説明

サトウキビ梢頭部の識別装置

【課題】本発明は、ハーベスタで収穫されたサトウキビの梢頭部を収穫後に迅速且つ構成度で分別、除去するサトウキビ梢頭部の識別装置を提供する。
【解決手段】本発明は、製糖原料であるサトウキビの茎部と、ショ糖の結晶化を阻害し製糖効率を低下させるサトウキビの梢頭部とを分別する、製糖工程におけるサトウキビ梢頭部の識別装置に関する。同装置では、サトウキビ1にレーザ光源3からのレーザ光を照射し、後方反射光を光センサ7にて検出して、信号処理部9にて得られた受光パターンに基づいて茎部と梢頭部とを識別する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば光学的手段を用いて対象物に含まれる不純物等を識別する装置に係り、特にハーベスタで収穫されたサトウキビの梢頭部を製糖工程等において分別、除去する為のサトウキビ梢頭部の識別装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、サトウキビを収穫する方法には、手作業により刈り取る方法やハーベスタ等と称される収穫機で収穫する方法がある。これらのうち、前者の手作業により刈り取る方法では、サトウキビの梢頭部を茎の部分と分離して収穫することもできるが、手作業であることから収穫量が限られてしまう。
【0003】一方、後者のハーベスタで収穫する方法では、当該ハーベスタの切断機構の自由度が低く、サトウキビの梢頭部のみを茎部と分離して収穫することができない為、収穫されたサトウキビには、製糖原料となる茎部に切断された梢頭部が混入していることが多い。このサトウキビの梢頭部に含有されるデンプンは、製糖工程においてショ糖の結晶化を阻害し、砂糖の製品歩留りの低下をもたらす要因となることから、圧搾する前に分別、除去する必要がある。
【0004】そして、そのような分別、除去作業は主に手作業により行われており、高いコストを要することから自動化が嘱望されている。そして、今日では、分別、除去作業の自動化の試みとして、赤外線を照射してその反射率により含有糖度を測定して糖度の低い梢頭部を検出する方法や、水槽にサトウキビを入れて比重差で茎部と梢頭部とを分別する方法等が研究されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来技術が実用化される為には種々の課題がある。
【0006】すなわち、前述した赤外線の反射率により含有糖度を測定して糖度の低い梢頭部を検出する方法では、処理速度の低さが問題となっている。
【0007】そして、前述した水槽にサトウキビを入れて比重差で茎部と梢頭部とを分別する方法では、廃水処理と分別精度の低さが問題となっている。
【0008】本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、廃棄物処理の問題を伴うことなく、ハーベスタで収穫されたサトウキビの梢頭部を収穫後に迅速且つ高精度で分別、除去して、砂糖の製品歩留まりを向上させための製糖工程におけるサトウキビ梢頭部の識別装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るサトウキビ梢頭部の識別装置は、サトウキビに対して光を投射する投光手段と、上記投光手段により投射された光の上記サトウキビでの反射光を受光して、受光信号を出力する受光手段と、上記受光手段からの受光信号に所定の信号処理を施し、得られた受光パターンに基づいてサトウキビの梢頭部を識別する識別手段と、を有する。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】この発明では、切断されたサトウキビの表面をレーザ光で走査して、その反射光を受光して受光パターンを読み取る。即ち、茎部と梢頭部の形態と表面粗さの違いに基づく受光パターンの違いから梢頭部のみを識別するものである。
【0012】以下、このような特徴点をふまえて、一実施の形態につき詳述する。
【0013】先ず、図1には、本発明の一実施の形態に係るサトウキビ梢頭部の識別装置の基本的な構成を示して説明する。この図1に示されるように、レーザ光源3の投射するレーザ光4の光路上には、鏡5が配設されている。
【0014】この鏡5は、回転軸11を中心に回転自在となっている。
【0015】そして、この鏡5による反射光の光路上には、サトウキビ1を搬送するコンベア2が移動自在に設けられている。この図1では、当該コンベア2は、紙面に垂直な方向、奥から手前に向かって移動自在である。
【0016】このコンベア2の表面、即ちサトウキビ1の搭載面を、光を反射し難い塗料で塗装し、或いは光を反射し難い部材で被覆すると更に良い。
【0017】上記レーザ光源3としては、サトウキビ表面での反射率の高い緑色レーザ光源が好適であるが、これに限定されないことは勿論である。
【0018】上記コンベア2に搭載されたサトウキビ1による後方反射光6の光路上には、上記鏡5が位置する。そして、当該鏡5による反射光の光路上には、光センサ7が配設されている。この光センサ7としては、高感度で応答の速いアバランシェ・フォト・ダイオード等が好適であるが、これには限定されない。
【0019】上記光センサ7の出力は、増幅器8を介して、信号処理部9の入力に接続されている。尚、この信号処理部9として、汎用のコンピュータを採用することもできる。以上の他、サトウキビ1やコンベア2の表面で反射した光が直接的に光センサ7に入射することを防止すべく、遮光板10が設置されている。
【0020】この遮光版10の他に、外部からの光が光センサ7に入射することを防止する為の遮光板等を、別途設けると更に良いことは勿論である。
【0021】以上の構成において、検出対象であるサトウキビ1は、コンベア2に搭載されて搬送される。そして、その搬送過程において、レーザ光源3より放射されたレーザ光4は、鏡5にて反射された後に、サトウキビ1の切断面に照射される。このサトウキビ1の切断面で反射された光のうち、入射方向に対して逆向きに反射した成分、即ち後方反射光6は、鏡5で再度反射された後、光センサ7に導かれて受光される。そして、この光センサ7の出力信号は、後段の増幅器8で増幅された後、信号処理部9に入力される。信号処理部9では、詳細は後述するが、所定の信号処理がなされ、得られた受光パターンより梢頭部が識別される。
【0022】ここで、図2には、上記鏡5周辺の構成をより詳細に示して説明する。
【0023】この図2に示されるように、鏡5の回転軸11は、ロータリーエンコーダ13とカップリング14を介して、モータ12と連結されている。
【0024】このモータ12としては、回転速度を正確にコントロールできるサーボモータやステッピングモータが好適であるが、これらに限定はされない。
【0025】上記鏡5の角度は、ロータリーエンコーダ13により検出され、その検出結果は信号処理部9に入力される。尚、上記鏡5について、回転運動自在に構成するほか、首振り運動自在に構成させてもよいことは勿論である。
【0026】次に、図3には、レーザ光源3から投射されたレーザ光によるサトウキビ1の走査軌跡の一例を示して説明する。コンベア2の上面からみると、レーザ光源3から投射されたレーザ光は、常に同一直線上を走査する。しかし、サトウキビ1はコンベア2に搭載されて移動するので、レーザ光は、相対的には図3に示されるような走査軌跡を描くことになる。尚、この図3において、Vはコンベアの移動方向を示し、Saはレーザ光による走査軌跡を示している。
【0027】ここで、図4には、本発明の実施の形態の改良例として、レーザ光源3と光センサ7、鏡5を二組用いて、二本のレーザ光で走査する場合の走査軌跡の事例を示して説明する。この場合、サトウキビ1の移動方向に対して斜めに、二方向のレーザ光による走査を行う。これにより、コンベア2上、ランダムな方向に搭載されたサトウキビ1に対しても高精度の検出を行うことができる。
【0028】ところで、本実施の形態に係るサトウキビの梢頭部の識別装置では、サトウキビ1の表面とコンベア2の光反射率の違いからコンベア2上のサトウキビ1の位置を検出し、更に反射光の受光パターンの違いから茎部と梢頭部とを識別する。
【0029】以下、図5を参照して、その識別原理をより詳細に説明する。
【0030】図5(a),(b)の下段に示されるように、円柱形のサトウキビ1の中心軸に対して略垂直の方向にレーザ光を走査するものとし、当該レーザ光の入射方向に座標のy軸をとり、当該y軸と垂直な方向にx軸をとる。
【0031】図5(a),(b)の上段は、照射位置と光センサによる受光強度との関係を示している。一般的に、サトウキビ1の茎部は、表面が滑らかであるため、照射された光が正反射する割合が高く、図5(a)上段に示されるように、受光強度は明確なピークを持つ曲線となる。これに対して、一般的に、サトウキビ1の梢頭部は、表面に縦の筋が入っているため、光が乱反射し、図5(b)上段に示されるように、受光強度は明確なピークを持たない曲線となる。
【0032】ここで、梢頭部の先端は、切断される位置により、図5(c)下段に示されるように枝分かれした形状となる場合もある。この部分を走査すると、受光強度は図5(c)上段に示されるような分割されたパターンとなる。
【0033】上記信号処理部9では、このような受光強度のピーク(受光パターン)の有無を検出することにより、サトウキビ1の梢頭部を識別する。
【0034】但し、同手法では、サトウキビ1を略一定の方向に並べる必要がある。サトウキビ1の方向が光の走査方向と垂直な方向から外れるに従い、受光パターンの底辺が広がって、識別精度が低下する恐れがあるからである。
【0035】極端な例として、サトウキビ1が光の走査方向と平行に置かれた場合には受光強度は略一定となり、先に図5(a),(b)に示したような受光パターンが全く現れない。従って、サトウキビ1の方向を揃える工程が必要となるのである。
【0036】この点、図4で前述した実施の形態の改良例では、二方向の走査を行うことで当該工程を省略することができる。即ち、前述した実施の形態の改良例では、二方向の走査で得られたデータを合成して識別することで、サトウキビ1の向きの違いによる識別精度の低下を小さくすることができる。
【0037】以上説明したように、本発明のようにレーザ光をサトウキビに投射して得られる反射光の受光強度のピーク(受光パターン)に基づいてサトウキビの梢頭部を識別する技術には、以下の利点がある。
【0038】即ち、第1に、製糖工程に適用する場合に、前述した従来技術に係る分光光度や画像処理による梢頭部の識別法に比べて処理速度が速い。
【0039】第2に、前述した水による比重差分別法では、廃水処理が問題となるが、本発明では消耗品を用いないので、廃棄物処理の問題が生じない。
【0040】第3に、特別な装置を用いないので比較的低コストで実現できる。
【0041】以上により、実用的な識別装置が提供されれば、現在手作業で行われている分別作業を自動化できる可能性が高くなる。これにより、製糖工程の省力化と低コスト化が実現されることとなる。
【0042】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、廃棄物処理の問題を伴うことなく、ハーベスタで収穫されたサトウキビの梢頭部を収穫後に迅速且つ高精度で分別、除去して、砂糖の製品歩留まりを向上させる、製糖工程におけるサトウキビ梢頭部の識別装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るサトウキビ梢頭部の識別装置の概略構成図である。
【図2】鏡5を回転させる周辺構成を詳細に示す構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るサトウキビ梢頭部の識別装置によるレーザ光の走査軌跡を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るサトウキビ梢頭部の識別装置により二方向に走査する場合のレーザ光の走査軌跡を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るサトウキビ梢頭部の識別装置による識別原理の概略図である。
【符号の説明】
1 サトウキビ
2 コンベアのベルト
3 レーザ光源
4 レーザ光
5 鏡
6 後方反射光
7 光センサ
8 増幅器
9 信号処理部
10 遮光板
11 鏡の回転軸
12 モータ
13 ロータリーエンコーダ
14 カップリング
V コンベアの移動ベクトル
Sa レーザ光の走査軌跡
Sb 二方向に走査する場合のレーザ光の走査軌跡
Sc 二方向に走査する場合のレーザ光の走査軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】 サトウキビに対して光を投射する投光手段と、上記投光手段により投射された光の上記サトウキビでの反射光を受光して、受光信号を出力する受光手段と、上記受光手段からの受光信号に所定の信号処理を施し、得られた受光パターンに基づいてサトウキビの梢頭部を識別する識別手段と、を有することを特徴とするサトウキビ梢頭部の識別装置。
【請求項2】 上記識別手段は、上記受光パターンに受光強度のピークが存在するか否かにより、サトウキビの梢頭部を識別することを特徴とする請求項1に記載のサトウキビ梢頭部の識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2003−38017(P2003−38017A)
【公開日】平成15年2月12日(2003.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−231784(P2001−231784)
【出願日】平成13年7月31日(2001.7.31)
【出願人】(391012327)東京大学長 (4)
【Fターム(参考)】