説明

ゴム組成物および該組成物を使用したタイヤ

本発明は、少なくともジエンエラストマー、補強用充填剤および架橋系をベースとし、10〜150phrの板状充填剤および0.01〜0.3phrの金属塩を少なくとも含むことを特徴とするゴム組成物に関する。
この組成物は、良好な加工および機械特性を有し、さらにまた、タイヤが静止しているときの周囲温度から走行時のタイヤ温度までの広い温度範囲に亘って改良された酸素不透過特性も有する。
本発明の1つの好ましい実施態様によれば、上記のゴム組成物は、タイヤにおいて、タイヤの少なくとも1つの部品内の保護エラストマー層として使用し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気に対して改良された不透過性を有する保護エラストマー層の製造を特に意図し、特にタイヤの製造において使用することのできるゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジアルカーカス補強材を有するタイヤは、知られている通り、上にトレッドが存在するクラウン、取付け用リムと接触させることを意図する2本のビード、これらのビードをクラウンに連結させている2つの側壁を含む。上記クラウンは、タイヤを円周方向に補強し且つ上記のカーカス補強材とトレッドの間に半径方向に置かれているベルトを含む。このベルトは、金属または繊維タイプのコードまたはモノフィラメントのような補強材によって補強されていてもまたは補強されていなくてもよいゴムの数枚のプライ(または“層”)からなる。
【0003】
しかしながら、タイヤに浸透し得る水または空気のような腐蝕性因子が上記ベルトに移行し得ることは知られている。ベルト内の空気の存在は、腐蝕を起し、疲労過程(“腐蝕疲労”として知られる現象)を促進させるリスクがあるとともに、補強材と近隣のゴム組成物間の接着にとって有害であり、最終的にはタイヤ性能の寿命に大きく関与する。
タイヤ製造業者の懸念ごとの1つは、稼動寿命を増進させること、特に、ゴム組成物の、金属または繊維補強材の、さらにこれらのブレンド物とこれらの補強材間の界面の酸化過程に対する耐久性を改良することである。
【0004】
これらの酸化現象を低減するためには、膨張ガスまたは外気に由来し、酸化感受性領域に達する酸素の量を抑制することが知られている。酸素の移行を抑制するには、当業者であれば、多くの物理的、化学的または物理化学的方法を取り得るであろう。
解決策の1つは、保護すべきタイヤ部品の次に保護エラストマー層を置くことからなる。さらにまた、保護は、この保護エラストマー層の厚さを増大させることによっても増進させ得る。しかしながら、そのような重量の増大は、タイヤの原価の上昇、並びに、タイヤが走行するときに、タイヤにおいて使用するブレンド物の熱蓄積の増大をもたらす。
【0005】
他の解決策は、酸化防止剤の量を減じることによって保護エラストマー層内に酸素を保持させることを提案しているが、この方策は、カーカス補強材の稼動寿命を増長することを可能にしていない。
最後に、他の解決策は、KIRK-OTHMER ENCYCLOPEDIA, third edition, Wiley, volume 3の483頁の“barrier polymers”の章において示唆しているように、ガラス転移温度(Tg)、極性、結晶化度、鎖剛性、稠密度(序列、対称性)の度合を増進させることによって酸素に対しあまり透過性でないポリマーを使用することを推奨している。
【発明の概要】
【0006】
本出願人等は、研究中に、ジエンエラストマー、架橋系および補強用充填剤をベースとし、少なくとも金属塩と板状充填剤を含み、上述の各種解決策の欠点の全てを克服することを可能にする新規な組成物を見出した。事実、この組成物は、従来技術の組成物と同等に良好である加工および機械特性を有し、さらにまた、タイヤが静止しているときの周囲温度から走行時のタイヤ温度までの広い温度範囲に亘って改良された酸素不透過特性も有する。
【0007】
従って、本発明の第1の主題は、少なくともジエンエラストマー、補強用充填剤および架橋系をベースとし、少なくとも下記を含むことを特徴とするゴム組成物に関する:
・10〜150phrの板状充填剤;および、
・0.01〜0.3phrの金属塩。
【0008】
本発明のタイヤは、特に、乗用車タイプ、SUV (スポーツ用多目的車)タイプの自動車;二輪車(特にオートバイ)および航空機;例えば、バン類、重量車両(即ち、地下鉄列車、バス、重量道路輸送車(トラック、けん引車両、トレーラー)、農業用および土木工学車両のような道路外車両)から選ばれる産業用車両;および、他の輸送または操作用車両に装着することを意図する。
本発明は、未硬化状態(即ち、硬化前)および硬化状態(即ち、架橋または加硫後)双方の上記タイヤに関する。
また、本発明は、配合が上記で定義している通りであるエラストマー組成物の、ゴム物品における酸素バリア層としての使用にも関する。
【0009】
本発明およびその利点は、以下の説明および典型的な実施態様に照らして、さらにまた、半径断面において、本発明に従うラジアルタイヤの2つの例を略図的に示しているこれらの実施例に関連する図1および2に照らせば容易に理解し得るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に従うラジアルタイヤの1つの例を、半径断面において略図的に示す。
【図2】本発明に従うラジアルタイヤのもう1つの例を、半径断面において略図的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
I. 使用する測定および試験方法
上記ゴム組成物は、硬化の前後において、下記に示すようにして特性決定する。
I‐1. ムーニー可塑度
フランス規格NF T 43‐005 (1991年)に記載されているような振動(oscillating)稠度計を使用する。ムーニー可塑度測定は、次の原理に従って実施する:生状態(即ち、硬化前)の組成物を100℃に加熱した円筒状チャンバー内で成形する。1分間の予熱後、ローターが試験標本内で2回転/分で回転し、この運動を維持するための仕事トルクを4分間の回転後に測定する。ムーニー可塑度(ML 1+4)は、“ムーニー単位”(MU、1MU = 0.83ニュートン.メートル)で表す。
【0012】
I‐2. 流動度測定
測定は、規格DIN 53529‐パート3 (1983年6月)従い、振動チャンバーレオメーターによって150℃で実施する。時間の関数としての流動度測定トルクの変化によって、加硫反応の結果としての組成物の剛化の変化を説明する。測定値を規格DIN 53529‐パート2 (1983年3月)従い処理する:Tiは、誘導時間、即ち、加硫反応を開始するのに必要な時間である。また、K (分-1で表す)で示す第1順位転換速度定数を測定し、30%と80%の転換の間で算出する;これによって、加硫速度の評価を可能にする。
【0013】
I‐3. 引張試験
これらの試験は、1988年9月のフランス規格NF T 46‐002に従って実施する。 “公称”割線モジュラス(または見掛け応力、MPaでの)を、2回目の伸びにおいて(即ち、順応サイクル後に)、10%の伸び(“MA10”と示す)および100%の伸び(“MA100”)で測定する。これらの張力測定は、全て、フランス規格NF T 40‐101(1979年12月)に従い、標準の温度(23±2℃)および湿度(50±5%相対湿度)条件下に実施する。
【0014】
I‐4. 40℃および80℃における透過性
透過性値は、Mocon Oxtran 2/60透過性“テスター”を使用して、40℃および80℃において測定する。所定の厚さ(およそ0.8〜1mm)を有するディスク形状の硬化サンプルを上記装置に装着し、真空グリースによって気密性にする。ディスクの1面を約0.7バール(10psi)の窒素下に保ち、他の面を約0.7バール(10psi)の酸素下に保つ。酸素濃度の上昇を、“Coulox”酸素検出器を使用して、窒素下に保った面上でモニターする。一定値に達するのを可能にし、酸素透過性を判定するのに使用した窒素下に保った面上の酸素濃度を記録する。
100の任意値を対照の酸素透過性に対して与える;100よりも低い結果が、酸素透過性の低下、従って、良好な不透過性を示す。
【0015】
II. 発明を実施する条件
本発明に従うゴム組成物は、少なくともジエンエラストマー、補強用充填剤および架橋系をベースとし、少なくとも下記を含むことを特徴とする:
・10〜150phrの板状充填剤;および、
・0.01〜0.3phrの金属塩。
略記“phr”は、上記組成物中に存在するエラストマーまたは全エラストマーの100質量部当りの質量部を意味する。
【0016】
“ベースとする組成物”なる表現は、使用する各種構成成分の混合物および/または反応生成物を含む組成物を意味するものと理解すべきであり、これらのベース構成成分の幾つかは、上記組成物の製造の各種段階において、特に、上記組成物の架橋または加硫中に、互いに少なくとも部分的に反応し得るか或いは反応させることを意図する。
【0017】
本説明においては、他に明確に断らない限り、示す百分率(%)は、全て質量で表す%である。さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の範囲は、いずれも、aよりも大きい値からbよりも小さいまでの範囲にある値の領域を示し(即ち、限界値aとbを除く)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の範囲は、いずれも、aからbまでの範囲にある値の領域を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを含む)。
【0018】
II‐1. ジエンエラストマー
用語“ジエン”エラストマーまたはゴムは、知られている通り、ジエンモノマー( 共役型であり得るまたはあり得ない2個の炭素‐炭素二重結合を担持するモノマー)に少なくとも部分的に由来する1種以上のエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解すべきである。
【0019】
これらのジエンエラストマーは、2つのカテゴリー、即ち、“本質的に不飽和”または “本質的に飽和”に分類し得る。用語“本質的に不飽和”は、一般に、15%(モル%)よりも多いジエン起源(共役ジエン)単位含有量を有する共役ジエンモノマーに少なくとも一部由来するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。従って、例えば、ブチルゴムまたはEPDMタイプのジエンとα‐オレフィンのコポリマーのようなジエンエラストマーは、上述の定義に属さず、特に、“本質的に飽和”のジエンエラストマー(常に15%未満である低いまたは極めて低いジエン起原単位含有量)として説明し得る。“本質的に不飽和”のジエンエラストマーのカテゴリーにおいては、用語“高不飽和”ジエンエラストマーは、特に、50%よりも多いジエン起源(共役ジエン類)単位含有量を有するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。
【0020】
これらの定義を考慮すると、本発明に従う組成物において使用することのできるジエンエラストマーなる用語は、さらに詳細には、下記を意味するものと理解されたい:
(a) 4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーを重合させることによって得られる任意のホモポリマー;
(b) 1種以上の共役ジエンを他のジエンまたは8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物と共重合させることによって得られる任意のコポリマー;
(c) 例えば、エチレンおよびプロピレンと、特に1,4‐ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンのような上述したタイプの非共役ジエンモノマーとから得られるエラストマーのような、エチレンと、3〜6個の炭素原子を有するα‐オレフィンとを、6〜12個の炭素原子を有する非共役ジエンモノマーと共重合させることによって得られる3成分コポリマー、;および、
(d) イソブテンとイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)、さらにまた、このタイプのコポリマーのハロゲン化形、特に、塩素化または臭素化形。
本発明は、任意のタイプのジエンエラストマーに当てはまるけれども、タイヤ技術における熟練者であれば、本発明は、好ましくは、特に上記のタイプ(a)または(b)の本質的に不飽和のジエンエラストマーと一緒に使用するものであることを理解されたい。
【0021】
以下は、共役ジエン類として、特に適している:1,3‐ブタジエン;2‐メチル‐1,3‐ブタジエン;例えば、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2,3‐ジエチル‐1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐3‐エチル‐1,3‐ブタジエンまたは2‐メチル‐3‐イソプロピル‐1,3‐ブタジエンのような2,3‐ジ(C1〜C5アルキル)‐1,3‐ブタジエン;アリール‐1,3‐ブタジエン;1,3‐ペンタジエン;または2,4-ヘキサジエンである。以下は、例えば、ビニル芳香族化合物として適切である:スチレン;オルソ‐、メタ‐およびパラ‐メチルスチレン;“ビニルトルエン”市販混合物;パラ‐(tert‐ブチル)スチレン;メトキシスチレン;クロロスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼンまたはビニルナフタレン。
【0022】
上記コポリマーは、99質量%と20質量%の間の量のジエン単位と1質量%と80質量%の間の量のビニル芳香族単位を含有し得る。上記エラストマーは、使用する重合条件、特に、変性剤および/またはランダム化剤の存在または不存在並びに使用する変性剤および/またはランダム化剤の量に依存する任意のミクロ構造を有し得る。これらのエラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、序列または微細序列エラストマーであり得、分散液または溶液中で調製し得る;これらのエラストマーは、カップリング剤および/または星型枝分れ化剤(star‐branching agent)或いは官能化剤によってカップリング化および/または星型枝分れ化或いは官能化し得る。例えば、カーボンブラックにカップリングさせるには、C‐Sn結合を含む官能基または、例えば、ベンゾフェノンのようなアミノ化官能基を挙げることができ;シリカのような補強用無機充填剤にカップリングさせるには、例えば、シラノールまたはシラノール末端を有するポリシロキサン官能基(例えば、FR 2 740 778号またはUS 6 013 718号に記載されているような)、アルコキシシラン基(例えば、FR 2 765 882号またはUS 5 977 238号に記載されているような)、カルボキシル基(例えば、WO 01/92402号またはUS 6 815 473号、WO 2004/096865号またはUS 2006/0089445号に記載されているような)、或いはポリエーテル基(例えば、EP 1 127 909号またはUS 6 503 973号に記載されているような)を挙げることができる。また、他の官能化エラストマー類の例としては、エポキシ化タイプのエラストマー(SBR、BR、NRまたはIRのような)も挙げることができる。
【0023】
以下が適切である:ポリブタジエン、特に、4%と80%の間の1,2‐単位含有量(モル%)を有するポリブタジエン、または80%よりも多いシス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するポリブタジエン;ポリイソプレン;ブタジエン/スチレンコポリマー、特に、0℃と−70℃の間、特に−10℃と-60℃の間のTg (ガラス転移温度(Tg)、ASTM D3418に従って測定)、
5質量%と60質量%の間特に20質量%と50質量%の間のスチレン含有量、4%と75%の間のブタジエン成分1,2‐結合含有量(モル%)および10%と80%の間のトランス‐1,4‐結合含有量(モル%)を有するコポリマー;ブタジエン/イソプレンコポリマー、特に、5質量%と90質量%の間のイソプレン含有量および−40℃〜−80℃のTgを有するコポリマー;または、イソプレン/スチレンコポリマー、特に、5質量%と50質量%の間のスチレン含有量および−25℃と−50℃の間のTgを有するコポリマー。ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合は、5質量%と50質量%の間特に10質量%と40質量%の間のスチレン含有量、15質量%と60質量%の間特に20質量%と50質量%の間のイソプレン含有量、5質量%と50質量%の間特に20質量%と40質量%の間のブタジエン含有量、4%と85%の間のブタジエン成分1,2‐単位含有量(モル%)、6%と80%の間のブタジエン成分トランス‐1,4‐単位含有量(モル%)、5%と70%の間のイソプレン成分1,2‐+3,4‐単位含有量(モル%)および10%と50%の間のイソプレン成分トランス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するコポリマー、さらに一般的には、−20℃と−70℃の間のTgを有する任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが、特に適している。
【0024】
要するに、本発明に従う組成物のジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(“BR”と略記する)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらエラストマーのブレンドからなる高不飽和ジエンエラストマーの群から選択する。そのようなコポリマーは、さらに好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)およびイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)からなる群から選択する。
【0025】
1つの特定の実施態様によれば、上記ジエンエラストマーは、主として(即ち、50phrよりも多くにおいて)、SBR (エマルジョン中で調製したSBR (“ESBR”)または溶液中で調製したSBR (“SSBR”)のいずれか)、或いはSBR/BR、SBR/NR (またはSBR/IR)、BR/NR (またはBR/IR)またはSBR/BR/IR (またはSBR/BR/IR)ブレンド(混合物)である。SBR (ESBRまたはSSBR)エラストマーの場合、特に、例えば20質量%と35質量%の間の量の中程度のスチレン含有量または、例えば35質量%〜45質量%の高スチレン含有量、15%と70%の間のブタジエン成分ビニル結合含有量、15%と75%の間のトランス‐1,4‐結合含有量(モル%)および−10℃と−55℃の間のTgを有するSBRを使用する;そのようなSBRは、有利には、好ましくは90%(モル%)よりも多いシス‐1,4‐結合を有するBRとの混合物として使用する。
【0026】
もう1つの特定の実施態様によれば、上記ジエンエラストマーは、主として(即ち、50phrよりも多くにおいて)、イソプレンエラストマーである。
用語“イソプレンエラストマー”は、知られている通り、イソプレンホモポリマーまたはコポリマー、換言すれば、可塑化または解凝固し得る天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、各種イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。イソプレンコポリマーのうちでは、特に、イソブテン/イソプレンコポリマー(ブチルゴム(IIR))、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)またはイソプレン/ブタジエン/スチレン(SBIR)コポリマーが挙げられる。このイソプレンエラストマーは、好ましくは、天然ゴムまたは合成シス‐1,4‐ポリイソプレンである;好ましくは、これらの合成ポリイソプレンのうちでは、90%よりも多い、さらにより好ましくは98%よりも多いシス-1,4結合含有量(モル%)を有するポリイソプレンを使用する。
【0027】
本発明の組成物は、単独のジエンエラストマーまたは数種のジエンエラストマーの混合物を含有し得、ジエンエラストマー(1種以上)は、必要に応じて、ジエンエラストマー以外の任意のタイプの合成エラストマーと或いはエラストマー以外のポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーさえと組合せて使用し得る。
【0028】
本発明の1つの特定の実施態様によれば、本発明に従うゴム組成物は、以下で“高Tg”エラストマーと称する、−35℃よりも高いガラス転移温度(Tg)を有するジエンエラストマーを含むという第2の特徴を有する;上記温度は、乾燥状態(即ち、増量剤オイルを含まない)のエラストマーにおいて測定する(ASTM D3418 (1999年)に従い、DSCによる)。
本発明の1つの特定の実施態様によれば、上記ゴム組成物は、0phrと80phrの間、特に30phrと70phrの間の量の“高Tg”エラストマーを含む。
【0029】
特に、“高Tg”エラストマーは、スチレン/ブタジエンコポリマー(SBR)である。好ましくは、5質量%と50質量%の間特に20質量%と50質量%の間のスチレン含有量、4%と65%の間のブタジエン成分1,2‐結合含有量および10%と80%の間のトランス‐1,4‐結合含有量を有する高Tg SBRを使用する。当業者であれば、SBRエラストマーのミクロ構造を如何にして改変してそのTgを調整するかは承知していることであろう。
もう1つの好ましい実施態様によれば、上記高Tg SBRは、−35℃と0℃の間の、特に−30℃よりも高い、より好ましくは−30℃と−5℃の間のTgを有する。
上記高Tg SBRは、例えば、−25℃のTgを有し、24%の1,2‐ビニル、41%のスチレン、50%のトランス‐1,4‐ブタジエン、26%のシス‐1,4‐ブタジエンを含むSBRである。
【0030】
もう1つの好ましい実施態様によれば、上記“高Tg”エラストマーは、エポキシ化天然ゴム(“ENR”と略記する)である。
エポキシ化天然ゴムは、その優れた耐摩耗性、疲労強度、曲げ強度特性のために使用されており、特に、タイヤの側壁において使用されていることが知られている。
エポキシ化天然ゴムは、例えば、クロロヒドリンまたはブロモヒドリンをベースとする方法或いは過酸化水素、アルキルヒドロペルオキシドまたは過酸(過酢酸または過ギ酸のような)をベースとする方法により天然ゴムをエポキシ化することによって得ることができる。
ENRは、商業的に入手可能であり、例えば、品名“ENR‐25”(エポキシ化度:モル当り25%、ガラス転移温度:−41℃)としてGuthrie Polymer社から販売されている。
【0031】
上記エポキシ化天然ゴムのエポキシ化度は、好ましくは少なくとも3%(モル%)、より好ましくは少なくとも5%、例えば、10〜40%の範囲内である。エポキシ化度が3%よりも低い場合、目標とする技術的効果(酸素バリア効果の改良)が不十分であるリスクに至る;さらにまた、エポキシ化度は、好ましくは多くとも60%、より好ましくは多くとも50%である;エポキシ化度が60%を越えると、上記ポリマーの分子量が大きく低下する。
【0032】
II‐2. 金属塩
本発明は、少なくとも、0.01〜0.3phrの金属塩を含むゴム組成物に関する。この金属塩は、好ましくは、周期律表からの第1系列、第2系列および第3系列の遷移金属から、またはランタニド類から選択する。
金属は、例えば、マンガンIIまたはIII、鉄IIまたはIII、コバルトIIまたはIII、銅IまたはII、ロジウムII、IIIまたはIV、およびルテニウムであり得る。導入するときの金属の酸化状態は、必ずしも、カチオン活性形の状態ではない。
【0033】
金属は、好ましくはマンガン、ニッケルまたは銅、より好ましくはコバルト、さらにより好ましくは鉄である。
金属に対する対イオンとしては、特に、クロリド、アセテート、ステアレート、パルミテート、2‐エチルヘキサノエート、ネオデカノエートまたはナフテネートがある。
詳細には、マンガンIIまたはIII塩、特に、炭酸マンガン(II)、酢酸マンガン(II)またはアセチルアセトン酸マンガン(II)、アセチルアセトン酸マンガン(III);銅(II)塩、特に、水酸化銅(II)、炭酸銅(II)、ステアリン酸銅(II)、酢酸銅(II)またはアセチルアセトン酸銅(II);クロム(III)塩、特に、アセチルアセトン酸クロム;コバルト塩、特に、ネオデカン酸コバルト、2‐エチルヘキサン酸コバルトまたはアセチルアセトン酸コバルトを挙げることができる。
【0034】
本発明に従う脂肪酸の鉄(III)塩としては、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸およびトリコサン酸の各脂肪酸の塩を挙げることができる。
好ましくは、鉄(III)塩は、アセチルアセトン酸鉄(III)またはステアリン酸鉄(III)である。
【0035】
ランタニドは、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、エルビウム、およびこれらの希土類元素の混合物によって形成される群から選択し、より好ましくは硫酸セリウム(IV)である。
また、硫化モリブデン(IV)および酸化モリブデン(IV)も、特に適している。
【0036】
II‐3. 補強用充填剤
タイヤの製造において使用することのできるゴム組成物を補強するその能力について知られている任意のタイプの補強用充填剤、例えば、カーボンブラックのような有機充填剤、シリカのような補強用無機充填剤、或いはこれら2つのタイプの充填剤のブレンド、特に、カーボンブラックとシリカのブレンドを使用することができる。
【0037】
タイヤにおいて通常使用される全てのカーボンブラック類、特に、HAF、ISAFまたはSAFタイプのブラック類(“タイヤ級”ブラック類)が、カーボンブラックとして適している。さらに詳細には、後者のうちでは、例えば、N234、N326またはN330ブラック類のような100、200または300シリーズの補強用カーボンブラック類(ASTM級)、或いはより高級シリーズのブラック類(例えば、N660、N683またはN772)が挙げられる。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形で、イソプレンエラストマー中に既に混入させていてもよい(例えば、出願 WO 97/36724号またはWO 99/16600号を参照されたい)。
【0038】
カーボンブラック以外の有機充填剤の例としては、出願 WO‐A‐2006/069792号およびWO‐A‐2006/069793号に記載されているような官能化ポリビニル芳香族有機充填剤、或いは出願WO‐A‐2008/003434号およびWO‐A‐2008/003435号に記載されているような官能化非芳香族ポリビニル有機充填剤を挙げることができる。
【0039】
用語“補強用無機充填剤”は、本特許出願においては、定義によれば、カーボンブラックに対比して“白色充填剤”、“透明充填剤”としても或いは“非黒色充填剤”としてさえも知られており、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得る、換言すれば、通常のタイヤ級カーボンブラックとその補強役割において置換わり得る任意の無機または鉱質充填剤(その色合およびその起原(天然または合成)の如何にかかわらない)を意味するものと理解すべきである;そのような充填剤は、一般に、知られている通り、その表面でのヒドロキシル(‐OH)基の存在に特徴を有する。
【0040】
補強用無機充填剤を使用する物理的状態は、粉末、微小球、顆粒、ビーズまたは任意の他の適切な濃密形のいずれの形状であれ、重要ではない。勿論、補強用無機充填剤なる用語は、種々の補強用無機充填剤、特に、以下で説明するような高分散性シリカ質および/またはアルミナ質充填剤の混合物も意味することを理解されたい。
【0041】
シリカ質タイプの鉱質充填剤、特に、シリカ(SiO2)、またはアルミナ質タイプの鉱質充填剤、特に、アルミナ(Al2O3)は、補強用無機充填剤として特に適している。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m2/g未満、好ましくは30〜400m2/gのBET表面積とCTAB比表面積を示す任意の沈降または焼成シリカであり得る。高分散性沈降シリカ(“HDS”)としては、例えば、Degussa社からのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ類;Rhodia 社からのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ類;PPG社からのHi‐Sil EZ150Gシリカ;Huber社からのZeopol 8715、8745または8755シリカ類;および、出願 WO 03/16837号に記載されているような高比表面積を有するシリカ類が挙げられる。
【0042】
好ましくは、総補強用充填剤(カーボンブラックおよび/またはシリカのような補強用無機充填剤)の含有量は、10phrと200phrの間、より好ましくは20phrと150phrの間の量である;最適量は、知られている通り、目的とする特定の用途に応じて異なる:例えば、自転車タイヤに関して期待される補強レベルは、継続的に高速で走行することのできるタイヤ、例えば、オートバイタイヤ、乗用車用タイヤ、または重量車両のような実用車用タイヤに関して要求されるレベルよりも勿論低い。
【0043】
本発明の1つの特定の実施態様によれば、上記ゴム組成物は、カーボンブラックとシリカを含む。この場合、カーボンブラック含有量は、好ましくは5〜90phr、より好ましくは10〜60phrの範囲内であり;シリカ含有量は、好ましくは5phrと90phrの間、より好ましくは10phrと60phrの間の量である。
本発明の1つの好ましい実施態様によれば、30phrと150phrの間、より好ましくは50phrと120phrの間の量の無機充填剤、特に、シリカと、任意成分としてのカーボンブラックを含む補強用充填剤を使用する;カーボンブラックは、存在する場合、好ましくは20phrよりも少ない、より好ましくは10phrよりも少ない(例えば、0.1〜10phrの)含有量で使用する。
【0044】
補強用無機充填剤をジエンエラストマーにカップリングさせるためには、知られている通り、無機充填剤(その粒子表面)とジエンエラストマー間に化学的および/または物理的性質の満足し得る結合を付与することを意図する少なくとも二官能性のカップリング剤(または結合剤)、特に、二官能性オルガノシランまたはポリオルガノシロキサン類を使用する。
特に、例えば、出願 WO 03/002648号(またはUS 2005/016651号)およびWO 03/002649号(またはUS 2005/016650号)に記載されているような、その特定の構造によって“対称形”または“非対称形”と称されるポリスルフィド含有シラン類を使用する。
【0045】
特に適切なのは、下記の定義に限定されることなく、下記の一般式(I)に相応する“対称形”のポリスルフィド含有シランである:

(I) Z‐A‐Sx‐A‐Z

[式中、xは、2〜8 (好ましくは2〜5)の整数であり;
Aは、2価の炭化水素基(好ましくはC1〜C18アルキレン基またはC6〜C12アリーレン基、特にC1〜C10、特にC1〜C4アルキレン基、特にプロピレン)であり;
Zは、下記の式の1つに相応する:
【化1】


(式中、R1基は、置換されていないかまたは置換されており、互いに同一かまたは異なるものであって、C1〜C18アルキル、C5〜C18シクロアルキルまたはC6〜C18アリール基(好ましくはC1〜C6アルキル、シクロヘキシルまたはフェニル基、特にC1〜C4アルキル基、特にメチルおよび/またはエチル)を示し;
R2基は、置換されていないかまたは置換されており、互いに同一かまたは異なるものであって、C1〜C18アルコキシまたはC5〜C18シクロアルコキシ基(好ましくは、C1〜C8アルコキシおよびC5〜C8シクロアルコキシ基から選ばれた基、より好ましくはC1〜C4アルコキシ基、特にメトキシおよびエトキシから選ばれた基)を示す)]。
【0046】
上記式(I)に相応するポリスルフィド含有アルコキシシランの混合物、特に、商業的に入手可能な通常の混合物の場合、“x”指数の平均値は、好ましくは2と5の間の、より好ましくは4に近い分数である。しかしながら、本発明は、例えば、ジスルフィド含有アルコキシシラン(x = 2)によっても実施し得る。
【0047】
さらに詳細には、ポリスルフィド含有シランの例としては、例えば、ビス(3‐トリメトキシシリルプロピル)またはビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド類のようなビス((C1〜C4)アルコキシ(C1〜C4)アルキルシリル(C1〜C4)アルキル)ポリスルフィド類(特に、ジスルフィド類、トリスルフィド類またはテトラスルフィド類)が挙げられる。特に、これらの化合物のうちでは、式 [(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2を有するTESPTと略称されるビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、または式 [(C2H5O)3Si(CH2)3S]2を有するTESPDと略称されるビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用する。また、好ましい例としては、特許出願WO 02/083782号(または、US 2004/132880号)に記載されているような、ビス(モノ(C1〜C4)アルコキシルジ(C1〜C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド類(特に、ジスルフィド類、トリスルフィド類またはテトラスルフィド類)、特に、ビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドも挙げられる。
【0048】
ポリスルフィド含有アルコキシシラン類以外のカップリング剤としては、特に、特許出願WO 02/30939号(またはUS 6 774 255号)およびWO 02/31041号(またはUS 2004/051210号)に記載されているような、二官能性POS (ポリオルガノシロキサン)類またはヒドロキシシランポリスルフィド(上記式(I)において、R2 = OH)、または、例えば、特許出願WO 2006/125532号、WO 2006/125533号およびWO 2006/125534号に記載されているような、アゾジカルボニル官能基を担持するシランまたはPOS類が挙げられる。
本発明に従うゴム組成物においては、カップリング剤の含有量は、好ましくは2phrと20phrの間、より好ましくは4phrと12phrの間の量である。
【0049】
当業者であれば、もう1つの性質、特に、有機性を有する補強用充填剤を、この補強用充填剤がシリカのような無機層によって被覆されているか或いはその表面に、官能部位、特にヒドロキシルを含み、該充填剤と上記エラストマー間の結合を形成させるためのカップリング剤の使用を必要とすることを条件として、この項で説明する補強用無機充填剤と等価の充填剤として使用し得ることを理解されたい。
【0050】
II‐4. 板状充填剤
本発明に従う組成物は、10〜150phrの板状充填剤を含むという本質的な特徴を有する。この充填剤は、不活性充填剤または補強用もしくは半補強用充填剤のいずれかであり、全ての充填剤が、上記組成物から出発しての保護エラストマー要素を通る気体の透過特性を低下させ得る。
【0051】
板状充填剤と称する充填剤は、当業者にとって周知である。板状充填剤は、特に、空気式タイヤにおいて、ブチルゴムをベースとする通常の気密層(“内部ライナー”)の透過性を低下させるために使用されている。ブチルゴムをベースとするこれらの層においては、板状充填剤は、一般に、比較的低い含有量で使用され、その量は、通常、10〜25phrを越えない(例えば、特許文献US 2004/0194863号、WO 2006/047509号を参照されたい)。
【0052】
板状充填剤は、一般に、これらの粒子の比較的顕著な異方性を有する積層プレート、プレートレット、シートまたはホイルの形であり得る。
これらの充填剤は、その縦横比(F = L/E)に特徴を有し、Lは中央値長さ(または大きい方の寸法)を示し、Eはこれら板状充填剤の中央値厚さを示す;これらの平均値は機械的に算出する。好ましくは、この縦横比は、1と1000の間、特に1と500の間である。
これらの板状充填剤は、好ましくは、ミクロメートルサイズを有する、即ち、板状充填剤は、微小粒子の形にあり、その粒度または中央値長さ(L)は、0.05μmよりも大きい。1つの好ましい実施態様によれば、粒子の中央値長さ(L)は、0.05μmと500μmの間、好ましくは0.2μmと250μmの間である。もう1つの好ましい実施態様によれば、粒子の中央値厚さ(E)は、それ自体10nmと500nmの間、好ましくは50nmと250nmの間である。
【0053】
板状充填剤は、本発明に従う組成物中に、10phr〜150phr、特に20〜100phr、好ましくは15〜80phr、より好ましくは15〜50phrの範囲内の含有量で存在する。
粒子の上記含有量および粒度の双方において上記の最低値よりも低いと、目標の技術的効果が得られない;保護エラストマー層の透過性は、十分に低下しない。粒子の上記含有量および粒度の双方において上記の推奨最高値よりも高いと、組成物の機械的性質を悪化させるリスクが存在する。
【0054】
好ましくは、本発明に従い使用する板状充填剤は、グラファイト、フィロケイ酸塩およびそのような充填剤の混合物からなる群から選択する。フィロケイ酸塩のうちでは、特に、クレー、タルク、雲母、カオリンが挙げられ、これらのフィロケイ酸塩は、必要に応じて、例えば、表面処理によって変性されているか或いは変性されていない;そのような変性フィロケイ酸塩の例としては、特に、酸化チタンで被覆された雲母および界面活性剤によって変性されたクレー(“オルガノクレー”)を挙ることができる。
【0055】
好ましくは、低表面エネルギーを有する、即ち、比較的無極である板状充填剤、例えば、グラファイト、タルク、雲母およびそのような充填剤の混合物からなる群(これらは必要に応じて変性されているか或いは変性されていない)から、さらにより好ましくは、グラファイト、タルクおよびそのような充填剤の混合物によって形成される群から選ばれる板状充填剤を使用する。グラファイトのうちでは、天然グラファイトおよび合成グラファイトを使用し得る。
【0056】
例えば、本発明の組成物は、単独のグラファイトまたは数種のグラファイトの混合物を含有し得る。
グラファイトは、商業的に入手可能であり、特に、Imerys社から、下記の品名で販売されている:
・20μmのD50を有する“TIMREX GA 95/75”;および、
・3μmのD50を有する“TIMREX GB 99/6”。
【0057】
タルクの例としては、Luzenac社から販売されているタルクを挙げることができる。
雲母の例としては、CMMP社から販売されている雲母 (例えば、Mica‐MU (登録商標)、Mica‐Soft (登録商標)、Briomica (登録商標))、バーミキュライト (特に、CMMP社から販売されているShawatec (登録商標)バーミキュライトまたはW.R. Grace社から販売されているMicrolite (登録商標)バーミキュライト)、変性または処理雲母 (例えば、Merck社から販売されているIriodin (登録商標)区分品)を挙げることができる。
【0058】
本発明のもう1つの特定の実施態様によれば、板状充填剤として、非補強用充填剤を使用する;さらに詳細には、ケイ素系板状鉱質充填剤がこの場合適している。
特に、ケイ素系板状鉱質充填剤のうちでは、フィロケイ酸塩、特に、スメクタイト、カオリン、タルク、雲母、バーミキュライトおよびモンモリロナイトからなる群に含まれるフィロケイ酸塩が適している。
フィロケイ酸塩のうちでは、官能化フィロケイ酸塩、特に、有機変性フィロケイ酸塩も本発明において適している。特定の実施態様によれば、上記不活性充填剤と結合させる有機構造体は、式:−M+R1R2R3−を有する界面活性剤である。上記式中、Mは、窒素、イオウもしくはリン原子、またはピリジンを示し;R1、R2およびR3は、水素原子、アルキル基、アリール基またはアリル基を示し、R1、R2およびR3は、同一または異なるものである。
【0059】
特に、有機変性モンモリロナイトタイプのフィロケイ酸塩、即ち、二水素化ジオクタデシルジメチル第四級アンモニウム塩のような界面活性剤で変性したモンモリロナイトは、本発明において適している。
そのような有機変性モンモリロナイトは、特に、Southern Clay Products社から、2.6の密度および0.2μmと0.5μmの間の粒径を有する品名:Cloisite 20Aとして販売されている。
また、他の界面活性剤系第四級アンモニウム塩も、特許出願 WO 2006/047509号に記載されているように、フィロケイ酸塩を変性するのに使用し得る。
本発明のもう1つの実施態様によれば、板状充填剤は、商業的に入手可能であり、Imerys社から品名 Kerbrient SP20として販売されている、上述したカオリン粒子である。
【0060】
板状充填剤は、上記エラストマー組成物中に、種々の既知の方法に従い、例えば、溶液中で配合することによって、密閉ミキサー内で塊状配合することによって或いは押出加工によって配合することによって導入し得る。
板状充填剤の(微小)粒子の粒度分析および中央値粒度の算出については、種々の既知の方法、例えば、レーザー散乱による方法を使用し得る(例えば、ISO‐8130‐13規格またはJIS K5600‐9‐3規格を参照されたい)。
【0061】
また、単純に、好ましくは、機械的スクリーニングによる粒度分析を使用することも可能である;その操作は、一定量のサンプル(例えば、200g)を、振動テーブル上で、種々のスクリーン直径(例えば、75、105、150、180メッシュ等による増分比に従う)によって30分間スクリーニングすることからなる;各スクリーン上で集めた過大物を精密天秤で秤量する;生成物の総質量に対する各メッシュ直径での過大物の%を、それから推定する。最後に、中央値粒度(または中央値直径)を、粒度分布のヒストグラムから、既知の方法で算出する。
【0062】
II‐5. 各種添加剤
また、本発明に従うゴム組成物は、例えば、顔料;オゾン劣化防止ワックス、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤のような保護剤;可塑剤;疲労防止剤;補強用樹脂;メチレン受容体(例えば、フェノール・ノボラック樹脂)またはメチレン供与体(例えば、HMTまたはH3M);イオウまたはイオウ供与体および/または過酸化物および/またはビスマレイミドのいずれかをベースとする架橋系;加硫促進剤および加硫活性化剤のような、タイヤの製造を意図するエラストマー組成物において一般的に使用する通常の添加剤の全部または数種も含む。
【0063】
本発明のゴム組成物は、好ましくは、Tgが20℃よりも高い高ガラス転移温度(Tg)を有する炭化水素系可塑化用樹脂を使用する。
当業者にとっては既知であるように、“可塑化用樹脂”なる名称は、本特許出願においては、定義によれば、一方では、周囲温度(23℃)において固体であり(オイルのような液体可塑剤化合物とは対照的に)、且つ、他方では、意図するゴム組成物と相溶性(即ち、使用量において混和性)であって真の希釈剤として機能するような化合物に対して使用される。
【0064】
炭化水素系可塑化用樹脂の含有量は、好ましくは、1〜20phrの範囲内である。上記の最低値よりも低いと、目標の技術的効果が不十分であることが判明し得ている。一歩、20phrよりも高いと、ある場合には、工業的検知から許容し難くなり得る配合用器具に対する未硬化状態の組成物の粘着性を増大させるリスクが存在する。
【0065】
好ましくは、上記炭化水素系可塑化用樹脂は、下記の特徴の少なくとも1つ、さらに好ましくは全部を有する:
・400g/モルと2000g/モルの間の数平均分子量(Mn);
・2よりも低い多分散性指数(Ip) (注:Ip = Mw/Mn、Mwは質量平均分子量である)。
【0066】
ガラス転移温度Tgは、規格 ASTM D3418 (1999年)に従って、DSC (示差走査熱量測定法)によって既知の方法で測定し、軟化点は、規格 ASTM E‐28に従って測定する。
上記炭化水素系可塑化用樹脂のマクロ構造(Mw、MnおよびIp)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定する:溶媒 テトラヒドロフラン;温度 35℃;濃度 1g/l;流量 1ml/分;注入前に0.45μmの有孔度を有するフィルターにより濾過した溶液;ポリスチレン標準によるムーア(Moore)較正;直列の3本“Waters”カラムセット(“Styragel” HR4E、HR1およびHR0.5);示差屈折計(“Waters 2410”)およびその関連操作ソフトウェア(“Waters Empower”)による検出。
【0067】
上記樹脂は、脂肪族、ナフテン系、芳香族または脂肪族/芳香族タイプであり得、即ち、脂肪族および/または芳香族モノマーをベースとし得る。これらの樹脂は、天然または合成であり得、さらに、石油系であり得るまたはあり得ない(そうであるある場合、石油樹脂の名称でも知られている)。これらの樹脂は、好ましくは、専ら炭化水素系である;即ち、これらの樹脂は、炭素原子および水素原子のみを含む。
【0068】
1つの特に好ましい実施態様によれば、上記炭化水素系可塑化用樹脂は、シクロペンタジエン(CPDと略記する)またはジシクロペンタジエン(DCPDと略記する)のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C5留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、およびこれらの樹脂の混合物によって形成される群から選ばれる。
特に、上記炭化水素系可塑化用樹脂のうちでは、α‐ピネン、β‐ピネン、ジペンテンまたはポリリモネン、C5留分の、例えば、C5留分/スチレンコポリマーまたはC5留分/C9留分コポリマーの樹脂類が挙げられ、これらの樹脂は、単独で、または、例えば、MESまたはTDAEオイルのような可塑化用オイルと組合せて使用し得る。
【0069】
また、これらの組成物は、カップリング剤以外に、カップリング活性化剤、無機充填剤の被覆用の薬剤、或いはゴムマトリックス中での充填剤の分散性の改善および組成物の粘度の低下のために、知られている通り、未硬化状態における組成物の加工能力を改善することのできるより一般的な加工助剤も含有し得る;これらの薬剤は、例えば、アルキルアルコキシシランのような加水分解性シラン類;ポリオール類;ポリエーテル類;第一級、第二級または第三級アミン類;または、ヒドロキシル化または加水分解性ポリオルガノシロキサン類である。
II‐6. ゴム組成物の製造
上記組成物は、適切なミキサー内で、例えば、当業者にとって周知の2つの連続する製造段階、即ち、110℃と190℃の間、好ましくは130℃と180℃の間の最高温度までの高温で熱機械的に加工または混練する第1段階(“非生産”段階と称する)、並びに、その後の典型的には110℃よりも低い、例えば、40℃と100℃の間の低めの温度で機械加工する第2段階(“生産”段階と称する)を使用して製造し、この仕上げ段階において架橋系を混入する。
【0070】
ゴム組成物を製造する本発明に従う方法は、下記の段階を含む:
‐ジエンエラストマー中に、第1段階(“非生産”段階と称する)において、少なくとも補強用充填剤、板状充填剤および金属塩を混入し、全てを、110℃と190℃の間の最高温度に達するまで熱機械的に混練する段階(例えば、1回以上の工程で);
‐混ぜ合せた混合物を100℃よりも低い温度に冷却する段階;
‐その後、第2段階(“生産”段階と称する)において、架橋系を混入する段階;
‐全てを110℃よりも低い最高温度まで混練する工程;
【0071】
例えば、上記非生産段階は、1回の熱機械的段階で実施し、その間に、最初の工程において、全ての必須ベース成分(ジエンエラストマー、補強用充填剤、10〜150phrの板状充填剤および0.01〜0.3phrの金属塩)を標準の密閉ミキサーのような適切なミキサー内に導入し、その後、例えば1〜2分間混練した後の第2の工程において、架橋系を除いた他の添加剤、必要に応じてのさらなる充填剤被覆剤または加工助剤を導入する。この非生産段階における総混練時間は、好ましくは、1分と15分の間である。
そのようにして得られた混合物を冷却した後、架橋系を、低温(例えば、40℃と100℃の間)に維持した開放ミルのような開放ミキサー内で混入する;その後、混ぜ合せた混合物を、数分間、例えば、2分と15分の間で混合する(生産段階)。
【0072】
架橋系自体は、好ましくは、イオウと、一次加硫促進剤、特に、スルフェンアミドタイプの促進剤とをベースとする。この加硫系に、各種既知の二次促進剤または加硫活性化剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、グアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)等を添加し、上記第1非生産段階中および/または上記生産段階中に混入する。イオウ含有量は、好ましくは0.5phrと10phrの間、より好ましくは1.5phrと8phrの間の量であり、また、一次促進剤の含有量は、好ましくは0.5phrと5.0phrの間の量である。
【0073】
(一次または二次)促進剤としては、イオウの存在下にジエンエラストマーの加硫促進剤として作用し得る任意の化合物、特に、チアゾールタイプの促進剤およびその誘導体、チウラムおよびジチオカルバミン酸亜鉛タイプの促進剤を使用することができる。これらの促進剤は、さらに好ましくは、2‐メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(“MBTS”と略記する)、N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド(“CBS”と略記する)、N,N‐ジシクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド(“DCBS”と略記する)、N‐tert‐ブチル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド(“TBBS”と略記する)、N‐tert‐ブチル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンイミド(“TBSI”と略記する)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(“ZBEC”と略記する)およびこれらの化合物の混合物によって形成される群から選ばれる。好ましくは、スルフェンアミドタイプの一次促進剤を使用する。
【0074】
その後、そのようにして得られた最終組成物を、例えば、特に実験室での特性決定のためのシートまたはスラブの形にカレンダー加工するか、或いは、押出加工して、例えば、タイヤの保護エラストマー層として使用することを意図するゴム形状要素を成形する。
【0075】
II‐7. 本発明のタイヤ
II‐7.a 定義
本出願においては、下記の定義を採用する:
‐“軸方向”:タイヤの回転軸に対して平行な方法;この方向は、タイヤの内部空洞に向って配向させる場合は“軸方向内側”に、また、タイヤの外側に向って配向させる場合は“軸方向外側”に配向させ得る;
‐“放射面”:タイヤの回転軸を含む面;
‐“ビード”:各側壁に半径方向内部で隣接しているタイヤの部分であって、この部分は取付け用リムと接触させることを意図する。
【0076】
‐“側壁”:各ビードをクラウンに連結させている部分;
‐“半径方向”:タイヤの回転軸を二等分し、回転軸に対して垂直な方向;この方向は、タイヤの回転軸に向ってまたはこの軸の外側に向って配向させるかどうかによって、“半径方向内側”にまたは“半径方向外側”に配向させ得る;
‐“補強材”または“補強要素”:モノフィラメントおよびマルチフィラメント或いはコード、合撚糸のようなアッセンブリまたは任意のタイプの等価のアッセンブリの双方;これら補強材の材料または処理(例えば、ゴムへの接着を促進するためのゴムコーティーングまたは事前サイズ処理のような表面積処理またはコーティーング)を問わない:
‐“半径方向に配向させた補強材”または“ラジアル補強材”:実質的に1つのもしくは同じ放射面内にまたは放射面と10度以下の角度をなす面内に含ませた補強材。
【0077】
II‐7.b 保護層
本発明の好ましい実施態様によれば、上記で説明したゴム組成物は、タイヤにおいて、タイヤの少なくとも1つの部品内の保護層として使用し得る。
ゴム保護“層”なる用語は、任意の形状および厚さを有するゴム(または“エラストマー”;これら2つの用語は同義であるとみなす)組成物の任意の三次元要素、特に、任意の、例えば、矩形または三角形断面を有するシート、ストリップまたは他の要素を意味するものと理解されたい。
【0078】
第一に、上記保護エラストマー層は、タイヤのクラウン内に、一方のトレッド、即ち、走行時に道路と接触することを意図する部分と他方の上記クラウンを補強するベルトとの間に置いた副層として使用し得る。この保護エラストマー層の厚さは、好ましくは、0.5から10mmまでの範囲内、特に1〜3mmの範囲内にある。
【0079】
本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、本発明に従う組成物は、半径方向でカーカス補強材とクラウン補強材との間のタイヤの肩部領域内に置いた環状の保護エラストマー層を形成するのに使用し得る。
本発明のもう1つの好ましい実施態様は、本発明に従う組成物の、カーカスプライに対して置いた保護エラストマー層を形成するための使用である。
添付図面1および2は、半径断面において、本発明に従うラジアルカーカス補強材を有するタイヤの2つの好ましい例を極めて略図的に示している(特に、特定の縮尺に対していない)。
【0080】
この図1においては、略図的に示しているタイヤ1は、トレッド3が上に存在するクラウン2、カーカス補強材6を固定している2つの非伸張性ビード4を含む。クラウン2は、2つの側壁5によって上記ビード4に連結しており、それ自体知られている通り、クラウン補強材即ち“ベルト”7によって補強されており、このベルトは、少なくとも部分的に金属であり且つカーカス補強材6に対して半径方向外側であって、2枚の重ね合せプライから形成されており、これらのプライの各々は、各プライ内で互いに並行であり且つ1枚のプライから次のプライに交差させている金属コードによって補強されている。
【0081】
カーカス補強材6は、この場合、各ビード4内に、ビードワイヤー4a、4bの周りに巻付けて各ビード内に上返し6a、6bを形成させることによって固定させている。タイヤ1は、この場合、そのリム9に取付けて示している。カーカス補強材6は、ラジアル繊維コードによって補強されている少なくとも1枚のプライから形成されている、即ち、これらのコードは、実際上、互いに平行に配置されて一方のビードから他方のビードに延びて円周正中面(2つのビード4の中間に位置しクラウン補強材7の中央を通るタイヤの回転軸に対して垂直の面)と80°と90°の間の角度をなしている。勿論、このタイヤ1は、知られている通り、タイヤの半径方向内面を形成し且つカーカスプライをタイヤ内部の空洞に由来する空気の拡散から保護することを意図する内部ライナー層(一般に、“内部ライナーとも称する)10をさらに含む。
【0082】
図1は、本発明の1つの可能な実施態様を例示しており、この実施態様によれば、保護エラストマー層8は、トレッドの真下(即ち、トレッドに対して半径方向内部)で且つベルトの上(即ち、ベルトに対して半径方向外側)に、換言すれば、トレッド3とベルト7の間に置かれている。
本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、例えば図2において示しているように、少なくとも1つの環状の保護エラストマー層8a、8bが、タイヤの肩部領域11において、カーカス補強材6とクラウン補強材7の外側部分の間で半径方向に置かれている。
【0083】
本発明のもう1つの実施態様によれば、保護エラストマー層は、カーカス補強材6に対して、特に、内部ライナー10とカーカス補強材6の間に、または、必要に応じて、カーカス補強材6の外側領域に配置し得る。
要するに、上記保護エラストマー層は、好ましくは、下記に位置するタイヤの少なくとも1つの領域に置く:
‐トレッド(3)とベルト(7)の間;または、
‐ベルト(7)とカーカス補強材(6)の間;または、
‐上記カーカス補強材に対して。
【0084】
その改良された酸素バリア特性故に、この保護エラストマー層は、以下のゴム試験において実証しているように、本発明のタイヤに、タイヤトレッドおよびタイヤ側壁に浸透し、タイヤベルトおよびタイヤカーカスプライに向って拡散し得る空気からの酸素の望ましくない作用に対する有効な保護を付与している。
【0085】
III. 本発明の典型的な実施態様
III‐1. 組成物の製造
以下の試験を以下の方法で実施する:ジエンエラストマー、補強用充填剤(シリカおよび/またはカーボンブラック)、シリカの存在下のカップリング剤、10〜150phrの板状充填剤および0.01〜0.3phrの金属塩、さらにまた、加硫系を除く各種他の成分を、初期容器温度がほぼ60℃である密閉ミキサーに連続して導入する(最終充填比:ほぼ70容量%)。その後、熱機械加工(非生産段階)を、165℃の最高“落下”温度に達するまで、全体でおよそ3〜4分間継続する1工程で実施する。
【0086】
そのようにして得られた混合物を回収し、冷却し、次いで、イオウとスルフェンアミドタイプの促進剤とを30℃のミキサー(ホモフィッシャー)内で混入し、混ぜ合せた混合物を適切な時間(例えば、5分と12分の間)で混合する(生産段階)。
そのようにして得られた組成物を、その物理的または機械的性質を測定するためのゴムのスラブ(2〜3mmの厚さ)または微細シートの形にカレンダー加工するか、或いは層の形に押出加工してタイヤを製造する。
III‐2. 試験
【実施例1】
【0087】
板状充填剤および金属塩を含むゴム組成物
この試験の目的は、本発明に従うタイヤ保護エラストマー層の3通りの組成物の酸素不透過性能における改良を、対照組成物と比較して証明することである。
このために、4通りのゴム組成物、即ち、本発明に従う3通りの組成物(以下、C1.2、C1.3およびC1.4で示す)と、アセチルアセトン酸鉄のみを含むが板状充填剤は含まない対照組成物(以下、C1.1で示す)を、前述したようにして製造した。
上記4通りの組成物は、天然ゴムおよびアセチルアセトン酸鉄を含む。また、本発明に従う組成物は、以下のいずれかの板状充填剤:粒径が20μm程度であるグラファイト(組成物C1.2)、または粒径がおよそ3μmであるグラファイト(組成物C1.3)、またはカオリン(組成物C.4)も、そして、組成物C1.2およびC1.3においては高Tg炭化水素系可塑化用樹脂も含む。
【0088】
可塑化用樹脂を含むまたは含まない本発明に従う組成物は、未硬化状態において、対照組成物C1.1よりも良好な加工性(低いムーニー粘度)を示している。
組成物C1.2〜C1.4の流動特性は、対照組成物C1.1と対比して、有意には変化していない。
硬化後、本発明に従う組成物C1.2、C1.3およびC1.4のMA10モジュラスは、全体的に見て、対照組成物C1.1のそれと等価であることが観察されている。
【0089】
最後に、また、何にもまして、金属塩および板状充填剤としてのグラファイトとカオリンをそれぞれ含む本発明に従う組成物C1.2、C1.3およびC1.4は、対照組成物C1.1の透過性よりもはるかに低い透過性を示していることに注目されたい。
さらにまた、これらの混合物の透過性のこの低下は、高Tg炭化水素系可塑化用樹脂も含む組成物C1.2およびC1.3においてより実質的である。
【実施例2】
【0090】
板状充填剤、金属塩および“高Tg”エラストマーを含むゴム組成物
この試験の目的は、本発明に従うタイヤ保護エラストマー層の3通りの組成物の酸素不透過性能における改良を、対照組成物と比較して証明することである。
このために、6通りのゴム組成物、即ち、本発明に従う5通りの組成物(以下、C2.2、C2.3、C2.4、C2.5およびC2.6で示す)と対照組成物(C2.1で示す)を、前述したようにして製造した。本発明に従う組成物は、組成物C1.2〜C1.4と比較して、組成物C2.3〜C2.6においてはスチレン/ブタジエンコポリマーである“高Tg”ジエンエラストマーを、組成物C2.2においてはエポキシ化天然ゴムをさらに含む。
【0091】
本発明に従う組成物は、未硬化状態において、対照組成物C2.1よりも良好な加工性(低いムーニー粘度)を示している。
組成物C2.4〜C2.6の流動特性は、対照組成物C2 .1と対比して、有意に影響を受けていない。組成物C2.2およびC2.3の流動特性は、タイヤにおけるその使用を可能にしている。
硬化後、本発明に従う組成物C2.2〜C2.6のMA10モジュラスは、全体的に見て、対照組成物C2.1のそれと等価であることが観察されている。
【0092】
何にもまして、金属塩、板状充填剤および高Tgエンエラストマーを含む本発明に従う組成物C2.2〜C2.6は、対照組成物C2.1透過性よりも、さらにまた、組成物C1.2〜C1.4よりもはるかに低い透過性を示している。
しかしながら、これらの組成物の透過性のこの低下は、モンモリロナイトタイプの板状充填剤を含む組成物C2.2およびC2.3においてより実質的である。
【0093】
表1

(1) 天然ゴム;
(2) カーボンブラック N683;
(3) アセチルアセトン酸鉄:CPAS社からのFe(Acac)3
(4) グラファイト1:Imerys社からの“TIMREX GB 99/6”天然グラファイト;
(5) グラファイト2:Imerys社からの“TIMREX GA 95/75”天然グラファイト;
(6) Imerys社からの天然カオリン“Kerbrient SP20”;
(7) Kolon社からのC5留分炭化水素系樹脂“Hikorez A1100”;
(8) ステアリン(stearine):Uniquema社からの“Pristerene”;
(9) 酸化亜鉛 (工業級、Umicore社);
(10) イオウ;
(11) N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド (Flexsys社からのSantocure CBS);
(12) N‐1,3‐ジメチルブチル‐N‐フェニル‐パラ‐フェニレンジアミン (Flexsys社からのSantoflex 6‐PPD)。
【0094】
表2

【0095】
表3

【0096】
表4

(1) 天然ゴム;
(2) カーボンブラック N683;
(3) エポキシ化天然ゴム:“ENR‐25”(Guthrie Polymer社);
(4) SBRコポリマー溶液:24%の1,2‐ビニル、41%のスチレン、50%のトランス‐1,4‐ポリブタジエン、26%のシス‐1,4‐ブタジエン (Tg = −25℃);
(5) アセチルアセトン酸鉄:CPAS社からのFe(Acac)3
(6) モンモリロナイト:Southern Clay社からの“Cloisite 20A”
(7) グラファイト1:Imerys社からの“TIMREX GB 99/6”;
(8) グラファイト2:Imerys社からの“TIMREX GA 95/75”天然グラファイト;
(9) Imerys社からの天然カオリン“Kerbrient SP20”;
(10) Kolon社からのC5留分炭化水素系樹脂“Hikorez A1100”;
(11) ステアリン(stearine):Uniquema社からの“Pristerene”;
(12) 酸化亜鉛 (工業級、Umicore社);
(13) イオウ;
(14) N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド (Flexsys社からのSantocure CBS);
(15) N‐1,3‐ジメチルブチル‐N‐フェニル‐パラ‐フェニレンジアミン (Flexsys社からのSantoflex 6‐PPD)。
【0097】
表5

【0098】
表3

【符号の説明】
【0099】
1 タイヤ
2 クラウン
3 トレッド
4 ビード
4a、4b ビードワイヤー
5 側壁
6 カーカス補強材
6a、6b ビードワイヤーの上返し
7 クラウン補強材(ベルト)
8、8a、8b 保護エラストマー層
9 リム
10 内部ライナー
11 タイヤの肩部領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともジエンエラストマー、補強用充填剤および架橋系をベースとし、少なくとも下記を含むことを特徴とするゴム組成物:
・10〜150phrの板状充填剤;および、
・0.01〜0.3phrの金属塩。
【請求項2】
前記ジエンエラストマーが、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーのブレンドからなる群の中から選ばれる、請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
板状充填剤の含有量が、20〜100phrの範囲内である、請求項1または2記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記板状充填剤が、グラファイト、フィロケイ酸塩およびそのような充填剤の混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜3に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記板状充填剤が、グラファイト粒子を含む、請求項4記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記板状充填剤が、フィロケイ酸塩粒子を含む、請求項4記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記板状充填剤が、スメクタイト、カオリン、タルク、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイトおよびそのようなフィロケイ酸塩の混合物からなる群の中から選ばれるフィロケイ酸塩粒子を含む、請求項6記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記板状充填剤が、界面活性剤で有機変性されているモンモリロナイト粒子を含む、請求項7記載のゴム組成物。
【請求項9】
金属塩が、第1系列、第2系列および第3系列の遷移金属;ランタニド類;およびそのような塩の混合物からなる群の中から選ばれる、請求項1〜8のいずれか1項記載のゴム組成物。
【請求項10】
金属塩が、鉄塩である、請求項9記載のゴム組成物。
【請求項11】
前記鉄塩が、アセチルアセトン酸鉄である、請求項10記載のゴム組成物。
【請求項12】
Tgが20℃よりも高い炭化水素系可塑化用樹脂をさらに含む、請求項1〜11に記載のゴム組成物。
【請求項13】
前記炭化水素系可塑化用樹脂の含有量が、1〜20phrである、請求項12記載のゴム組成物。
【請求項14】
前記補強用充填剤が、カーボンブラックおよび/またはシリカを含む、請求項1〜13記載のゴム組成物。
【請求項15】
補強用充填剤の量が、10〜200phrの範囲内である、請求項1〜14のいずれか1項記載のゴム組成物。
【請求項16】
ガラス転移温度(Tg)が−35℃よりも高い“高Tg”エラストマーをさらに含む、請求項1〜15のいずれか1項記載のゴム組成物。
【請求項17】
前記“高Tg”エラストマーが、SBRおよびエポキシ化天然ゴムおよびこれらのエラストマーのブレンドからなる群の中から選ばれる、請求項16記載のゴム組成物。
【請求項18】
“高Tg”エラストマーの含有量が、0〜80phrの範囲内である、請求項16および17のいずれか1項記載のゴム組成物。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項記載のゴム組成物の、ゴム物品における酸素バリア層としての使用。
【請求項20】
前記ゴム物品が、タイヤである。請求項19記載の使用。
【請求項21】
請求項1〜18のいずれか1項記載のゴム組成物を含むタイヤ。
【請求項22】
トレッド(3)が上に存在するクラウン(2)、2本の非伸張性ビード(4)、ビード(4)をトレッド(3)に連結させている2つの側壁(5)、2つの側壁(5)内を通ってビード(4)内に固定されているカーカス補強材(6)を含み、前記クラウン(2)がカーカス補強材(6)とトレッド(3)の間に置かれたクラウン補強材即ちベルト(7)によって補強されている自動車用ラジアルタイヤ(1)において、
請求項1〜18のいずれか1項記載のゴム組成物を含む少なくとも1つの保護エラストマー層を、下記に位置する前記タイヤの少なくとも1つの領域に設置することを特徴とする前記自動車用ラジアルタイヤ:
‐トレッド(3)とベルト(7)の間;または、
‐ベルト(7)とカーカス補強材(6)の間;または、
‐前記カーカス補強材に対して。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−522092(P2012−522092A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502645(P2012−502645)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054226
【国際公開番号】WO2010/112515
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】