説明

コーティング・ブレードまたはドクタリング・ブレードを製造する方法

ここには、コーティング・ブレードまたはドクタリング・ブレードの製造のための方法が開示してあり、この方法において、ブレード先端のところのエラストマー耐磨耗性材料が連続プロセスで設けられる。製造中、塗布されたエラストマー材料の厚さは、塗布された組成物が完全に硬化する前にブレード(塗布されたポリマー組成物を含む)をコイルへ巻き取ることによって決まる。コイルの隣り合った回旋部は、塗布された組成物の初期厚さよりも小さい距離だけ分離しており、部分的に硬化した組成物のみがコイルの隣り合った回旋部によって所望の厚さおよび/または形状に変形されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟らかいエラストマー先端を備えたコーティング・ブレードまたはドクタリング・ブレードを製造する方法に関する。本発明は、また、本発明方法によって製造できるブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
加工用先端に耐磨耗性の軟らかいまたはゴム様エラストマー材料を備えるコーティング・ブレードまたはドクタリング・ブレードを製造する連続プロセスをEP1156889B1が開示している。軟らかいまたはゴム様の材料は、連続プロセスで超急速硬化性エラストマー組成物を用いてブレード先端に設けられる。先端材料を得るために閉じた鋳型を使用する際に従来技術には問題があったが、この問題は、都合よく、EP1156889に開示されているプロセスにより回避されていた。簡単に言えば、このプロセスは、ブレード基材に対して相対的な運動を与えられるバンドの形をした処理ステーションによって急速硬化性ポリマー組成物を塗布することからなるものであった。次いで、塗布された組成物が広がってブレード基材の縁の最先端に到達する。ここで、組成物が硬化して弾性のある不粘着性コーティングを形成する。
【0003】
上記のプロセスによって得られた塗布組成物の幾何学的な輪郭は、流動特性、粘度上昇率などの塗布組成物の流動学的な特性や反応性などによって決まるので、塗布組成物の幅しか制御できない。調節できるパラメータは、ポリマー組成物の特性、流し込み出力、処理ステーションとブレード基材の相対速度であった。
【0004】
なおもっと古い技術と比較していくつかの重要な利点を与えるけれども、上記889特許のプロセスは、一定の良く制御された厚さを有する制御輪郭を得るためには切削、機械加工、研削などのまだ多くの後処理を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1は、従来技術の製造プロセスそれ自体から得られるようなエラストマー組成物12を先端に備えたブレード10を概略的に示している。前述したように、所望の形状、厚さにエラストマー組成物を形成するには研削や後処理が必要である。
【0006】
本発明は、既に流し込み作業中にブレード20の耐磨耗性組成物22を所望の厚さに形成する方法を提供する。本発明による方法によって得られたブレード20の輪郭が図2に概略的に示してある。
【0007】
エラストマー材料からなる先端材料22を有するコーティング・ブレードまたはドクタリング・ブレードを実際に使用するに際して、耐磨耗性材料22の輪郭は、コーティング・プロセスまたはドクタリング・プロセスについていくつかの意味を有する。これが図3a、3bに示してある。図3aに示すように、ブレード20の面取り先端24は、使用中、コーティング・カラー26と基材28(たとえば、図3で矢印Wの方向に移動しているペーパーウェブ)と接触している。この加工用面取り先端24は、高い耐摩耗性を有し、エラストマー先端付きのブレードによって、コート紙29の非常に特殊な繊維被覆率が得られる。コーティング中、エラストマー材料22の頂面30は、ペーパーウェブ28の速度で移動するコーティング・カラー26と常に衝突する。このようにして、ブレード20によって削り取られた過剰なコーティング・カラーは、図3に矢印Rで示すように、コーティング・カラー回路(図示せず)に向かって戻るように再方向付けられ、コート紙29にとって所望のコーティング厚さを残す。エラストマー材料22のこの頂面30と接触しているコーティング・カラーは、速度および流れ方向で大きな変化を受ける。多くの場合、特に高固形物含量のコーティング・カラーを使用するとき、固形コーティング・カラー顔料32が蓄積し、頂面30に固着されたまま残る。ブレードの頂面30上のこの蓄積物32は、コーティング・カラー26の流れを変える原因となったり、その障害にすらなり得る。さらに、乾燥したコーティング・カラー片が表面から剥がれ落ち、面取り先端面24の下に閉じ込められたり、ブレードの下を通過したりする可能性がある。この種の事象は、代表的には、コーティング・ペーパーウェブ29上に「条痕」と呼ばれる線形の欠陥を生じさせる。それ故、頂面30についてのエラストマー材料22の表面特性、たとえば、摩擦係数および/または表面張力(非粘着性特性)は、ブレードの実際的な寿命および作成した紙製品のコーティング品質についての重要なファクタである。
【0008】
図3bは、フレキソ印刷プロセスまたは輪転グラビア印刷プロセスにおけるドクタリング・ブレードを概略的に示している。アニロックス・グラビアロールまたはクロム・メッキ・グラビアロール上の開放セル23はインク25で満たされている。エラストマー先端材料22を備えたドクター・ブレードは、ロール表面31から過剰なインクを取り除き、ドクタリング・プロセス後にインクで満たされたセル23のみを残す。ブレード先端材料は、図3aに示すものに類似した面取り部24を備えていてもよいし、図3bに27で示すようになんら面取り部を備えていなくてもよい。いずれの場合においても、エラストマー先端材料22の硬度を制御し、ブレード毎に変わらないドクタリング効果を確保する必要がある。
【0009】
EP1156889に開示されている方法は大量のブレードを高速で鋳造できるという点で有効であるが、あまり融通が利かない。ブレード先端材料の、形状、寸法、表面特性に関するすべての特性は、代表的には、後処理工程で得られる。しかしながら、このような後処理は時間がかかり、コスト高である。したがって、一般的に、後処理の必要性を最小限に抑えたり減らしたりする製造プロセスの必要性が従来技術にはあった。
【0010】
それ故、上記種類のエラストマー先端付きブレードを製造するための融通性のあるプロセスであって、後処理の必要性を減らしたプロセスを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項に記載したような方法によって達成される。
【0012】
摩耗しやすい縁部分に耐磨耗性ポリマー先端材料を有するコーティング・ブレードまたはドクタリング・ブレードであって、頂面と前記耐磨耗性ポリマーの加工用面取り部が異なった表面特性を有するコーティング・ブレードまたはドクタリング・ブレードを提供することも本発明の目的である。
【0013】
特に、耐磨耗性の軟らかいまたはゴム様エラストマー材料を備えた加工用先端を有するコーティング・ブレードであって、面取りした先端表面がエラストマー材料を露出させており、使用時に流動するコーティング・カラーに対面する頂面が非粘着性表面層を備えているコーティング・ブレードが提供される。この種のコーティング・ブレードを使用するときに得られる有益な効果は、ブレードの頂面への固形コーティング・カラー顔料または類似物の蓄積を減らし、ブレードの有効寿命を延ばし、生産されたコーティング製品のコーティング品質を向上させるということにある。
【0014】
全般的に言って、エラストマー超急速硬化性ポリマー組成物を使用して先端を耐磨耗性の軟らかいまたはゴム様の材料で覆った計量ブレードまたはドクタリング・ブレードを製造する方法が提供される。急速硬化性組成物は、液体状態でブレード基材に塗布され、ある程度まで広がる。ポリマー組成物が完全に硬化する前に、ブレード基材(ポリマー組成物が塗布されている)をコイル状に巻き取る。このとき、コイルの各回旋部が次々と開放鋳型として機能し、隣接した回旋部の流し込まれてはいるがまだ完全に硬化していないポリマーを所望の形状および/または厚さに変形させる。このようにして、材料がコイル形成によって「インライン」で所望の厚さを与えられるため、ブレード先端材料を所望の規則的な形状に研磨する後処理が容易になる。
【0015】
好ましくは、ブレード基材のコイルへの巻き取りは、同時に明確な等距離の間隔が得られるように連続した回旋部間にスペーサを導入しながら行う。この間隔は、ブレード上に設けたエラストマー材料の最終的高さ(厚さ)を決定する。
【0016】
ブレード基材のコイル状の巻き取りは、代表的には、コイル・リール上に一定のトルクを保ちながら実施し、コイルの各回旋部へ同じ変形荷重をかける。この変形荷重は、ポリマー組成物がさらに硬化して流し込まれたエラストマー材の輪郭を固定するまで維持するとよい。最終硬化は、随意の後硬化工程で行うことができる。
【0017】
本発明による方法は、いくつかの重要な利点を持つのに加えて後処理の必要性を減らす。簡単に言えば、ブレードはその異なった表面に異なった特性を与えて特殊な必要性に合わせることができる。
【0018】
エラストマー材料で先端を覆ったブレード(たとえば、EP1156889に開示されているもの)は、時には、計量用ブレードと呼ばれる。移動しているウェブ上に残っている液体(たとえば、ペーパーウェブ上のコーティング・カラー)の量は、液体のタイプ、ブレード輪郭、ブレード・ホルダ設定(ウェブに対する圧力)およびすべての流体力学的条件、特にブレードと移動ウェブと相対速度で決まる。或る種の用途では、いわゆる容積計量法が使用される。その場合、ドクタリング装置または計量装置は、或る特定体積のコーティング液のウェブへの転移を可能にする規則的なパターンを備える。たとえば、このために溝付きの計量ロッドを使用できる(たとえば、EP1027470参照)。このような計量ロッドは、ロッド・ベッドと、ロッドを回転させるモータ駆動部と、ロッドとロッド・ベッド間にある水潤滑/冷却装置とからなる支持体に装着される。体積計量のための表面パターンを有するエラストマー材料で先端を覆ったブレードを製造するという可能性により、この非常に複雑な体積計量システムを、簡単なブレード・ホルダとそれ自体が体積測定可能な計量ブレードとで置き換えることができる。
【0019】
さらに、本発明による方法によれば、エラストマー材料の頂面に特殊な性質を与えることができる。たとえば、頂面が、体積測定目的のための表面構造を備えたり、種々の化学的または物理的な表面特性を備えたりすることができる。製造後、前方面取り部が(たとえば、研削によって)形成されると、大量のエラストマー材の固有の性質がこの表面に露出される。しかしながら、頂面に適用された種々の特性は残る。図面の図3aを再び参照すれば、これが頂面および前方面取り部の表面特性についての非常に有利な「切り離し(decoupling)」を行うことは明らかである。
【0020】
製造中、特殊な性質が、ブレードのコイルへの巻き取り中にブレードの回旋部に連続的に導入されるテープ等によってエラストマー・コーティングの頂面に与えられるという便利さがある。
【0021】
それ故、本発明は、オプションとして、i)明確に規定されたエラストマー厚さ、ii)加工用前方面取り部と頂面との間で切り離した表面特性および/またはiii)体積計量のために頂面上に設けた表面パターンという性質を有するブレードを製造する方法を提供することによって従来技術に優るいくつかの興味をそそる改良点を提供する。また、当業者であれば本発明のさらに有利な用途を見出せると考えられる。
【0022】
以下、いくつかの図示実施例を参照することによって本発明をさらに詳細に説明する。以下の説明では図面を参照する。
【0023】
図1は、上記の従来方法によって得られるような、加工用先端にエラストマー耐磨耗性材料を有するブレードの輪郭を概略的に示している。
図2は、本発明の方法によって得られるような、加工用先端にエラストマー耐磨耗性材料を有するブレードの輪郭を概略的に示している。
図3aは、コーティング・ブレードとして使用されるブレードを示す図である。
図3bは、ドクタリング・ブレードとして使用されるブレードを示す図である。
図4は、本発明による方法を実施するためのセットアップの一例を概略的に示している。
図5は、本発明によるコイル状に巻いたブレードの側面図を概略的に示している。
図6は、本発明による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1には、長手方向縁部分を耐磨耗性ポリマー組成物12でコーティングしたブレード10の概略側面図が示してある。この図は、EP1156889に記載されている従来方法によって得られるようなポリマー組成物の輪郭を示している。耐磨耗性先端材料を塗布した後、代表的には、ブレードに研削作業を行ってコーティングを所望の形状、厚さに形成する。研削作業後、ブレードの輪郭は、ほぼ図2に概略的に示すようなものとなる。
【0025】
本発明は、コーティング・ブレードまたはドクタリング・ブレード20を製造する方法であって、図2に示すような輪郭が流し込みプロセスで直接得られ、ブレード20のいかなる後処理もかなり容易にする方法を提供する。
【0026】
図4は、本発明による方法を実施するためのセットアップの一例を概略的に示している。ブレード基材40(好ましくは鋼製バンド)は、保管リール(図示せず)から供給され、超急速硬化性の多成分ポリマー組成物を取り扱うことのできる混合・供与・計量分配機42を通過する。図4に44で示すように、混合済みの樹脂成分は、ディスペンサ42から直接ブレード基材40上に注がれる。製造プロセス中、ブレードは収集リール46上へ連続的にコイル状に巻き取られる。ディスペンサ42と収集リール46間の距離およびブレード基材の速度は、リール46にコイル状に巻き取られるときに基材に塗布されたポリマー組成物が不粘着性ではあるがまだ完全に硬化しないように選定する。コイル状に巻き取る前に、機能テープ48等をブレード基材に適用して種々の表面特性をポリマー・コーティング(これは以下により詳しく説明する)に与えることができる。リール46への巻取り中、スペーサ50は、コイルの各回旋部間に導入して隣り合ったコイル回旋部を等間隔に維持することができる。コイルの回旋部間の分離量(すなわち、スペーサの厚さ)は、塗布したポリマー組成物の初期厚さよりも小さい。したがって、この塗布組成物が、コイル状巻き取り中、コイルの回旋部間の分離量(スペーサ50の厚さ)で決まる所望の厚さに変形させられる。スペーサ50は、対応する保管リール52から連続的に供給され得る。
【0027】
エラストマー先端材料の厚さを制御するのにスペーサ50を使用するのが好ましいが、収集リール46に与えたトルクを使用してもよい。このようにすれば、個別のスペーサ50を用いずに変形荷重を制御できる。
【0028】
図5は、リール46上にコイル状に巻き取られたブレードの側面図を示している。ブレード基材40の隣り合った回旋部がスペーサ50によって分離された状態で示してある。この状態では、塗布されたポリマー22’の初期厚さがスペーサ50と同じ厚さに変形させられている。テープ48が導入された場合、このテープは各回旋部の間でポリマー堆積物の上に位置することになる。
【0029】
以下、本発明による方法に含まれる代表的な工程を好ましい実施形態を参照しながら説明する。しかしながら、後述する工程のいくつかが随意の工程であることには留意されたい。
【0030】
工程1
製造プロセスは、たとえば、冷間圧延金属の基材から始まる。基材は、厚さ0.1〜1.5mm、幅50〜200mm、長さ100m以上のバンドまたはストリップの形を有する。ゴム様堆積物を塗布しようとしている基材の表面領域は、サンドブラストまたはグリットブラストによって粗面化すると好ましい。次いで、基材を脱脂してから清掃してもよい。粗面化領域は、通常、基材の長手方向部分であり、ブレードについて意図した用途に応じて約5mm〜約20mmの幅を有する。この工程は、随意ではあるが、好ましい工程である。
【0031】
工程2
基材の適切な領域を粗面化した後、プライマーまたは被着材を塗布してもよい。エラストマー材料組成物と基材との良好な接着を達成するために、時には中間結合層の塗布を行うのが適切である。プライマーまたは被着材は、好ましくは、無溶媒または溶媒ベースまたは水性被着材の溶液である。被着材溶液は、吹き付け、ブラッシング、ローラ・コーティング、ドクタリング、フロー・コーティングなどによって粗面化領域に塗布し、たとえば、5〜30μmの乾燥厚さの均一で滑らかなコーティングを得るとよい。溶媒(存在する場合)または水の蒸発を促進させるために、代表的には、ブレードを熱風トンネルに通し、コーティングを不粘着性とし、ブレード基材をコイル状に巻き取りするための準備を整えるとよい。この工程は、随意ではあるが、好ましい工程である。
【0032】
工程3
5〜30秒ほどの短いポットライフを有する超急速硬化性多成分樹脂系を取り扱うことのできる低圧または高圧の混合・供与・計量分配機を使用して被着材中間層上へゴム様組成物を塗布する。混合した樹脂成分は、混合室から直接にブレード基材上へ注ぎ落とす。このとき、ブレード基材と計量分配機(計量分配ヘッド)との間に相対運動を与える。組成物のポットライフ(5〜30秒)中に、樹脂が広がる。好ましくは、基材の縁に達するまで広がる。次いで、5〜30秒のこの短い時間の後、組成物の粘度が成分の反応(初期硬化)により増大し、さらなる広がり、すなわち、基板の縁からしたたり落ちることを防止する。塗布された樹脂が巻取ロールに達する時間までには、樹脂は、ほぼ不粘着性であるが、なお外部荷重の適用によって変形しやすい状態に硬化する。それ故、コーティング済みのブレードは、典型的には、ポリマー組成物のゲル化時間内にコイル状に巻き取られる。
【0033】
工程4
次の工程は、塗布された組成物についての輪郭制御と表面特性を扱う工程であり、コーティング済み基板のコイルへの巻き取り中に実施する。エラストマー・コーティングの輪郭は、好ましくは、基材をコイル上へスペーサと共に巻き取ることで決まる。スペーサは、基材上に流し込まれた部分硬化のエラストマー堆積物の初期厚さよりも小さい厚さを有する。要するに、流し込まれた材料は、コイル上の(向きに応じて)先行または次の回旋部と接触することになり、したがって、流し込まれた材料が回旋部の間隔(たとえば、スペーサの厚さで決まる間隔)で決まる程度に変形し、同時に、隣り合ったコイル回旋部の背面(凹面)を再生する。これは図4に概略的に示してある。コイル上へのブレード・ストリップの巻取りは、典型的には、一定トルクで行われ、コイルの個々の回旋部への同様の変形荷重を発生する。コイルの隣り合った回旋部は、典型的には、半径方向に等距離のところにあり、塗布された組成物に一定の厚さを与える。荷重は、たとえば、後述するような引き続く後硬化工程においてエラストマー堆積物がさらに硬化するまで維持する。エラストマー堆積物の頂面に対する種々の表面特性の付与も巻取り中に行われる。このために、部分硬化エラストマー材料と化学的に反応できる接着剤で場合に応じて片面を覆った適切なテープ等を別個の装置で繰り出し、コイルの最終回旋部とコイル上に巻き取られたばかりのストリップとで形成されたニップ部に導入する。テープは、流し込まれたエラストマー材料の上に貼付され、テープとエラストマー材料が押し合って(テープの接着剤側がエラストマー材料に対面している)所望の複合構造を形成する。同時に、エラストマーの輪郭は、上記の機構によって制御される。同様にして、エラストマーの構造化表面は、構造化テープを用いても得ることができる。その場合、テープ構造がエラストマー材料上に反対形状で複写される(代表的には、接着剤のないテープを使用した場合)、または、テープ自体を組み込んだ複合構造が形成される(テープの接着剤側がエラストマー材料に対面する)。取り出し後にエラストマー材料のほぼ正味の形状輪郭(図3aに示す前方面取り部24)を達成するように、さらにテープまたはスペーサの輪郭を形成してもよい。
【0034】
工程5
さらに随意の工程として、流し込まれたエラストマー堆積物を後硬化工程で熱処理してもよい。これは、典型的には、コイル(リール)を高温の空気循環式オーブンに導入することによって、ブレード・ストリップをなおコイルに巻き取りながら実施することになる。たとえば、コイル状のストリップは、16〜24時間、約80〜85℃の温度に保つとよい。この後硬化処理後、エラストマー材料の輪郭および機能層が完全に固定され、次いで、スペーサが取り出され、ブレードをコイルから繰り出すことができる。
【0035】
工程6
最後に、エラストマー・ブレード材料は、典型的には、所望の形状および寸法まで研削し、ブレードを適切な寸法に切断する。たとえば、加工用前方面取り部は、工程4でまだ得られていないならば、たとえば、輪郭付きテープまたはスペーサ等を用いてこの工程中に形成できる。
【0036】
上記種々の処理工程を説明すべく、いくつかの実際的な実施例を以下に記載する。
【0037】
実施例1
この実施例は、ブレード先端に塗布したエラストマー材料を有するコーティング・ブレードまたはドクタリング・ブレードを製造することを示している。エラストマー材料ブレード先端は、制御された輪郭を有し、連続方法で得ることができる。
【0038】
工程1および2
厚さ0.457mm、幅100mmおよび長さ100mの冷間圧延鋼からなるリールを、片面で、1つの縁から13mm幅の長手方向ストリップを形成する領域にわたってサンドブラストする。ブラスト作業は、Edelkorund weiss (WSK) F 180 (Treibacher)を使用して実施する。粗面化表面領域は、Cilbond 49 SF (CIL)のような結合剤で連続的にコーティングする。結合剤は、流し込まれたポリウレタン類の鋼への接着を促進するために使用する。結合剤溶液は、希釈することなく、厚さ0.15mm、幅4cmの湾曲鋼ブレードによって塗布し、ほぼ15μmの乾燥厚さの一定の滑らかなフィルムでサンドブラスト済みの領域全体を覆う。溶媒の蒸発後、コーティング済みの鋼のリールは、空気循環式オーブンにおいて、2時間にわたって100℃で硬化させる。
【0039】
工程3〜6
ブレード上へ流し込むのに使用した液体エラストマー組成物は、低圧混合・供与・計量分配機によって結合剤の上に塗布する。この組成物は、MDI/ポリエーテル・プレポリマーAdiprene RFA 1001 (Crompton)と連鎖延長剤Adiprene RFB 1070 (Crompton)とからなる。ポットライフは25〜30秒である。液体混合物は、10m/分の線形速度で移動している、基材上の幅13mmの結合剤ストリップ内に縁0.5cmを残して0.30kg/分の出力で塗布する。移動している基材は、注入点から4メートル離れたところで巻き取り、組成物がゲル化し、不粘着性となるのに充分な時間を与える。流し込まれたエラストマー組成物の輪郭を制御するのに使用されるスペーサは、1.9mmの厚さ、70mmの幅および120メートルの全長を有する。次いで、巻き取られた基材およびスペーサのリールまたはコイルを空気循環式オーブンにおいて、24時間85℃で熱処理する。冷却した後、リールを繰り出し、今や完全に硬化したエラストマ・ストリップは、70のショアAで表される硬度と、12mmの幅、1.9mmの厚さ(スペーサ厚さに等しい)を有する平らで良く制御された輪郭とを有する。最後に、ブレードは、最終的ブレード形状寸法に連続的に研削し、次いで、所望の長さに切断する。
【0040】
実施例2
この実施例は、制御された輪郭および機能表面特性を有するエラストマー材料先端付きブレードの製造を示している。
【0041】
工程1および2
これらの初期工程は、上記の実施例1に記載したと同じ要領で実施する。
【0042】
工程3〜6
ブレードに流し込むのに使用する液体流し込みエラストマー組成物は、低圧混合・供与・計量分配機によって結合剤の上に塗布する。この組成物は、MDI/ポリエーテル・プレポリマーAdiprene RFA 1001 (Crompton)と連鎖延長剤Adiprene RFB 1070 (Crompton)とからなる。ポットライフは25〜30秒である。液体混合物は、10m/分の線形速度で移動している、基材上の幅13mmの結合剤ストリップ内にブレード縁0.5cmを残して0.30kg/分の出力で塗布する。移動している基材は、注入点から4メートル離れたところで巻き取り、組成物がゲル化し、不粘着性となるのに充分な時間を与える。流し込まれたエラストマー組成物の輪郭を制御するのに使用されるスペーサは、1.9mmの厚さ、70mmの幅および120メートルの全長を有する。同時に、12.7mmの幅および0.09mmの厚さを有するPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)接着テープ(3M 5490)を、コイルの最終回旋部と巻き取られたばかりの基材とで形成されるニップ部に導入し、流し込まれたエラストマー材料の上に載せる。このとき、テープと流し込まれたエラストマー材が圧着され(テープの接着剤側が流し込まれたエラストマー材に向いている)、所望の複合構造を形成すると同時に輪郭を制御する。次いで、巻き取られた基材ストリップ、スペーサおよびテープのコイルを空気循環式オーブンにおいて、24時間85℃で熱処理する。冷却後、コイルを繰り出し、今や完全に硬化したエラストマ・ストリップは、PTFE機能表面と、12.7mmの幅、1.9mmの厚さ(スペーサ厚さに等しい)を有する平らで良く制御された輪郭とを有する。最後に、ブレードは、最終的ブレード形状寸法に連続的に研削し、次いで、所望の長さに切断する。
【0043】
上記実施例2と同様にPTFEテープを使用することで、ブレードの頂面に粘着したコーティング・カラー顔料に関する問題が低減するか排除されるという利点を得ることができる。ブレードをその最終的な形状寸法に研削し、加工用前方面取り部を設けたとしても、PTFEは、エラストマー・コーティングの頂面になお残る。要するに、これが非粘着性表面を与え、ブレード使用時の従来技術ではしばしば遭遇する前記悪影響を減らす。
【0044】
別の実際的な実施例においては、上記実施例2のPTFEテープの代わりに、0.11mmの厚さを有する超高分子量ポリエチレン(UHMW PE)(3M 5425)を用いる。場合によっては、UHMW PEのテープは、ポリエチレン・テープが一般的に低コストであるからPTFEテープ以上に好ましい。
【0045】
さらに別の実際的な実施例においては、上記実施例2のPTFEテープの代わりに構造化テープ(接着剤なしのテープ)を用い、エラストマー材料上へテープ構造の反対形状を再生する(テープ構造は、巻き取り中、エラストマー材料に押し込められる)。
【0046】
コーティング・ブレードまたはドクタリング・ブレードを製造する本発明方法は、頂面および加工用面取り部が異なった表面特性を有するブレードを便利に製造するのに使用できる。たとえば、頂面が非粘着性を備え、この頂面への固形コーティング・カラー顔料の蓄積に関する問題を防いでもよい。同時に、塗布されたエラストマー材料の全性質を、たとえばブレードの加工用面取り部で具現し、使用してもよい。あるいは、塗布されたエラストマー材料の頂面が、体積計量のための表面構造を備えていてもよい。
【0047】
結論
ここに、ブレード先端にあるエラストマー耐磨耗性材料を連続プロセスで提供する、コーティング・ブレードまたはドクタリング・ブレードの製造方法を開示してきた。製造中、塗布されたエラストマー材料の厚さは、塗布された組成物が完全に硬化する前にコイル状にブレード(塗布されたポリマー組成物を含む)を巻き取ることによって決まる。コイルの隣り合った回旋部は、塗布された組成物の初期厚さよりも小さい距離だけ分離しており、部分硬化した組成物が、完全に硬化する前に、コイルの隣り合った回旋部によって所望の厚さおよび/または形状に変形させられる。
【0048】
都合の良いことには、本発明の方法は、頂面および加工用面取り部について異なった表面特性を有するブレードを製造したり、体積計量目的に適した構造化頂面を有するブレードを製造したりするのに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】上記の従来方法によって得られるような、加工用先端にエラストマー耐磨耗性材料を有するブレードの輪郭を概略的に示している。
【図2】本発明の方法によって得られるような、加工用先端にエラストマー耐磨耗性材料を有するブレードの輪郭を概略的に示している。
【図3a】コーティング・ブレードとして使用されるブレードを示す図である。
【図3b】ドクタリング・ブレードとして使用されるブレードを示す図である。
【図4】本発明による方法を実施するためのセットアップの一例を概略的に示している。
【図5】本発明によるコイル状に巻いたブレードの側面図を概略的に示している。
【図6】本発明による方法のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩耗しやすい長手方向縁部分に塗布された耐磨耗性ポリマー先端材料を有するコーティング・ブレードまたはドクタリング・ブレードを製造する方法であって、ブレード基材に急速硬化性ポリマー組成物を塗布する工程と、塗布した組成物を広がらせ、部分的に硬化させて不粘着性先端材料を形成する工程と、コイルの隣り合った回旋部が隣り合った回旋部の部分硬化組成物を変形するように先端材料で覆ったブレード基材をコイル状に巻き取る工程と、ブレード基材がまだコイル状に巻き取られている間に塗布された組成物をさらに硬化させる工程とを含む上記方法。
【請求項2】
塗布された組成物について一定の厚さが得られるようにコイルの隣り合った回旋部が等距離のところにあり、隣り合ったコイル間の距離が、好ましくは、約0.25mmから約3mmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コイルの隣り合った回旋部間の距離が巻取り中に回旋部間に導入されるスペーサで決まる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
組成物をさらに硬化させる工程が、塗布された組成物を高温で後硬化させることを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
後硬化が、16〜24時間、高温、好ましくは約80度〜85度の温度の空気循環式オーブン内へ巻き取ったコイルを導入することで実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
さらに、ポリマー組成物を塗布する前にブレード基材にプライマーまたは被着材を塗布する工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
プライマーまたは被着材は、5〜30μmの乾燥厚さに塗布する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
さらに、プライマーまたは被着材を塗布する前にブレード基材を粗面化する工程を含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
さらに、ブレードを事後研削して、硬化した耐磨耗性エラストマー材料にとって所望の形状、寸法を得る工程を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
急速硬化性ポリマーを塗布する工程が、5〜30秒のポットライフを有するポリマー組成物を使用して実施される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
さらに、巻取り中に、塗布された組成物とコイルの隣り合った回旋部の間にテープを導入する工程を含み、該テープが、塗布されたポリマー組成物の表面に所望の性質または形状を付与する目的を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
塗布されたポリマー組成物と接触しているテープ面が接着性であり、テープおよび塗布された組成物が圧着されて該組成物の表面に複合構造を形成する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
塗布されたポリマー組成物と接触しているテープ面が巻き取り工程中に該組成物上へ複写される表面構造を備えている、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
さらに、ブレードを事後研削して、テープから付与された性質を有する頂面と、ポリマー組成物全体の性質を有する研削面とを得る工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
事後研削が、ポリマー組成物全体の性質を有する加工用前方面取り部を得るように実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
テープが、(ポリ)テトラフルオロエチレン(PTFE)または超高分子量ポリエチレン(UHMW PE)からなる、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
テープがポリマー先端材料の頂面に非粘着性を与える、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
急速硬化性ポリマー組成物が、ポリウレタン類、スチレンブタジエン・ポリマー類、ポリオレフィン、ニトリルゴム、天然ゴム、ポリアクリレート、ポリクロロプレン、熱可塑性エラストマー、ポリシロキサンから選ばれるポリマーである、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
急速硬化性ポリマー組成物がポリウレタンからなる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
加工用前方面取り部および頂面を有する、請求項11に記載の方法によって得られたコーティング・ブレードまたはドクタリング・ブレードであって、頂面が非粘着コーティングを備えているコーティング・ブレードまたはドクタリング・ブレード。
【請求項21】
頂面が、(ポリ)テトラフルオロエチレン(PTFE)または超高分子量ポリエチレン(UHMW PE)の層を備えており、好ましくは該頂面に取り付けられたテープの形をした層を備えている、請求項20に記載のブレード。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−525186(P2008−525186A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548726(P2007−548726)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013761
【国際公開番号】WO2006/069688
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(501001430)ベーテージェー・エクレパン・ソシエテ・アノニム (4)
【Fターム(参考)】