説明

サマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末の製造方法

【課題】ジェットミル粉砕によって磁石粗粉末を短時間で粉砕でき、モ−タなど磁石応用機器のボンド磁石に用いられる高性能な磁石微粉末を効率的に得ることができるサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末の製造方法を提供。
【解決手段】Smを必須元素とする少なくとも1種の希土類元素と、鉄又はその一部をCo、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Ga、又はAlの少なくとも1種以上で置換した遷移金属元素と、窒素とを主成分として含むサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末を製造する方法において、上記サマリウム−鉄−窒素系磁石の粗粉末をジェットミル粉砕装置内で、搬送吹きつけガスとしてヘリウムを10体積%以上含有する不活性ガスを用い、一回で平均粒径が3μm以下の微粉末となるに十分な程度の吹きつけガスの搬送速度と粉砕時間の条件下にジェットミル粉砕する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末の製造方法に関し、さらに詳しくは、ジェットミル粉砕によって磁石粗粉末を短時間で粉砕でき、モ−タなど磁石応用機器のボンド磁石に用いられる高性能な磁石微粉末を効率的に得ることができるサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類系の磁石粉末を用いた高性能なボンド磁石が、モ−タをはじめとした磁石応用機器に使用されている。磁石粉末としては、これまでSm−Co系の異方性磁石粉末やNd−Fe−B系の等方性磁石粉末などの希土類系の磁石粉末が主に用いられてきたが、その使用分野は徐々に拡っており、それに応じて多様な特性を持った磁石が要求されている。
【0003】
このような背景から、新しい磁石粉末の開発が活発に行われるようになり、そのなかで希土類(R)−鉄(Fe)−窒素(N)系の磁石材料、特にサマリウム(Sm)−鉄−窒素系の磁石材料が注目されている。
このSm−Fe−N系磁石材料は、ThZn17型構造を有するSmFe17を窒化したもので、SmFe17付近の組成を有するものが最も磁気特性が優れており、飽和磁化(4πI)が1.57T(15.7kG)、異方性磁界(Ha)が20.8MA/m(260kOe)、キュリー点(Tc)が470℃という基本物性が明らかにされている。
【0004】
上記のSm−Fe−N系合金粉末は、例えば、希土類金属と遷移金属からなる原料を用いる溶解合金法、若しくは希土類酸化物と遷移金属からなる原料にアルカリ土類金属を還元剤として配合し、高温で希土類酸化物を金属に還元するとともに遷移金属と合金化する還元拡散法により、先ずSm−Fe合金粉末を製造し、その後、この合金粉末を窒化して製造することができる。
しかし、溶解合金法では、原料として使用する希土類金属が高価であるという理由から、安価な希土類酸化物粉末を原料として利用できる還元拡散法が望ましいと考えられている。
【0005】
還元拡散法では、先ず希土類酸化物粉末原料、遷移金属粉末原料、および上記希土類酸化物の還元剤であるアルカリ土類金属を配合した混合物を、非酸化性雰囲気中において加熱焼成して希土類−遷移金属系合金を合成する。その後、得られた希土類−遷移金属系合金を湿式処理して粉末状にした後、この希土類−遷移金属合金粉末を窒化処理することで所望の希土類−遷移金属−窒素系磁石を製造している(例えば、特許文献1参照)。更に、この還元拡散法の応用として、還元拡散反応で得られた焼結体を窒化後に湿式処理して製造する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
Sm−Fe−N系磁石材料は、その保磁力機構がニュークリエーション型であるために保磁力を大きくしなければならず、そのためには、(1)反転磁区の核ができるキッカケとなる芽(欠陥など)を少なくするか、(2)単磁区粒子の大きさにまで磁石粉末を小さくするという二つの方法が考えられる。
(1)の方法で欠陥を無くすには焼結温度付近まで昇温しなければならないが、このSm−Fe−N系磁石材料は、650℃以上でSmNとα−Feに分解してしまうので、650℃以上には昇温できない。このため保磁力を大きくするには、磁石粉末の粒度を小さくして所望の粒径に揃えるために、出発原料として微細な鉄粉や酸化鉄粉が用いられているが、製造コストが高くなるし、合成時に磁石の微細粉末が凝集しやすくなり、結果として、残留磁束密度や減磁曲線の角形性が低下するという欠点を有していた。したがって、上記のようにして得られた粉末状のSm−Fe−N系磁石粉は、特定範囲の粒度になるまで微粉砕処理して、単磁区粒子(1〜3μm)にまで小さくする(2)の方法がとられている。
【0007】
これまで、希土類−遷移金属系磁石母合金粉末を粉砕する場合は、通常、ボールミルや媒体撹拌ミル等の粉砕機を用い、鉄系ボールと溶媒、磁石粉末を混合し、0.3〜1.0m/s程度の回転周速度で粉砕を行っていた。この場合、サブミクロンの微粉末が発生し粒度分布が広がってしまう傾向にあった。このため、希土類−遷移金属系磁石粉末に凝集が起こり、最終的に得られる希土類−遷移金属−窒素系磁石粉末の磁気特性の低下が起こっていた。
そこで、得られた粉末状の希土類−遷移金属−窒素系磁石を、特定範囲の粒度になるまで微粉砕処理するため、ジェット粉砕機(ジェットミル)を用いることが提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。
【0008】
特許文献3によれば、ジェットミル粉砕によって粉末の結晶構造に大きなストレスを与えること無く微粒子化できるが、粒子径が小さくなると粉砕効率が悪くなり、高価な不活性ガスを使用するため大きなコスト負担になる。そのため、まず衝突式ジェットミル粉砕で例えば平均粒子径で2.5〜20μmになるまで粉砕し、それ以降は、湿式粉砕機に切り替え平均粒子径が1〜3μmになるまで微粉砕するようにしている。この製造方法によれば、ジェットミル粉砕に用いる高価なガス量が削減できるが、湿式粉砕機を併用するので粉砕工程が複雑になり、粉砕時間も長くなる。
【0009】
また、ジェットミル粉砕機のみを用いる特許文献4では、磁石粉末の微粉砕時に保磁力を向上できるが、飽和磁化が大きく低下するために、酸素濃度が0.01〜3vol%の雰囲気中で粉砕することが好ましいとしている。これよりも酸素濃度が薄いと、粉砕され表面が活性になった粒子が粒子同士または壁面に付着して粉砕の進行を遅らせ、また、酸素濃度が高すぎると活性な粒子表面で急激な酸化が起こり易く粉塵爆発の可能性が出てきて取扱いが難しくなり、また、急激な酸化により粒子表面に軟磁性層ができて磁気特性が低下する。これにより粒子表面に安定な薄い酸化膜を形成し凝集性の低い微粒子とし、ボンド磁石にする際に凝集が少なく、配向性に優れたボンド磁石を得るようにしている。しかしながら、この方法では、粉砕の際に磁石粉末が酸化されているわけであり、より高性能な磁石特性を得る粉砕方法として相応しいとはいえない。
【0010】
さらに、空気を搬送吹きつけガスとして用いる気流式ジェットミル粉砕により、高圧空気の温度を30℃以下に制御してRFe17系磁石粉末を粉砕する微粉砕方法が提案されている(例えば、特許文献5参照)。これによれば高価な不活性ガスを使わずに空気を搬送吹きつけガスとして使えるため製造コストを削減できる。しかし、この方法では、空気を搬送吹きつけガスとして用いるため磁石粉末の酸化が避けられず、また一回の粉砕では目的の粒子径まで細かくならない場合も多く、多数回の粉砕を行う必要がでてきて、かえってコストアップや、磁石粉末のさらなる酸化にもつながり、高磁気特性を得ることは難しかった。
【0011】
このようなことから、多数回の粉砕を必要とせず、一回の粉砕で目的の粒子径まで細かくすることができ、製造コストをアップさせたり磁石粉末を酸化させることなく高磁気特性を得ることができるサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末の製造方法の出現が切望されていた。
【特許文献1】特公平3−62764号公報
【特許文献2】特開平5−148517号公報
【特許文献3】特開平5−304008号公報
【特許文献4】特開平6−45121号公報
【特許文献5】特開平10−12424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、ジェットミル粉砕によって磁石粗粉末を短時間で粉砕でき、モ−タなど磁石応用機器のボンド磁石に用いられる高性能な磁石微粉末を効率的に得ることができるサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ね、サマリウム−鉄−窒素系磁石粉末の微粉砕方法において、ヘリウムガスを必須成分として含有する不活性ガスを搬送吹きつけガスとして用いてジェットミル粉砕を行うことにより、短時間で微粉砕が行え、1回のジェットミル粉砕で、平均粒径が3μm以下の微粉末とすることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、Smを必須元素とする少なくとも1種の希土類元素と、鉄又はその一部をCo、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Ga、又はAlの少なくとも1種以上で置換した遷移金属元素と、窒素とを主成分として含むサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末を製造する方法において、上記サマリウム−鉄−窒素系磁石の粗粉末をジェットミル粉砕装置内で、搬送吹きつけガスとしてヘリウムを10体積%以上含有する不活性ガスを用い、一回で平均粒径が3μm以下の微粉末となるに十分な程度の吹きつけガスの搬送速度と粉砕時間の条件下にジェットミル粉砕することを特徴とするサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末の製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記粗粉末の粒径が106μm以下であることを特徴とするサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末の製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、不活性ガスが窒素及び/又はアルゴンを含むことを特徴とするサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末の製造方法が提供される。
【0017】
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、不活性ガスがヘリウムガスを50体積%以上含むことを特徴とするサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末の製造方法が提供される。
【0018】
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記サマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末が、希土類元素を23.2〜23.6重量%、及び窒素を3.0〜3.5重量%含有することを特徴とするサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ヘリウムガスを必須成分として含有する不活性ガスを搬送吹きつけガスとして用いるため、1回のジェットミル粉砕で、サマリウム−鉄−窒素系磁石粗粉末を、平均粒径が3μm以下の微粉末とすることができ、効率よく短時間で微粉砕を行い、多数回ジェットミル粉砕を行うことを回避できる。ジェットミル粉砕時にサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末の酸化の進行を抑えることができるので、より高性能な磁石特性を有する磁石粉末を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末の製造方法について図面を用いて項目毎に詳しく説明する。
【0021】
本発明は、Smを必須元素とする少なくとも1種の希土類元素と、鉄又はその一部をCo、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Ga、又はAlの少なくとも1種以上で置換した遷移金属元素と、窒素とを主成分として含むサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末を製造する方法において、上記サマリウム−鉄−窒素系磁石の粗粉末をジェットミル粉砕装置内で、搬送吹きつけガスとしてヘリウムを10体積%以上含有する不活性ガスを用い、一回で平均粒径が3μm以下の微粉末となるに十分な程度の吹きつけガスの搬送速度と粉砕時間の条件下にジェットミル粉砕することを特徴としている。
【0022】
1.サマリウム−鉄−窒素系磁石粗粉末
本発明において、粉砕の対象となるサマリウム−鉄−窒素系磁石粗粉末は、磁石用として一般的に使用されている合金組成でよく、Smを必須元素とする少なくとも1種の希土類元素と、窒素と、残部の鉄又はその一部をCo、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Ga、又はAlの少なくとも1種以上で置換した遷移金属元素とからなる合金組成である。
【0023】
磁石粗粉末は、希土類元素は、Smが必須元素であり、その一部を他の希土類元素で置換することができる。置換する場合は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、又はLuの少なくとも1種以上の元素で置換することが好ましい。ただし、磁気特性の低下を避けるため置換量は50原子%以下であることが好ましい。希土類元素の含有量は23.2〜23.6重量%であることが望ましい。
【0024】
また、磁石粗粉末は窒素を必須成分として含有する。窒素の含有量は、3.0〜3.5重量%であることが望ましい。窒素量が3.0重量%未満では保磁力と角形性が低下し、3.5重量%を超えると磁化が低下する。さらに、残部はFeであり、その一部をCo、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Ga、又はAlの少なくとも1種以上の遷移金属元素で置換することができる。ただし、磁気特性の低下を避けるため、その置換量は50原子%以下であることが好ましい。
【0025】
また、かかるSm−Fe−N系合金粉末の製造法は、特に限定されず、例えば、Sm−Fe合金粉末を溶解合金法若しくは還元拡散法により製造し、その後、このSm−Fe合金粉末を窒化して製造することができる。さらに、還元拡散反応で得られた焼結体を窒化後に湿式処理して磁石合金粉末を製造することもできる。
これらの方法の中では、安価な希土類酸化物粉末を原料として利用できるという点から還元拡散法によって製造することが好ましい。還元拡散法では、先ず希土類酸化物粉末原料、遷移金属粉末原料、および上記希土類酸化物の還元剤であるアルカリ土類金属を配合した混合物を、非酸化性雰囲気中において加熱焼成してサマリウム−鉄系合金を合成する。
【0026】
還元剤としては、Li又はCa、あるいはこれらの元素とNa、K、Rb、Cs、Mg、SrあるいはBaから選ばれる少なくとも1種からなるアルカリ金属又はアルカリ土類金属元素が使用できる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属元素が、サマリウム−鉄合金粉末の結晶相内部に0.001重量%以上含有され均一に分布している場合は、窒化処理を短くできる効果がある。ただし、0.1重量%を超えるとサマリウム−鉄−窒素系磁石用合金の磁気特性、特に磁化が低下するので好ましくない。
上記原料混合物は、アルゴンガスなどの不活性ガスが流通する非酸化性雰囲気中において、還元剤が蒸発しない温度まで昇温保持し加熱焼成する。加熱処理は900〜1250℃程度の温度範囲とし、5〜15時間かけて加熱する。加熱温度が900℃未満では鉄粉に対して希土類元素の拡散が不均一となり、これを用いて製造されるサマリウム−鉄−窒素系磁石粉末の保磁力や角形性が低下する。1250℃を越えると、生成したサマリウム−鉄系金属母合金が粒成長を起こすとともに互いに焼結するため、均一窒化が困難になり磁石粉末の角形性が低下する。上記方法で作製されたサマリウム−鉄母合金の主相を成長させる目的で、窒化処理の前に真空中あるいは不活性ガス中で熱処理を施す場合もある。
【0027】
その後、得られたサマリウム−鉄系合金を湿式処理して粉末状にした後、この粉末状の合金を窒化処理することで所望のサマリウム−鉄−窒素系磁石粗粉末が製造される。湿式処理は、水洗、デカンテーション、酸洗の組み合わせであり、まず、合金を大気中に約0.5〜3時間放置した後、例えば合金1kgあたり約1リットルの水中に投入し、0.1〜3.5時間撹拌して還元反応生成物の合金を崩壊させる。その後、得られたスラリーは、粗い篩を通し水洗槽に移す。このときスラリーのpHは11〜12程度であり、崩壊せずに残留する塊はなく、篩上に残ったロスは非常に少なくなる。
この後、スラリーのpHが10以下になるまでデカンテーションを繰り返す。デカンテーション条件は、注水し、撹拌1分、静置分離1分、排水することを標準条件とすればよい、デカンテーション開始から終了までの時間を1回の水洗時間とし、その結果、スラリーのpHが10になるまでの水洗時間の合計量は約60〜120分を目安とする。その後、スラリーのpHが5〜6になるように酢酸などの鉱酸を添加し、酸洗を行い固液分離し、乾燥すればサマリウム−鉄系合金粉末が得られる。なお、湿式処理は、窒化処理後に行っても良い。
【0028】
また、効率的に窒化処理を行うためにはサマリウム−鉄母合金を粉体にすることが好ましい。そして、この母合金粉体の粒径範囲は150μm以下、より望ましくは63〜150μmに調整する。サマリウム−鉄母合金の粉砕には粉砕機の形式や方法は問われないが、母合金粉の酸化を防ぐために不活性雰囲気で粉砕できるものが求められる。
サマリウム−鉄母合金の窒化処理では、アンモニアガス、窒素ガスなどでサマリウム−鉄母合金粉に窒素を導入し、窒化効率向上のために、前記ガスに水素ガスを併用する場合がある。この際、300〜600℃の範囲で加熱するのが効果的である。
また、窒化処理では、それに付随して合金粒子表面の吸着ガスの除去、水素ガス処理による粉砕、窒素を希土類合金粉内部に均質に拡散させるための熱処理を併用する場合がある。
【0029】
ここで、サマリウム−鉄−窒素系磁石は、上記したように、保磁力の発生機構がニュークリエーション型であることから、磁気特性の一つである減磁曲線の角形性、保磁力を高めるには、磁石粉末の粒度を揃えることが必要とされ、特定範囲の粒度になるまで下記のジェットミル粉砕によって微粉砕処理される。効率的にジェットミル粉砕するためには、磁石粉の粒径が106μm以下のSm−Fe−N磁石合金粉末を用いることが好ましい。そして、20〜63μmの粒径に調整することがより好ましい。
【0030】
2.ジェットミル粉砕
本発明によってサマリウム−鉄−窒素系磁石粗粉末を微粉砕するには、磁石粗粉末をジェットミル粉砕装置内で、搬送吹きつけガスとしてヘリウムを10体積%以上含有する不活性ガスを用い、一回で平均粒径が3μm以下の微粉末となるに十分な程度の吹きつけガスの搬送速度と粉砕時間の条件下にジェットミル粉砕する。
【0031】
ジェットミル粉砕には大別して2種類の方式がある。一つは粉末を高速の搬送ガスに乗せてタ−ゲットに衝突させて粉砕する衝突式、もう一つは粉末を高速の搬送ガスに乗せて廻旋し通路の壁面から高速ガスを吹きつけて粉末同士を衝突させて粉砕する気流式である。衝突式では、粉砕の際に粉末に衝撃的な大きな力がかかり、粉末内部に欠陥や歪みが入るため磁気特性が悪化することがある。そのため本発明では磁石粗粉末を気流式ジェットミルで粉砕することが好ましい。
【0032】
本発明を実施するうえで好ましい気流式ジェットミル粉砕機の種類や構造は、前記目的を達せられるものであれば特に制限されない。一般的には、試料投入口に定量供給された粉末がプッシャーノズルから吐出されるガスで超音速に加速されて、旋回しながらミルの内部に入り、ミルの壁面に設けられた粉砕ノズルから吐出されるガスで粉末同志が相互衝突し、または、ミルの壁面でこすられ、ぶつかって粉砕されるタイプの装置を挙げることができる。粉砕されて細かくなった粉末は、出口からガスと一緒に排出されてバグフィルターでガスと分離されて回収器に入り、粉砕が十分でない粉末はミルの中を旋回して粉砕される。
【0033】
このようなジェットミル粉砕機を用いて磁石粉末を粉砕し、その粒径を小さくするためには、ノズルから噴出する固気混合流又はガス流の速度を大きくすることが有効である。そこで、一般にノズルがベンチュリーノズル、いわゆる縮小拡大管に形成され、拡大部で超音速流れになるようにされている。そして、衝撃波が発生しない領域では拡大縮小管内の各断面における流速は下流にいくほど増加し、マッハ数は1より大きくなっていく。そして、ガス流が空気あるいは窒素ガスの場合、20℃でのマッハ数1は空気で343m/秒、窒素で349m/秒であることから、これらのガスでは粉砕後の粒径を飛躍的に小さくすることはできない。これに対して、ヘリウムガスの場合には1007m/秒となり、ガス流速が空気や窒素ガスの場合の3〜4倍程度まで増加する。不活性ガスであるアルゴンガスの場合も窒素ガスとほぼ同様である。
【0034】
そのため、本発明では、搬送吹きつけガスとしてヘリウムを10体積%以上含有する不活性ガスを使用する。ヘリウムには、窒素及び/又はアルゴンを混合することができる。特に、ヘリウムを50体積%以上含む不活性ガスが好ましい。ヘリウムの含有量が搬送吹きつけガス全体に対して10体積%よりも少ないと粉砕効果が現れず、効率的な微粉砕が行えない。ヘリウムが多くなると粉砕効率も高まるが、高価であるため、ヘリウムの含有量は、80体積%よりも少なくすることが望ましい場合もある。搬送吹きつけガス中の酸素量は、磁石の酸化を防止するという観点から少ない方がよく、搬送吹きつけガス全体に対して0.1体積%よりも少ないことが望ましい。
【0035】
なお、搬送吹きつけガスとして水素ガスの使用も考えられるが、水素ガスの場合、20℃でのマッハ数1となるガス流速がヘリウムよりも大きい(1304m/秒)ので、一層大きい粉砕効率が期待しうるものの、水素爆発の恐れがあり取扱い難いという問題がある。
【0036】
ここで、本発明に用いられるジェットミル粉砕設備の概要を図1に示す。搬送吹きつけガスのヘリウムを貯蔵するガスボンベ1、必要により設置される窒素ガスあるいはアルゴンガスボンベ2、必要により混合したガスを貯めるリザーブタンク3、原料の磁石粉末を粉砕する気流式ジェットミル4、必要によりジェットミルの粉砕部分を冷却する冷却パイプ5、原料粉末を貯蔵するホッパー6、原料粉末をジェットミルに定量供給するフィーダ7、粉砕された粉末とガスを分離するバグフィルター8、粉砕された粉末が入る回収器9などから構成される。バグフィルター8には、PSA(圧力スイング吸着)装置や膜分離装置等のガス回収装置を配置して、原料粉末とともに流入する大気成分を除去することができる。このような装置として具体的には、日本ニューマチック工業社製のラボジェット(商品名)、PJM−100(商品名)などを挙げることができる。
【0037】
装置の粉砕部分は発熱するので、ミル粉砕部の外側に冷却用パイプ5を配設して冷水や液体窒素により冷却することが望ましい。また搬送吹きつけガスを高圧ガス配管からジェットミル装置に導入するので、その高圧配管部分に冷却槽を設け、配管自体を冷却してガスを冷却することが望ましい。ガス温度はジェットミルの粉砕ノズル側の高圧配管に熱電対を付けて高圧ガスの温度を測定することができる。
本発明によってジェットミル粉砕を行うには、はじめにヘリウムガス(または、ヘリウムと窒素あるいはアルゴンの混合ガス)のみを3〜5分ほど送り込んで粉砕機の粉砕部分の温度を下げておき、温度が安定化してから試料粉末の投入を開始することが好ましい。
【0038】
搬送吹きつけガスの圧力は、特に限定されないが、0.3MPaよりも低いと所望の粒径が得られない。ガス圧力が高い程、得られる粉末の粒子径が小さくなるが、0.6MPaを越えるとある程度まで微粉砕効率が上がるものの、ガスが無駄になるため好ましくない。したがって、0.3〜0.6MPa程度で行うことが好ましい。また、搬送吹きつけガスの供給量は、特に限定されないが、例えば、0.1〜1m/分とすることができる。
一方、搬送吹きつけガスの搬送速度(投入粉末量)は、装置の種類や大きさなどによって異なり、一概に決定できないが、磁石粗粉末が一回の粉砕で平均粒径3μm以下の微粉末となるに十分な程度でなければならない。そのため、例えば300〜600g/hrとすることができる。投入粉末量が、300g/hrより少ないと粉砕効率が不十分となり、600g/hrより多いと所望の粒径が一度では得られない場合がある。
【0039】
粉砕中は、温度が上昇しすぎないように管理しながら粉砕することが望ましい。粉末を所定量投入したところで、ヘリウムガス、またはヘリウムと窒素あるいはアルゴンの混合ガスの吹き込みを1〜3分間続けて中止することができる。その後、投入粉末を所定時間粉砕したところで、微粉砕された粉末を回収する。
粉砕時間は、装置の種類や大きさなどによって異なり、一概に決定できないが、例えば3〜10分とすることができる。粉砕時間が、3分より短いと粉砕が不十分で平均粒径が3μmを越える場合があり、10分より長いと1μm未満の微粉末が増加しすぎる場合がある。
ガス回収装置によって回収されたガスは、高価な不活性ガスであることから搬送吹きつけガスとして再利用することが好ましい。
【0040】
従来のジェットミル粉砕であると、一回の粉砕で目的の粒子径まで細かくならない場合もあり、その場合は複数回粉砕を行って目的の粒子径にしていたが、本発明では、微粉砕化が容易であり、1回の微粉砕で所望の粒子径となり、高磁気特性を有した実用的なサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末を得ることができる。
【0041】
3.サマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末
上記の方法によって得られるサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末は、平均粒径が3μm以下、好ましくは2.5μm以下に微粉砕されている。磁石微粉末は、希土類元素を23.2〜23.6重量%、窒素を3.0〜3.5重量%含有するものが好ましい。また、エネルギー積(BH)maxが280kJ/m以上という優れた磁気特性を有している。微粉末の平均粒径が3μmを越えると、磁気特性が悪化するので好ましくない。
【0042】
この微粉末の表面には、Znなどの金属被覆や、リン酸鉄と希土類金属リン酸塩を含む複合金属リン酸塩被膜とシリケート被膜やカップリング剤処理等を行うことにより優れた耐熱性及び耐食性を備えることが可能である。これらの中で複合金属燐酸塩皮膜を形成する場合には、図1の回収容器9の中に所定濃度のリン酸処理溶液を投入しておけば、粉砕された微粉末が大気に触れることなく処理溶液中に落下回収されるようにすることができ、これによって格段に良好なリン酸塩被膜を得ることができる。
そして、このサマリウム−鉄−窒素系磁石粉末に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のいずれかをバインダーとして配合すれば、ボンド磁石用樹脂組成物を製造できる。さらに、このボンド磁石用樹脂組成物を成形することにより優れた磁気特性を有するサマリウム−鉄−窒素系ボンド磁石を得ることができる。
【実施例】
【0043】
次に、実施例、比較例を用いて本発明をさらに説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。なお、粉砕後に得られた磁石粉末は次の方法で測定した。
【0044】
(1)粒度分布測定
粉砕して得られた磁石粉末の粒度は、レーザー回折・散乱式粒度分布計(HELOS Particle Size Analysis)を用い、体積基準粒子径に基づく粒度分布を測定し、評価した。
(2)磁気特性
粉砕して得られた磁石粉末の磁気特性は、試料振動式磁気測定装置(VSM)で測定した。
【0045】
(実施例1)
還元拡散法により作製したSm−Fe17(数字は原子比)の組成を持つ金属粉末を分級して、106μm以下の金属粉末を得た。得られた希土類−鉄金属粉末を炉に入れ、アンモニアガス、水素ガスの混合比が1:2の混合ガスを、希土類−鉄金属粉末1gあたり1.2ml/分の割合で流しながら120分かけて室温から465℃まで昇温した。昇温後、465℃を維持したままで300分間同様にガスを流し続けて、サマリウム−鉄−窒素磁石粗粉末を得た。その後、465℃のまま、希土類−鉄金属粉末1gあたり1ml/分の割合で水素ガスを流して水素アニールを30分間行い、合金中に含まれる余分な窒素を除去した。さらに、465℃のまま、窒素ガスを希土類−鉄金属粉末1gあたり1ml/分の割合で流して、窒素アニールを1時間行った。室温へ冷却時も同様に窒素ガスを流し続けた。これにより粒度分布が20〜63μmのサマリウム−鉄−窒素磁石粗粉末を得た。
次に、0.4MPaの圧力のヘリウムガスを供給量0.4m/分で流しながら、この磁石粗粉末を1時間当たり300gの割合でジェットミルに供給し、6分間粉砕した。この装置でミルの粉砕部の外側温度と高圧ガス温度を測定してジェットミル粉砕を行い、平均粒径1.57μmのサマリウム−鉄−窒素磁石微粉末(Sm23.2重量%、N3.26重量%)を得た。この微粉末の粒度頻度分布を図2に示す。また、得られた粉末について試料振動式磁気測定装置(VSM)で磁気特性を測定した。これら測定結果を表1に示す。
【0046】
(実施例2)
実施例1と同等な方法で得られたサマリウム−鉄−窒素磁石粗粉末を、ジェットミル装置に0.6MPaの圧力のヘリウムガスを供給量0.4m/分で流しながら1時間当たり600gの割合で供給し、6分間粉砕した。得られた微粉末の粒度頻度分布を図2に示す。また、得られた粉末について試料振動式磁気測定装置(VSM)で磁気特性を測定した。これら測定結果を表1に示す。
【0047】
(実施例3)
実施例1と同等な方法で得られたサマリウム−鉄−窒素磁石粗粉末を、ジェットミル装置に0.4MPaの圧力のヘリウムガスを供給量0.4m/分で流しながら1時間当たり600gの割合で供給し、6分間粉砕した。得られた微粉末の粒度頻度分布を図2に示す。また、得られた粉末について試料振動式磁気測定装置(VSM)で磁気特性を測定した。これら測定結果を表1に示す。
【0048】
(実施例4)
実施例1と同等な方法で得られたサマリウム−鉄−窒素磁石粗粉末を、ジェットミル装置に0.3MPaの圧力のヘリウムガスを供給量0.4m/分で流しながら1時間当たり300gの割合で供給し、6分間粉砕した。得られた微粉末の粒度頻度分布を図2に示す。また、得られた粉末について試料振動式磁気測定装置(VSM)で磁気特性を測定した。これら測定結果を表1に示す。
【0049】
(実施例5)
実施例1と同等な方法で得られたサマリウム−鉄−窒素磁石粗粉末を、ジェットミル装置に0.3MPaの圧力のヘリウムガスを供給量0.2m/分と、0.3MPaの圧力で窒素ガスを供給量0.2m/分の割合で混合したガスを流しながら1時間当たり300gの割合で供給し、6分間粉砕した。得られた微粉末の粒度頻度分布を図2に示す。また、得られた粉末について試料振動式磁気測定装置(VSM)で磁気特性を測定した。これら測定結果を表1に示す。
【0050】
(実施例6)
実施例1と同等な方法で得られたサマリウム−鉄−窒素磁石粗粉末を、ジェットミル装置に0.3MPaの圧力のヘリウムガスを供給量0.04m/分と、0.3MPaの圧力で窒素ガスを供給量0.36m/分の割合で混合したガスを流しながら1時間当たり300gの割合で供給し、6分間粉砕した。得られた微粉末の粒度頻度分布を図2に示す。また、得られた粉末について試料振動式磁気測定装置(VSM)で磁気特性を測定した。これら測定結果を表1に示す。
【0051】
(実施例7)
実施例1と同等な方法で得られたサマリウム−鉄−窒素磁石粗粉末を、ジェットミル装置に0.3MPaの圧力のヘリウムガスを供給量0.04m/分と、0.3MPaの圧力でアルゴンガスを供給量0.36m/分の割合で混合したガスを流しながら1時間当たり300gの割合で供給し、6分間粉砕した。得られた微粉末の粒度頻度分布を図2に示す。また、得られた粉末について試料振動式磁気測定装置(VSM)で磁気特性を測定した。これら測定結果を表1に示す。
【0052】
(比較例1)
原料、サマリウム−鉄−窒素磁石粗粉末の作製は実施例1と同様としたが、粉砕はジェットミルの代わりに、振動式ボールミルを使用した。直径4mmのステンレスボール 288gに対して、サマリウム−鉄−窒素磁石粗粉末15gを投入し、エタノール中で120分間粉砕した。得られた微粉末の粒度頻度分布を図2に示す。また、得られた粉末について試料振動式磁気測定装置(VSM)で磁気特性を測定した。これら測定結果を表1に示す。
【0053】
(比較例2)
原料、サマリウム−鉄−窒素磁石粗粉末の作製、粉砕方法は実施例1と同様としたが、粉砕時に使用する搬送吹きつけガスを窒素に変えて行った。得られた微粉末の粒度頻度分布を図2に示す。また、得られた粉末について試料振動式磁気測定装置(VSM)で磁気特性を測定した。これら測定結果を表1に示す。
【0054】
(比較例3)
原料、サマリウム−鉄−窒素磁石粗粉末の作製、粉砕方法は実施例1と同様としたが、粉砕時に使用する搬送吹きつけガスをアルゴンに変えて行った。得られた微粉末の粒度頻度分布を図2に示す。また、得られた粉末について試料振動式磁気測定装置(VSM)で磁気特性を測定した。これら測定結果を表1に示す。
【0055】
(比較例4)
原料、サマリウム−鉄−窒素磁石粗粉末の作製、粉砕方法は実施例7と同様としたが、粉砕時に使用する搬送吹きつけガス中のヘリウムガスの含有量を少なくして、0.3MPaの圧力のヘリウムガスを供給量0.02m/分、アルゴンガス(圧力0.3MPa)を供給量0.38m/分の割合で混合したガスを流しながら粉砕した。得られた微粉末の粒度頻度分布を図2に示す。また、得られた粉末について試料振動式磁気測定装置(VSM)で磁気特性を測定した。これら測定結果を表1に示す。
【0056】
(比較例5)
原料、サマリウム−鉄−窒素磁石粗粉末の作製、粉砕方法は実施例1と同様としたが、粉砕時に使用する搬送吹きつけガスを圧力0.1MPaのヘリウムガスとし、供給量0.4m/分でガスを流しながら1時間当たり100gの割合で供給し、6分間粉砕した。得られた微粉末の粒度頻度分布を図2に示す。また、得られた粉末について試料振動式磁気測定装置(VSM)で磁気特性を測定した。これら測定結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
「評価」
実施例1〜4のように、サマリウム−鉄−窒素磁石粗粉末をジェットミルに供給し、ヘリウムガスを用いて粉砕した場合、いずれも6分間の短い粉砕時間で平均粒径2μm以下の微粉末が得られており非常に効率的に微粉砕できることがわかる。また、実施例5〜7のように、ヘリウムガスを主成分として、これに窒素ガス、アルゴンガスを混合しても実施例1〜4と同等の結果が得られており、高い粉砕効率を達成できることがわかる。また、得られたサマリウム−鉄−窒素磁石の粉砕粉は、磁気特性の劣化が無く、280kJ/m(35MGOe)以上の高磁気エネルギー積を有していることがわかる。
【0059】
一方、振動式ボールミルで粉砕した比較例1の場合、120分かけて粉砕することで、実施例とほぼ同様の粒度分布と平均粒径が得られるが、湿式粉砕であることから磁気特性、特に保磁力の低下が顕著であり、磁気エネルギー積も低下していることがわかる。
ジェットミル粉砕条件を実施例と同じにして、ヘリウムガスを用いずに窒素ガス、アルゴンガス単独で粉砕を行った比較例2、3では、粒度分布がブロードとなり、平均粒径は大きくなっており、効率よく微粉砕されていないことがわかる。この粒度分布のままでは高磁気特性は得られないことが示されている。また、比較例4では、ヘリウムガスを用いているので比較例1〜3に比べると粉砕効果が認められるが、ヘリウムの量が少ないので、実施例と比べると十分には粉砕効率が向上しないことがわかる。比較例5では、ヘリウムガスを用いているので比較例4同様、比較例1〜3に比べると粉砕効果が認められるが、ヘリウムガス圧力が低く、粗粉末供給量も少ないので、実施例と比べると十分には粉砕効率が向上しないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明で用いるジェットミル粉砕設備の概略のフローシートを示す。
【図2】各実施例、比較例により粉砕して得られる磁石粉末の粒度分布を示す。
【符号の説明】
【0061】
1.ヘリウムガスボンベ
2.窒素ガスボンベ
3.リザーブタンク
4.気流式ジェットミル
5.冷却パイプ
6.ホッパー
7.フィーダ
8.バグフィルター
9.回収器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Smを必須元素とする少なくとも1種の希土類元素と、鉄又はその一部をCo、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Ga、又はAlの少なくとも1種以上で置換した遷移金属元素と、窒素とを主成分として含むサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末を製造する方法において、
上記サマリウム−鉄−窒素系磁石の粗粉末をジェットミル粉砕装置内で、搬送吹きつけガスとしてヘリウムを10体積%以上含有する不活性ガスを用い、一回で平均粒径が3μm以下の微粉末となるに十分な程度の吹きつけガスの搬送速度と粉砕時間の条件下にジェットミル粉砕することを特徴とするサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末の製造方法。
【請求項2】
前記粗粉末の粒径が106μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末の製造方法。
【請求項3】
不活性ガスが、窒素及び/又はアルゴンを含むことを特徴とする請求項1に記載のサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末の製造方法。
【請求項4】
不活性ガスが、ヘリウムを50体積%以上含むことを特徴とする請求項1に記載のサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末の製造方法。
【請求項5】
前記サマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末が、希土類元素を23.2〜23.6重量%、及び窒素を3.0〜3.5重量%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のサマリウム−鉄−窒素系磁石微粉末の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−351688(P2006−351688A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173652(P2005−173652)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】