ゴム物品補強用スチールコードおよびのその製造方法
【課題】６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造の偏平構造で撚り乱れが発生しないゴム物品補強用スチールコードおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】６〜１５本のスチールコード素線２からなる１×Ｎ構造のゴム物品補強用スチールコード１である。ゴム物品補強用スチールコード１内部に、スチールコード素線径をｄ（ｍｍ）としたとき、直径Ｄが下記式、
で表される関係を満足する有機繊維コード３を有し、かつ、有機繊維コード３とスチールコード素線２を撚り合わせた後に矯正ロールで偏平加工を施し、断面形状が短径Ａおよび長径Ｂで表される偏平比Ａ／Ｂが０．４〜０．８の楕円形である。
【解決手段】６〜１５本のスチールコード素線２からなる１×Ｎ構造のゴム物品補強用スチールコード１である。ゴム物品補強用スチールコード１内部に、スチールコード素線径をｄ（ｍｍ）としたとき、直径Ｄが下記式、
で表される関係を満足する有機繊維コード３を有し、かつ、有機繊維コード３とスチールコード素線２を撚り合わせた後に矯正ロールで偏平加工を施し、断面形状が短径Ａおよび長径Ｂで表される偏平比Ａ／Ｂが０．４〜０．８の楕円形である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ゴム物品補強用スチールコード（以下単に、「スチールコード」とも称する）およびその製造方法に関し、詳しくは、６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造の偏平構造で撚り乱れが発生しないゴム物品補強用スチールコードおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、空気入りタイヤのベルト部として、タイヤ赤道方向に対して所定の角度を有する、主としてスチールコードが埋設されたゴム−スチールコード複合体からなるベルトを少なくとも２枚積層した構造が知られている。このような構造を有する空気入りタイヤは、車輪性能に合致した操縦性能・耐久性を有している。
【０００３】
近年、環境問題に対する意識の高まりから、低燃費化に向けたタイヤの軽量化の要求が高まってきている。タイヤの軽量化の手法の一つとして、タイヤを構成するベルトの軽量化が挙げられる。そして、ベルトの軽量化には、ベルトを構成するスチールコードの偏平化を挙げることができる。ベルトコードが偏平構造であれば、耐久性を確保したままゴムの使用量を低減させることができ、軽く、安価なタイヤを提供することができる。偏平構造のスチールコードとしては、例えば、特許文献１には芯部を有する層撚りスチールコードが開示されている。また、特許文献２、３には、スチールコードの外接楕円の長径ｄ１と短径ｄ２との比ｄ１／ｄ２が１．１以上２．２以下であり、また、その中心部に有機の芯材を配置した構造のスチールコードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開平６−１１０８号公報
【特許文献２】特開平６−１１５３０９号公報
【特許文献３】特開平３−８７８号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、特許文献１記載の芯部を有する層撚りスチールコードには偏平化に限界がある。単撚りでは、層撚りに比べ偏平化の可能性はあるものの、撚り本数が６本以上になると、撚り合わせ時点で１×Ｎ構造を維持していることが困難となり、数本の素線がコードの内側に落ち込んでしまう。その結果、撚り合わせ後に矯正ロールで加工しても偏平構造にはなりえないという問題を有していた。したがって、実質上、１×Ｎ構造では、Ｎ≦５が限界であり、Ｎ≦５ではコードの強力は十分ではないという課題があった。また、特許文献２、３のスチールコードではスチールコード素線と芯材とを撚り合わせる際、撚り乱れが生じる場合があり、偏平構造のスチールコードにはさらなる改良が望まれていた。
【０００６】
そこで、本発明の目的は、６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造の偏平構造で撚り乱れが発生しないゴム物品補強用スチールコードおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明者は、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、下記構成とすることにより、上記課題を解消することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【０００８】
すなわち、本発明のゴム物品補強用スチールコードは、６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造のゴム物品補強用スチールコードにおいて、
前記ゴム物品補強用スチールコード内部に、スチールコード素線径をｄ（ｍｍ）としたとき、直径Ｄが下記式、
で表される関係を満足する有機繊維コードを有し、かつ、該有機繊維コードと前記スチールコード素線を撚り合わせた後に矯正ロールで偏平加工を施し、断面形状が短径Ａおよび長径Ｂで表される偏平比Ａ／Ｂが０．４〜０．８の楕円形であることを特徴とするものである。これにより、６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造の偏平構造で撚り乱れが発生しないゴム物品補強用スチールコードを得ることができる。
【０００９】
本発明のゴム物品補強用スチールコードの製造方法は、６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造のゴム物品補強用スチールコードの製造方法において、
前記ゴム物品補強用スチールコード内部に、スチールコード素線径をｄ（ｍｍ）としたとき、直径Ｄが下記式、
で表される関係を満足する有機繊維コードを有し、かつ、該有機繊維コードと前記スチールコードを撚り合わせた後に矯正ロールで偏平加工を施すことにより、断面形状が短径Ａおよび長径Ｂで表される偏平比Ａ／Ｂを０．４〜０．８の楕円形とすることを特徴とするものである。これにより、本発明のゴム物品補強用スチールコードを製造することができる。
【００１０】
本発明のトリートは、本発明のゴム物品補強用スチールコードが長径方向に並列してゴム引きされてなることを特徴とするものである。本発明のトリートをベルトに適用することにより、軽量で安価な空気入りラジアルタイヤを提供することができる。
【発明の効果】
【００１１】
本発明によれば、６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造の偏平構造で撚り乱れが発生しないゴム物品補強用スチールコードおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１２】
【図１】本発明の一実施の形態に係るゴム物品補強用スチールコードの断面図である。
【図２】偏平加工前のゴム物品補強用スチールコードの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１３】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を用いて、詳細に説明する。
図１は本発明の一実施の形態に係るゴム物品補強用スチールコードの断面図である。本発明のゴム物品補強用スチールコード１は、６〜１５本（図示例においては８本）のスチールコード素線２からなる１×Ｎ構造のゴム物品補強用スチールコードである。スチールコード素線を６〜１５本用いることにより、ゴム物品補強用スチールコードとしての強度を十分に確保することができる。本発明においては、好適には６〜８本である。
【００１４】
一般に、１×Ｎ構造のスチールコードは、スチールコード素線が６本以上になるとスチールコード内部にスチールコード素線が１本以上入る隙間が形成されてしまう。そのため、後述する偏平形状への矯正加工に際し、スチールコードへテンションを加えると、コード構造は安定化しようとし、あたかも２層コードのような構造に変化してしまう。そこで、本発明においては、図２に示すように、１×Ｎ構造のスチールコード１の内部にスチールコード素線２が入り込まないように、芯材として非金属である有機繊維コード３を配置して撚り上げている。これにより、スチールコード１内部へスチールコード素線２の侵入を防止している。なお、スチールコード１内部に配置された有機繊維コード３は、偏平に矯正加工する際に圧縮され潰れるため、スチールコード１の偏平化の障害にはならない。
【００１５】
スチールコード１内部に配置する有機繊維コード３の直径Ｄは、スチールコード素線２の径をｄ（ｍｍ）としたとき、下記式、
で表される関係を満足することが肝要である。有機繊維コード３の直径Ｄが、
であると、スチールコード１中心にスチールコード素線２が入り込む隙間が生じてしまい、撚り合わせ時、スチールコード素線２がスチールコード１中心に入り込み十分な偏平加工をすることができなくなってしまう。一方、
の場合、有機繊維コード３の直径Ｄがスチールコード素線２で構成する１×Ｎコード構造の内接円より大きくなってしまい、スチールコード１の撚り乱れが発生し、十分な偏平加工をすることができなくなってしまう。よって、直径Ｄが上記範囲内の有機繊維コード３をスチールコード１の中心に配置し、スチールコード１を撚り上げた後、矯正ロールにて偏平加工することにで、高強度を有する偏平な１×Ｎ構造のスチールコードを得ることができる。
【００１６】
また、本発明のゴム物品補強用スチールコードは、スチールコードの中心部に有機繊維コードを有するスチールコードに対して、矯正ロールにて偏平加工を施したものであるが、矯正ロールで偏平加工された後のスチールコードの断面形状が短径Ａおよび長径Ｂ（図１参照）で表される偏平比Ａ／Ｂが０．４〜０．８の楕円形であることが重要である。偏平比Ａ／Ｂが０．４未満であると、スチールコードの製造が困難となり、一方、０．８以上であると、偏平化が不十分である。好適には、偏平比Ａ／Ｂは０．５〜０．７である。
【００１７】
なお、スチールコードの内部に配置する有機繊維コードの材質としては、特に制限はなく、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）やポリエチレンナフタレート（ＰＥＮ）等のポリエステルやナイロン（登録商標）、アラミド、レーヨンなど、通常用いられる材料のうちから適切なものを選択して用いることができる。
【００１８】
本発明のゴム物品補強用スチールコードは、６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造のゴム物品補強用スチールコードにおいて、ゴム物品補強用スチールコード内部に、スチールコード素線径をｄ（ｍｍ）としたとき、直径Ｄが上記関係式で表される関係を満足する有機繊維コードを有し、かつ、機繊維コードとスチールコード素線を撚り合わせた後に矯正ロールで偏平加工を施し、断面形状が短径Ａおよび長径Ｂで表される偏平比Ａ／Ｂが０．４〜０．８の楕円形であることのみが重要であり、これにより、６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造の偏平構造で撚り乱れが発生しないゴム物品補強用スチールコードを得ることができるものである。したがって、スチールコード素線の素線径や材質等については、特に制限されるものではなく、また、スチールコードの具体的なコード径や撚りピッチ等についても、特に制限されるものではない。
【００１９】
また、本発明のトリートは、本発明のゴム物品補強用スチールコードが長径方向に並列してゴム引きされてなることを特徴とするものである。スチールコードを長径方向に並列に配置することにより使用するゴム量を低減させることができる。本発明のトリートは、空気入りラジアルタイヤのベルトに好適に用いることができ、これにより、軽量で安価な空気入りラジアルタイヤを提供することができる。
【実施例】
【００２０】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明する。
＜スチールコードの作製＞
（実施例１〜５および比較例２、３）
下記表１および２に示す偏平化前のコード構造を有するゴム物品補強用スチールコード作製した。このスチールコード内部には芯材として、同表に示す材質、直径を有する有機繊維コードを配置した。その後、スチールコード素線と有機繊維コードを撚り合わせ、矯正ロールを通すことにより、同表に示す偏平比を有するゴム物品補強用スチールコードを得た。偏平化後のスチールコードの断面形状も併せて示す。
【００２１】
（比較例１）
スチールコードの内部に芯材としてスチールコード素線を配置したこと以外は上記手法と同様にして、スチールコードを作製した。
【００２２】
＜トリート重量＞
トリート重量は、同一スチールコード量を使用して、タイヤ中での２枚のベルトの間隙を合わせた時のベルトトリート重量（スチールおよびゴム）を算出し、実施例１の結果を１００とした指数にて表示した。結果を表１および２に併記する。
【００２３】
＜撚り乱れ＞
スチールコードを矯正ロールに通した後、スチールコードに撚り乱れが発生したものを×、発生しなかったものを○として評価した。
【００２４】
【表１】
※１：
※２：
【００２５】
【表２】
【００２６】
上記表１および２より、本発明のゴム物品補強用スチールコードは撚り乱れが発生せずに偏平化していることがわかる。また、本発明のスチールコードをトリートに用いることにより、トリート重量が減少し、すなわち、ゴムの使用量が低下していることがわかる。したがって、本発明のトリートをベルトに適用することにより、軽量で安価な空気入りラジアルタイヤを提供することができることがわかる。
【符号の説明】
【００２７】
１ スチールコード
２ スチールコード素線
３ 有機繊維コード
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ゴム物品補強用スチールコード（以下単に、「スチールコード」とも称する）およびその製造方法に関し、詳しくは、６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造の偏平構造で撚り乱れが発生しないゴム物品補強用スチールコードおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、空気入りタイヤのベルト部として、タイヤ赤道方向に対して所定の角度を有する、主としてスチールコードが埋設されたゴム−スチールコード複合体からなるベルトを少なくとも２枚積層した構造が知られている。このような構造を有する空気入りタイヤは、車輪性能に合致した操縦性能・耐久性を有している。
【０００３】
近年、環境問題に対する意識の高まりから、低燃費化に向けたタイヤの軽量化の要求が高まってきている。タイヤの軽量化の手法の一つとして、タイヤを構成するベルトの軽量化が挙げられる。そして、ベルトの軽量化には、ベルトを構成するスチールコードの偏平化を挙げることができる。ベルトコードが偏平構造であれば、耐久性を確保したままゴムの使用量を低減させることができ、軽く、安価なタイヤを提供することができる。偏平構造のスチールコードとしては、例えば、特許文献１には芯部を有する層撚りスチールコードが開示されている。また、特許文献２、３には、スチールコードの外接楕円の長径ｄ１と短径ｄ２との比ｄ１／ｄ２が１．１以上２．２以下であり、また、その中心部に有機の芯材を配置した構造のスチールコードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開平６−１１０８号公報
【特許文献２】特開平６−１１５３０９号公報
【特許文献３】特開平３−８７８号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、特許文献１記載の芯部を有する層撚りスチールコードには偏平化に限界がある。単撚りでは、層撚りに比べ偏平化の可能性はあるものの、撚り本数が６本以上になると、撚り合わせ時点で１×Ｎ構造を維持していることが困難となり、数本の素線がコードの内側に落ち込んでしまう。その結果、撚り合わせ後に矯正ロールで加工しても偏平構造にはなりえないという問題を有していた。したがって、実質上、１×Ｎ構造では、Ｎ≦５が限界であり、Ｎ≦５ではコードの強力は十分ではないという課題があった。また、特許文献２、３のスチールコードではスチールコード素線と芯材とを撚り合わせる際、撚り乱れが生じる場合があり、偏平構造のスチールコードにはさらなる改良が望まれていた。
【０００６】
そこで、本発明の目的は、６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造の偏平構造で撚り乱れが発生しないゴム物品補強用スチールコードおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明者は、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、下記構成とすることにより、上記課題を解消することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【０００８】
すなわち、本発明のゴム物品補強用スチールコードは、６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造のゴム物品補強用スチールコードにおいて、
前記ゴム物品補強用スチールコード内部に、スチールコード素線径をｄ（ｍｍ）としたとき、直径Ｄが下記式、
で表される関係を満足する有機繊維コードを有し、かつ、該有機繊維コードと前記スチールコード素線を撚り合わせた後に矯正ロールで偏平加工を施し、断面形状が短径Ａおよび長径Ｂで表される偏平比Ａ／Ｂが０．４〜０．８の楕円形であることを特徴とするものである。これにより、６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造の偏平構造で撚り乱れが発生しないゴム物品補強用スチールコードを得ることができる。
【０００９】
本発明のゴム物品補強用スチールコードの製造方法は、６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造のゴム物品補強用スチールコードの製造方法において、
前記ゴム物品補強用スチールコード内部に、スチールコード素線径をｄ（ｍｍ）としたとき、直径Ｄが下記式、
で表される関係を満足する有機繊維コードを有し、かつ、該有機繊維コードと前記スチールコードを撚り合わせた後に矯正ロールで偏平加工を施すことにより、断面形状が短径Ａおよび長径Ｂで表される偏平比Ａ／Ｂを０．４〜０．８の楕円形とすることを特徴とするものである。これにより、本発明のゴム物品補強用スチールコードを製造することができる。
【００１０】
本発明のトリートは、本発明のゴム物品補強用スチールコードが長径方向に並列してゴム引きされてなることを特徴とするものである。本発明のトリートをベルトに適用することにより、軽量で安価な空気入りラジアルタイヤを提供することができる。
【発明の効果】
【００１１】
本発明によれば、６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造の偏平構造で撚り乱れが発生しないゴム物品補強用スチールコードおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１２】
【図１】本発明の一実施の形態に係るゴム物品補強用スチールコードの断面図である。
【図２】偏平加工前のゴム物品補強用スチールコードの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１３】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を用いて、詳細に説明する。
図１は本発明の一実施の形態に係るゴム物品補強用スチールコードの断面図である。本発明のゴム物品補強用スチールコード１は、６〜１５本（図示例においては８本）のスチールコード素線２からなる１×Ｎ構造のゴム物品補強用スチールコードである。スチールコード素線を６〜１５本用いることにより、ゴム物品補強用スチールコードとしての強度を十分に確保することができる。本発明においては、好適には６〜８本である。
【００１４】
一般に、１×Ｎ構造のスチールコードは、スチールコード素線が６本以上になるとスチールコード内部にスチールコード素線が１本以上入る隙間が形成されてしまう。そのため、後述する偏平形状への矯正加工に際し、スチールコードへテンションを加えると、コード構造は安定化しようとし、あたかも２層コードのような構造に変化してしまう。そこで、本発明においては、図２に示すように、１×Ｎ構造のスチールコード１の内部にスチールコード素線２が入り込まないように、芯材として非金属である有機繊維コード３を配置して撚り上げている。これにより、スチールコード１内部へスチールコード素線２の侵入を防止している。なお、スチールコード１内部に配置された有機繊維コード３は、偏平に矯正加工する際に圧縮され潰れるため、スチールコード１の偏平化の障害にはならない。
【００１５】
スチールコード１内部に配置する有機繊維コード３の直径Ｄは、スチールコード素線２の径をｄ（ｍｍ）としたとき、下記式、
で表される関係を満足することが肝要である。有機繊維コード３の直径Ｄが、
であると、スチールコード１中心にスチールコード素線２が入り込む隙間が生じてしまい、撚り合わせ時、スチールコード素線２がスチールコード１中心に入り込み十分な偏平加工をすることができなくなってしまう。一方、
の場合、有機繊維コード３の直径Ｄがスチールコード素線２で構成する１×Ｎコード構造の内接円より大きくなってしまい、スチールコード１の撚り乱れが発生し、十分な偏平加工をすることができなくなってしまう。よって、直径Ｄが上記範囲内の有機繊維コード３をスチールコード１の中心に配置し、スチールコード１を撚り上げた後、矯正ロールにて偏平加工することにで、高強度を有する偏平な１×Ｎ構造のスチールコードを得ることができる。
【００１６】
また、本発明のゴム物品補強用スチールコードは、スチールコードの中心部に有機繊維コードを有するスチールコードに対して、矯正ロールにて偏平加工を施したものであるが、矯正ロールで偏平加工された後のスチールコードの断面形状が短径Ａおよび長径Ｂ（図１参照）で表される偏平比Ａ／Ｂが０．４〜０．８の楕円形であることが重要である。偏平比Ａ／Ｂが０．４未満であると、スチールコードの製造が困難となり、一方、０．８以上であると、偏平化が不十分である。好適には、偏平比Ａ／Ｂは０．５〜０．７である。
【００１７】
なお、スチールコードの内部に配置する有機繊維コードの材質としては、特に制限はなく、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）やポリエチレンナフタレート（ＰＥＮ）等のポリエステルやナイロン（登録商標）、アラミド、レーヨンなど、通常用いられる材料のうちから適切なものを選択して用いることができる。
【００１８】
本発明のゴム物品補強用スチールコードは、６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造のゴム物品補強用スチールコードにおいて、ゴム物品補強用スチールコード内部に、スチールコード素線径をｄ（ｍｍ）としたとき、直径Ｄが上記関係式で表される関係を満足する有機繊維コードを有し、かつ、機繊維コードとスチールコード素線を撚り合わせた後に矯正ロールで偏平加工を施し、断面形状が短径Ａおよび長径Ｂで表される偏平比Ａ／Ｂが０．４〜０．８の楕円形であることのみが重要であり、これにより、６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造の偏平構造で撚り乱れが発生しないゴム物品補強用スチールコードを得ることができるものである。したがって、スチールコード素線の素線径や材質等については、特に制限されるものではなく、また、スチールコードの具体的なコード径や撚りピッチ等についても、特に制限されるものではない。
【００１９】
また、本発明のトリートは、本発明のゴム物品補強用スチールコードが長径方向に並列してゴム引きされてなることを特徴とするものである。スチールコードを長径方向に並列に配置することにより使用するゴム量を低減させることができる。本発明のトリートは、空気入りラジアルタイヤのベルトに好適に用いることができ、これにより、軽量で安価な空気入りラジアルタイヤを提供することができる。
【実施例】
【００２０】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明する。
＜スチールコードの作製＞
（実施例１〜５および比較例２、３）
下記表１および２に示す偏平化前のコード構造を有するゴム物品補強用スチールコード作製した。このスチールコード内部には芯材として、同表に示す材質、直径を有する有機繊維コードを配置した。その後、スチールコード素線と有機繊維コードを撚り合わせ、矯正ロールを通すことにより、同表に示す偏平比を有するゴム物品補強用スチールコードを得た。偏平化後のスチールコードの断面形状も併せて示す。
【００２１】
（比較例１）
スチールコードの内部に芯材としてスチールコード素線を配置したこと以外は上記手法と同様にして、スチールコードを作製した。
【００２２】
＜トリート重量＞
トリート重量は、同一スチールコード量を使用して、タイヤ中での２枚のベルトの間隙を合わせた時のベルトトリート重量（スチールおよびゴム）を算出し、実施例１の結果を１００とした指数にて表示した。結果を表１および２に併記する。
【００２３】
＜撚り乱れ＞
スチールコードを矯正ロールに通した後、スチールコードに撚り乱れが発生したものを×、発生しなかったものを○として評価した。
【００２４】
【表１】
※１：
※２：
【００２５】
【表２】
【００２６】
上記表１および２より、本発明のゴム物品補強用スチールコードは撚り乱れが発生せずに偏平化していることがわかる。また、本発明のスチールコードをトリートに用いることにより、トリート重量が減少し、すなわち、ゴムの使用量が低下していることがわかる。したがって、本発明のトリートをベルトに適用することにより、軽量で安価な空気入りラジアルタイヤを提供することができることがわかる。
【符号の説明】
【００２７】
１ スチールコード
２ スチールコード素線
３ 有機繊維コード
【特許請求の範囲】
【請求項１】
６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造のゴム物品補強用スチールコードにおいて、
前記ゴム物品補強用スチールコード内部に、スチールコード素線径をｄ（ｍｍ）としたとき、直径Ｄが下記式、
で表される関係を満足する有機繊維コードを有し、かつ、該有機繊維コードと前記スチールコード素線を撚り合わせた後に矯正ロールで偏平加工を施し、断面形状が短径Ａおよび長径Ｂで表される偏平比Ａ／Ｂが０．４〜０．８の楕円形であることを特徴とするゴム物品補強用スチールコード。
【請求項２】
６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造のゴム物品補強用スチールコードの製造方法において、
前記ゴム物品補強用スチールコード内部に、スチールコード素線径をｄ（ｍｍ）としたとき、直径Ｄが下記式、
で表される関係を満足する有機繊維コードを有し、かつ、該有機繊維コードと前記スチールコードを撚り合わせた後に矯正ロールで偏平加工を施すことにより、断面形状が短径Ａおよび長径Ｂで表される偏平比Ａ／Ｂを０．４〜０．８の楕円形とすることを特徴とするゴム物品補強用スチールコードの製造方法。
【請求項３】
請求項１記載のゴム物品補強用スチールコードが長径方向に並列してゴム引きされてなることを特徴とするトリート。
【請求項１】
６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造のゴム物品補強用スチールコードにおいて、
前記ゴム物品補強用スチールコード内部に、スチールコード素線径をｄ（ｍｍ）としたとき、直径Ｄが下記式、
で表される関係を満足する有機繊維コードを有し、かつ、該有機繊維コードと前記スチールコード素線を撚り合わせた後に矯正ロールで偏平加工を施し、断面形状が短径Ａおよび長径Ｂで表される偏平比Ａ／Ｂが０．４〜０．８の楕円形であることを特徴とするゴム物品補強用スチールコード。
【請求項２】
６〜１５本のスチールコード素線からなる１×Ｎ構造のゴム物品補強用スチールコードの製造方法において、
前記ゴム物品補強用スチールコード内部に、スチールコード素線径をｄ（ｍｍ）としたとき、直径Ｄが下記式、
で表される関係を満足する有機繊維コードを有し、かつ、該有機繊維コードと前記スチールコードを撚り合わせた後に矯正ロールで偏平加工を施すことにより、断面形状が短径Ａおよび長径Ｂで表される偏平比Ａ／Ｂを０．４〜０．８の楕円形とすることを特徴とするゴム物品補強用スチールコードの製造方法。
【請求項３】
請求項１記載のゴム物品補強用スチールコードが長径方向に並列してゴム引きされてなることを特徴とするトリート。
【図１】
【図２】
【図２】
【公開番号】特開２０１０−２８５７１２（Ｐ２０１０−２８５７１２Ａ）
【公開日】平成２２年１２月２４日（２０１０．１２．２４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−１３９６３１（Ｐ２００９−１３９６３１）
【出願日】平成２１年６月１０日（２００９．６．１０）
【出願人】（０００００５２７８）株式会社ブリヂストン (11,469)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年１２月２４日（２０１０．１２．２４）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年６月１０日（２００９．６．１０）
【出願人】（０００００５２７８）株式会社ブリヂストン (11,469)
【Ｆターム（参考）】
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