説明

コーティング組成物及び透明性フィルム

【課題】透明性、低摩擦性、耐屈曲性の性能を兼ね備えた透明性フィルムの製造に好適に使用することができるコーティング組成物を提供する。
【解決手段】フィラー粒子及びマトリックス樹脂を含有するコーティング組成物であって、上記フィラー粒子は、平均粒子径5〜300nmであり、上記コーティング組成物の全固形分量に対して60〜80質量%の割合で含有されるコーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング組成物及びそれを使用することで得られる透明性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の表示体分野においては、多くの樹脂フィルムが使用されている。これらの樹脂フィルムは、透明性に優れることが要求されている。しかしながら、使用時のフィルムの取扱い性等の観点からはフィルムが滑り性を有することが必要となる。滑り性を付与するためには、フィルム表面の摩擦抵抗を低減することが必要となる。
【0003】
フィルムの摩擦抵抗を低減する目的で、フィルム表面に凹凸形状を形成することが行われている。しかしながら、表面凹凸を有するフィルムは、通常その表面で光の散乱を生じるために透明性が損なわれてしまう。よって、透明性と低摩擦抵抗という性質を両立させた樹脂フィルムを得ることは極めて困難であった。
【0004】
樹脂及びフィラー粒子を含有するコーティング組成物によって基材フィルム上に皮膜を形成して、凹凸形状を付与することは公知である(特許文献1〜8)。しかし、これらの文献においては、コーティング組成物中のフィラー粒子は、マイクロオーダーの粗大な粒子を使用しているものがほとんどであり、このような場合には、透明性を維持したままで摩擦抵抗を小さくすることはできなかった。また、樹脂とフィラー粒子との合計量に対して60質量%という極めて高い割合で配合することは記載されていないため、充分に表面抵抗値を小さくすることはできなかった。摩擦抵抗が大きい場合、大気中でのロール搬送において傷が発生しやすく、真空中での搬送で特に傷が発生しやすい。更に、透明フィルムにおいては、巻き取り時の破損が生じてはならない。このような破損を生じないために、耐屈曲性をも充分に維持することは非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−117724号公報
【特許文献2】特開2002−373056号公報
【特許文献3】特開2003−27003号公報
【特許文献4】特許第4076213号公報
【特許文献5】国際公開第01/016963号パンフレット
【特許文献6】特許第3737738号公報
【特許文献7】特開2004−123976号公報
【特許文献8】特許第4174739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑み、透明性、低摩擦性、耐屈曲性の性能を兼ね備えた透明性フィルムの製造に好適に使用することができるコーティング組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フィラー粒子及びマトリックス樹脂を含有するコーティング組成物であって、フィラー粒子は、平均粒子径5〜300nmであり、コーティング組成物の全固形分量に対して60〜80%の割合で含有されることを特徴とするコーティング組成物である。
【0008】
上記フィラー粒子は、粒子分布におけるCv値が25以下であることが好ましい。
上記マトリックス樹脂は、エネルギー線硬化型樹脂であることが好ましい。
上記フィラー粒子は、平均粒子径が15〜100nmであることが好ましい。
【0009】
本発明は、透明基材上に上述したコーティング組成物を塗布することによって形成された被覆層を有することを特徴とする透明性フィルムでもある。
本発明の透明性フィルムは、上記透明性フィルムのヘイズ(Hz1)と上記透明基材のヘイズ(Hz2)とが、
Hz1−Hz2≦0.2%
を満たすことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコーティング組成物を使用して製造された透明性フィルムは、表面凹凸を有するために、表面摩擦が低減されたものであるにもかかわらず、透明性、耐屈曲性を維持しており、光学積層体、内容物が確認できる包装フィルム等の透明性が特に重視されるフィルムに広く用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
上述したコーティング組成物は、ナノオーダーの極めて微細な粒子径を有するフィラー粒子を全固形分に対して60〜80質量%という高配合量で配合するものであることから、微細な形状を有する凸部を高密度で形成することができ、透明性、低摩擦性及び耐屈曲性を有する透明性フィルムを製造することができる。上記フィラー粒子の粒子径は、顕微鏡による画像観察によって測定したものである。
【0012】
上記フィラー粒子は、平均粒子径が5〜300nmである。すなわち、300nm以下という微細な粒子径を有することによって、透明性と低摩擦性を備えたコート層を形成することができる。上記粒子径の下限は、コート表面滑り性の観点から15nmであることが好ましく、20nmであることがより好ましく、40nmであることが更に好ましい。上記粒子径の上限は、透明性の観点から100nmであることが好ましく、70nmであることがより好ましい。
【0013】
上記フィラー粒子は、真球度が90%を超える値であることが好ましい。このような真球度であることによって、ヘイズ上昇による透明性低下を抑制することができる、という点で好ましい。上記真球度は、SEMによる画像観察によって測定したものである。
【0014】
上記フィラー粒子は、粒子分布におけるCv値が25以下であることが好ましい。すなわち、平均粒子径に比べて特に粗大であったり微小であったりする粒子の存在量が少ないことが好ましい。これによって、表面凹凸形状を全体的に均一な状態で形成することができ、透明性及び低摩擦抵抗性において優れた性能を有するフィルムを得ることができる。上記Cv値はSEMによる画像観察によって測定したものである。
【0015】
特に、上述したような真球度が高く、Cv値が小さいフィラー粒子を使用した場合、透明性フィルムのSEM観察により、細密充填構造に近い状態でフィラーが存在し、これによってフィラー間に三次元的な隙間が極めて少ない状態で存在していることが明らかである。これによって、透明性と耐傷性という効果の両立をより高い水準で効率よく達成できるものと推測される。
【0016】
上記フィラー粒子を配合することによって、フィラー粒子を含有しないクリヤーコート層を形成した場合に比べて、むしろ全光線透過率が高くなる。特に、上記フィラー粒子の配合量を増加させることは、むしろ透明性においては好適な結果を得ることができる。これによって、本発明においては、透明性と耐傷性の両方において優れた性能を有するフィルムを提供することができる。
【0017】
上記フィラー粒子としては上記粒子径を有するものであれば特に限定されず、有機樹脂微粒子、無機微粒子等の公知のものを使用することができる。使用することができる有機樹脂微粒子としては例えば、アクリル樹脂粒子、シリコーン樹脂微粒子、ビニルモノマーの乳化重合などによって得られる有機高分子化合物の微粒子やポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾールなど重縮合によって得られる有機高分子化合物の微粒子及びフェノール樹脂、メラミン樹脂などの付加縮合によって得られる有機高分子化合物の微粒子等を挙げることができる。この中でも現状においては粒度分布が比較的シャープであることからアクリル樹脂粒子、シリコーン樹脂微粒子が望ましい。
【0018】
無機微粒子としては、特に限定されず、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化タングステン、ケイ酸アルミニウム(クレー、カオリン)、タルク、アタパルジャイト、セリサイト、マイカ、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、ベントナイト、ゼオライト、パイロフィライト、酸化ジルコン、ケイ酸ジルコン、ハイドロタルサイト、クリソタイル、ゾノトライト、ウォラストナイトなどが挙げられる。上記無機微粒子に対して表面処理を施したものであってもよい。この中でも安価で入手可能で、粒度分布が比較的シャープであることからシリカが望ましい。
【0019】
上記フィラー粒子としては市販のものを使用することもできる。市販のものとしては例えば、(株)龍森製シリカ粒子(品番:A−21、B−21)、日産化学工業(株)製シリカ粒子(品番:MEK−ST)等を使用することができる。また、上述した各種フィラー粒子のうち2種以上を併用して使用するものであってもよい。
【0020】
本発明のコーティング組成物は、全固形分量に対して60〜80質量%の割合で上記フィラー粒子を含有するものである。上記範囲内のものであることによって、微小な凸部が高密度で形成されるものである。上記フィラー粒子が60質量%未満であると、得られたフィルム上に平坦部が形成されてしまうことによって、摩擦抵抗が大きくなり、耐傷付き性が不充分となる。80質量%を超えた場合は、ヘイズ上昇による透明性の低下、耐屈曲性の低下、という問題を生じるおそれがある。上記配合量の上限は、70質量%であることがより好ましい。
【0021】
上記マトリックス樹脂としては特に限定されず、熱硬化性樹脂、エネルギー線硬化型樹脂等の任意のものを使用する用途及び目的に応じて使用することができる。なかでも、加熱工程が不要なので、作業性が良好であることから、エネルギー線硬化型樹脂が好ましい。
【0022】
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系熱硬化型樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の公知の樹脂を使用することができる。
【0023】
上記エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射によって、三次元架橋可能な重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上分子内に有する低分子量化合物が広く用いられる。そのようなエネルギー線硬化型樹脂として、具体的にはトリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート等、芳香族系、脂肪族系等のウレタンアクリレート(オリゴマー)等を挙げることができる。
【0024】
上記マトリックス樹脂は、上述した各種の樹脂の2種以上を併用して使用するものであってもよい。上記マトリックス樹脂は、コーティング組成物中の固形分に対して20〜40質量%の割合で含まれることが好ましい。上記下限は30質量%であることがより好ましい。上記上限は35質量%であることがより好ましい。
【0025】
本発明のコーティング組成物は、基材フィルムの種類、マトリックス樹脂種、フィラー粒子の種類に応じて水性組成物、溶剤系組成物等の任意の形態とすることができる。更に、目的に応じて、紫外線吸収剤、分散剤、光反応開始剤、触媒、レベリング剤、カップリング剤、帯電防止剤等の成分を本発明の効果を損なわない範囲で含有するものであってもよい。
【0026】
本発明のコーティング組成物を溶剤系組成物とする場合、使用することができる溶剤としては特に限定されず、例えば、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等を挙げることができる。これらの2種以上を併用するものであってもよい。本発明のコーティング組成物において、その固形分量は特に限定されるものではないが、塗装効率等の観点から、コーティング組成物中の固形分量は20〜50質量%であることが好ましい。
【0027】
上記コーティング組成物を使用して本発明の透明性フィルムを得る場合、基材フィルムとしては特に限定されず、任意の透明性樹脂フィルムを使用することができる。使用することができる透明性樹脂フィルムとしては、熱可塑性、熱硬化性いずれを用いてもよく、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル樹脂フィルム;塩化ビニルフィルム;トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂フィルム;ポリアミド樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;ポリエーテルサルフォン樹脂フィルム、ポリサルフォン樹脂フィルム、シクロオレフィンコポリマーフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム等を挙げることができる。基材フィルムが多層フィルムであってもよい。
【0028】
基材フィルムを製造する方法としては、特に限定されず、例えば、Tダイもしくはコートハンガーダイ等の溶融キャスト又は溶液キャストやカレンダー法等が挙げられる。本発明の基本的な性能を損なわない範囲であれば、そのほかの公知の成膜方法によって製造したものであってもよい。
【0029】
上記コーティング組成物によるコーティング層の形成方法は特に限定されず、浸漬法、ロールコート法、スプレーコーティング、ダイコーティング等の任意の方法を採用することができる。上記コーティング組成物によるコート層は、厚みが0.5〜3.0μmであることが好ましい。このような範囲内とすることで、良好な凹凸形状を形成することができる。上記マトリックス樹脂の種類に応じて、熱硬化、エネルギー線硬化等の処理を行うものであってもよい。厚みが0.5μm未満であると、コート表面に光の干渉色(虹色)が見える場合があり、これによって外観不良を生じるおそれがある。厚みが3.0μmを超えると、曲げ耐久性が悪化しクラックを生じやすくなるおそれがある。
【0030】
上記コーティング組成物によって形成されたコーティング層を有する透明性フィルムも本発明の一つである。
【0031】
本発明の透明性フィルムは、ヘイズが0.1〜4.0、かつ全光線透過率≧90%であることが好ましい。このような範囲内であるような透明性のあるフィルムとすることによって、光学積層体等の透明性が要求される用途に好適に使用することができる。
【0032】
本発明の透明性フィルムは、透明性フィルムのヘイズ(Hz1)と上記透明基材のヘイズ(Hz2)とが、
Hz1−Hz2≦0.2%
を満たすことが好ましい。すなわち、透明基材上にコート層を設けたことによるヘイズ値の上昇が上記範囲内の小さいものであることが好ましい。
【0033】
本発明における「透明性フィルム」は、その厚みを特に限定されるものではなく、通常「樹脂シート」と呼ばれるものも包含するものである。その厚みとしては、例えば、5〜5000μmのものを包含する。より好ましい範囲は10〜500μmである。10μm未満であると、フィルム搬送中に皺が入るという問題を生じるおそれがあり、500μmを超えるとロール間等でフィルム引取り時や巻き取り時にきれいに巻けない等の問題を生じるおそれがある。
【0034】
本発明の透明フィルムは、任意の用途に使用することができる。すなわち、搬送時や使用時においての滑り性はほとんどすべての樹脂フィルムにおいて要求される効果であることから、特定の使用分野に限らず、使用することができる。
【0035】
特に好適に使用することができる技術分野としては、液晶やプラズマディスプレイ等の表示装置において使用される光学積層体を挙げることができる。表示装置用光学積層体は、偏光板、カラーフィルタ、透明電極等の多くのフィルムからなるが、これらのフィルムは高いレベルでの透明性を要求される。更に、作業工程においてはフィルム製造工程後に巻き取られた後に、液晶製造工程において再度製造装置に供される。これらの工程をスムーズに行うためには、優れた滑り性を有することが必要とされるためである。
【実施例】
【0036】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
【0037】
(コーティング組成物の調製)
表1〜4に示す組成で各成分を混合してコーティング組成物を調製した。
【0038】
(基材フィルムの製造)
ポリサルフォン(ソルベイアドバンストポリマー社製、品番:P−3700HC)を50mmφ押出機でシリンダー温度350℃の条件にて溶融混練した後、温度350℃のダイス(Tダイ)から出てきた軟化状態のシートを徐々に冷却させて厚み120μmのシートを得た。得られたフィルムは、ヘイズ0.06%、全光線透過率88.44%であった。
【0039】
(透明性フィルムの製造)
得られた基材フィルム上に上記コーティング組成物の調製によって調製したコーティング組成物をマイクログラビア方式でコートした。塗布ロールは♯200メッシュロールを用い、ロール回転数48rpm、ライン速度6m/分の条件で塗布を行った。塗布後、乾燥炉で90℃→120℃→120℃での乾燥を行った後、水銀ランプ(アイグラフィックス社製8kW 2本)によってUV照射を行った。得られたコート層の厚みは0.8μmであった。次いで上記コート層に対して反対側の面に対してフィラーを含有しない以外は上記表1,2に示したものと同一の組成を有するコーティング組成物をマイクログラビア方式でコートして裏面コート層を形成した。塗布ロールは♯100メッシュロールを用い、ロール回転数19rpm、ライン速度6m/分の条件で塗布を行った。塗布後、上記コート層と同様の条件でUV照射を行った。得られた裏面コート層の厚みは2μmであった。
得られた各透明性フィルムについて、以下の基準に基づいて評価を行った。
【0040】
(コート層の膜厚測定)
光学干渉式膜厚計(Vert Scan 菱化システム社製)で基材フィルムに塗布、乾燥、UV後のコート層の膜厚を測定した。
【0041】
(全光線透過率)
日本電色社製ヘイズメーターNDH2000(JIS K7361−1997準拠)で測定した。
90.0%以上となるものを合格とした。
【0042】
(ヘイズ)
日本電色社製ヘイズメーターNDH2000(JIS K7105−1981準拠)で測定した。
5.00以下となるものを合格とした。なお、表示装置用光学積層体として用いる場合は、1.00以下であることが好ましい。
【0043】
(透明フィルムと透明基材とのヘイズ値の差)
参考データとして、上記と同様の方法により透明基材のヘイズ値を測定し透明性フィルムのヘイズ値との差を測定した。
フィラーの粒径及び配合量を適宜選択することにより上記ヘイズ値の差を小さくすることができ、表示装置用光学積層体用途としてより好適なものとすることができる。
【0044】
(耐傷性)
張力9kg/m、速度5m/minの条件での搬送時のフィルム表面の傷を確認した。評価基準は以下のようなものである。○または△となるものを合格とした。
○:傷なし
△:1mあたりの傷の本数が、1〜3本
×:1mあたりの傷の本数が、4本以上
【0045】
(耐屈曲性)
実施例のフィルムを棒に巻き付け、30sec保持させた時のコート膜表面の割れ、クラックを観察した。評価基準は以下のようなものである。○または△となるものを合格とした。
○:3mmφ以上の棒に巻き付けてもクラック発生なし
△:5mmφ以上の棒に巻き付けてもクラック発生なし
×:10mmφ以上の棒に巻き付けてもクラック発生なし
結果を表1、表2に示す。
【0046】
(フィラー粒子の粒子径、形状及び分布の測定)
FE−SEM(JOEL製)50000倍にて、ナノフィラー粒子をSEM測定した。撮影SEM画像をプリントアウトし、任意の直交方向の2方向の粒径をスケールで100点実測し、粒子100個分のデータから、平均粒径、真球度、CV値をそれぞれ以下の方法で算出した。
【0047】
平均粒径:各粒子で、(短い方の径+長い方の径)/2で1粒子ごとの粒径を算出し、100個の平均を取った。
真球度:各粒子で、(短い方の径/長い方の径)×100で1粒子ごとの真球度を算出し、100個の平均を取った。
CV:平均粒径の粒子標準偏差/平均粒径×100
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
更に、実施例9のフィルムのSEM画像を図1に示した。
【0053】
表1〜4の結果から、本発明のコーティング組成物を使用して得られた透明性フィルムは、透明性、耐擦り傷性、及び、耐屈曲性に優れた性質を有するが、比較例のフィルムは透明性、耐擦り傷性、耐屈曲性のいずれかにおいて性能が不充分である。更に、図1から、本発明の透明性フィルムは、ほぼ同一の形状を有する微細な凹凸がフィルム全面に均一に存在していることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のコーティング組成物を使用して製造された透明性フィルムは、透明性及び滑り性の両方の性質が要求される用途において特に好適に使用することができ、例えば、表示装置用の光学積層体として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例9の透明性フィルムのSEM画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラー粒子及びマトリックス樹脂を含有するコーティング組成物であって、
前記フィラー粒子は、平均粒子径5〜300nmであり、前記コーティング組成物の全固形分量に対して60〜80質量%の割合で含有されることを特徴とするコーティング組成物。
【請求項2】
フィラー粒子は、粒子分布におけるCv値が25以下である請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項3】
マトリックス樹脂は、エネルギー線硬化型樹脂である請求項1又は2記載のコーティング組成物。
【請求項4】
フィラー粒子は、平均粒子径が15〜100nmである請求項1、2又は3記載のコーティング組成物。
【請求項5】
透明基材上に請求項1、2、3又は4記載のコーティング組成物を塗布することによって形成された被覆層を有することを特徴とする透明性フィルム。
【請求項6】
前記透明性フィルムのヘイズ(Hz1)と前記透明基材のヘイズ(Hz2)とが、
Hz1−Hz2≦0.2%
を満たす請求項5記載の透明性フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2010−235935(P2010−235935A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52653(P2010−52653)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】