説明

コールド・スプレー技術を用いて金属部品を結合するシステム及び方法

【課題】コールド・スプレーにより2つ以上の部品を結合するシステム及び方法を提供する。
【解決手段】本方法(100)では、第1の部品(54)及び第2の部品(56)を整列させて、接合部(58)を生成する。これらの部品は、前記第1の金属部品(54)及び前記第2の金属部品(56)に材料(65)をコールド・スプレーして、前記接合部(58)に接着部を生成することによって結合される。本システム(10)は、コールド・スプレー銃(12)を制御して、第1の金属部品(54)と第2の金属部品(56)との間に接着部を生成するように構成されている制御装置(16)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本書で開示する内容は、一般的に云えば、部品の結合(joining) に関し、より具体的には、金属の結合に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製造、修理及び他の処理において、複数の部品を一緒に結合することによって、より大きい構成部品及び構造が形成されている。複数の金属部品を結合するために様々な技術が開発されている。溶接は、2つ以上の金属部品を結合するために使用される典型的な技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6258402号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶接は様々な異なる種類及び技術へと発展したが、溶接のような従来の結合技術には何らかの欠点がある。例えば、2つの金属部品を溶接する場合、材料及び接合部の品質、溶接プロセスの制御、並びに溶接プロセスの適用に問題が生じることがある。更に、溶接は、2つの異なる種類の金属を結合するのに適していないことがある。また更に、鍛造又は鋳造部品のような幾つかの種類の金属部品は、溶接に適していないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態における方法では、第1の金属部品と第2の金属部品とを整列させて、接合部(joint) を生成する段階と、前記第1の金属部品及び前記第2の金属部品に材料をコールド・スプレー(cold spray)して、前記接合部に接着部(bond)を生成する段階とを含んでいる。
【0006】
別の実施形態におけるシステムでは、第1の金属部品と第2の金属部品との間に接着部を生成するためにコールド・スプレー銃を制御するように構成された制御装置を含む。
【0007】
本発明のこれらの及び他の特徴、面及び利点は、添付図面を参照して以下の詳しい説明を読むことによってより良く理解されよう。図面では、全図面を通じて同様な部品を同様な参照符号で表している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に従った複数の部品を結合するためのコールド・スプレー・システムの概要図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に従った図1のシステムのコールド・スプレー銃の断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に従ったコールド・スプレーの適用により2つの部品を結合するためのプロセスを示す流れ図である。
【図4】図4は、本発明の別の実施形態に従ったコールド・スプレーの適用により2つの部品を結合するためのプロセスを示す流れ図である。
【図5】図5は、本発明の別の実施形態に従った2つの部品を結合するためのコールド・スプレー適用プロセスのパラメータを選択するプロセスを示す流れ図である。
【図6】図6は、本発明技術の一実施形態に従って製造された構成部品を持つタービン・システムのブロック図である。
【図7】図7は、図6に示されているようなタービン・システムの一実施形態の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の1つ以上の特定の実施形態を以下に説明する。これらの実施形態の説明を簡潔にするために、実際の具現化手段の全ての特徴を本明細書で説明することはできない。任意の工学的又は設計計画におけるような任意のこのような実際の具現化手段の開発において、具現化手段毎に変わることのあるシステム関連及び事業関連の制約を順守することのような開発者の特有の目標を達成するために多数の具現化手段特有の決定を行わなければならないことを理解されたい。また更に、このような開発努力は複雑で時間がかかるが、それにも拘わらず、この開示の利益を持つ通常の技術者にとって設計、製作及び製造についての日常的な仕事であることを理解されたい。
【0010】
本発明の様々な実施形態の要素を導入するとき、数を明記しない要素及び「前記」と付した要素は、1つ以上の要素があることを意味するものとする。また用語「有する」、「含む」及び「持つ」は、排他的なものではなく、列挙した要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味するものとする。
【0011】
以下に更に説明するように、本発明の実施形態では、コールド・スプレー堆積(deposition)を使用して複数の金属部品を結合するためのシステム及び技術を提供する。本書で用いる用語「コールド・スプレー(cold spray)」(これは、「コールド・ガス・ダイナミック・スプレー」とも称されている)とは、坦体ガス及び先細末広型スプレー銃を用いて(「供給原料粉末」の)高速粒子を吹き付けることを表し、その際、溶接又は何らかの他の吹付け処理におけるようなガスの燃焼は必要とされない。粒子は、金属部品の表面のような金属基板に、粒子及び基板を変形させるのに充分なエネルギで衝突して、粒子と基板との間で金属同士の接着部を生成させる。以下に述べる実施形態では、金属部品を別の金属部品に結合することができ、そのために、所望の接合部を形成するように各部品の表面を位置決めし、そしてそれらの部品と接合部にコールド・スプレーを施す。コールド・スプレー粒子の堆積後、結合される金属部品を加熱することにより粒子と金属部品との間に更に拡散接合を形成することができる。別の実施形態では、所望の接合部において金属部品の一方または両方に溝を形成することができ、その結果、コールド・スプレーにより溝の上に粒子を堆積させることができる。更に、コールド・スプレー・プロセスのパラメータ、粒子のパラメータ、及び金属部品の加熱を制御することにより、コールド・スプレーの適用によって生成される接着部の制御を可能にすることができる。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に従ってコールド・スプレー・プロセスにより金属同士を結合するためのシステム10を示す。本システムは、ロボットアーム14に接続されれたコールド・スプレー銃12と、制御装置16と、作業台18とを含むことができる。制御装置16は、1つ以上の金属部品及び表面へのコールド・スプレーの適用を制御するためにロボットアーム14を制御することができる。スプレー銃12は、加圧ガス容器又はガス供給システムのようなガス供給源15からガスを受け取ることができる。プロセス・ガスとして任意の種類のガスを使用することができるが、典型的に利用されるガスは、ヘリウム、窒素、空気、又はこれらのガスの混合物である。スプレー銃12はまた、供給装置17から供給原料粉末を受け取ることができる。実施形態によっては、ガス供給源からのガスは、コールド・スプレー銃12に入力される前に加熱装置19に通すことができる。作業台18は、作業対象の1つ以上の金属部品20を保持する為の安全取付け具又は他の適当な装置を含むことができる。作業台18はまた、結合すべき金属部品を回転させるための電動機又は他の適当な装置を含むことができる。これらの装置は精密さ及び正確さのためにCNC制御することが可能である。
【0013】
部品20は任意の数、種類、形状又は大きさの部品を含むことができる。例えば、部品20は、ロータ、羽根、ブリスク(blisk) 及び/又はノズルのようなガスタービン部品を含むことができる。部品20は、機械加工、鍛造、溶接及び/又は鋳造のような任意のプロセスによって形成された金属部品を含むことができる。更に、部品20は、同種の金属より成る2つ以上の部品、或いは異なる種類の金属より成る2つ以上の部品を含むことができる。他の実施形態では、部品は非金属から、例えばセラミック及びポリマーから作ることができる。非金属を結合する場合、以下に記述する熱処理は省略することはできない。
【0014】
以下に更に詳しく説明するように、制御装置16はまた、コールド・スプレー・プロセスの様々なパラメータを監視し制御することができる。例えば、パラメータとしては、コールド・スプレーの持続時間、コールド・スプレーの適用の数、供給原料粉末の供給源、(プロセス・ガスの温度によって制御されるような)コールド・スプレー・プロセスの温度、プロセス・ガスの質量流量、粉末供給原料の供給速度、又は制御装置16によって監視し制御することのできる任意の他のパラメータを挙げることができる。システム10はまた、コールド・スプレーの適用後に部品20を加熱するために、制御装置16によって制御することができるオーブン22又は他の適当な加熱装置を含むことができる。実施形態によっては、コールド・スプレー銃12は、オペレータが該銃を直接操作して部品20にスプレーを行うことができるように、(例えば、ロボットアーム14及び/又は制御装置16を用いずに)手動で操作することができる。
【0015】
図2は、本発明の一実施形態に従ったコールド・スプレー銃12の断面図を示す。コールド・スプレー銃12は、プロセス・ガス入口26と、供給原料粉末入口28と、温度及び圧力ポート30と、隔壁31とを含む。コールド・スプレー銃12の内部は、先細領域32と、のど部34と、末広領域36と、出口38とを含む。銃の中を通るコールド・スプレーの流れは一般的に矢印40で表している。出口38の断面積とのど部34の断面積との比、並びに使用されるガスの種類により、プロセス・ガスの出口速度(例えば、出口マッハ数)が決定される。例えば、面積比が高くなれば、ガス速度が高くなる。
【0016】
プロセス・ガス入口26は高速ガス流のための入口であり、高速ガス流は供給原料粉末を銃12の中に推進させて、隔壁31のポート41を介して先細領域32の中へ、次いでのど部34及び末広領域36に通し、そして出口38から押し出す。入口26から供給されるプロセス・ガスは、ガス容器、圧縮機、ガス供給システム又はそれらの組合せなどから比較的高い圧力で供給される。実施形態によっては、プロセス・ガスは、本質的にヘリウム、窒素、空気又は任意の適当なガスで構成することができる。実施形態によっては、スプレー・パラメータに依存して、プロセス・ガスは供給原料粒子を300m/s〜1200m/sの速度まで加速することができる。更に、プロセス・ガスはまた、以下に更に説明するように、約800℃まで加熱することができる。
【0017】
粉末入口28は、スプレーすべき金属基板上に皮膜を作る供給原料粉末を受け取る。本明細書で用いる用語「供給原料粉末」は、コールド・スプレー・プロセスにおいて用いられる任意の粒度、形状及び組成の粒子を表すことができる。実施形態によっては、粒子は約1ミクロン〜約250ミクロンとすることができ、以下に説明する実施形態で使用した粒度は約10ミクロン〜約25ミクロンである(例えば、供給装置17内の供給原料粉末はこれらの範囲内の任意の粒度の粒子を含むことができる)。供給原料粉末の粒子は球形、非球形又は任意の他の形状、或いはそれらの組合せであってよい。
【0018】
供給原料粉末は、部品20相互の間に所望の接合部を形成するための任意の適当な金属又は他の材料であってよい。供給原料粉末としては、鋼、ニッケル、アルミニウム、銅、タングステン、チタン、又は任意の他の金属、或いはそれらの組合せ(例えば、合金など)を挙げることができる。供給原料粉末は、結合すべき部品20の金属と同種又は異種の金属であってよい。その上、以下に更に説明するように、供給原料粉末又はその組成はコールド・スプレー・プロセス中に変えることができる。例えば、プロセスは、一連の相異なる材料を順々に、又は複数の相異なる材料を同時に、或いはそれらを組み合わせてスプレーすることができる。更に、末広領域36及び出口38は、コールド・スプレーの幅に悪影響を与えないように選択することができる。例えば、銃20は、スプレーされる領域の幅に依存して、狭いスプレー・ビーム又は広いスプレー・ビームを供給するように設計することができる。
【0019】
温度及び圧力ポート30は、銃12内のプロセス・ガス及び供給原料粉末の温度及び圧力の測定値を制御装置16へ供給するように構成されたセンサを受けることができる。制御装置16は、ポート30にある温度及び圧力センサから受け取った帰還に基づいてコールド・スプレー・プロセスのパラメータを調節することができる。例えば、制御装置16は、ヒーター出力、弁位置、ガスの流量、粉末の流量、又は他のパラメータを調節することができる。
【0020】
銃12の内部では、供給原料粉末は、該粉末が、スプレーされている部品に衝突して金属同士の接着部を形成するように、非常に高い速度まで加速される。末広領域36内での加圧されたプロセス・ガスの膨張が、粒子を高い速度まで加速するのに役立つ。一実施形態では、粒子は約300m/s、400m/s、500m/s、600m/s、700m/s、800m/s、900m/s、1000m/s、1100m/s及び約1200m/sの速度に達することができる。先細領域32、のど部34及び末広領域36は、プロセス・ガスと組み合わされたとき、供給原料粒子を、コールド・スプレー・プロセスのための高い速度まで加速するのに役立つ。供給原料粉末の粒子は一般に、スプレーされている部品の表面へ移動する際の飛行中酸化又は他の反応の可能性を低減するのに充分な高い速度まで加速される。
【0021】
スプレーされている部品の表面に高速度で衝突することにより、粒子上の及び/又は金属部品の表面上の酸化物が破砕され且つ粒子が変形して、確実に粒子が部品の表面に付着する。衝突時の急速冷間加工の結果として、高い歪み値がコールド・スプレー中に高い歪み速度で達成される。供給原料粉末の粒子とスプレーされている部品の金属表面との衝突時における純粋な金属同士の接触及び高い局在温度により、粒子と金属部品との間に接着部が生成される。接着部は、スプレーされている部品の領域を覆う粒子の皮膜によって形成される。この粒子の皮膜はコールド・スプレー・プロセスを繰り返すことによって厚くすることができる。以下に更に述べるように、適当な組成の粉末を用いることによって、コールド・スプレー皮膜により形成された接着部を介して同種の又は異種の金属部品を結合することができる。
【0022】
図3は、本発明の一実施形態に従ってコールド・スプレーを用いて2つの金属部品を結合するためのプロセス50を示す流れ図である。最初に、工程52で、結合すべき第1の部品54及び第2の部品56を隣同士に配置して所望の形態に整列させて、接合部58を生成する。図3に示されているように、第1の部品54は、第2の部品56の表面62に対して結合すべき表面60を含む。従って、結合の準備として部品54及び56を隣同士に整列させたとき、第1の部品54の表面60が第2の部品56の表面62の隣りに配置される。表面60及び62は任意の大きさ、形状又はトポロジー(地形)であってよいことを理解されたい。
【0023】
工程64で、コールド・スプレーが部品54及び56並びに接合部58に適用されて、部品54及び56並びに接合部58にわたって粒子を堆積させる。コールド・スプレーによりコールド・スプレー堆積皮膜65が第1の部品54の表面60と第2の部品56の表面62との間の界面に沿って設けられる。前に述べたように、高速コールド・スプレー粒子により粒子と部品54及び56との間で金属同士の接着部が生成される。粒子と表面60及び62との間での金属同士の接着部は、接合部58で2つの部品54及び56を結合する。有利な点は、コールド・スプレー銃20の可動性及びターゲット設定性により、任意の大きさ、形状及び/又はトポロジーの表面60、表面62及び接合部58にコールド・スプレーを施すことが可能であることである。皮膜5の幅は、接合部58からの銃12の距離を調節し、銃12からのスプレイの幅を調節し、及び/又は(プロセス・ガスの選択によるような)粒子の速度を調節することによって制御することができる。更に、部品54及び56は任意の配向に、例えば、水平に、垂直に、又は任意の角度に、整列させることができる。
【0024】
コールド・スプレー粒子の堆積及び粒子皮膜65の形成後、部品54及び56は、例えばオーブン又は他の適当な装置内で、熱処理して(工程66)、コールド・スプレー皮膜65と表面60及び62との間、並びに表面60及び62の間での拡散接合を拡大させることができる。熱処理の温度及び持続時間は、材料に依存して且つ任意の深さの拡散接合を形成するように選択することができる。このようにして、コールド・スプレー皮膜65によって生成された拡散接合は、表面60及び62より下方に任意の距離まで延在させることができる。熱処理後、部品は、結合された部品54及び56について所望の寸法、形状及び大きさを得るように機械加工することができる(工程68)。
【0025】
図4は、本発明の別の実施形態に従ってコールド・スプレーを用いて2つの金属部品を結合するためのプロセス70を示す流れ図である。最初に、工程72で、結合すべき第1の部品74及び第2の部品76を隣同士に配置して界面77に沿って所望の形態に整列させる。例えば機械加工又は他の適当な技術によって、溝78を界面77に沿って部品74及び76に形成して、堆積のための窪んだ領域を設けることができる。溝は、界面77の両側で第1の部品74に窪んだ表面80を且つ第2の部品76に窪んだ表面82を生成する。
【0026】
前に述べた図3の実施形態と比べて、溝78の形成は部品74及び76の間を結合する深さを増大させることができる。更に、溝78の深さは結合の深さを制御するために変えることができる。第1の部品74の窪んだ表面80は、溝78内のコールド・スプレー皮膜の堆積により第2の部品76の窪んだ表面82に結合される。実施形態によっては、溝78は、結合のために界面77に沿って部品を一緒に配置する前に各々の部品74及び76に別々に形成することができる。
【0027】
工程84で、溝78の形成後、コールド・スプレー粒子を溝78内、並びに表面80及び82に堆積して、皮膜86を形成することができる。再び、前に述べたように、コールド・スプレーの高速粒子が、粒子と表面80及び82との間で金属同士の接着部を生成する。溝78内の堆積された皮膜86は第1の部品74の表面80と第2の部品76の表面82とを接着して、部品74及び76の間の接合部88を形成する。前に述べたように、溝78の深さは、皮膜86によって形成された接合部88の深さを制御する。この場合も、コールド・スプレー銃20の可動性及びターゲット設定性により、任意の大きさ、形状及び/又はトポロジーの表面80、表面82及び溝78にコールド・スプレーを施すことが可能になる。例えば、溝78は平坦に、角度を付け、湾曲させ、環状に、及び/又はそれらの任意の組合せにすることができる。例えば、溝78はV字形、U字形、長方形、又は任意の他の形状を持つことができる。更に、部品54及び56は任意の配向に、例えば、水平に、垂直に、又は任意の角度74及び76に整列させることができる。
【0028】
粒子のコールド・スプレー堆積及び溝78内の皮膜86の形成後、部品74及び76は、例えばオーブン又は他の適当な装置内で、熱処理することができる(工程90)。熱処理は、拡散接合を、コールド・スプレー皮膜86と表面80及び82とを越えて且つ表面80及び82の間で拡大させるのに役立つ。前に述べたように、熱処理の温度及び持続時間は、材料に依存して、且つ、例えば拡散接合を表面80及び82を越えて任意の距離まで延在させることによって、任意の深さの拡散接合を形成するように選択することができる。熱処理後、部品は、結合された部品74及び76について所望の寸法、形状及び大きさを得るように機械加工することができる(工程92)。
【0029】
図5は、前に述べたようにコールド・スプレーを用いた2つの金属部品の結合を制御するための一実施形態のプロセス100を示す。例えば、プロセス100は、図3及び図4に例示した技術と共に用いることができる。プロセス100は、結合すべき金属と接合部の所望の微細構造及び特性とに基づいてパラメータを制御し選択することを含むことができる。ここで、プロセス100についてのパラメータ及び記載した工程の任意のものをいずれかの実施形態で省略し又は含ませることができることを理解されたい。プロセス100の任意の又は全ての工程は、例えば有形のコンピュータ読取り可能な媒体上に記憶されたプロセス100の1つ以上の工程を実行するためのコードによって、コンピュータ上で具現化することができる。
【0030】
工程102で、コールド・スプレー堆積のパラメータを選択することができる。これらのパラメータとして、プロセス・ガスの組成、プロセス・ガスの温度、皮膜の各適用の際の持続時間、及び皮膜の数を挙げることができる。前に述べたように、プロセス・ガスは、ヘリウム、窒素、空気、任意の適当なガス、又はそれらの任意の組合せであってよい。プロセス・ガスの温度は、粒子が部品の金属基板に衝突したときに金属同士の接着部を生成するほどの高い速度に確実に到達するように選択することができる。一実施形態では、プロセス・ガスは400℃、500℃、600℃、700℃、800℃等よりも高い温度に加熱することができる。
【0031】
更に、コールド・スプレー皮膜の各適用の持続時間及び皮膜の数を選択し制御することができる。皮膜の適用の持続時間及び皮膜の数は、最終的な皮膜の厚さ、従って、結合される部品相互の間の接合部の厚さに影響を及ぼすことがある。皮膜の厚さはまた、拡散接合を特定の深さにするために用いられる加熱の持続時間に影響を及ぼすことがある。コールド・スプレーを用いる特別な利点は、供給原料材料及び皮膜近くの基板についての極めて高いレベルの冷間加工に起因して、観察される拡散速度が一般に、(鋳造、鍛造などのような)従来通りに調製された材料で観察されるものよりも高いことである。従って、比較的より深い拡散接合を、比較的より短い加熱時間で生成することができる。
【0032】
工程104で、供給原料粉末(すなわち、コールド・スプレー粒子)のパラメータを選択することができる。例えば、粒子のモルフォロジー、粒度及び組成を選択することができる。前に述べたように、粒子は、任意の大きさの粒子、例えば、ナノ・サイズの粒子、グレイン・サイズの粒子、又は任意の適当な大きさであってよい。実施形態によっては、粒子は約1ミクロン〜約250ミクロンとすることができる(例えば、供給原料粉末における粒子は、本書で開示した範囲の内の任意の大きさ又は一部の範囲内とすることができる)。粒子の組成は、結合される部品と同じ組成とすることができ、或いは結合される部品とは異なる組成とすることができる。このような組成は、鋼、ニッケル、アルミニウム、銅、タングステン、チタン、任意の他の金属、或いはそれらの組合せ(例えば、合金など)を含むことができる。更に、粒子は、炭素(例えば、炭化物)のような追加の材料を含むことができる。一実施形態では、供給原料粉末の粒子は鋼−ニッケルとすることができる。更に、実施形態によっては、粒子の組成は適用の持続時間につれて変えることができる。例えば、2つの異種の金属部品を結合するとき、粒子の組成は、コールド・スプレー堆積が一方の金属部品から他方の金属部品へ適用されるにつれて変更することができる。
【0033】
次いで、工程106で、結合すべき金属部品を図3及び図4について前に述べたように位置決めすることができる。例えば、接合部を作る各部品の表面は相互に隣接して位置決めすることができる。更に、図4に述べたように部品に溝を形成すべきである場合、それらの部品は、溝を所望の接合部に形成できるように位置決めすることができる。
【0034】
実施形態によっては、結合すべき金属部品はコールド・スプレー堆積の前か又は堆積中に加熱することができる。他の実施形態では、コールド・スプレー堆積の前か又は堆積中に金属部品を加熱する工程はプロセス100から削除することができる。結合すべき部品の加熱は、コールド・スプレー皮膜及び部品によって形成された接着部の微細構造及び特性を制御するために用いることができる。例えば、鋼合金部品を結合する実施形態では、加熱は、コールド・スプレー皮膜の粒子と接着部を形成する鋼合金部品の表面をより良好に調製するために鋼合金の粒界を変更するように用いることができる。この微細構造は、部品を加熱する持続時間及び温度によって更に制御することができる。実施形態によっては、部品は、約200℃から、結合される部品の融点まで加熱することができる。
【0035】
次に、工程110で、粒子をコールド・スプレーにより適用して、結合される部品の界面に皮膜を形成する。例えば、コールド・スプレーは、(図3について説明したように)結合すべき部品の表面に、又は(図4について説明したように)部品に形成された溝に適用することができる。前に選択されたコールド・スプレー・パラメータに基づいて、コールド・スプレーは、(工程102で述べたような)プロセス・ガスの特定の温度で、各皮膜のための選択された持続時間で、且つ皮膜の選択された数について実行される。更に、使用される粒子は、(工程104で述べたような)選択された供給原料パラメータに基づいて定められる。
【0036】
コールド・スプレー皮膜の堆積後、例えばオーブン内で又は任意の他の適当な装置によって、金属部品及び接着部を熱処理することができる(工程112)。実施形態によっては、熱処理は、結合すべき部品の融点以下で、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃よりも高い温度で実行することができる。更に、実施形態によっては、特定のコールド・スプレー・パラメータの選択により、熱処理を最少にし又は削除することができる。例えば、充分なプロセス・ガス温度とコールド・スプレー皮膜の数では、コールド・スプレー堆積によって生成される拡散接合が更なる熱処理を必要とせずに充分なことがある。部品相互の間での接着部の形成後、これらの部品には所望の寸法、大きさ及び形状になるように最終機械加工を施すことができる。
【0037】
ここで図面に戻って、先ず図6について説明すると、一実施形態のガスタービン・システム200のブロック図が示されている。前に詳しく述べたように、開示した実施形態は、タービン・システム200内の様々な構成部品を形成するように様々な金属部品を結合するために用いることができる。タービン・システムは、燃料ノズル202と、燃料供給装置204と、燃焼器206を含む。図示されているように、燃料供給装置204は、天然ガスのような液体燃料又はガス燃料をタービン・システム200へ送り、燃料ノズル202を介して燃焼器206に供給する。以下に説明するように、燃料ノズル202は、燃料を注入して圧縮空気と混合して、改善された燃料・空気混合物を生成するように構成されている。燃焼器206は燃料・空気混合物を点火して燃焼させて、高温加圧排出ガスをタービン208へ通す。排出ガスはタービン208内のタービン羽根を通過し、これによりタービン208を回転させるように駆動する。次いで、タービン208内の羽根とシャフト209との間の連結によりシャフト209の回転を生じるさせる。シャフト209はまた、例示されているように、タービン・システム200にわたって幾つかの構成部品に結合されている。最終的には、燃焼プロセスの排出ガスは排気出口220を介してタービン・システム20から出て行くことができる。
【0038】
タービン・システム200の一実施形態では、圧縮機222の構成部品として圧縮機翼又は羽根が含まれる。圧縮機220内の羽根はシャフト209に連結することができ、シャフト209がタービン208によって回転駆動されたときに回転する。圧縮機220は空気取入れ口224を介してタービン・システム200へ空気を取り入れることができる。更に、シャフト209は負荷226に連結することができ、負荷226はシャフト209の回転を介して動力を受ける。理解されるように、負荷226は、発電プラント又は外部の機械的負荷のような、タービン・システム200の回転出力によりパワーを発生することのできる任意の適当な装置であってよい。例えば、負荷226としては、発電機、飛行機のプロペラなどが挙げられる。空気取入れ口224は、低温空気取入れ口のような適当な機構を介して空気230をタービン・システム200の中へ引き入れ、その後、空気230は、燃料ノズル202により供給装置204の燃料と混合される。以下に詳しく説明するように、タービン・システム200に取り込まれた空気230は圧縮機220内の回転羽根に供給され、該回転羽根によって圧縮されて加圧空気を生じることができる。加圧空気は、矢印232で示されているように、燃料ノズル202に供給することができる。燃料ノズル202は、参照数字234で示されるように、加圧空気と燃料とを混合して、燃焼のための最適な混合比を生じさせることができ、例えば、燃料を浪費し又は過剰な放出物を生じさせないように燃料をより完全に燃焼させる燃焼を生じさせることができる。タービン・システム200の一実施形態は、空気・燃料混合物を改善して、性能を向上させ且つ排出物を低減するための、燃料ノズル202内の特定の構造及び構成部品を含む。
【0039】
図7は、タービン・システム200の一実施形態の側断面図を示す。図示のように、該実施形態は、燃焼器206の環状アレイに連結された圧縮機220を含む。例えば、図示のタービン・システム200では6つの燃焼器206が配置されている。各燃焼器206は、各燃焼器206内に位置する燃焼区域へ空気・燃料混合物を供給する1つ以上の燃料ノズル12を含む。例えば、各燃焼器206は、環状又は他の適当な配列で1つ以上の燃料ノズル202を含むことができる。燃焼器206内での空気・燃料混合物の燃焼により、排出ガスが排気出口220へ向かって通過するとき、タービン208内の翼又は羽根を回転させる。燃料ノズル202の特定の実施形態では、空気・燃料混合物を改善して、燃焼を改善し、望ましくない排出物を低減し且つ燃料消費を改善するための様々な特有の機能が含まれる。
【0040】
本発明の特定の特徴のみを例示し説明したが、当業者には種々の修正および変更をなし得よう。従って、「特許請求の範囲」の記載が本発明の真の精神の範囲内にあるこの様な全ての変更および変形を包含するものとして記載してあることを理解されたい。
【符号の説明】
【0041】
10 金属同士を結合するためのシステム
12 コールド・スプレー銃
14 ロボットアーム
15 ガス供給源
16 制御装置
17 供給装置
18 作業台
19 加熱装置
20 金属部品
22 オーブン
26 プロセス・ガス入口
28 供給原料粉末入口
30 温度及び圧力ポート
31 隔壁
32 先細領域
34 のど部
36 末広領域
38 出口
40 コールド・スプレーの流れ
41 隔壁のポート
50 2つの金属部品を結合するためのプロセス
52 工程
54 第1の部品
56 第2の部品
58 接合部
60 表面
62 表面
64 工程
65 コールド・スプレー堆積皮膜
70 2つの金属部品を結合するためのプロセス
72 工程
74 第1の部品
76 第2の部品
77 界面
78 溝
80 窪んだ表面
82 窪んだ表面
84 工程
86 皮膜
88 接合部
100 2つの金属部品の結合を制御するためのプロセス
200 ガスタービン・システム
209 シャフト
232 加圧空気
234 加圧空気と燃料との混合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属部品(54)及び第2の金属部品(56)を整列させて接合部(58)を生成する段階と、
前記第1の金属部品(54)及び前記第2の金属部品(56)に材料(65)をコールド・スプレーして、前記接合部(58)に接着部を生成する段階と、
を有している方法(100)。
【請求項2】
前記材料(65)のコールド・スプレー後に、前記第1の金属部品(54)、前記第2の金属部品(56)及び前記接合部(58)を加熱する段階を有している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記材料(65)のコールド・スプレー中に、前記第1の金属部品(54)、前記第2の金属部品(56)及び前記接合部(58)を加熱する段階を有している、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記材料(65)のコールド・スプレー後に、前記第1の金属部品(54)、前記第2の金属部品(56)、又はそれらの組合せを機械加工する段階を有している、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記材料(65)をコールド・スプレーする段階は、異なる材料の複数の層を次々に堆積する段階を有している、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記第1の金属部品(54)の金属が前記第2の金属部品(56)の金属とは異なる種類である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記材料(65)は、前記第1の部品(54)の金属、前記第2の部品(56)の金属、又はそれらの組合せを有している、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記接合部(88)において、前記第1の金属部品(74)、前記第2の金属部品(76)、又はそれらの組合せに、溝(78)を形成する段階を有している、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記溝(78)の中に前記材料をコールド・スプレーする段階を有している、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記コールド・スプレーのプロセス・ガスを加熱する段階を有している、請求項1記載の方法。
【請求項11】
コールド・スプレー銃(12)を制御して、第1の金属部品(54)と第2の金属部品(56)との間に接着部を生成するように構成されている制御装置(16)を有するシステム(10)。
【請求項12】
コールド・スプレー銃(12)を有している請求項11記載のシステム。
【請求項13】
前記制御装置(16)及び前記コールド・スプレー銃(12)に連結されたロボットアーム(14)を有している請求項12記載のシステム。
【請求項14】
ガス供給源(15)を有している請求項11記載のシステム。
【請求項15】
供給原料源(17)を有している請求項11記載のシステム。
【請求項16】
前記第1の金属部品(54)を前記第2の金属部品(56)に拡散接合するために前記第1の金属部品(54)及び第2の金属部品(56)を加熱する加熱装置(22)を有している請求項11記載のシステム。
【請求項17】
前記制御装置(16)は、前記コールド・スプレー銃(12)を通って流れるガスの温度、前記コールド・スプレー銃(12)からのスプレーの持続時間、及び前記コールド・スプレー銃(12)からのスプレー操作の数を制御するように構成されている、請求項12記載のシステム。
【請求項18】
前記第1の金属部品(54)、前記第2の金属部品(56)、又はそれらの組合せが、タービン(200)のロータ、羽根、ブリスク、ノズル、又はそれらの組合せを構成する、請求項12記載のシステム。
【請求項19】
第1の非金属部品(54)及び第2の非金属部品(56)を整列させて、接合部(58)を生成する段階と、
前記第1の非金属部品(54)及び前記第2の非金属部品(56)に材料(65)をコールド・スプレーして、前記接合部(58)に接着部を生成する段階と、
を有する方法(100)。
【請求項20】
前記第1の非金属部品(54)がセラミック又はポリマーで構成されており、また前記第2の非金属部品(56)がセラミック又はポリマーで構成されている、請求項19記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−162602(P2010−162602A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−296990(P2009−296990)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】