説明

コーナ用壁面材およびコーナ用壁面材の製造方法

【課題】強度および耐久性を向上させ、製造作業も容易に行うことができるコーナ用壁面材およびコーナ用壁面材の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】それぞれ一方の側端面を所定角度に切断して接着剤Aを塗布した2枚の板材2、3を突き合わせ、高周波誘電加熱によって加熱接着する方法で製造されるコーナ用壁面材1において、前記2枚の板材2、3の突き合わせ部4に形成されたV溝部5に、前記突き合わせ部4の突き合わせ面2a、3aに塗布された接着剤Aの一部A1が前記V溝部5の長さ方向に沿ってはみ出しており、このはみ出した接着剤A1が前記2枚の板材2、3に高周波誘電加熱によって密着されていることを前記課題の解決手段とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁に設置されるサイディング材の、特にコーナ部分に用いられるコーナ用壁面材およびコーナ用壁面材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コーナ用壁面材を加工するには、突き合わせ部分に例えばエポキシ系接着剤を塗布し、2枚の板材を所定の角度に保持させる型にセットして、加圧状態(コールドプレス)に1〜2日間保持して接着剤の硬化を待っていた。しかし、このような方法では生産効率が悪いため、側端面を一定角度に切断した2枚の板材どうしを突き合わせて押圧するとともに、その押圧状態を保持しながら高周波誘電加熱によって短時間に加熱接着することができる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような技術によって製造されるコーナ用壁面材は、接着すべき2枚の板材が長寸法のものであっても、その全長にわたって正確な位置関係であって、かつ均等な接着圧がかかった状態で高周波誘電加熱を行うことができ、部分的な接着不良などがなく、均質に接着されている。
【特許文献1】特開2000−145094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、2枚の板材を突き合わせて形成されるコーナ用壁面材は、突き合わせ部分の側端面に接着剤を塗布して形成されているだけである。このことから、さらに強度および耐久性を向上させることができるコーナ用壁面材の開発が望まれていた。
【0005】
本発明の課題は、強度および耐久性を向上させ、製造作業も容易に行うことができるコーナ用壁面材およびコーナ用壁面材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、例えば図1に示すように、それぞれ一方の側端面を所定角度に切断して接着剤Aを塗布した2枚の板材2、3を突き合わせ、高周波誘電加熱によって接着して形成するコーナ用壁面材1において、
前記2枚の板材2、3の突き合わせ部4に形成されたV溝部5に、前記突き合わせ部4の突き合わせ面2a、3aに塗布された接着剤Aの一部A1を前記V溝部5の長さ方向に沿ってはみ出させており、このはみ出させた接着剤A1を前記2枚の板材2、3に高周波誘電加熱によって密着させることを前記課題の解決手段とした。
【0007】
ここで、前記所定角度とは、突き合わせた2枚の板材2、3間の角度を、所望する角度にするための、前記2枚の板材2、3の側端面の切断角度を示しており、例えば、この切断角度を45度に設定した場合、突き合わせた2枚の板材2、3間の角度を直角にすることができ、60度に設定した場合には、突き合わせた2枚の板材2、3間の角度を120度にすることができる。すなわち、前記所定角度は、前記コーナ用壁面材1を取り付けるべき建物のコーナ部分の角度に合わせて可変であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、前記2枚の板材2、3の突き合わせ部4に形成されたV溝部5に、前記突き合わせ部4の突き合わせ面2a、3aに塗布された接着剤Aの一部A1を前記V溝部5の長さ方向に沿ってはみ出させており、このはみ出した接着剤A1を前記2枚の板材2、3に高周波誘電加熱によって密着させることから、前記接着剤Aの一部A1によって、前記V溝部5の長さ方向に沿って、2枚の板材2、3を強固に接着することができる。すなわち、従来とは異なり、突き合わせ部4だけを接着するのではなく、前記V溝部5にも接着剤Aの一部A1をはみ出させて2枚の板材2、3を接着、補強しているので、さらに強度および耐久性を向上させることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、例えば図1および図2に示すように、それぞれ一方の側端面を所定角度に切断して接着剤Aを塗布した2枚の板材2、3を突き合わせ、高周波誘電加熱によって接着するコーナ用壁面材1の製造方法において、
前記2枚の板材2、3の突き合わせ部4の突き合わせ面2a、3aに塗布された接着剤Aの一部A1を、前記2枚の板材2、3の突き合わせ部4に形成されたV溝部5に、その長さ方向に沿ってはみ出させ、このはみ出した接着剤A1を前記2枚の板材2、3に高周波誘電加熱によって密着させることを前記課題の解決手段とした。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、前記2枚の板材2、3の突き合わせ部4の突き合わせ面2a、3aに塗布された接着剤Aの一部A1を、前記2枚の板材2、3の突き合わせ部4に形成されたV溝部5に、その長さ方向に沿ってはみ出させ、このはみ出した接着剤A1を前記2枚の板材2、3に高周波誘電加熱によって密着させるので、従来とは異なり、突き合わせ部4だけを接着するのではなく、前記V溝部5にも接着剤Aの一部A1をはみ出させて2枚の板材2、3を接着、補強することができ、さらに強度を向上させたコーナ用壁面材1を製造することが可能となる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、例えば図3(a)、(b)に示すように、請求項2に記載のコーナ用壁面材1の製造方法において、
前記2枚の板材2、3を突き合わせる際に、前記突き合わせ面2a、3aの一方の側辺2b、3bどうしを突き合わせた後、これら一方の側辺2b、3bどうしを突き合わせたまま他方の側辺2c、3cどうしを突き合わせることを前記課題の解決手段とした。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、前記2枚の板材2、3を突き合わせる際に、前記突き合わせ面2a、3aの一方の側辺2b、3bどうしを突き合わせた後、これら一方の側辺2b、3bどうしを突き合わせたまま他方の側辺2c、3cどうしを突き合わせるだけで、一方の側辺2b、3bから他方の側辺2c、3cに向かって接着剤Aをはみ出させることができるので、コーナ用壁面材1の製造作業を容易に行うことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、例えば図2に示すように、請求項2または3に記載のコーナ用壁面材1の製造方法において、
前記突き合わせた2枚の板材2、3を高周波誘電加熱装置Kに設けられた架台6上に載置するとともに、前記高周波誘電加熱装置Kに設けられた第1の電極7の先端部7aを、前記V溝部5に近接するように位置させて、その後、前記2枚の板材2、3を押圧手段10、11によって押圧しながら、前記V溝部5と前記第1の電極7の先端部7aとの間に前記接着剤Aの一部A1を充填させた状態で高周波電流を印加し加熱接着することを前記課題の解決手段とした。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、前記突き合わせた2枚の板材2、3を高周波誘電加熱装置Kに設けられた架台6上に載置するとともに、前記高周波誘電加熱装置Kに設けられた第1の電極7の先端部7aを、前記V溝部5に近接するように位置させて、その後、前記2枚の板材2、3を押圧手段10、11によって押圧しながら、前記V溝部5と前記第1の電極7の先端部7aとの間に前記接着剤Aの一部A1を充填させた状態で高周波電流を印加し加熱接着するだけで、2枚の板材2、3を強固に接着することができる。すなわち、前記2枚の板材2、3を接着するに際し、高周波誘電加熱装置Kを用いることによって、強度を向上させたコーナ用壁面材1を容易に製造することが可能となる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、例えば図2に示すように、請求項4に記載のコーナ用壁面材1の製造方法において、
前記押圧手段10、11によって前記2枚の板材2、3を押圧する際に、前記架台6の方向に押圧する上下方向押圧手段10と、前記2枚の板材2、3の突き合わせ部4を、これら2枚の板材2、3の横方向から押圧する左右方向押圧手段11とによって押圧することを前記課題の解決手段とした。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、前記押圧手段10、11によって前記2枚の板材2、3を押圧する際に、前記架台6の方向に押圧する上下方向押圧手段10と、前記2枚の板材2、3の突き合わせ部4を、これら2枚の板材2、3の横方向から押圧する左右方向押圧手段11とによって押圧するので、前記2枚の板材2、3を強固に押圧することができるとともに均一な押圧ができ、また、このように強固に押圧された状態で高周波電流を印加するので、位置ずれ等を生じさせることなく、しかも容易に加熱接着することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、例えば図2または図4(a)に示すように、請求項4または5に記載のコーナ用壁面材1の製造方法において、
前記第1の電極7の先端部7aに、絶縁性テープBを予め貼り付けておくことを前記課題の解決手段とした。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、前記第1の電極7の先端部7aに、絶縁性テープBを予め貼り付けておくことによって、この第1の電極7の表面電位が低下し、放電を抑制することができるので、例えば、高周波加熱により発生する水蒸気によって電極7がスパークすることがない。
その上、この絶縁性テープBが貼り付けられた電極と前記V溝部5との間に前記接着剤A1を充填することから、製造されたコーナ用壁面材1のV溝部5において、前記接着剤A1の表面を平滑に形成することができるので見映えが良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明のコーナ用壁面材によれば、2枚の板材の突き合わせ部に形成されたV溝部に、前記突き合わせ部の突き合わせ面に塗布された接着剤の一部が前記V溝部の長さ方向に沿ってはみ出しており、このはみ出した接着剤が前記2枚の板材に高周波誘電加熱によって密着されていることによって、従来とは異なり、前記2枚の板材の突き合わせ部だけが接着されているのではなく、前記V溝部にも接着剤の一部がはみ出し、これら2枚の板材が接着、補強されているので、さらに強度および耐久性を向上させることができる。
また、本発明のコーナ用壁面材を製造する際には、前記2枚の板材の突き合わせ部の突き合わせ面に塗布された接着剤の一部を、前記2枚の板材の突き合わせ部に形成されたV溝部に、その長さ方向に沿ってはみ出させ、このはみ出した接着剤を前記2枚の板材に高周波誘電加熱によって密着させるので、従来とは異なり、突き合わせ部だけを接着するのではなく、前記V溝部にも接着剤の一部をはみ出させて2枚の板材を接着、補強することができ、さらに強度を向上させたコーナ用壁面材を製造することが可能となる。
さらに、前記2枚の板材を接着するに際し、高周波誘電加熱装置を用いることによって、前記2枚の板材を強固に接着することが可能となり、強度を向上させたコーナ用壁面材を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明に係るコーナ用壁面材1およびコーナ用壁面材1の製造方法の実施の形態について説明する。
【0021】
本実施の形態のコーナ用壁面材1は、図1に示すように、それぞれ一方の側端面を所定角度に切断して接着剤Aを塗布した2枚の板材2、3が突き合わされ、高周波誘電加熱によって接着されて形成されるコーナ用壁面材1において、
前記2枚の板材2、3の突き合わせ部4に形成されたV溝部5に、前記突き合わせ部4の突き合わせ面2a、3aに塗布された接着剤Aの一部A1が前記V溝部5の長さ方向に沿ってはみ出しており、このはみ出した接着剤A1が前記2枚の板材2、3に高周波誘電加熱によって密着されている。
また、本実施の形態では、図2に示すように、このコーナ用壁面材1を加熱接着する手段として高周波誘電加熱装置Kが用いられている。
【0022】
前記2枚の板材2、3は、図1〜図3(a)、(b)に示すように、それぞれ一方の側端面が所定角度に切断されており、この切断された一方の側端面どうしが突き合わされて、前記コーナ用壁面材1を構成している。
なお、これら板材2、3の材質としては、例えば、木製板や合板、珪酸カルシウム板、硬質木片セメント板、繊維強化セメント板等の様々な板材が挙げられるが、本実施の形態では硬質木片セメント板が使用されている。
【0023】
また、本実施の形態においては、前記所定角度とは、切断された2枚の板材2、3の各側端面に接着剤Aが塗布され、突き合わされた際に、これら突き合わされた側端面を基端として前記2枚の板材2、3どうしが直角になるように設定されている角度を示している。
【0024】
前記突き合わせ部4は、前記2枚の板材2、3の各側端面に接着剤Aが塗布されて、これら接着剤Aが塗布された側端面どうしを突き合わせた部位であり、図3(a)に示すように、突き合わせ面2a、3aの一方の側辺2b、3bどうしが突き合わされた後、これら一方の側辺2b、3bどうしが突き合わされたまま他方の側辺2c、3cどうしが突き合わされて、図3(b)に示すように、突き合わせ部4が形成されている。そして、この突き合わせ部4内の接着剤Aは、その一部A1が一方の側辺2b、3bから他方の側辺2c、3cに向かって所定量分はみ出ている。
【0025】
前記V溝部5は、前記2枚の板材2、3の内角に位置するV字状の溝部であり、前記2枚の板材2、3を突き合わせた直後は、図3(b)に示すような不定形の接着剤A1が溜まった状態となっている。そして、この不定形な接着剤A1の表面を見映え良く形成したものが、図1に示すように、当該V溝部5の長さ方向に沿って、前記2枚の板材2、3に接着されている。
【0026】
前記接着剤Aは、本実施の形態に使用されるものとして、例えば湿気硬化型ウレタン系接着剤が挙げられる。
この湿気硬化型ウレタン系接着剤とは、ポリウレタン樹脂となる原料(例えば、ポリオールとジイソシアネートやトリイソシアネート等のポリイソシアネート化合物)と、触媒とからなる混合物を主成分とする接着剤で、硬質木片セメント板等の外壁材に含まれている水分や空気中の湿気を吸収すると急速に重合してポリウレタン樹脂となって種々な被接着物を強固に接着させることができるものである。また、セメント製品や木製品を強固に接着させることができるので、かかる製品にも多く使用される。
さらに、この湿気硬化型ウレタン系接着剤を高周波加熱した場合には、硬質木片セメント板等の外壁材の中に含まれている水分と反応して急速に接着される特徴を有している。
なお、以上の湿気硬化型ウレタン系接着剤の他にも、エポキシ系接着剤等が挙げられるが、いずれの接着剤においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0027】
前記接着剤A1は、図1〜図3(a)、(b)に示すように、前記突き合わせ部4から前記V溝部5に向かってはみ出した接着剤A1であり、前記接着剤Aと同一の接着剤A1である。この接着剤A1は前記V溝部5の長さ方向に沿って所定量分はみ出すとともに、前記2枚の板材2、3の双方に対して密着されている。
なお、ここで、所定量とは、このはみ出した接着剤A1によって前記2枚の板材2、3を強固に接着、補強することができる量である。また、これとともに、製造されたコーナ用壁面材1を実際に建物のコーナ部分に取り付ける際に、例えば、はみ出した接着剤A1の量が多いことによってコーナ用壁面材1と壁パネル(図示せず)との取り付けが妨げられるような過分な量ではなく、前記コーナ用壁面材1と壁パネルとの取り付けに適した量を示していることは言うまでもない。
【0028】
前記高周波誘電加熱装置Kは、図2に示すように、前記2枚の板材2、3を所定の角度に支受し、これら2枚の板材2、3の突き合わせ面2a、3aどうしが向き合うように載置する架台6と、この架台6の中心線上に設けられ、前記2枚の板材2、3のV溝部5近傍の位置に第1の電極7と、前記架台6の上方に設けられ、シリンダ(図示せず)によって昇降駆動される昇降フレーム8と、この昇降フレーム8の中心線上に、かつ、前記第1の電極7と相対する位置に設けられた第2の電極9と、この第2の電極9の左右両側方に設けられ、前記架台6上の板材2、3をシリンダ10aによって上方から押圧する複数の上下方向押圧手段10と、前記2枚の板材2、3をシリンダ11aによって横方向から押圧する複数の左右方向押圧手段11とから概略構成されている。
【0029】
なお、ここで、前記2枚の板材2、3が載置される架台6の所定の角度とは、コーナ用壁面材1を製造するに際し、このコーナ用壁面材1が取り付けられるべき建物のコーナ部分の角度であり、本実施の形態では、この所定の角度を直角とし、製造されるコーナ用壁面材の2枚の板材が直角に突き合わされるよう設定されている。また、建物のコーナ部分が直角ではない場合においても、前記架台6の設定角度を変更することにより対応することが容易に可能であることは言うまでもない。
【0030】
以上のような構成のコーナ用壁面材1を製造するには、図1および図2に示すように、それぞれ一方の側端面を所定角度に切断して接着剤Aを塗布した2枚の板材2、3を突き合わせ、高周波誘電加熱によって接着するコーナ用壁面材1の製造方法において、
前記2枚の板材2、3の突き合わせ部4の突き合わせ面2a、3aに塗布された接着剤Aの一部A1を、前記2枚の板材2、3の突き合わせ部4に形成されたV溝部5に、その長さ方向に沿ってはみ出させ、このはみ出した接着剤A1を前記2枚の板材2、3に高周波誘電加熱によって密着させる。
【0031】
また、以上のようなコーナ用壁面材1の製造方法を、前記高周波誘電加熱装置Kを用いて行うには、図2に示すように、前記突き合わせた2枚の板材2、3を高周波誘電加熱装置Kに設けられた架台6上に載置するとともに、前記高周波誘電加熱装置Kに設けられた第1の電極7の先端部7aを、前記V溝部5に近接するように位置させて、その後、前記2枚の板材2、3を押圧手段10、11によって押圧しながら、前記V溝部5と前記第1の電極7の先端部7aとの間に前記接着剤Aの一部A1を充填させた状態で高周波電流を印加し加熱接着する。
【0032】
すなわち、まず、それぞれ一方の側端面を所定角度に切断して接着剤Aを塗布した2枚の板材2、3を突き合わせる。これら2枚の板材2、3を突き合わせる際には、図3(a)、(b)に示すように、前記突き合わせ面2a、3aの一方の側辺2b、3bどうしを突き合わせた後、これら一方の側辺2b、3bどうしを突き合わせたまま他方の側辺2c、3cどうしを突き合わせる。このように突き合わせるだけで、一方の側辺2b、3bから他方の側辺2c、3cに向かって接着剤Aをはみ出させることができるので、コーナ用壁面材1の製造作業を容易に行うことができる。
【0033】
一方、これら2枚の板材2、3に形成されたV溝部5に向かって接着剤Aの一部A1をはみ出させた際に、前記突き合わせ面2a、3aどうしが向き合うように前記高周波誘電加熱装置Kに設けられた架台6上に載置する作業も行う。
この時、前記第1の電極7の先端部7aを、図2に示すように、前記V溝部5に近接するように位置させるが、この第1の電極7には、図4(a)に示すように、その先端部に7a、絶縁性テープBを予め貼り付けておく。これによって、この第1の電極7の表面電位が低下し、放電を抑制することができるので、例えば、高周波加熱により発生する水蒸気によって電極7がスパークすることがない。したがって、電極がスパークすることによって被加工物の表面が焼け焦げる等の障害が起こり難い。その上、この第1の電極7は、前記2枚の板材2、3のV溝部5近傍に位置しているので、V溝部5に充填された前記接着剤A1が絶縁性テープBに密接して、コーナ壁面材製造後、図1に示すように、該接着剤A1の表面を平滑に形成することができ見映えが良くなる。
【0034】
そして、前記第1の電極7は、前述のようにV溝部5の近傍に位置しており、換言すれば、この第1の電極7はV溝部5には接しないが極めて近い部位に位置している。すなわち、図2に示すように、前記V溝部5に充填される接着剤A1を十分に充填しきるために、前記第1の電極7とV溝部5との間に介在する空気等を排出する間隙C、Cが形成されているので、この接着剤A1の表面に残留空気等による凹凸等が形成されず、好ましい。
【0035】
なお、ここで、前記絶縁性テープBとして、例えば、テフロン(登録商標)テープ等に代表されるフッ素樹脂テープ等が挙げられる。このフッ素樹脂テープは、上記のような優れた絶縁性に加えて、耐熱性にも優れており、本実施の形態の高周波誘電加熱装置Kの一部に用いる場合にも適している。また、本実施の形態の絶縁性テープBは、上記のようにテフロンテープを用いるが、これに限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0036】
また、本実施の形態の絶縁性テープBの他方の面にはシリコン系粘着剤(図示せず)が塗布されており、前記第1の電極7と絶縁性テープBとの離型性が優れる。すなわち、この絶縁性テープBの一方の面は、コーナ用壁面材1製造中においては常に接着剤A1が接している状態となっているので、残留し硬化した接着剤A1や汚れを取り除かなければならない。しかし、接着剤A1や汚れの拭き取りは手間がかかるため、上述のように、他方の面にシリコン系粘着材が塗布されている絶縁性テープBを用いれば、絶縁性テープB自体を貼りかえるだけで拭き取り作業を省くことができるので手間がかからず好ましい。
【0037】
さらに、前記昇降フレーム8の中心線上に、かつ、前記第1の電極7と相対する位置に設けられた第2の電極9は、本実施の形態においては、図4(b)に示すように、その先端部9aをガイド杆9bによって支持しているが、これに限られるものではなく、例えば、先端部9aの左右両側に、この先端部9aよりも板材に向かって突出し、かつ、合成樹脂材等からなるガード部材(図示せず)を取り付けるなどして、前記先端部9aの表面に対する接着剤Aの付着を防ぐようにしても良い。これによれば、前記先端部9a側に接着剤Aがはみ出した場合においても該先端部9aには接着剤Aが付着せず、接着剤Aを拭き取る手間が省くことができるので好ましい。
【0038】
次に、前記2枚の板材2、3を押圧手段10、11によって押圧しながら、前記V溝部5と前記第1の電極7の先端部7aとの間に前記接着剤Aの一部A1を充填させ切った状態で高周波電流を印加し加熱接着する。
【0039】
前記押圧手段10、11は、上述のように上下方向押圧手段10と、左右方向押圧手段11とを主体として構成している。すなわち、前記上下方向押圧手段10によって上方から押圧する力は、前記2枚の板材2、3を下方に押圧する分力と突き合わせ部4を押しつける分力として作用する。一方、左右方向押圧手段11によって横方向から押圧する力は、前記2枚の板材2、3を、これら各板材2、3に沿って、斜め上方に押し上げる分力と突き合わせ部4を押しつける分力として作用する。したがって、これら分力のうち2枚の板材2、3を斜め下方に押し出す分力と、2枚の板材2、3を斜め上方に押し上げる分力とは打ち消し合って、板材2、3全体には突き合わせ部4を押しつける大きな力が作用することになる。
なお、これら押圧手段10、11はシリンダ10a、11aによって押圧力を得ており、これらシリンダ10a、11aは、本実施の形態ではエアシリンダが用いられているが、これに限られるものではなく、例えば、油圧シリンダ等でも良く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0040】
そして、前記第1の電極7と、この第1の電極7と相対する位置に設けられた第2の電極9との間に高周波電流を印加する。この時、上述のような押圧手段10、11によって前記2枚の板材2、3が強固に押圧された状態で高周波電流を印加するので、これら2枚の板材2、3の接着状態において位置ずれ等を生じさせることなく、しかも容易に加熱接着することができる。
【0041】
以上に記載のように、本実施の形態のコーナ用壁面材1によれば、2枚の板材2、3の突き合わせ部4に形成されたV溝部5に、前記突き合わせ部4の突き合わせ面2a、3aに塗布された接着剤Aの一部A1が前記V溝部5の長さ方向に沿ってはみ出しており、このはみ出した接着剤A1が前記2枚の板材2、3に高周波誘電加熱によって密着されていることによって、従来とは異なり、前記2枚の板材2、3の突き合わせ部4だけが接着されているのではなく、前記V溝部5にも接着剤Aの一部A1がはみ出し、これら2枚の板材2、3が接着、補強されているので、さらに強度および耐久性を向上させることができる。
また、本実施の形態のコーナ用壁面材1を製造する際には、前記2枚の板材2、3の突き合わせ部4の突き合わせ面2a、3aに塗布された接着剤Aの一部A1を、前記2枚の板材2、3の突き合わせ部4に形成されたV溝部5に、その長さ方向に沿ってはみ出させ、このはみ出した接着剤A1を前記2枚の板材2、3に高周波誘電加熱によって密着させるので、従来とは異なり、突き合わせ部4だけを接着するのではなく、前記V溝部5にも接着剤Aの一部A1をはみ出させて2枚の板材2、3を接着、補強することができ、さらに強度を向上させたコーナ用壁面材1を製造することが可能となる。
そして、前記2枚の板材2、3を接着するに際し、高周波誘電加熱装置Kを用いることによって、前記2枚の板材2、3をさらに強固に接着することが可能となり、強度を向上させたコーナ用壁面材1を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のコーナ用壁面材を示す斜視図。
【図2】本発明のコーナ用壁面材およびこれを加熱接着する高周波誘電加熱装置を示す正面図。
【図3】図1および図2に示すコーナ用壁面材の突き合わせ態様を示す正面図であり、(a)は突き合わせ面の一部を突き合わせた状態を示し、(b)は突き合わせ面全体を突き合わせたことを示す。
【図4】図2に示す高周波誘電加熱装置に設けられた電極を示す正面図であり、(a)は第1の電極を示し、(b)は第2の電極を示す。
【符号の説明】
【0043】
A 接着剤
A1 接着剤
K 高周波誘電加熱装置
1 コーナ用壁面材
2 板材
2a 突き合わせ面
3 板材
3a 突き合わせ面
4 突き合わせ部
5 V溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ一方の側端面を所定角度に切断して接着剤を塗布した2枚の板材が突き合わされ、高周波誘電加熱によって接着されて形成されるコーナ用壁面材において、
前記2枚の板材の突き合わせ部に形成されたV溝部に、前記突き合わせ部の突き合わせ面に塗布された接着剤の一部が前記V溝部の長さ方向に沿ってはみ出しており、このはみ出した接着剤が前記2枚の板材に高周波誘電加熱によって密着されていることを特徴とするコーナ用壁面材。
【請求項2】
それぞれ一方の側端面を所定角度に切断して接着剤を塗布した2枚の板材を突き合わせ、高周波誘電加熱によって接着するコーナ用壁面材の製造方法において、
前記2枚の板材の突き合わせ部の突き合わせ面に塗布された接着剤の一部を、前記2枚の板材の突き合わせ部に形成されたV溝部に、その長さ方向に沿ってはみ出させ、このはみ出した接着剤を前記2枚の板材に高周波誘電加熱によって密着させることを特徴とするコーナ用壁面材の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のコーナ用壁面材の製造方法において、
前記2枚の板材を突き合わせる際に、前記突き合わせ面の一方の側辺どうしを突き合わせた後、これら一方の側辺どうしを突き合わせたまま他方の側辺どうしを突き合わせることを特徴とするコーナ用壁面材の製造方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載のコーナ用壁面材の製造方法において、
前記突き合わせた2枚の板材を高周波誘電加熱装置に設けられた架台上に載置するとともに、前記高周波誘電加熱装置に設けられた第1の電極の先端部を、前記V溝部に近接するように位置させて、その後、前記2枚の板材を押圧手段によって押圧しながら、前記V溝部と前記第1の電極の先端部との間に前記接着剤の一部を充填させた状態で高周波電流を印加し加熱接着することを特徴とするコーナ用壁面材の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のコーナ用壁面材の製造方法において、
前記押圧手段によって前記2枚の板材を押圧する際に、前記架台の方向に押圧する上下方向押圧手段と、前記2枚の板材の突き合わせ部を、これら2枚の板材の横方向から押圧する左右方向押圧手段とによって押圧することを特徴とするコーナ用壁面材の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載のコーナ用壁面材の製造方法において、
前記第1の電極の先端部に、絶縁性テープを予め貼り付けておくことを特徴とするコーナ用壁面材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−37554(P2006−37554A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220199(P2004−220199)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000114086)ミサワホーム株式会社 (288)
【Fターム(参考)】