説明

サイドフェーススプラインの形状測定用の基準設定具、並びにこれを用いた形状測定装置及び方法

【課題】サイドフェーススプラインの被動歯の形状を測定するために適切な基準を設定することができる基準設定具を提供する。
【解決手段】車両用ハブユニット1の軸方向の端面に形成され、かつ等速ジョイントの駆動歯14に噛み合わされる被動歯の形状を測定するために使用される、サイドフェーススプライン15の形状測定用の基準設定具50である。この基準設定具50は、等速ジョイントの駆動歯14の形状を模して円環状に配列して形成された基準歯53と、当該基準歯53に対して所定の関係を有するとともに、当該基準歯53を前記被動歯に噛み合わせた状態で当該被動歯の形状測定の基準位置を設定するために用いられる基準面51,52と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ハブユニットに形成されたサイドフェーススプラインの被動歯(スプライン歯)の形状を測定するために使用される基準設定具、並びにこれを用いた形状測定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持するためにハブユニットが用いられている。また、ハブユニットとして、駆動輪が取り付けられるハブホイールの軸方向内側(車両インナ側)の端面に、等速ジョイントの外輪に形成された駆動歯と噛み合う被動歯(スプライン歯)を有するサイドフェーススプラインを形成したものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。このハブユニットにおいては、自動車のドライブシャフトの回転動力が等速ジョイントから被動歯を経てハブホイールに伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−536737号公報
【特許文献2】特開2008−174178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなサイドフェーススプラインにおける各被動歯は、等速ジョイントの駆動歯に対して適切に噛み合わせるために、歯面寸法、配列ピッチ、回転中心に対する同軸度などの各種寸法に対して所定の精度が要求される。そのため、ハブユニットの製造後には、三次元測定装置等を用いて被動歯の各種寸法を測定し、所定の精度が得られているか否かを確認する検査工程が行われている。
【0005】
サイドフェーススプラインの被動歯は、通常、等速ジョイントの駆動歯との噛み合いにおけるピッチ面を基準面(例えば、図2に二点鎖線αで示される仮想面;以下、「設計基準面」ともいう)に設定して形状が設計されている。しかしながら、この設計基準面は、あくまで仮想面であるため、検査工程において実際の製品に対する被動歯の形状測定に当該設計基準面を用いることができない。そのため、従来は、ハブホイールのフランジ面や車輪嵌合面等の加工面を仮の基準面とすることによってスプライン歯の各種寸法を測定していたが、これでは測定誤差が大きくなり、正確な寸法測定を安定して行うことが困難であった。
【0006】
本発明は、被動歯の形状を測定するために適切な基準を設定することができるサイドフェーススプラインの形状測定用の基準設定具、並びにサイドフェーススプラインの形状測定装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のサイドフェーススプラインの形状測定用の基準設定具は、車両用ハブユニットの軸方向の端面に形成され、かつ等速ジョイントの駆動歯に噛み合わされる被動歯の形状を測定するために使用される、サイドフェーススプラインの形状測定用の基準設定具であって、前記等速ジョイントの駆動歯の形状を模して円環状に配列して形成された基準歯と、当該基準歯に対して所定の関係を有するとともに、前記基準歯を前記被動歯に噛み合わせた状態で当該被動歯の形状測定の基準位置を設定するために用いられる基準面と、を有していることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のサイドフェーススプラインの形状測定装置は、車両用ハブユニットの軸方向端面に形成され、かつ等速ジョイントの駆動歯に噛み合わされる被動歯の形状を測定するサイドフェーススプラインの形状測定装置であって、上記基準設定具と、前記車両用ハブユニットの被動歯に前記基準設定具の前記基準歯を噛み合わせた状態で前記基準面を用いて測定基準位置を設定し、この測定基準位置を基準として前記被動歯の形状を測定する測定部と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のサイドフェーススプラインの形状測定方法は、車両用ハブユニットの軸方向端面に形成され、かつ等速ジョイントの駆動歯に噛み合わされる被動歯の形状を測定するサイドフェーススプラインの形状測定方法であって、上記基準設定具の基準歯を、前記車両用ハブユニットの被動歯に噛み合わせる工程と、前記基準設定具の基準面を用いて測定基準位置を設定する工程と、前記車両用ハブユニットから前記基準設定具を取り外し、前記測定基準位置を基準として前記被動歯の形状を測定する工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
以上の本発明においては、サイドフェーススプラインの被動歯の形状を測定するにあたって基準設定具を使用する。この基準設定具は、等速ジョイントの駆動歯の形状を模して形成された基準歯と、この基準歯に対して所定の関係を有する基準面を有している。基準歯は、駆動歯の形状を模して形成されたものであるため、被動歯に噛み合わせた状態で被動歯と同一の仮想の設計基準面を有することになる。そして、基準歯に対して所定の関係を有する基準面は、当該設計基準面に対しても当然に所定の関係を有することになる。したがって、基準設定具の基準歯をサイドフェーススプラインの被動歯に噛み合わせることによって、被動歯の設計基準面に対して所定の関係を有する測定基準位置を基準設定具の基準面を用いて設定することが可能となる。そして、このように設定された測定基準位置を基準として被動歯の形状を測定することによって、より正確に被動歯の形状を測定することができる。
【0011】
前記基準設定具の前記基準面は、前記基準歯の配列中心軸線に対して直交する第1基準面を含んでいてもよい。
この第1基準面は、車両用ハブユニットの軸心方向に関する被動歯の寸法測定に用いられる測定基準位置を設定するために好適に利用することができる。
また、前記基準設定具の前記基準面は、前記基準歯の配列中心軸線を中心とする円筒面からなる第2基準面を含んでいてもよい。
この第2基準面は、車両用ハブユニットの軸心を基準とした被動歯の寸法測定に用いられる測定基準位置を設定するために好適に利用することができる。
【0012】
前記基準設定具の基準面は、前記等速ジョイントの駆動歯に前記被動歯を噛み合わせた状態で測定器具によって形状が測定される被測定面としても利用することができる。
この場合のサイドフェーススプラインの形状測定方法は、車両用ハブユニットの軸方向端面に形成され、かつ等速ジョイントの駆動歯に噛み合わされる被動歯の形状を測定するサイドフェーススプラインの形状測定方法であって、上記基準設定具の基準歯を前記車両用ハブユニットの被動歯に噛み合わせる工程と、前記車両用ハブユニットの軸心回りに前記被動歯を回転させ、前記基準設定具の基準面の形状を測定する工程と、を含むことが好ましい。
このようにサイドフェーススプラインの被動歯の形状を直接に測定するのではなく、この被動歯に噛み合わせた基準設定具の基準面の形状を測定することによって、例えば、被動歯を回転させたときの被動歯の軸心方向の振れ量や高さ変化、回転径方向の振れ量等を容易に測定することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被動歯の形状を測定するために適切な基準を設定し、正確な測定を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態における車両用ハブユニットを示す断面図である。
【図2】図1に示される車両用ハブユニットのかしめ部の拡大断面図である。
【図3】図2に示されるかしめ部端部の被動歯の測定基準位置を設定する様子を示す車両用ハブユニットの断面説明図である。
【図4】基準設定具の斜視図である。
【図5】測定装置の斜視図である。
【図6】基準設定具を利用した寸法測定の様子を示す車両用ハブユニットの断面説明図である。
【図7】基準設定具を利用した寸法測定の様子を示す車両用ハブユニットの断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態を詳細に説明する。
[車両用ハブユニットの構成]
図1は、本発明の実施形態における車両用ハブユニットを示す断面図であり、図2は、同車両用ハブユニットのかしめ部の拡大断面図である。
車両用ハブユニット1は、自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持するものであり、円筒状のハブ軸2を有するハブホイール3と、前記ハブ軸2の車両インナ側の端部(図1における右側端部)にかしめ固定された内輪構成部材4と、前記ハブ軸2の径方向外方に配設された外輪5と、この外輪5の内周面の外輪軌道5a、5bと、前記ハブ軸2及び内輪構成部材4の外周面の内輪軌道2a、4aとの間に転動自在に配設された複数の転動体6とを備えている。複数の転動体6は、保持器20によって周方向に所定の間隔で保持されている。また、外輪5とハブホイール3との間に形成される環状空間には、当該環状空間を軸方向両端から封止するシール部材21が設けられている。
【0016】
前記ハブホイール3の車両アウタ側端部(図1において左側端部)にはフランジ部7が形成されており、このフランジ部7には、図示しないボルトが嵌合される孔7aが形成され、タイヤのホイールやブレーキディスクなどがボルトにより取り付けられる。また、外輪5の外周面には、ハブユニット1を、車両の懸架装置に支持された車体側部材(図示せず)に取り付けるための固定フランジ8が形成されている。
【0017】
ハブ軸2は、フランジ部7側に形成された大径部9と、この大径部9よりも小径であり且つ当該大径部9と段差部10を介して連続して形成された小径部11とを一体的に有している。そして、大径部9の外周面に外輪5の外輪軌道5aに対応する内輪軌道2aが形成されている。
【0018】
内輪構成部材4は、ハブ軸2の小径部11の外周面に嵌め込まれた後、小径部11の端部がかしめられることによって、段差部10と小径部11のかしめられた部分(かしめ部)12との間に固定される。
【0019】
ハブユニット1には等速ジョイント30を介して駆動軸31の駆動力が伝達される。図示されている等速ジョイント30は、バーフィールド型の等速ジョイントであり、駆動軸31の一端に一体的に連結された内輪32と、この内輪32の外方に配設された外輪33と、内輪32と外輪33との間に配設された複数のボール34と、これら複数のボール34を保持する保持器35とを備えている。
【0020】
等速ジョイント30の外輪33は、略椀形状の外輪筒部33aと、この外輪筒部33aの端面の中心部から突設された外輪軸部33bとを備えており、この外輪軸部33bには、軸方向に沿って孔部36が形成されている。そして、この孔部36の内周面には雌ねじが形成されている。この孔部36の雌ねじにはキャップボルト38の雄ねじ37が螺合され、このキャップボルト38によってハブユニット1と等速ジョイント30が接続される。
【0021】
図2にも示されるように、ハブ軸2の車両インナ側の軸方向端部のかしめ部12の端面には複数の被動歯(スプライン歯)13を有するサイドフェーススプライン15が形成されている。複数の被動歯13は、ハブユニット1の軸心O(図1参照)回りに円環状に配列された状態で、当該軸心Oを中心として放射状に形成されている。また、前記かしめ部12と対向する外輪筒部33aの端面には複数の駆動歯14が外輪33の軸心回りに円環状に配列された状態で、当該軸心を中心として放射状に形成されている。そして、被動歯13と駆動歯14との噛み合いにより、駆動軸31の回転駆動力が等速ジョイント30を介してハブユニット1に伝達される。なお、図2において、被動歯13と外輪筒部33aの駆動歯14との噛み合い部16には斜線が付されている。また、図2には、被動歯13の歯先と歯底に符号13c、13bが付され、駆動歯14の歯先と歯底には符号14c、14bが付されている。
【0022】
被動歯13の数は、例えば37個とされ、駆動歯14は被動歯13と同数とされている。被動歯13と駆動歯14との噛み合い位置にはピッチ面(ピッチ線)αが設定されている。被動歯13及び駆動歯14は、歯面や歯すじ等の寸法がピッチ面αを基準として設計され、例えば、型鍛造により成型される。
【0023】
サイドフェーススプライン15が形成されたハブユニット1は、製造後に、被動歯13の歯面形状、歯すじ、ピッチ等の各種寸法についての測定が行われ、これらの寸法が所定の精度を満たしているか否かの検査する検査工程が実施される。
サイドフェーススプライン15の被動歯13は、設計上、ピッチ面α(図2参照)を基準面として歯面形状等の寸法が設定されるが、この基準面α(以下、「設計基準面」ともいう)はあくまで仮想の面であるため、検査工程でこの設計基準面αを基準にして寸法測定を行うことができない。そのため、本実施形態においては、設計基準面αの代替となる適切な基準面(測定基準面)を設定するために、次に説明する基準設定具50を用いる。
【0024】
図3は、図2に示される被動歯の測定基準面を設定する様子を示す車両用ハブユニットの断面説明図である。図4は、基準設定具50の斜視図である。
基準設定具50は、円環状のブロックから形成されており、その中心軸線β方向の一端面(図3における基準設定具50の下面)には、複数の基準歯53が形成されている。この基準歯53は、等速ジョイント30の駆動歯14の形状を模して形成されたものであり、当該駆動歯14と全く同一の形状で所定の精度を満たした寸法に形成されている。したがって、この基準歯53においても、図2に示されるような仮想の設計基準面αが設定され、この設計基準面αを基準とした正確な寸法で基準歯53が形成されている。また、複数の基準歯53は、中心軸線βに対して所定の精度を満たす同軸度で円環状に配列されている。また、基準設定具50の中心軸線β上には孔55が形成されている。
【0025】
基準設定具50の中心軸線β方向の他端面(図3における基準設定具50の上面)は、平坦な面に形成されている。この他端面は、中心軸線βに対して所定の精度で直交する面であり、基準歯53の設計基準面αに対して所定の精度で平行に形成されている。この基準設定具50の他端面が、被動歯13の寸法測定に使用される第1基準面51を構成する。
【0026】
また、基準設定具50の外周面52は、中心軸線βを中心とする円筒面に形成されている。また、基準設定具50の外周面52は、中心軸線βに対して所定の精度を満たす同軸度、真円度で形成されている。この基準設定具50の外周面52は、被動歯13の寸法測定に使用される第2基準面を構成する。
【0027】
ハブユニット1のサイドフェーススプライン15の被動歯13の寸法測定を行うには、当該被動歯13に基準設定具50の基準歯53を噛み合わせた状態でハブユニット1を三次元測定機(本発明の測定部)60にセットする。この三次元測定機60は、図5に示されるように、定盤61と、この定盤61の前後方向(Y方向)へ移動自在に設けられた門形フレーム62と、この門形フレーム62の水平ビーム63に沿って左右方向(X方向)に移動自在に設けられたスライダ64と、このスライダ64に上下方向(Z方向)に昇降自在に設けられた昇降軸65と、この昇降軸65の下端にホルダ66を介して取り付けられたプローブ67とを有している。このプローブ67の先端には、球状の測定子68が設けられている。
【0028】
そして、三次元測定機60は、プローブ67を三次元方向(XYZ方向)に移動させながら、ワークWの測定部位に測定子68を順次当接させ、当接点における座標値を測定する。そして、この座標値を演算することによってワークWの各種寸法を求めることが可能となっている。なお、この三次元測定機60は、従来公知の市販されているものを使用することができる。
【0029】
本実施形態では、ワークWとして、図3に示されるように、基準設定具50を装着したハブユニット1を定盤61上にセットする。そして、基準設定具50の第1基準面51と第2基準面52とにそれぞれプローブ67の測定子68を当接させ、当該第1基準面51及び第2基準面52の座標をそれぞれ計測する。そして、第1基準面51及び第2基準面52をそれぞれ被動歯13の寸法を測定する際の測定基準面(測定基準位置)A、Bに設定する。
【0030】
次に、定盤61上のハブユニット1から基準設定具50を取り外し、サイドフェーススプライン15の被動歯13に対してプローブ67の測定子68を当接させて、被動歯13の歯面、歯すじ、ピッチ等の各種寸法を計測する。この際、被動歯13に対する測定子68の当接点の座標は、第1基準面51及び第2基準面52により設定された測定基準面A,Bを基準とした座標とする。
【0031】
基準設定具50の第1基準面51は、基準歯53における設計基準面α(図2参照)に平行で、所定の間隔をあけて形成されている。そのため、基準設定具50の基準歯53をハブユニット1の被動歯13に噛み合わせることによって、被動歯13の設計基準面αをそのままZ方向に所定間隔だけ移動した第1基準面51に置き換えることが可能となる。したがって、この第1基準面51を測定基準面Aとし、測定基準面Aを基準に被動歯13の形状を測定することによってより正確な測定が可能となり、被動歯13の各種寸法が所定の精度を満たしているか否かを正確に検査することができる。
【0032】
また、第2基準面52を測定基準面Bとすることによって、基準歯53の中心軸線β(図4参照)の位置(座標)を求めることができる。この中心軸線βは、基準歯53を被動歯13に噛み合わせることによって、被動歯13における設計上の中心軸線に相当することになるため、この中心軸線βに対する各被動歯13の寸法を計測することによって、仮想の中心軸線に対する各被動歯13の同軸度等を正確に求めることができる。
【0033】
以上の測定は、サイドフェーススプライン15の全ての被動歯13に対して行われるものであり、ある程度の時間をかけて行う詳細な測定となる。そのため、全ての製品に対してではなく、同一の型番の製品のなかから一部を抜き取って行う抜き取り検査として好適に実施することができる。
そして、全ての製品に対して行う全数検査は、次に説明する測定方法によって基準設定具50を用いて簡易的に行うことが可能である。
【0034】
図6及び図7は、基準設定具を測定対象とする測定方法を示す車両用ハブユニットの断面説明図である。この図6及び図7に示される測定方法は、上述の測定方法のように各被動歯13の寸法を直接的に測定するのではなく、当該被動歯13に噛み合わせた基準設定具50自体を測定対象とするものである。
【0035】
ハブユニット1のサイドフェーススプライン15は、等速ジョイント30の駆動歯14に精度よく組み付けるために、いくつかの保証項目が設定されている。この保証項目としては、例えば、ハブホイール3を回転させたときの外輪5に対する被動歯13の軸心O方向の振れ量、同じくハブホイール3の軸心Oに対する被動歯13の同軸度(径方向の振れ量)、ハブホイール3のフランジ7面に対する被動歯13の高さの振れ量などがある。そして、これらの保証項目について検査するために、図6及び図7に示される測定方法を実施することができる。
【0036】
まず、図6に示されるように、ハブユニット1のサイドフェーススプライン15に対して基準設定具50を噛み合わせた状態で、基準設定具50をハブユニット1に固定する。本実施形態では、ボルト72によって連結された一対の挟持板70,71でハブホイール3と基準設定具50とを挟み込んでいる。そして、ハブユニット1の外輪5を固定部材74に固定する。
【0037】
そして、ダイヤルゲージ等の測定器具75,76を、基準設定具50の第1基準面51と、第2基準面52とに当接させた状態で、ハブホイール3を軸心O回りに1回転させる。これにより基準設定具50もハブホイール3に追従して1回転し、第1基準面51及び第2基準面52の振れ量を測定器具75,76によって計測することができる。第1基準面51の振れ量は、外輪5に対する被動歯13の軸心O方向の振れ量(基準面αの振れ量)に相当する。また、第2基準面52の振れ量は、ハブホイール3の回転中心(軸心O)に対する径方向の振れ量(同軸度)に相当する。
【0038】
また、図7に示されるように、基準設定具50を固定したハブユニット1のハブホイール3のフランジ7を回転ベース77上に載置する。そして、フランジ7から被動歯13の設計上の基準面αまでの高さに基準設定具50の高さ(基準歯53の設計基準面αから第1基準面51までの間隔)を足し合わせた寸法にブロックゲージ78を合わせ、回転ベース77上に載置する。そして、ダイヤルゲージ等の測定器具79によって、回転ベース77を軸心O回りに1回転させたときの基準設定具50の第1基準面51の高さの変化を、ブロックゲージ78の高さと比較し、第1基準面51に置き換えた被動歯13の設計基準面αの振れを測定する。
【0039】
したがって、図6及び図7に示される測定方法では、被動歯13を直接的に測定しなくても、基準設定具50の第1基準面51及び第2基準面52を測定することによって特定の保証項目について検査を行うことができる。
【0040】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態の基準設定具50は、第1基準面51と第2基準面52との2つの基準面を備えていたが、いずれか1つのみであってもよい。また、基準面は、基準歯53に対して所定の関係を有するものであれば、上述の第1,第2基準面51,52以外の基準面であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1:車両用ハブユニット、3:ハブホイール、12:かしめ部、13:被動歯、14:駆動歯、15:サイドフェーススプライン、30:等速ジョイント、50:基準設定具、51:第1基準面、52:第2基準面、53:基準歯、60:三次元測定機(測定部)、75:測定器具、76:測定器具、79:測定器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ハブユニットの軸方向の端面に形成され、かつ等速ジョイントの駆動歯に噛み合わされる被動歯の形状を測定するために使用される、サイドフェーススプラインの形状測定用の基準設定具であって、
前記等速ジョイントの駆動歯の形状を模して円環状に配列して形成された基準歯と、当該基準歯に対して所定の関係を有するとともに、前記基準歯を前記被動歯に噛み合わせた状態で当該被動歯の形状測定の基準位置を設定するために用いられる基準面と、を有していることを特徴とするサイドフェーススプラインの形状測定用の基準設定具。
【請求項2】
前記基準設定具の前記基準面は、前記基準歯の配列中心軸線に対して直交する第1基準面を含む、請求項1に記載のサイドフェーススプラインの形状測定用の基準設定具。
【請求項3】
前記基準設定具の前記基準面は、前記基準歯の配列中心軸線を中心とする円筒面からなる第2基準面を含む、請求項1又は2に記載のサイドフェーススプラインの形状測定用の基準設定具。
【請求項4】
前記基準面は、前記等速ジョイントの駆動歯に前記被動歯を噛み合わせた状態で測定器具によって形状が測定される被測定面としても利用される、請求項1〜3のいずれかに記載のサイドフェーススプラインの形状測定用の基準設定具。
【請求項5】
車両用ハブユニットの軸方向端面に形成され、かつ等速ジョイントの駆動歯に噛み合わされる被動歯の形状を測定するサイドフェーススプラインの形状測定装置であって、
請求項1〜4のいずれかに記載の基準設定具と、
前記車両用ハブユニットの被動歯に前記基準設定具の前記基準歯を噛み合わせた状態で前記基準面を用いて測定基準位置を設定し、この測定基準位置を基準として前記被動歯の形状を測定する測定部と、を備えていることを特徴とするサイドフェーススプラインの形状測定装置。
【請求項6】
車両用ハブユニットの軸方向端面に形成され、かつ等速ジョイントの駆動歯に噛み合わされる被動歯の形状を測定するサイドフェーススプラインの形状測定方法であって、
請求項1〜4のいずれかに記載の基準設定具の基準歯を、前記車両用ハブユニットの被動歯に噛み合わせる工程と、
前記基準設定具の基準面を用いて測定基準位置を設定する工程と、
前記車両用ハブユニットから前記基準設定具を取り外し、前記測定基準位置を基準として前記被動歯の形状を測定する工程と、を含むことを特徴とするサイドフェーススプラインの形状測定方法。
【請求項7】
車両用ハブユニットの軸方向端面に形成され、かつ等速ジョイントの駆動歯に噛み合わされる被動歯の形状を測定するサイドフェーススプラインの形状測定方法であって、
請求項4に記載の基準設定具の基準歯を前記車両用ハブユニットの被動歯に噛み合わせる工程と、
前記車両用ハブユニットの軸心回りに前記被動歯を回転させ、前記基準設定具の基準面の形状を測定する工程と、を含むことを特徴とするサイドフェーススプラインの形状測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−50402(P2013−50402A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188900(P2011−188900)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】