説明

サイドマッドガード及びそのサイドマッドガードが取り付けられる車両のロッカー部

【課題】簡易な構造で車体との隙間が生じ難く、美観を損なわないサイドマッドガード及びそのサイドマッドガードが取り付けられる車両のロッカー部を提供する。
【解決手段】サイドマッドガード1は、保護部21と整流部22とを備えている。保護部21は、下フランジ部10の下端部10aを覆うと共に、垂直面18、水平面17及び傾斜面16に接するような、略コの字形状を有している。凹溝20には耐チップ塗装が施されており、保護部21がクリップ19で取り付けられる際、耐チップ塗装に密着されることにより、隙間なく保護部21が凹溝20に取り付けられる。一方、整流部22は、一端が保護部21に接続され、他端が下端部15aよりも車幅方向外側に突出している。さらに整流部22は、車幅方向外側に向かって、傾斜面16の傾きと同じ傾きを有しながら下方に傾いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サイドマッドガード及びそのサイドマッドガードが取り付けられる車両のロッカー部に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、特に、乗用車のロッカー部底面は、前輪によって跳ね上げられた泥や小石が当たって傷つきやすい部位である。この部位を保護するために、塗料を厚く塗布することや、傷つきにくく錆の発生しない樹脂製の保護部材を取り付けることが行われている。この保護部材は、一般にサイドマッドガードと呼ばれている。
一方で、サイドマッドガードの形状を工夫することによって、空気整流機能を付与し、走行安定性を高めることも行われている。例えば、特許文献1〜3には、ロッカー部底面から側方に突出した部分を有するサイドマッドガードが開示されている。
【0003】
【特許文献1】実開昭58−122667号公報
【特許文献2】特開昭62−210179号公報
【特許文献3】実開平05−026749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなサイドマッドガードは、ロッカー部全体に渡って配置されることから細長い形状となると共に樹脂製であるため、剛性が低くなる。このため、特許文献1に係るサイドマッドガードでは、ロッカー部側面とサイドマッドガードとの間に隙間が発生しやすく、美観が損なわれるという問題点があった。
特許文献2では、特許文献1に係る問題点を解決するために、サイドマッドガードの上端にシール部材を配置しているが、シール部材という新たな部品が必要となる上に、車幅方向にて3箇所の固定箇所が必要となるといった問題点があった。
特許文献3では、部分的に剛性の高い樹脂素材を使用すると共に、その形状を閉断面とすることで剛性を高めているが、製造工程及びコストが増加するといった問題点があった。
【0005】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、簡易な構造で車体との隙間が生じ難く、美観を損なわないサイドマッドガード及びそのサイドマッドガードが取り付けられる車両のロッカー部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係るサイドマッドガードは、車両の底面両側にて前後車輪間に位置するロッカー部を、下側より覆う樹脂製保護部材であり、前記ロッカー部には車両前後方向に延びる凹溝が形成されるとともに、前記凹溝の両側部に当接するように取り付けられる保護部と、一端が前記保護部に接続され、他端が前記ロッカー部の側面の下端部よりも車幅方向外側に突出する整流部とを備える。
保護部が、前後車輪間にて車両前後方向に沿い、凹溝の両側部に当接する構造であり、樹脂の有する弾性によって保護部が凹溝の両側部に当接されるので、車両前後方向にわたり隙間が生じにくい。また、車両底面との当接部位が凹溝に沿い車両前後方向に維持されるので、ロッカー部に直接当接していない部位についても、撓みのばらつきが小さくなり、美観を損なうことがない。
請求項3の発明に係るサイドマッドガードは、車両の底面両側にて前後車輪間に位置するロッカー部を、下側より覆う樹脂製保護部材であり、車両前後方向に延びる凹溝が形成された前記ロッカー部に対し、
前記凹溝の側部に当接し、少なくとも一部が前記凹溝内に配置されるとともに、前記凹溝の溝底部に車両前後方向の複数箇所で固定される保護部と、一端が前記保護部に接続され、他端が前記ロッカー部の側面の下端部よりも車幅方向外側に突出する整流部とを備える。
保護部は、前記凹溝の溝底部にて複数箇所で固定され、凹溝の側部にて、樹脂の弾性を利用して当接されるので、車両前後方向にわたり隙間が生じにくい。また、車両底面との当接部位が凹溝に沿い車両前後方向に維持されるので、ロッカー部に直接当接していない部位についても、撓みのよるばらつきが小さくなり、美観を損なうことがない。
整流部が、車幅方向外側に向かって下方に傾いていることが好ましい。
このサイドマッドガードが取り付けられる車両のロッカー部は、ロッカー部の側面が、車幅方向外側に向かって凸状の曲面を有すると共に、下方に向かうに従って車幅方向内側に傾く。ロッカー部の側面が、車幅方向外側に向かって凸状の曲面を有すると共に、下方に向かうに従って車幅方向内側に傾いているため、保護部とロッカー部の側面の下端部との接する部分が見えにくくなる。これにより、保護部とロッカー部の側面の下端部との間に隙間が生じている場合でも、このような隙間が見えにくくなるので、美観が損なわれなくなる。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、車両の底面両側にて前後車輪間に位置するロッカー部を下側より覆うサイドマッドガードは樹脂製であり、車両前後方向に延びる凹溝が形成されたロッカー部に対し、凹溝の両側部に当接するように取り付けられる保護部と、一端が保護部に接続され、他端がロッカー部の側面の下端部よりも車幅方向外側に突出する整流部とを備えるので、簡易な構造で車体との隙間が生じ難く、美観を損なわないようにすることができる。また、凹溝の側部に当接し、少なくとも一部が凹溝内に配置されるとともに、凹溝の溝底部に車両前後方向の複数箇所で固定される保護部と、一端が保護部に接続され、他端がロッカー部の側面の下端部よりも車幅方向外側に突出する整流部とを備えるので、簡易な構造で車体との隙間が生じ難く、美観を損なわないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、この実施の形態に係るサイドマッドガード1は、車両2のロッカー部3の底面において、前輪4と後輪5との間に取り付けられている。
図2に示されるように、ロッカー部3は、サイドアウタパネル6と、ロッカーアウタレインフォス7と、ロッカーレインフォス8とを備えている。サイドアウタパネル6と、ロッカーアウタレインフォス7と、ロッカーレインフォス8とは、それぞれの両端部が重なりあって、上フランジ部9と下フランジ部10とを構成する。上フランジ部9には、ウェザーストリップ11が取り付けられている。
ロッカー部3の上方には、車両2のドア12が開閉可能に設けられ、ドア12のドアインナパネル13がウェザーストリップ11に対して弾性的に接触するようになっている。
【0009】
サイドアウタパネル6は、ドアアウタパネル14の下方において、車幅方向外側に向かって凸状の曲面を有すると共に、下方に向かうに従って車幅方向内側に傾いている側面15を有している。ここで、側面15は、ロッカー部3の側面を構成する。サイドアウタパネル6は、側面15の下端部15aにおいて上方に向かって延びるようになり、一端が下端部15aに接続する傾斜面16が形成される。傾斜面16の他端は、ほぼ水平な水平面17の一端と接続されている。水平面17の他端は、鉛直下方に延びる垂直面18と接続している。垂直面18は、ロッカーアウタレインフォス7及びロッカーレインフォス8の端部と共に、下フランジ部10を構成する。傾斜面16、底面となる水平面17及び垂直面18によって、ロッカー部3の底面側部23に凹溝20が構成されている。
【0010】
サイドマッドガード1は樹脂製であり、美観を損なわないように、カラーを目立たない黒色にしている。サイドマッドガード1は、凹溝20の両側部である垂直面18及び傾斜面16に当接するようにしてクリップ19によって取り付けられる保護部21と、下端部15aよりも車幅方向外側に突出した整流部22とを備えている。
保護部21は、下フランジ部10の下端部10aを覆うと共に、垂直面18、水平面17及び傾斜面16に接するような、略コの字形状を有している。凹溝20には耐チップ塗装が施されており、保護部21がクリップ19で取り付けられる際、樹脂の有する弾性により耐チップ塗装に密着されることにより、隙間なく保護部21が凹溝20に取り付けられる。
一方、整流部22は、一端が保護部21に接続され、他端が下端部15aよりも車幅方向外側に突出している。さらに整流部22は、車幅方向外側に向かって、傾斜面16の傾きと同じ傾きを有しながら下方に傾いている。
【0011】
このような形状のサイドマッドガード1を車両2に取り付けると、保護部21は、跳ね上げられた泥や小石から車両2の底面が傷つくのを防ぎ、整流部22は、車両2が走行する際に、ロッカー部3横の空気の流れを整流するので、サイドマッドガード1は、車両2の底面を保護すると共に、車両2の直進安定性を向上することができる。
また、樹脂の有する弾性によって、保護部21が凹溝20に当接されるので、保護部21と下端部15aとの間に隙間が生じにくくなる。保護部21と凹溝20との当接部位は、凹溝20に沿い車両前後方向に延びるので、サイドマッドガード1の車両と接しない部分についても、撓みのバラツキが小さくなり、サイドマッドガード1を取り付けることによって、美観が損なわれるのを回避できる。さらに、保護部21の形状を、略コの字形状とすることによって、簡易な構造でありながら、樹脂製のサイドマッドガード1の剛性を向上することができる。
さらに、サイドアウタパネル6の側面15が、車幅方向外側に向かって凸状の曲面を有すると共に、下方に向かうに従って車幅方向内側に傾くことにより、保護部21と下端部15aとの接する部分が見えにくくなるので、たとえ保護部21と下端部15aとの間に隙間が生じても、美観が損なわれないようにすることができる。
【0012】
なお、本発明は前述の実施の形態に、限定されるものではない。例えば、前述の実施の形態では、サイドマッドガード1の保護部21が凹溝20内に密着する構造としたが、この構造に限定はされない。サイドマッドガードが外側に広がる方向に弾性力が作用する形で、凹溝の傾斜面と垂直面に当接される構造とした上で、保護部と凹溝の水平面との間が隙間を持って固定されていても良い。また、保護部が、水平面と傾斜面に接していれば、図3に示すように、保護部と垂直面との間には隙間があっても、サイドマッドガードの弾性を利用し、美観に関わる隙間を抑制することが同様にできる。つまり、ロッカー部の凹溝形状と樹脂製サイドマッドガードの弾性を利用し、両者の当接部位を車両の前後方向に延びるように形成することで美観に関わる隙間の発生を抑制できるため、この趣旨に沿う範囲で適宜変更が可能である。
なお、固定手段自体もクリップに限定されず、ボルトとナット、接着剤等適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態に係る車両の下方から見た斜視図である。
【図2】実施の形態に係るサイドマッドガードの断面図である。
【図3】他の実施の形態に係るサイドマッドガードの断面図である。
【符号の説明】
【0014】
1 サイドマッドガード、2 車両、3 ロッカー部、6 サイドアウタパネル(ロッカー部)、7 ロッカーアウタレインフォス(ロッカー部)、8 ロッカーレインフォス(ロッカー部)、15 側面(ロッカー部の側面)、15a 下端部、20 凹溝、21 保護部、22 整流部、23 底面側部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の底面両側にて前後車輪間に位置するロッカー部を、下側より覆う樹脂製保護部材であるサイドマッドガードにおいて、
車両前後方向に延びる凹溝が形成された前記ロッカー部に対し、
前記凹溝の両側部に当接するように取り付けられる保護部と、
一端が前記保護部に接続され、他端が前記ロッカー部の側面の下端部よりも車幅方向外側に突出する整流部と
を備えるサイドマッドガード。
【請求項2】
前記保護部は、少なくともその一部が凹溝内に配置されるとともに、前記凹溝内にて車両前後方向の複数箇所で前記ロッカー部に固定される請求項1に記載のサイドマッドガード。
【請求項3】
車両の底面両側にて前後車輪間に位置するロッカー部を、下側より覆う樹脂製保護部材であるサイドマッドガードにおいて、
車両前後方向に延びる凹溝が形成された前記ロッカー部に対し、
前記凹溝の側部に当接し、少なくとも一部が前記凹溝内に配置されるとともに、前記凹溝の溝底部に車両前後方向の複数箇所で固定される保護部と、
一端が前記保護部に接続され、他端が前記ロッカー部の側面の下端部よりも車幅方向外側に突出する整流部と
を備えるサイドマッドガード。
【請求項4】
前記整流部が、車幅方向外側に向かって下方に傾く請求項1から3の何れか一項に記載のサイドマッドガード。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のサイドマッドガードが取り付けられる車両のロッカー部であって、
前記ロッカー部の側面が、車幅方向外側に向かって凸状の曲面を有すると共に、下方に向かうに従って車幅方向内側に傾くロッカー部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−160162(P2006−160162A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357340(P2004−357340)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】