。
【0014】
ギャップによって分けられた支柱を含むステントをバルーン上に取り付ける工程と、
その後、前記ステントの支柱の間の前記ギャップの領域において、前記バルーン上に、犠牲層を形成する工程と、
その後、前記ステント上にコーティングを形成する工程と、
その後、犠牲層を除去する工程であって、前記コーティング材が前記ステントの外側表面上に残る工程と、
を備える、コーティングされたステント―バルーンアセンブリの製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は従来のステント10を示す図である。本発明の実施の形態は図1に示されたステントパターンに限定されるべきではない、というのは、ここで説明される方法によって他のタイプのステントもコーティングされてもよいからである。ステント10は、足場状の網状組織を有するように示されており、この網状組織は、支柱12の間にギャップ16があるように、要素14によって接続された支柱12を含んでいる。議論を簡単にするため、要素14も支柱とみなされてよい。ステントはバルーン拡張可能または自己拡張可能であってよく、単に心臓血管への適用だけではなく、多様な医学上の適用に使用されてもよい。ステントは、金属材、あるいは例えば本質的に生体吸収可能、分解可能又は浸食可能であるといったポリマー材、または金属材とポリマーとの組み合わせによって作られてよい。
【0016】
図2は、カテーテルアセンブリ20のバルーン18に取り付けられたステント10を示している。図2は、図1で示したものとは異なるパターンを有するステントを示している。
【0017】
図3A―3Eを参照すると、本発明の一実施の形態のステントをコーティングする方法が示されている。図3Aは、外面22を有するバルーン18の部分断面図である。外面22上、またはその上方に犠牲コーティング層24が形成されている。「〜上」という語は、広い意味で使用されることとし、例えば、ステントまたはバルーン上の層とは、特に言及のない限り、当該層とステント、または当該層とバルーンとの間の表面接触を意味するわけではなく、それらの中間にある1つ以上の層も含まれる。犠牲コーティング層24が形成された後、一実施の形態においては、いかなるコーティングも備えていないステントが、バルーン18上に取り付け、すなわち圧着されうる(例えば、アリゾナ州フラッグスタッフのマシーン・ソルーション社から入手可能なSC700MSIステント圧着装置を使用することによって)。図3Cは、ギャップ16を有するステントの支柱12を示している。ステントプレス機を使用してさらにステントを押し付けて、バルーン18との係合をより強固にしてもよい(例えば、マシーン・ソルーション社から入手可能なFFS700MSIバルーン形成/折り畳み/設置装置を使用することによって)。いくつかの実施の形態では、ステントはコーティング層を含んでいてもよい。しかし、当該コーティング層は圧着プロセスの間に損傷を受けうる。当該損傷はその後のコーティングの形成により治癒されうる。図3Dでは、支柱12および犠牲コーティング層24の上方に均一に形成されている、ステントコーティング26が示されている。いくつかの実施の形態では、より選択的なコーティングプロセスが選ばれ、ギャップ16の中に形成されるコーティング物質の量が最小化される。選択的コーティングプロセス、例えばインクジェットタイプまたはマイクロインジェクターを使用するプロセス、によって支柱12の外側表面に形成されるコーティングの量を制限することができる。ステントコーティング材の形成には、単層または多層の形成が含まれることを意図しており、多層の場合には、それぞれの層が同一であってもよく、またはそれぞれの層には異なった成分および材料が含まれてもよい。例えば、治療薬剤を含まない層または異なるポリマー材から作られたいくつかの層があってもよい。ステントコーティング材の形成に先立って、例えば空気ブラストといった、クリーニングが支柱12の表面に対して行われてもよく、あらゆる残留物や混入物も落とされる。いくつかの実施の形態では、当該洗浄によって犠牲層24は除去されないことという警告付きのクリーニング方法として、洗浄が採用される。当該洗浄は、犠牲層24に対して非溶媒であってもよい。図3Eに示されているように、犠牲層24は除去され、その結果、ギャップ領域16におけるコーティング26が除去される。バルーン18の表面22には、少なくとも支柱12の間のギャップ領域16においては、いかなるコーティング層26も存在しない。いくつかの実施の形態では、支柱12に充分な圧力が圧着によってかけられて、バルーンの外側表面22に対して支柱12の内側表面を押し付けるようになっている。その結果として、犠牲層24は完全にまたは実質的に支柱12の下から除去される。いくつかの実施の形態では、犠牲層24は支柱12の下に残っていてもよく、最終的には体内で押し流される。これは、犠牲層24が生体親和的な材料、例えば毒性がないまたは非炎症性の材料から作られ、身体によって容易に処理され除去されうる場合に適用される。他の実施の形態では、犠牲層24が生体活性的であるか、または生体活性的な材料を含み、患者に対して治療上、予防上、および/または改善上の効果をもたらすようになっていてもよい。いったんステントが放されると、当該材料もまた体内組織内に局所的に放たれうる。別の実施の形態では、犠牲層24の除去プロセスの度合いによっては、支柱12の下部の層24もまた除去され得る。その後ステントに圧力がかけられ、バルーン18との係合がより強固になる。
【0018】
別の実施の形態によれば、図4A―4Eを参照すると、ステントはまずバルーン18上に取り付けられ、すなわち圧着され、そしてオプションとして上述のとおりさらに押し付けられる。ステントにはオプションとしてその上にコーティングが施されてもよいが、コーティングはない方が好ましい。図4Bはバルーン18上の支柱12を示している。支柱12の外側表面が層24に覆われないように、バルーン18の表面22上のギャップ16の中に、犠牲層24は選択的に形成される。いくつかの実施の形態では、使用されるコーティング技術によっては支柱12もまた覆われることもあるし、または支柱12上に偶発的に材料が形成されることもある。そのような実施の形態では、支柱12の外側表面上の犠牲層24を除去する工程を付け加える必要がある。これは例えばガス(例えば、強制空気)の吹き付けまたはこすり取りによってなされる。その後、ステントコーティング26はステント―バルーンアセンブリ上に形成される。犠牲層24を除去すると、ギャップ16中のステントコーティング26は容易に除去されるが、支柱12上のステントコーティング26は除去されない。バルーン18の表面22には、ギャップ領域16中の支柱12間のステントコーティング材料が存在しない。
【0019】
ステントコーティング26が形成されることによって、犠牲層24が除去または溶解されてはならない。犠牲層24の内の一部は偶発的に除去されうるが、充分な量の層24が残されて、ステントコーティング26の不要な部分を適切に除去できるようにしておくべきである。例えば、ステント用コーティング材に溶媒が含まれる場合、当該溶媒は犠牲層24に対しては非溶媒として作用すべきである。さらに、犠牲層24を除去するのに流体が使用される場合、当該流体はコーティング層26に対しては非溶媒であるべきで、ステントの当該コーティング層26を除去したり、これに悪影響を及ぼさないようにしなければならない。
【0020】
犠牲層24の保持を助けるために、バルーンの表面に粘着剤が形成されてもよいし、または犠牲層材に粘着剤が混合されてもよい。犠牲層24が溶液または懸濁液とは対照的に乾燥粉末形態で形成されている場合、粘着剤は特に有用である。適切な粘着剤の代表例としては、フィブリン接着剤、シアノアクリレート、フォーカルシール(登録商標)(ポリエチレングリコールベースの合成ヒドロゲル)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン―レゾルシン―ホルムアルデヒド接着剤、シルクエラスチン、リシルペルオキシダーゼなどのin situ架橋剤が加わったトロポエラスチン、および水溶性キトサンがある。
【0021】
犠牲層24は、コーティング材を除去または分解することのできるいかなる物質から作られてもよいし、またはそれが含まれていてもよい。除去は、バルク形態であってもよい。「バルク形態」とは、コーティング材の個々の粒子とは対照的な、コーティング材の断片のことを言う。材料の代表例としては、スクロース(キャラメルを含む)、D型グルコース、グルコースおよびヘパリンなどのオリゴ糖および多糖類;塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸銅、重炭酸ナトリウムおよびヨウ素塩などのイオン性塩;グリシンなどのアミノ酸;およびヒアルロン酸、ポリ(エチレングリコール)または以下に記載されているポリマーなどのポリマーがある。の形態では、当該物質は、以下に記載された物質を含む、活性物質、薬剤または二薬効結合薬剤(コドラッグ)であってもよい。いくつかの実施の形態では当該物質は、低分子量の材料からできており、例えば身体によって容易に除去および排出される材料、または60ダルトンを下回る分子量を有する材料である。また別の実施の形態では、当該物質はイオン分子を含む。
【0022】
本発明のある実施の形態では、犠牲層24は親水性の材料を含んでいてもよいし、またはそれからできていてもよい。ある物質は、当該物質のヒルデブラント溶解度パラメータの値によって「親水性」または「疎水性」に分類される。「ヒルデブラント溶解度パラメータ」という用語は、物質の凝集エネルギー密度を示すパラメータδとして定義される。当該パラメータδは以下のとおりに決定される:
δ=(ΔE/V)1/2
ただし、δは溶解度パラメータ、(cal/cm3)1/2;ΔEは気化エネルギー、cal/mole;Vはモル容積、cm3/モルである。「親水性」とは、ヒルデブラント溶解度パラメータが8.5、9、9.5、10、10.5、11または11.5(cal/cm3)1/2以上である物質のことを言う。
【0023】
また別の実施の形態では、犠牲層24は流体を吸収することのできる材料からできていてもよいし、それを含んでいてもよい。当該物質はヒドロゲルでもよい。「ヒドロゲル」とは、共有結合、イオン結合または水素結合で架橋されることにより水分子を吸収、封入してゲルを形成し得る、3次元の開放格子構造をとるポリマーである。ヒドロゲルの代表例には、ポリ(エチレングリコール)、N―イソプロピルアクリルアミド、ポリオキシエチレン―ポリオキシプロピレンブロック共重合体、プルロニック−ポリ(アクリル酸)グラフト共重合体、プルロニック−キトサングラフト化共重合体、エラスチン模倣ポリペプチド、および前記の組み合わせおよび混合物が含まれる。
【0024】
犠牲層24および/またはステントコーティング層26は、吹きつけ(例えば、ロードアイランド州イーストプロビデンスのEFD社製のVALVEMATE7040制御システムを備えるEFD780S吹き付け装置)、浸し塗り、はけ塗り、マイクロインジェクション等によって形成される。ステントのパターンに従う、または支柱12の外側表面ではなくステント支柱12の間のギャップ16内に犠牲層24を形成するよう、プログラムされたマイクロインジェクションディスペンサのように、層形成は自動化されることもできる。自動化システムの一つは、米国特許第6,395,326号で開示されている。マスキング技術も、当業者に知られているように、ステントまたはバルーン18の選択的コーティングに使用されてもよい。犠牲層24は乾燥粉末形態において形成されてもよい。乾燥粉末とは、約10%より少ない、5%より少ない、1%より少ない、0.1%より少ない、または0%の残余流体(例えば溶媒または水)を包含する粒子の集合体のことを言う。また、犠牲層24はウエット、またはセミウエットコーティングとしても形成されてもよい。例えば、層24の材料は、粒子として液状媒体中で混合または分散されてもよいし、または液体キャリア中で部分的または完全に溶解されてもよい。当該材料が層形成のために液体と混合された場合、当該液体はコーティング材料の付与の前に蒸発してもよい。しかし、いくつかの実施の形態では、コーティング材料をウエットな、またはセミウエットな犠牲層24に形成した方が利点があるかもしれない。これによって、犠牲層24によってより効果的に、コーティング層26の不用な部分を除去することができる。ウエットな、またはセミウエットなコーティングは、0.1%、1%、5%、または10%またはそれよりも多い水または溶媒を含んでいる。いくつかの実施の形態では、コーティング層26が乾燥した犠牲層24に形成されることが好ましい。
【0025】
いくつかの実施の形態では、犠牲層24は除去用流体を付与することにより除去されることができる。当該付与は、浸し塗りまたは吹き付けによりなされることができる。上述の通り、当該流体は、ステントコーティングに対して非溶媒であるべきである。犠牲層24を除去するのに使用され得る流体の代表例としては、水;メタノール、イソプロピルアルコールおよびエタノールのような一価アルコール、二価アルコールおよび多価アルコールを含むアルコール;アセトン;超臨界二酸化炭素のような超臨界流体;および前記の混合物である。ある実施の形態では、当該流体は、超臨界二酸化炭素と、メタノール、イソプロピルアルコール、エタノールおよびアセトンのうちの1つ以上との混合物である。別の実施の形態では、当該流体は、水とアルコール(例えば80/20%(w/w)水:アルコール)の混合物である。当該除去用流体は、水または水ベースであるのが好ましい。当該流体は、犠牲層24を溶解させる、または膨張させることができるべきである。ある実施の形態では、超音波処理または他の振動タイプの処理を採用して、層24の除去を容易にしてもよい。処理後に濯ぎを行う、または、不活性ガスまたは空気を吹き付けて、残留物を除去することができる。犠牲層26と接触するステントコーティング26は、膨張力または圧力によって膜構造に中断が生じるので、機能しなくなると信じられている。流体にさらされる時間の選択は、様々な要因に左右される、例えば、温度、コーティング材の特性と種類、犠牲層の特性と種類、除去用流体の能力、望ましい除去速度、コーティングに存在する凝集力および付着力、およびその他の要因である。例えば、摂氏37度または室温の脱イオン水により除去は容易になる。流体にさらす時間は、例えば、室温温度において約1秒から約24時間の間になりうる。
【0026】
本発明の実施の形態には、除去するための他の方法もまた含まれる。例えば、レーザーして、層26を除去するために、犠牲層24を除去することができる。犠牲層24は、大量のエネルギーを吸収しおよび/または容易に分解して、コーティング層26の除去を促進するタイプであってもよい。
【0027】
いくつかの実施の形態では、犠牲層24は比較的大きい吸光度を有さなければならない。吸光度が大きいと、当該材料を早く容易に焼くことができる。吸光度kは以下のように定義される:
k={Ln(I0/If)}/h
ここでk=吸光度(cm−1)
I0=初期強度
If=最終強度
h=最終強度の場所の距離(cm)
【0028】
適切に大きい吸光度は1×104cm−1以上である。そのような材料は、レーザーを使用して犠牲層24が除去される際の溶融欠陥防止するのに特に適している。
【0029】
バルーン上に取り付けられたステントにコーティング材を付与するのは、大きな利点がある。前述の通り、従来のコーティング技術では、ステントは送付装置に取り付けられる前にポリマーでコーティングされる。従来技術で使用されたポリマーには脆いものもあるので、取り付けまたは圧着接方法の間にステントに加えられる圧力にポリマーが耐えることができない。本発明の選択的コーティング技術によって、ステントが送付装置に取り付けられた後にステントがコーティングされるようになり、それによって取り付けおよび圧着プロセスにコーティングをさらす必要性がなくなる。それゆえ、たとえ従来のプロセスにとっては脆すぎるものであっても、より多くの入手可能なポリマーの中から選択することができるようになる。
【0030】
ステントコーティング材には、流体キャリアまたは溶媒を含むまたは含まない、ポリマー(あるいは複数のポリマー)または治療薬剤(あるいは複数の薬剤)の一つ、またはその組み合わせが含まれることができる。ステントコーティング26には、純ポリマー(あるいは複数の純ポリマー)の層(あるいは複数の層)、または純薬剤(あるいは複数の薬剤)あるいは薬(あるいは複数の薬)の層(あるいは複数の層)が含まれることができる。層26には、下塗り層、薬剤貯蔵層、およびトップコート層といった複数の層が含まれることができる。
【0031】
使用されてもよいポリマーの例としては、エチレンビニルアルコール共重合体;ポリブチルメタクリレート;(エチレン/酢酸ビニル)共重合体;(フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロペン)共重合体;ポリ(ヒドロキシバレレート);ポリ(L―乳酸);ポリカプロラクトン;(ラクチド/グリコライド)共重合体;ポリ(ヒドロキシブチレート);(ヒドロキシブチレート/バレレート)共重合体;ポリジオキサノン;ポリオルトエステル;ポリ無水物;ポリ(グリコール酸);ポリ(D,L―乳酸);(グリコール酸/トリメチレンカーボネート)共重合体;ポリリン酸エステル;ポリリン酸エステルウレタン;ポリ(アミノ酸);シアノアクリレート;ポリ(トリメチレンカーボネート);ポリ(イミノカーボネート);(ポリエーテル/ポリエステル)共重合体(例えばPEO/PLA);ポリアルキレンオキサレート;ポリホスファゼン;フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、およびヒアルロン酸などの生体分子;シリコン;ポリエステル;ポリオレフィン;ポリイソブチレンとエチレン/アルファオレフィンの共重合体;アクリルポリマーおよび共重合体;ポリ塩化ビニルといったハロゲン化ビニルポリマーおよび共重合体;ポリビニルメチルエーテルといったポリビニルエーテル;ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデンといったポリハロゲン化ビニリデン;ポリアクリルニトリル;ポリビニルケトン;ポリスチレンといったポリビニル芳香族化合物;ポリビニルアセテートといったポリビニルエステル;エチレン―メチルメタクリレート共重合体、アクリルニトリル―スチレン共重合体、ABS樹脂およびエチレン―ビニルアセテート共重合体といった、ビニルモノマー同士およびオレフィンとの共重合体;66ナイロンおよびポリカプロラクタムといったポリアミド;アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエーテル;エポキシ樹脂;ポリウレタン;レーヨン;レーヨン―トリアセテート;セルロースアセテート;セルロースブチレート;セルロースアセテートブチレート;セロファン;セルロースナイトレート;セルロースプロピオネート;セルロースエーテル;およびカルボキシメチルセルロースがあり、上記に限定されない。KRATON G―1650もまた使用されてもよい。KRATONはテキサス州ヒューストンのシェルケミカル社により製造され、硬いポリスチレンの末端ブロックおよび熱可塑性の弾性ポリ(エチレン―ブチレン)の柔らかい中央ブロックからなる3ブロック共重合体である。KRATON G―1650には約30質量%のポリスチレンブロックが含まれる。
【0032】
治療薬剤または生体活性薬剤は、いかなる治療上、予防上、診断上および/または改善上の薬剤を含んでよい。当該薬剤は抗増殖性のまたは抗炎症性の性質を有してもよいし、または、抗腫瘍性、抗血小板性、抗凝血性、抗フィブリン性、抗トロンビン性、抗有糸分裂性、抗生物質性、抗アレルギー性、抗酸化性、嚢胞安定性の薬剤といった他の性質をも有してもよい。治療上および予防上の薬剤の例には、治療上、予防上、診断上の作用を有する、合成された無機および有機化合物、タンパク質、ペプチド、ポリサッカリドおよび他の糖類、脂質および、DNAおよびRNA核酸配列が含まれてよい。核酸配列には、遺伝子、相補的DNAに結合して転写を妨げるアンチセンス分子、およびリボザイムが含まれる。他の生体活性薬剤の他の例としては、抗体、受容体リガンド、酵素、接着ペプチド、血液凝固因子、抑制薬剤、またはストレプトキナーゼおよび組織プラスミノゲン活性化因子といった血栓溶解薬剤、免疫付与のための抗原性薬剤、ホルモンおよび成長因子、アンチセンスのオリゴヌクレオチドおよびリボザイムおよび遺伝子治療に使用されるレトロウィスルベクターといったオリゴヌクレオチドが含まれる。抗増殖性薬剤の例には、ラパマイシンおよびその機能的または構造的誘導体、40―O―(2―ヒドロキシ)エチル―ラパマイシン(エベロリムス)およびその機能的または構造的派生物、パクリタキセルおよびその機能的および構造的誘導体が含まれる。ラパマイシン派生物の例には、メチルラパマイシン(ABT―578)、40―O―(3―ヒドロキシ)プロピル―ラパマイシン、40―O―[2―(2―ヒドロキシ)エトキシ]エチル―ラパマイシン、および40―O―テトラゾール―ラパマイシンが含まれる。パクリタキセル誘導体の例には、ドセタキセルが含まれる。抗腫瘍性および/または抗有糸分裂性薬剤には、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロフラシル、塩酸ドキソルビシン(例えば、ニュージャージー州ピーパックのファーマシア&アップジョン製のアドリアマイシン(登録商標))、およびマイトマイシン(例えば、コネチカット州スタンフォードのブリストル―マイヤーズスクイブ社製のムタマイシン(登録商標))が含まれる。前記抗血小板物質、抗凝血剤、抗フィブリン剤、および抗トロンビン剤には、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、ホルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリン類縁体、デキストラン、D―phe―pro―arg―クロロメチルケトン(合成抗トロンビン)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板細胞膜受容体拮抗抗体、組み換えヒルジン、アンジオマックスa(マサチューセッツ州ケンブリッジのバイオジェン社)といったトロンビン阻害剤、カルシウムチャンネル遮断薬(例えばニフェジピン)、コルヒチン、繊維芽細胞成長因子(FGF)抑制因子、魚油(オメガ3―脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン(コレステロール降下剤であり、ニュージャージー州ホワイトハウスステーションのメルク株式会社製の商標メバコール(登録商標)である、HMG―CoA還元酵素阻害剤)、単クローン性抗体(例えば血小板由来の成長因子(PDGF)受容体に特効のあるもの)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン阻害剤、ステロイド、チオプロテーゼ抑制剤、トリアゾロピリミジン(PDGF抑制因子)、酸化窒素または酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣薬、4―アミノ―2,2,6,6―テトラメチルピペリジン―1―オキシル(4―アミノ―TEMPO)、エストラジオール、抗癌剤、様々なビタミンといった栄養補助食品、および前記の組み合わせである。ステロイド性および非ステロイド性の抗炎症性薬を含む抗炎症性薬の例には、タクロリムス、デキサメタゾン、クロベタゾール、および前記組み合わせが含まれる。前記細胞増殖抑制剤の例には、アンギオペプチン、カプトプリル(例えばコネチカット州スタンフォードのブリストル―マイヤーズスクイブ社製のカポテン(登録商標)およびカポザイド(登録商標))といったアンギオテンシン変換酵素阻害薬、シラザプリルまたはリシノプリル(例えばニュージャージー州ホワイトハウスステーションのメルク株式会社製のプリニビル(登録商標)およびプリンザイド(登録商標))がある。抗アレルギー活性剤の例には、プミロラストカリウムがある。他の適切でありうる治療薬剤や活性薬剤には、αインターフェロン、生体活性RGDおよび遺伝子操作された上皮細胞が含まれる。前述の物質はそれらのプロドラッグまたは二薬効結合薬剤(コドラッグ)の形態でも使用されてもよい。前述の物質は例として記載されているのであり、それらに制限されるわけではない。現在入手できるまたは将来開発されうる他の生体活性物質もまた等しく適用可能である。
【0033】
ポリマーおよび/または生体活性物質に混合されてもよい溶媒の代表例には、クロロホルム、アセトン、水(緩衝食塩水)、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコールメチルエーテル、イソ―プロピルアルコール、n―プロピルアルコール、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、デカリン、エチルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、イソプロピルアセテート、ブタノール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール、2―ブタノン、シクロヘキサノン、ジオキサン、塩化メチレン、四塩化炭素、テトラクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、1,1,1―トリクロロエタン、ホルムアミド、ヘキサフルオロイソプロパノール、1,1,1―トリフルオロエタノール、およびヘキサメチルリン酸アミド、および前記の組み合わせがある。
【0034】
本発明の詳しい実施の形態が示され説明されてきたが、当業者にとっては、本発明を逸脱することなくより広い意味での改変や変形が可能であることは明らかである。よって、添付の請求項はその範囲内に、本発明の精神と範囲に含まれる全ての改変と変形とを包含するものである。
図は一律の縮尺に従わずに描かれており、特に、図3A―3Eと図4A―4Eは図示するために過分または不足に強調されている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、ステントを示す図である。
【図2】図2は、カテーテルアセンブリのバルーン、すなわち拡張可能な部材に取り付けられたステントを示す図である。
【図3A】図3Aは、本発明の一実施の形態の、バルーン上に取り付けられたステントをコーティングする工程である。
【図3B】図3Bは、本発明の一実施の形態の、バルーン上に取り付けられたステントをコーティングする工程である。
【図3C】図3Cは、本発明の一実施の形態の、バルーン上に取り付けられたステントをコーティングする工程である。
【図3D】図3Dは、本発明の一実施の形態の、バルーン上に取り付けられたステントをコーティングする工程である。
【図3E】図3Eは、本発明の一実施の形態の、バルーン上に取り付けられたステントをコーティングする工程である。
【図4A】図4Aは、本発明の一実施の形態の、バルーン上に取り付けられたステントをコーティングする工程である。
【図4B】図4Bは、本発明の一実施の形態の、バルーン上に取り付けられたステントをコーティングする工程である。
【図4C】図4Cは、本発明の一実施の形態の、バルーン上に取り付けられたステントをコーティングする工程である。
【図4D】図4Dは、本発明の一実施の形態の、バルーン上に取り付けられたステントをコーティングする工程である。
【図4E】図4Eは、本発明の一実施の形態の、バルーン上に取り付けられたステントをコーティングする工程である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントをコーティングする方法に関する。特に、カテーテルアセンブリのバルーン上に取り付けられたステントをコーティングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、薬剤を送付できるよう改良されている。薬剤や治療剤を含浸させた高分子担体が、ステント上にコーティングされる。コーティングの従来の方法は、例えば、溶媒と、溶媒中で溶解したポリマーと、それらの混合物中で分散された治療薬剤とを含む配合物中に、ステントを浸すかまたは当該配合物をステントに吹き付けるかによって、当該配合物を塗布する方法である。その溶媒は蒸発してもよく、ステント支柱の表面上には、ポリマー中に浸透した、ポリマーや治療薬剤のコーティングが残される。ステント上に当該配合物を浸し塗りしたり吹き付けたりすると、ステントの全表面、すなわち内腔(内側)と外面(外側)の両方の表面、がコーティングで完全にカバーされてもよい。しかし、ステントの内腔表面をコーティングすると、ステントの送付能力およびコーティングの機械的な完全性に悪影響をもたらす。さらに、治療上の観点からは、ステントの内側の表面上の治療薬剤は、血流によって洗い流され、通常わずかな治療上の影響をもたらしうる。一方、ステントの外側の表面上の薬剤は、内腔とは対照的に、細胞組織へと直接送付される。ステントをコーティングするポリマーはまた、身体からの反応を引き起こす。異物の量を減少させることは、益あるのみである。
【0003】
簡潔に言うと、カテーテルアセンブリの膨張可能なバルーンが、コーティングされたステントの中空の穴の中に挿入される。ステントは、圧着プロセスによってしっかりとバルーン上に取り付けられる。バルーンが膨張してステントが体内に埋め込まれ、バルーンは収縮し、そしてステントの内腔から引っ張り出される。ステントの内側のポリマーコーティングは、ステントと、ステントが送付のために圧着されるカテーテルアセンブリのバルーンとの間の摩擦係数を増加させうる。さらに、「粘り気のある」または「粘着性のある」粘度を有するポリマーもある。ポリマー材の摩擦係数が増加するか、またはポリマー材がカテーテルバルーンに粘着するかした場合、バルーンが収縮した後ステントがうまく離れない可能性がある。ステントコーティングがバルーンに粘着した場合、ステントの配置の後に続くバルーンの収縮と引き抜きプロセスの間に、コーティングまたはその一部が、ステントから剥がれ落とされることもありうる。粘着性のあるポリマーステントは、配置後にバルーンによる広範な剪断損傷を受けることがあり、その結果、血栓形成性のステント表面やまた塞栓性の細片も生じうる。バルーンが拡張されると、ステントコーティングは伸張できるが、そのような剪断応力の結果として剥離することもある。
【0004】
従って、ステントの内側表面のコーティングを除去すると有益である。ステントの内側表面上のコーティングを除去するために、圧着後コーティングプロセスが提案されている。簡潔に言うと、バルーン上にステントを取り付けた後、ステントはコーティングの配合物の中に浸されるかまたは配合物がステント上に吹き付けられてもよい。ステントの内側表面上にはコーティングがされないにしても、ステントの支柱の間のバルーンの表面上にもまたコーティングは付着している。この種のコーティングでは、バルーンに対するステントの粘着の問題や、バルーンの拡張、収縮と引き抜きに際してのコーティングの不具合の形成の問題はなくならず、実際上、そのような問題はさらに悪化することもある。
【0005】
バルーン上にステントを取り付けるに先立って、ステントをコーティングすると、ステントの外側表面上のコーティングもまた損傷されうる。柔らかいポリマーコーティングに対し様々な方向に圧力をかけすぎることによって、ステント圧着用具によりステントのコーティングに不具合が生じうる。より硬質または脆性のポリマーは圧着圧力の下でコーティングの不具合や亀裂を生じうる。ステントの圧着は、ステントの保持力がそれに依存しているという点で、製造段階において決定的に重要な工程である。ステントの圧着は、ステントを送付カテーテルまたは送付バルーンに取り付けて、医師が治療部位にステントを送付しようと望むまでステントがカテーテルまたはバルーンに取り付けられたままでいるようにする動作である。現在のステント圧着技術は高度である。少し前は、あるプロセスではロール圧着機が使用された。当該圧着機では、その固有の剪断作用のせいで、多くのポリマーコーティングが損傷された。次に登場したのは、基本的にはドリルチャックである部分の中に取り付けられた金属の掴み具を使用したコレット圧着機である。その掴み具は径方向にのみ動く。この動きはコーティングを剪断するとは考えられていなかった、というのは、それはステント表面に対して法線力をかけるに過ぎないからである。しかしステントの形状によっては、圧着の間にステント支柱がはさみ状になるものもある。そのような形状では、圧着機が法線力しかかけていないとしても、ステント支柱のはさみ状の動作により、剪断力がかかる。最終的に、絞りまたはスライド楔型の着機により、主には法線力がかけられるものの若干の接線方向の剪断力がかかることになる。
【0006】
ロール圧着機を使用するには、まずステントは、カテーテルのバルーン部分の上にゆるくスライドされる。このアセンブリは、ロール圧着機のプレートの間に配置される。自動式のロール圧着機では、これらのプレートが一体となって、規定の量の力がかけられる。その後、これらのプレートは、カテーテルに垂直な方向に、設定された距離を前後に動く。カテーテルはこの動きの下で前後に回転し、そしてステントの直径は減少する。このプロセスは2以上の工程に分解することができ、それぞれで独自のレベルの力と、並進運動の距離と、サイクル数とを有することができる。薬剤送付コーティングを有するステントについては、当該プロセスでは、カテーテルまたはカテーテル壁に対して垂直な方向に、ステントに相当大きな剪断力がかけられる。さらに、ステントが圧着されるにつれ、ステント表面と圧着プレートとの間に相対運動が加わる。結果として、当該圧着プロセスはステントコーティングに損傷を加える傾向がある。
【0007】
コレット圧着機は概念的には同等にシンプルである。標準的なドリルチャックコレットには、いくつかのパイ片の形状をした掴み具が備わっている。これらの掴み具は、外側の輪が回転されると、径方向に動く。当該圧着機を使用するには、ステントはカテーテルのバルーン部分の上にゆるく配置され、掴み具の間の中心スペースに挿入される。外側の輪を回転させると、掴み具は内側に向かって動かされる。当該装置の問題点は、圧着の終点の決定または設定にある。ある方式では、掴み具が完全に閉まると、それらは接して、既知の直径の中央の穴が残るように設計される。当該アプローチによると、コレットを回転させてコレット止めに至らしめることで、ステントが既知の外径にまで圧着される。これは理想的にも見えるが、問題もある。ステントの支柱は、その厚さに許容誤差を有する。さらに、不従順なバルーンを折り畳むプロセスは、必ずしも再現可能ではない。その結果として、コレット圧着機は、それぞれのステントに異なる量の力をかけて、最終的に同一の寸法にする。この力や最終的な圧着後の直径が注意深く設定されない限り、ステントやバルーンの寸法のバラツキによって、ステントコーティングまたはバルーンに損傷が引き起こされうる。
【0008】
さらに、コレットの掴み具は径方向に動くが、掴み具が圧着するに従い、それらは互いに近づく。この作用は、支柱のはさみ状の動きと共に、コーティングに接線方向の剪断力をかけ、これもまた損傷を引き起こしうる。最後に、コレット圧着機の実際の接触表面は、掴み具の先端である。これらの表面はかなり微細で、圧着の終点において円筒面を形成するにすぎない。その前段階では、ステント表面にかかる負荷は途切れている。
【0009】
楔をスライドさせる型、または絞り型の圧着機においては、隣接したパイ片形状部は内側にねじれて動き、それはカメラの絞りの箔によく似ている。この圧着機は異なった2種類の終点を有するように設計されてもよい。それは最後にある一つの直径で終わるようにしてもよいし、固定された力はかけるが最後の直径は変動するようにしてもよい。コレット圧着機に関する上記の議論の通り、固定されたレベルの力を加えることには利点がある、というのは、支柱やバルーンの寸法がばらついても圧着力は変化しないからである。スライドする楔によりまず法線力がかかるが、それはステントコーティングに対して最も損傷が少ない。楔が互いにスライドすると、いくらかの接線力がかかる。しかし、剪断損傷は、コレット圧着機によるそれと比較して同等かまたは少ない。最後に、楔をスライドさせる型の圧着機だと、ステントの内側表面をほぼ円筒状にすることができ、それは圧着の際も同様である。これは、ステントの外側表面全体に対して圧着負荷が分配されていることを意味する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在の全てのステント圧着方法は純金属製のステントのために生み出された。ステントの金属、例えばステンレス鋼、には耐性があり、酷使されてもよい。圧着が強すぎる場合、通常は、ステントではなく、下部のバルーンが損傷される。しかし、ポリマーコーティングには別の課題がある。
【0011】
本発明の方法では、バルーンにステントを圧着または取り付けた後に、ステントの外側表面をコーティングすることによって、解決策が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
カテーテルアセンブリのバルーン上に
ステントを取り付ける工程と、
その後、前記ステント上にステントコーティングを形成する工程であって、ステントが覆うようにとりつけられバルーン表面部にはいかなるステントコーティングも存在しない工程を備える、 コーティングされたステント―バルーンアセンブリの製造方法が提供される。
【0013】
カテーテルアセンブリのバルーン上に犠牲層を形成する工程と、
その後、ャップによって分けられた支柱を含むステントをバルーン上に取り付ける工程と、
その後、前記ステント上にステントコーティングを形成する工程と、
その後、前記犠牲層を除去する工程と、を備える、
コーティングされたステント―バルーンアセンブリの製造方法が提供される。
【0014】
ギャップによって分けられた支柱を含むステントをバルーン上に取り付ける工程と、
その後、前記ステントの支柱の間の前記ギャップの領域において、前記バルーン上に、犠牲層を形成する工程と、
その後、前記ステント上にコーティングを形成する工程と、
その後、犠牲層を除去する工程であって、前記コーティング材が前記ステントの外側表面上に残る工程と、
を備える、コーティングされたステント―バルーンアセンブリの製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は従来のステント10を示す図である。本発明の実施の形態は図1に示されたステントパターンに限定されるべきではない、というのは、ここで説明される方法によって他のタイプのステントもコーティングされてもよいからである。ステント10は、足場状の網状組織を有するように示されており、この網状組織は、支柱12の間にギャップ16があるように、要素14によって接続された支柱12を含んでいる。議論を簡単にするため、要素14も支柱とみなされてよい。ステントはバルーン拡張可能または自己拡張可能であってよく、単に心臓血管への適用だけではなく、多様な医学上の適用に使用されてもよい。ステントは、金属材、あるいは例えば本質的に生体吸収可能、分解可能又は浸食可能であるといったポリマー材、または金属材とポリマーとの組み合わせによって作られてよい。
【0016】
図2は、カテーテルアセンブリ20のバルーン18に取り付けられたステント10を示している。図2は、図1で示したものとは異なるパターンを有するステントを示している。
【0017】
図3A―3Eを参照すると、本発明の一実施の形態のステントをコーティングする方法が示されている。図3Aは、外面22を有するバルーン18の部分断面図である。外面22上、またはその上方に犠牲コーティング層24が形成されている。「〜上」という語は、広い意味で使用されることとし、例えば、ステントまたはバルーン上の層とは、特に言及のない限り、当該層とステント、または当該層とバルーンとの間の表面接触を意味するわけではなく、それらの中間にある1つ以上の層も含まれる。犠牲コーティング層24が形成された後、一実施の形態においては、いかなるコーティングも備えていないステントが、バルーン18上に取り付け、すなわち圧着されうる(例えば、アリゾナ州フラッグスタッフのマシーン・ソルーション社から入手可能なSC700MSIステント圧着装置を使用することによって)。図3Cは、ギャップ16を有するステントの支柱12を示している。ステントプレス機を使用してさらにステントを押し付けて、バルーン18との係合をより強固にしてもよい(例えば、マシーン・ソルーション社から入手可能なFFS700MSIバルーン形成/折り畳み/設置装置を使用することによって)。いくつかの実施の形態では、ステントはコーティング層を含んでいてもよい。しかし、当該コーティング層は圧着プロセスの間に損傷を受けうる。当該損傷はその後のコーティングの形成により治癒されうる。図3Dでは、支柱12および犠牲コーティング層24の上方に均一に形成されている、ステントコーティング26が示されている。いくつかの実施の形態では、より選択的なコーティングプロセスが選ばれ、ギャップ16の中に形成されるコーティング物質の量が最小化される。選択的コーティングプロセス、例えばインクジェットタイプまたはマイクロインジェクターを使用するプロセス、によって支柱12の外側表面に形成されるコーティングの量を制限することができる。ステントコーティング材の形成には、単層または多層の形成が含まれることを意図しており、多層の場合には、それぞれの層が同一であってもよく、またはそれぞれの層には異なった成分および材料が含まれてもよい。例えば、治療薬剤を含まない層または異なるポリマー材から作られたいくつかの層があってもよい。ステントコーティング材の形成に先立って、例えば空気ブラストといった、クリーニングが支柱12の表面に対して行われてもよく、あらゆる残留物や混入物も落とされる。いくつかの実施の形態では、当該洗浄によって犠牲層24は除去されないことという警告付きのクリーニング方法として、洗浄が採用される。当該洗浄は、犠牲層24に対して非溶媒であってもよい。図3Eに示されているように、犠牲層24は除去され、その結果、ギャップ領域16におけるコーティング26が除去される。バルーン18の表面22には、少なくとも支柱12の間のギャップ領域16においては、いかなるコーティング層26も存在しない。いくつかの実施の形態では、支柱12に充分な圧力が圧着によってかけられて、バルーンの外側表面22に対して支柱12の内側表面を押し付けるようになっている。その結果として、犠牲層24は完全にまたは実質的に支柱12の下から除去される。いくつかの実施の形態では、犠牲層24は支柱12の下に残っていてもよく、最終的には体内で押し流される。これは、犠牲層24が生体親和的な材料、例えば毒性がないまたは非炎症性の材料から作られ、身体によって容易に処理され除去されうる場合に適用される。他の実施の形態では、犠牲層24が生体活性的であるか、または生体活性的な材料を含み、患者に対して治療上、予防上、および/または改善上の効果をもたらすようになっていてもよい。いったんステントが放されると、当該材料もまた体内組織内に局所的に放たれうる。別の実施の形態では、犠牲層24の除去プロセスの度合いによっては、支柱12の下部の層24もまた除去され得る。その後ステントに圧力がかけられ、バルーン18との係合がより強固になる。
【0018】
別の実施の形態によれば、図4A―4Eを参照すると、ステントはまずバルーン18上に取り付けられ、すなわち圧着され、そしてオプションとして上述のとおりさらに押し付けられる。ステントにはオプションとしてその上にコーティングが施されてもよいが、コーティングはない方が好ましい。図4Bはバルーン18上の支柱12を示している。支柱12の外側表面が層24に覆われないように、バルーン18の表面22上のギャップ16の中に、犠牲層24は選択的に形成される。いくつかの実施の形態では、使用されるコーティング技術によっては支柱12もまた覆われることもあるし、または支柱12上に偶発的に材料が形成されることもある。そのような実施の形態では、支柱12の外側表面上の犠牲層24を除去する工程を付け加える必要がある。これは例えばガス(例えば、強制空気)の吹き付けまたはこすり取りによってなされる。その後、ステントコーティング26はステント―バルーンアセンブリ上に形成される。犠牲層24を除去すると、ギャップ16中のステントコーティング26は容易に除去されるが、支柱12上のステントコーティング26は除去されない。バルーン18の表面22には、ギャップ領域16中の支柱12間のステントコーティング材料が存在しない。
【0019】
ステントコーティング26が形成されることによって、犠牲層24が除去または溶解されてはならない。犠牲層24の内の一部は偶発的に除去されうるが、充分な量の層24が残されて、ステントコーティング26の不要な部分を適切に除去できるようにしておくべきである。例えば、ステント用コーティング材に溶媒が含まれる場合、当該溶媒は犠牲層24に対しては非溶媒として作用すべきである。さらに、犠牲層24を除去するのに流体が使用される場合、当該流体はコーティング層26に対しては非溶媒であるべきで、ステントの当該コーティング層26を除去したり、これに悪影響を及ぼさないようにしなければならない。
【0020】
犠牲層24の保持を助けるために、バルーンの表面に粘着剤が形成されてもよいし、または犠牲層材に粘着剤が混合されてもよい。犠牲層24が溶液または懸濁液とは対照的に乾燥粉末形態で形成されている場合、粘着剤は特に有用である。適切な粘着剤の代表例としては、フィブリン接着剤、シアノアクリレート、フォーカルシール(登録商標)(ポリエチレングリコールベースの合成ヒドロゲル)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン―レゾルシン―ホルムアルデヒド接着剤、シルクエラスチン、リシルペルオキシダーゼなどのin situ架橋剤が加わったトロポエラスチン、および水溶性キトサンがある。
【0021】
犠牲層24は、コーティング材を除去または分解することのできるいかなる物質から作られてもよいし、またはそれが含まれていてもよい。除去は、バルク形態であってもよい。「バルク形態」とは、コーティング材の個々の粒子とは対照的な、コーティング材の断片のことを言う。材料の代表例としては、スクロース(キャラメルを含む)、D型グルコース、グルコースおよびヘパリンなどのオリゴ糖および多糖類;塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸銅、重炭酸ナトリウムおよびヨウ素塩などのイオン性塩;グリシンなどのアミノ酸;およびヒアルロン酸、ポリ(エチレングリコール)または以下に記載されているポリマーなどのポリマーがある。の形態では、当該物質は、以下に記載された物質を含む、活性物質、薬剤または二薬効結合薬剤(コドラッグ)であってもよい。いくつかの実施の形態では当該物質は、低分子量の材料からできており、例えば身体によって容易に除去および排出される材料、または60ダルトンを下回る分子量を有する材料である。また別の実施の形態では、当該物質はイオン分子を含む。
【0022】
本発明のある実施の形態では、犠牲層24は親水性の材料を含んでいてもよいし、またはそれからできていてもよい。ある物質は、当該物質のヒルデブラント溶解度パラメータの値によって「親水性」または「疎水性」に分類される。「ヒルデブラント溶解度パラメータ」という用語は、物質の凝集エネルギー密度を示すパラメータδとして定義される。当該パラメータδは以下のとおりに決定される:
δ=(ΔE/V)1/2
ただし、δは溶解度パラメータ、(cal/cm3)1/2;ΔEは気化エネルギー、cal/mole;Vはモル容積、cm3/モルである。「親水性」とは、ヒルデブラント溶解度パラメータが8.5、9、9.5、10、10.5、11または11.5(cal/cm3)1/2以上である物質のことを言う。
【0023】
また別の実施の形態では、犠牲層24は流体を吸収することのできる材料からできていてもよいし、それを含んでいてもよい。当該物質はヒドロゲルでもよい。「ヒドロゲル」とは、共有結合、イオン結合または水素結合で架橋されることにより水分子を吸収、封入してゲルを形成し得る、3次元の開放格子構造をとるポリマーである。ヒドロゲルの代表例には、ポリ(エチレングリコール)、N―イソプロピルアクリルアミド、ポリオキシエチレン―ポリオキシプロピレンブロック共重合体、プルロニック−ポリ(アクリル酸)グラフト共重合体、プルロニック−キトサングラフト化共重合体、エラスチン模倣ポリペプチド、および前記の組み合わせおよび混合物が含まれる。
【0024】
犠牲層24および/またはステントコーティング層26は、吹きつけ(例えば、ロードアイランド州イーストプロビデンスのEFD社製のVALVEMATE7040制御システムを備えるEFD780S吹き付け装置)、浸し塗り、はけ塗り、マイクロインジェクション等によって形成される。ステントのパターンに従う、または支柱12の外側表面ではなくステント支柱12の間のギャップ16内に犠牲層24を形成するよう、プログラムされたマイクロインジェクションディスペンサのように、層形成は自動化されることもできる。自動化システムの一つは、米国特許第6,395,326号で開示されている。マスキング技術も、当業者に知られているように、ステントまたはバルーン18の選択的コーティングに使用されてもよい。犠牲層24は乾燥粉末形態において形成されてもよい。乾燥粉末とは、約10%より少ない、5%より少ない、1%より少ない、0.1%より少ない、または0%の残余流体(例えば溶媒または水)を包含する粒子の集合体のことを言う。また、犠牲層24はウエット、またはセミウエットコーティングとしても形成されてもよい。例えば、層24の材料は、粒子として液状媒体中で混合または分散されてもよいし、または液体キャリア中で部分的または完全に溶解されてもよい。当該材料が層形成のために液体と混合された場合、当該液体はコーティング材料の付与の前に蒸発してもよい。しかし、いくつかの実施の形態では、コーティング材料をウエットな、またはセミウエットな犠牲層24に形成した方が利点があるかもしれない。これによって、犠牲層24によってより効果的に、コーティング層26の不用な部分を除去することができる。ウエットな、またはセミウエットなコーティングは、0.1%、1%、5%、または10%またはそれよりも多い水または溶媒を含んでいる。いくつかの実施の形態では、コーティング層26が乾燥した犠牲層24に形成されることが好ましい。
【0025】
いくつかの実施の形態では、犠牲層24は除去用流体を付与することにより除去されることができる。当該付与は、浸し塗りまたは吹き付けによりなされることができる。上述の通り、当該流体は、ステントコーティングに対して非溶媒であるべきである。犠牲層24を除去するのに使用され得る流体の代表例としては、水;メタノール、イソプロピルアルコールおよびエタノールのような一価アルコール、二価アルコールおよび多価アルコールを含むアルコール;アセトン;超臨界二酸化炭素のような超臨界流体;および前記の混合物である。ある実施の形態では、当該流体は、超臨界二酸化炭素と、メタノール、イソプロピルアルコール、エタノールおよびアセトンのうちの1つ以上との混合物である。別の実施の形態では、当該流体は、水とアルコール(例えば80/20%(w/w)水:アルコール)の混合物である。当該除去用流体は、水または水ベースであるのが好ましい。当該流体は、犠牲層24を溶解させる、または膨張させることができるべきである。ある実施の形態では、超音波処理または他の振動タイプの処理を採用して、層24の除去を容易にしてもよい。処理後に濯ぎを行う、または、不活性ガスまたは空気を吹き付けて、残留物を除去することができる。犠牲層26と接触するステントコーティング26は、膨張力または圧力によって膜構造に中断が生じるので、機能しなくなると信じられている。流体にさらされる時間の選択は、様々な要因に左右される、例えば、温度、コーティング材の特性と種類、犠牲層の特性と種類、除去用流体の能力、望ましい除去速度、コーティングに存在する凝集力および付着力、およびその他の要因である。例えば、摂氏37度または室温の脱イオン水により除去は容易になる。流体にさらす時間は、例えば、室温温度において約1秒から約24時間の間になりうる。
【0026】
本発明の実施の形態には、除去するための他の方法もまた含まれる。例えば、レーザーして、層26を除去するために、犠牲層24を除去することができる。犠牲層24は、大量のエネルギーを吸収しおよび/または容易に分解して、コーティング層26の除去を促進するタイプであってもよい。
【0027】
いくつかの実施の形態では、犠牲層24は比較的大きい吸光度を有さなければならない。吸光度が大きいと、当該材料を早く容易に焼くことができる。吸光度kは以下のように定義される:
k={Ln(I0/If)}/h
ここでk=吸光度(cm−1)
I0=初期強度
If=最終強度
h=最終強度の場所の距離(cm)
【0028】
適切に大きい吸光度は1×104cm−1以上である。そのような材料は、レーザーを使用して犠牲層24が除去される際の溶融欠陥防止するのに特に適している。
【0029】
バルーン上に取り付けられたステントにコーティング材を付与するのは、大きな利点がある。前述の通り、従来のコーティング技術では、ステントは送付装置に取り付けられる前にポリマーでコーティングされる。従来技術で使用されたポリマーには脆いものもあるので、取り付けまたは圧着接方法の間にステントに加えられる圧力にポリマーが耐えることができない。本発明の選択的コーティング技術によって、ステントが送付装置に取り付けられた後にステントがコーティングされるようになり、それによって取り付けおよび圧着プロセスにコーティングをさらす必要性がなくなる。それゆえ、たとえ従来のプロセスにとっては脆すぎるものであっても、より多くの入手可能なポリマーの中から選択することができるようになる。
【0030】
ステントコーティング材には、流体キャリアまたは溶媒を含むまたは含まない、ポリマー(あるいは複数のポリマー)または治療薬剤(あるいは複数の薬剤)の一つ、またはその組み合わせが含まれることができる。ステントコーティング26には、純ポリマー(あるいは複数の純ポリマー)の層(あるいは複数の層)、または純薬剤(あるいは複数の薬剤)あるいは薬(あるいは複数の薬)の層(あるいは複数の層)が含まれることができる。層26には、下塗り層、薬剤貯蔵層、およびトップコート層といった複数の層が含まれることができる。
【0031】
使用されてもよいポリマーの例としては、エチレンビニルアルコール共重合体;ポリブチルメタクリレート;(エチレン/酢酸ビニル)共重合体;(フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロペン)共重合体;ポリ(ヒドロキシバレレート);ポリ(L―乳酸);ポリカプロラクトン;(ラクチド/グリコライド)共重合体;ポリ(ヒドロキシブチレート);(ヒドロキシブチレート/バレレート)共重合体;ポリジオキサノン;ポリオルトエステル;ポリ無水物;ポリ(グリコール酸);ポリ(D,L―乳酸);(グリコール酸/トリメチレンカーボネート)共重合体;ポリリン酸エステル;ポリリン酸エステルウレタン;ポリ(アミノ酸);シアノアクリレート;ポリ(トリメチレンカーボネート);ポリ(イミノカーボネート);(ポリエーテル/ポリエステル)共重合体(例えばPEO/PLA);ポリアルキレンオキサレート;ポリホスファゼン;フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、およびヒアルロン酸などの生体分子;シリコン;ポリエステル;ポリオレフィン;ポリイソブチレンとエチレン/アルファオレフィンの共重合体;アクリルポリマーおよび共重合体;ポリ塩化ビニルといったハロゲン化ビニルポリマーおよび共重合体;ポリビニルメチルエーテルといったポリビニルエーテル;ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデンといったポリハロゲン化ビニリデン;ポリアクリルニトリル;ポリビニルケトン;ポリスチレンといったポリビニル芳香族化合物;ポリビニルアセテートといったポリビニルエステル;エチレン―メチルメタクリレート共重合体、アクリルニトリル―スチレン共重合体、ABS樹脂およびエチレン―ビニルアセテート共重合体といった、ビニルモノマー同士およびオレフィンとの共重合体;66ナイロンおよびポリカプロラクタムといったポリアミド;アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエーテル;エポキシ樹脂;ポリウレタン;レーヨン;レーヨン―トリアセテート;セルロースアセテート;セルロースブチレート;セルロースアセテートブチレート;セロファン;セルロースナイトレート;セルロースプロピオネート;セルロースエーテル;およびカルボキシメチルセルロースがあり、上記に限定されない。KRATON G―1650もまた使用されてもよい。KRATONはテキサス州ヒューストンのシェルケミカル社により製造され、硬いポリスチレンの末端ブロックおよび熱可塑性の弾性ポリ(エチレン―ブチレン)の柔らかい中央ブロックからなる3ブロック共重合体である。KRATON G―1650には約30質量%のポリスチレンブロックが含まれる。
【0032】
治療薬剤または生体活性薬剤は、いかなる治療上、予防上、診断上および/または改善上の薬剤を含んでよい。当該薬剤は抗増殖性のまたは抗炎症性の性質を有してもよいし、または、抗腫瘍性、抗血小板性、抗凝血性、抗フィブリン性、抗トロンビン性、抗有糸分裂性、抗生物質性、抗アレルギー性、抗酸化性、嚢胞安定性の薬剤といった他の性質をも有してもよい。治療上および予防上の薬剤の例には、治療上、予防上、診断上の作用を有する、合成された無機および有機化合物、タンパク質、ペプチド、ポリサッカリドおよび他の糖類、脂質および、DNAおよびRNA核酸配列が含まれてよい。核酸配列には、遺伝子、相補的DNAに結合して転写を妨げるアンチセンス分子、およびリボザイムが含まれる。他の生体活性薬剤の他の例としては、抗体、受容体リガンド、酵素、接着ペプチド、血液凝固因子、抑制薬剤、またはストレプトキナーゼおよび組織プラスミノゲン活性化因子といった血栓溶解薬剤、免疫付与のための抗原性薬剤、ホルモンおよび成長因子、アンチセンスのオリゴヌクレオチドおよびリボザイムおよび遺伝子治療に使用されるレトロウィスルベクターといったオリゴヌクレオチドが含まれる。抗増殖性薬剤の例には、ラパマイシンおよびその機能的または構造的誘導体、40―O―(2―ヒドロキシ)エチル―ラパマイシン(エベロリムス)およびその機能的または構造的派生物、パクリタキセルおよびその機能的および構造的誘導体が含まれる。ラパマイシン派生物の例には、メチルラパマイシン(ABT―578)、40―O―(3―ヒドロキシ)プロピル―ラパマイシン、40―O―[2―(2―ヒドロキシ)エトキシ]エチル―ラパマイシン、および40―O―テトラゾール―ラパマイシンが含まれる。パクリタキセル誘導体の例には、ドセタキセルが含まれる。抗腫瘍性および/または抗有糸分裂性薬剤には、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロフラシル、塩酸ドキソルビシン(例えば、ニュージャージー州ピーパックのファーマシア&アップジョン製のアドリアマイシン(登録商標))、およびマイトマイシン(例えば、コネチカット州スタンフォードのブリストル―マイヤーズスクイブ社製のムタマイシン(登録商標))が含まれる。前記抗血小板物質、抗凝血剤、抗フィブリン剤、および抗トロンビン剤には、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、ホルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリン類縁体、デキストラン、D―phe―pro―arg―クロロメチルケトン(合成抗トロンビン)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板細胞膜受容体拮抗抗体、組み換えヒルジン、アンジオマックスa(マサチューセッツ州ケンブリッジのバイオジェン社)といったトロンビン阻害剤、カルシウムチャンネル遮断薬(例えばニフェジピン)、コルヒチン、繊維芽細胞成長因子(FGF)抑制因子、魚油(オメガ3―脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン(コレステロール降下剤であり、ニュージャージー州ホワイトハウスステーションのメルク株式会社製の商標メバコール(登録商標)である、HMG―CoA還元酵素阻害剤)、単クローン性抗体(例えば血小板由来の成長因子(PDGF)受容体に特効のあるもの)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン阻害剤、ステロイド、チオプロテーゼ抑制剤、トリアゾロピリミジン(PDGF抑制因子)、酸化窒素または酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣薬、4―アミノ―2,2,6,6―テトラメチルピペリジン―1―オキシル(4―アミノ―TEMPO)、エストラジオール、抗癌剤、様々なビタミンといった栄養補助食品、および前記の組み合わせである。ステロイド性および非ステロイド性の抗炎症性薬を含む抗炎症性薬の例には、タクロリムス、デキサメタゾン、クロベタゾール、および前記組み合わせが含まれる。前記細胞増殖抑制剤の例には、アンギオペプチン、カプトプリル(例えばコネチカット州スタンフォードのブリストル―マイヤーズスクイブ社製のカポテン(登録商標)およびカポザイド(登録商標))といったアンギオテンシン変換酵素阻害薬、シラザプリルまたはリシノプリル(例えばニュージャージー州ホワイトハウスステーションのメルク株式会社製のプリニビル(登録商標)およびプリンザイド(登録商標))がある。抗アレルギー活性剤の例には、プミロラストカリウムがある。他の適切でありうる治療薬剤や活性薬剤には、αインターフェロン、生体活性RGDおよび遺伝子操作された上皮細胞が含まれる。前述の物質はそれらのプロドラッグまたは二薬効結合薬剤(コドラッグ)の形態でも使用されてもよい。前述の物質は例として記載されているのであり、それらに制限されるわけではない。現在入手できるまたは将来開発されうる他の生体活性物質もまた等しく適用可能である。
【0033】
ポリマーおよび/または生体活性物質に混合されてもよい溶媒の代表例には、クロロホルム、アセトン、水(緩衝食塩水)、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコールメチルエーテル、イソ―プロピルアルコール、n―プロピルアルコール、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、デカリン、エチルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、イソプロピルアセテート、ブタノール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール、2―ブタノン、シクロヘキサノン、ジオキサン、塩化メチレン、四塩化炭素、テトラクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、1,1,1―トリクロロエタン、ホルムアミド、ヘキサフルオロイソプロパノール、1,1,1―トリフルオロエタノール、およびヘキサメチルリン酸アミド、および前記の組み合わせがある。
【0034】
本発明の詳しい実施の形態が示され説明されてきたが、当業者にとっては、本発明を逸脱することなくより広い意味での改変や変形が可能であることは明らかである。よって、添付の請求項はその範囲内に、本発明の精神と範囲に含まれる全ての改変と変形とを包含するものである。
図は一律の縮尺に従わずに描かれており、特に、図3A―3Eと図4A―4Eは図示するために過分または不足に強調されている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、ステントを示す図である。
【図2】図2は、カテーテルアセンブリのバルーン、すなわち拡張可能な部材に取り付けられたステントを示す図である。
【図3A】図3Aは、本発明の一実施の形態の、バルーン上に取り付けられたステントをコーティングする工程である。
【図3B】図3Bは、本発明の一実施の形態の、バルーン上に取り付けられたステントをコーティングする工程である。
【図3C】図3Cは、本発明の一実施の形態の、バルーン上に取り付けられたステントをコーティングする工程である。
【図3D】図3Dは、本発明の一実施の形態の、バルーン上に取り付けられたステントをコーティングする工程である。
【図3E】図3Eは、本発明の一実施の形態の、バルーン上に取り付けられたステントをコーティングする工程である。
【図4A】図4Aは、本発明の一実施の形態の、バルーン上に取り付けられたステントをコーティングする工程である。
【図4B】図4Bは、本発明の一実施の形態の、バルーン上に取り付けられたステントをコーティングする工程である。
【図4C】図4Cは、本発明の一実施の形態の、バルーン上に取り付けられたステントをコーティングする工程である。
【図4D】図4Dは、本発明の一実施の形態の、バルーン上に取り付けられたステントをコーティングする工程である。
【図4E】図4Eは、本発明の一実施の形態の、バルーン上に取り付けられたステントをコーティングする工程である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルアセンブリのバルーン上に、ギャップ領域によって分けられた支柱を有するステントを取り付ける工程と、
その後、前記ステント上にステントコーティングを形成する工程であって、前記ステントのギャップ領域によって露出されたバルーンの領域にはいかなるステントコーティングも存在しない工程と、を有する
コーティングされたステント―バルーンアセンブリの製造方法。
【請求項2】
前記バルーン上に前記ステントを取り付ける工程は、前記バルーン上に前記ステントを圧着して、前記バルーンに前記ステントを固く係合させる工程、を備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バルーン上に前記ステントを取り付ける工程に先立って、前記バルーン上に犠牲層を形成する工程をさらに備え、
前記ステントコーティングを形成する工程は、
前記ステント上にコーティング材を付着する工程と、
前記バルーンから前記犠牲層を取り除く工程であって、前記コーティング材は前記ステントの外側表面上に残る工程と、を備える請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記犠牲層が、前記バルーンを流体にさらすことによって除去される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記犠牲層には、オリゴ糖、多糖類、D型グルコース、グルコース、ヘパリン、イオン性塩、塩化カリウム、硫酸銅、重炭酸ナトリウム、ヨウ素塩、アミノ酸、ポリマー、活性物質、薬剤または二薬効結合薬剤(コドラッグ)からなる群から選択された材料を含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記犠牲層は、低分子量材を含む請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記犠牲層は、ヒルデブラント溶解度パラメータが8.5(cal/cm3)1/2以上である材料を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記犠牲層は、ヒドロゲルを含む請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒドロゲルが、ポリ(エチレングリコール)、N―イソプロピルアクリルアミド、ポリオキシエチレン―ポリオキシプロピレンブロック共重合体、プルロニック−ポリ(アクリル酸)グラフト共重合体、プルロニック−キトサングラフト共重合体、エラスチン模倣ポリペプチド、および前記の組み合わせおよび混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ステントコーティングを形成する工程は、
前記ステントの支柱の間の前記ギャップ領域によって露出されたバルーンの領域上に犠牲層を形成する工程と、
その後、前記ステント上にコーティングを形成する工程と、
その後、前記犠牲層を除去する工程であって、前記コーティング材が前記ステントの外側表面上に残る工程と、
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記犠牲層が、前記バルーンを流体にさらすことによって除去される、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記犠牲層には、オリゴ糖、多糖類、D型グルコース、グルコース、ヘパリン、イオン性塩、塩化カリウム、硫酸銅、重炭酸ナトリウム、ヨウ素塩、アミノ酸、ポリマー、活性物質、薬剤または二薬効結合薬剤(コドラッグ)からある群から選択された材料を含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記犠牲層は、低分子量材を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記犠牲層は、ヒルデブラント溶解度パラメータが8.5(cal/cm3)1/2以上である材料を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記犠牲層は、ヒドロゲルを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒドロゲルが、ポリ(エチレングリコール)、N―イソプロピルアクリルアミド、ポリオキシエチレン―ポリオキシプロピレンブロック共重合体、プルロニック−ポリ(アクリル酸)グラフト共重合体、プルロニック−キトサングラフト共重合体、エラスチン模倣ポリペプチド、および前記の組み合わせおよび混合物からなる群から選択される、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
カテーテルアセンブリのバルーン上に犠牲層を形成する工程と、
その後、ギャップによって分けられた支柱を含む前記ステントをバルーン上に取り付ける工程と、
その後、前記ステント上にステントコーティングを形成する工程と、
その後、前記犠牲層の全部またはそのほとんどを除去する工程と、を備える、
コーティングされたステント―バルーンアセンブリの製造方法。
【請求項18】
前記犠牲層を除去した後に、前記ステントの前記支柱の下の犠牲層のうちの一部がバルーン上に残る、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記犠牲層は、活性物質または治療薬剤を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
バルーン上にギャップによって分けられた支柱を含むステントを取り付ける工程と、
その後、前記ステントの支柱の間の前記ギャップの領域において、前記バルーン上に、犠牲層を形成する工程と、
その後、前記ステント上にコーティングを形成する工程と、
その後、犠牲層を除去する工程であって、前記コーティング材が前記ステントの外側表面上に残る工程と、を備える、
コーティングされたステント―バルーンアセンブリの製造方法。
【請求項1】
カテーテルアセンブリのバルーン上に、ギャップ領域によって分けられた支柱を有するステントを取り付ける工程と、
その後、前記ステント上にステントコーティングを形成する工程であって、前記ステントのギャップ領域によって露出されたバルーンの領域にはいかなるステントコーティングも存在しない工程と、を有する
コーティングされたステント―バルーンアセンブリの製造方法。
【請求項2】
前記バルーン上に前記ステントを取り付ける工程は、前記バルーン上に前記ステントを圧着して、前記バルーンに前記ステントを固く係合させる工程、を備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バルーン上に前記ステントを取り付ける工程に先立って、前記バルーン上に犠牲層を形成する工程をさらに備え、
前記ステントコーティングを形成する工程は、
前記ステント上にコーティング材を付着する工程と、
前記バルーンから前記犠牲層を取り除く工程であって、前記コーティング材は前記ステントの外側表面上に残る工程と、を備える請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記犠牲層が、前記バルーンを流体にさらすことによって除去される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記犠牲層には、オリゴ糖、多糖類、D型グルコース、グルコース、ヘパリン、イオン性塩、塩化カリウム、硫酸銅、重炭酸ナトリウム、ヨウ素塩、アミノ酸、ポリマー、活性物質、薬剤または二薬効結合薬剤(コドラッグ)からなる群から選択された材料を含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記犠牲層は、低分子量材を含む請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記犠牲層は、ヒルデブラント溶解度パラメータが8.5(cal/cm3)1/2以上である材料を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記犠牲層は、ヒドロゲルを含む請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒドロゲルが、ポリ(エチレングリコール)、N―イソプロピルアクリルアミド、ポリオキシエチレン―ポリオキシプロピレンブロック共重合体、プルロニック−ポリ(アクリル酸)グラフト共重合体、プルロニック−キトサングラフト共重合体、エラスチン模倣ポリペプチド、および前記の組み合わせおよび混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ステントコーティングを形成する工程は、
前記ステントの支柱の間の前記ギャップ領域によって露出されたバルーンの領域上に犠牲層を形成する工程と、
その後、前記ステント上にコーティングを形成する工程と、
その後、前記犠牲層を除去する工程であって、前記コーティング材が前記ステントの外側表面上に残る工程と、
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記犠牲層が、前記バルーンを流体にさらすことによって除去される、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記犠牲層には、オリゴ糖、多糖類、D型グルコース、グルコース、ヘパリン、イオン性塩、塩化カリウム、硫酸銅、重炭酸ナトリウム、ヨウ素塩、アミノ酸、ポリマー、活性物質、薬剤または二薬効結合薬剤(コドラッグ)からある群から選択された材料を含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記犠牲層は、低分子量材を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記犠牲層は、ヒルデブラント溶解度パラメータが8.5(cal/cm3)1/2以上である材料を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記犠牲層は、ヒドロゲルを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒドロゲルが、ポリ(エチレングリコール)、N―イソプロピルアクリルアミド、ポリオキシエチレン―ポリオキシプロピレンブロック共重合体、プルロニック−ポリ(アクリル酸)グラフト共重合体、プルロニック−キトサングラフト共重合体、エラスチン模倣ポリペプチド、および前記の組み合わせおよび混合物からなる群から選択される、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
カテーテルアセンブリのバルーン上に犠牲層を形成する工程と、
その後、ギャップによって分けられた支柱を含む前記ステントをバルーン上に取り付ける工程と、
その後、前記ステント上にステントコーティングを形成する工程と、
その後、前記犠牲層の全部またはそのほとんどを除去する工程と、を備える、
コーティングされたステント―バルーンアセンブリの製造方法。
【請求項18】
前記犠牲層を除去した後に、前記ステントの前記支柱の下の犠牲層のうちの一部がバルーン上に残る、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記犠牲層は、活性物質または治療薬剤を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
バルーン上にギャップによって分けられた支柱を含むステントを取り付ける工程と、
その後、前記ステントの支柱の間の前記ギャップの領域において、前記バルーン上に、犠牲層を形成する工程と、
その後、前記ステント上にコーティングを形成する工程と、
その後、犠牲層を除去する工程であって、前記コーティング材が前記ステントの外側表面上に残る工程と、を備える、
コーティングされたステント―バルーンアセンブリの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【公表番号】特表2008−510593(P2008−510593A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530249(P2007−530249)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/030759
【国際公開番号】WO2006/026587
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(504183388)アドヴァンスド カーディオヴァスキュラー システムズ, インコーポレイテッド (40)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/030759
【国際公開番号】WO2006/026587
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(504183388)アドヴァンスド カーディオヴァスキュラー システムズ, インコーポレイテッド (40)
【Fターム(参考)】
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