説明

コーティング用ポリイミド樹脂溶液、及びこれを用いたポリイミド樹脂層、光学補償部材、偏光板、液晶表示装置

【課題】 支持体フィルムの非溶媒に可溶であって、該溶媒に溶解させたポリイミド溶液をキャスト後、乾燥して得られたポリイミド樹脂層の複屈折が高く、かつ透明性が高いポリイミド樹脂溶液を提供する。また、工業的に入手容易で安価な材料を用いて従来品同等またはそれ以上の光学特性を有するコーティング用樹脂溶液を提供する。
【解決手段】 ビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)類を特定の割合で含有するポリイミド樹脂と特定の有機溶媒からなるコーティング用樹脂溶液により達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング用ポリイミド樹脂溶液、及びこれを用いたポリイミド樹脂層、光学補償部材、偏光板、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、光学補償を目的とした位相差板が使用されるのが一般的である。従来位相差板としては、延伸処理した高分子フィルムを用いることが多かったが、特許文献1に示すように、面内最大屈折率(nx)と厚み方向屈折率(nz)の差を大きくすれば、厚み方向の位相差値 Rth(=(nx−nz)×d)をフィルム厚(d)が薄くても発現することができ、位相差フィルムが薄型化できることが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献2には、ポリイミドのコーティング用として、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等の支持体にメチルエチルケトン(MEK)に溶解するポリイミド樹脂が挙げられている。しかし、実際は、複屈折が0.04未満と小さいものであった。
【0004】
また、特許文献3には0.001〜0.2の複屈折を有するポリイミド樹脂が挙げられているが、0.04以上の複屈折を有するポリイミド樹脂は着色があるか、または溶解する有機溶媒が限定されるかで、PMMA等の支持体にコーティング可能なポリイミド樹脂として適さない。
【0005】
また、特許文献4にはビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)類及びベンジジン類を必須成分とするジアミン類を重合してなる着色の少ないポリイミド樹脂が提案されているが、光学補償を目的とした位相差用途に使用できるか否かは不明であった。また、コーティング用樹脂として特に適した構造を有するポリイミド樹脂については何ら開示されていなかった。
【0006】
このように、ポリイミドの有機溶媒への溶解性が高く、ポリイミド溶液を支持体にキャスト後、乾燥して得られたポリイミド樹脂層に高複屈折性、低着色性を付与できるポリイミド樹脂は見出されていなかった。
【特許文献1】特開2003−344856号公報
【特許文献2】特表2000−511296号公報
【特許文献3】特表平8−511812号公報
【特許文献4】特開2004−182757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記課題を解決し、有機溶媒に溶解させたポリイミド溶液をキャスト後、乾燥して得られたポリイミド樹脂層の複屈折が高く、かつ透明性が高いポリイミド樹脂溶液を提供することを目的とする。さらには、現行の高価な樹脂ではじめて実現される光学特性を工業的に入手しやすい安価なポリイミド樹脂溶液で提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1) 下記一般式(1)及び下記一般式(2)の構造を含有し、更にそれぞれの含有量をx、yとして表した時に、x:y=55:45〜0:100であることを特徴とするポリイミド樹脂と、酢酸エチル、シクロペンタノン、またはシクロヘキサノンからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒とを含有することを特徴とするコーティング用樹脂溶液。
【0009】
【化4】

【0010】
【化5】

【0011】
(ここでArは芳香族含有基である。)
2) Arが下記一般式(3)であることを特徴とする1)に記載のコーティング用樹脂溶液。
【0012】
【化6】

【0013】
3) 有機溶媒が酢酸エチルであることを特徴とする1)または2)に記載のコーティング用樹脂溶液。
【0014】
4) 一般式(1)及び一般式(2)の総モル数のうち、一般式(2)で表される化合物の割合が50%より大きいことを特徴とする1)〜3)のいずれか1項に記載のコーティング用樹脂溶液。
【0015】
5)1)〜4)のいずれか1項に記載のコーティング用樹脂溶液を乾燥して得られるポリイミド樹脂層であり、複屈折(Δn)が0.05以上、0.15以下であるポリイミド樹脂層。
【0016】
6) 厚さが1μm以上、15μm未満であることを特徴とする5)に記載のポリイミド樹脂層。
【0017】
7) 5)または6)に記載のポリイミド樹脂層と、支持体からなることを特徴とする積層体。
【0018】
8) 7)に記載の積層体を、支持体上にポリイミド樹脂層を塗布、乾燥して形成することを特徴とする、積層体の製造方法。
【0019】
9) 7)に記載の積層体を、支持体上にポリイミド樹脂層を転写して形成することを特徴とする、積層体の製造方法。
【0020】
10) 5)〜7)のいずれか1項に記載のポリイミド樹脂層又は積層体を含有して形成されたことを特徴とする、光学補償部材。
【0021】
11) 10)記載の光学補償部材を使用したことを特徴とする、偏光板。
【0022】
12) 11)の偏光板を使用したことを特徴とする、液晶表示装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明のポリイミド樹脂は、有機溶媒に溶解させたポリイミド溶液をキャスト後、乾燥して得られたポリイミド樹脂層の複屈折が高く、かつ透明性が高く、有用である。例えば、光学補償を目的とした位相差用途において該ポリイミド樹脂溶液を用いることで、位相差フィルムを薄く安価に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
下記一般式(1)及び下記一般式(2)の構造を含有し、更にそれぞれの含有量をx、yとして表した時に、x:y=55:45〜0:100であることを特徴とするポリイミド樹脂と有機溶媒を含有するコーティング用樹脂溶液について説明する。
【0025】
【化7】

【0026】
【化8】

【0027】
(ここでArは芳香族含有基である。)
Arが下記一般式(3)であることが好ましい。
【0028】
【化9】

【0029】
有機溶媒はポリイミド樹脂を溶解させる溶媒であれば特に限定されないが、ポリイミド樹脂層形成工程(塗布方法、塗布時間、乾燥時間等)において、高分子から成る支持体への影響(例えば、特性や均一性を損なう程度の溶解や膨潤)が少ないものを使用することが好ましい。例えば、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)等のアミド系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒、ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、MEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒を用いることができる。またポリイミド樹脂を溶解する範囲であれば、ポリイミド樹脂を溶解させにくい貧溶媒を混合溶媒として適時使用しても良い。ポリイミド樹脂を溶解させている有機溶媒は酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒、ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、MEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶媒が、ポリイミド樹脂層形成工程において、高分子から成る支持体への影響がより少ない点でより好ましく、更にその程度がより優れる酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、MEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶媒がより好ましく、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、MEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶媒が高分子から成る支持体への影響が少なく、工業的に安全な点、反応性が低く安定な点でさらに好ましく、シクロヘキサノン、シクロペンタノンがとりわけ好ましい。また、低沸点で乾燥しやすく、樹脂の配向性をもたせる点、工業的に安全な点、反応性が低く安定な点、汎用的で入手しやすい点で、酢酸エチルがとりわけ好ましい。
【0030】
前述のポリイミド樹脂溶液であるコーティング用樹脂溶液は、各種方法でポリイミド樹脂層とすることができる。製膜効率の点で、固形分濃度5重量%以上の濃度であることが好ましい。例えば、コーティング用樹脂溶液を支持体に塗布して乾燥後、剥がしてフィルムとして一旦形成し、ポリイミド樹脂層を得る方法、直接支持体上にコーティングしてポリイミド樹脂層を得る方法、又は、一旦支持体上にコーティングしてポリイミド樹脂層を得た後に、別の支持体に転写してポリイミド樹脂層を得る方法などが挙げられる。尚、上述のような、少なくともポリイミド樹脂層と支持体から構成される二層以上の多層体を積層体ともいう。
【0031】
一方、支持体としては各種のものが使用可能であるが、軽量化等の観点から高分子からなる支持体、更には、光学用途で使用される有機高分子からなる支持体などが好適に使用できる。支持体を構成する具体的な材料としては、例えばPMMA(ポリメチルメタクリレート)、TAC(トリアセチルセルロース)またはセルロース類、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、ポリエステル、脂環構造の環状オレフィン、セルロースアシレート、セルロースエーテル、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリスチレン等が挙げられる。特にPMMA、TACまたはセルロース類、PET、脂環構造の環状オレフィン、更にはTACまたはセルロース類、PET、脂環構造の環状オレフィンが好適に使用できる。尚、軽量化等の観点から、支持体はフィルム状であることが好ましい。又、支持体はアニールしたものを使用しても構わない。
【0032】
ポリイミド樹脂層の厚みは1μm以上、15μm未満であることが好ましく、更には1μm以上、11μm未満であることは光学補償部材として用いる場合、光学補償部材を薄くできる点で好ましい。
【0033】
尚、ここでポリイミド樹脂層は、コーティング用樹脂溶液をキャスト後、乾燥して得られた残溶媒量が、1%未満のポリイミド成形体であることが好ましい。
【0034】
又、ポリイミド樹脂層は延伸の有無に関わらず用いることができる。延伸する場合は、製膜途中で延伸することもでき、ポリイミド樹脂層形成後に延伸することもできる。延伸方法は、使用用途に合わせ、公知の技術を用いることができる。例えば、ポリイミド樹脂層単体を、ポリイミド樹脂層のガラス転移温度(ここでいうガラス転移温度は、ポリイミド樹脂層に含まれる溶媒量、添加剤量により変化することがある。このため、その影響を考慮し決定することが好ましい。)より高い温度雰囲気下で延伸する方法、支持体にポリイミド樹脂層を形成した後に支持体と一緒にポリイミド樹脂層のガラス転移温度より高い温度雰囲気下で延伸する方法等がある。しかし、要求特性が発現するのであれば、ポリイミド樹脂層は、延伸温度はガラス転移温度より高い温度雰囲気下で延伸することが必須ではない。
【0035】
上述のポリイミド樹脂層や積層体の使用用途は特に限定されるものではないが、航空宇宙材料、電気材料、機械材料、光学材料として使用することができる。特に光学材料として好適に使用することができる。又、特に好適に使用できる光学用途としては、偏光板用途、レンズ用途、通信の光道波路用途、透明基盤用途等の光学補償部材として使用することができる。更に好適に使用できる光学補償部材としては、偏光板として使用することができる。更には偏光板等の光学補償部材を使用した液晶表示装置に好適に使用できる。
【0036】
複屈折(Δn)は、面内屈折率と厚み方向屈折率の差であり、0.05以上、0.15以下が好ましい。さらに好ましくは0.06以上、0.15以下である。ポリイミド層の複屈折が0.05未満であれば、位相差フィルム用途で用いる場合、複屈折が小さいためポリイミド層の厚みを厚くする必要があり、使用用途によってはポリイミド樹脂の着色度が悪影響を及ぼすことがある。複屈折が0.15を超えれば、均一に複屈折特性発現が求められる用途でポリイミド層の厚み制御が難しいことがある。尚、上記複屈折は、特に厚みを規定した時の値ではないが、特に1μm以上、15μm未満の厚みで達成されていることが好ましく、より好ましくは1μm以上、11μm未満で達成されていることが好ましい。
【0037】
ここでΔnは、水平面を基準面とした時に、上記のポリイミド樹脂を用いて形成したポリイミド樹脂層の面内の位相差と、平面を、遅相軸を中心に40°傾けた時の位相差から算出した値であり、平面内の屈折率をnx、nyとし、この面に対して垂直方向の屈折率をnzとした場合、
Δn=〔(nx+ny)/2〕−nz ・・・数式(1)
で表される値である。尚、実際には、Kobra−WRにて、0°と40°で位相差値を求めた。
【0038】
本願発明のコーティング用樹脂溶液に用いる前記一般式(1)及び(2)、または前記一般式(2)を含有するポリイミド樹脂は酸二無水物とジアミンから製造することもできるし、他の方法で入手したものでもよい。前記一般式(1)で表される構造を形成する酸二無水物としては、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(6FDA)があげられる。これは得られたポリイミド樹脂に有機溶媒への溶解性を付与する酸二無水物である。前記一般式(2)で表される構造を形成する酸二無水物としては2,2−ビス(4−トリメリット酸モノエステル酸フェニル)プロパン酸二無水物(ESDA)があげられる。これは得られたポリイミド樹脂に複屈折性を付与する酸二無水物である。2,2−ビス(4−トリメリット酸モノエステル酸フェニル)プロパン酸二無水物(ESDA)は安価で入手容易であることから工業的使用には非常に好ましい。尚、上記溶解性及び複屈折性を付与する意味は、大きく寄与している意味であり、相反するものではない。
【0039】
前記一般式(1)、(2)においてArで表される構造を形成するジアミンとしては、芳香族ジアミンがあげられ、2,2´−ジメチル−4,4´−ジアミノビフェニル、2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジアミノビフェニル(TFMB)、2,2´−ビス(トリクロロメチル)−4,4´−ジアミノビフェニル、2,2´−ビス(トリブロモメチル)−4,4´−ジアミノビフェニル、2,2´−ジフルオロ−4,4´−ジアミノビフェニル、2,2´−ジブロモ−4,4´−ジアミノビフェニル、2,2´−ジクロロ−4,4´−ジアミノビフェニル、4,4´−ジアミノビフェニル、4,4´−ジアミノベンゾフェノン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−2−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−2−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−トリフルオロメチルフェニル)フルオレン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノジフェニルプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、1,2−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼン等が挙げられる。更に、2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジアミノビフェニル(TFMB)、2,2´−ビス(トリクロロメチル)−4,4´−ジアミノビフェニル、2,2´−ビス(トリブロモメチル)−4,4´−ジアミノビフェニル、2,2´−ジフルオロ−4,4´−ジアミノビフェニル、2,2´−ジブロモ−4,4´−ジアミノビフェニル、2,2´−ジクロロ−4,4´−ジアミノビフェニル、4,4´−ジアミノビフェニル等のジアミンは合成したポリイミドから成形したポリイミド層に複屈折を付与する面から考えて好ましい。特に、2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジアミノビフェニル(TFMB)を選ぶことが合成したポリイミドに溶解性を付与する面で好ましい。
【0040】
また、本発明におけるコーティング用樹脂溶液は、前記一般式(1)及び(42)で表される構造を前記の割合で含有していれば、樹脂中のその他の骨格については特に制限されない。例えば、ポリイミド樹脂を製造する際に、前述の酸二無水物に加えてビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、2,5−ジフルオロピロメリット酸二無水物、2−フルオロピロメリット酸二無水物、2,5−ビストリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、2−トリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、パラ−ターフェニル−3,4,3″,4″−テトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,4−ヒドロキノンジベンゾエ−ト−3.3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2´−ビストリフルオロメチル−3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2´−ジフルオロ−3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2´−ジブロモ−3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2´−ジフェニル−3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3′−メタ−ターフェニル−3,3″,4,4″−テトラカルボン酸二無水物、p−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、4,4´−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、1,4−ナフタレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、2,6−ナフタレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)などの酸二無水物も用いてもよい。また、ジアミンとして、前述の芳香族ジアミンのほかに、脂肪族ジアミンである、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4´−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4´−ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)スルホン、4,4´−ジアミノジシクロヘキシルエーテル、2,2´−ジメチル−4,4´−ジアミノジシクロヘキサン、2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジアミノジシクロヘキサン、2,2´−ビス(トリクロロメチル)−4,4´−ジアミノジシクロヘキサン、2,2´−ビス(トリブロモメチル)−4,4´−ジアミノジシクロヘキサン、2,2´−ジフルオロ−4,4´−ジアミノジシクロヘキサン、2,2´−ジクロロ−4,4´−ジアミノジシクロヘキサン、2,2´−ジブロモ−4,4´−ジアミノジシクロヘキサン、4,4´−ジアミノジシクロヘキサン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,3−ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,7−ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,3−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等を用いてもよい。特に、1,4−ジアミノシクロヘキサンが、複屈折発現性が優れており、好ましく使用できる。1,4−ジアミノシクロヘキサンの中でもtrans体を用いることが好ましい。
【0041】
複屈折を高めるためには一般式(1)と一般式(2)の構成比はx:y1=55:45〜0:100であることが好ましい。さらに、x:y=50:50〜0:100が更に好ましく、x:y=40:60〜0:100が更に好ましい。さらに複屈折を高めるためには、x:y=30:70〜0:100が好ましく、x:y=20:80〜0:100が更に好ましく、x:y=10:90〜0:100が更に好ましい。特にx:y1=0:100が好ましい。構成比がx:y1=55:45よりもxの割合が大きく、y1の割合が小さい場合、複屈折が小さくなる傾向がある。一般式(1)及び(2)の構造をx:y=55:45〜0:100、つまり、一般式(1)及び一般式(2)の総モル数のうち、一般式(2)で表される化合物の割合が45%以上、100%以下であることが好ましい。
:y=0:100である一般式(2)のみで構成されるポリイミド樹脂は、複屈折が大きく、入手容易であり、合成が容易且つ配列の制御が容易であり、さらに、有機溶媒への溶解性も有することからとりわけ好ましい。
【0042】
また、溶媒への溶解性を高める場合は、むしろ共重合体が好ましくなる。複屈折を高め、かつ、溶媒への溶解性を高め、それらの両立を図る場合は、前記一般式(1)及び前記一般式(2)の総モル数のうち、前記一般式(2)で表される化合物の割合が45%より大きい場合が好ましく、更に50%より大きい場合が好ましい。さらにx:y=40:60〜10:90が好ましく、さらにx:y=30:70〜10:90が好ましい。特に酢酸エチルへの溶解性を特に重視する場合には、x:y=40:60〜30:70が好ましい。
【0043】
上記ポリイミド樹脂は、複屈折を高めるためには前記一般式(1)及び(2)の構造以外にその他の骨格を含有していてもよいが、好ましくはポリイミド樹脂として前記一般式(1)及び(2)の構造、もしくは(2)の構造のみを含有することが好ましい。次に溶媒への溶解性を高めるためには前記一般式(1)及び(2)の構造以外にその他の骨格を含有していてもよいが、好ましくはポリイミド樹脂として前記一般式(1)及び(2)の構造を含有することが好ましい。
【0044】
また、ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、GPCのPEG(ポリエチレングリコール)換算で測定した値が30,000以上200,000以下であることが好ましい。重量平均分子量が30,000未満であれば、耐久性に問題が生じることがある。また、重量平均分子量が200,000以上であれば溶液の粘度が高くなるため、ポリイミド樹脂を有機溶媒へ溶解させて使用する用途では用いることが難しいことがある。
【0045】
さらに、ポリイミド樹脂のイミド化率は80%以上であることが好ましい。80%未満であれば、透明性と複屈折の面で好ましくない。好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは99%以上である。
【0046】
次にポリイミドの製造方法について説明する。ポリイミドの製造方法は、一般的には(1)ポリアミド酸の重合(2)ポリアミド酸のイミド化(3)ポリイミド樹脂の析出の三工程を含むので、それぞれについて一例を述べる(但しこれに限定するものではない。)。
【0047】
(1)ポリアミド酸の重合
ポリアミド酸の製造方法は下記方法に特定されるものではなく、種々の方法を用いることが可能である。その一例を以下に示す。
【0048】
ジアミンを溶解した反応溶媒中に、酸二無水物を分散し、攪拌することで完全に溶解させ重合させる方法、酸二無水物を反応溶媒中に溶解及び/または分散させた後、ジアミンを用いて重合させる方法、酸二無水物とジアミンの混合物を反応溶媒中で反応させて重合する方法などがあるが、公知の重合方法を用いればよい。
【0049】
反応時間は、約1時間から10時間までで反応させることができ、更には約1時間から5時間までで反応させることが好ましい。一方、ポリアミド酸溶液の粘度が、5Pa・s以上になるまで反応を行うことが好ましく、さらに好ましくは10Pa・s以上、最も好ましくは20Pa・s以上まで反応を行うことが好ましい。ポリアミド酸溶液の粘度が低すぎると、該ポリアミド酸の重量平均分子量が低いことがある。上記粘度は、23℃に保温された水浴中で23℃に保温し、B型粘度計で、ローターはNo.7を回転数は4rpmで測定することができる。
【0050】
反応装置には、反応温度を制御するための温度調製装置を備えていることが好ましく、反応溶液温度として60℃以下が好ましく、さらに、40℃以下であることが反応を制御する点で好ましい。
【0051】
ポリアミド酸の重合に使用する反応溶媒は、使用する酸二無水物、ジアミン類を溶解することが可能なものが好ましく、更に生成されるポリアミド酸を溶解することが可能なものが好ましい。例えばテトラメチル尿素、N,N−ジメチルエチルウレアのようなウレア類、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、テトラメチルスルフォンのようなスルホキシドあるいはスルホン類、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ―ブチルラクトン、ヘキサメチルリン酸トリアミドのようなアミド類、またはホスホリルアミド類の非プロトン性溶媒、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、フェノール、クレゾールなどのフェノール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、p−クレゾールメチルエーテルなどのエーテル類を挙げることができ、通常これらの溶媒を単独で用いるが、必要に応じて2種以上を適宜組合わせて用いても良い。これらのうちDMF、DMAc、NMPなどのアミド類が好ましく使用される。また、最終的に得られるポリイミドも十分溶解し得る有機溶媒が好ましい。
【0052】
ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸の重量%は、反応溶媒中にポリアミド酸が5〜50wt%、好ましくは10〜40wt%溶解されているのが取扱い面から好ましい。
【0053】
ポリアミド酸溶液の重合反応に用いられる酸二無水物類とジアミン類の使用モル比率は、次式で算出した場合に、0.9以上、1.5以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.95以上、1.3以下であることが好ましく、特に好ましくは、0.98以上、1.2以下であることがポリアミド酸溶液から得られるポリイミド樹脂中の未反応の酸二無水物やジアミンを減少させる上で好ましい。
【0054】
使用モル比率=(全酸二無水物モル数)/(全ジアミンモル数):数式(2)。
【0055】
(2)ポリアミド酸のイミド化
ポリアミド酸をイミド化する方法について記載する。ポリアミド酸をイミド化する方法として、公知の各種方法を使用することができる。例えば、熱的に脱水閉環する熱的イミド化法や、脱水剤を用いる化学的イミド化法が使用できる。
【0056】
熱的イミド化法は、イミド化反応時に生成する水と共沸するトルエン等の共沸溶媒をポリアミド酸溶液に添加後、加熱して行うことが一般的である。熱的イミド化法ではイミド化促進剤を併用することができる。
【0057】
一般的に化学的イミド化法は、熱的イミド化法よりもイミド化反応が進行しやすく、加熱時のポリアミド酸の分解を抑制し、イミド化できる点で好ましい。
【0058】
化学的イミド化法ではイミド化促進剤を用いることが、反応を短時間で終了させる点で好ましい。イミド化促進剤としては、各種三級アミンが使用可能であるが、特にピリジン、キノリン、イソキノリンなどの複素環式第3級アミン類などが高いイミド化率を有するポリイミドが得られる点で好ましい。
【0059】
また、イミド化する際の温度は40℃〜イミド化で使用する反応溶媒の沸点以下、更に好ましくは50℃〜イミド化で使用する反応溶媒の沸点以下で、加熱時間は0.5〜20時間であることが好ましい。温度が40℃を下回るとイミド化率が低くなることがあるので好ましくない。一方、150℃以下で加熱することが、ポリイミドの着色を防ぐためには好ましい。
【0060】
化学的イミド化法で用いる脱水剤としては、無水酢酸などの脂肪族酸無水物や芳香族酸無水物などが挙げられる。無水酢酸を用いることがポリイミド樹脂の析出工程に適しているという点から好ましい。
【0061】
ポリアミド酸に対するイミド化促進剤の添加量は、イミド化促進剤/ポリアミド酸中アミド基のモル比で0.1〜5、より好ましくは、0.1〜4、さらに好ましくは0.1〜2であるように用いることが好ましい。イミド化促進剤/ポリアミック酸中アミド基のモル比が小さすぎるとイミド化が十分に進行しない場合がある。逆に大きすぎると、ポリイミド樹脂粉体の析出で用いる貧溶媒にもよるが、イミド化率を低下させる傾向にある。
【0062】
ポリアミド酸に対する脱水剤の添加量は、脱水剤/ポリアミド酸中のアミド基のモル比で1.2〜4.0となるよう用いることが好ましい。脱水剤の量が脱水剤/ポリアミド酸中のアミド基のモル比で1.2未満だとイミド化が十分に進行しない場合があり、逆に脱水剤/ポリアミド酸中のアミド基のモル比で4より大きいと分子量の低下や着色を引き起こすことがある。
【0063】
(3)ポリイミド樹脂の析出
イミド樹脂の析出方法について記載する。上記(1)(2)のようにして得られたポリイミド樹脂を含む溶液から、ポリイミド樹脂を析出する方法としては、公知の各種方法が選択できるが、例えば、ポリイミド樹脂、脱水剤、イミド化促進剤などを含有するポリイミド樹脂の溶液をポリイミド樹脂の貧溶媒中に投入すること、もしくはポリイミド樹脂の溶液に貧溶媒を投入することでポリイミド樹脂を固形状態で得ることができる。但し、ポリイミド樹脂を析出する以外の方法で、上記(1)のようにして得られたポリアミド酸溶液を支持体などに直接コーティングして、(2)に記載のようにイミド化して所望のポリイミド樹脂層を得る方法や、(2)のようにして得られたポリイミド樹脂を含む溶液を支持体などに直接コーティングして、所望のポリイミド樹脂層を得る方法がある。ポリイミド樹脂の溶液に貧溶媒を投入する方法としては、液滴で投入する方法や糸状に投入する方法などがあるが、貧溶媒中にポリイミド樹脂が沈殿するのであれば、特に制限するものではない。析出時の形状は、糸状、粉末状、フレーク状等、種々の形態で析出させることができる。また、これらを必要により粉砕して使用することができる。
【0064】
本発明で用いられるポリイミド樹脂の貧溶媒は、特に限定されるものではないが、ポリイミド樹脂を溶解する溶媒として使用した反応溶媒と混和するものが好ましく例えば水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブチルアルコール、2−ヘキシルアルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、フェノール、t−ブチルアルコールなどが挙げられる。上記アルコールの中でもイソプロピルアルコール、2−ブチルアルコール、2−ペンチルアルコール、フェノール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、t−ブチルアルコール等の2級又は3級アルコールが、得られるポリイミド樹脂のイミド化率を高位に安定化させるという観点から好ましく、イソプロピルアルコールがさらに好ましい。次に安価という観点で考えた場合、水、酸性水、塩基性水が好ましい。貧溶媒量はポリイミド樹脂の溶液の2倍以上、さらに好ましくは3倍以上の量で抽出することが好ましい。
【0065】
ポリイミド樹脂の溶液からポリイミド樹脂を析出させ分離するだけでは、乾燥後に所望の形状(有機溶媒に溶解しやすい形状)のポリイミド樹脂を得ることが難しいことがある。これはポリイミド樹脂に反応溶媒が多く含有されていることによるものであり、ポリイミド樹脂を前記貧溶媒で洗浄することで反応溶媒をほんど含有しない所望のポリイミド樹脂を得ることができる。
【0066】
本発明で凝固させた樹脂固形物の乾燥方法は、真空乾燥によってもよいし熱風乾燥によってもよい。ただし、光学用途に用いる場合、乾燥時の着色が問題となる場合があるので、150℃以下で行うことが望ましい。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
本実施例では、反応容器としてガラス製セパラブルフラスコを備え、該セパラブルフラスコ内の攪拌装置として4枚のパドル翼を備えた反応装置を用いてポリアミド酸を製造した。重合反応中は、水分の混入を防ぐ為に、シリカゲル中を通過させて脱水を行った窒素ガスを流して重合反応を行った。上記セパラブルフラスコに、重合用溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)210.0gを仕込み、これに、2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジアミノビフェニル(TFMB)32.2g(0.101モル)を溶解する。この溶液に、2,2−ビス(4−トリメリット酸モノエステル酸フェニル)プロパン酸二無水物(ESDA)57.9g(0.100モル)を添加・攪拌して完全に溶解させた。完全に溶解した後、約23℃に保温された水浴中で1時間保温し、攪拌した。尚、この反応溶液における芳香族ジアミン化合物及び芳香族テトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して30重量%となっていた。上記溶液にDMFを加え固形分濃度を20重量%とし、イミド化触媒としてピリジンを31.8g(イミド化促進剤/ポリアミック酸中アミド基のモル比=2)添加して、完全に分散させた。分散させた溶液中に無水酢酸24.6g(脱水剤/ポリアミック酸中アミド基のモル比=1.2)を添加して攪拌した。攪拌後に、内部温度を100℃に上昇させて4時間加熱攪拌を行った。上記ポリイミド樹脂溶液にDMFを加え固形分濃度を17.5重量%とし、1131gのイソプロピルアルコール(イソプロピルアルコール量/反応液量=2.2)をポリイミド樹脂溶液に加えた後、約30分間撹拌した。その後、ポリイミドスラリーを取り出し、更に、900gのイソプロピルアルコールを添加して完全に固形分を抽出した。900gのイソプロパノ−ルで抽出した固形分の洗浄を4回行った。そして得られた固形分を真空乾燥装置で100℃に加熱乾燥して、ポリイミド樹脂として取り出した。
【0069】
(評価方法)
(複屈折)
ポリイミド樹脂をシクロヘキサノンに溶解してポリイミド樹脂が15重量%含有されているポリイミド樹脂溶液を作製した。ポリイミド樹脂溶液をバーコーターでガラス板(マツナミカバーガラス、35×50mm)上に均一な膜厚を持ったポリイミド樹脂溶液膜として塗布し、90℃に加熱した熱風オーブン中で10分間乾燥させた後、200℃に加熱した熱風オーブン中で60分間乾燥させた。その後、ガラス上に厚さ10μmのポリイミド樹脂層を得た。該ポリイミド樹脂層を用い、複屈折測定を実施した。以下に複屈折測定の方法を示す。複屈折(Δn)とは、ポリイミド樹脂層の面内の屈折率をnx、nyとし、厚み方向の屈折率をnzとした場合、前述の数式(1)で示される値である。複屈折は、ポリイミド層の鉛直方向を0°とした場合の40°の角度で入射された光の位相差をKobra−WRで測定し、その位相差値を用い、複屈折(Δn)を算出した。評価結果を表2に記載する。
【0070】
(分子量)
表1の条件にて重量平均分子量(Mw)を評価した。評価結果を表2に記載する。
【0071】
【表1】

【0072】
(イミド化率)
NMR法にて評価した。芳香族プロトンの積分値をAとし、アミドのプロトンの積分値をBとし、以下の計算式にて算出した。評価結果を表2に示す。
【0073】
イミド化率(モル%)={1−(B/A)×(理論的芳香族プロトン数/理論的アミドプロトン数)}×100 : 数式(3)
尚、上記計算式中の理論的アミドプロトン数及び理論的芳香族プロトン数は、イミド化前の該ポリアミド酸の構造より算出できる。
【0074】
【表2】

【0075】
得られたポリイミド樹脂の各種溶媒への溶解性評価結果(固形成分濃度5重量濃度%)及び複屈折(Δn)の評価結果を表3に記載する。
【0076】
【表3】

【0077】
(比較例1)
酸二無水物として2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(6FDA)を用いること以外は実施例1と同様にして製造した。実施例1と同様の方法でポリイミド樹脂の評価を行った。評価結果を表2に記載する。得られたポリイミド樹脂の各種溶媒への溶解性評価結果(固形成分濃度5重量濃度%)及び複屈折(Δn)の評価結果を表3に記載する。
【0078】
(実施例2)
実施例1で得られたポリイミド樹脂をシクロペンタノンに溶解してポリイミド樹脂が15重量%含有されているポリイミド樹脂溶液を作成した。実施例1記載の複屈折評価方法において、シクロヘキサノンとした以外は同様な方法で複屈折を評価した。得られたポリイミド樹脂の各種溶媒への溶解性評価結果(固形成分濃度5重量濃度%)及び複屈折(Δn)の評価結果を表3に記載する。
【0079】
(実施例3)
酸二無水物として2,2−ビス(4−トリメリット酸モノエステル酸フェニル)プロパン酸二無水物(ESDA)17.64g(0.0306モル)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(6FDA)1.51g(0.0034モル)(ESDA:6FDA=9:1)を用いること以外は実施例1と同様にして製造した。得られたポリイミド樹脂の各種溶媒への溶解性評価結果(固形成分濃度5重量濃度%)及び複屈折(Δn)の評価結果を表3に記載する。
【0080】
(実施例4)
酸二無水物として2,2−ビス(4−トリメリット酸モノエステル酸フェニル)プロパン酸二無水物(ESDA)15.97g(0.0277モル)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(6FDA)3.07g(0.0069モル)(ESDA:6FDA=8:2)を用いること以外は実施例1と同様にして製造した。得られたポリイミド樹脂の各種溶媒への溶解性評価結果(固形成分濃度5重量濃度%)及び複屈折(Δn)の評価結果を表3に記載する。
【0081】
(実施例5)
酸二無水物として2,2−ビス(4−トリメリット酸モノエステル酸フェニル)プロパン酸二無水物(ESDA)14.16g(0.0246モル)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(6FDA)4.67g(0.0105モル)(ESDA:6FDA=7:3)を用いること以外は実施例1と同様にして製造した。得られたポリイミド樹脂の各種溶媒への溶解性評価結果(固形成分濃度5重量濃度%)及び複屈折(Δn)の評価結果を表3に記載する。
【0082】
(実施例6)
酸二無水物として2,2−ビス(4−トリメリット酸モノエステル酸フェニル)プロパン酸二無水物(ESDA)12.30g(0.0213モル)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(6FDA)6.32g(0.0142モル)(ESDA:6FDA=6:4)を用いること以外は実施例1と同様にして製造した。得られたポリイミド樹脂の各種溶媒への溶解性評価結果(固形成分濃度5重量濃度%)及び複屈折(Δn)の評価結果を表3に記載する。
(実施例7)
酸二無水物として2,2−ビス(4−トリメリット酸モノエステル酸フェニル)プロパン酸二無水物(ESDA)10.50g(0.0182モル)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(6FDA)8.04g(0.0181モル)(ESDA:6FDA=5:5)を用いること以外は実施例1と同様にして製造した。得られたポリイミド樹脂の各種溶媒への溶解性評価結果(固形成分濃度5重量濃度%)及び複屈折(Δn)の評価結果を表3に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】複屈折(Δn)の測定方法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)及び下記一般式(2)の構造を含有し、更にそれぞれの含有量をx、yとして表した時に、x:y=55:45〜0:100であることを特徴とするポリイミド樹脂と、酢酸エチル、シクロペンタノン、またはシクロヘキサノンからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒とを含有することを特徴とするコーティング用樹脂溶液。
【化1】

【化2】

(ここでArは芳香族含有基である。)
【請求項2】
Arが下記一般式(3)であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング用樹脂溶液。
【化3】

【請求項3】
有機溶媒が酢酸エチルであることを特徴とする請求項1または2に記載のコーティング用樹脂溶液。
【請求項4】
一般式(1)及び一般式(2)の総モル数のうち、一般式(2)で表される化合物の割合が50%より大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティング用樹脂溶液。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーティング用樹脂溶液を乾燥して得られるポリイミド樹脂層であり、複屈折(Δn)が0.05以上、0.15以下であるポリイミド樹脂層。
【請求項6】
厚さが1μm以上、15μm未満であることを特徴とする請求項5に記載のポリイミド樹脂層。
【請求項7】
請求項5または6に記載のポリイミド樹脂層と、支持体からなることを特徴とする積層体。
【請求項8】
請求項7に記載の積層体を、支持体上にポリイミド樹脂層を塗布、乾燥して形成することを特徴とする、積層体の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の積層体を、支持体上にポリイミド樹脂層を転写して形成することを特徴とする、積層体の製造方法。
【請求項10】
請求項5〜7のいずれか1項に記載のポリイミド樹脂層又は積層体を含有して形成されたことを特徴とする、光学補償部材。
【請求項11】
請求項10記載の光学補償部材を使用したことを特徴とする、偏光板。
【請求項12】
請求項11の偏光板を使用したことを特徴とする、液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−96967(P2009−96967A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323781(P2007−323781)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】