説明

ゴムローラの製造方法

【課題】芯軸とゴム弾性層間の接着強度の軸方向の差を小さくすることができるゴムローラの製造方法を提供する。
【解決手段】円筒金型12内に同軸に配置される芯軸14の外周上に、接着層を介してゴム弾性層20を形成するにあたり、予め、芯軸14の外周上に、ゴム弾性層20の長さとほぼ同じ長さの通常接着層16と任意長さの予備接着層18とを設け、通常接着層16と任意長さの予備接着層18とを備えた芯軸14を、円筒金型12内に同軸に配置し、円筒金型12内の通常接着層16の周囲に、予備接着層18側から液状ゴム材料を注入し硬化させてゴム弾性層20を形成する。予備接着層18により、液状ゴム材料の注入時にゴムに流される接着層を補う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子複写機やプリンタの定着部に使用されるゴムローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のゴムローラを製造する場合には、予め外周上に接着層を設けた芯軸を円筒金型内に同軸に配置し、芯軸と円筒金型との空間に、液状シリコーンゴム等の液状ゴム材料を注入し硬化させて芯軸外周にゴム弾性層を形成するようにすることが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−258029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
上記従来のゴムローラ製造方法は、液状ゴム材料の円筒金型内注入時に、ゴム材料の流動により芯軸外周上の接着層が流され、特に流れの上流側の接着層が薄くなることがある。接着層が薄くなることによって、芯軸とゴム弾性層間の接着強度が弱くなる。このため、芯軸とゴム弾性層間の接着強度が芯軸の軸方向で差が生じてしまうという課題がある。
【0004】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、芯軸とゴム弾性層間の接着強度の軸方向の差を小さくすることができるゴムローラの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の各実施例においては、それぞれ次のような構成により上記の課題を解決する。
〈構成1〉
円筒金型内に同軸に配置される芯軸の外周上に、接着層を介してゴム弾性層を形成するにあたり、予め、上記芯軸の外周上に、上記ゴム弾性層の長さとほぼ同じ長さの通常接着層と任意長さの予備接着層とを設け、上記通常接着層と上記予備接着層とを備えた上記芯軸を、上記円筒金型内に同軸に配置し、上記円筒金型内の上記通常接着層の周囲に、上記予備接着層側から液状ゴム材料を注入し硬化させて上記ゴム弾性層を形成することを特徴とするゴムローラの製造方法。
【0006】
予め、予備接着層を設け、液状ゴム材料の注入時にゴムに流される接着層を補うことによって芯軸とゴム弾性層間の接着強度の軸方向の差を小さくすることができる。
【0007】
〈構成2〉
構成1に記載のゴムローラの製造方法において、上記円筒金型の内周に、予めフッ素樹脂チューブを配置し、上記液状ゴム材料を、上記フッ素樹脂チューブと上記通常接着層及び上記予備接着層を備えた芯軸との間に注入することを特徴とするゴムローラの製造方法。
【0008】
フッ素樹脂チューブを備えたゴムローラの場合にも芯軸とゴム弾性層間の接着強度の軸方向の差を小さくすることができる。
【0009】
〈構成3〉
構成1又は2に記載のゴムローラの製造方法において、上記液状ゴム材料として、液状の付加反応型シリコーンゴムを使用することを特徴とするゴムローラの製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を実施例により説明する。
【実施例1】
【0011】
図1、図2は実施例1のゴムローラの製造方法の説明図である。
実施例1のゴムローラの製造方法においては、図1に示すように円筒金型12内に芯軸14を同軸に配置し、芯軸14の外周上に、通常接着層16と予備接着層18とを介してゴム弾性層20を形成する。このゴム弾性層20を形成するにあたり、先ず、芯軸14の外周に通常接着層16と予備接着層18を設ける。すなわち、図2に示すように、予め、芯軸14の外周上に、ゴム弾性層20の長さとほぼ同じ長さの通常接着層16と、任意長さの予備接着層18とを設ける。通常接着層16と予備接着層18とは、同一の接着剤を、芯軸14上に塗布後、常法により加熱乾燥することにより連続して設けられている。ここまでは円筒金型12は使用しない。
【0012】
この後、通常接着層16と予備接着層18とを備えた芯軸14を、図1に示すように、円筒金型12内に同軸に配置し、上下端部を栓体26、28により固定する。円筒金型12の内壁面に、予め離型層となるフッ素樹脂チューブ24が常法により取付けられている。次いで、下栓体28に設けられた複数の注入孔30から円筒金型12内の、通常接着層16と予備接着層18とを備えた芯軸14とフッ素樹脂チューブ14との間隙に、液状の付加反応型シリコーンゴムを注入し硬化させてゴム弾性層20を形成する。
【0013】
本発明によれば、予め芯軸14上に予備接着層18を設け、液状ゴム材料の注入時にゴムに流される接着層を補うことによって、芯軸14とゴム弾性層20と間の接着強度の軸方向の差を小さくすることができる。
【0014】
次に実施例と比較例を用いて本発明を説明する。
(実施例)
a.準備
鉄製芯軸と、予め内面をエッチングした後に接着剤を塗布乾燥したPFA(フッ素樹脂)チューブと、硬度10°(durometer−A)の液状の付加反応型シリコーンゴム(原料)と、接着剤NO.101(信越化学工業株式会社製)と、上記PFAチューブを内周面に装着した円筒金型とをそれぞれ用意する。
【0015】
b.通常接着層と予備接着層の形成
上記鉄製芯軸の胴部表面を研摩剤を用いてショットブラストし、ブラスト粉を洗浄し除去した後、上記接着剤NO.101を塗布し、30分室温で放置後、150℃、30分の条件で乾燥し、上記芯軸上に、200mmの長さの通常接着層16と、8mmの長さの予備接着層18とを形成した。
【0016】
c.ゴム弾性層の形成
通常接着層16と予備接着層18とを備えた芯軸14を室温まで冷却した後、上記円筒金型内に同軸的に配置し、上記液状の付加反応型シリコーンゴムを、上記円筒金型内の上記芯軸と上記PFAチューブとの間隙に注入した。上記シリコーンゴムの逆流を防止する逆止弁を働かせた状態で、上記金型を、150℃に保たれた恒温槽に入れて1時間放置しシリコーンゴムを硬化させた。
【0017】
d.離型処理
上記金型を恒温槽より取り出し、水冷した後、上記金型から製品(ゴムローラ)を取り出し、予備接着層18及びその上に付着したシリコーンゴム層を除去し、所望形状に仕上げた。
【0018】
(比較例1)
上記の実施例の手順から、上記通常接着層16のみを設けた芯軸を用意し、この芯軸を用いて同様の方法でゴムローラを得た。
【0019】
(比較例2)
上記の実施例の手順から、上記通常接着層16と、5mmの長さの予備接着層18とを設けた芯軸を用意し、この芯軸を用いて同様の方法でゴムローラを得た。
【0020】
実施例と比較例1及び比較例2により得られたゴムローラを定着機に組み込み、通紙評価を行った。この結果、実施例品は通紙枚数が90,000枚以上であったのに対し、比較例1のローラは約40,000枚、比較例2のローラは約20,000枚の通紙枚数であった。本発明に係る実施例品の通紙耐久は、比較例品の220〜450%の向上が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1のゴムローラの製造方法の説明図である。
【図2】実施例1における通常接着層と予備接着層とを備えた芯軸の説明図である。
【符号の説明】
【0022】
12 円筒金型
14 芯軸
16 通常接着層
18 予備接着層
20 ゴム弾性層
24 フッ素樹脂チューブ
26 上栓体
28 下栓体
30 注入孔
32 エア抜き孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒金型内に同軸に配置される芯軸の外周上に、接着層を介してゴム弾性層を形成するにあたり、
予め、前記芯軸の外周上に、前記ゴム弾性層の長さとほぼ同じ長さの通常接着層と任意長さの予備接着層とを設け、
前記通常接着層と前記予備接着層とを備えた前記芯軸を、前記円筒金型内に同軸に配置し、
前記円筒金型内の前記通常接着層の周囲に、前記予備接着層側から液状ゴム材料を注入し硬化させて前記ゴム弾性層を形成することを特徴とするゴムローラの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のゴムローラの製造方法において、
前記円筒金型の内周に、予めフッ素樹脂チューブを配置し、
前記液状ゴム材料を、前記フッ素樹脂チューブと前記通常接着層及び前記予備接着層を備えた芯軸との間に注入することを特徴とするゴムローラの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゴムローラの製造方法において、
前記液状ゴム材料として、液状の付加反応型シリコーンゴムを使用することを特徴とするゴムローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−87321(P2008−87321A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270525(P2006−270525)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(306013119)昭和電線デバイステクノロジー株式会社 (118)
【Fターム(参考)】