説明

ゴルフボール用材料、ゴルフボール及びゴルフボール用材料の製造方法

【解決手段】本発明は、(A)金属含有キレート剤(A1)又はそのキレート剤と酸素含有無機金属化合物からなる混合物(A2)、(B)ジエン系ポリマー、熱可塑性ポリマー、及び熱硬化性ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなるポリマー、及び(C)オレフィン−不飽和カルボン酸2元共重合体,オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体,不飽和カルボン酸無水物含有ポリマー,不飽和ジカルボン酸含有ポリマー及び不飽和ジカルボン酸ハーフエステル含有ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなる酸含量を有するポリマーを必須成分として配合してなるゴルフボール用材料、その製造方法及びゴルフボールを提供する。
【効果】本発明のゴルフボール用材料は、耐久性、耐擦過傷性、柔軟性等に優れる高性能のゴルフボールを形成するのに最適な材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱安定性、流動性、成形性が良好で、しかも反発性や耐久性等に優れる高性能のゴルフボールを得ることができるゴルフボール用材料、該ゴルフボール用材料の成形物を構成要素として具備するゴルフボール、及び該ゴルフボール用材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年より、ゴルフボールのカバー材にはアイオノマー樹脂が広く用いられている。アイオノマー樹脂はエチレン等のオレフィンと、アクリル酸、メタクリル酸あるいはマレイン酸等の不飽和カルボン酸からなるイオン性共重合体の酸性基を、部分的にナトリウム,リチウム,亜鉛,マグネシウム等の金属イオンで中和したもので、耐久性、反発性、耐擦過傷性などの面で優れた性質を有している。
【0003】
現在、アイオノマー樹脂はゴルフボールカバー材のベース樹脂の主流であるが、常にユーザーからは高反発性を有し飛行特性に優れたゴルフボールが求められており、様々な改良が行われている。
【0004】
例えば、アイオノマーカバー材の反発性、コスト性を改善する提案として、アイオノマー樹脂に多量の金属せっけんを添加したカバー材(特許文献1:米国特許第5312857号明細書,特許文献2:米国特許第5306760号明細書,特許文献3:国際公開第98/46671号パンフレット)等を挙げることができる。
【0005】
しかしながら、これら提案は、カバー材中の金属せっけんが射出成形時に分解・気化して多量の脂肪酸ガスを発生させるため、成形不良を起こし易く、発生したガスが成形物の表面に付着して塗装性を著しく低下させる。また、これらカバー材は、金属せっけん未配合の同硬度のアイオノマーカバーと比較しても反発性能に大差はなく、せいぜい同程度か若干の金属せっけん配合による効果として認められる程度で、著しく反発性を向上させるものではない。しかも、金属せっけんの種類によっては、成形性、反発性を著しく損なわせる場合があり、実用レベルからは程遠いものである。
【0006】
また、最近、ゴルフボール材料用アイオノマーで、第一成分として、例えばエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、第二成分として、異種の熱可塑性樹脂を用い、両者を混練後、その樹脂組成物中に分散された第一成分の酸を、第三成分として、金属イオン種を配合して中和し、IPN構造を有する、均一相で高反発弾性の材料が開発されている(米国特許公開公報第2004/0044136号明細書)。しかしながら、この製法においては、金属イオン種である金属酸化物、金属水酸化物、または金属炭酸塩などの固体(粉、粒状)を直接使用するため、しかも第一成分の酸含量が多いと酸の中和に要する金属イオン種を多量に配合する必要があるため、金属イオン種の配合時、分散不良を起こし、押出機ダイ部ブレーカープレートに装着されているスクリーンパックの目詰まりを起こしたり(生産中断を起こしたり)、製品中に未反応の金属イオン種が残存する場合があり、また、部分中和反応(不完全中和度)を起こし、押出機でのワンステップでは目標とする中和度に達することができず、数回パスをするため、生成したアイオノマー材料の物性低下に繋がることが懸念された。
【0007】
【特許文献1】米国特許第5312857号明細書
【特許文献2】米国特許第5306760号明細書
【特許文献3】国際公開第98/46671号パンフレット
【特許文献4】米国特許公開公報第2004/0044136号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、金属イオン種により、ワンステップで、酸含有ポリマー組成物中の酸中和反応を完結させ、目標とする酸の中和度を達成することによって、熱安定性、流動性、成形性が良好で、しかも反発性を損なうことなく、耐久性、耐擦過傷性、適正硬度等に優れる高性能のゴルフボールを得ることができるゴルフボール用材料、該ゴルフボール用材料の成形物を構成要素として具備するゴルフボール、及び該ゴルフボール用材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、(A)金属イオン種として、ポリマーである有機化合物との親和性を持たすために有機化した金属含有化合物、即ち、金属含有キレート剤(A1)又はそのキレート剤と酸素含有無機金属化合物からなる混合物(A2)を使用すると共に、ニーディングディスクゾーンを有する反応用二軸押出機の使用により、(B)ジエン系ポリマー,熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなるポリマー、及び(C)オレフィン−不飽和カルボン酸2元共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体、及び、不飽和カルボン酸無水物、不飽和ジカルボン酸及び又は不飽和ジカルボン酸ハーフエステル含有ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなる酸含有ポリマーとを配合して得られる(B)成分及び(C)成分の酸含有ポリマー組成物に、上記(A)成分を配合した場合、(A)成分による(B)成分及び(C)成分中の酸の中和反応がスムーズに進み、ワンステップで均一な材料が得られることを知見にした。また、上記(B)成分を除いた(C)成分のみに(A)成分を加えることにより(C)成分中の酸の中和反応がスムーズに進むことも、即ち、ゴルフボール用アイオノマー材料が得られることも知見した。得られた上記ゴルフボール用材料は、意外にも熱安定性、流動性、成形性が良好であり、射出成形に適しており、しかも成形物の反発性を損なうことなく、耐久性、耐擦過傷性、適正硬度等に優れる高性能のゴルフボールを形成するのに最適な材料であることを知見した。更に、使用する金属含有キレート剤の金属種により、得られるゴフルボール用材料を有色化することもできることを知見した。
【0010】
また、本発明者らは更に検討を行ったところ、上記ゴルフボール用材料の成形物を構成要素(例えば、コアとこのコアを被覆するカバーとからなるツーピースソリッドゴルフボール、又は、一層以上のコアとこのコアを被覆する一層以上の中間層とこの中間層を被覆する一層以上のカバーとからなるマルチピースソリッドゴルフボールにおけるカバー材又は中間層材)として具備したゴルフボールは、反発性を損なうことなく、優れた耐久性、耐擦過傷性、適正硬度を有することを知見し、本発明をなすに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記〔I〕〜〔IV〕に示されるゴルフボール用材料、ゴルフボール、及びゴルフボール用材料の製造方法を提供する。
〔I〕下記(A)〜(C)成分
(A)金属含有キレート剤(A1)又はそのキレート剤と酸素含有無機金属化合物からなる混合物(A2)、
(B)ジエン系ポリマー,熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなるポリマー、及び
(C)酸含量0.5〜30質量%を有するオレフィン−不飽和カルボン酸2元共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体,及び不飽和カルボン酸無水物,不飽和ジカルボン酸及び不飽和ジカルボン酸ハーフエステル含有ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなる酸含有ポリマー
を必須成分とし、(B)成分及び(C)成分の配合組成物に(A)成分を配合してなることを特徴とするゴルフボール用材料。
〔II〕下記(A)及び(C)成分
(A)金属含有キレート剤(A1)又はそのキレート剤と酸素含有無機金属化合物からなる混合物(A2)と、
(C)酸含量0.5〜30質量%を有するオレフィン−不飽和カルボン酸2元共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体,及び不飽和カルボン酸無水物,不飽和ジカルボン酸及び不飽和ジカルボン酸ハーフエステル含有ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなる酸含有ポリマーと
を必須成分とし、(C)成分に(A)成分を配合してなることを特徴とするゴルフボール用材料。
〔III〕下記(A)〜(C)成分
(A)金属含有キレート剤(A1)又はそのキレート剤と酸素含有無機金属化合物からなる混合物(A2)、
(B)ジエン系ポリマー,熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなるポリマー、及び
(C)酸含量0.5〜30質量%を有するオレフィン−不飽和カルボン酸2元共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体,及び不飽和カルボン酸無水物,不飽和ジカルボン酸及び不飽和ジカルボン酸ハーフエステル含有ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなる酸含有ポリマー
を配合してなるゴルフボール用材料の製造方法において、上記(B)成分及び(C)成分の樹脂組成物に対して、(A1)及び/又は(A2)により、ワンステップで酸含有ポリマー中の酸中和反応を行なうことを特徴とするゴルフボール用材料の製造方法。
〔IV〕上記ゴルフボール用材料の成形物を構成要素として用いることを特徴とするゴルフボール、好ましくは、上記ゴルフボール用材料を、コアと該コアを被覆するカバーとからなるツーピースソリッドゴルフボール、又は、1層以上のコアと該コアを被覆する2層以上の中間層と該中間層を被覆する1層以上のカバーとからなるマルチピースソリッドゴルフボールにおけるカバー材又は中間層材として用いることを特徴とするゴルフボール。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゴルフボール用材料及びその製造方法によれば、ワンステップで、酸含有ポリマー中の酸中和反応を完結することができ、熱安定性、流動性、成形性が良好で、しかも反発性を損なうことなく、耐久性、耐擦過傷性、適正硬度等に優れる高性能のゴルフボールを得ることができる。また、使用する金属含有キレート剤の金属種によっては、ゴルフボール用材料を有色化することができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明は、(A)金属含有キレート剤(A1)又はそのキレート剤と酸素含有無機金属化合物からなる混合物(A2)と、(B)ジエン系ポリマー,熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなるポリマーと、(C)オレフィン−不飽和カルボン酸2元共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体,及び不飽和カルボン酸無水物,不飽和ジカルボン酸及び又は不飽和ジカルボン酸ハーフエステル含有ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなる酸含有ポリマーとを配合し、(C)成分中の酸の中和反応をスムーズに行い、ゴルフボール用材料を得ることを特徴とする。
【0014】
また、上記(B)成分を除いた(C)成分だけに(A)成分を加えることにより、(C)成分中の酸の中和反応をスムーズに行い、ゴルフボール用アイオノマー材料を得ることも特徴とする。
【0015】
更に、上記(A)から(C)成分の必須成分に、更にノルボルネンジカルボン酸無水物及び又はその誘導体と過酸化物とを配合し、中和反応と共にグラフト化を行ったゴルフボール用材料を得ることも特徴とする。
【0016】
本発明では、ワンステップで目標とする中和度の中和反応を完結させ、数回パスによって得られるポリマー材料の熱履歴を回避し、より良いゴルフボール用材料を製造することを目的として、使用する金属イオン種(A)として、金属含有キレート剤(A1)又はそのキレート剤と酸素含有無機金属化合物からなる混合物(A2)が選択される。
【0017】
金属イオン種(A)として、金属含有キレート剤(A1)の金属種が、1価、2価及び3価の金属種よりなる群から選択された1種または2種以上からなる金属種であり、これに限定されるものではないが、例えば、Li+,Na+、K+、Mg2+、Zn2+、Ni2+、Ba2+、Co2+、Mn2+、Cu2+、Ca2+、Cr2+、Co3+、Cr3+、Fe3+、Al3+などを挙げることができる。
【0018】
また、そのキレート剤として、これに限定されるものではないが、アミノカルボン酸、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ポリ燐酸、β−ジケトン、ポリイミン、ポリアミン及びその誘導体よりなる群から選択された1種または2種以上からなるキレート剤である。具体的には、エチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、テトラハイドロフラン−2、3、4、5−テトラカルボン酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリス(メチレン燐酸)、ヘキサメタポリ燐酸、トリポリ燐酸、アルキルアセトアセテート(エチルアセトアセテート、メチルアセトアセテートなど)、アセチルアセトン(アセチルアセトナート)、ポリエチレンイミン(Mw10000)、ポリアリルアミンPolyallylamine(Mw10000)などが挙げられる。(C)成分中のカルボン酸基との反応性が小さいキレート剤が、より好ましく、その観点から水酸基含有キレート剤及びアミノ基(イミノ基含む、但し3級アミノ基除く)含有キレート剤は好ましくない。
【0019】
金属含有キレート剤としては、これに限定されるものではないが、具体的には、エチレンジアミンテトラ酢酸4Na塩、エチレンジアミンテトラ酢酸4K塩、ジエチレントリアミンペンタ酢酸5Na塩、ジカルボキシメチルグルタミン酸4Na塩、エチレンジアミンテトラ酢酸Mg・2Na塩、エチレンジアミンテトラ酢酸Mn・2Na塩、エチレンジアミンテトラ酢酸Cu・2Na塩、エチレンジアミンテトラ酢酸Co・2Na塩、エチレンジアミンテトラ酢酸Zn・2Na塩、ジエチレントリアミンペンタ酢酸Fe・Na塩、Naメチルアセトアセテート、Cuエチルアセトアセテート、Alジブトキシドビス(エチルアセトアセテート)、Liアセチルアセトナート、Naヘキサフロロアセチルアセトナート、Caアセチルアセトナート、Mgアセチルアセトナート、Znアセチルアセトナート、Mnアセチルアセトナート、Cuアセチルアセトナート、Niアセチルアセトナート、Baアセチルアセトナート、Alアセチルアセトナートなどを挙げることができる。
【0020】
上記(A)成分の金属含有キレート剤と酸素含有無機金属化合物の混合物(A2)中の酸素含有無機金属化合物の金属イオン種として、周期率表第IA、IB、IIA、IIB、IIIA、IIIB、IVA、IVB、VA、VB、VIA、VIB、VIIB及びVIIIBよりなる群から1種又は2種以上選択され、この酸素含有無機金属化合物は、通常、超微粒子又はマスターバッチの形で使用される。
【0021】
上記(A2)中の酸素含有無機金属化合物は、その平均粒径が0.001〜50μmの範囲にあるものが好適であり、金属含有キレート剤と酸素含有無機金属化合物の混合物中の金属含有キレート剤が占める配合割合が0.1〜99.9質量%であり、好ましくは1.0〜99.0質量%である。
【0022】
上記(A2)中の酸素含有無機化合物の超微粒子として、その平均粒径が0.005〜0.1μm、その粒度分布が0.001から1.0μmであることが好ましい。この粒子を用いれば、通常の粒径が数十μmの粒子と比較して、その表面が活性であり、酸に対する反応性が高く、また分散性も良好であることから、本発明には好適である。
【0023】
通常の粒径が数十μmの酸素含有無機化合物をそのまま使用し、酸含有ポリマー組成物中の酸中和反応を行うと、未反応の酸素含有無機化合物が未分散塊状物になって残り、何回も押出機をパスすることによって、目標とする中和度の中和反応を完結させている。一例としては、金属イオン種として、水酸化マグネシウムを使用し、酸含有ポリマーを中和するために二軸押出機を数回パスした例が米国特許公開公報第2004/0044136号明細書に記載されている。
【0024】
上記(A2)中の酸素含有無機化合物の超微粒子としては、低吸湿性の金属酸化物、金属炭酸塩、及び金属水酸化物から選ばれることが好ましい。また、金属イオン種(A)は、周期率表第IA、IB、IIA、IIB、IIIA、IIIB、IVA、IVB、VA、VB、VIA、VIB、VIIB及びVIIIBから選択される。酸素含有無機化合物の超微粒子の具体例としては、これに限定されるものではないが、炭酸リチウム,炭酸ナトリウム,炭酸カリウム,炭酸マグネシウム,炭酸カルシウム,酸化マグネシウム,酸化亜鉛,酸化カルシウム,及び水酸化マグネシウムなどが挙げられ、それらの1種又は2種以上が使用される。これらの酸素含有無機化合物の微粒子を、酸含有ポリマー組成物中の酸中和反応に使用すれば、<1>スムーズに起こり(酸基に対し、高い中和反応性を示す)、<2>金属酢酸塩(中和後、脱酢酸)などに比較し、製造設備への腐食性が小さい、などの利点がある。
【0025】
また、(A2)中の酸素含有無機化合物として、酸素含有無機化合物のマスターバッチ化したものを使用することができる。この場合、上述した酸素含有無機化合物の超微粒子に代えて、又はこれと併用してマスターバッチ化したものを使用することができる。マスターバッチに使用される酸素含有無機金属化合物の平均粒径は、好ましくは0.005〜50μmであり、その粒度分布は、好ましくは0.001〜300μmである。その粒径に関しては、上記の酸素含有無機化合物の超微粒子ほど微細化したものを使用する必要はないが、平均粒径が大きすぎると、中和反応が完結しない場合があり、一方、小さすぎると、マスターバッチ化時に分散不良を起こす場合がある。ここで、本発明において平均粒径及び粒度分布とは、レーザー回折式粒度分布測定(レーザー回折・散乱法)に準拠して測定した値を意味するものである。
【0026】
上記(A2)中の酸素含有無機化合物のマスターバッチ化したもの(以下、単に「マスターバッチ」と言う。)を使用することにより、酸含有ポリマー組成物(B)成分及び(C)成分中の酸中和反応において、酸素含有無機金属化合物を均一に分散させることができ、更に均一な反応を促し、ゴルフボール用材料の均一性を付与することができる。一方、マスターバッチ化せず、酸素含有無機金属化合物を上記ポリマー組成物(B)成分及び(C)成分中に直接配合する場合では、そのポリマー組成物中に酸素含有無機金属化合物を均一分散することが困難となる場合があり、未分散塊状物となり、結果として不均一な反応となり、ゴルフボール用材料の不均一性を招くことになる。特に、粗粉末状の酸素含有無機金属化合物を用いると、ゴルフボール用材料中に未分散塊状物が残存することになる。また、中和反応後に有機酸を遊離しない非有機酸の酸素含有無機金属化合物を優先的にマスターバッチ化することにより、反応を促進させ、均一な材料を得ることも可能である。
【0027】
上記(A2)中の酸素含有無機化合物として、そのマスターバッチを使用する場合、これに含まれる金属イオン種としては、金属酸化物、金属炭酸塩、または金属水酸化物であり、金属イオン種は、周期率表第IA、IB、IIA、IIB、IIIA、IIIB、IVA、IVB、VA、VB、VIA、VIB、VIIB及びVIIIBから選択される。具体例としては、これに限定されるものではないが、炭酸リチウム,炭酸ナトリウム,炭酸カリウム,炭酸マグネシウム,炭酸亜鉛,水酸化マグネシウム,酸化マグネシウム,水酸化カルシウム,酸化カルシウム及び酸化亜鉛などが挙げられ、1種又は2種以上が使用される。
【0028】
上記酸素含有無機金属化合物のマスターバッチ中のその酸素含有無機金属化合物濃度は、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%である。マスターバッチ中の酸素含有無機金属化合物の濃度が高くなり過ぎると、マスターバッチのMFRが0.1g/10min未満と極端に低下してしまう場合がある。この場合、上記(B)成分及び(C)成分に上記マスターバッチを配合した際、マスターバッチ中の酸素含有無機金属化合物の分散不良が起こり、逆に、低濃度の場合、マスターバッチの添加量が多くなり、マスターバッチに使用される高MFRのベースポリマー(特に、エチレン系ワックス、低酸含量高MFRのエチレン系ポリマー等)の影響が出てしまい、ゴルフボール用材料の物性を大きく低下させるおそれがある。
【0029】
マスターバッチに用いられるベースポリマー材料としては、高いMFR値を有するものが好適であり、具体的には、MFR値(g/10min)が、好ましくは10g/10min以上、より好ましくは50g/10min以上、更に好ましくは100g/10min以上のものが用いられる。また、液状のワックスも使用することができ、例えば、高MFRのエチレン系ワックス、低酸含量高MFRのエチレン系ポリマー等が挙げられ、具体的には、ポリエチレンワックスAC5120(アクリル酸含有量15質量%、MFR 1000g/10分以上、トーメンプラスチック社製),Nucrel 599(メタクリル酸含有量10質量%、MFR 450g/10分、DuPont社製),Nucrel 699(メタクリル酸含有量11質量%、MFR 100g/10分、DuPont社製),Nucrel N0200H(メタクリル酸含有量2質量%、MFR 130g/10min、DuPont社製)などが例示される。
【0030】
本発明の金属イオン種(A)の配合量については、上記酸含有ポリマー組成物(B)成分及び(C)成分配合組成物中に含まれる酸基の目標中和度になるよう、必然的に決定される。配合量が多すぎると、過剰中和度になり、ゴルフボール用材料としての流動性(MFR)が低下し、成形性が損なわれる。一方、配合量が少なすぎると、ゴルフボール用材料としての物性、反発弾性や耐久性が損なわれるおそれがある。
【0031】
上記(A2)中の酸素含有無機化合物のマスターバッチの調製法としては、加圧ニーダー等のニーダーと強制フィーダ付き二軸一軸押出機(ニーダールーダー含む)、タンデム型押出機(上段:二軸ローター、下段:真空ベント付き押出機)、または真空ベント付き二軸押出機のいずれかを使用することができる。より好ましくは、ニーダーと強制フィーダ付き二軸一軸押出機、又はタンデム型押出機を使用し、これらの機械により酸素含有無機化合物とベースポリマー材料とのドライブレンドしたものを、または個別フィードで、ホッパーに投入し混練後、ペレット化し、MFR 0.1〜100g/minの範囲のマスターバッチを得る。マスターバッチの混練温度については、50〜220℃、好ましくは80〜200℃の範囲で調製される。
【0032】
本発明における(B)成分は、ジエン系ポリマー,熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなるポリマーである。具体的には、ポリオレフィン系エラストマー(ポリオレフィン、メタロセンポリオレフィン含む),ポリスチレン系エラストマー,ポリアクリレート系ポリマー,ポリアミド系エラストマー,ポリウレタン系エラストマー,ポリエステル系エラストマー,ジエン系ポリマー,ポリアセタール(POM),エポキシ樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,シリコーン樹脂及びABS系樹脂よりなる群から選択された1種又は2種以上からなるポリマー組成物などを挙げることができる。
【0033】
本発明において、(B)成分が熱可塑性ポリマーである場合、上記酸含有ポリマー組成物〔(B)及び(C)成分〕中の配合比について、(B)成分/(C)成分が質量比で99/1〜1/99の割合である。
【0034】
また、(B)成分が熱硬化性ポリマーである場合、上記酸含有ポリマー組成物〔(B)及び(C)成分〕中の配合比について、(B)成分/(C)成分が質量比で49/51〜1/99の割合である。
【0035】
本発明における(C)成分としては、オレフィン−不飽和カルボン酸2元共重合体,オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体,不飽和カルボン酸無水物含有ポリマー,不飽和ジカルボン酸含有ポリマー及び不飽和ジカルボン酸ハーフエステル含有ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなる酸含量0.5〜30質量%、好ましくは1.0〜25質量%を有するポリマー組成物が用いられる。
【0036】
上記(C)成分であるオレフィン−不飽和カルボン酸2元共重合体の場合、オレフィンが有する炭素数として、好ましくは2以上であり、上限としては、好ましくは8以下、特に6以下が好ましい。このようなオレフィンとしては、例えばエチレン,プロピレン,ブテン,ペンテン,ヘキセン,ヘプテン,オクテン等を挙げることができ、特にエチレンが好適に用いられる。また、不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸,メタクリル酸,ジメチルアクリル酸,エタアクリル酸,(無水)マレイン酸,フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。
【0037】
また、上記(C)成分であるオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体の場合、オレフィンと不飽和カルボン酸とは、上述したオレフィン−不飽和カルボン酸2元共重合体と同じものを挙げることができる。また、不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、上述した不飽和カルボン酸の低級アルキルエステルを好適に用いることができ、具体的には、メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸プロピル,メタクリル酸ブチル,アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸プロピル,アクリル酸ブチル等を挙げることができる。特に、アクリル酸ブチル(アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル)が好適に用いられる。
【0038】
更に、上記(C)成分が、不飽和カルボン酸無水物含有ポリマー,不飽和ジカルボン酸含有ポリマー及び不飽和ジカルボン酸ハーフエステル含有ポリマーの中から選ばれる場合、不飽和無水カルボン酸,不飽和ジカルボン酸,不飽和ジカルボン酸ハーフエステルから選ばれる少なくとも1種とオレフィンとからなるポリマーが好ましい。ここで、上記不飽和無水カルボン酸としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸等を挙げることができ、特に、無水マレイン酸が好適である。また、不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等を挙げることができる。不飽和ジカルボン酸ハーフエステルとしては、それらジカルボン酸のモノエステルであり、例えば、マレイン酸モノエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、イタコン酸モノエチルエステル等を挙げることができ、特に、マレイン酸モノエチルエステルが好適に用いられる。
【0039】
一方、上記オレフィンとしては、炭素数が好ましくは2以上、上限として好ましくは8以下、特に6以下であることが好ましい。このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン,プロピレン,ブテン,ペンテン,ヘキセン,ヘプテン,オクテン等を挙げることができ、特に、エチレンが好適に用いられる。
【0040】
また、上記(C)成分における、不飽和カルボン酸無水物含有ポリマー,不飽和ジカルボン酸含有ポリマー及び不飽和ジカルボン酸ハーフエステル含有ポリマーの具体例としては、下記のポリマーを挙げることができるが、これらのポリマーに限定されるものではない。
【0041】
(i)不飽和無水カルボン酸,不飽和ジカルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸でグラフ
ト化したオレフィン系ポリマー
(ii)不飽和無水カルボン酸,不飽和ジカルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸でグラ
フト化したオレフィン−不飽和カルボン酸ポリマー
(iii)不飽和無水カルボン酸,不飽和ジカルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸でグ
ラフト化したオレフィン−不飽和カルボン酸エステルポリマー
(iv)不飽和無水カルボン酸,不飽和ジカルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸でグラ
フト化したオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルポリマー
(v)オレフィン−不飽和無水カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルポリマー
(vi)オレフィン−不飽和ジカルボン酸−不飽和カルボン酸エステルポリマー
(vii)オレフィン−不飽和ジカルボン酸ハーフエステル−不飽和カルボン酸エステル
ポリマー
【0042】
それぞれ上述した材料を公知の方法で共重合及びグラフトさせることにより上記共重合体を得ることができる。上記共重合体中の酸含量が少なすぎると反発性や強度(破断点引張強度)が低下する場合があり、多すぎると加工性が低下する場合がある。
【0043】
上記(C)成分の具体的な市販品としては、オレフィン−不飽和カルボン酸ポリマーとして、例えば、Nucrel 960,Nucrel 2806(いずれもDuPont社製)、ESCOR 5200,ESCOR 5100,ESCOR 5000(いずれもExxon-Mobil Chemical社製)などを挙げることができる。
【0044】
オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルポリマーとしては、例えば、Bynel 2002,Bynel 2014,Bynel 2022,Bynel E403(いずれもDuPont社製)、ESCOR ATX325,ESCOR ATX320,ESCOR ATX310(いずれもExxon-Mobil Chemical社製)等を挙げることができる。
【0045】
不飽和無水カルボン酸系ポリマーとしては、MODIPER A8100,MODIPER A8200,MODIPER A8400(いずれもNOF Corp.社製)、LOTADER 3200,LOTADER 3300,LOTADER 5500,LOTADER 6200,LOTADER 7500,LOTADER 8200,LOTADER TX8030,LOTADER TX8390(いずれもARKEMA社製)などが例示される。
【0046】
不飽和無水カルボン酸グラフト化ポリマーとしては、市販品を使用してもよく、例えば、Polybond 3009,Polybond 3200,Royaltough 498(いずれもUniroyal Chemical社製),ADOMER NF518,ADOMER QE800(三井化学社製)、Bynel 2167,Bynel 2174,Bynel 4206,Bynel 4288,Bynel 50E561,Bynel 50E571(いずれもDuPont社製)、Exxelor VA1801,Exxelor VA1803,Exxelor VA1840,Exxelor PO1020(いずれもExxonMobil Chemical社製)等を挙げることができる。
【0047】
本発明では、上記(A)成分,(B)成分及び(C)成分の必須成分に対して、更に、ノルボルネンジカルボン酸無水物及び/又はその誘導体を過酸化物と共に配合することにより、ノルボルネンジカルボン酸無水物及び/又はその誘導体のグラフト化反応と共に酸を中和(中和反応)することによって、(B)成分の層剥離現象を抑制したIPN構造を有する樹脂組成物を得ることができる。上記ノルボルネンジカルボン酸無水物及び/又はその誘導体には、次のようなものが例示される。
【0048】
ノルボルネン環誘導体がハロゲン,アルキル,アリル及びアラアルキルノルボルネンであり、ジカルボン酸無水物誘導体がジカルボン酸、またはジカルボン酸イミド及びその誘導体であり、ジカルボン酸無水物及びその誘導体の立体構造がExo体,Endo体及びこれらの混合体である。具体的には、cis−5−ノルボルネン−endo−2,3−ジカルボン酸無水物、cis−5−ノルボルネン−exo−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−cis−5−ノルボルネン−endo−2,3−ジカルボン酸無水物、cis−5−ノルボルネン−endo−2,3−ジカルボン酸イミド、1,4,5,6,7,7−ヘキサクロロ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0049】
これらの化合物の配合量は、上記(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部に対して0.05〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.2〜5.0質量部である。これらの化合物を過剰に配合すると、得られる樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)が極端に低下し、ゲル状物が生成し、正常な成形品を得ることができなくなる場合がある。逆に、少なすぎると、得られる樹脂組成物が、射出成形時に層剥離現象を起こし、低擦過傷性や低反発性を来たし、最終製品のゴルフボール物性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0050】
本発明において、ノルボルネンジカルボン酸無水物及び/又はその誘導体を配合する場合には、上記(A)成分,(B)成分及び(C)成分を含有する樹脂組成物の調製過程において、ノルボルネンジカルボン酸無水物及び/又はその誘導体のほか、過酸化物を予め過酸化物が分解しない低温で(B)成分及び(C)成分を溶融混練し、その後、(A)成分である酸素含有無機金属化合物等の金属イオン種を配合し、過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混練することにより、ノルボルネンジカルボン酸無水物及び/又はその誘導体のグラフト化反応と共に酸を中和(中和反応)することによってIPN構造を有する樹脂組成物が得られるものである。この場合、ノルボルネンジカルボン酸無水物及び/又はその誘導体,過酸化物,(B)成分を過酸化物が予め分解しない程度の低温で溶融混練し、その後、(C)成分である酸含有ポリマーを過酸化物が分解しない程度の低温で溶融混練し、更にその後、(A)成分である酸素含有無機金属化合物の金属イオン種を配合し、過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混練し、ノルボルネンジカルボン酸無水物及び/又はその誘導体のグラフト化反応と共に、酸の中和(中和反応)を行うことが好適に採用される。
【0051】
上記のノルボルネンジカルボン酸無水物及び/又はその誘導体と共に併用される過酸化物については、その分解温度と用いられる(B)成分及び/又は(C)成分の混練可能な溶融温度を参考にして適宜選択することができる。具体的には、1分半減期温度が140〜250℃、好ましくは150〜230℃、より好ましくは160〜210℃のもので、例えば、ジクミルパーオキサイド(1分半減期温度175℃)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(185℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン(194℃)、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート(173℃)、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(175℃)、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド(177℃)、p−メンタンハイドロパーオキサイド(200℃)などから選ばれる1種又は2種以上を採用することができる。これらの中では、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシンを採用することが好ましい。その過酸化物の配合量については、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部に対して0.01〜20質量部とすることが好ましく、より好ましくは0.05〜15質量部、更に好ましくは0.09〜10質量部、最も好ましくは0.1〜5.0質量部である。
【0052】
本発明のゴルフボール用材料の製造法は、金属イオン種(A)により、2種以上の異種ポリマー(B)成分及び(C)成分からなる酸含有ポリマー組成物中の酸中和反応をワンステップ(一段反応)で行なう方法であり、このワンステップで中和反応を行うため、例えば、混練型二軸押出機,バンバリー,ニーダー,ラボプラストミル等のインターナルミキサー等を用いることができる。製造押出機としては、二軸押出機を使用することが好適であり、特に、下記(i)〜(v)の特徴を有する二軸押出機を用いることが好適である。
【0053】
(i)スクリュー有効長L/D(スクリューの長さとスクリューの直径との比率)が20
以上、好ましくはL/Dが25以上、更に好ましくはL/Dが30以上であること
(ii)スクリューセグメント配置に関して、ニーディングディスクゾーンのL/Dが全
体L/Dの10〜90%、好ましくは20〜80%、更に好ましくは30から70%
であること
なお、ニーディングディスクゾーンの構成ディスクは、RKD(Right-handed K
neading Disc),LKD(Left-handed Kneading Disc),リバース(Reverse Dis
c),各種ニュートラル(Neutral Disc)から構成される。
(iii)スクリューの直径が15mmφ以上であること
(iv)ベントポート及びこれに連結した真空ラインを有すること
(v)液体滴下又は液体圧注入付帯設備を有すること
【0054】
本発明のワンステップの中和反応では、上記(B)成分と上記(C)成分とを溶融混合し、溶融状態のポリマー組成物(B)成分及び(C)成分を調製した後、その溶融状態の樹脂組成物に更に上記(A)成分、即ち(A1)及び又は(A2)を配合し、上記ポリマー組成物(B)成分及び(C)成分中に含まれる酸基の少なくとも一部を中和する。また、この中和反応を促進するために、液体を添加(圧注入または滴下)してもよい。この場合、上記の液体としてはROH(Rは水素又はアルキル基)で示される液体を使用することが好ましい。また、上記の液体の添加量は、樹脂押出量全量に対して、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜8質量%、更に好ましくは1.0〜5.0質量%であることが好適である。
【0055】
ここで、加熱条件としては、例えば100〜250℃とすることができるが、上記(B)成分の融点及び(C)成分の融点のいずれをも超える温度で溶融混合することが好適である。
【0056】
また、混合方法としても特に制限されるものではないが、(B)成分をより良好に微分散させる観点から、予め(B)成分と(C)成分とを十分に溶融混合したポリマー組成物(B)成分及び(C)成分を得た後に、(A)成分、即ち(A1)成分及び/又は(A2)成分を配合し混練することが好適である。添加剤を配合する場合には、(A)成分を混練した後に添加剤を加えて混練することも可能である。尚、(B)成分を除いた(C)成分のみを中和反応する場合は、単に(C)成分と(A)成分を溶融混合すれば良い。また、この中和反応を促進するために、液体を添加(圧注入または滴下)してもよい。
【0057】
本発明では、金属イオン種(A)成分、即ち、金属含有キレート剤(A1)又はそのキレート剤と酸素含有無機金属化合物からなる混合物(A2)による酸含有ポリマー組成物(B)成分及び(C)成分へ酸中和反応を、ワンステップで行うものであるが、この場合に使用される二軸押出機の中和反応条件としては、設定温度110〜260℃、好ましくは130〜240℃、更に好ましくは170〜230℃とする。そして、押出量は二軸押出機スクリュー径(D)32mmφで、2kg/hr〜60kg/hr、好ましくは5kg/hr〜50kg/hr、更に好ましくは10kg/hr〜40kg/hrである。また、スクリュー径比D1/D2(但し、D2よりもD1の方が径が大きい)をAとすると、A1.0〜A3.0の範囲内において二軸押出機のスケールアップ時の押出量がAに比例することが好ましく、特に好ましくは、A1.5〜A2.7の範囲内である。
【0058】
本発明のゴルフボール用材料は、射出成形に特に適した流動性を確保し、成形性を改良するため、一定範囲のメルトフローレート(MFR)値を具備することが好適である。MFR値としては、好ましくは0.1g/10min以上、より好ましくは0.5g/10min以上、上限として、好ましくは50g/10min以下、より好ましくは30g/10min以下である。MFRが大きすぎても小さすぎても加工性が著しく低下する場合がある。なお、本発明においてMFRとは、JIS−K7210に準拠し、試験温度190℃、試験荷重21.18N(2.16kgf)条件下での測定値を意味する。
【0059】
また、本発明のゴルフボール用材料は、FT−IR測定において、1690〜1710cm-1にカルボニル伸縮振動に帰属する吸収ピーク及び1530〜1630cm-1にカルボン金属塩のカルボキシアニオン伸縮振動に帰属する吸収ピークがあること、即ち、中和反応とイオン架橋の存在を確認している。
【0060】
本発明のゴルフボール用材料を用いた成形物のショアD硬度としては、好ましくは50以上、より好ましくは52以上、上限として、好ましくは75以下、より好ましくは70以下である。上記成形物のショアD硬度が高すぎると形成されたゴルフボールの打撃時のフィーリングが著しく低下する場合があり、ショアD硬度が低すぎると反発性が低下する場合がある。
【0061】
本発明のゴルフボール用材料には、更に任意の添加剤を用途に応じて適宜配合することができる。本発明のゴルフボール用材料をカバー材として用いる場合には、上記(A)〜(C)に加え、例えば、顔料,分散剤,老化防止剤,紫外線吸収剤,光安定剤,スリップ剤などを加えることができる。これら添加剤を配合する場合、その配合量としては、上記(A)〜(C)の総和100質量部に対して好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、上限として好ましくは10質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0062】
本発明のゴルフボール用材料の比重としては、好ましくは0.9以上、より好ましくは0.92以上、更に好ましくは0.94以上、上限として好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは1.05以下である。
【0063】
本発明のゴルフボールは、上記本発明のゴルフボール用材料を使用して形成された成形物を構成要素とするゴルフボールであり、上記ゴルフボール用材料の成形物が用いられる箇所はゴルフボールの一部又は全部のいずれであってもよく、例えば、カバーが単層又は2層以上の多層構造を有する糸巻きゴルフボールのカバー,ワンピースゴルフボール,ツーピースソリッドゴルフボール,スリーピースソリッドゴルフボール等のマルチピースゴルフボールにおけるソリッドコア、中間層、カバー等を挙げることができる。本発明のゴルフボール用材料の成形物を構成要素として具備するゴルフボールであれば、ゴルフボールの種類は特に制限されるものではない。
【0064】
特に、本発明のゴルフボール用材料は、コアと該コアを被覆するカバーとからなるツーピースソリッドゴルフボールや、1層以上のコアと該コアを被覆する1層以上の中間層と該中間層を被覆する1層以上のカバーとからなるマルチピースソリッドゴルフボールにおけるカバー材、中間層材として好適に使用される。
【実施例】
【0065】
〔参考例,実施例〕
以下、参考例及び実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、実施例に使用した中和反応用二軸押出機は、スクリュー径32mmφ、全体L/D41、ニーディングディスクゾーンL/Dが全体L/Dの40%、真空ベントポート及び水圧注入装置付きである。
【0066】
〔参考例〕
水酸化マグネシウム・マスターバッチの調製例
5リットル加圧ニーダー(ナニワ製造機械社製、設定温度100℃)を使用し、マスターバッチ(MB)用ベースポリマーとしてエチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル3元共重合体(デュポン社製、MFR 130g/10min)を用い、水酸化マグネシウム「Mg(OH)2」(協和化学工業社製、平均粒径0.6μm)を使用し、そのベースポリマーと水酸化マグネシウムとの配合比が50/50質量比で2.5kg仕込み、ローター回転数20rpm、混練温度が105℃以下になるようにコントロールしながら、0.49MPaの加圧下、20分間混練した。その混練物を二軸一軸押出機40mmφ(ナニワ製造機械社製、温度設定170℃)でストランド化し、冷却水槽、エアーナイフ及びペレタイザーを通して、ペレット化した。得られた水酸化マグネシウム含有量50質量%の水酸化マグネシウム・マスターバッチのMFRは1.9g/10min(190℃、2160g荷重)であった。得られた水酸化マグネシウム・マスターバッチを“MgMB”と略す。
【0067】
〔実施例1〕
本発明における(C)成分として、エチレン・メタアクリル酸共重合体(Polymer-1)〔デュポン社製、MFR 60g/10min〕及び(A)成分として(A1)キレート剤β〔東京化成工業社製、マグネシウムアセチルアセトナート2水和物〕を表1記載の所定割合でドライブレンドし、210℃に設定した二軸押出機ホッパーへフィードし、スクリュー回転数120回転/分、押出量4.5kg/hr、二軸押出機の途中から液体注入ポンプによる水を樹脂押出量に対し3wt%になるように圧入しながら、真空ベントによる揮発分留去の条件下、中和反応(中和度40モル%)し、二軸押出機ダイから押出されるストランドを冷却用水槽に通し、エアーナイフで水切り後、ペレタイザーでペレット化し、均一なアイオノマー材料を得た。この得られた均一で透明なアイオノマー材料のペレットを使用し、ホットプレス成形機にて、縦・横150mmの3mm厚みシートを作成し、目視にて未反応物及び粉塊状がないことを確認した。
【0068】
更に、この均一なアイオノマー材料に酸化チタン及び青色顔料を、表1記載の配合割合でドライブレンドし、195℃に設定した二軸押出機で、真空ベント使用、スクリュー回転数100回転/分、押出量7.0kg/hrの条件下、溶融混練し、二軸押出機ダイから押出されるストランドを冷却用水槽に通し、エアーナイフで水切り後、ペレタイザーでペレット化し、ゴルフボール用材料(アイオノマー1)を得た。得られたゴルフボール用材料の諸特性を評価した。表1に示されるように、このゴルフボール用材料は、適度な硬度と射出成形可能なMFRを示した。
【0069】
上記のアイオノマー1をツーピースゴルフボールのカバー材に使用し、コアにポリブタジエン(BR)架橋体(外径38.9mmφ、質量36.0g、圧縮歪3.35mm)を用い、射出成形機(設定温度ホッパー:160℃、C1〜ヘッド:180〜210℃)を使用し、射出圧力5.9MPa、保持圧力4.9MPa、射出・保持時間8秒、冷却時間25秒の条件下、射出成形を行い、ツーピースゴルフボール(直径42.7mmφ、質量45.5g)を作製した。これらのゴルフボール評価を行い、その結果を表1に記載した。その結果、それに相当する比較例1に比較し、射出成形後のゴルフボール表面研磨(トリミング)でササクレなし(表面スムーズ)、良好な耐擦過傷性、ボール耐久性、高い初速度と反発係数C.O.Rを有していた。
【0070】
〔実施例2〕
実施例1において、(A)成分として(A1)キレート剤βの代わりに(A2)キレート剤α〔キレスト社製、キレストMg、エチレンジアミンテトラ酢酸Mg・2H2O〕及び参考例で調製したMgMBを使用し、表1記載の配合割合で加える以外は、実施例1の操作を繰り返し、均一なアイオノマー2を得た。得られたアイオノマー2及びそのゴルフボールの評価を行い、その結果を表1に記載した。それに相当する比較例2との比較において、良好な耐擦過傷性、ボール耐久性、高い初速度と反発係数C.O.Rを有していた。
【0071】
〔実施例3〕
表1に記載の配合組成で、予め、キレート剤α及び金属酸化物マスターバッチMgMBを除いたNDAを含む各配合成分を二軸押出機で過酸化物POが分解しない溶融温度(170℃)で混練した酸含有ポリマー組成物を得た。次いで、(A)成分として、そのポリマー組成物に表1に示した(A2)キレート剤α及びMgMBの所定量を配合し、210℃設定の反応用二軸押出機で中和度40mol%の中和反応とPO分解を行い、均一なアイオノマー樹脂組成物(アイオノマー3)を得た。得られたアイオノマー3のMFR及び硬度を表1に示した。適度な硬度と射出成形可能なMFRを示していた。そのアイオノマー3を使用し、実施例1のツーピースボール作成の操作を繰り返し、ツーピースゴルフボール(直径42.7mmφ、質量45.5g)を作製した。これらのゴルフボール評価を行い、その結果を表1に記載した。比較例3に比較し、ゴルフボール表面研磨(トリミング)でササクレなし(表面スムーズ)、良好な耐擦過傷性、優れたボール耐久性、高い初速度と反発係数C.O.Rを有したゴルフボールであった。
【0072】
〔比較例1〕
実施例1の比較で、(A)成分として実施例1の(A1)成分キレート剤βの代わりに水酸化マグネシウム〔協和化学社製、キスマ1〕を使用する以外は表2に記載した配合組成で、実施例1の操作を繰り返し、アイオノマー1’を得た。得られたアイオノマー1’及びそのゴルフボールの諸特性を評価し、結果を表2に記載した。
【0073】
実施例1と比較し、ゴルフボールのゴルフボール表面研磨(トリミング)でササクレややあり(表面やや粗い)、ボール耐久性、初速度及び反発係数C.O.R及び耐擦過傷性とも劣っていた。
【0074】
尚、この比較例1において、二軸押出機ダイ部ブレーカープレートに装着していたスクリーンパック60メッシュ(2枚重ね)は、押出途中で未反応の水酸化マグネシウムによる目詰まりが生じたため、取り外して押出を継続した。
【0075】
〔比較例2〕
実施例2の比較で、実施例2の(A1)成分キレート剤αの代わりに炭酸ナトリウム〔トクヤマ社製、トクジェット〕及び水酸化マグネシウム〔協和化学社製、キスマ1〕を使用する以外は表2に記載した配合組成で、実施例1の操作を繰り返し、アイオノマー2’を得た。得られたアイオノマー2’及びそのゴルフボールの諸特性を評価し、結果を表2に記載した。
【0076】
実施例2と比較し、ゴルフボールのゴルフボール表面研磨(トリミング)でササクレややあり(表面やや粗い)、ボール耐久性、初速度及び反発係数C.O.R及び耐擦過傷性とも劣っていた。
【0077】
尚、比較例1と同様に、二軸押出機ダイ部ブレーカープレートに装着していたスクリーンパック60メッシュ(2枚重ね)は、押出途中で未反応の粉による目詰まりが生じたため、取り外して押出を継続した。
【0078】
〔比較例3〕
実施例3の比較で、実施例3のキレート剤α及び金属酸化物マスターバッチMgMBの代わりに炭酸ナトリウム〔トクヤマ社製、トクジェット〕及び水酸化マグネシウム〔協和化学社製、キスマ1〕を使用する以外は表2に記載した配合組成で、実施例3の操作を繰り返し、アイオノマー3’を得た。得られたアイオノマー3’及びそのゴルフボールの諸特性を評価し、結果を表2に記載した。
【0079】
実施例3と比較し、ゴルフボールのゴルフボール表面研磨(トリミング)でササクレあり(表面粗い)、ボール耐久性、初速度及び反発係数C.O.R及び耐擦過傷性とも劣っていた。
【0080】
尚、比較例1及び比較例2と同様に、二軸押出機ダイ部ブレーカープレートに装着していたスクリーンパック60メッシュ(2枚重ね)は、押出途中で未反応の粉による目詰まりが生じたため、取り外して押出を継続した。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
上記表1,2の各アルファベット名の詳細は下記の通りである。
a)キレート剤α
エチレンジアミンテトラ酢酸Mg・2Na・4H2O、キレスト社製
b)キレート剤β
マグネシウムアセチルアセトナート・2H2O、東京化成工業社製
c)MgMB
水酸化マグネシウム/エチレン−メタクリル酸−アクリル酸イソブチル三元共重合体=50/50質量%
d)TPU
脂肪族系ポリウレタン(HMDI−PCL)、DIC-Bayer社製
e)NDA
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、日立化成社製
f)PO
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、NOF社製
g)Polymer-1
エチレン−メタクリル酸共重合体、MFR 60g/10min、デュポン社製
h)Polymer-2
エチレン−メタクリル酸共重合体、MFR 25g/10min、デュポン社製
i)Polymer-3
エチレン−メタクリル酸共重合体、MFR 500g/10min、デュポン社製
j)Polymer-4
エチレン−メタクリル酸−アクリル酸イソブチル三元共重合体、
MFR 31g/10min、デュポン社製
k)Polymer-5
エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸3元共重合体、
MFR 7g/10min、ARKEMA社製
l)二酸化チタン
タイペーク(TIPAQUE)PF737、石原産業社製
m)青色顔料
カラーインデックス Pigment Blue 29、東洋インキ社製
n)Na2CO3 Powder
炭酸ナトリウム(トクジェット)、トクヤマ社製
o)Mg(OH)2 Powder
水酸化マグネシウム(キスマ1)、協和化学社製
【0084】
試験項目の詳細については下記のとおりである。
MFR(g/10min)
JIS−K7210に準拠し、試験温度190℃、試験荷重21.18N(2.16kgf)条件下での測定値。
ショアD硬度
ASTM D−2240に準じて測定したショアD硬度。
破断点伸び(%),破断点強度(MPa)
JIS−K7161に準じて測定した。
たわみ量(mm)
23±1℃の温度で、ゴルフボールを鋼板の上に置き、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1275N(130kgf)に負荷したときのゴルフボールのたわみ量(mm)。
【0085】
初速度(m/sec)
初速はR&Aの承認する装置であるUSGAのドラム回転式の初速計と同方式の初速測定器を用いて測定した。ボールは23±1℃の温度で3時間以上温調し、同温度で測定した。250ポンド(113.4kg)のヘッド(ストライキングマス)を使って打撃速度143.8ft/s(43.83m/s)にてボールを打撃した。10個のボールを各々2回打撃して6.28ft(1.91m)の間を通過する時間を計測し、初速を計算した。15分間でこのサイクルを行った。
【0086】
C.O.R(Coefficient of Restitution)反発係数
空気砲弾によりボールをスチール板に向けて43m/sで発射させたとき、その跳ね返り速度を計測した。反発係数(C.O.R)は、ボール初速と跳ね返り速度との比率である。10回測定の平均値で示した。
【0087】
連続打撃時の耐久性
米国Automated Design Corporation製のADC Ball COR Durability Testerにより、ボールの耐久性を評価した。ボールを空気圧で発射させた後、平行に設置した2枚の金属板に連続的に衝突させ、ボールが割れるまでに要した発射回数の平均値を耐久性とした。この場合、平均値とは、同種のボールを4個用意し、それぞれのボールを発射させて4個のボールがそれぞれ割れるまでに要した発射回数を平均化した値である。試験機のタイプは横型CORであり、金属板への入射速度は43m/sであった。
【0088】
耐擦過傷性
ボールを23±1℃の温度に保温し、ピッチングウェッジをスイングロボットマシンに取り付け、ヘッドスピード33m/sにて打撃し、打撃傷を目視で判断し、下記の点数の基準で評価を行った。
最良 1点
より良い 2点
良い、普通 3点
悪い 4点
より悪い 5点
最悪 6点
【0089】
耐摩耗性
内容量5リットルの筒状物に15個のゴルフボールと1.7リットルの砂を入れて、50rpm、2時間ミキシングした。その後、ボールを取り出し、磨耗による表面の傷つきの度合い、光沢減少の度合いを目視により、次の基準で評価した。
最良 1点
より良い 2点
良い、普通 3点
悪い 4点
より悪い 5点
最悪 6点
【0090】
表面研磨後のボール外観
射出成形後のゴルフボールを#1000のホイールで4.5秒の条件で表面研磨(Trimming)し、「表面スムーズ」、「表面やや粗い」及び「表面粗い」の基準で評価した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(C)成分
(A)金属含有キレート剤(A1)又はそのキレート剤と酸素含有無機金属化合物からなる混合物(A2)、
(B)ジエン系ポリマー,熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなるポリマー、及び
(C)酸含量0.5〜30質量%を有するオレフィン−不飽和カルボン酸2元共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体,及び不飽和カルボン酸無水物,不飽和ジカルボン酸及び不飽和ジカルボン酸ハーフエステル含有ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなる酸含有ポリマー
を必須成分とし、(B)成分及び(C)成分の配合組成物に(A)成分を配合してなることを特徴とするゴルフボール用材料。
【請求項2】
下記(A)及び(C)成分
(A)金属含有キレート剤(A1)又はそのキレート剤と酸素含有無機金属化合物からなる混合物(A2)と、
(C)酸含量0.5〜30質量%を有するオレフィン−不飽和カルボン酸2元共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体,及び不飽和カルボン酸無水物,不飽和ジカルボン酸及び不飽和ジカルボン酸ハーフエステル含有ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなる酸含有ポリマーと
を必須成分とし、(C)成分に(A)成分を配合してなることを特徴とするゴルフボール用材料。
【請求項3】
(A)成分の金属含有キレート剤(A1)が、1価、2価及び3価の金属よりなる群から選択された1種又は2種以上の金属種を含み、アミノカルボン酸、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ポリ燐酸、β−ジケトン、ポリイミン、ポリアミン及びまたはそれらの誘導体のキレート剤よりなる群から選択された1種又は2種以上からなる金属含有キレート剤である請求項1又は2記載のゴルフボール用材料。
【請求項4】
(A)成分の金属含有キレート剤と酸素含有無機金属化合物の混合物(A2)の酸素含有無機金属化合物として、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、及び酸化亜鉛などが挙げられ、1種又は2種以上が使用され、これらの酸素含有無機金属化合物が超微粒子またはマスターバッチの形で使用される請求項1又は2記載のゴルフボール用材料。
【請求項5】
上記の金属含有キレート剤と酸素含有無機金属化合物の混合物(A2)中の金属含有キレート剤の配合割合が質量%で、0.1〜99.9%である請求項4記載のゴルフボール用材料。
【請求項6】
上記の酸素含有無機金属化合物の平均粒径が0.001〜50μmである請求項4記載のゴルフボール用材料。
【請求項7】
上記の酸素含有無機金属化合物の超微粒子であり、その平均粒径が0.005〜0.1μmであり、その粒度分布が0.001〜1.0μmである請求項4記載のゴルフボール用材料。
【請求項8】
上記の酸素含有金属化合物が、炭酸リチウム,炭酸ナトリウム,炭酸カリウム,炭酸マグネシウム,炭酸カルシウム,酸化マグネシウム,酸化亜鉛及び酸化カルシウムの群から選ばれる化合物の1種又は2種以上である請求項7記載のゴルフボール用材料。
【請求項9】
上記の酸素含有無機金属化合物をマスターバッチ化したものであり、その酸素含有無機金属化合物の平均粒径が0.005〜50μmであり、その粒度分布が0.001〜300μmであることを請求項1又は2記載のゴルフボール用材料。
【請求項10】
上記酸素含有金属化合物が、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、及び酸化亜鉛の群から選ばれる化合物の1種又は2種以上である請求項9記載のゴルフボール用材料。
【請求項11】
上記酸素含有無機金属化合物をマスターバッチ化したものが、酸素含有無機金属化合物を20〜80質量%配合したMFR 10g/10分以上のベースポリマー材料からなる請求項9記載のゴルフボール用材料。
【請求項12】
上記酸素含有無機金属化合物をマスターバッチ化したものが、ニーダーと強制フィーダ付き二軸一軸押出機,タンデム型押出機及び真空ベント付き二軸押出機のいずれかを使用し、混練温度が50〜220℃の条件下で調製されたものである請求項9記載のゴルフボール用材料。
【請求項13】
(B)成分が、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアクリレート系ポリマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ジエン系ポリマー、ポリアセタール、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、及びABS系樹脂よりなる群から選択された1種又は2種以上からなるポリマー組成物である請求項1記載のゴルフボール用材料。
【請求項14】
上記(B)成分及び(C)成分の配合割合が、質量比で99/1〜1/99である請求項1記載のゴルフボール用材料。
【請求項15】
上記(B)成分が熱硬化性ポリマーであり、かつ上記(B)成分及び(C)成分の配合割合が、質量比で49/51〜1/99である請求項1記載のゴルフボール用材料。
【請求項16】
上記(B)成分及び(C)成分ポリマー組成物に対する上記(A1)成分及び/又は(A2)成分の配合量が、上記(B)成分及び(C)成分の混合組成物中の酸基の中和度によって選定される請求項1記載のゴルフボール用材料。
【請求項17】
上記(A)〜(C)の必須成分に、顔料,分散剤,相溶化剤,老化防止剤,紫外線吸収剤,光安定剤,架橋剤,スリップ剤よりなる群から選択された添加剤を1種又は2種以上配合する請求項1又は2記載のゴルフボール用材料。
【請求項18】
上記(A)〜(C)の必須成分に、更に、ノルボルネンジカルボン酸無水物及び/又はその誘導体と過酸化物とを配合した請求項1記載のゴルフボール用材料。
【請求項19】
下記(A)〜(C)成分
(A)金属含有キレート剤(A1)又はそのキレート剤と酸素含有無機金属化合物からなる混合物(A2)、
(B)ジエン系ポリマー,熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなるポリマー、及び
(C)酸含量0.5〜30質量%を有するオレフィン−不飽和カルボン酸2元共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体,及び不飽和カルボン酸無水物,不飽和ジカルボン酸及び不飽和ジカルボン酸ハーフエステル含有ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなる酸含有ポリマー
を配合してなるゴルフボール用材料の製造方法において、上記(B)成分及び(C)成分の樹脂組成物に対して、(A1)及び/又は(A2)により、ワンステップで酸含有ポリマー中の酸中和反応を行なうことを特徴とするゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項20】
上記の(A1)及び/又は(A2)による酸含有ポリマー組成物の酸中和反応を、ワンステップで行う反応押出機として、ニーディングディスクゾーンを有するスクリューセグメント配置の二軸押出機を使用した請求項19記載のゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項21】
L/Dが20以上の二軸押出機を使用した請求項20記載のゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項22】
上記二軸押出機のスクリューセグメント配置について、ニーディングディスクゾーンのL/Dが全体L/Dの10〜90%である請求項20記載のゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項23】
上記二軸押出機のニーディングディスクゾーンの構成ディスクが、RKD(Right-handed Kneading Disc)、LKD(Left-handed Kneading Disc)、リバース(Reverse Disc)、各種ニュートラル(Neutral Disc)からなる請求項22記載のゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項24】
上記二軸押出機のスクリュー直径が15mmφ以上である請求項20記載のゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項25】
上記二軸押出機が、ベントポート及びそれに連結した真空ラインを有する請求項20記載のゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項26】
上記二軸押出機が、液体滴下又は液体圧注入付帯設備を有する請求項20記載のゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項27】
上記液体として、ROH(Rは水素又はアルキル基)で示される液体を使用し、その添加量が樹脂押出量に対して0.1〜10質量%である請求項26記載のゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項28】
上記二軸押出機の中和反応条件として、設定温度110〜260℃、押出量が二軸押出機スクリュー径(D)32mmφで、2kg/hr〜60kg/hrであると共に、スクリュー径比D1/D2(但し,D2よりもD1の方が径が大きい)をAとすると、A1.0〜A3.0の範囲内において二軸押出機のスケールアップ時の押出量がAに比例する請求項20記載のゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項29】
請求項1〜17のいずれか1項記載のゴルフボール用材料の成形物を構成要素として用いることを特徴とするゴルフボール。
【請求項30】
請求項1〜17のいずれか1項記載のゴルフボール用材料を、コアと該コアを被覆するカバーとからなるツーピースソリッドゴルフボール、又は、1層以上のコアと該コアを被覆する1層以上の中間層と該中間層を被覆する1層以上のカバーとからなるマルチピースソリッドゴルフボールにおけるカバー材又は中間層材として用いることを特徴とするゴルフボール。

【公開番号】特開2008−163331(P2008−163331A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325719(P2007−325719)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)
【Fターム(参考)】