説明

コーヒードリップ用ポット

【課題】本発明は、コーヒー粉末に対する湯の注入動作を安定して行なうことができるコーヒードリップ用ポットを提供することを目的とするものである。
【解決手段】コーヒードリップ用ポットは、金属製で略円筒状の容器本体1、容器本体1の下部に取り付けられた金属製で細管状の注出管2、容器本体1の上部開口に取り付けられた蓋体3及び容器本体1の側部に取り付けられた把持部4を備えている。注出管2は、容器本体1への取付箇所22から上方に立ち上げるように延設され、容器本体1の上部位置において可変部位である蛇腹部20が形成されている。蛇腹部20から所定長さの先端部が設定され、その先端に注出口21が開口している。注出管2全体はほぼ同径の細管状に形成されており、蛇腹部20において全方向に湾曲変形することができ、注出口21の位置を自在に調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒーを抽出するドリッパーに収容されたコーヒー豆の粉末に湯を注ぐコーヒードリップ用ポットに関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーを淹れる場合、ペーパードリップ方式やサイフォン方式といったやり方が行われているが、ペーパードリップ方式では、ドリッパーにペーパーフィルタをセットしてコーヒー豆の粉末を適量投入し、適温の湯を注いでコーヒーを抽出するようにしている。
【0003】
ペーパードリップ方式では、湯の注ぎ方がコーヒーの良し悪しを左右するポイントとされており、一般的に、最初にコーヒー粉末の全体に少量の湯を注ぐ「蒸らし」、蒸らしたコーヒー粉末全体に螺旋状を描きながら湯を注ぐ「抽出」に分けて行われている。
【0004】
こうしたコーヒー粉末に対する湯の注入動作はコーヒードリップ用ポットを用いて行われているが、湯の注入量を微妙に加減できるようにポットの注出官は細口のものが使用されている。また、ポット内部に貯留する湯は、別の容器で沸騰した湯を投入したり、ポット自体を加熱して水を沸騰させるようにしている。
【0005】
ポット自体を加熱するタイプでは、例えば、特許文献1では、加熱する際に注ぎ口から泡沫や飛沫の噴出が少なくなるように、注ぎ管と主体との間を迂回管で連通させるようにした点が記載されている。
【特許文献1】特開2003−111673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来のコーヒードリップ用ポットでは、細口の注出管を用いて注湯量を加減しコーヒー粉末量に対してコーヒーの抽出速度をコントロールするようにしている。図9は、従来のポットに関する側面図である。従来のポットは、湯を貯留する容器本体100の下部に細管状の注出管101が取り付けられており、注出管101とは反対側に把持部102が設けられている。容器本体100の上部に形成された開口には蓋体103が回動可能に軸支されている。
【0007】
注出管101は、一端部104が容器本体100の下部に取り付けられて容器本体100の上部位置までほぼ垂直方向に延設され、注出口105が形成された先端部が水平方向に湾曲している。また、把持部102は、棒状体を湾曲して両端部を容器本体100に固定している。
【0008】
図10は、こうした従来のポットをドリッパーDに対して湯の注入動作をする場合の説明図である。湯の注入動作では、上述したように、コーヒー粉末に対して上方から螺旋状を描くように注出口105を移動させてコーヒー粉末に対して満遍なく湯を注入する必要があるが、螺旋状を描くように注出口を移動させる場合に、容器本体100や注出管101がドリッパーDに当たらないようにポット全体を上下動させなければならない。
【0009】
また、ポットを上下動させる場合、注出口105が高くなり湯が高い位置からコーヒー粉末に落下すると、コーヒー注湯面を撹乱するため、できるだけ低い位置から湯を注ぐことが望ましいが、注出口を低い位置に保とうとするとポット全体を傾けなければならない。
【0010】
そのため、ポットを螺旋状を描くための回動、上下動及び傾斜といった動作を同時に行わなければならず、安定した湯の注入動作を行うのが困難であった。特に、コーヒーの抽出を行う場合、コーヒー注湯面を撹乱しないように静かに注入して全体に湯を満遍なく均等に注入することがコーヒーの味の決め手となるため、従来のポットでは湯の注入動作に集中することができず十分に吟味されたコーヒーの抽出作業を行うことが難しかった。
【0011】
また、ポット自体を加熱する場合、容器本体100の下部をガスレンジ等で加熱する場合、注出管101が容器本体100の下部に取り付けられているため、注出管101内の水が加熱されて吹き上がり、注出口105から沸騰したお湯が吹き出すといった問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、コーヒー粉末に対する湯の注入動作を安定して行なうことができるコーヒードリップ用ポットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るコーヒードリップ用ポットは、コーヒーを抽出するドリッパーに収容されたコーヒー豆の粉末に湯を注ぐコーヒードリップ用ポットであって、湯を貯留する容器本体と、前記容器本体の下部において側面に一端が取り付けられた管状体からなるとともに他端が前記容器本体の上部位置まで延設されて注出口に形成された注出管とを備え、前記注出管は、前記容器本体の上部位置において湾曲変形可能な可変部位を有し、可変部位を変形させることで前記注出口の位置を調整することを特徴とする。さらに、前記注出管は、金属製の細管からなり、前記可変部位は、蛇腹状に形成されていることを特徴とする。さらに、前記注出管は、前記可変部位から前記注出口までの長さが前記ドリッパーの開口径の半分以上の長さに設定されていることを特徴とする。さらに、前記注出口には、湯を細く注出するための導水溝が形成されていることを特徴とする。さらに、前記容器本体の下部には、前記注出管の取付箇所の下方に当該取付箇所の過熱を防止する遮蔽部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記のような構成を有することで、注出管に湾曲変形可能な可変部位を設けたので、可変部位を変形させて注出口の位置をドリッパーのサイズやコーヒー粉末面に合せて調整することができる。そのため、螺旋状に描く湯の注入動作の際に注出管がドリッパーに当たることないように注出口を設定することができ、安定した注入動作を行なうことが可能となる。
【0015】
また、注出管を金属製の細管で、可変部位を蛇腹状に形成することで、従来のポットとほぼ同様の形状及び重量で、注入動作の操作性を格段に改善することができる。また、注出管において可変部位から注出口までの長さをドリッパーの開口径の半分以上の長さに設定しておけば、ポットを上下方向の変動及び傾斜状態の変動幅を少なくしドリッパー全体に満遍なく湯を注入することができる。そして、注出口に湯を細く注ぐための導水溝を形成しておくことで、安定して湯を注ぐことができるようになる。
【0016】
また、容器本体の下部に、注出管の取付箇所の下方に当該取付箇所の過熱を防止する遮蔽部材を配設することで、ポットを加熱して湯を沸かす場合でも注出管内の水が沸騰して注出口から吹き出すのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る実施形態に関する側面図である。コーヒードリップ用ポットは、金属製で略円筒状の容器本体1、容器本体1の下部に取り付けられた金属製で細管状の注出管2、容器本体1の上部開口に取り付けられた蓋体3及び容器本体1の側部に取り付けられた把持部4を備えている。
【0018】
容器本体1は、上部開口から底部10に向かって次第に大径になるように設定されている。底部10は、ガスレンジ等の加熱装置により加熱されるため厚みのある平板状に形成されている。底部10の側端には、注出管2の容器本体1への取付箇所22の下方に過熱防止のための遮蔽板11が突設されている。
【0019】
また、容器本体1の側部には、縦方向に開口部が形成されており、開口部に透明な材料からなる目盛板12が水密に嵌め込まれている。目盛板12を通して容器本体1の内部に貯留された湯の液面が見えるため、目盛板12に表示された目盛に基づいて湯の液量を正確に測定することができる。
【0020】
注出管2は、容器本体1への取付箇所22から上方に立ち上げるように延設され、容器本体1の上部位置において可変部位である蛇腹部20が形成されている。蛇腹部20から所定長さの先端部が設定され、その先端に注出口21が開口している。
【0021】
注出管2全体はほぼ同径の細管状に形成されており、蛇腹部20において全方向に湾曲変形することができ、注出口21の位置を自在に調整することができる。注出口1は、細管をその軸方向に対して上下に傾斜するように斜めに切断して形成されている。そのため、注出口21の下部が突出するように形成されて湯をスムーズに導出させることができる。また、蛇腹部20から注出口21までの長さは、ドリッパーDの上部開口の開口径の半分以上の長さに設定されていることが望ましい。
【0022】
蓋体3は、容器本体1の上部開口を覆う蓋本体部30、蓋本体部30の中心位置に取り付けられた摘み31及び蓋本体部30を反転方向に回動するように軸支する軸支部32を備えている。蓋本体部30は、軸支部32を中心に把持部4の方に回動して開き、垂直方向で直立し、さらに摘み31が把持部4の上面に当接した状態で蓋体3が把持部4に安定して支持されるようになっている。
【0023】
把持部4は、樹脂製で逆L字状の取っ手40及び取っ手40の一端を容器本体1の側部に固定する固定部材41を備えている。取っ手40は、容器本体1から離間した位置に配設されるため、容器本体1の底部10が加熱された場合でも熱くなりにくい。また、取っ手40の形状を手の握り形状に合せて凹凸形状に形成し、下方に延びる角度を注入動作に合わせて調整することで、より安定した動作で湯の注入を行うことができる。
【0024】
図2は、図1に示すコーヒードリップ用ポットの湯の注入動作に関する説明図である。注出管2の蛇腹部20をほぼ直交する方向に湾曲変形させて先端部を前方に向かって突出させるように設定することで、先端部が水平状態で注出口21をドリッパーDの上部開口の中心よりさらに前方に位置させることができる。
【0025】
そして、容器本体1を傾斜させた状態で注出口2をドリッパーD内のコーヒー粉末に近づけて湯を注入し、そのまま水平方向にポットを移動させながら螺旋を描くように回動させて注入動作を行なう。このように上下動させることなく注出口21を一定の高さに保った状態で注入動作を安定して行うことができるので、コーヒー注湯面を撹乱させることなく静かに湯を注入することが可能となる。
【0026】
図3は、図1に示すコーヒードリップ用ポットを用いて湯を沸かす場合の説明図である。ガスレンジ等の加熱装置により容器本体1の底部10を加熱する場合、遮蔽板11が注出管2の取付箇所22の下方に突出するように設けられているので、取付箇所22が直接加熱されることがなくなり、注出管2が加熱されることによる注出口21から吹き零れといったことを防止することができる。
【0027】
図4及び図5は、図1に示すコーヒードリップ用ポットの上面図及び側面図である。注出管2は、蛇腹部20において上下方向のほか左右方向にも湾曲変形することができ、注出口21の位置をドリッパーに合せて調整することができる。コーヒーを抽出する量によりドリッパーのサイズを変更する場合があるが、ドリッパーのサイズが変更されてもそれに合せて注出口を注入動作がしやすい位置に容易に変更することができる。
【0028】
また、ポットには、容器本体1内に図示せぬ温度センサーが内壁に沿って取り付けられており、温度センサーで検知された温度を把持部4の上部に取り付けた表示パネル5により表示するようになっている。そのため、注入動作の際に湯の温度を適宜確認することができ、温度管理を正確に行いながら湯を注入することが可能となる。
【0029】
図6は、図1に示すコーヒードリップ用ポットを洗浄した後に乾燥させる場合の状態に関する側面図である。ポットを洗浄した後は、注出管2の蛇腹部20を容器本体1の上部開口に沿うように前方に湾曲変形させ、蓋体3を回動させて把持部4に摘み31を当接させた状態で容器本体1を倒立させて容器本体1の上部開口を水切り台上に載置する。その際に、蓋体3及び注出管2の先端部が置き台に当接した状態となるので、安定した状態で容器本体1が載置される。
【0030】
この載置状態では、容器本体1の内壁及び外壁に残留する水は自然に落下するようになり、注出管2の内部に残留する水も注出口21から自然に排出されるようになって、ポット内部全体を速やかに乾燥させることができる。
【0031】
図7は、注出管2の注出口21の変形例に関する平面図である。この例では、図に示すように、注出口21の突出した下部の内面において軸方向に細長い導水溝21aを形成するようにしている。導水溝21aは、根元部分に湯の滞留部分が形成されており、滞留された湯が溝を通って先端から細く注がれるようになる。
【0032】
注出口21から注湯しながら螺旋状を描くように容器本体を回動させる場合、注出口21から導出される湯が注出口21で揺動するようになる。そのため、細く注湯する際に注出口21内での揺動により湯が途切れがちになり、連続して細く注湯することに難点があった。しかしながら、導水溝21aを形成することで注出口21内での湯の揺動が抑えられ、連続して細く注湯することが容易に行えるようになる。
【0033】
図8は、図7に示す注出口21を成形する工程に関する説明図である。細管を斜めに切断して注出口21を形成し(図8(a))、形成された注出口21の下部の露出した内面に軸方向に沿って細長い型材を当てて打撃することで導水溝21aを形成する(図8(b))。溝21aが形成された注出口21を両側からプレスして先端に行くに従い細くなるように成形する(図8(c))。このように成形することで、導水溝21aを根元部分が広く先端に行くに従い細長く形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る実施形態に関する側面図である。
【図2】図1に示すコーヒードリップ用ポットの湯の注入動作に関する説明図である。
【図3】図1に示すコーヒードリップ用ポットを用いて湯を沸かす場合の説明図である。
【図4】図1に示すコーヒードリップ用ポットの上面図である。
【図5】図1に示すコーヒードリップ用ポットの側面図である。
【図6】図1に示すコーヒードリップ用ポットを洗浄した後に乾燥させる場合の状態に関する側面図である。
【図7】注出口の変形例に関する平面図である。
【図8】図7に示す注出口の成形工程に関する説明図である。
【図9】従来のコーヒードリップ用ポットに関する側面図である。
【図10】従来のコーヒードリップ用ポットの湯の注入動作に関する説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 容器本体
10 底部
11 遮蔽板
12 目盛板
2 注出管
20 蛇腹部
21 注出口
21a 導水溝
22 取付箇所
3 蓋体
30 蓋本体部
31 摘み
32 軸支部
4 把持部
40 取っ手
41 固定部材
5 表示パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒーを抽出するドリッパーに収容されたコーヒー豆の粉末に湯を注ぐコーヒードリップ用ポットであって、湯を貯留する容器本体と、前記容器本体の下部において側面に一端が取り付けられた管状体からなるとともに他端が前記容器本体の上部位置まで延設されて注出口に形成された注出管とを備え、前記注出管は、前記容器本体の上部位置において湾曲変形可能な可変部位を有し、可変部位を変形させることで前記注出口の位置を調整することを特徴とするコーヒードリップ用ポット。
【請求項2】
前記注出管は、金属製の細管からなり、前記可変部位は、蛇腹状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコーヒードリップ用ポット。
【請求項3】
前記注出管は、前記可変部位から前記注出口までの長さが前記ドリッパーの開口径の半分以上の長さに設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコーヒードリップ用ポット。
【請求項4】
前記注出口には、湯を細く注出するための導水溝が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のコーヒードリップ用ポット。
【請求項5】
前記容器本体の下部には、前記注出管の取付箇所の下方に当該取付箇所の過熱を防止する遮蔽部材が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のコーヒードリップ用ポット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−131074(P2010−131074A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307757(P2008−307757)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(508356733)
【Fターム(参考)】