説明

サスペンションフレーム構造

【課題】取付位置精度や剛性を確保しやすいと共に、生産性の向上を図ったサスペンションフレーム構造を得る。
【解決手段】メンバ本体1の前側右に取り付けられた右のボディ取付部材8に右のロアアーム20の前側支持部20bを軸方向を前後方向にして支持する。ボディ取付部材6は第1ボディ取付部材24と第2ボディ取付部材26とを備える。第1ボディ取付部材24は前側支持部20bの一方の軸方向端に対向する支持板部24aと、前側支持部20bの軸方向に沿った縦板部24bとを備え、縦板部24bの車両ボディ側端を折り曲げた取付板部24cを有する。第2ボディ取付部材26は前側支持部20bの他方の軸方向端に対向する支持板部26aと、支持板部26aの車両ボディ側端を折り曲げた取付板部26cを有し、両支持板部24a,26aに前側支持部20bを支持した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のロアアームがメンバ本体に支持されたサスペンションフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1にあるように、サスペンションフレーム構造ではアッパプレートとロアプレートとを重ね合わせて中空状のメンバ本体を形成し、メンバ本体の前側左右に左右のロアアームの前側支持部を軸方向を前後方向にして支持すると共に、メンバ本体の後側左右にロアアームの後側支持部を軸方向を上下方向にして支持している。また、メンバ本体を車両ボディに取り付けるために、メンバ本体から車両ボディ側に向かって延出した左右のボディ取付部材を左右のロアアームの前側支持部の支持位置の近傍のメンバ本体に設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−1307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした従来のものでは、車両ボディにボディ取付部材を介してメンバ本体を取り付け、メンバ本体にロアアームを支持しているので、車両ボディに対する左右のロアアームの前側支持部の取付位置精度の確保が困難で、ロアアームに加わる作用力がメンバ本体、ボディ取付部材を介して車両ボディに伝達するため、剛性の確保が困難であるという問題があった。
【0005】
また、ボディ取付部材をメンバ本体に取り付ける際、メンバ本体のアッパープレートに取り付けているので、溶接が複雑になり、生産性が低いという問題があった。
本発明の課題は、取付位置精度や剛性を確保しやすいと共に、生産性の向上を図ったサスペンションフレーム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は課題を解決するため次の手段を取った。即ち、
左右のロアアームの前側支持部がメンバ本体の前側左右に軸方向を前後方向にして支持されると共に、前記ロアアームの後側支持部が前記メンバ本体の後側左右に支持されたサスペンションフレーム構造において、
前記メンバ本体の前側左右にそれぞれ取り付けられた左右のボディ取付部材に左右の前記ロアアームの前側支持部を軸方向を前後方向にして支持したことを特徴とするサスペンションフレーム構造がそれである。
【0007】
また、前記ボディ取付部材はそれぞれ前記メンバ本体から車両ボディ側に向かって延出された第1ボディ取付部材と第2ボディ取付部材とを備え、
前記第1ボディ取付部材は、前記ロアアームの前側支持部の一方の軸方向端に対向する支持板部と、前記前側支持部の軸方向に沿った縦板部とを備え、かつ、前記縦板部の車両ボディ側端を折り曲げて前記車両ボディへ取り付ける取付板部を有し、
前記第2ボディ取付部材は、前記ロアアームの前側支持部の他方の軸方向端に対向すると共に、前記第1ボディ取付部材の前記縦板部に沿って形成された支持板部を有し、かつ、前記支持板部の車両ボディ側端を折り曲げて前記車両ボディへ取り付ける取付板部を有し、
前記両支持板部に前記ロアアームの前側支持部を支持した構成としてもよい。
【0008】
更に、前記第2ボディ取付部材は、前記支持板部の両側を前記ロアアームの前側支持部と反対側に折り曲げたフランジ部を有する構成でもよい。また、前記ボディ取付部材は、前記メンバ本体から前記車両ボディ側に向かって直線的に延出された構成でもよい。前記第1ボディ取付部材の前記取付板部と前記第2ボディ取付部材の前記取付板部とを重ね合わせて構成してもよい。あるいは、前記第1ボディ取付部材の前記取付板部と前記第2ボディ取付部材の前記取付板部との間に介装する介装部材を設けた構成としてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のサスペンションフレーム構造は、メンバ本体の前側左右にそれぞれ取り付けられた左右のボディ取付部材に左右のロアアームの前側支持部を軸方向を前後方向にして支持したので、取付位置精度や剛性を確保しやすいと共に、生産性の向上を図ることができるという効果を奏する。
【0010】
また、ボディ取付部材がメンバ本体から車両ボディ側に向かって延出された第1ボディ取付部材と第2ボディ取付部材とを備えたものでは、容易にプレス成形できるので、生産性を向上できる。更に、第2ボディ取付部材が支持板部の両側をロアアームの前側支持部と反対側に折り曲げたフランジ部を有するものでは、剛性をより向上できる。また、ボディ取付部材をメンバ本体から車両ボディ側に向かって直線的に延出することにより、剛性をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態としてのロアアームを取り付けたサスペンションフレーム構造の斜視図である。
【図2】本実施形態のサスペンションフレーム構造の拡大平面図である。
【図3】本実施形態のサスペンションフレーム構造の拡大正面図である。
【図4】図1のA矢視拡大図である。
【図5】図4のBB断面拡大図である。
【図6】別の実施形態としてのボディ支持部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1〜図3に示すように、1はメンバ本体で、メンバ本体1はアッパプレート2とロアプレート4とを上下に重ね合わせて形成されている。アッパプレート2とロアプレート4とは共にプレス加工により形成されており、アッパプレート2には車両の前後側に水平にフランジ部2a,2bが形成されている。
【0013】
本実施形態では、ロアプレート4は、全域にわたってほぼ平坦な略平板状にプレス成形されている。アッパプレート2のフランジ部2a,2bをロアプレート4に重ね合わせて溶接固定されて、内部が中空状に形成され、車両の前後方向では閉断面形状に形成されている。
【0014】
メンバ本体1には、前側左右に左右一対のボディ取付部材6,8が図示しない車両ボディに向かって上方に延出されて設けられている。この左右一対のボディ取付部材6,8に前側アーム取付部10,12が設けられており、メンバ本体1の後側の左右端側に後側アーム取付部14,16が設けられている。
【0015】
前側アーム取付部10,12にはそれぞれ左右一対のロアアーム18,20の前側支持部18b,20bが略前後方向の軸の廻りに揺動可能に支持されている。後側アーム取付部14,16にはそれぞれ左右一対のロアアーム18,20の後側支持部18c,20cが図示しないゴムブッシュを介して上下方向の軸の廻りに揺動可能に支持されている。左右一対のロアアーム18,20の取付孔18a,20aには図示しない車輪を回転自在に支持するナックルが図示しないボールジョイントを介して取り付けられる。
【0016】
右の前側アーム取付部12は右のボディ取付部材8に形成され、図4、図5に示すように、右のロアアーム20の前側支持部20bが図示しないゴムブッシュを介して略前後方向の支持軸22の廻りに揺動可能に支持されている。
【0017】
右のボディ取付部材8は、共にプレス成形された第1ボディ取付部材24と第2ボディ取付部材26とを備えている。第1ボディ取付部材24は、ロアアーム20の前側支持部20bの一方の軸方向端に対向し支持軸22に略直交する支持板部24aを備え、支持板部24aには、支持軸22が挿入される貫通孔25が形成されている。
【0018】
また、第1ボディ取付部材24は、支持軸22の軸方向に沿った、本実施形態では支持軸22の軸方向に沿った縦板部24bを備え、縦板部24bは支持板部24aとほぼ直角に折り曲げて形成されている。縦板部24bは図示しない車両ボディに向かってほぼ直線的に延出されており、縦板部24bの車両ボディ側端を折り曲げて車両ボディへ取り付ける取付板部24cが形成されている。支持板部24aと縦板部24bとの下端側は、ロアプレート4と平行に折り曲げられてフランジ部24dが形成されており、フランジ部24dはロアプレート4に溶接により固定されている。
【0019】
第2ボディ取付部材26は、ロアアーム20の前側支持部20bの他方の軸方向端に対向すると共に、支持軸22に略直交する支持板部26aを備えている。支持板部26aは第1ボディ取付部材24の縦板部24bとほぼ直交し、縦板部24bに沿って車両ボディ側に向かって延出されている。支持板部26aは第1ボディ取付部材24の支持板部24aに対向しており、支持板部24aの貫通孔25と同軸上に貫通孔27が穿設されると共にナット28が取り付けられている。
【0020】
支持板部26aの周囲を縦板部24bと平行に、第1ボディ取付部材24の支持板部24aとは反対側に折り曲げてフランジ部26bが第2ボディ取付部材26に形成されている。また、第2ボディ取付部材26の支持板部26aの車両ボディ側端を折り曲げて第1ボディ取付部材24の取付板部24cの下側に直接重ね合わせて車両ボディへ取り付ける取付板部26cが形成されている。第1ボディ取付部材24の取付板部24cと第2ボディ取付部材26の取付板部26cとには、車両ボディへの取り付けに使用する取付孔30が形成されている。車両ボディに取り付ける際には、取付孔30にボルト等が挿入されて、両取付板部24c、26cが共締めされ、剛性の向上が図られている。
【0021】
第1ボディ取付部材24の取付板部24cと第2ボディ取付部材26の取付板部26cとを直接重ね合わせたが、これに限らず、図6に示すように、第1ボディ取付部材24の取付板部24cと第2ボディ取付部材26の取付板部26cとの間に間隔をあけて形成し、両取付板部24c,26cの間に筒状の介装部材31を介装してもよい。これにより、取付時の剛性が向上する。
【0022】
第2ボディ取付部材26は、下側のフランジ部26bがロアプレート4に重ね合わされて溶接により固定されると共に、第2ボディ取付部材26のフランジ部26bが第1ボディ取付部材24の縦板部24bに接触されて溶接により固定されている。
【0023】
ロアアーム20の前側支持部20bは、第1ボディ取付部材24の支持板部24aと第2ボディ取付部材26の支持板部26aとの間に挿入され、支持軸22が貫通孔25,27に挿入されると共に、ナット28に螺入されて、両支持板部24a,26aにロアアーム20の前側支持部20bを支持している。
【0024】
尚、左のボディ取付部材6は右のボディ取付部材8と左右対称の形状であり、左のボディ取付部材6は右のボディ取付部材8と同様、第1ボディ取付部材34と第2ボディ取付部材36とを備えている。左の第1ボディ取付部材34と左の第2ボディ取付部材36とは、それぞれ前述した右の第1ボディ取付部材24と右の第2ボディ取付部材26と左右対称で、同様の構成である。
【0025】
このように、左右一対のボディ取付部材6,8に前側アーム取付部10,12が設けられているので、車両ボディに取り付けた際の、ロアアーム18,20の取付位置精度や剛性を容易に確保できると共に、生産性の向上を図ることができる。
【0026】
即ち、車両ボディに取り付けられる左右一対のボディ取付部材6,8に左右一対のロアアーム18,20の前側支持部18b,20bが直接支持されるので、例えば、メンバ本体1に左右一対の前側アーム取付部を形成すると共に、ボディ取付部材をメンバ本体1に取り付ける構成とすることによる誤差の累積がなく、取付位置精度を確保しやすい。また、ボディ取付部材6,8の剛性を確保すればよく、剛性の確保も容易である。
【0027】
更に、メンバ本体1に左右一対の前側アーム取付部を形成すると共に、左右一対のボディ取付部材をこれとは別にメンバ本体1に取り付けると、左右一対の前側アーム取付部と左右一対のボディ取付部材とは接近した位置にあり、左右一対のボディ取付部材を左右一対の前側アーム取付部を回避するように湾曲して形成しなければならず、ボディ取付部材6,8に前側アーム取付部10,12を設けることより、形状を単純化でき、生産性の向上を図ることができる。
【0028】
ボディ取付部材6,8がメンバ本体1から車両ボディ側に向かって延出された第1ボディ取付部材24,34と第2ボディ取付部材26,36とを備えた構成とすることにより、容易にプレス成形できるので、生産性を向上できる。本実施形態では、平坦なロアプレート4にボディ取付部材6,8を溶接により固定するので、溶接合わせ面が少なく、この点でも生産性がよい。
【0029】
また、第1ボディ取付部材24の貫通孔25と第2ボディ取付部材26の貫通孔27とがプレス成形による精度で形成できるので、取付位置精度を出しやすい。更に、左右一対のボディ取付部材6,8を車両ボディに向かって直線的に形成することにより、剛性を確保しやすい。
【0030】
以上本発明はこの様な実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0031】
1…メンバ本体 2…アッパプレート
4…ロアプレート 6,8…ボディ取付部材
10,12…前側アーム取付部 14,16…後側アーム取付部
18,20…ロアアーム 18b,20b…前側支持部
18c,20c…後側支持部 22…支持軸
24,34…第1ボディ取付部材 24a…支持板部
24b…縦板部 24c…取付板部
24d…フランジ部 25,27…貫通孔
26,36…第2ボディ取付部材 26a…支持板部
26b…フランジ部 26c…取付板部
31…介装部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のロアアームの前側支持部がメンバ本体の前側左右に軸方向を前後方向にして支持されると共に、前記ロアアームの後側支持部が前記メンバ本体の後側左右に支持されたサスペンションフレーム構造において、
前記メンバ本体の前側左右にそれぞれ取り付けられた左右のボディ取付部材に左右の前記ロアアームの前側支持部を軸方向を前後方向にして支持したことを特徴とするサスペンションフレーム構造。
【請求項2】
また、前記ボディ取付部材はそれぞれ前記メンバ本体から車両ボディ側に向かって延出された第1ボディ取付部材と第2ボディ取付部材とを備え、
前記第1ボディ取付部材は、前記ロアアームの前側支持部の一方の軸方向端に対向する支持板部と、前記前側支持部の軸方向に沿った縦板部とを備え、かつ、前記縦板部の車両ボディ側端を折り曲げて前記車両ボディへ取り付ける取付板部を有し、
前記第2ボディ取付部材は、前記ロアアームの前側支持部の他方の軸方向端に対向すると共に、前記第1ボディ取付部材の前記縦板部に沿って形成された支持板部を有し、かつ、前記支持板部の車両ボディ側端を折り曲げて前記車両ボディへ取り付ける取付板部を有し、
前記両支持板部に前記ロアアームの前側支持部を支持したことを特徴とする請求項1に記載のサスペンションフレーム構造。
【請求項3】
前記第2ボディ取付部材は、前記支持板部の両側を前記ロアアームの前側支持部と反対側に折り曲げたフランジ部を有することを特徴とする請求項2に記載のサスペンションフレーム構造。
【請求項4】
前記ボディ取付部材は、前記メンバ本体から前記車両ボディ側に向かって直線的に延出されたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のサスペンションフレーム構造。
【請求項5】
前記第1ボディ取付部材の前記取付板部と前記第2ボディ取付部材の前記取付板部とを重ね合わせたことを特徴とする請求項2に記載のサスペンションフレーム構造。
【請求項6】
前記第1ボディ取付部材の前記取付板部と前記第2ボディ取付部材の前記取付板部との間に介装する介装部材を設けたことを特徴とする請求項2に記載のサスペンションフレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−192838(P2012−192838A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58290(P2011−58290)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(391002498)フタバ産業株式会社 (110)
【Fターム(参考)】