説明

ゴムローラーの製造方法

【課題】芯金を連続的にゴム材料と共押出後の芯金切断時に、芯金の端部へのゴム材料の付着を抑えると共に、仮に付着した場合であっても簡便な方法で付着したゴム材料を除去する。
【解決手段】(1)芯金の端部に離型剤を塗布する工程と、(2)クロスヘッドダイから外周上にゴム材料を被覆させた芯金を共押出する工程と、(3)共押出後のゴム材料を被覆させた芯金を、製品長さごとに、端部で切断する工程と、(4)切断後の前記芯金を被覆したゴム材料を加熱して、芯金上に弾性層を形成する工程と、(5)芯金の両側の端部上の弾性層を除去する工程と、を有するゴムローラーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やレーザービームプリンター等に使用可能なゴムローラーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やレーザービームプリンター等に使用されるゴムローラーは、一般的に下記2つの製造方法により製造されている。
第1の製造方法
(1)ゴム材料を押出機によってチューブ状に押出す工程、
(2)ゴム材料を加硫缶等で加硫して、チューブ状の弾性層を形成する工程、
(3)チューブ状の弾性層内に芯金を圧入する工程、
(4)芯金の両側の端部上の弾性層を切り取り、芯金を露出させる工程。
【0003】
第2の製造方法
(1)押出機のクロスヘッドダイから、芯金とゴム材料を同時に共押出し、芯金の外周上にゴム材料を被覆させる工程、
(2)ゴム材料を連続的に熱風炉等で加熱加硫して弾性層を形成する工程、
(3)芯金の両側の端部上の弾性層を切り取り、芯金を露出させる工程。
【0004】
これらの製造方法により製造されたゴムローラーは、研磨等により最終的に所望の形状に加工する。そして、この後、更に複数の層構成が必要な場合は、新たな層の塗工やチューブ被覆等の工程を経て、最終的に製品化する。
【0005】
この第1の製造方法は、各工程を個別に行う必要があり連続化しにくいというデメリットがあり、最近ではクロスヘッドダイ押出機を使った第2の製造方法が主流になっている。この第2の製造方法では、芯金の外周上にゴム材料を被覆するため、後の工程では芯金を支持して搬送等が出来るなど連続工程とし易いというメリットがある。
【0006】
しかしながら、第2の製造方法である、クロスヘッドダイ押出機を使用したゴムローラーの製造方法の場合、押出後に製品長さとなるよう1本ずつ、芯金及びその外周上の弾性層を切断すると共に、芯金の両側の端部上に設けた弾性層を除去する工程が必要であった。
【0007】
このように芯金の両側の端部上のゴム材料を切断、除去する理由は、芯金の両側の端部を露出させることにより、後の工程でこの端部を挟持しながらゴムローラーの搬送や加工を行うためである。すなわち、弾性層の中央のゴム材料は弾性層として製品上、機能する部分であるため、仮に弾性層中央部を挟持しながら搬送や加工を行うと、凹む等の形状変形が起こるためである。また、このようにゴム材料の切断を行う際、ゴム材料は加硫前であるため可塑化されておりゴム材料が切断されずに糸引き等の現象を起こす場合があった。
【0008】
更に、ゴム材料が芯金の両側の端面及び端部に付着するという問題があった。この場合、芯金の端面及び端部から芯金の保持部材にゴム材料が付着、干渉するなどして、安定した芯金の保持が出来ない場合があった。また、芯金の端部及び端面に付着したゴム材料が保持部材に付着・残留してしまい、他の芯金を保持する際にもこの保持部材上に残留したゴム材料が付着して多数の不良品を製造してしまう場合があった。
【0009】
このようなゴム材料の、芯金の両側の端部及び端面への付着を防止するため、従来から様々な方法が試みられている。
特許文献1には、芯金のゴム材料を付着させたくない端部上に加熱溶融した離型剤を塗布し、共押出により、離型剤を塗布した部分上に設けた未加硫のゴム材料を剥ぎとる方法が開示されている。
【0010】
特許文献2に記載の方法では、芯金上のゴム層の形成を予定していない部分に熱硬化性離型剤を塗布した後、共押出によりゴム層を形成、加硫硬化する。この後、離型剤を塗布した部分上の加硫ゴム層のみを芯金から剥離する方法が提案されている。
また、特許文献3には、芯金の外周上に一体成形により弾性体層を設けた後、芯金の端部上に残留したゴム材料を機械的に除去する方法が提案されている。
【特許文献1】特開平08−294952号公報
【特許文献2】特開平11−070594号公報
【特許文献3】特開2005−271205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載の方法はゴムローラーの製造において、問題が生じる場合があった。
すなわち、特許文献1及び2に記載の方法は、芯金上のゴム層を形成したい部分以外の外周上に離型剤を塗布する方法である。このため、ゴム材料と芯金とのすべり性が良くなり過ぎて、芯金外周上の全体にわたってゴム材料が芯金に密着しない現象が起きる場合があった。この理由は、以下のように考えられる。ゴム材料が押出機によって芯金の外周上に押出される際に応力を受け、この押出後のゴム材料は応力が緩和する。そして、図3に示すように、芯金外周上に離型剤を塗布すると芯金とゴム材料間ではこの応力緩和に対する抵抗がなくなるためである。特許文献1については、未加硫ゴムを剥離させる為、未加硫ゴムの粘度によっては、離型剤を塗布しても、芯金にゴム材料のカスが残ってしまう場合があった。また、特許文献1及び2の方法は共に、ゴム層の切断時に発生する芯金端部や断面へのゴムの切り屑の付着については十分に検討していなかった。
【0012】
また、特許文献3の発明では、たとえ機械的に芯金の端部上に設けられた弾性体層の除去を行っても、芯金の端部と弾性体層との密着性が高い場合には弾性体層のみを効果的に除去できない場合があった。
【0013】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、ゴム材料の切断時にゴム材料が芯金の両側の端面及び端部上に付着することがなく、容易に除去可能なゴムローラーの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を有することを特徴とする。
1.(1)複数本の芯金を準備し、各芯金の両側の端部に離型剤を塗布する工程と、
(2)複数本の芯金を1本ずつ互いの端面が接するように押出機のクロスヘッドダイ内の芯金ガイドに沿って連続的に通過させながら、前記芯金の外周上にゴム材料を供給することにより、前記クロスヘッドダイから、外周上にゴム材料を被覆させた芯金を共押出する工程と、
(3)前記芯金の外周上に被覆させたゴム材料を、各芯金の端面上で切断することにより、複数本の外周上にゴム材料を被覆させた芯金を得る工程と、
(4)ゴム材料を切断後の各芯金の外周上のゴム材料を加熱することにより弾性層を形成する工程と、
(5)各芯金の前記両側の端部上の弾性層を除去する工程と、
を有することを特徴とするゴムローラーの製造方法。
【0015】
2.前記芯金の両側の端部は、C面加工又はR面加工を施したものであることを特徴とする上記1に記載のゴムローラーの製造方法。
【0016】
3.前記離型剤は焼付け可能なものであり、
前記工程(1)と(2)の間に更に、
前記離型剤の焼付け工程を有することを特徴とする上記1又は2に記載のゴムローラーの製造方法。
【0017】
4.前記工程(5)の後に更に、
前記芯金の少なくとも一方の端部を保持して処理を行う工程を有することを特徴とする上記1から3の何れか1項に記載のゴムローラーの製造方法。
【0018】
5.前記工程(5)の後に更に、
前記芯金の両側の端部を保持した状態で前記ゴムローラーを回転させながら、前記弾性層を研摩する工程を有することを特徴とする上記1から3の何れか1項に記載のゴムローラーの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、クロスヘッドダイを用いた共押出によりゴムローラーを製造する際、芯金の両側の端部上のゴム材料の切断時に発生する、芯金の両側の端部及び端面へのゴム材料の切り屑の付着を効果的に抑えることができる。また、仮に芯金の両側の端部及び端面へゴム材料の切り屑が付着した場合であっても、簡便な方法で、この付着したゴム材料の切り屑を除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のゴムローラーの製造方法は以下の工程を有する。
(1)複数本の芯金を準備し、各芯金の両側の端部に離型剤を塗布する工程。
(2)複数本の芯金を1本ずつ互いの端面が接するように押出機のクロスヘッドダイ内の芯金ガイドに沿って連続的に通過させながら、芯金の外周上にゴム材料を供給することにより、クロスヘッドダイから、外周上にゴム材料を被覆させた芯金を共押出する工程。
(3)芯金の外周上に被覆させたゴム材料を、各芯金の端面上で切断することにより、複数本の外周上にゴム材料を被覆させた芯金を得る工程。
(4)ゴム材料を切断後の各芯金の外周上のゴム材料を加熱することにより弾性層を形成する工程。
(5)各芯金の両側の端部上の弾性層を除去する工程。
【0021】
本発明では、芯金をクロスヘッドダイへ連続的に供給する前に、その両側の端部に離型剤を塗布する点に特徴を有する。本発明では、複数の芯金を1本ずつ互いの端面が接するように、クロスヘッド内に供給する。従って、これらの芯金はクロスヘッドダイ内では見かけ上、連続した芯金となっているが、各芯金の端面同士は単に接しているだけあり、分離可能となっている。なお、ここで、「端面」とは、芯金の両側の端部の最も端に存在する面であり、芯金の軸方向と垂直な面のことを表す。この端面は例えば、図1及び2では符号11で表される。
【0022】
そして、このゴムローラーは、芯金の外周上にゴム材料を被覆しながらクロスヘッドダイから共押出することで製造される。共押出後にゴム材料が被覆された芯金には、各芯金の両側の端面上にもゴム材料が被覆されている。従って、次の工程(3)では、芯金の両側の端面上に存在するゴム材料が切断される。
【0023】
すなわち、複数の製品用の長さの芯金がそれぞれの端面を接するようにクロスヘッドダイ内に連続的に供給される。そして、クロスヘッドダイから共押出後に各芯金の両側の端面上のゴム材料を切断することにより、複数の製品用の長さの芯金及びゴム材料層に分離される。なお、クロスヘッドダイ内に供給される芯金の本数及び長さは特に限定されず、押出機の装置スペースやゴムローラーの生産量を勘案して、適宜、選択することができる。
【0024】
本発明では、芯金の両側の端面及び端部上に予め離型剤が塗布されているため、この切断時に、芯金の両側の端面及び端部上にゴム材料が付着するといったことがない。
【0025】
ここで、本明細書において、この芯金の両側の端面及び端部上への「ゴム材料の付着」は以下の意味として用いられる。すなわち、本発明の製造方法で用いる芯金は、その両側の端面及び端部が芯金形成時に切断したままの状態であるため、芯金の外周面に比べて比表面積が大きくなっている。このため、芯金上にゴム材料を被覆させた際には、芯金中央部の外周面と比べて相対的に芯金の両側の端面及び端部上へのゴム材料の接着力が強くなり、エアーブローなどの弱い除去方法ではゴム材料を除去できなくなることを表す。
なお、本発明では、仮に芯金の端部及び端面上にゴム材料が付着した場合であっても、芯金の端部上には予め離型剤が塗布されているため、芯金の端部及び端面とゴム材料との接着性が弱く、後の工程で容易に除去できる。
【0026】
以下、本発明の各工程について詳細に説明する。
まず、工程(1)では、複数の芯金を準備し、各芯金の両側の端部上に離型剤を塗布する。ここで、「芯金の両側の端部」とは、芯金の外周の一部を構成し、芯金の両端に該当する部分を表す。また、最終的な製品において、弾性層を設けずに芯金が露出した部分を表す。このため、工程(1)では、クロスヘッドダイ内に供給した複数の芯金からなる連続した芯金上は、所定間隔ごとに交互に離型剤を塗布した部分(端部)と、離型剤を塗布していない部分(弾性層を設ける部分)を有することとなる。
【0027】
なお、芯金の両側の端部への離型剤の塗布方法は特に制限されない。例えば、芯金を回転させながら、芯金の両側端部の外周上に離型剤を供給することにより、離型剤を塗布することができる。また、離型剤を染み込ませたスポンジを、芯金の両側の端部に押し当てることによっても効果的に塗布することが出来る。また、焼付けタイプの接着剤を使用する場合は、接着剤の焼付け工程の前に離型剤を塗布することにより、接着剤と離型剤の同時焼付けが可能となり、より効率的にゴムローラーを生産することが可能である。
【0028】
芯金の材料は特に限定されるわけではないが、離型剤の塗布性、接着性の良いものを選択するのが良い。具体的には、金属製のものが好ましい。例えば、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブテン鋼、クロム鋼、クロムモリブテン鋼、Al、Cr、Mo及びVを添加した窒化用鋼が挙げられる。
【0029】
さらに防錆対策として、芯金の表面上にめっき、酸化処理を施すことができる。めっきの種類としては電気めっき、無電解めっきを使用できるが、寸法安定性の観点から無電解めっきが好ましい。ここで使用される無電解めっきの種類としては、ニッケルめっき、無電解ニッケルメッキ、銅めっき、金めっき、その他、各種合金めっきがある。ニッケルめっきの種類としては、Ni―P、Ni−B、Ni−W−P、Ni−P−PTFE複合めっきがある。
【0030】
離型剤としては特に制限されるものではないが、防着性、非粘着性を考慮してフッ素系の離型剤が好ましく、焼付け型、特に、ノンシリコーンタイプが特に好ましい。例えば、このような離型剤としては、ダイフリーME−313、ME−810,GW−7010(何れも、ダイキン株式会社製)等が挙げられる。
【0031】
本発明では、芯金の両側の端部への離型剤の塗布時に、芯金に塗布した離型剤が他の部分に付着したり流れたりするといった問題はほとんど起こらない。しかし、焼付け型離型剤を使用することにより、より効果的に他の部分への付着を防ぐことが出来る。例えば、クロスヘッドダイ内で芯金ガイド等を通過した際、芯金ガイド内壁への離型剤の付着をより効果的に防ぐことができる。
【0032】
次に、工程(2)では、複数の芯金を1本ずつ互いの両側の端面が接するように、クロスヘッドダイの芯金ガイドに沿って連続的に通過させる。そして、クロスヘッドダイに連結した押出機からゴム材料を供給して、芯金の外周上にゴム材料を被覆する。この結果、クロスヘッドダイから共押出された芯金上には、その外周上に連続的にゴム材料が被覆される。
【0033】
このクロスヘッドに連結した押出機は、典型的には、その押出方向が芯金ガイドの方向(共押出の方向)と垂直な方向となるように配置されており、クロスヘッドダイの途中で連結されている。そして、芯金がクロスヘッドダイを通過中に、押出機から芯金の外周上にゴム材料が供給、被覆されるようになっている。そして、クロスヘッドダイの出口からは、外周上に連続的にゴム材料が被覆された複数の芯金が、芯金ガイドの方向に共押出される。
【0034】
なお、押出機の出口ダイの大きさ、タイプ、操作条件、クロスヘッドダイの大きさ、操作条件は、芯金及びゴムローラーの外径、材質、生産量に応じて、所望の条件を適宜、選択すれば良い。
【0035】
本発明で使用するゴム材料については、特に制限はないが例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム等が挙げられる。
【0036】
上記のように、本発明で使用するゴム材料は特に制限されないものの、本発明はゴムの切り離しが困難なゴム材料を用いた場合に特に大きな効果を発揮する。この理由は、ゴム材料の切り離しが困難な場合、従来の方法ではゴム材料を均一に切り離せず芯金の端部に付着したままとなるが、本発明の方法ではこのようなゴム材料であっても効果的に除去できるためである。
【0037】
また、ゴム材料中に添加する添加剤についても特に制限されない。この添加剤としては例えば、炭酸カルシウム等の充填材、カーボンブラックやシリカ等の導電剤もしくは補強剤、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛といった加工助剤やオイル等の可塑剤等を、必要に応じて配合可能である。また、硫黄や硫黄供与体等の架橋剤、架橋反応を促進させる架橋促進剤等は、目的に応じて選択可能である。
【0038】
次に、工程(3)では、芯金の外周上に被覆させたゴム材料を、芯金の両側の端面上で切断する。すなわち、本発明では、共押出後、各芯金は端面を介して互いに接するだけであるが、ゴム材料は各芯金の外周上に連続して被覆されているため、各芯金を分離することができない。そこで、この工程(3)では、芯金の両側の端面上のゴム材料を切断することにより、各芯金と、この芯金の外周上に被覆したゴム材料を分離することができるようになる。この結果、この工程(3)では、複数本の、外周上にゴム材料を被覆させた芯金を得ることができる。また、この際、本発明では、芯金の両側の端部上に離型剤が塗布されているため、この端部にゴム材料が付着するといったことがない。
【0039】
なお、芯金の両側の端面上のゴム材料の切断方法は特に限定されず、例えば、所定の回転数で回転する回転刃や、切断時に芯金の共押出の方向と垂直な方向に上下する切り込み刃等を用いることができる。
【0040】
図1は、本発明のゴムローラーの製造方法の工程(2)及び(3)の一例を示したものである。
図1(a)に示すように、芯金送りロール2により、端部(図中の芯金の白い部分)上に離型剤が塗布された複数の芯金3が、連続的にaの方向に押出機のクロスヘッドダイ1内に送り込まれる。このクロスヘッドダイ1に送り込まれた芯金3は芯金ガイド4によってクロスヘッドダイ1内を搬送される。また、クロスヘッドダイ1の途中では、芯金の外周上に、円柱状にゴム材料6を押出すと共に一体的に被覆し、クロスヘッドダイ1の先端7から共押出されて、切断用のカッター9を備えた引取り切断機に導かれる。
【0041】
そして、図1(b)に示すように、共押出された芯金−ゴム材料の一体物は、引取り切断機のカッター9によって、芯金の両側の端面上のゴム材料のみが切断される。また、このカッター9の切断間隔及び切断深さは、芯金の両側の端面上でゴム材料の切断のみが行われるように調節する必要があり、芯金の移動速度、製品長さ等によって適宜、好適な切断間隔に調節する。
【0042】
この後、工程(4)では、切断後の芯金の外周上のゴム材料を加熱する。この際、ゴム材料が硬化して弾性層となる。なお、ゴム材料を加熱する条件(温度、時間など)は、ゴム材料の種類、弾性層に必要な特性に応じて適宜、選択することができる。
【0043】
次に、工程(5)では、芯金の両側の端部上の弾性層を除去する。本発明では、芯金の両側の端部上にゴム材料が付着した場合であっても、芯金の両側の端部上には予め離型剤が塗布されているためゴム材料との接着性が弱く、容易に除去できる。この芯金の両側の端部上の弾性層の除去方法としては特に限定されず、人間の手によって引張ったり、粘着ローラを回転させながら芯金の両側の端部上の弾性層の外周上に当接させる方法を挙げることができる。
【0044】
また、本発明では、芯金の端部に、図2のようなC面加工を施した芯金を用いるとより効果的である。ここで、「C面加工」とはテーパー状の面とする加工のことを表す。
【0045】
このC面加工は、製品加工上、芯金の端部を保持し易くする為に行われるものである。C面加工を行うと芯金の端部がテーパー状となる為、例えば、チャックへの挿入をし易くなり、チャックミスやチャックが端部にぶつかる事によるバリ発生を防ぐことが出来る。
【0046】
また、本発明では、芯金の端部に、R面加工を施した芯金を用いた場合にも効果的である。ここで、「R面加工」とは円弧などの曲面状の面とする加工のことを表す。このR面加工等により、芯金の端部を保持し易くすることができる。また、チャックへの挿入をし易くなり、チャックミスやチャックが端部にぶつかる事によるバリ発生を防ぐことが出来る。
【0047】
従来のC面加工又はR面加工した芯金は、クロスヘッドダイによる共押出後の芯金切断時に、何も処理をしていないためゴム材料が付着し易くなる場合が多い。特に、何も処理をしていないC面加工又はR面加工を施した部分は加工時の粗さ等が他の部分と比べて悪い場合が多く、一度、ゴム材料が付着すると取れにくい場合がある。そこで、本発明では、C面加工又はR面加工をした芯金の端部に離型剤を塗布することにより、C面加工又はR面加工をした部分にゴム材料が付着しにくくなる。また、仮にゴム材料が付着した場合であってもゴム材料に軽微な力を加えるだけで除去できる。このため、大掛かりなゴム材料の除去装置を用いた後工程が不要となり、大幅なコスト削減を図ることができる。
【0048】
工程(1)と(2)の間に更に、離型剤は焼付け可能なものであり、離型剤の焼付け工程を有することが好ましい。このように離型剤の焼付けを行うことにより、離型剤の芯金の端部への接着性が高くなり、芯金がクロスヘッドダイ内を通過している間に、芯金に塗布した離型剤が剥がれたり、ゴム材料中に混ざってしまうといったことがない。
【0049】
また、工程(5)の後に更に、各芯金の少なくとも一方の端部を保持して、処理を行う工程を有することが好ましい。
また、工程(5)の後に更に、各芯金の両側の端部を保持した状態でゴムローラーを回転させながら弾性層を研摩する工程を有することが好ましい。この場合、例えば、芯金の両端部をチャックで把持するか、又は芯金の両端部の外周部分を押さえ、ゴムローラーを回転させながら弾性層の外周面を回転する砥石に当てることによって研磨を行う。
【0050】
この際、従来の方法では、芯金の両端部に微小なゴム材料が付着したままの場合、ゴムローラーの把持精度が狂って回転時にゴムローラーの振れが発生する。また、このゴムローラーの研磨後にゴム材料が研磨装置のチャック内に残った場合、後から研磨する正常なゴムローラーの回転時の保持精度も悪化させてしまう。この結果、不良品を大量に製造することとなってしまう。これに対して、本発明では、ゴム材料が残り易い芯金の両側の端部へのゴム材料の付着を無くせる為、安定してゴムローラーを保持できる。
【0051】
このようにして製造したゴムローラーは、例えば、電子写真装置内で使用することができる。具体的には、帯電ローラ、現像ローラ、給紙ローラ、転写ローラ、定着ローラ、加圧ローラ、クリーニングローラ等として用いることができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
押出機として、クロスヘッドダイを備え、シリンダー内直径が70mm、L/Dが20のベント式押出機を用意した。この押出機のシリンダー、ヘッド、スクリューは共に80℃の温度に調整した。また、スクリュー回転数は、芯金の押出速度に合わせて8rpmに調整した。
【0054】
また、ゴム材料としてアクリロニトリルブタジエンゴムを使用し、このゴム材料は以下のようにして調整した。すなわち、7リットルのニーダーで、表1に示す配合物(加硫剤及び加硫促進剤を除く)を混練した。この配合物に対して、12インチオープンロールを用いて、表1に示す加硫剤及び加硫促進剤を混練り分散させ、押出機に投入するゴム材料を調製した。
【0055】
また、芯金としては直径6mm、長さ250mmで、両側の端部に、図2中のC面サイズで示される0.5mmのC面加工を施したものを使用した。芯金には、両側の端面から12mmまでの端部、及びこの端部のC面加工した部分に離型剤を塗布した(工程(1))。
なお、この離型剤としてはノンシリコーンタイプのものを用い、その塗布方法としては、離型剤を染み込ませたスポンジを芯金の端部に押し当てることで行った。また、この端部以外の部分に加硫接着剤(メタロックU−20/株式会社東洋化学研究所製)を予め塗布した。
【0056】
上記芯金を複数本、互いの端面が接するようにクロスヘッドダイ押出機の芯金ガイドに沿って連続的に通過させると共にゴム材料を押出機内に投入し、連続的に芯金をクロスヘッドダイ内に供給しながら、芯金の外周上にゴム材料を被覆した。この後、共押出をした(工程(2))。そして、各芯金の両側の端面上のゴム材料を、図1の様にカッターで切断した(工程(3))。このようにして切断したゴム材料を被覆した複数の芯金を160℃、60分、熱風炉で加硫することにより、ゴム材料を硬化させて弾性層を形成した(工程(4))。この後、各芯金の両側の端部から12mmの位置まで(芯金の両側の端部上)の弾性層を剥ぎ取ることにより最終的にゴムローラーを作製した(工程(5))。そして、上記のようにして評価用のゴムローラーを1000本作製し、以下のようにして評価に供した。
【0057】
〔評価1〕
ゴム材料の切断後、加硫前の芯金の両側の端面を観察し、ゴム材料の残りの有無(本数)を調べた。
【0058】
〔評価2〕
製造後のゴムローラーの芯金の両側の端部を観察し、離型剤の有無(本数)を調べた。
〔評価3〕
製造後のゴムローラーの芯金の両側の端部に弾性層(ゴム材料)が付着していたサンプルに対して、エア圧0.5MPa、ノズル口径2.2mmのエアガンを使用して、弾性層の付着部分から100mmの位置までの部分にエアを5秒間、吹き付けた。そして、このエア吹き付け後の弾性層の残りの有無を(本数)を確認した。
上記〔評価1〕〜〔評価3〕で得られた結果を表2に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
(実施例2)
実施例1で離型剤を塗布した芯金を、押出機に投入前に150℃で20分、焼付けた以外は実施例1と同様にしてゴムローラーを製造した。このゴムローラーに対して、上記〔評価1〕〜〔評価3〕の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0061】
(実施例3)
離型剤として、シリコーン含有タイプの離型剤(ダイフリーGU−2080、ダイキン工業株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてゴムローラーを製造した。このゴムローラーに対して、上記〔評価1〕〜〔評価3〕の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0062】
(実施例4)
離型剤として、シリコーン含有タイプの離型剤(ダイフリーGU−2080、ダイキン工業株式会社製)を使用した以外は、実施例2と同様にしてゴムローラーを製造した。このゴムローラーに対して、上記〔評価1〕〜〔評価3〕の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0063】
(比較例1)
芯金の両側の端部に、離型剤を塗布せずに押出しを行ってゴムローラーを製造した以外は、実施例1と同様にしてゴムローラーを製造した。このゴムローラーに対して、上記〔評価1〕〜〔評価3〕の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
表2の実施例1から実施例4及び比較例1の結果から、離型剤を両側の端部及びC面加工をした部分に塗布することにより、両側の端部へのゴム材料の残りが激減していることが分かる。また、離型剤を塗布したゴムローラーは、仮にゴム材料が端部に付着した場合であっても、エア拭き等の簡単な力で付着したゴム材料が除去できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】クロスヘッド押出機を用いた本発明の工程(2)、(3)の一例を示す概略図である。
【図2】C面加工を施した芯金の端部を表す図である。
【図3】ゴム押出時の収縮現象(ラッパ現象)を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1:クロスヘッドタダイ
2:芯金送りロール
3:芯金
4:芯金ガイド
5:押出機
6:ゴム材料
7:先端ダイス
8:ガイドピン(凹形状)
9:カッター
10:C面加工を施した部分
11:端面
12:押出機ヘッド
13:押出時の応力緩和で縮んだゴム部分
14:芯金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)複数本の芯金を準備し、各芯金の両側の端部に離型剤を塗布する工程と、
(2)複数本の芯金を1本ずつ互いの端面が接するように押出機のクロスヘッドダイ内の芯金ガイドに沿って連続的に通過させながら、前記芯金の外周上にゴム材料を供給することにより、前記クロスヘッドダイから、外周上にゴム材料を被覆させた芯金を共押出する工程と、
(3)前記芯金の外周上に被覆させたゴム材料を、各芯金の端面上で切断することにより、複数本の外周上にゴム材料を被覆させた芯金を得る工程と、
(4)ゴム材料を切断後の各芯金の外周上のゴム材料を加熱することにより弾性層を形成する工程と、
(5)各芯金の前記両側の端部上の弾性層を除去する工程と、
を有することを特徴とするゴムローラーの製造方法。
【請求項2】
前記芯金の両側の端部は、C面加工又はR面加工を施したものであることを特徴とする請求項1に記載のゴムローラーの製造方法。
【請求項3】
前記離型剤は焼付け可能なものであり、
前記工程(1)と(2)の間に更に、
前記離型剤の焼付け工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のゴムローラーの製造方法。
【請求項4】
前記工程(5)の後に更に、
前記芯金の少なくとも一方の端部を保持して処理を行う工程を有することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のゴムローラーの製造方法。
【請求項5】
前記工程(5)の後に更に、
前記芯金の両側の端部を保持した状態で前記ゴムローラーを回転させながら、前記弾性層を研摩する工程を有することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のゴムローラーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−29023(P2009−29023A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195821(P2007−195821)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】