説明

サーボモータの制御装置

【課題】ノイズなどに対して強く、レイアウトの自由度が高いサーボモータの制御装置を提供する。
【解決手段】サーボモータ2の制御装置1は、モータ駆動部3とモータ制御部4がケーブル5で接続された分割構成になっている。モータ駆動部3には、電流センサ15が出力するアナログ信号Iu,Ivをデジタル信号Du,Dvに変換するシリアルアナログ/デジタル変換器16が設けられている。デジタル信号Du,Dvは、差動信号(LVDS信号)としてケーブル5を通してモータ制御部4に送信される。シリアルA/D変換器16などに供給される電圧は、ケーブル5を通して入力された電圧を制御電源回路18で調整したものが供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボモータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サーボモータの制御装置には、サーボモータに通電するモータ駆動部と、通電の切り換えタイミングを制御するモータ制御部とをケーブルで接続した分離構造を有するものがある。
モータ駆動部には、ゲートドライバやトランジスタブリッジ回路、電流センサなどが設けられている。モータ制御部には、電源回路や、電流センサから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換してパラレル出力するアナログ/デジタル変換器(以下、A/D変換器という)や、A/D変換器のデジタル信号に基づいて駆動信号を作成してゲートドライバに出力するIC(Integrated Circuit)が設けられている。このため、ケーブルにシングルエンドのデジタル信号、アナログ信号、及び電源線が含まれる。
【特許文献1】特開平11−77573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の構成では、ケーブル内の信号線にノイズがのったり、モータ制御部とモータ駆動部のグランドレベルに差が生じたりしたときの誤動作を防止するために、ケーブルを短くする必要があった。このため、分離構造を有しながらも、モータ駆動部とモータ制御部の配置に制約が大きかった。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ノイズなどに対して強く、レイアウトの自由度が高いサーボモータの制御装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決する本発明の請求項1に係る発明は、サーボモータの相電流を供給するブリッジ回路を有するモータ駆動部と、前記モータ駆動部にケーブルを介して離れて配置され、前記サーボモータの通電相の決定や通電の切り換えタイミングを決定するモータ制御部と、を有し、前記モータ駆動部に、前記サーボモータに取り付けられた電流センサが出力するアナログ信号をデジタル信号に変換してシリアル出力するシリアルアナログ/デジタル変換器と、前記ケーブルを通して供給される電圧を調整する制御電源回路を設け、前記モータ駆動部と前記モータ制御部の通信に差動信号を用いるように構成したことを特徴とするサーボモータの制御装置とした。
このサーボモータの制御装置では、電流センサから出力されるアナログ信号をモータ駆動部のシリアルアナログ/デジタル変換器でデジタル信号に変換する。このデジタル信号は、シリアル出力されてケーブルを通して差動信号としてモータ制御部に送信される。モータ制御部では、デジタル信号に基づいてサーボモータの駆動を制御するデジタル信号を作成する。このデジタル信号は、ケーブルを通して差動信号としてモータ駆動部に送信される。
【0005】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のサーボモータの制御装置において、前記ケーブルを使って送信する差動信号としてLVDS(Low Voltage Differential Signaling)方式に則った信号を作成する通信回路を前記モータ駆動部と前記モータ制御部のそれぞれに設けたことを特徴とする。
このサーボモータの制御装置では、LVDS方式の差動信号を使用することで、ノイズに対する耐性がさらに高まる。
【0006】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載のサーボモータの制御装置において、前記モータ駆動部が前記サーボモータに取り付けられていることを特徴とする。
このサーボモータの制御装置では、モータ駆動部をサーボモータに取り付けつつも、モータ制御部を離れた位置に配置することができ、レイアウトが容易になる。
【0007】
請求項4に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載のサーボモータの制御装置において、前記電流センサと前記シリアルアナログ/デジタル変換器がケーブル接続され、前記モータ駆動部の前記ブリッジ回路と前記サーボモータがケーブル接続されていることを特徴とする。
このサーボモータの制御装置は、ブリッジ回路とサーボモータ、シリアルアナログ/デジタル変換器と電流センサとがそれぞれケーブル接続されるので、レイアウトが容易になる。
【0008】
請求項5に係る発明は、請求項3又は請求項4に記載のサーボモータの制御装置において、前記モータ制御部と上位制御装置がPCIバス接続されていることを特徴とする。
このサーボモータの制御装置は、モータ制御部と上位制御装置の接続にPCIバスを使用することで、接続や取り外しが容易になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、モータ駆動部からモータ制御部に送信される信号がデジタル信号になるので、耐ノイズ性が向上する。モータ駆動部とモータ制御部の通信に差動信号を使用することで、耐ノイズ性がさらに向上する。シリアルアナログ/デジタル変換器を使用することで装置構成を簡略し、小型化できる。モータ駆動部の駆動電源回路でシリアルアナログ/デジタル変換器などの作動用電源の電圧を調整するようにしたので、ケーブルが長くなっても安定した動作を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、サーボモータの制御装置1(以下、制御装置1という)は、サーボモータ2に電流を供給するモータ駆動部3と、モータ駆動部3の制御を行うモータ制御部4とがケーブル5を介して接続された分離構造を有する。
【0011】
モータ駆動部3は、モータ制御部4との間で信号を送受信する通信回路11を有し、通信回路11から出力されるPWM(パルス幅変調)信号Up,Un,Vp,Vn,Wp,Wnがゲートドライバ12に入力されるようになっている。通信回路11は、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)方式に則った差動信号に変換して信号通信を行う装置である。ゲートドライバ12は、トランジスタブリッジ回路13を構成する複数のトランジスタのON、OFFを個別に切り換える駆動信号を作成する。トランジスタブリッジ回路13は、スイッチング素子として使用されるトランジスタを例えば6つ有し、これらトランジスタでブリッジ回路が構成されている。トランジスタのONとOFFを切り換えることでパワー電源回路14を介してサーボモータ2の所定の相U,V,Wに電圧を印加し、電流を流すことができる。6つのトランジスタは、U相、V相、W相のそれぞれの高電位側と低電位側に1つずつ配置される。このため、これらトランジスタのON、OFF制御をするゲートドライバ12は、通信回路11と6本の信号線で接続されている。
【0012】
さらに、モータ駆動部3には、サーボモータ2の相電流検出用に電流センサ15が設けられており、サーボモータ2のU相とV相に流れる電流を検出するようになっている。電流センサ15の出力は、シリアルA/D変換器16に接続されている。シリアルA/D変換器16は、電流センサ15から出力されるアナログ信号Iu,Ivをデジタル信号Du,Dvに変換し、通信回路11にシリアル出力する回路構成を有する。また、シリアルA/D変換器16には、通信回路11を介してA/D変換のタイミングを制御するデジタル信号である制御信号Dcが入力されるようになっている。
モータ駆動部3には、その他の回路17や、制御電源回路18が搭載されている。その他の回路17としては、例えば、トランジスタブリッジ回路13を流れる電流の過電流を監視する回路(デジタル信号出力)や、トランジスタブリッジ回路13の温度を監視する回路(アナログ信号出力)、サーボモータ2の回転を検出するエンコーダ19が出力するエンコーダ信号(デジタル信号入出力)等の回路があげられる。他の回路17は、通信回路11との間でデジタル信号による通信を行ったり、シリアルA/D変換器16に信号を出力したりする。制御電源回路18は、ケーブル5を介してモータ制御部4に接続され、モータ駆動部3を動作させる電力が供給されるようになっている。
【0013】
ケーブル5は、差動信号(LVDS信号)を送信するための信号線と、制御電源回路18に電力を供給するための配線(制御電源線及びGND線)とを有する。
【0014】
モータ制御部4は、制御用のCPU(中央演算装置)21と、CPU21の制御下で処理を行うIC22と、通信回路23と、電源回路24とを有する。IC22は、電流センサ15の出力に基づいてトランジスタのON、OFFを制御するPWM信号Up〜Wnを相U,V,Wごとに作成する構成になっている。IC22には、PWM信号Up〜Wnを出力するために使用される6つのポートと、シリアルA/D変換器16から出力されたデジタル信号Du,Dvを入力するポート及び制御信号Dcを出力するポートと、その他の回路17を制御するためのデジタル信号が入出力されるポートとが設けられており、これらポートが通信回路23に接続されている。通信回路23は、LVDS仕様に則った作動信号を送受信する回路である。
電源回路24は、外部から供給される制御電源の制御電源線と制御GND線が接続され、CPU21や、IC22、通信回路23に動作用の電力を供給するようになっている。さらに、制御電源線と制御GND線は、ケーブル5を通してモータ駆動部3側の制御電源回路18にも接続されている。
【0015】
次に、この実施の形態の作用について説明する。
制御装置1には、制御電源からモータ制御部4に電力が供給される。モータ制御部4では、電源回路24を通してCPU21などに電力が供給される。この電力は、ケーブル5を通してモータ駆動部3にも供給され、制御電源回路18で調整された電圧が通信回路11やシリアルA/D変換器16、ゲートドライバ12などに供給される。ケーブル5が長い場合などには電圧降下が生じることがあるので、制御電源の電圧をゲートドライバ12などの動作に必要な電圧より高くなるように予め設定しておき、制御電源回路18で必要な電圧レベルに変換する。例えば、モータ駆動部3内で必要とされる電圧が5Vであれば、制御電源は12V以上に設定する。
【0016】
サーボモータ2を回転させると、U相及びV相に流れる電流がモータ駆動部3の電流センサ15で検出される。各相U,Vの電流値は、アナログ信号Iu,IvとなってシリアルA/D変換器16に入力される。シリアルA/D変換器16は、アナログ信号Iu,Ivをパルス状のデジタル信号Du,Dvに変換して通信回路11にシリアル出力する。A/D変換を行うタイミングは、制御信号Dcにより制御され、サーボモータ2を制御するのに最適なタイミングに調整される。
【0017】
デジタル信号Du,Dvは、通信回路11からケーブル5を通してLVDS信号としてモータ制御部4に送信される。モータ制御部4では、通信回路23で受信したデジタル信号Du,DvをIC22に送る。IC22では、CPU21の制御下でデジタル信号Du,Dvの読み込みを行い、必要に応じて逓倍処理を行い、通電切り替えのタイミングと通電相の決定とを行う。これによって、各相U,V,Wに対応したPWM信号Up〜Unが出力される。これらPWM信号Up〜Unは、通信回路23からLVDS信号としてモータ駆動部3に送信される。
モータ駆動部3では、通信回路11からゲートドライバ12に各PWM信号Up〜Unが入力され、トランジスタブリッジ回路13のトランジスタのON、OFF制御が行われる。トランジスタがONされた経路に接続されたサーボモータ2のコイルには、パワー電源回路14から電流が流れる。これによって、対応するサーボモータ2の所定の相U,V,Wに電流が流れてロータが回転させられる。
【0018】
この実施の形態では、シリアルA/D変換器16をモータ駆動部3側に設けたので、デジタル信号をケーブル5で伝送することが可能になる。アナログ信号を使用する場合に比べて耐ノイズ性に優れる。さらに、デジタル信号の伝送にLVDS方式を採用したので、耐ノイズ性にさらに優れる。LVDS方式を使用した場合には、ケーブル5を10m程度まで延ばしてもノイズの影響を低減できた。ケーブル5を長くすることで、レイアウトの自由度が増す。
シリアルA/D変換器16を使用することで、パラレルタイプを使用する場合に比べて信号線の数を減らすことができる。このため、モータ駆動部3を小型化でき、且つケーブル5の線数を少なく(省線化)できる。
モータ駆動部3に制御電源回路18を設け、ケーブル5を通して供給される電力の電圧を調整するようにしたので、ケーブル5が長くなって電圧降下が生じた場合でも動作に必要な電圧を安定して確保できる。
【0019】
ここで、制御装置1及びサーボモータ2の配置例を以下に説明する。
図2では、サーボモータ2にモータ駆動部3を内蔵させ、ケーブル5を介してモータ制御部4が接続されている。サーボモータ2には、モータ駆動部3の他に回転検出センサであるエンコーダ30も内蔵されている。
【0020】
図3に示すように、モータ制御部4は、パーソナルコンピュータなどのラック31に収容され、PCIバス(Peripheral Components Interconnect bus)を使って図示しない上位制御装置と接続されている。モータ駆動部3は、エンコーダ30(回転検出センサ)にエンコーダケーブル32を介して接続されている。エンコーダ30はサーボモータ2に取り付けられ、モータ駆動部3とサーボモータ2は分離されている。このため、モータ駆動部3のトランジスタブリッジ回路13は、モータケーブル33を介してサーボモータ2に電流を供給する。これらケーブル32,33は、ケーブル5に比べると短くなっている。PCIバスを使用することで、モータ制御部4とケーブル5の接続や取り外しが容易になる。
【0021】
図4に示すように、モータ制御部4は、パーソナルコンピュータなどのラック31に収容され、PCIバスを使ってモータ駆動部3と接続されている。モータ駆動部3は、エンコーダ30と共にサーボモータ2に内蔵されている。
【0022】
なお、本発明は、前記の実施の形態に限定されずに広く応用することができる。
モータ駆動部3とモータ制御部4の間でデジタル信号を伝送する方式は、LDVS方式に限定されない。例えば、RS−422でも良い。
図1に示す制御装置1において、モータ駆動部3と電流センサ15は独立した構成でも良い。
制御装置1の制御対象はサーボモータ2に限定されない。その他のモータであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係るサーボモータの制御装置のブロック図である。
【図2】サーボモータと制御装置の配置例を示す図である。
【図3】サーボモータと制御装置の配置例を示す図である。
【図4】サーボモータと制御装置の配置例を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 駆動装置
2 サーボモータ
3 モータ駆動部
4 モータ制御部
5 ケーブル
11,23 通信回路
13 トランジスタブリッジ回路
15 電流センサ
16 シリアルA/D変換器
18 制御電源回路
32 エンコーダケーブル
33 モータケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボモータの相電流を供給するブリッジ回路を有するモータ駆動部と、
前記モータ駆動部にケーブルを介して離れて配置され、前記サーボモータの通電相の決定や通電の切り換えタイミングを決定するモータ制御部と、
を有し、前記モータ駆動部に、前記サーボモータに取り付けられた電流センサが出力するアナログ信号をデジタル信号に変換してシリアル出力するシリアルアナログ/デジタル変換器と、前記ケーブルを通して供給される電圧を調整する制御電源回路を設け、前記モータ駆動部と前記モータ制御部の通信に差動信号を用いるように構成したことを特徴とするサーボモータの制御装置。
【請求項2】
前記ケーブルを使って送信する差動信号としてLVDS(Low Voltage Differential Signaling)方式に則った信号を作成する通信回路を前記モータ駆動部と前記モータ制御部のそれぞれに設けたことを特徴とする請求項1に記載のサーボモータの制御装置。
【請求項3】
前記モータ駆動部が前記サーボモータに取り付けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のサーボモータの制御装置。
【請求項4】
前記電流センサと前記シリアルアナログ/デジタル変換器がケーブル接続され、前記モータ駆動部の前記ブリッジ回路と前記サーボモータがケーブル接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のサーボモータの制御装置。
【請求項5】
前記モータ制御部と上位制御装置がPCIバス接続されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のサーボモータの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−306811(P2008−306811A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150293(P2007−150293)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】