説明

サイドミラーおよび注意喚起装置

【課題】視線を車外に向けている運転者に対し、視覚的に瞬時に情報を伝達する。
【解決手段】鏡面の裏面とフードの内壁とにより形成される空間に発光体を備え、鏡面の周囲とフードの内壁との隙間から漏れた発光体の光により、サイドミラー自体を一つの警報表示装置として利用する。このサイドミラーを左右にそれぞれ装着した車両に搭載された警報手段が車両の右側の対象物に対して警報を行ったときには、右側のサイドミラーに備えられた発光体を発光させ、警報手段が車両の左側の対象物に対して警報を行ったときには、左側のサイドミラーに備えられた発光体を発光させ、警報手段が車両の正面の対象物に対して警報を行ったときには、左右双方のサイドミラーに備えられた発光体を発光させる。また、ハザードランプと連動してサイドミラーに備えられた発光体を発光させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックやバスなどの大型車両に利用する。特に、運転者に対する警報の報知技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転中に、夜間や天候不良などのために歩行者や先行車あるいは後続車を確認し難いといった事態を回避するために、レーダや赤外線カメラ装置などを用いて歩行者や先行車あるいは後続車を探知し、これを運転者に知らせる警報装置が普及しつつある(例えば、特許文献1または2参照)。
【0003】
このような警報装置では、運転者に報知する情報が運転室内に設けられた画面上に表示される。昨今では、カーナビゲーション・システムが広く普及しているため、この画面を利用することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−220911号公報
【特許文献2】特開2004−345495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の警報装置では、前述したように、運転者に報知する情報が運転室内に設けられた画面上に表示される。しかしながら、運転中の運転者の視線は、当然のことながら車外に向けられている。したがって、運転中に視線を運転室内の画面上に向けることは無理がある。そこで、従来は、運転者が運転室内の画面を見る必要が少ないように、音声や警報音によって運転者に情報を知らせることが行われている。
【0006】
しかし、音声による通知は、複数の単語を用いてその意味を運転者に伝えるために、瞬時に情報を伝達する点において視覚的な表示による情報伝達方法には及ばない。また、警報音により詳細な情報を伝達することは困難である。例えば、警報の対象物が車両の前後左右のいずれの方向にあるのかといった細かい情報を警報音だけで伝達することは困難である。
【0007】
特に、トラックやバスなどの大型車両では、一般的に表示画面は運転室の下方にあり、乗用車と比べるとさらに運転中の視認が困難である。
【0008】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、視線を車外に向けている運転者に対し、視覚的に瞬時に情報を伝達することができるサイドミラーおよび注意喚起装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の観点は、鏡面と、この鏡面の周囲と内壁との間に一定の隙間を有し、この鏡面を保持するフードとを備えたサイドミラーであって、前記鏡面の裏面と前記フードの内壁とにより形成される空間に発光体を備えたことを特徴とする。
【0010】
これによれば、鏡面の周囲と内壁との間の隙間から漏れた発光体の光により、鏡面の周囲が輝いているかのように見える。これにより、サイドミラー自体が一つの警報表示装置としての機能を有する。
【0011】
本発明の第二の観点は、本発明のサイドミラーと、このサイドミラーを左右にそれぞれ装着した車両に搭載された警報手段が車両の右側の対象物に対して警報を行ったときには、右側の前記サイドミラーに備えられた前記発光体を発光させ、前記警報手段が車両の左側の対象物に対して警報を行ったときには、左側の前記サイドミラーに備えられた前記発光体を発光させる手段とを備えた注意喚起装置である。
【0012】
また、前記警報手段が車両の正面の対象物に対して警報を行ったときには、左右双方の前記サイドミラーに備えられた前記発光体を発光させる手段を備えることができる。
【0013】
これによれば、運転中の運転者は、視線を車外に向けたままの状態で警報手段が行った警報の対象物の方向を知ることができる。
【0014】
また、本発明のサイドミラーを左右にそれぞれ装着した車両のハザードランプと連動して前記サイドミラーに備えられた前記発光体を発光させる手段を備えることもできる。これによれば、後続車に対しても有効な警報を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、視線を車外に向けている運転者に対し、視覚的に瞬時に情報を伝達することができる。さらに、後続車に対しても有効な警報を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明実施例のサイドミラーおよび注意喚起装置を図1ないし図9を参照して説明する。図1は本実施例のサイドミラー4を側面から見た図である。本実施例のサイドミラー4は、図1に示すように、鏡面1と、この鏡面1の周囲と内壁との間に一定の隙間を有し、この鏡面1を保持するフード2とを備える。ここで、特徴とするところは、鏡面1の裏面とフード2の内壁とにより形成される空間に発光体3を備えたところにある。図2は本実施例のサイドミラー4を上面から見た図である。
【0017】
なお、鏡面1の周囲とフード2の内壁との間の隙間は、フード2を固定したまま鏡面1の位置を調整するため、従来から必然的に設けられているものであり、本発明を実現するために特別に設ける必要はない。また、発光体3への電源供給および遠隔制御技術については説明を省略するが、鏡面1の位置を運転席から遠隔調整するために、フード2内にモータを備える技術が広く普及しているので、この技術を応用することにより容易に実現できる。
【0018】
発光体3が発する光は、鏡面1の裏面またはフード2の内壁に反射しながら、鏡面1とフード2との隙間からサイドミラー4の外部に放射される。図3は本実施例のサイドミラー4を外部(例えば、運転室内)から見た図であるが、図3に示すように、発光体3が発光すると鏡面1の周囲が輝いているかのように見える。
【0019】
発光体3の発光色は、注意喚起が目的である故に、赤色や黄色などが望ましいが、緑色や青色など用途に応じて様々な発光色を用いることができる。発光体3は電球や高輝度のLEDによって実現できる。また、鏡面1の裏面およびフード2の内壁は、光の反射率を高めるために白色または銀色などに塗装したり銀メッキを施す。もしくは、発光体3自体の発光色は白色とし、フード2の内壁に赤色や黄色などの塗装を施しても所望する発光色を実現することができる。
【0020】
次に、本実施例のサイドミラー4を用いた注意喚起装置を図4を参照して説明する。図4は本実施例の注意喚起装置を搭載した車両を示す図である。本実施例の注意喚起装置は、図4に示すように、右側のサイドミラー4−Rおよび左側のサイドミラー4−L、赤外線カメラ装置5、警報制御部6、表示部7、右側のレーダ8−Rおよび左側のレーダ8−Lを備える。
【0021】
サイドミラー4−Rおよび4−Lはそれぞれ図1〜図3に示した構成を有する。赤外線カメラ装置5は歩行者の発する赤外線を画像情報として捉える機能を有する。また、右側のレーダ8−Rは車両9の右車線から接近する後続車を検出し、左側のレーダ8−Lは車両9の左車線から接近する後続車を検出する。
【0022】
警報制御部6は赤外線カメラ装置5により撮影された画像を解析し、歩行者を検出する機能と、レーダ8−Rおよび8−Lの出力を監視し、後続車を検出する機能と、サイドミラー4−Rおよび4−Lの発光体3の発光を制御する機能と、運転室内に設けられた表示部7に画像情報を表示する機能とを有する。
【0023】
なお、本実施例においては表示部7に表示する画像情報は、補助的なものであり、サイドミラー4−Rおよび4−Lによる表示によって運転者は警報の意味を十分に把握することができる。
【0024】
次に、注意喚起装置の動作を図5〜図8を参照して説明する。図5は右前方に歩行者を検出した例を示す図である。図6は左前方に歩行者を検出した例を示す図である。図7は前方に歩行者を検出した例を示す図である。図8は警報制御部6の動作を示すフローチャートである。
【0025】
図8に示すように、警報制御部6は、車速情報を監視し(S1)、走行中であるか否かを判断する(S2)。以下のステップは、走行中のみ有効となる。これにより、駐停車中や信号待ち中に無用な警報出力が行われることを回避できる。
【0026】
警報制御部6は、赤外線カメラ装置5により撮影された画像情報を解析する(S3)。本実施例では、赤外線カメラ装置5により撮影された画像情報は被写体の温度差を表すサーモグラフィであり、これにより路面よりも温度の高い歩行者を検出することができる(S4)。
【0027】
歩行者を右前方に検出したときには(S5)、図5に示すように、右側のサイドミラー4−Rの発光体3を発光させる(S15)。また、歩行者を左前方に検出したときには(S6)、図6に示すように、左側のサイドミラー4−Lの発光体3を発光させる(S13)。また、歩行者を前方に検出したときには(S6)、図7に示すように、双方のサイドミラー4−Rおよび4−Lの発光体3を発光させる(S14)。
【0028】
これにより、運転者は、サイドミラー4−Rまたは4−Lが光を放った側の方向を注視することにより、歩行者の存在に対する注意を喚起することができる。
【0029】
ここでは、赤外線カメラ装置5を用いて歩行者を検出する例を示したが、歩行者に限定せず、レーダ等を用いて様々な障害物を検出する例であっても同様に説明することができる。
【0030】
上記のステップS3〜S6の手順と並行して以下の手順S7〜S12も行われる。警報制御部6は、レーダ8−Rおよび8−Lの出力を監視し(S7)、右後方に後続車が検出され(S8、S9)、自車両9の右方向指示操作が行われている場合には(S10)、自車両9は右車線に車線変更をしようとしていると判断できるので運転者の右車線への注意を喚起するために、右側のサイドミラー4−Rの発光体3を発光させる(S15)。また、左後方に後続車が検出され(S8、S9、S11)、自車両9の左方向指示操作が行われている場合には(S12)、自車両9は左車線に車線変更をしようとしていると判断できるので運転者の左車線への注意を喚起するために、左側のサイドミラー4−Lの発光体3を発光させる(S13)。
【0031】
これにより、運転者は、光を放った側のサイドミラー4−Rまたは4−Lに写し出される後続車の存在に対する注意を喚起することができる。
【0032】
また、サイドミラー4−Rおよび4−Lによる警報がステップS3〜S6によって検出される前方の歩行者に対する警報であるのか、あるいは、ステップS7〜S12によって検出される後続車に対する警報であるのかを運転者が識別できるように、前者の場合と後者の場合とでサイドミラー4−Rおよび4−Lの点滅パターンを変える実施例も考えられる。
【0033】
図9はサイドミラー4−Rおよび4−Lの点滅パターンを示す図である。図9に示すように、歩行者検出の場合と後続車検出の場合とで点滅パターンを変えることにより、運転者は、警報が前方の歩行者に対する警報であるのか、あるいは、後続車に対する警報であるのかを識別することができる。点滅パターンは、図9の例以外であってもよいが、方向指示器の点滅パターンとは明らかに異なる点滅パターンとすることが望ましい。これは前述した他の実施例においても同様であり、他の実施例では、点滅させずに連続点灯で用いるか、点滅させる場合はやはり方向指示器の点滅パターンとは明らかに異なる点滅パターンとすることが望ましい。
【0034】
あるいは、歩行者検出と後続車検出とで異なる発光色(赤色と黄色など)を用いて運転者に報知してもよい。この実施例は、発光色の異なる二つの発光体3をフード2内に併設する、もしくは、発光体3として二色発光のLEDを用いるなどにより実現できる。
【0035】
また、上述した警報を行うのは夜間あるいは悪天候時のみとするような構成としてもよい。これは日照センサや降雨センサなどを用いることにより実現できる。
【0036】
さらに、その他の実施例として図10に示すように、ハザードランプ点灯に連動してサイドミラー4−Rおよび4−Lを点灯させることもできる。これにより、後続車に対しても有効な警報を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、視線を車外に向けている運転者に対し、視覚的に瞬時に情報を伝達することができる。さらに、後続車に対しても有効な警報を行うことができる。これにより、安全運転の援助に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施例のサイドミラーを側面から見た図。
【図2】本実施例のサイドミラーを上面から見た図。
【図3】本実施例のサイドミラーを外部(運転室内)から見た図。
【図4】本実施例の注意喚起装置を搭載した車両を示す図。
【図5】右前方に歩行者を検出した例を示す図。
【図6】左前方に歩行者を検出した例を示す図。
【図7】前方に歩行者を検出した例を示す図。
【図8】警報制御部の動作を示すフローチャート。
【図9】サイドミラーの点滅周期を示す図。
【図10】ハザードランプ点灯に同期してサイドミラーを点灯させる実施例を説明するための図。
【符号の説明】
【0039】
1 鏡面
2 フード
3 発光体
4、4−R、4−L サイドミラー
5 赤外線カメラ装置
6 警報制御部
7 表示部
8−R、8−L レーダ
9 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡面と、この鏡面の周囲と内壁との間に一定の隙間を有し、この鏡面を保持するフードとを備えたサイドミラーにおいて、
前記鏡面の裏面と前記フードの内壁とにより形成される空間に発光体を備えたことを特徴とするサイドミラー。
【請求項2】
請求項1記載のサイドミラーと、
このサイドミラーを左右にそれぞれ装着した車両に搭載された警報手段が車両の右側の対象物に対して警報を行ったときには、右側の前記サイドミラーに備えられた前記発光体を発光させ、前記警報手段が車両の左側の対象物に対して警報を行ったときには、左側の前記サイドミラーに備えられた前記発光体を発光させる手段と
を備えた注意喚起装置。
【請求項3】
前記警報手段が車両の正面の対象物に対して警報を行ったときには、左右双方の前記サイドミラーに備えられた前記発光体を発光させる手段を備えた請求項2記載の注意喚起装置。
【請求項4】
前記サイドミラーを左右にそれぞれ装着した車両のハザードランプと連動して前記サイドミラーに備えられた前記発光体を発光させる手段を備えた請求項2記載の注意喚起装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−195330(P2008−195330A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34964(P2007−34964)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】