説明

コーティング溶液の調製方法および基板をコーティングするための同コーティング溶液の使用方法

【課題】基板のサイズが増加しても組成および厚さが一様なコーティングを提供すること。
【解決手段】コーティング溶液の調製方法は、低級アルコール;ポリエチレングリコール;錯化剤;および水;を含む第1溶液を提供する工程、高級アルコール;および少なくとも1つの金属アルコキシド(金属アルコキシド中の金属はジルコニウム、アルミニウム、チタン、タンタルおよびイットリウムから選択される);を含む第2溶液を提供する工程、第1溶液と第2溶液を混合し、少なくとも1つの金属アルコキシドを金属酸化物とアルコールに加水分解することにより、ゾル・ゲル溶液を形成する工程、低級アルコールと少なくとも1つの金属アルコキシドの加水分解によって生じるアルコールとを除去することにより、濃縮溶液を形成する工程、および濃縮溶液に中級アルコールを加えることにより、コーティング溶液を形成する工程、からなる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング溶液の調製方法、同方法により調製されたコーティング揺曳機、および基板をコーティングするための同コーティング溶液の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スピンコーティングは基板をコーティングするための周知技術である。スピンコーティング方法による基板のコーティングは、いくつかのパラメータに依存している。本発明の課題をウエハのコーティング、特に300mmウエハのコーティングを参照しながら説明するが、それは本発明がウエハのコーティングに限定されることを意図しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ウエハのスピンコーティングは、ウエハサイズとコーティング溶液の粘度に大いに依存する。100mmサイズのウエハの場合、ウエハ上に種々のコーティング材料(例えばフォトレジストまたはゾル・ゲル溶液)をコーティングする周知技術がある。300mmウエハにウエハを拡大した場合、ウエハの径の拡大から多くの問題が生じる。中心からウエハの境界線までの角速度の差が、100mmウエハに比べて非常に高くなる。従って、ウエハに適用されるコーティング溶液は、基板に一定のコーティングを与えるために多いに湿潤性(wettable)でなければならない。さらに、ウエハの表面積全体にわたってコーティングの構成および厚みが不均一になるのを回避するために、溶液はウエハの外側の縁で速く乾きすぎてはならない。これは、特に高い固形含量を含むゾル・ゲル溶液では特に問題である。
【0004】
さらに、コーティング層内の応力はウエハのサイズが増加するにつれてより重大な問題となる。ゾル・ゲルコーティングの現在の層は、300MPa以上の高い応力を導入する。このような高い応力により、大きなウエハは小さなウエハよりも曲げられやすい。さらに、ウエハの表面積が大きくなればなるほど、ウエハをコーティングしている最中のコーティング層の組成および厚さの不均一さが大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載される本発明の第1態様によれば、コーティング溶液を調製する方法は、低級アルコール;ポリエチレングリコール(PEG);錯化剤;および水;を含む第1溶液を提供する工程、高級アルコール;および少なくとも1つの金属アルコキシド、同少なくとも1つの金属アルコキシド中の金属がジルコニウム、アルミニウム、チタン、タンタルおよびイットリウムから成るグループから選択される;を含む第2溶液を提供する工程、第1溶液と第2溶液を混合し、少なくとも1つの金属アルコキシドを金属酸化物とアルコールに加水分解することにより、ゾル・ゲル溶液を形成する工程、低級アルコールと少なくとも1つの金属アルコキシドの加水分解によって生じるアルコールとを除去することにより、濃縮溶液を形成する工程、および濃縮溶液に中級アルコールを加えることにより、コーティング溶液を形成する工程、からなる。
【0006】
請求項17に記載の本発明の第2態様によれば、本発明の第1態様の上記の方法によりコーティング溶液が提供される。
請求項18に記載の本発明の第3態様によれば、基板をコーティングする方法は、基板と、低級アルコール;ポリエチレングリコール;錯化剤;および水;を含む第1溶液を提供する工程、高級アルコール;および少なくとも1つの金属アルコキシド、同少なくとも
1つの金属アルコキシド中の金属がジルコニウム、アルミニウム、チタン、タンタルおよびイットリウムから成るグループから選択される;を含む第2溶液を提供する工程、第1溶液と第2溶液を混合し、少なくとも1つの金属アルコキシドを金属酸化物とアルコールに加水分解することにより、ゾル・ゲル溶液を形成する工程、低級アルコールと少なくとも1つの金属アルコキシドの加水分解によって生じるアルコールとを除去することにより、濃縮溶液を形成する工程、および濃縮溶液に中級アルコールを加えることにより、コーティング溶液を形成する工程、という工程により調製されたコーティング溶液とを提供する工程;コーティング溶液を基板上にスピンコーティングして、コーティングされた基板を形成する工程;およびコーティングされた基板を乾燥工程に供することにより、基板上に乾燥コーティングを形成する工程;からなる。
【0007】
請求項31に記載の本発明の第4の態様によれば、本発明の第3態様により上記の方法によりコーティングされたウエハが調製される。
本発明の基本的な考え方は、表面を高度に濡らすことができると共に、スピンコーティングで高い均質性(homogeneity)と一様性(uniformity)で大きな基板にフィルムが調製
される粘度を有するコーティング溶液を提供することである。コーティング溶液は、基板に厚いフィルムを形成すべく、スピンコーティングにより大きな基板の表面に適用することができる。
【0008】
さらに、上記プロセスは、コーティングされたフィルムを高速熱アニールプロセスまたは非常に迅速な(very quick)アニールプロセスでクラックをより生じにくい応力の少ない基板上のコーティングへと変換するために使用することもできる。したがって、金属酸化物の非常に高密度なコーティングが生じる。
【0009】
コーティング溶液の粘度を増大させるためにコーティング溶液内の低級アルコールを中級アルコールと置き換えることにより、およびコーティング溶液を調製するために種々の化学物質の特定の組み合わせにより置き換えることにより、スピンコーティングによる基板上の厚いコーティングの調製のために使用することができるコーティング溶液を得ることができる。高級アルコールとPEGの使用により、表面のコーティング溶液の急速な乾燥が防止される。コーティング溶液が速く乾くと、コーティングは不均質になる。この非一様さはストライエーション(striation)とも呼ばれ、表面上のコーティングの非一様
な乾燥によって生じる。
【0010】
乾燥工程に加えて、コーティングのアニーリングが行なわれ得る。したがって層の転換は2工程からなる熱処理であり得る。2工程熱処理の第1の工程は、予備焼成または乾燥工程である。この工程では層が滑らかになり、応力形成が減少する。第2の工程は高い加熱速度でのアニール工程である。アニール工程はクラックの生成を減少し、かつ層の密度を高めるために行われる。
【0011】
好ましい実施形態はそれぞれの従属請求項に列挙される。
以下の実施形態は、本発明の第1および第2の態様の実施形態である。
1実施形態によれば、低級アルコールは鎖長が低いアルコールである。低鎖長は4個の炭素原子以下の鎖長である。好ましくは、アルコールはC1−C3アルコール、より好ましくはエタノール、n−プロパノールまたはイソプロピルアルコールである。低級アルコールの使用によって、PEG、錯化剤および水の良好な可溶性を達成することができる。6個よりも多い炭素原子を有するアルコールが使用された場合、第1溶液のすべての成分からなる溶液を得るのは難しい。さらに、低級アルコールはその沸点が低いため、容易に除去することができる。
【0012】
別の実施形態によれば、高級アルコールはC8−C20アルコールである。好ましくは、
高級アルコールはC9−C12アルコールであり、最も好ましくはデカノールである。アル
コールは非分岐アルコールであってもよいし分岐アルコールであってもよい。高級アルコールは金属アルコキシドを溶解させ、かつ溶液の粘度を増大させる役割を果たす。したがって、金属アルコキシドを溶解させる高級アルコールであればいかなる高級アルコールが使用されてもよい。
【0013】
別の実施形態では、中級アルコールは鎖長が中程度のアルコールである。鎖長が中程度のアルコールはC5−C10アルコールである。中級アルコールは好ましくはペンタノール
である。ここでも、アルコールは非分岐アルコールであってもよいし分岐アルコールであってもよい。
【0014】
金属アルコキシドの加水分解中、水が消費される。生じた溶液は親水性が低く、含まれる親水性の溶媒(水)が少ない。低級アルコールをより高級なアルコールと置き換えることにより、コーティング溶液の粘度を増大させることができる。種々異なる中級アルコールを使用することにより、コーティング溶液の粘度をコーティングプロセスの必要に合わせて調整することができる。中級アルコールの鎖長が高いほど、溶液の粘度は高くなる。
【0015】
上記のアルコールは、いずれも、n−アルコール(非分岐すなわち線形のアルコール)であってもよいし、分岐アルコールであってもよい。
金属アルコキシドを形成するために使用されるアルコキシドは好ましくはC1−C4アルコキシドである。好ましいアルコキシドはエチルアルコキシドおよびプロピルアルコキシドである。プロピルアルコキシドはn−プロピルアルコキシドまたはイソプロピルアルコキシドである。かくして金属アルコキシドは、ジルコニウムエトキシド(Zr(OEt)4)、ジルコニウムn−プロポキシド(Zr(OPr)4)、ジルコニウムイソプロポキシド(Zr(OiPr)4)、アルミニウムエトキシド(Al(OEt)3)、アルミニウム
n−プロポキシド(Al(OPr)3)、アルミニウムイソプロポキシド(Al(OiPr)3)、チタンエトキシド(Ti(OEt)4)、チタンn−プロポキシド(Ti(OPr)4)、チタンイソプロポキシド(Ti(OiPr)4)、タンタルエトキシド(Ta(O
Et)5)およびイットリウムイソプロポキシド(Y(OiPr)3)から選択され得る。
ここで、Etはエチル基(CH2−CH3)を表わす。Prはn−プロピル基(CH2−C
2−CH3)を表わす。iPrはイソプロピル基(CH(CH32)を表わす。
【0016】
金属アルコキシドは追加の溶媒に入れて提供されてもよい。金属アルコキシドが追加の溶媒に入れて提供される場合、この溶媒は好ましくは低級アルコールを除去する間に容易に除去することができる溶媒である。従って、追加の溶媒は、低級アルコール、すなわち金属アルコキシド(すなわちアルコキシド)の加水分解によって生じるアルコールである。
【0017】
好ましくは、低級アルコールとアルコキシドは同一の鎖長および構造であるか、または1個の炭素原子だけ鎖長が異なる。金属アルコキシドを提供するためにさらなる追加の溶媒が使用される場合、この追加溶媒も好ましくは低級アルコールまたはアルコキシドのいずれかと同一であるか、1個の炭素原子だけ鎖長が異なる。加水分解後、低級アルコールと、金属アルコキシドの加水分解によって生じるアルコールは除去される。両アルコールの構造および鎖長が同一であるかまたは非常に類似している場合、両アルコールの沸点は類似し、より容易に同時に除去することができる。
【0018】
1実施形態では、錯化剤すなわち安定化剤は、アセチルアセトン(AcAc)(CH3
−C(O)−CH2−C(O)−CH3)およびアセト酢酸エチル(EAA)(CH3−C
(O)−CH2−C(O)−O−CH2−CH3)から成るグループから選択される。
【0019】
錯化剤および安定化剤という用語は本願ではそれらの等しい意味に使用される。錯化剤はゾル・ゲル形成中および最終ゾル・ゲル溶液中の金属酸化物を安定させる。好ましくはアセチルアセトンはジルコニウムアルコキシドを安定させるために使用される。アセト酢酸エチルによってはアルミニウムアルコキシドが安定され得る。
【0020】
別の実施形態では、ポリエチレングリコール(PEG)は200〜10,000の範囲の分子量を有する。好ましくは、PEGの分子量は400〜3,000の範囲である。特に好ましいPEGはPEG600である。溶液中のPEGは基板をコーティングする間の基板のよい湿潤性を保証する。さらに、溶液の粘度はPEG量の増加およびPEGの分子量の増加によって増加する。
【0021】
別の実施形態では、金属アルコキシドは、6−16mol% イットリウムアルコキシドと84−94mol% ジルコニウムアルコキシドの混合物であり得る。上記のイットリウムアルコキシドおよびジルコニウムアルコキシドのすべてが使用可能である。イットリウムアルコキシドとジルコニウムアルコキシドの混合物が使用される場合、基板へのコーティング溶液のコーティングによって得られる最終コーティングは、イットリウム安定化ジルコニウムアルコキシドである。
【0022】
一般に、金属アルコキシドの加水分解後のコーティング溶液中の金属酸化物の量は、コーティング溶液に基づいて10重量%から22%までの範囲である。好ましくはコーティング溶液は14−18重量%の範囲の金属酸化物を含む。
【0023】
第1溶液中の低級アルコールは水、錯化剤およびポリエチレングリコールを溶解させるために使用されるため、それら3つの成分を溶解させるためなら任意の量の低級アルコールが使用されてよい。低級アルコールのモル量は2つの溶液中の少なくとも1つの金属アルコキシドのモル量の3−5倍の範囲で選択可能である。これは、第1溶液と第2溶液の混合物が、同混合物内の金属アルコキシドのモル量に対して3−5倍のモル量の低級アルコールを含むことを意味する。
【0024】
第1溶液中の錯化剤のモル量は、第2溶液中の金属アルコキシドのモル量の1〜1.5倍に好ましくは調整される。第1溶液と第2溶液の混合物中の錯化剤のモル量は、同混合物中の金属アルコキシドのモル量の1〜1.5倍の範囲にある。
【0025】
別の実施形態では、第1溶液中の水のモル量は、第2溶液中の金属アルコキシドのモル量の3〜5倍の範囲である。第1溶液中の水は、金属アルコキシドを加水分解して金属酸化物を形成するために、ゾル・ゲルプロセスで使用される。この加水分解はゾル・ゲルプロセスを形成する基本的反応である。金属アルコキシドが完全に加水分解しないようにするため、混合物中の水のモル量は混合物中の金属アルコキシドモル量よりも少ないか、多くてもそれと等量である。
【0026】
第1溶液中の水のモル量は、第1溶液と第2溶液の混合物中の水のモル量が、金属が酸化状態4である(すなわち4つのアルコキシ基を有する金属(例えばZr、Ti)である)金属アルコキシドのモル量の3〜4倍の範囲になるように選択される。より好ましくは、モル量は、金属が酸化状態4である金属アルコキシドのモル量の3〜3.5倍の範囲にあり、約3倍の値が最も好ましい。
【0027】
例えばAlまたはY等の酸化状態3の金属の場合、第1溶液と第2溶液の混合物中の水のモル量は、金属アルコキシドのモル量の2〜3倍の範囲にある。より好ましくは、モル量は金属が酸化状態3である金属アルコキシドのモル量の2〜2.5倍の範囲にあり、約2倍の値が最も好ましい。
【0028】
例えばTa等の酸化状態5の金属の場合、第1溶液と第2溶液の混合物中の水のモル量は、金属アルコキシドのモル量の4〜5倍の範囲にある。より好ましくは、モル量は金属が酸化状態5である金属アルコキシドのモル量の4〜4.5倍の範囲にあり、約4倍の値が最も好ましい。
【0029】
第1溶液中のPEGの量は、最終コーティング溶液が5重量%〜10%の範囲のPEGを含むように調整される。
別の実施形態では、第2溶液中の高級アルコールの量が、最終コーティング溶液中の前記高級アルコールの量が溶液の総重量に基づいて10重量%〜20重量%の範囲になるように調整される。
【0030】
さらなる実施形態では、生じたコーティング溶液の粘度が10〜20mPa.sの範囲、好ましくは12〜18mPa.sの範囲であり、約13.5mPa.sの値が最も好ましい値である。
【0031】
低級アルコールと金属アルコキシドの加水分解によって生じたアルコールを除去する間、減圧が加えられてもよい。この圧力は500mbar未満であり、好ましくは250mbar未満、さらに好ましくは150mbar未満である。金属アルコキシドを与えるために追加の溶媒が使用される場合、この追加溶媒は、好ましくは低級アルコールおよび加水分解によって生じるアルコールと共に除去される。アルコールの除去は蒸留により行うことが可能である。
【0032】
減圧に加えてまたは減圧の代わりに、低級アルコールと加水分解によって生じたアルコールを除去する間、高温が加えられてもよい。この温度は、30℃〜100℃の範囲、好ましくは50℃〜90℃の範囲、最も好ましくは約80℃の範囲である。
【0033】
低級アルコールと少なくとも1つの金属アルコキシドの加水分解によって生じたアルコールの除去は、実質的にすべてのアルコールの除去である。除去されるアルコールは第1溶液の低級アルコールであってよく、これは金属アルコキシド(これはアルコールへ変化する)の加水分解によって生じたものであるか、または金属アルコキシドを溶解させるために使用される追加の溶媒であり得る。除去されるアルコールはC4より少ない鎖長を有
するアルコールと称され得る。1実施形態では、それらの全アルコールのうちの90%よりも多くが、好ましくはそれらの全アルコールの95%よりも多くが、最も好ましくはそれらの全アルコールの97%よりも多くが除去される。
【0034】
以下の実施形態は本発明の第3および第4の態様の実施形態である。
1実施形態によれば、基板は、12インチ(300mm)のウエハまたは12インチ(300mm)のシリコンウエハである。ウエハは例えばフォトレジストフィルムや樹脂等の別のコーティングによってさらにコーティングされていてもよい。
【0035】
基板上のコーティングを乾燥させるために、100°Cから200°Cまでの範囲の温度が適用され得る。好ましくはコーティングされた基板は150℃から200℃までの範囲の温度に晒される。乾燥または予備焼成はホットプレート上で行なわれ得る。ホットプレートは加熱され、基板は所定時間の間ホットプレート上に置かれる。コーティングされた基板は、1分から30分、好ましくは5分から20分の範囲の期間、かかる温度に晒される。
【0036】
1実施形態では、基板上の乾燥されたコーティングは、600°Cから800°Cまでの範囲の温度でアニールされる。好ましくはアニーリング中の温度は650°Cから75
0°Cまでの範囲である。
【0037】
別の実施形態では、アニール温度を達成するための加熱中の加熱速度は、少なくとも2,000K/分、好ましくは少なくとも2,500K/分、より好ましくは少なくとも3,000K/分である。最も好ましい加熱速度は少なくとも3,500K/分である。高い加熱速度は、応力の小さい、クラックがなく密度の高コーティングの形成を保証する。
【0038】
基板上の乾燥コーティングのアニーリングは10秒から10分までの範囲の期間、高温(すなわちアニール温度)で行なわれる。
基板上にコーティング溶液をスピンコーティングする場合、1,500rpmから2.600rpmまでの範囲の基板の回転速度が適用され得る。
【0039】
コーティングの乾燥後のコーティング(すなわち乾燥コーティング)は、アニールプロセスを受ける前に、少なくとも400nm、好ましくは少なくとも600nmの厚さを有し得る。最終コーティングの厚さ、すなわちアニール工程後のコーティングの厚さは、少なくとも150nm、好ましくは少なくとも200nm、最も好ましくは少なくとも250nmであり得る。
【0040】
アニール工程後の最終コーティングは、少なくとも2の屈折率を有し得る。最終コーティングの変動は13%未満である。アニール工程後の最終コーティングは、150MPa未満、好ましくは100MPa未満の応力を有し得る。
【0041】
得られるコーティングは、ジルコニウムアルコキシドが使用された場合ジルコニアフィルムであり、チタンアルコキシドが使用された場合チタニアフィルムであり、アルミニウムアルコキシドが使用された場合アルミナフィルムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の一態様による基板をコーティングする方法の好ましい実施形態を図面を参照しながら説明する。
第1実施形態では、2つの溶液が調製される。第1溶液は、プロパノール 35g、ポリエチレングリコール600 20g、アセチルアセトン 45gおよび水 20gを混合することにより調製される。第2溶液は、デカノール 50gおよびジルコニウムテトラプロポキシド 160g(70%プロパノール溶液;ZrO2含量26.47%)を混
合することにより調製される。
【0043】
次に、第1溶液は第2溶液に添加し、5分間撹拌した。第1溶液と第2溶液をこのように完全に混合した後、150mbarの圧力および80°Cの温度で、165gの溶媒(50%)を除去した。溶媒の除去には約30分かかる。除去した溶媒を165gのペンタノールと置き換えた。この溶液の粘度は13.5MPa.sである。従って、溶液は50重量%のペンタノール、15重量%のでカノール、13重量%のZrO2、13重量%の
アセチルアセトン、6重量%のPEGを含んでいる。残りの3重量%は水とプロパノールである。溶液に加えられるペンタノールの量を減らすことにより、溶液中のZrO2の含
有量を22重量%まで増加させることが可能である。
【0044】
そのように調製したコーティング溶液をスピンコーティングによりウエハ上にコーティングする。図1は、300mmウエハ上にコーティング溶液をスピンコーティングするために使用されるアセンブリの斜視図を示す。コーティング溶液はリザーバ1により供給される。このリザーバ1から、コーティング溶液のフロー2が、ウエハ3上に投じられる。ウエハ3はチャック4の上に装着されている。チャック4を回転軸6を中心に回転方向5に回転させることによりウエハ3は回転する。ウエハ3の回転により、コーティング溶液
がウエハ3上を回転する。ウエハの回転速度は2,600rpmである。
【0045】
ウエハ上のコーティングの静止液体層は200°Cで10分間で乾燥させる。コーティングを乾燥させるために、ウエハを200℃の温度のホットプレート上に配置する。乾燥コーティングの厚さは630nmである。その後、700℃の非常に迅速なアニールプロセス(RTP)を適用する。700℃の温度は、室温から3,375K/分の加熱速度で12秒以内に達成された。コーティングを備えたウエハを60秒間700℃で維持した。得られたコーティングは厚さ257nmのクラックのないコーティングである。アニールされたコーティングの屈折率は2である。
【0046】
第2の実施形態では、第1溶液を形成するためにプロパノール 25g、ポリエチレングリコール400 15g、アセチルアセトン 40gおよび水 25gを混合する。第2溶液は、デカノール 65gおよびジルコニウムテトラプロポキシド 200gを混合することにより調製される。
【0047】
第1実施形態と同様に、2つの溶液を混合し、溶媒を混合物から除去し、ペンタノールと置き換える。スピンコーティング、乾燥、および層のアニーリングは、第1実施形態と同様に行なう。
【0048】
第3実施形態では、Al23のコーティングが達成される。第1の溶液は、イソプロポキシエタノール 10g、ポリエチレングリコール600 12g、pH4の水 5.5g4(硝酸の添加により調整)、およびアセト酢酸エチル 15gを混合することにより調製される。第2溶液はイソプロポキシエタノール 15gおよびアルミニウム sec−ブトキシド 25gを含む。2つの溶液を混合後、混合物を溶媒の還流下80℃に加熱する。その後、溶媒を除去し、10重量%のAl23濃度の溶液を得る。スピンコーティング、乾燥、および層のアニーリングは、第1実施形態と同様に行なう。
【0049】
当業者には改変および変更が示唆されようが、道理に叶いかつ適切に当該技術分野に寄与する範囲内にあるすべての改変および変更を、本願で保証される特許内に具現化することが本願発明者の意図するところである。
【0050】
第2溶液の調製にイットリウムプロポキシドをさらに使用すると、ウエハ上にイットリウム安定化ジルコニアコーティングが生じる。基板のコーティング前に溶液の濃度を調整することにより、層の厚さは影響を受け得る。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】ウエハをスピンコーティングするためのアセンブリの斜視図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング溶液を調製する方法であって、
以下を含む第1溶液を提供する工程、
低級アルコール;
ポリエチレングリコール;
錯化剤;および
水;
以下を含む第2溶液を提供する工程、
高級アルコール;および
少なくとも1つの金属アルコキシド、同少なくとも1つの金属アルコキシド中の金属がジルコニウム、アルミニウム、チタン、タンタルおよびイットリウムから成るグループから選択される;
第1溶液と第2溶液を混合し、前記少なくとも1つの金属アルコキシドを金属酸化物とアルコールに加水分解することにより、ゾル・ゲル溶液を形成する工程、
前記低級アルコールと前記少なくとも1つの金属アルコキシドの加水分解によって生じる前記アルコールとを除去することにより、濃縮溶液を形成する工程、および
前記濃縮溶液に中級アルコールを加えることにより、コーティング溶液を形成する工程、
からなる方法。
【請求項2】
前記低級アルコールはC1からC3までのアルコールである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高級アルコールはC8からC20までのアルコールである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記中級アルコールはC5からC10までのアルコールである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの金属アルコキシド中のアルコキシドがC1からC4までのアルコキシドである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記錯化剤がアセチルアセトンおよびアセト酢酸エチルから成るグループから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリエチレングリコールは200〜10,000の範囲の分子量を有する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの金属アルコキシドが、6〜16mol% イットリウムアルコキシドと84〜94mol% ジルコニウムアルコキシドの混合物である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティング溶液中の金属酸化物の量が12重量%〜22重量%の範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第1溶液中の前記低級アルコールのモル量が、第2溶液中の前記少なくとも1つの金属アルコキシドのモル量の3〜5倍の範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第1溶液中の前記錯化剤のモル量が、第2溶液中の前記少なくとも1つの金属アルコキシドのモル量の1〜1.5倍の範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
第1溶液中の前記水のモル量が、第2溶液中の前記少なくとも1つの金属アルコキシド
のモル量の3〜4倍の範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記コーティング溶液中の前記ポリエチレングリコールの量が5重量%〜10重量の範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記コーティング溶液中の前記高級アルコールの量が10重量%〜20重量%の範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記コーティング溶液の粘度が10〜20mPa.sの範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記低級アルコールと前記少なくとも1つの金属アルコキシドの加水分解によって生じる前記アルコールとを除去する工程が減圧で行なわれる請求項1に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法によって調製されたコーティング溶液。
【請求項18】
基板をコーティングする方法であって、
基板と、以下の工程により調製されたコーティング溶液とを提供する工程;
以下を含む第1溶液を提供する工程、
低級アルコール;
ポリエチレングリコール;
錯化剤;および
水;
以下を含む第2溶液を提供する工程、
高級アルコール;および
少なくとも1つの金属アルコキシド、同少なくとも1つの金属アルコキシド中の金属がジルコニウム、アルミニウム、チタン、タンタルおよびイットリウムから成るグループから選択される;
第1溶液と第2溶液を混合し、前記少なくとも1つの金属アルコキシドを金属酸化物とアルコールに加水分解することにより、ゾル・ゲル溶液を形成する工程、
前記低級アルコールと前記少なくとも1つの金属アルコキシドの加水分解によって生じる前記アルコールとを除去することにより、濃縮溶液を形成する工程、および
前記濃縮溶液に中級アルコールを加えることにより、コーティング溶液を形成する工程、
前記コーティング溶液を前記基板上にスピンコーティングして、コーティングされた基板を形成する工程;および
前記コーティングされた基板を乾燥工程に供することにより、前記基板上に乾燥コーティングを形成する工程;
からなる方法。
【請求項19】
前記基板は300mm(12インチ)のウエハまたは300mm(12インチ)のシリコンウエハである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記乾燥工程として前記コーティングされた基板を100°Cから200°Cまでの範囲の温度まで加熱することを含む請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記乾燥工程として前記コーティングされた基板を1分から30分までの範囲の期間加熱することを含む請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記スピンコーティングが1500rpmから2600rpmまでの回転速度の範囲で
行なわれる請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記基板上の前記乾燥コーティングは少なくとも400nmの厚さを有する請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記乾燥工程後に前記基板上にコーティングを形成するために、前記乾燥工程後に追加のアニーリングが行われる請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記アニーリングが、前記乾燥コーティングを600°Cから800°Cまでの範囲の温度に加熱することからなる請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記アニーリングは前記乾燥コーティングを少なくとも2000K/分の加熱速度で加熱することからなる請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記アニーリングは前記乾燥コーティングを10秒から10分までの範囲の期間の加熱することからなる請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記基板上の前記コーティングが少なくとも2の屈折率を有する請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記基板上の前記コーティングが13%未満の前記コーティングの厚さの変動を有する請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記基板上の前記コーティングが150MPa未満の応力を有する請求項24に記載の方法。
【請求項31】
請求項18に記載の方法により調製されたコーティングされたウエハ。

【図1】
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【公開番号】特開2008−101208(P2008−101208A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267394(P2007−267394)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(506240919)キマンダ アーゲー (15)
【氏名又は名称原語表記】Qimonda AG
【Fターム(参考)】