説明

ゴム組成物

【課題】従来よりも短時間の混練時間で、硬度、柔軟性、耐磨耗性のバランスに優れたゴム組成物を提供する。
【解決手段】共役ジエン系化合物が変性された変性共役ジエン系重合体(A)を5〜95質量%、芳香族ビニル化合物の含有量が40質量%以上の共役ジエン系化合物と芳香族ビニル系化合物とからなる共役ジエン系共重合体(B)を95〜5質量%、含有する重合体組成物:100質量部と、
無機充填材(C):1〜150質量部と、
を、含有するゴム組成物であり、
前記変性共役ジエン系重合体(A)が、下記の(1)〜(3)の条件を満たすゴム組成物を提供する。
(1)前記変性共役ジエン系重合体が、アミノ基とアルコキシシリル基とを分子内に有する化合物で変性されている。
(2)シリカ粒子充填カラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー測定のカラムへの吸着量によって求められる変性率が70質量%以上である。
(3)100℃で測定したムーニー粘度が45〜95である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種ゴム素材についての開発がなされており、かかるゴム素材は履物用途をはじめとする各種ゴム製品に加工されている。
これらのゴム素材を用いた加工品には、ゴム素材本来の特性を発揮するとともに、用途に応じて要求される各種特性を付与し、又は改良を図るために、各種の充填材、添加剤、着色剤、補強剤等を配合したゴム組成物が用いられている。
具体的には、補強性を付与するために、充填材としてカーボンブラックが配合されている等である。
【0003】
一方、要求されるゴム製品が黒色以外の場合には、カーボンブラックに替えて、シリカ等を配合したものが知られている。
しかしながら、シリカを補強充填材としたゴム組成物は、下記のような課題を有している。
例えば、シリカはカーボンブラックに比較してゴムとの親和性が低いため、ゴム中への分散性が必ずしも良好ではないため、分散性不良により耐摩耗性や強度特性が不足しがちである。
【0004】
シリカの分散性の改良を図るために、従来においては、分子中にエポキシ基を持つ多官能化合物を反応させて変性重合体を合成し、これを含有する履物用組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、特定のゴム状重合体と無機充填材とを混合することにより、無機充填材が微分散し透明で耐摩耗性の向上が図られたゴム組成物とその製造方法についての提案もなされている(例えば、特許文献2参照。)。
また、変性重合体と所定量の無機充填材とを予め混合しておき、それを残りの無機充填材と混合することにより、分散性の良好な組成物を得る製造方法の開示もなされている(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
また、より一層、シリカ等の無機充填材との相互作用が強いゴム組成物を得る目的で、特定のアミノ基とアルコキシシリル基で変性された種々の構造のスチレン−ブタジエン(共)重合体についての提案がなされている。例えば、3級アミノ基とアルコキシシリル基が導入されたジエン系ゴム(例えば、特許文献4、5参照。)、1級のアミノ基とアルコキシシリル基とを有する変性重合体(例えば、特許文献6参照。)が挙げられる。
これらの変性重合体は、シリカとの相互作用が強く、シリカがゴム中へ微細に分散し、かつ、ゴムと直接に化学結合することにより優れた性能が発現されているため、例えば自動車タイヤのトレッド部材に使用した場合には、ブレーキ性能、転がり抵抗性能等の改良が効果的に図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−284931号公報
【特許文献2】国際公開第2003/091327号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2003/085010号パンフレット
【特許文献4】特開平7−233217号公報
【特許文献5】国際公開第2003/087171号パンフレット
【特許文献6】特開2004−18795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている組成物は、従来の変性重合体からなる組成物に比べて耐摩耗性、防滑性能についての改良は図られているが、その性能を十分に発現させるためには、一定時間以上の、比較的長時間の混練を要するものである。
また、特許文献2、3に開示されているゴム組成物は、無機充填材が微分散し、透明で耐摩耗性に優れているものであるが、その性能を十分に発現させるためには、やはり一定時間以上の、比較的長時間の混練を要するものである。
さらに、特許文献4〜6に開示されている技術においては、組成物の混練時間について改良することについての検討はなされていない。
【0009】
一方、スポーツシューズ等の靴底の材料の製造工程においては、無機充填材をゴム組成物中に微細に分散させるために、先ず1回目の混練工程において、ゴムと無機充填材とを予め混合しておき、続いて2回目の混練工程において、前記混練物と各種の化学薬品とを混練する方法が一般的に実施されている。
特に1回目の混練工程は、無機充填材の分散を良好にするために重要であり、充分に分散を行うためには、一定の所要時間以上を要するものとされている。
この混練時間が短い場合には、無機充填材の分散が不充分なものとなり、硬度の上昇や反発弾性の低下等、履物に要求される性能が発現しないという問題を生じる。
また、近年においては、世界的に工程の省力化が要求されており、可能な限り混練加工時間を短縮化する方法が、加工機の性能を向上させたり、配合の工夫等を行ったりすることによって試行されている。
そこで本発明においては、従来よりも混練時間を短縮化可能で、実用上十分な硬度を有し、柔軟性に優れ、適度な反発弾性を有し、履物用途においては履き心地が良好なものとなり、所望の耐摩耗性をも有するゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決するべく、鋭意研究を行った結果、特定の構造を有するポリマーを用いることによって、目的が達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0011】
〔1〕
共役ジエン系化合物が変性された変性共役ジエン系重合体(A)を5〜95質量%、芳香族ビニル化合物の含有量が40質量%以上の共役ジエン系化合物と芳香族ビニル系化合物とからなる共役ジエン系共重合体(B)を95〜5質量%、含有する重合体組成物:100質量部と、
無機充填材(C):1〜150質量部と、
を、含有するゴム組成物であり、
前記変性共役ジエン系重合体(A)が、下記の(1)〜(3)の条件を満たすゴム組成物。
(1)前記変性共役ジエン系重合体が、アミノ基とアルコキシシリル基とを分子内に有する化合物で変性されている。
(2)シリカ粒子充填カラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー測定のカラムへの吸着量によって求められる変性率が70質量%以上である。
(3)100℃で測定したムーニー粘度が45〜95である。
【0012】
〔2〕
前記変性共役ジエン系重合体(A)が、共役ジエン系化合物の末端が変性された変性共役ジエン系重合体である前記〔1〕に記載のゴム組成物。
【0013】
〔3〕
前記アミノ基とアルコキシシリル基とを分子内に有する化合物が、下記式(1)又は下記式(2)で表される化合物である前記〔1〕又は〔2〕に記載のゴム組成物。
【0014】
【化1】

【0015】
前記式(1)中、R1、R2は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基である。
3は、炭素数1〜20のアルキレン基である。
4、R5は、同一であっても異なっていてもよい、炭素数1〜6の炭化水素基であって隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなす。
6は、炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、3有機置換シリル基からなる群から選ばれるいずれかである。
mは、2又は3の整数である。
【0016】
【化2】

【0017】
前記式(2)中、R1、R2は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基である。
3は、炭素数1〜20のアルキレン基である。
4、R5は、同一であっても異なっていてもよい、炭素数1〜6の炭化水素基であって隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなす。
6は、炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、3有機置換シリル基からなる群から選ばれるいずれかである。
mは、2又は3の整数である。
7は、炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、3有機置換シリル基からなる群から選ばれるいずれかである。
【0018】
〔4〕
前記変性共役ジエン系重合体(A)が、変性ポリブタジエンである前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のゴム組成物。
【0019】
〔5〕
共役ジエン系化合物を、アミノ基とアルコキシシリル基とを分子内に有する化合物により変性し、変性共役ジエン系重合体(A)を得る工程と、
前記変性共役ジエン系重合体(A)を5〜95質量%、芳香族ビニル化合物の含有量が40質量%以上の共役ジエン系化合物と芳香族ビニル系化合物とからなる共役ジエン系共重合体(B)を95〜5質量%、含有する重合体組成物を得る工程と、
前記重合体組成物:100質量部と、無機充填材(C):1〜150質量部とを混合する工程と、
を、含むゴム組成物の製造方法であって、
前記変性共役ジエン系重合体(A)が、下記の(1)〜(3)の条件を満たすものであるゴム組成物の製造方法。
(1)変性共役ジエン系重合体が、アミノ基とアルコキシシリル基とを分子内に有する化合物で変性されている。
(2)シリカ粒子充填カラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー測定のカラムへの吸着量によって求められる変性率が70質量%以上である。
(3)100℃で測定したムーニー粘度が45〜95である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、実用上十分な硬度を有し、履物用途においては履き心地に優れ、柔軟性、耐磨耗性のバランスに優れたゴム組成物が、従来よりも混練時間を短時間とした場合においても得られる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について説明するが、本発明は以下に示す形態に限定されるものではない。
【0022】
〔ゴム組成物〕
本実施形態のゴム組成物は、
共役ジエン系化合物が変性された変性共役ジエン系重合体(A)を5〜95質量%、芳香族ビニル化合物の含有量が40質量%以上の共役ジエン系化合物と芳香族ビニル系化合物とからなる共役ジエン系共重合体(B)を95〜5質量%、含有する重合体組成物:100質量部と、
無機充填材(C):1〜150質量部と、
を、含有するゴム組成物であり、
前記変性共役ジエン系重合体(A)が、下記の(1)〜(3)の条件を満たすゴム組成物である。
(1)前記変性共役ジエン系重合体が、アミノ基とアルコキシシリル基とを分子内に有する化合物で変性されている。
(2)シリカ粒子充填カラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー測定のカラムへの吸着量によって求められる変性率が70質量%以上である。
(3)100℃で測定したムーニー粘度が45〜95である。
【0023】
((A)変性共役ジエン系重合体)
変性共役ジエン系重合体(A)は、共役ジエン化合物からなる共役ジエン系重合体を、後述するアミノ基とアルコキシシリル基とを分子内に有する化合物で変性した重合体である。
【0024】
変性共役ジエン系重合体(A)を構成する共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、1,3−ブタジエンが好ましい。
【0025】
変性共役ジエン系重合体(A)は、炭化水素溶媒中において、アルカリ金属系開始剤又はアルカリ土類金属系開始剤を用い、共役ジエン化合物を重合させ、その後、分子中にアミノ基とアルコキシシリル基とを有する化合物を反応させることにより得られる。
前記アルカリ金属系開始剤又はアルカリ土類金属系開始剤としては、重合開始の能力がある全てのアルカリ金属系開始剤又はアルカリ土類金属系開始剤が使用可能である。特に、有機リチウム化合物が好ましい。
【0026】
変性共役ジエン系重合体(A)は、変性前においては、特にリビングアニオン重合による成長反応によって得られる活性末端を有する重合体であることが好ましい。
変性共役ジエン系重合体(A)は、その変性前の重合体末端を、分子中にアミノ基とアルコキシシリル基とを有する化合物で変性したものであることが好ましい。
共役ジエン系重合体を変性する変性剤としては、下記一般式(1)、(2)で表される、2つ以上の窒素原子を含む環状アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシランや、その他の環状アミン、非環状アミン、イミン、イソシアネート等の官能基を含有するヒドロカルビルオキシシラン、環状アザシランが使用できる。
【0027】
【化3】

【0028】
前記式(1)中、R1、R2は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基である。
3は、炭素数1〜20のアルキレン基である。
4、R5は、同一であっても異なっていてもよい、炭素数1〜6の炭化水素基であって隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなす。
6は、炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、3有機置換シリル基からなる群から選ばれるいずれかである。
mは、2又は3の整数である。
【0029】
【化4】

【0030】
前記式(2)中、R1、R2は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基である。
3は、炭素数1〜20のアルキレン基である。
4、R5は、同一であっても異なっていてもよい、炭素数1〜6の炭化水素基であって隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなす。
6は、炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、3有機置換シリル基からなる群から選ばれるいずれかである。
mは、2又は3の整数である。
7は、炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、3有機置換シリル基からなる群から選ばれるいずれかである。
【0031】
前記式(1)で表される環状アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシランの具体例を下記に示す。
例えば、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−3−メチルイミダゾリジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)プロピル]−3−エチルイミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、3−[3−(トリブトキシシリル)プロピル]−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、3−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]−1−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、1−(2−エトキシエチル)−3−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、(2−{3−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]テトラヒドロピリミジン−1−イル}エチル)ジメチルアミン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1−[3−(トリブトキシシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)プロピル]−3−(トリエチルシリル)イミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)イミダゾリジン、1−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)ヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)ヘキサヒドロピリミジン、1−[4−(トリエトキシシリル)ブチル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン等が挙げられる。
これらの中でも、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−3−メチルイミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)イミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)ヘキサヒドロピリミジンが好ましく用いられ、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジンが好ましい。
【0032】
前記式(2)で表される環状アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシランの具体例を下記に示す。
例えば、2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(ジエトキシエチルシリル)−1,3−ジエチルイミダゾリジン、2−(トリエトキシシリル)―1,4−ジエチルピペラジン、2−(ジメトキシメチルシリル)−1,4−ジメチルピペラジン、5−(トリエトキシシリル)−1,3−ジプロピルヘキサヒドロピリミジン、5−(ジエトキシエチルシリル)−1,3−ジエチルヘキサヒドロピリミジン、{2−[3−(2−ジメチルアミノエチル)−2−(エチルジメトキシシリル)−イミダゾリジン−1−イル]−エチル}−ジメチルアミン、5−(トリメトキシシリル)−1,3−ビス−(2−メトキシエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、5−(エチルジメトキシシリル)−1,3−ビス−(2−トリメチルシリルエチル)−ヘキサヒドロピリミジンル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(3−ジエトキシエチルシリル−プロピル)−1,3−ジエチルイミダゾリジン、2−(3−トリエトキシシリル−プロピル)−1,4−ジエチルピペラジン、2−(3−ジメトキシメチルシリル−プロピル)−1,4−ジメチルピペラジン、5−(3−トリエトキシシリル−プロピル)−1,3−ジプロピルヘキサヒドロピリミジン、5−(3−ジエトキシエチルシリル−プロピル)−1,3−ジエチルヘキサヒドロピリミジン、{2−[3−(2−ジメチルアミノエチル)−2−(3−エチルジメトキシシリル−プロピル)−イミダゾリジン−1−イル]−エチル}−ジメチルアミン、5−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−1,3−ビス−(2−メトキシエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、5−(3−エチルジメトキシシリル−プロピル)−1,3−ビス−(2−トリメチルシリルエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,3−ビス(トリメチルシリル)イミダゾリジン、2−(ジエトキシエチルシリル)−1,3−ビス(トリエチルシリル)イミダゾリジン、2−(トリエトキシシリル)−1,4−ビス(トリメチルシリル)ピペラジン、2−(ジメトキシメチルシリル)−1,4−ビス(トリメチルシリル)ピペラジン、5−(トリエトキシシリル)−1,3−ビス(トリプロピルシリル)ヘキサヒドロピリミジン等が挙げられる。
これらの中でも、2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,3−(ビストリメチルシリル)イミダゾリジンが好ましい。
【0033】
変性剤として用いられる、アミノ基とアルコキシシリル基とを分子内に有する化合物であって、前記式(1)、(2)で表される化合物以外の、環状アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシランの具体例を下記に示す。
例えば、[3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチル]トリエトキシシラン、[2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチル]トリメトキシシラン、[3−(1−ピロリジニル)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(1−ピロリジニル)プロピル]トリメトキシシラン、[3−(1−ヘプタメチレンイミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(1−ドデカメチレンイミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル]ジエトキシメチルシラン、[3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル]ジエトキシエチルシラン等が挙げられる。
【0034】
変性剤として用いられる、アミノ基とアルコキシシリル基とを分子内に有する化合物であって、非環状アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシランの具体例を下記に示す。
例えば、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[2−(ジメチルアミノ)エチル]トリエトキシシラン、[2−(ジメチルアミノ)エチル]トリメトキシシラン、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]ジエトキシメチルシラン,[3−ジブチルアミノプロピル]トリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン及びN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0035】
変性剤として用いられる、アミノ基とアルコキシシリル基とを分子内に有する化合物であって、イミノ基を含有するヒドロカルビルオキシシランの具体例を下記に示す。
例えば、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−イソプロポキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−メチルジエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール等が挙げられる。
【0036】
変性剤として用いられる、アミノ基とアルコキシシリル基とを分子内に有する化合物であって、イソシアネート基を有するヒドロカルビルオキシシランの具体例を下記に示す。
例えば、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリイソプロポキシシラン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0037】
変性剤として用いられる、アミノ基とアルコキシシリル基とを分子内に有する化合物であって、環状アザシラン化合物の具体例を下記に示す。
例えば、N−n−ブチル−アザ−2,2−ジメトキシシラシクロペンタン、N−エチル−アザ−2,2−ジエトキシ−4−メチルシラシクロペンタン、N−アリル−アザ−2,2−ジメトキシシラシクロペンタン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン等が挙げられる。
【0038】
上述した変性剤の中でも、上記式(1)又は式(2)で表される化合物が好ましく、特に、上記式(1)で表される化合物が好ましい。
これらの変性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
本実施形態のゴム組成物を加硫物とした場合において、実用上十分な特性を発揮するためには、変性共役ジエン系重合体(A)中の官能基成分を有する重合体の含有量、すなわち変性率は70質量%以上であるものとし、86質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
官能基成分を有する重合体の含有量、すなわち変性率は、官能基含有の変性成分と非変性成分とを分離できるクロマトグラフィーにより測定される。
このクロマトグラフィーによる測定方法としては、官能基成分を吸着するシリカ等の極性物質を充填剤としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)カラムを使用し、非吸着成分の内部標準を比較に用いて定量する方法が適用される。
【0040】
変性共役ジエン系重合体(A)は、共役ジエン化合物を重合させて重合体とし、この重合体と、上述した変性剤である化合物とを反応させる前又は後に、所定の多官能性変性剤を反応させてもよい。
多官能性変性剤としては、シリカとの親和性の大きい官能基を有するものが好ましく、分子中にアミノ基を含むグリシジル化合物、更には1分子中にジグリシジルアミノ基を2個又は3個有する化合物が好ましい。例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等が挙げられる。これらの多官能性変性剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これにより、本実施形態のゴム組成物のコールドフロー性が改善される。
【0041】
変性共役ジエン系重合体(A)の、100℃で測定されたムーニー粘度(ML1+4(100℃))は、45〜95の範囲である。
ムーニー粘度が45未満の場合は、本実施形態のゴム組成物の強度及び耐摩耗性能が低下し、95を超える場合は、加工性能が極端に低下し、充填材の分散不良が起こり、所望の性能を発現することが困難となる。
100℃で測定されたムーニー粘度は50〜80の範囲が好ましい。
【0042】
本実施形態のゴム組成物を特に履物の底材として利用する場合には、前記変性共役ジエン系重合体(A)として、変性ポリブタジエンが好適である。変性ポリブタジエンを多く配合することにより、優れた耐摩耗性、柔軟性を有するゴム組成物が得られる。
【0043】
((B)共役ジエン系共重合体)
本実施形態のゴム組成物を構成する(B)共役ジエン系共重合体は、芳香族ビニル化合物の含有量が40質量%以上の共役ジエン系化合物と芳香族ビニル系化合物とからなるものである。
共役ジエン系共重合体(B)としては、例えば、乳化重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−イソプレン共重合ゴム、溶液重合ランダムスチレン−ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、乳化重合ランダムスチレン−ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、乳化重合スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、高ビニルSBR−低ビニルSBRブロック共重合ゴム、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体等のような、ブロック共重合体等が挙げられる。特に、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム好ましい。
芳香族ビニル化合物の含有量を40質量%以上とすることにより、本実施形態のゴム組成物の耐摩耗性と強度とのバランスが良好なものとなる。
また、共役ジエン系共重合体(B)に、少量の芳香族ビニル化合物のブロック結合を導入することにより、本実施形態のゴム組成物の耐磨耗性と強度のバランスをさらに向上させることができる。協約ジエン系共重合体(B)中の芳香族ビニル化合物のブロック結合量は3〜20質量%が好ましい。
さらに、共役ジエン系共重合体(B)は、その末端が変性されていることが好ましい。
末端変性剤としては、シリカと反応性の高い化合物であれば特に限定されないが、アミノ基とアルコキシシリル基とを分子内に有する化合物で変性されている構成とすることにより、本実施形態のゴム組成物の耐磨耗性の向上がより一層図られる。
なお、これらは要求特性に応じて適宜選択できる。
【0044】
((C)無機充填材)
本実施形態のゴム組成物に含有される(C)無機充填材としては、従来公知の材料が適用できる。具体的には、炭酸カルシウム、クレー、タルク、けい藻土、雲母、アルミナ、硫酸アルミ、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、カーボンブラック、シリカ等が挙げられる。特にシリカが好ましい。シリカの種類としては、湿式法シリカ、乾式法シリカ、合成ケイ酸塩系シリカのいずれも使用できる。上記無機充填材は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
無機充填材としてシリカを用いる場合、有機シランカップリング剤を併用することが好ましい。有機シランカップリング剤は、シリカと原料ゴムとの結合をより強固にするために、好ましくはシリカの0.1〜20質量%を使用できる。有機シランカップリング剤の量が、0.1質量%より少ないと配合効果が得られず、20質量%を超えると補強性が損なわれる。有機シランカップリング剤の量は、より好ましくシリカの添加量の0.1〜6質量%である。
有機シランカップリングとしては、例えば、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド等が挙げられる。
【0045】
本実施形態のゴム組成物において、上述した無機充填材(C)の配合割合は、上述した(A)変性共役ジエン系共重合体を5〜95質量%、上述した(B)共役ジエン系共重合体を95〜5質量%含む重合体組成物:100質量部に対し、1〜150質量部であり、好ましくは10〜100質量部であり、より好ましくは20〜80質量部である。
無機充填材(C)の配合割合が、前記重合体組成物100質量部に対し、1質量部未満であると配合効果が得られず、150質量部を超えると加工性の低下、耐摩耗性の低下を招来する。
【0046】
(その他の添加剤)
本実施形態のゴム組成物は、上述した変性共役ジエン系重合体(A)、共役ジエン系共重合体(B)、無機充填材(C)、並びに必要に応じて配合されるシランカップリング剤に加えて、加硫化剤、架橋剤、架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、スコーチ防止剤、難燃剤等の一般ゴム用に各種目的のために配合されている各種添加剤を、適宜選択して配合できる。これらの添加剤は、これらの添加剤における従来の一般的な配合量で配合できる。
【0047】
〔ゴム組成物の製造方法〕
本実施形態のゴム組成物は、上述した共役ジエン系化合物を、アミノ基とアルコキシシリル基とを分子内に有する化合物により変性し、変性共役ジエン系重合体(A)を得る工程と、
前記変性共役ジエン系重合体(A)を5〜95質量%、芳香族ビニル化合物の含有量が40質量%以上の共役ジエン系化合物と芳香族ビニル系化合物とからなる共役ジエン系共重合体(B)を95〜5質量%、含有する重合体組成物を得る工程と、
前記重合体組成物100質量部と、無機充填材(C)1〜150質量部と、を混合する工程とにより得られる。
なお、前記変性共役ジエン系重合体(A)は、下記の(1)〜(3)の条件を満たすものとする。
(1)変性共役ジエン系重合体が、アミノ基とアルコキシシリル基とを分子内に有する化合物で変性されている。
(2)シリカ粒子充填カラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー測定のカラムへの吸着量によって求められる変性率が70質量%以上である。
(3)100℃で測定したムーニー粘度が45〜95である。
なお、本実施形態のゴム組成物を製造する工程において、上述した変性共役ジエン系重合体(A)、共役ジエン系共重合体(B)、無機充填材(C)の混合を行う際には、必要に応じてシランカップリング剤、さらには上述した各種添加剤を加え、例えば、バンバリーミキサー、加熱ロール、各種ニーダー、単軸押出機、二軸押出機等の溶融混練機を用い、各成分を均一に混練し、必要に応じて加硫化又は架橋を行うことができる。
【0048】
〔ゴム組成物の用途〕
本実施形態のゴム組成物は、履物用途としては、例えば、ジョギングシューズ、テニスシューズ、バスケットボールシューズ、バレーボールシューズ等のスポーツシューズや、岩場等で使用するトレッキングシューズ、釣り用の長靴、ダイビング用シューズ、バイク用シューズ、お風呂靴、レインシューズ、ビーチサンダル等の靴のアウトソールに好適に使用できる。
その他、各種自動車部品、タイヤ用ゴム、工業用品等としても利用できる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例と、比較例を挙げて具体的に説明する。
実施例及び比較例に適用した、物性の測定方法、評価方法について下記に示す。
【0050】
〔(1)ブタジエン1,2結合量〕
測定用の試料を二硫化炭素溶液とし、溶液セルを用いて赤外線スペクトルを600〜1000cm-1の範囲で測定して、所定の吸光度よりハンプトンの方法の計算式に従い、ブタジエン部分のミクロ構造を求め、ブタジエン1,2結合量を求めた。
IRスペクトル分析装置としては「日本分光製:FT−IR230」を用いた。
【0051】
〔(2)ムーニー粘度〕
ムーニー粘度計を使用し、JIS K 6300により、100℃で、予熱1分、2回転4分後の粘度を測定した。
【0052】
〔(3)変性率〕
シリカ系ゲルを充填材としたGPCカラムに、変性した成分が吸着する特性を応用し、試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液に関して、ポリスチレン系ゲル(昭和電工製:Shodex)のGPC(東ソー製:HLC−8020)と、シリカ系カラム(デュポン社製:Zorbax)GPC(東ソー製:カラムオーブン;CO−8020、検出器;RI−8021)の両クロマトグラムを測定し、それらの差分よりシリカカラムへの吸着量を測定し、変性率を求めた。
【0053】
〔(4)結合スチレン量〕
測定用の試料をクロロホルム溶液とし、島津製作所製:UV−2450を用いて、スチレンのフェニル基によるUV254nmの吸収により結合スチレン量(質量%)を測定した。
【0054】
〔(5)スチレンブロック結合量〕
秤量した測定用の試料をクロロホルムに溶解し、ターシャリーブチルヒドロペルオキシドとオスミウムテトラオキシドを添加した後、攪拌しながら80℃湯浴中で15分間分解した後、その分解溶液に10倍容量のメタノールを添加して生成沈殿物を濾別した。
その生成沈殿物をクロロホルムで溶解希釈し、UV計を用いて吸光度を測定し、下記式からスチレンブロック結合量を求めた。
スチレンブロック結合量(質量%)=(F)×(吸光度)×100/測定用の試料の重量
((F)は検量線より求めた係数である。)
【0055】
〔後述する実施例1〜3、比較例1〜4で用いた変性共役ジエン系共重合体(A)の製造〕
(試料Aの製造方法)
内容積10リットルの撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したブタジエン800g、シクロヘキサン4400gを反応器に入れ、反応器内の温度を60℃に保持した。
重合開始剤としてn−ブチルリチウムを、リチウム添加量として6.25mmolとなるように反応器へ供給した。
反応開始後、重合による発熱で、反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は80℃に達した。
重合反応終了後、反応器に、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジンを3.125mmol添加して、80℃の温度条件で10分間の変性反応を実施した。
この重合体溶液に、酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール:BHT)4.8gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するブタジエン共重合体(試料A)を得た。
(試料A)を分析した結果、重合体のムーニー粘度は51であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は16%であり、シリカ系吸着カラムを用いるGPCから求めた変性率は88%であった。
【0056】
(試料Bの製造方法)
変性剤として、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシランを用いた。
その他の条件は、上述した(試料A)と同様の条件で反応を行い、変性共役ジエン系共重合体(試料B)を得た。
(試料B)を分析した結果、重合体のムーニー粘度は50であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は15%であり、シリカ系吸着カラムを用いるGPCから求めた変性率は87%であった。
【0057】
(試料Cの製造方法)
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したブタジエン800g、シクロヘキサン4400gを反応器に入れ、反応器内の温度を60℃に保持した。
重合開始剤としてn−ブチルリチウムをリチウム添加量として6.25mmolとなるように反応器へ供給した。
反応開始後、重合による発熱で、反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は80℃に達した。
重合反応終了後、反応器に1,3−ビス(N,N‘−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンを2.343mmol添加して、80℃の温度条件で10分間の変性反応を実施した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール:BHT)4.8gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するブタジエン共重合体(試料C)を得た。
(試料C)を分析した結果、重合体のムーニー粘度は53であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は18%であり、シリカ系吸着カラムを用いるGPCから求めた変性率は87%であった。
【0058】
(試料Dの製造方法)
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したブタジエン800g、シクロヘキサン4400gを反応器に入れ、反応器内の温度を70℃に保持した。
重合開始剤としてn−ブチルリチウムをリチウム添加量として6.25mmolとなるように反応器へ供給した。
反応開始後、重合による発熱で、反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は95℃に達した。
重合反応終了後、反応器に1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジンを3.125mmol添加して、95℃の温度条件で30分間の変性反応を実施した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール:BHT)4.8gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するブタジエン共重合体(試料D)を得た。
(試料D)を分析した結果、重合体のムーニー粘度は52であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は15%であり、シリカ系吸着カラムを用いるGPCから求めた変性率は66%であった。
【0059】
(試料Eの製造方法)
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したブタジエン800g、シクロヘキサン4400gを反応器に入れ、反応器内の温度を60℃に保持した。
重合開始剤としてn−ブチルリチウムをリチウム添加量として5.00mmolとなるように反応器へ供給した。
反応開始後、重合による発熱で、反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は80℃に達した。
重合反応終了後、反応器に1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジンを2.500mmol添加して、80℃の温度条件で10分間の変性反応を実施した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール:BHT)4.8gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するブタジエン共重合体(試料E)を得た。
(試料E)を分析した結果、重合体のムーニー粘度は110であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は16%であり、シリカ系吸着カラムを用いるGPCから求めた変性率は87%であった。
【0060】
(試料Fの製造方法)
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用した。
不純物を除去したブタジエン575g、スチレン510g、n−ヘキサン4800g、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン0.19gを反応器へ入れ、反応器内温を50℃に保持した。
その後、重合開始剤としてn−ブチルリチウム10.2mmolを反応器に供給した。
反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度が75℃に達した後、ブタジエン40gを30秒で供給した。
重合反応終了後、反応器にテトラグリシジル−1、3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを0.38mmolを添加し、30秒間攪拌して反応を実施し、その後1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジンを18.4mmolを添加し、5分間攪拌して変性反応を実施した。
この重合体溶液に酸化防止剤(BHT)を1.8g添加後、溶媒を除去し、変性成分を有するスチレン−ブタジエン共重合体(試料F)を得た。
(試料F)を分析した結果、結合スチレン量は45質量%、スチレンブロック結合量は16質量%であり、重合体のムーニー粘度は60であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は27%であり、シリカ系吸着カラムを用いるGPCから求めた変性率は82%であった。
【0061】
なお、表1中、実施例1、2、比較例1〜4において用いたSBRとしては、旭化成ケミカルズ製 アサプレン303を使用した。結合スチレン量は46質量%であり、スチレンブロック結合量は14質量%であり、重合体のムーニー粘度は45であった。
【0062】
〔実施例1〜3〕、〔比較例1〜4〕
上述のようにして作製した(試料A)〜(試料F)の変性共役ジエン系共重合体を原料ゴムとして、下記表1に示す配合に従い、ゴム組成物を得た。
混練は、下記の方法により行った。
温度制御装置を付属した密閉混練機(内容量0.3リットル)を使用し、第一段の混練として、充填率65%、ローター回転数50/57rpmの条件で、原料ゴム(試料A)〜(試料F)、充填材(シリカ)、有機シランカップリング剤を混練した。この際、密閉混練機の温度を制御し、排出温度(配合物)は155〜160℃でゴム組成物を得た。
この第一段の混練は2分間混練したものと4分間混練したものを別個に調整した。
次に、第二段の混練として、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤を混練した。この場合も、密閉混練機の温度を制御し、排出温度(配合物)は155〜160℃でゴム組成物を得た。
第二段の混練は3分間で行った。
冷却後、第三段の混練として、70℃に設定したオープンロールにて、硫黄、加硫促進剤を混練した。
得られた混練物を、160℃で20分間加硫プレスにて加硫して、ゴム組成物の試験片を作製した。
この試験片を用いて、下記の物性試験を行った。
【0063】
(1)硬度
JIS−Aの硬さ試験機を用い、JIS−K−6301に従い、測定した。
【0064】
(2)履き心地(反発弾性)
JIS−K−6301によるリュプケ法により、試験片を50℃に加熱して反発弾性を測定し、指数化した。
値が大きいほど履き心地が良いことを示す。
【0065】
(3)柔軟性
レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機(ARES)を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。
50℃において周波数10Hz、ひずみ3%で測定した貯蔵弾性率(G’)を測定し、指数化した。
値が大きいほど柔軟性に優れることを示す。
【0066】
(4)耐摩耗性
アクロン摩耗試験機を使用し、荷重6ポンド、1000回転の摩耗量を測定し、指数化した。指数の大きいほど耐摩耗性が優れることを示す。
【0067】
【表1】

【0068】
表1に示すように、本発明で特定した変性共役ジエン系重合体を使用した実施例1〜3のゴム組成物においては、第一段目の混練時間に依存せず、実用上十分な硬度、良好な履き心地、優れた柔軟性、及び耐摩耗性能を有し、かつこれらのバランスも良好であった。
一方、比較例1のゴム組成物においては、本発明で特定する変性共役ジエン系重合体を使用していないため、特性が第一段目の混練時間に大きく依存し、良好な特性を得るためには、比較的長時間の混練が必要であった。
比較例2のゴム組成物においては、変性剤として従来公知のものを用いたて作製した変性共役ジエン系重合体を使用したため、特性が第一段目の混練時間に大きく依存し、実用上良好な特性を得るためには、比較的長時間の混練が必要であった。
比較例3のゴム組成物においては、変性率が低い(試料D)の変性共役ジエン系重合体を使用したため、履き心地(柔軟性)と耐磨耗性とのバランスが劣る結果となった。
比較例4のゴム組成物においては、ムーニー粘度が高すぎる(試料E)の変性共役ジエン系重合体を使用したため、履き心地(柔軟性)と耐磨耗性とのバランスが劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のゴム組成物は、履物、各種自動車部品、タイヤ用ゴム、工業用品等として産業上の利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン系化合物が変性された変性共役ジエン系重合体(A)を5〜95質量%、芳香族ビニル化合物の含有量が40質量%以上の共役ジエン系化合物と芳香族ビニル系化合物とからなる共役ジエン系共重合体(B)を95〜5質量%、含有する重合体組成物:100質量部と、
無機充填材(C):1〜150質量部と、
を、含有するゴム組成物であり、
前記変性共役ジエン系重合体(A)が、下記の(1)〜(3)の条件を満たすゴム組成物。
(1)前記変性共役ジエン系重合体が、アミノ基とアルコキシシリル基とを分子内に有する化合物で変性されている。
(2)シリカ粒子充填カラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー測定のカラムへの吸着量によって求められる変性率が70質量%以上である。
(3)100℃で測定したムーニー粘度が45〜95である。
【請求項2】
前記変性共役ジエン系重合体(A)が、共役ジエン系化合物の末端が変性された変性共役ジエン系重合体である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記アミノ基とアルコキシシリル基とを分子内に有する化合物が、
下記式(1)又は下記式(2)で表される化合物である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【化1】

(前記式(1)中、R1、R2は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基である。
3は、炭素数1〜20のアルキレン基である。
4、R5は、同一であっても異なっていてもよい、炭素数1〜6の炭化水素基であって隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなす。
6は、炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、3有機置換シリル基からなる群から選ばれるいずれかである。
mは、2又は3の整数である。)
【化2】

(前記式(2)中、R1、R2は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基である。
3は、炭素数1〜20のアルキレン基である。
4、R5は、同一であっても異なっていてもよい、炭素数1〜6の炭化水素基であって隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなす。
6は、炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、3有機置換シリル基からなる群から選ばれるいずれかである。
mは、2又は3の整数である。
7は、炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、3有機置換シリル基からなる群から選ばれるいずれかである。)
【請求項4】
前記変性共役ジエン系重合体(A)が、変性ポリブタジエンである請求項1乃至3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
共役ジエン系化合物を、アミノ基とアルコキシシリル基とを分子内に有する化合物により変性し、変性共役ジエン系重合体(A)を得る工程と、
前記変性共役ジエン系重合体(A)を5〜95質量%、芳香族ビニル化合物の含有量が40質量%以上の共役ジエン系化合物と芳香族ビニル系化合物とからなる共役ジエン系共重合体(B)を95〜5質量%、含有する重合体組成物を得る工程と、
前記重合体組成物:100質量部と、無機充填材(C):1〜150質量部とを混合する工程と、
を、含むゴム組成物の製造方法であって、
前記変性共役ジエン系重合体(A)が、下記の(1)〜(3)の条件を満たすものであるゴム組成物の製造方法。
(1)変性共役ジエン系重合体が、アミノ基とアルコキシシリル基とを分子内に有する化合物で変性されている。
(2)シリカ粒子充填カラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー測定のカラムへの吸着量によって求められる変性率が70質量%以上である。
(3)100℃で測定したムーニー粘度が45〜95である。

【公開番号】特開2011−102347(P2011−102347A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257198(P2009−257198)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】