説明

サインフィルム

【課題】インク受理能を有する基材を用いたサインフィルムの剥離後に、車両表面に生じる段差を抑えることができるサインフィルムを提供する。
【解決手段】サインフィルムがインクジェット方式による画像形成が可能な基材と、その基材の一方の面上に形成された粘着剤層と、を備えており、その粘着剤層が合成ゴム又はシリコーン系樹脂を主体とするものを用いる。上記インクジェット方式による画像形成が可能な基材としては塩化ビニル系樹脂を主体とするものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット方式により画像を形成する基材を用いたサインフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
基材がインク受理能を有するサインフィルムは、インクの定着が良いため鮮やかな表示が可能である。特に、屋外看板、サイン、ディスプレイ、車両広告、ビル広告等の耐水性、耐候性が要求される表示材料として有用である。
【0003】
印刷方法としては、スクリーン印刷やインクジェットプリンター等の方式を用いた印刷方法が行われている。特に、インクジェットプリンターは、一般的な可塑化塩化ビニル系樹脂フィルムに対して特別な表面処理なしに印刷が可能なことや、少ロット印刷が可能なことから、近年めざましく普及しており、前記表示材料として、耐候性の優れた塩化ビニル基材マーキングフィルムに、インクジェットプリンターで印刷した粘着シートが用いられている(特許文献1)。
【0004】
これらの用途では、粘着シートの表面に印刷された情報を広告等の目的で一定期間被着体に貼付し、表示材料として使用した後、新たな情報を印刷した粘着シートと貼り替えるために再剥離する必要がある。
【0005】
ところが、サインフィルム剥離後のサインフィルム周縁部に塗膜段差が生じたりするため、車両の美観を損なう。特に車両には、屋外看板等と異なり、高い意匠性が求められていることから、このような塗膜段差が生じると、たとえサインフィルム剥離後に生じる車両表面の塗膜段差が微小なものであっても大きな問題になる。その結果、上記塗膜段差を抑えるような技術が強く求められている。
【特許文献1】特開2003−321657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、基材がインク受理能を有するサインフィルムの剥離後に、車両表面に生じる段差を抑えることができるサインフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を重ねた。その結果、車両に貼付するサインフィルムが、インクジェット方式による画像形成が可能な基材と、その基材の一方の面上に形成された粘着剤層と、を備えており、その粘着剤層が合成ゴム又はシリコーン系樹脂を主体とすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0008】
(1) 車両に貼付するサインフィルムであって、インクジェット方式による画像形成が可能な基材と、前記基材の一方の面上に形成された粘着剤層と、を備え、前記粘着剤層が、合成ゴムを主体とするサインフィルム。
【0009】
(2) 車両に貼付するサインフィルムであって、インクジェット方式による画像形成が可能な基材と、前記基材の一方の面上に形成された粘着剤層と、を備え、前記粘着剤層がシリコーン系樹脂を主体とするサインフィルム。
【0010】
(3) 前記シリコーン系樹脂が、付加型シリコーン系樹脂である(2)に記載のサインフィルム。
【0011】
(4) 前記基材が、塩化ビニル系樹脂を主体とする(1)から(3)のいずれかに記載のサインフィルム。
【0012】
(5) 前記基材の他方の面上に積層された保護フィルムをさらに備える(1)から(4)のいずれかに記載のサインフィルム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両に貼付するサインフィルムが、添ってインクジェット方式による画像形成が可能な基材と、その基材の一方の面上に形成された粘着剤層と、を備えており、その粘着剤層が合成ゴム又はシリコーン系樹脂を主体とすることで、サインフィルムを車両から剥離後に、車両表面に生じる段差を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0015】
<サインフィルム>
本発明のサインフィルムは、インクジェット方式による画像形成が可能な基材と、その基材の一方の面上に形成された粘着剤層と、を備えており、その粘着剤層が合成ゴム又はシリコーン系樹脂を主体とする。
【0016】
本発明のサインフィルムは、基材の画像を形成した面上に、さらに保護フィルムを積層することが好ましい。
【0017】
本発明のサインフィルムは自動車、原動機付自転車、自転車、軽車両、バス、電車、建設車両、農業車両、産業車両、軍用車両等の車両に貼付され、ラッピング広告として用いられる。
【0018】
以下、本発明のサインフィルムについて、粘着剤層、基材、保護フィルムの順で説明する。
【0019】
[粘着剤層]
本発明のサインフィルムにおける粘着剤層は車両と直接接する層である。本発明のサインフィルムにおいて、粘着剤層に含まれる樹脂の主成分は、合成ゴム又はシリコーン系樹脂である。通常、車両の表面は、アクリル系やポリエステル系、ポリウレタン系の塗装塗膜で形成されていることから、これらの樹脂系とは異なった合成ゴムやシリコーン系樹脂を用いることにより、粘着剤層と車両表面との間の物質のやり取りを抑えることができる。この物質のやり取りを抑えることで、粘着剤層や車両表面の質量の変化を伴いながら車両の表面形状が変化する現象を防ぐことができる。そして、サインフィルム剥離後に車両表面に生じる段差を抑えることができる。
【0020】
粘着剤層と車両表面との間の物質のやり取りは、溶解現象と密接な関係があり、粘着剤層と車両表面との溶解度パラメータの値が近いほど、粘着剤層と車両表面とは物質のやり取りを行いやすい傾向があると推定される。
【0021】
また、粘着剤層に含まれる樹脂の主成分と車両表面に含まれる樹脂の主成分とは、溶解度パラメータの値が離れている方が、粘着剤層と車両表面との物質のやり取りを抑えるという観点からは好ましい。しかし、溶解度パラメータが、あまりに大きく離れてしまうと粘着剤層と車両表面とが接着しづらくなる。そこで、粘着剤層に含まれる樹脂の主成分と車両表面に含まれる樹脂の主成分との溶解度パラメータの差は、0.8〜2.5であることが好ましい。
【0022】
本発明はサインフィルムであることから、粘着剤層が車両表面から容易に剥がれないように十分な密着力で、粘着剤層と車両表面とが接着されている必要がある。具体的には、塗装表面に貼付け直後において、剥離強度が1〜30N/25mmであることが好ましく、より好ましくは、5〜20N/25mmである。上記数値より、小さい場合は使用時にサインフィルムが車両表面から剥がれる可能性がある。また、上記数値より大きいは、施工性(貼り直し性)が困難となる。
【0023】
粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、10μm〜100μmが好ましく、さらに好ましくは15μm〜40μmである。下限値未満では粘着物性が安定しにくいため好ましくなく、上限値を超えると糊残りを起こしやすくなるため好ましくない。
【0024】
本発明のサインフィルムは、車両に用いる。車両とは上述の通りであり、高い意匠性が求められる車両に特に好ましく用いることができる。サインフィルムは、容易に剥がれたり汚れたりしないように、高い耐久性、耐候性が求められるが、特に使用中に動きを伴う車両、車両用の粘着シートは、静止しているビル等に貼られる粘着シートと比較して、より高い耐久性、耐候性が求められる。また、車両の表面は平坦ではなく曲面であることが多いため、粘着剤層は曲面への追従性にも優れている方が好ましい。
【0025】
車両の表面はアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂を含む塗料で通常塗装されている。これらの中でも、安価で優れた耐候性を備えたアクリル系樹脂が車両の塗装用途に好ましく利用されている。
【0026】
合成ゴムとしては、各種ゴム組成物(例えば、合成ゴムを含有するゴム組成物等)を用いることができる。本発明の合成ゴムは、合成ゴムを主成分とするゴム組成物により構成されていることが好ましい。合成ゴムは、天然ゴムとは異なり、不純物(タンパク質等)を含有せず、脂肪族系の不飽和結合を有しないか、その含有量の少ないゴム系ポリマーを適宜選択でき、性能の長期安定性という効果が得られるからである。このような合成ゴムとしては、特に制限されず、例えば、ブチルゴム、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPT)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリブテンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、スチレン−ブタジエン(SB)ゴム、スチレン−イソプレン(SI)ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)ゴム、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)ゴム、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)ゴム、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体(SEP)ゴム等が挙げられる。これらの中でもスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)ゴムが特に好ましい。なお、合成ゴムは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0027】
本発明において、合成ゴムの重量平均分子量は5万〜200万であることが好ましく、より好ましくは10万〜150万である。分子量が5万未満の場合には、後述するインクジェット用インキに含まれる溶剤等の成分の浸透を抑制できるので好ましい。インクに含まれる成分が浸透することで、粘着剤層の粘着力等に影響を与えるからである。また、合成ゴムの重量平均分子量が200万を超える場合には、粘着剤層は柔軟性が増し追従性に優れるので好ましい。特に、合成ゴムの重量平均分子量が上記範囲内にあれば、インキ成分のブロックと十分な柔軟性を備えた粘着剤層になるので好ましい。
【0028】
さらにまた、本発明によるゴム組成物では、粘着技術分野において一般的に行われているように、必要に応じて常用の添加剤を配合してもよい。適当な添加剤の例としては、例えば、軟化剤、例えばプロセスオイル等の石油系軟化剤及びトール油等の植物油系軟化剤、充填剤、例えばクレー等、着色剤、例えば顔料、酸化防止剤、老化防止剤、可塑剤、界面活性剤、増粘剤、その他を挙げることができる。
【0029】
通常、合成ゴムは光を照射されることでもろくなるという欠点を持つが、本発明の場合には、粘着剤層の上に基材があるため、直接光が当たらないので、合成ゴムであっても好ましく使用することができる。
【0030】
なお、光によるゴムの劣化を防ぐという観点からも後述する保護フィルムを基材の上にさらに積層することが好ましい。
【0031】
粘着剤層が合成ゴムを主に含む場合には、車両表面はアクリル樹脂を主に含むものが好ましい。合成ゴムを含む粘着剤層とアクリル樹脂を含む車両表面とは、強い密着力で物理的にも化学的にも相互作用は強いが、サインフィルムの剥離後に生じる車両表面の段差を抑えることができる。上記の通り、溶解度パラメータが所定の範囲で離れているためと推定される。
【0032】
シリコーン系樹脂として、ジメチルシロキサン、あるいはそのメチル基の一部をフエニル基で置換したもの等を主体とする公知のシリコーン系樹脂を用いることができる。粘着層は架橋構造とすることが一般的でありその場合、過酸化物等による適宜の架橋方式を採ることができるが、付加型は過酸化物硬化型と比較して、硬化後の粘着剤の凝集力が大きく、保持力が大きいため、シリコーン系樹脂中に予めSi−CH=CH基やSi−H基を導入しておいて白金系触媒で付加反応させる架橋方式が好ましい。
【0033】
シリコーン系樹脂は溶剤等をはじく性質があり、後述するインクジェット用インキに含まれる溶剤等の成分が、粘着剤層に浸透するのを防ぐことができる。シリコーン系樹脂であれば、このようにインキに含まれる成分の影響を受け粘着性の悪化を抑えることができるので、本発明の粘着剤層に好ましく用いることができる。
【0034】
粘着剤層がシリコーン系樹脂を主に含む場合には、車両表面はアクリル樹脂を主に含むものが好ましい。シリコーン系樹脂を含む粘着剤層とアクリル樹脂を含む車両表面とは、強い密着力で物理的にも化学的にも相互作用は強いが、サインフィルムの剥離後に生じる車両表面の段差を抑えることができる。上記の通り、溶解度パラメータが所定の範囲で離れているためと推定される。
【0035】
[基材]
本発明における基材はインクジェット方式による画像形成が可能なものであれば特に限定されず、溶剤系インクに可溶、又は膨潤する合成樹脂や、可塑剤や多孔質な添加剤が配合された合成樹脂等が挙げられる。その中でも特に可塑化された塩化ビニル樹脂を含むものが好ましい。上述の通りサインフィルムとしては施工性を向上させるために柔軟性に富み曲面への追従性に優れることが求められ、塩化ビニルは柔軟性に優れるからである。
【0036】
可塑剤を含む塩化ビニル系の基材に用いる塩化ビニルとしては、ポリ塩化ビニル樹脂あるいは下記のような共重合成分と塩化ビニルとの共重合体:酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等の飽和脂肪酸ビニルエステル類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノ−2−エチルヘキシル、フマル酸ジ−2−エチルヘキシル等の不飽和カルボン酸及びそのアルキルエステル類;アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のビニルモノマー、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸ベンジル、メタアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸ベンジル等のアクリル酸あるいはメタアクリル酸及びそのアルキルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレン、シクロペンテン等のオレフィン類、メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;ジクロロエチレン、トリクロロエチレン等のハロゲン化オレフィン類;ビニルカプロエート、ビニルペラゴネート、ビニルラウレート、ビニルミリステート、ビニルパルミテート、ビニルステアレート等の長鎖アルキルビニルエステル類;ビニルアルコール、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等が挙げられる。これらの中でもポリ塩化ビニル樹脂であることが好ましい。
【0037】
本発明に用いる基材の厚みは20μm〜300μmであることが好ましく、より好ましくは、40μm〜200μmである。基材の厚みが薄すぎるとインク成分を基材が吸収しきれず、粘着剤層までインク成分が浸透することになり接着力低下(剥がれ)という問題が生じる。また、基材が厚すぎると施工性低下(曲面追従性の低下)という問題が生じるため好ましくない。
【0038】
本発明における「インクジェット方式による画像形成」とは、インクジェット方式でインクジェット用インキを用いて基材に形成するものをいう。画像とは写真や絵等の他に文字や模様等も含む。
【0039】
用いるインキとしては特に限定されないが、溶剤に、染料又は顔料を溶解あるいは分散させた溶剤インクが耐候性の観点から好ましい。溶剤インクとしては従来公知のものを用いることができる。
【0040】
[保護フィルム]
本発明においては基材の一方の面に画像を形成後、その画像面に対して透明性樹脂保護層を設けることが好ましい。この保護フィルムは特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン/塩ビ共重合樹脂、エチレン酢ビコポリマー、クマロン樹脂、ケトン樹脂、ポリ酢酸ビニル、フェノキシ樹脂、ブタジエン樹脂、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、メタクリル樹脂、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらの中でも、上述の通りサインフィルムの施工性を向上させるために、基材との相溶性や曲面への追従性に優れるという観点からポリ塩化ビニルであることが好ましい。
【0041】
上記保護フィルムの厚みは一般的には10μm〜300μmが好ましく、より好ましくは20μm〜200μm程度である。保護フィルムの厚みが上記範囲内にあれば、曲面追従性の観点から好ましい。
【0042】
保護フィルム形成の際に、画像面に透明なラミネートフィルムを貼り合わせることが好ましい。貼り合わせ時には加熱しなくてもよいが、加熱することが好ましい。ラミネートフィルムは、透明の基材に粘着剤ないし接着剤を塗布したものが好ましく用いられる。
【0043】
<サインフィルムの製造方法>
先ず、ポリエステルフィルム等の一方の面に対して、上記粘着剤を塗布する。粘着剤は上記シリコーン系樹脂や合成ゴムを有機溶剤に溶かして用いる。粘着剤の塗布量は、少なすぎると車両表面に対して十分な接着力を確保できず、多すぎると粘着剤が凝集破壊を起こしやすくなり、車両を汚染したり、支持体の端部から粘着剤がはみ出し端部周辺を汚染したりしやすくなる。粘着剤の塗工方法としては例えば、アプリケータ、グラビアロールコーター、ロールコーター、バーコーター、コンマコーター、エアナイフコーター、ダイコーター等の公知の方法で塗工することができる。
【0044】
次いで、塗工した粘着剤層上にインクジェット方式による画像形成が可能な基材をラミネートする。上述のような溶剤インキを用いて、従来公知のインクジェットプリンターで基材上に画像を形成することができる。
【0045】
さらに、基材の画像上に保護フィルムを積層することが好ましい。保護フィルムを基材に形成された画像の上に形成する方法としては、押出しラミネーション法、ウェットラミネーション法、ホットメルトラミネーション法、ドライラミネーション法、ホットラミネーション法、コールドラミネーション法等が各種ラミネーション法を適用できる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0047】
粘着剤の評価を行うためにゴム系、シリコーン系、アクリル系の粘着剤について実施した。
【0048】
<実施例1>
剥離シートとして、片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなる厚さ38μmのポリエステルフィルム(東セロ社製、SP−PET−01)の上に、下記配合例の粘着剤溶液を下記の乾燥条件にて、乾燥後膜厚が25μmとなるようにアプリケータで塗工して粘着剤層を形成した。
【0049】
[粘着剤溶液]
SIS系樹脂(JSR社製 SIS5200 スチレン/ゴム比=15/85、Mw=21.5×104) 100質量部
脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学工業社製 P−100 軟化点 100℃) 50質量部
メチルエチルケトン 75質量部
トルエン 75質量部
【0050】
[乾燥条件]
100℃×2分間
【0051】
乾燥後の粘着剤層に38μm厚のポリエステルフィルム(東レ社製 S−105)のコロナ処理面をラミネートし、粘着フィルムを作製した。
【0052】
<実施例2>
剥離シートとして、厚さ38μmのポリエステルフィルム(東レ社製 S−105)の上に、下記配合例の粘着剤溶液を下記の乾燥条件にて、乾燥後膜厚が25μmとなるようにアプリケータで塗工して粘着剤層を形成した。
【0053】
[粘着剤溶液]
付加型シリコーン系樹脂(信越化学社製 X−40−3229 固形分60%) 100質量部
白金触媒(信越化学社製 CAT−PL−50T) 0.5質量部
トルエン 100質量部
【0054】
[乾燥条件]
130℃×1分間
【0055】
乾燥後の粘着剤層に38μm厚のポリエステルフィルム(東レ社製 S−105)のコロナ処理面をラミネートし、粘着フィルムを作製した。
【0056】
<比較例1>
剥離シートとして、片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなる厚さ38μmのポリエステルフィルム(東セロ社製、SP−PET−01)の上に、下記配合例の粘着剤溶液を下記の乾燥条件にて、乾燥後膜厚が25μmとなるようにアプリケータで塗工して粘着剤層を形成した。
【0057】
[粘着剤溶液]
アクリル系粘着剤(綜研化学社製 SK2094 Mw 80×104、BAモノマー3%〜4%含有) 100質量部
エポキシ系硬化剤(綜研化学製 E−5XM) 0.5質量部
メチルエチルケトン 20質量部
トルエン 20質量部
【0058】
[乾燥条件]
100℃×2分間
【0059】
乾燥後の粘着剤層に38μm厚のポリエステルフィルム(東レ社製 S−105)のコロナ処理面をラミネートし、粘着フィルムを作製した。
【0060】
<比較例2>
剥離シートとして、片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなる厚さ38μmのポリエステルフィルム(東セロ社製、SP−PET−01)の上に、下記配合例の粘着剤溶液を下記の乾燥条件にて、乾燥後膜厚が25μmとなるようにアプリケータで塗工して粘着剤層を形成した。
【0061】
[粘着剤溶液]
アクリル系粘着剤 PMMA−BA−PMMAトリブロック共重合体(クラレ社製 LA2140 Mn 7.5×104) 100質量部
メチルエチルケトン 75質量部
トルエン 75質量部
【0062】
[乾燥条件]
100℃×2分間
【0063】
乾燥後の粘着剤層に38μm厚のポリエステルフィルム(東レ社製 S−105)のコロナ処理面をラミネートし、粘着フィルムを作製した。
【0064】
<粘着剤の評価>
実施例、比較例の粘着シートを25mm×150mm角に裁断し、剥離シートを剥がしてアクリル系塗装板に、温度23℃、相対湿度50%の室内にて、2kgゴムローラーを一往復させて貼り付けた。
【0065】
その後、60℃×90%雰囲気下で96時間放置した後、剥離角度180°、剥離速度300mm/minにて剥離し、以下の測定装置にて貼り跡の深さを確認した。実施例及び比較例の粘着シートの性能評価結果を表1に示す。
【0066】
Zygo社製走査型白色干渉計(製品名Zygo NewViewTM 6300)
測定原理:走査型白色干渉法(SWLI+FDA)
垂直分解能:0.1nm
光源:白色LED
垂直測定範囲:1nm〜15mm
【0067】
【表1】

【0068】
表1から分かるように、実施例1、2では粘着剤に含まれる樹脂として、車両のアクリル系とは異なるゴム系、シリコーン系を用いた。その結果、貼り跡の深さが比較例1、2と比較して浅くなることが確認された。比較例1、2では粘着剤と車両とがともにアクリル系であるために粘着剤と車両との間の物質のやり取りが促進され深い段差を生じるものと考えられる。
【0069】
比較例1は比較例2と比べて深い段差を生じる。これは、モノマー成分を多く含む比較例1は粘着剤と車両との間の物質のやり取りが促進されるためと考えられる。また、比較例1の粘着剤は比較例2の粘着剤と異なり極性基を持つ。粘着剤が極性基を持つとアクリル塗装板表面に存在する水酸基と強い相互作用があると考えられる。この相互作用により深い段差が生じると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に貼付するサインフィルムであって、
インクジェット方式による画像形成が可能な基材と、前記基材の一方の面上に形成された粘着剤層と、を備え、
前記粘着剤層が、合成ゴムを主体とするサインフィルム。
【請求項2】
車両に貼付するサインフィルムであって、
インクジェット方式による画像形成が可能な基材と、前記基材の一方の面上に形成された粘着剤層と、を備え、
前記粘着剤層が、シリコーン系樹脂を主体とするサインフィルム。
【請求項3】
前記シリコーン系樹脂が、付加型シリコーン系樹脂である請求項2に記載のサインフィルム。
【請求項4】
前記基材が、塩化ビニル系樹脂を主体とする請求項1から3のいずれかに記載のサインフィルム。
【請求項5】
前記基材の他方の面上にインクジェット方式による画像を形成し、
前記画像を形成した面上に積層された保護フィルムをさらに備える請求項1から4のいずれかに記載のサインフィルム。

【公開番号】特開2009−179788(P2009−179788A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22853(P2008−22853)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】