説明

サンプルの撮影方法及び撮影装置

本発明は、サンプルの撮影方法及び撮影装置に関するものであり、特に、タンパク質や核酸などの生体分子の分離に使用した電気泳動ゲルの撮影方法及び撮影装置に関するものである。本発明は、従来の撮影システムが有していたニュートンリングによる干渉及び化学毒性に付随する問題を解決するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルの撮影方法及び撮影装置に関するものであり、特に、タンパク質や核酸などの生体分子の分離に使用した電気泳動ゲルの撮影方法及び撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サンプルを撮影して、サンプル内に存在する分析対象物質を識別及び/又は定量する過程は、化学研究や生物学研究の多くの領域で、重要なプロセスとなっている。分析対象物質の識別・定量は、例えばケミルミネセンスや放射能などを測定することによって、サンプル中で直接識別・定量することもできるし、また、分析対象物質をまず検出可能な標識、例えば蛍光染料で誘導化しておいてから、画像解析を行う必要があることもある。その結果、撮影装置では、フォトダイオード、光電子増倍管(PMT)から電荷結合素子(CCD)カメラに至るまで、様々な分析器を使用して、分析対象物質を識別・定量することになる。分析をどのようなモード(例えば、蛍光、リン光、ストレージフォスファ撮影、ケミルミネセンス)で行うのかに応じて、各種の撮影装置が市販されている。こうした撮影装置は、多様なフォーマット、例えばマイクロタイター又はマイクロウェルプレート、スライド、メンブレン、組織スライス又は切片、キュベット、チューブゲル、又はカセットのサンプルを撮影できるよう、設計されている。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第2004/0071394号には、複数のスライドを保持するよう設計されたサンプルホルダーを備えた撮影システムが記載されている。このサンプルホルダーのサイズは、マイクロプレート程度である。英国特許出願公開第2294320号には、ゲルカセットシステム内に封入された細菌のコロニーを調べる際に使用する撮影装置が開示されている。この事例では、カセットにレーザー光を透過させて光散乱のデータを得、このデータを解析して細菌の成長を測定している。米国特許第6159425号には、さらに別の撮影装置が、撮影対象であるのサンプル容器を支持する装置とともに開示されている。この支持装置には、ホルダーが設けられ、このホルダーは、サンプル容器を、棚状構造上に支持するが、サンプル容器は棚状構造内に封入されるわけでない。
【0004】
生体分子、例えば、核酸やタンパク質の撮影は、生物研究では、特段に重要である。単純な細菌から生物として複雑な哺乳動物に至るまで、多岐にわたる生物から得られたタンパク質や核酸を識別・定量する需要が継続的に存在している。ゲノムの遺伝子配列が決定されたヒトゲノムプロジェクトの成功を受けて、科学の関心は、ヒトを始めとする様々な生物のタンパク質の組成やタンパク質の機能を解析する作業にますます集まりつつある。
【0005】
タンパク質や核酸を始めとする生体分子の分離を、それらの生体分子の識別・定量に先だって、或いは、識別・定量と平行して行うにあたっては、様々な技術を用いることができる。ゲル電気泳動は、タンパク質のサイズやサブユニットの組成を決定する際に使用される。タンパク質を含む溶液に電界を印加すると、タンパク質は帯電分子であるため、純電荷、サイズ、形状に応じた速度でゲル中を移動する。その後ゲルを蛍光染色して、各種のタンパク質成分を識別する。ゲルは、蛍光撮影装置を利用して撮影し、個々のタンパク質を識別・定量する。より進んだテクニックである二次元ゲル電気泳動を用いると、1000種以上の異なるタンパク質を高精度で解析することができ、溶液中に存在しているタンパク質の実質的な「マップ」を得ることができる。
【0006】
二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によるタンパク質の分離を利用したプロテオミクス解析も広く利用されているが、このテクニックは、タンパク質の発現の差を決定するうえで必要な画像解析に時間を要するため、スループットが比較的低い。より効率の高い方法である二次元ディファレンスゲル電気泳動では、二次元PAGEを行う前にタンパク質の標識に蛍光染料を使用して、複数のサンプルの同時分離と、1つのゲル上での可視化を可能としている。通常、3種のタンパク質抽出物(例えば、対照試料1種と、処理ずみ試料2種)を異なる蛍光染料(例えばCy2、Cy3、及び/又はCy5)で標識し、その後、二次元PAGEで分離する。その後、Cy2、Cy3、及び/又はCy5の励起波長を用いて画像を撮影し、サンプル間の差を、画像解析ソフトウェアで判定して、各サンプル中のタンパク質成分の識別・定量を行う(Unlu et al., 1997, Electrophoresis, 18, 2071-77; Tonge et al., 2001, Proteomics, 1, 377-396)。
【0007】
しかし、生体分子の電気泳動による分離を従来のスキャナーを用いて実施する際に使用されていたゲルの走査には、技術上困難な点がいくつもあった。例えば、ゲルは、通常、撮影装置、例えば蛍光スキャナーのガラス窓又はプラットホーム上に載置し、スキャナーの蓋を締めてから走査を行う。撮影プロセスが完了したら(通常は30分程度)、ゲルを注意深く取り除き(ゲルを保存する場合)、窓又はプラットホームを十分に清浄化する。この清浄化の過程では、腐食性の溶剤又は化学物質を使用することが多いので、作業者が障害を負ったり、及び/又は撮影装置が損傷したりすることがないよう、十分注意する必要がある。装置内部を、こうした化学物質や溶剤から確実に保護するためには、ガラス窓又はプラットホームを封止して、腐食性の清浄剤が機械本体の損傷を受けやすい構成部品に接触しないようにする必要がある。或いは、撮影装置の構成部品を、清浄に用いる化学物質や溶剤に対して耐性であることが既知の材料から構成する必要がある。
【0008】
腐食性の化学物質や溶剤を実験設備内で使用することは、換気フードを使用する場合とは異なり、作業者にとって困難が増すことになる。場合によっては、機器を換気フード内に設置せねばならず、この高価なリソースの無駄に使うことになる。
【0009】
従来技術の撮影装置の問題点としては、さらに、「ニュートンリング」の問題、すなわち、2枚のガラスシートを通過する光によって生じる干渉現象の問題を挙げることができる。ニュートンリングは、2枚のガラスシート又は透明プラスチックシートが近接して、互いにほぼ平行に保持されている場合に生じる同心円状の縞である。ニュートンリングは、シート間の空気の隙間が光の波長に対して特定の寸法であって、光線が干渉すると出現する。
【0010】
こうした現象は、通常、ガラス又はプラスチックの保持部材に収納したサンプルを、撮影装置のガラス製プラットホーム上で直接撮影するような、光線がガラスシート何枚かを通過する必要がある場合に生じる。例えば、ガラス又はプラスチック製の容器及び/又はスライドに収納したサンプルを撮影装置のガラス製プラットホームに載置した場合も生じるし、またこの問題は、カセットを構成する2枚のガラスシートの間にゲルを挟み、このカセットを撮影装置のガラス製プラットホーム上に載置した場合にも生じる可能性がある。こうした性状を持つカセットは、作業者の時間を節約し、ゲルの均質性を向上させ、扱いや保管を容易にするために、産業において一般に使用され、市販されている(例えば、The Gel Company(米国カリフォルニア州サンフランシスコ))。すなわち、撮影装置のガラス製プラットホームと、カセットのガラスシートの干渉によってニュートンリングが形成され、このニュートンリングに起因する不均一性のために、強度の読みが不正確となるという結果が生じるわけである。
【0011】
上述したタイプの既存のカセットは、サンプルの保管という意味でも用途が限定されているかもしれない。例えば、ゲルは、カセットが環境に対して気密でないために、時間の経過とともに乾燥してしまう可能性がある。また、サンプルを環境から保護又は封止する努力を払わない場合、サンプル又はゲルの汚染も生じかねない。
【0012】
米国特許出願公開第2005/0008541号には、スキャナーを使用してゲル断片の位置を確定し、位置を確定した断片をゲルから取り出す方法で使用するゲルホルダーが記載されている。このホルダーのベースプレートは、ゲル中の濃縮地点を光学的に走査又は検出できるよう、電磁線に対して透明である。しかし、このゲルホルダーは、ゲルを封止し、その結果として環境に起因する乾燥や汚染を防止するロック装置を備えていない。
【0013】
国際公開第99/42608号には、マルチウェルプラットホームを、光学読みとりが容易な平面形状で収納し、保持するキャディ又は構造が開示されている。キャディは、ロボットによる操作や光学読みとりに適合させたり、蓋をとりつけるたりすることもできる。しかし、キャディを環境から封止する解除可能なロック装置を使用されていない。
【0014】
国際公開第2004/074818号には、マイクロ流体サンプルアレイ用のケースが記載されており、このケースのフレームは、運転時には、上下ともに封止されて耐液性となる。このケースでは、上下の構造の少なくとも一方が、光学読みとりを可能とするために光透過性となっている。このケースは、内部に収納されたサンプルを保護するために使用できるロック装置を備えておらず、サンプルを内部に挿入した後に、必要に応じて構成部分をまとめて封止するのみである。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0071394号明細書
【特許文献2】英国特許出願公開第2294320号明細書
【特許文献3】米国特許第6159425号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0008541号明細書
【特許文献5】国際公開第99/42608号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2004/074818号パンフレット
【非特許文献1】Unlu et al., 1997, Electrophoresis, 18, 2071-77; Tonge et al., 2001, Proteomics, 1, 377-396
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、従来技術が抱えていた以上のような問題点に対して、主に、サンプルの撮影方法、撮影装置、装置用フレームというかたちで対処し、解決策を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第一の態様では、サンプルの撮影方法であって、
(i)第一部分と第二部分を備え、撮影に用いる電磁線に対して透明な窓部が第一部分に設けられているフレームに、サンプルを収納し、
(ii) 電磁線検出器と、フレームを支えるためのペインのない開口部が設けられたプラットホームとを備えた撮影装置に、上記窓部が、検出装置、並びに上記窓部と検出器の間の開口部と対向するようにフレームを載置し、
(iii)サンプルから発せられる電磁線を、検出器で捕捉する
工程を含む方法を提供する。
【0017】
工程(i)によって、第一部分と第二部分が気密に封止されることが好ましい。
【0018】
また、この方法は、工程(ii)の後、サンプルを電磁線で照射する工程をさらに含むことが好ましい。
【0019】
また、照射用の電磁線でサンプルを走査することが好ましい。
【0020】
撮影装置は、蛍光/リン光撮影装置、ストレージフォスファ撮影装置、及びケミルミネセンス撮影装置からなる群から選択されることが好ましい。
【0021】
好ましくは、検出器は、光電子増倍管(PMT)である。さらに好ましくは、検出器は、蛍光検出器である。特に好ましくは、検出器は、電荷結合素子(CCD)である。
【0022】
窓部には、ペインが設けられていないことが好ましい。
【0023】
或いは、窓部は、低蛍光のプラスチック又はガラス製のペインを備えたものとする。
【0024】
検出器は、走査蛍光検出器とすることが好ましい。
【0025】
サンプルが、容器内に保持され、この容器がフレーム内に収納されるものとすることが好ましい。容器は、例えば、電磁線に対して透明な材料からなる皿状容器又は袋とすることができる。
【0026】
サンプルがカセット内に保持され、このカセットがフレーム内に収納されることが好適である。カセットは、例えば、2枚のガラス又はプラスチックのシートとすることができる。これらのシートは、サンプルを収納し、シート間にサンプルが挟持された構造を形成することができる。サンプルを収納するにあたっては、シートを融着させて封止ユニットを形成して、サンプルを保護することもできる。
【0027】
サンプルは、ディファレンス干渉ゲル電気泳動(Differential Interference Gel Electrophoresis、DIGE)分析に適している。
【0028】
フレームと検出器とが相互に可動で、電磁線の捕捉及び/又はサンプル表面の走査が可能であることが好ましい。これは、撮影装置中のステージ機構によって実現することができる。
【0029】
サンプルは、ゲル、メンブレン、組織スライス又は切片、液体、マイクロタイタープレート、キュベット、チューブ、顕微鏡スライド、及びカセットからなる群から選択するのが適当である。
【0030】
本発明の第二の態様では、フレーム内に収納されたサンプルを撮影する撮影装置であって、第一部分が、撮影用の電磁線に対して透明な窓部を画定する本体を備え、第二部分が、撮影用の電磁線に対して不透明な蓋の形状である装置であって、装置に、フレームを支えるためのペインのない開口部が設けられたプラットホームが設けられていることを特徴とする装置を提供する。
【0031】
撮影装置は、フレーム移動用のステージ機構をさらに備え、サンプルの走査が可能であることが好ましい。
【0032】
第二の態様の装置は、ストレージフォスファ撮影装置、ケミルミネセンススキャナー、蛍光スキャナー/リン光スキャナーからなる群から選択されるものであることが好ましい。
【0033】
サンプルは、ゲル、メンブレン、組織スライス又は切片、液体、マイクロタイタープレート、顕微鏡スライド、及びゲル用カセットからなる群から選択されたものであることが好ましい。
【0034】
本発明の第三の態様では、サンプルを内部に収納するための撮影装置用フレームであって、フレームが、第一部分と、第二部分と、上記第一部分と第二部分とを封止するための解除可能なロック装置とを備えた装置であって、第一部分が、撮影用の電磁線に対して透明な窓部を画定する本体を備え、第二部分が、撮影用の電磁線に対して不透明な蓋の形状であるフレームを提供する。
【0035】
窓部には、ペインが設けられていないことが好ましい。
【0036】
窓部には、低蛍光のガラス又はプラスチック製ペインが設けられていることも好ましい。さらに好ましくは、このガラス又はプラスチック製ペインは、封止することによって第一部分に取り付けられ、フレームからの液漏れが防止されている。特に好ましくは、ペインに、一連の基準点を印刷して、画像解析中にX及びY座標を容易に決定できるようにする。
【0037】
第一部分には、サンプルを第一部分に確実に保持するための、バネを備えた保持手段を設けることが好ましい。
【0038】
第一部分及び/又は第二部分は、低蛍光材料を含むか、低蛍光材料で被覆されていることが好ましい。
【0039】
第一部分には、少なくとも1つのハンドルを設けて、フレームの運搬を容易とすることが好ましい。
【0040】
サンプルは、ゲル、メンブレン、組織スライス又は切片、液体、マイクロタイタープレート、顕微鏡スライド、及びゲル用カセットからなる群から選択されるものとすることが好ましい。
【0041】
本発明の第四の態様では、サンプルの撮影システムであって、
(i)以上に記載した撮影装置用フレームと、
(ii)以上に記載した撮影装置と
を備えたシステムを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
撮影装置は、当業界では周知である。図1は、通常の撮影装置10を図示したもので、この装置は、電磁線に対して感受性の検出器12を収納するハウジング14と、表面にサンプル20を担持する上記電磁線に対して透明な支持部材16とを備えている。支持部材16は、通常、ガラス製である。サンプル20は、例えば、メンブレン、組織のスライス又は切片、スライド、マイクロタイター又はマイクロプレート、又はゲルなどの形態とすることができる。図1では、サンプルは、電気泳動によって、タンパク質を、撮影装置10で撮影する複数のバンド25に分離する際に使用したゲルである。検出器12は、サンプル20から発せられた電磁線を測定するものであり、固定位置から直接、又は、スキャナーのようにサンプル20の表面を走査することによっても、領域を撮影することができる。検出器12は、各種の形態とすることができ、例えば、当業界では、蛍光/リン光撮影装置、ストレージフォスファ撮影装置などが広く使用されている。通常の検出器の例としては、光電子増倍管(PMT)及び電荷結合素子(CCD)を挙げることができる。撮影装置10のハウジング14は、通常、遮光性の蓋(図1に示さず)を備えており、この蓋は、開いて、サンプル20を支持部材16上に載置し、閉じて、外部線源から電磁線の入射を防止することができる。
【0043】
図1では、サンプル20は、むきだしのゲルの形態であり、撮影に備えて、支持部材16上に直接載置されている。図1bでは、サンプル20は、支持部材16の表面に載置された2枚のガラス板31及び32を含むカセット30内に収納又は挟持されている。いずれの状況でも問題が生じる可能性があり、すなわち、図1aでは、支持部材16を、毒性及び/又は腐食性であるおそれのある化学物質で十分にに清浄化して、残留している微量のゲル残滓をすべて取り除いてから、次のサンプルを撮影する必要があり、図1bでは、光が、カセット30のガラスシート31及び32と、支持部材16とを通過する際にニュートンリングが生じることによって、干渉が起こる可能性がある。
【0044】
図2は、本発明のフレーム160に収納することによって、サンプル120を撮影に備えて準備する過程を示す。フレームは、第一部分140と第二部分150とを備え、これらは、図2aと図2cに別々に示してある。図2bには、サンプル120を図示してあり、このサンプル120は、その後、図2dに示すように、フレーム160の第一及び第二部分140及び150に収納して撮影に備える。
【0045】
フレーム160の第一部分140の各部分を図2aに示す。第一部分140は、撮影に用いる電磁線に対して透明な窓部144を画定する矩形本体141を備えている。この矩形本体は、4枚の互いに接続した壁部をそなえており、この壁部は、上端又は下端同士が接合されておらず、オープンな構造となっている。低蛍光のガラス製ペイン145が、窓部144全面に延在するかたちで載置され、その表面が、サンプル120を支持している。ペイン145は、電磁線に対して透明な任意の材料(例えば有機ポリマープラスチック)から形成することができる。ガラス製ペインの表面に、基準点(図示せず)を印刷して、画像解析中にX及びY座標を容易に決定できるようにすることもできる。矩形本体141には、ハンドル142及び143が取り付けられているので、第一部分140を第二部分150と接続する際には、第一部分140及び/又はフレーム160を持ち運ぶことができる。矩形本体141は、ロック146及び147を備えているので、第一部分140を第一部分160に固定することができる。
【0046】
図2cに示すフレーム160の第二部分150は、本体155を備えており、この本体155は、低蛍光材料製で、第一部分に対する遮光性の(撮影に用いる電磁線に対して不透明な)蓋の形状となっている。蓋の表面には、バネを備えたガラスホルダー151〜154が取り付けられており、このホルダーを用いて、カセットを第二部分150に固定することができる(図3参照)。第二部分150の中央156は、中空であるため、本体155は、凹構造となっている。
【0047】
図2bには、サンプル120を示す。この図では、サンプルの例として、タンパク質を分離して、互いに離れて位置する複数のバンド(例えば125)とする際に使用した電気泳動ゲルを示してある。
【0048】
図2dは、撮影に備えてサンプル120が納められたフレーム160を示す。サンプル120は、第一部分140のガラスペイン上に載置され、この第一部分140は、さらに、ロック146及び147によって、第二部分150に固定されている。サンプル120は、このように、撮影に備えて、フレーム160第一部分140と第二部分150の内部に収納されている。当業者であれば、図2dでのフレーム160がこの向きとなっているのは、単に、説明上の都合であり、通常、フレーム160は、撮影のために撮影装置に挿入する前に180°裏返すことを理解できるはずである。
【0049】
図3は、撮影に備えて、本発明のフレーム260にサンプル220を収納する図2と同様の過程を示す。サンプル120を直接フレーム160に収納する図2の過程とは異なり、図3では、カセット230をフレーム260に収納する前に、サンプル220がすでにカセット230に挟持されている。
【0050】
図3aは、本発明のフレーム260の第一部分240を示す。第一部分240は、電磁線に対して透明な窓部244を画定する矩形本体241を備えている。矩形本体241は、4枚の互いに接続した壁部をそなえており、この壁部は、上端又は下端同士が接合されておらず、オープンな構造となっている。ハンドル242及び243が設けてあるため、第一部分240及びフレーム260が持ち運びやすく、ロック246及び247が設けてあるので、第一部分240と第二部分250を確実に固定することができる。
【0051】
図3bには、2枚のガラスシート231及び232を備えたガラス製カセット230に収納したサンプル220を示す。このサンプルは、タンパク質を分離して、互いに離れて位置する複数のバンド225とする際に使用した電気泳動ゲルである。
【0052】
図3cに示すように、カセット230は、第二部分250に装着する。第二部分250は、図2bに記載したものと同じで、本体255を備えている。この本体255は、低蛍光材料製で、第一部分240に対する遮光性の蓋の形状となっている。蓋の表面には、バネを備えたガラスホルダー251〜254が取り付けられており、このホルダーを用いて、カセット230を第二部分250に固定することができる。これらの弾性ホルダー251〜254に力を加えて持ち上げ、その下にカセット230を挿入し、その後ホルダーを下げて、カセット230を第二部分250の本体255に固定すればよい。
【0053】
図3dでは、撮影に備えて、カセット230(図示せず)が、(第一及び第二部分240及び250を備えた)フレーム260に収納されている。フレーム260は、ガラス製ペイン145を備えていないこと以外は、図2dで説明したのと同様である。当業者であれば、通常、フレーム260は、撮影に備えて撮影装置に移す前に180°裏返すことがわかるはずである。
【0054】
図4は、ニュートンリングによって生じる干渉の問題を示す図である。断面図は、電磁線測定用の検出器312を備えた撮影装置310を示す図であり、この撮影装置310は、ガラス製のカセット330に挟持されたサンプル320を載置するガラス製の支持部材316を備えている。カセットは、2枚のガラス板331及び332から構成され、このガラス板の間に、サンプル(後述の実施例の電気泳動ゲル)を収納する。カセット330のガラス板332とガラス製支持部材316との間の空気ギャップ370が、電磁線の波長に対して特定の寸法で、検出器312が受ける電磁線に干渉が生じると、ニュートンリング(図示せず)が出現する。
【0055】
図5は、本発明の撮影装置410の模式的な横断面図で、サンプル420が、本発明のフレーム460に収納されている。撮影装置410は、本体414を備えており、この本体414のチャンバ413内には検出器412が収納されている。チャンバ413は、ペインのないプラットホーム415を備え、このプラットホーム415には、フレーム460を支持する開口部(図では、チャンバ413によって画定されている)が設けられている。
【0056】
例示の都合上、フレーム460は、図2で説明したのと同じものとしてあるが、撮影装置410では、図3のフレーム260も同様に十分使用できるものと理解されたい。フレーム460を、撮影装置410のチャンバ413内のプラットホーム415に載置し、蓋417を閉めることによってチャンバ413を封止して、外部からの光の入射を防止する。サンプル420(ここでは、電気泳動ゲルとする)が、フレーム460内のガラス製ペイン445上に載置されている。フレーム460を、プラットホーム415上に載置するにあたっては、ペイン445が検出器412と対向し、ペイン413と検出器412との間に(チャンバ413によって画定される)開口部が存在するようにする。ペインのないプラットホーム415を使用するのは、ニュートンリングによって生じる干渉の問題を防止し、従来技術の撮影装置では必要だったペインの清浄化を行わなくてもよいようにするためであると理解されたい。
【0057】
サンプル420から発せられた電磁線は、検出器412によって検出される。図示した例では、サンプルを検出器412の経路を横切るように移動させ、ゲルの走査を行う。別の形態では、検出器412を可動として、ゲルの表面を走査させるようにすることもできることがわかるはずである。図5では、検出器412を蛍光検出器とし、撮影装置が、ゲル420を、ゲル中に存在するフルオロフォアを励起するよう選択された周波数の電磁線で照射し、その後、ゲル420から発せられた蛍光を検出する。
【0058】
本発明の撮影装置510とフレーム560の別の形態を図6に示す。図には、サンプル520をフレーム560内に収納し、撮影に備えて、撮影装置510内に載置する過程を示してある。
【0059】
図6aでは、サンプル520(ここでは電気泳動ゲル)が、フレーム560の第一部分540のガラス製ペイン545上に載置されている。その後、第二部分550を第一部分540と接合して、本発明のフレーム560を形成する。
【0060】
図6bは、フレーム560が、撮影装置510のチャンバ513の上方に位置しているところを模式的に示したものである。チャンバ510は、プラットホームを画定しており、このプラットホームには、フレームを支持する開口部が設けられている。
【0061】
図6cには、撮影装置510に挿入した後のフレーム560を示す。
【0062】
遮光製の蓋517を閉めると、サンプル520の装置510中での撮影の用意が完了する。
【0063】
サンプルに関して使用した例、すなわちゲルは、単に例示のために示したものであり、他のサンプルの例、例えば、メンブレン、組織のスライス又は切片、液体、マイクロタイター又はマルチウェルプレート、キュベット、顕微鏡用スライド、又はカセットを使用することも可能であると理解されたい。
【0064】
任意の一形態に関して記載した特徴は、単一で使用することも、記載した他の特徴と組み合わせて使用することもでき、また、任意の他の形態又はそれら他の形態の組み合わせの1以上の特徴と組み合わせて使用することができると理解されたい。また、以上で記載しなかった均等な形態又は変更形態も、添付した請求の範囲に記載した本発明の範囲を逸脱することなく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この図は、従来技術の撮影装置の模式図である。図1aは、装置のガラスシートによって支持された撮影対象であるむきだしのゲルを、図1bは、カセット内に挟持され、さらに、ガラスシートによって支持された同様のゲルを描いたものである。
【図2】この図は、本発明のフレームの模式図であり、このフレームは、第一部分(図2a)と、サンプル(図2b)を、図2dに示すようにして内部に収納する第二部分(図2c)とを備えている。
【図3】この図は、本発明の別の形態の模式図であり、第一部分(図3a)と、サンプルを、図3dに示すようにして内部に収納する第二部分(図3c)とを備えている。
【図4】この図は、従来技術の撮影装置で生じることのあった、ニュートンリングの問題を図示するものである。
【図5】この図は、本発明の撮影装置に載置した本発明のフレームの横断面図である。
【図6】この図は、本発明の各種の形態を示す模式図であり、サンプルをフレーム(図6a)に収納し、フレームを、撮影装置(図6b及び6c)に載置し、サンプル撮影に先立って装置の蓋をしめたところ(図6d)である。
【図1a】

【図1b】

【図2a】

【図2b】

【図2c】

【図2d】

【図3a】

【図3b】

【図3c】

【図3d】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの撮影方法であって、
(i)第一部分と第二部分を備え、撮影に用いる電磁線に対して透明な窓部が第一部分に設けられているフレームに、サンプルを収納し、
(ii) 電磁線検出器と、フレームを支えるためのペインのない開口部が設けられたプラットホームとを備えた撮影装置に、上記窓部が、検出装置、並びに上記窓部と検出器の間の開口部と対向するようにフレームを載置し、
(iii)サンプルから発せられる電磁線を、検出器で捕捉する
工程を含む方法。
【請求項2】
工程(i)によって、第一部分と第二部分が気密に封止される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(ii)の後、サンプルを電磁線で照射する工程をさらに含む、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
照射用電磁線でサンプルを走査する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
撮影装置が、蛍光/リン光撮影装置、ストレージフォスファ撮影装置及びケミルミネセンス撮影装置からなる群から選択される、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
検出器が蛍光検出器である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
検出器が電荷結合素子(CCD)である、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
検出器が光電子増倍管(PMT)である、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
窓部にペインが設けられていない、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
サンプルがカセット内に保持され、このカセットがフレーム内に収納される、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
フレームと検出器とが相互に可動で、電磁線の捕捉及び/又はサンプル表面の走査が可能である、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
サンプルが、ゲル、メンブレン、組織スライス又は切片、液体、マイクロタイタープレート、キュベット、チューブ、顕微鏡スライド、及びカセットからなる群から選択される、請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
フレーム内に収納されたサンプルを撮影する撮影装置であって、フレームが、第一部分と第二部分とを備え、第一部分が、撮影用の電磁線に対して透明な窓部を画定する本体を備え、第二部分が、撮影用の電磁線に対して不透明な蓋の形状である装置であって、装置に、フレームを支えるためのペインのない開口部が設けられたプラットホームが設けられていることを特徴とする撮影装置。
【請求項14】
フレーム移動用のステージ機構をさらに備え、サンプルの走査が可能である、請求項13記載の撮影装置。
【請求項15】
撮影装置が、ストレージフォスファ撮影装置、ケミルミネセンススキャナー、蛍光/リン光スキャナーからなる群から選択される、請求項13又は請求項14記載の撮影装置。
【請求項16】
サンプルが、ゲル、メンブレン、組織スライス又は切片、マイクロタイタープレート、液体、顕微鏡スライド、及びゲル用カセットからなる群から選択される、請求項13乃至請求項15のいずれか1項記載の撮影装置。
【請求項17】
サンプルを内部に収納するための撮影装置用フレームであって、フレームが、第一部分と、第二部分と、上記第一部分と第二部分とを封止するための解除可能なロック装置とを備えた装置であって、第一部分が、撮影用の電磁線に対して透明な窓部を画定する本体を備え、第二部分が、撮影用の電磁線に対して不透明な蓋の形状であるフレーム。
【請求項18】
窓部にペインが設けられていない、請求項17記載のフレーム。
【請求項19】
窓部に、低蛍光のガラス又はプラスチック製ペインが設けられている、請求項17記載のフレーム。
【請求項20】
ガラス又はプラスチック製ペインが、封止することによって第一部分に取り付けられ、フレームからの液漏れが防止されている、請求項19記載のフレーム。
【請求項21】
第一部分及び/又は第二部分が、低蛍光材料を含むか、低蛍光材料で被覆されている、請求項17乃至請求項20のいずれか1項記載のフレーム。
【請求項22】
ペインに、一連の基準点が印刷されている、請求項17、請求項19乃至請求項21のいずれか1項記載のフレーム。
【請求項23】
サンプルが、ゲル、メンブレン、組織スライス又は切片、液体、マイクロタイタープレート、顕微鏡スライド、及びゲル用カセットからなる群から選択される、請求項17乃至請求項22のいずれか1項記載のフレーム。
【請求項24】
サンプルの撮影システムであって、
(i)請求項17乃至請求項23のいずれか1項記載の撮影装置用フレームと、
(ii)請求項13乃至請求項16のいずれか1項記載の撮影装置と
を備えるシステム。

【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【公表番号】特表2008−541071(P2008−541071A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510474(P2008−510474)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004274
【国際公開番号】WO2006/119941
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(597064713)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ (109)
【Fターム(参考)】