説明

シアル酸の増強された産生のために代謝的に操作された大腸菌

シアル酸を産生する代謝的に操作されたE.coli株および当該株を作製する方法。操作されたE.coli株細胞において、nanT(シアル酸輸送体)遺伝子およびnanA(シアル酸アドラーゼ)遺伝子が不活化され、そしてnanTnanAE.coli細胞において、Neisseria meningitidisB群におけるシアル酸生合成のneuC遺伝子およびneuB遺伝子が導入され、そして過剰発現される。さらに、E.coliのグルコサミン合成酵素遺伝子、glmSが、neuBおよびneuCとともに同時過剰発現される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2006年9月26日に出願された米国仮出願第60/826,919号に対して優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
1.発明の分野
本発明は、代謝的に操作されたEscherichia coli(「E.coli」)に、およびより詳細には、シアル酸の増強された産生のための、代謝的に操作されたE.coliに関する。
【背景技術】
【0003】
2.先行技術の記載
シアル酸は、細胞シグナル伝達、細菌性病因、および腫瘍転移において重要な役割を果たす生物学的に複雑な炭水化物である。シアル酸の生理化学的な特性は、これを、医薬およびバイオテクノロジーの両方における需要の高まりを伴って、価値ある供給源にする。
【0004】
より正確には、シアル酸は、真核生物細胞の細胞表面上に優先的に見出される酸性糖の大きなファミリーを記載するために使用される一般的な用語である。最も一般的なシアル酸はN−アセチルノイラミン酸あるいはNeu5Ac、シアル酸ファミリーのメンバーを生成するためにいくつかの修飾を受ける酸性の9炭糖である。図1において見られるように、シアル酸ファミリーの多様性は、50個を超える公知のメンバーで表わされる。シアル酸は、N−アセチルノイラミン酸あるいはNeu5Acと呼ばれる酸性の、9炭素親化合物に由来する細胞表面炭水化物の大きなファミリーを表す。Neu5Acは、しばしば、アセチル基、リン酸基、メチル基、硫酸基、およびラクチル基で修飾され、これはシアル酸によって媒介される所望の細胞伝達および細胞接着事象に必要とされる。
【0005】
シアル酸は、多様多数の機能を行い、糖タンパク質安定性、細胞性免疫、溶質輸送、自己認識、神経可塑性、および細胞シグナル伝達のような重要な生物学的プロセスが挙げられる。シアル酸はまた、ヒト疾患において重要な役割を有する。例えば、癌性細胞は、その表面において上昇されたシアル酸レベルおよびシアリル化を有することが示されている。過剰なシアリル化は、侵襲性を促進し、そして細胞内相互作用を減少することが示されており、これは腫瘍転移の特徴である。シアル酸は、現在、インビボで癌組織の非侵襲性の画像化のための道具として研究されている。シアル酸の増加されるレベルは、心臓血管疾患、アルコール依存症、および糖尿病について観察されており、従って、シアル酸を、このような致死的な疾患を診断および検出するためのマーカーにする。いくつかの細菌病原体は、哺乳動物細胞の細胞外表面を模倣することによりマスキング剤として作用する、ポリシアル酸被膜を保有する。ポリシアル酸被膜は、宿主免疫応答から原因となる細菌を防御し、これは細菌が感染を確立することを許容する。ポリシアル酸で被膜された細菌は、髄膜炎(成人および子供において生命を脅かす疾患)の原因因子を導く。最後に、シアル酸のアナログは、インフルエンザノイラミダーゼ阻害剤、例えば、Relenza(登録商標)として、治療薬の安定剤として、および診断薬剤として、医薬産業において重要な役割を見出している。
【0006】
シアル酸の供給源利用可能性は、制限され、そして費用がかかる。伝統的に、シアル酸は、卵黄、乳清、およびツバメの巣から単離され、これは長期にわたる煩雑な精製プロセスを必要とする。全体的な収率は典型的に低く(約10〜20%)、そして純度は不十分である。シアル酸化学における合成経路は、標的の分子が複雑であるために難しい。シアル酸の単離、精製、および合成化学と関連される困難性を回避するために、酵素合成が、現在、シアル酸生成のために好ましい方法である。シアル酸の生合成および分解に関与される酵素のクローニング、およびその後の単離により、研究者らは、直接的な酵素反応によりインビトロでシアル酸を生成することが可能になった。シアル酸の酵素的合成は、高収率(80%)であり、そして酵素混合物の直接的な結晶化を介して純粋な産物を生成する。シアル酸生成における酵素合成の主な欠点は、そのコストおよび産業レベルでの拡張性である。
【0007】
上述で考察されるシアル酸を生成するための方法は、医薬およびバイオテクノロジーの産業の大口需要を満たすのに不十分である。例えば、シアル酸単離、精製、合成化学、生成収率、コスト、および産業レベルでの拡張性と関連される問題を首尾よく克服する代謝的操作のアプローチは、当該分野において有意なおよび待望される前進を表す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
3.目的および利点
シアル酸の生成と関連される上記の問題を解決するための、本発明の主な目的および利点は、代謝的に操作されたE.coli細胞を提供することであり、ここで当該細胞は、シアル酸を産生する。
【0009】
本発明のさらなる目的および利点は、代謝的に操作されたE.coli細胞を作製するための方法を提供することであり、ここで当該細胞はシアル酸を産生する。
【0010】
本発明のさらなる目的および利点は、代謝的に操作されたE.coli細胞の使用を介してシアル酸を作製するための方法を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的および利点は、いくぶんは自明であり、およびいくぶんは以後明白になる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要旨
本発明の実施態様によれば、シアル酸を産生する代謝的に操作されたE.coli細胞、および当該細胞を作製する方法が提供される。詳細には、代謝的に操作されたE.coli細胞が提供され、ここではnanT(シアル酸輸送体)遺伝子およびnanA(シアル酸アルドラーゼ)遺伝子が不活化されており、Neisseria meningitidisB群におけるシアル酸生合成のneuCおよびneuB遺伝子が、nanTnanAE.coli細胞に導入され、そして過剰発現され、ならびにE.coliのグルコサミン合成酵素遺伝子、glmSが、neuBおよびneuCとともに同時過剰発現された。本発明のさらなる実施態様によれば、当該代謝的に操作されたE.coli細胞の使用を介してシアル酸を作製する方法が提供される。
【0013】
本発明は、遺伝子操作された微生物を提供し:微生物における第1のDNA分子における不活化変異であって、ここで第1のDNA分子はシアル酸輸送体をコードする、不活化変異と;微生物における第2のDNA分子における不活化変異であって、ここで第2のDNA分子はシアル酸アルドラーゼをコードする、不活化変異と;ならびに第1の酵素をコードする組換えDNA分子であって、ここで第1の酵素をコードする組換えDNA分子は、シアル酸合成酵素およびUDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼからなる群より選択される酵素をコードする、組換えDNA分子とを、含む。
【0014】
本発明のある実施態様において、微生物はさらに、第2の酵素をコードする組換えDNA分子を含み、ここで第2の酵素をコードする組換えDNA分子は、シアル酸合成酵素およびUDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼからなる群より選択される酵素をコードする。好ましくは、微生物はさらに、野生型株と比較して増加されたUDP−GlcNAcレベルを提供する、組換えDNA分子、またはglmもしくはnag経路におけるDNA分子中の変異を含む。本発明のある実施態様において、微生物はさらに、グルコサミン合成酵素をコードする組換えDNA分子を含む。好ましくは、グルコサミン合成酵素をコードする組換えDNA分子はglmS遺伝子である。
【0015】
本発明のある実施態様において、微生物はE.coliである。好ましくは、微生物における不活化変異は、nanT遺伝子およびnanA遺伝子においてである。本発明のさらなる実施態様において、第1および第2の酵素をコードする組換えDNA分子はneuC遺伝子およびneuB遺伝子である。好ましくは、neuC遺伝子およびneuB遺伝子は、Neisseria meningitidisに由来する。好ましくは、本発明の微生物は、細胞外にシアル酸を輸送する。
【0016】
本発明はまた、シアル酸を産生するための、遺伝子操作された微生物を形成する方法を提供し、以下の工程:微生物においてシアル酸輸送体をコードする第1のDNA分子に不活化変異を導入する工程;微生物においてシアル酸アルドラーゼをコードする第2のDNA分子に不活化変異を導入する工程;ならびに微生物において第1の酵素をコードする組換えDNA分子を導入する工程であって、ここで当該第1の酵素をコードする組換えDNA分子は、シアル酸合成酵素およびUDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼからなる群より選択される酵素をコードする工程を包含する。
【0017】
本発明のある実施態様において、シアル酸を産生するための、遺伝子操作された微生物を形成する方法はさらに、第2の酵素をコードする組換えDNA分子を導入する工程を包含し、ここで第2の酵素をコードする組換えDNA分子は、シアル酸合成酵素およびUDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼからなる群より選択される酵素をコードする。好ましくは、本発明の方法はさらに、組換えDNA分子、またはglmもしくはnag経路におけるDNA分子における変異を含み、野生型株と比較して増加されたUDP−GlcNAcレベルを提供する。本発明のいくつかの方法はさらに、グルコサミン合成酵素をコードする組換えDNA分子を微生物に導入する工程を包含する。
【0018】
本発明はさらにシアル酸を産生する方法を提供し、以下の工程:遺伝子操作された微生物を提供する工程であって、ここで微生物は、微生物におけるシアル酸輸送体をコードする第1のDNA分子における不活化変異と;微生物におけるシアル酸アルドラーゼをコードする第2のDNA分子における不活化変異と;および微生物における第1の酵素をコードする組換えDNA分子とを含み、ここで第1の酵素をコードする組換えDNA分子は、シアル酸合成酵素およびUDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼからなる群より選択される酵素をコードする、工程;ならびに炭素供給源の存在下で微生物を培養する工程を包含する。
【0019】
本発明のある実施態様において、炭素供給源は、グルコース、グリセロール、フルクトース、またはN−アセチルグルコサミンであり得るが、これらに制限されない。
【0020】
本発明はさらに、遺伝子操作された微生物を提供し:微生物におけるDNA分子における不活化変異であって、ここでDNA分子はシアル酸アルドラーゼをコードする、不活化変異と;第1の酵素をコードする組換えDNA分子であって、ここで第1の酵素をコードする組換えDNA分子はシアル酸合成酵素をコードする、組換えDNA分子と;ならびに第2の酵素をコードする組換えDNA分子であって、ここで第2の酵素をコードする組換えDNA分子は、UDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼをコードする、組換えDNA分子とを含む。
【0021】
本発明はまた、N−アシルシアル酸アナログを産生する方法を提供し、以下の工程:
遺伝子操作された微生物を提供する工程であって、ここで微生物は、微生物におけるシアル酸輸送体をコードする第1のDNA分子における不活化変異と;微生物におけるシアル酸アルドラーゼをコードする第2のDNA分子における不活化変異と;ならびに微生物における第1の酵素をコードする組換えDNA分子とを含み、ここで第1の酵素をコードする組換えDNA分子は、シアル酸合成酵素およびUDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼからなる群より選択される酵素をコードする、工程:ならびに細胞内UDP−N−アシルグルコサミンが生成されるような試薬の存在下で微生物を培養する工程、を包含する。本発明のある実施態様において、試薬はN−アシルグルコサミンアナログであり得るが、これに制限されない。
【0022】
本発明は以下の発明の詳細な説明と、添付の図面とを併せて読むことにより、より十分に理解および認識される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】シアル酸ファミリーの多様性を説明する高水準の図式である。
【図2】本発明の実施態様に従う、代謝的に操作されたE.coli細胞によるシアル酸の産生を説明する高水準の図式である。
【図3】本発明の実施態様に従う、代謝的に操作されたE.coli細胞におけるシアル酸産生に対する炭素供給源の効果のグラフ図である。
【図4】本発明の実施態様に従う、複数のグルコース供給によるシアル酸産生の最適化のグラフ図である。
【図5】本発明の実施態様に従う、シアル酸の産生に関与される経路を説明する図式である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
細菌のシアル酸代謝は十分に理解され、そして同化経路および異化経路の両方が同定されている。nanオペロンは、シアル酸異化に必要なタンパク質をコードし、そして何百もの細菌種にわたって見出される。E.coliにおいて、この経路は、図2において見られるように、シアル酸輸送体、NanT、シアル酸アルドラーゼ、NanA、ManNAcキナーゼ、NanK、およびManNAc−6−リン酸エピメラーゼ、NanEからなる。NanTは、これがまた、シアル酸の取り込みおよびポリシアル酸被膜へのシアル酸の組み込みを媒介することにより、ポリシアル酸被膜の合成に関与されることが実証されているので、シアル酸異化におけるその機能に制限されない。
【0025】
図2において、代謝的に操作されたEscherichia coliにおけるシアル酸の産生が見られる。×印は、遺伝子不活化に起因する経路の阻止を示す。太矢印は、遺伝子過剰発現による代謝の上昇された流動を示す。シアル酸異化は、nanT(シアル酸輸送体)遺伝子およびnanA(シアル酸アルドラーセ)遺伝子(×印)の不活化により阻止された。Neisseria meningitidisB群におけるシアル酸生合成のneuC遺伝子およびneuB遺伝子が、nanTnanAE.coli株に導入され、そして過剰発現された(太矢印)。UPD−GlcNAc,neuBC経路の基質、の代謝流量の増加は、経路中にglmS過剰発現を操作することにより達成された(太矢印)。点線は、未確定の代謝によるシアル酸流動を表す。略語は以下のようである、Neu5Ac:N−アセチルノイラミン酸、ManNAc:N−アセチルマンノサミン、ManNAc−6−P:N−アセチルマンノサミン−6−リン酸、GlcNAc−6−P:N−アセチルグルコサミン−6−リン酸、UDP−GlcNAc:ウリジン二リン酸N−アセチルグルコサミン、GlcN−6−P:グルコサミン−6−リン酸、Fru−6−P:フルクトース−6−リン酸、PEP:ホスフェノールピルビン酸、Gln:グルタミン、Glu:グルタミン酸、UDP:ウリジン二リン酸、nanT:シアル酸輸送体、nanA:シアル酸アルドラーゼ、nanK:ManNAcキナーゼ、nanE:ManNAc−6−Pエピメラーゼ、glmS:グルコサミン合成酵素、gluM:グルコサミンムターゼ、glmU:GlcNAc−1−Pウリジルトランスフェラーゼ/GlcN−1−Pアセチルトランスフェラーゼ、neuC:UDP−GlcNAc2−エピメラーゼ、neuB:シアル酸合成酵素、glm:UDP−GlcNAc生合成、nag:GlcNAc分解。nan系の産物はGlcNAcおよびピルビン酸であり、これらは一次代謝において重要な分子である。
【0026】
シアル酸異化と対照的に、細菌シアル酸生合成は、ポリシアル酸被膜を合成するE.coli K1およびN.meningitidisB群を包含する病原性細菌の一部に制限される。シアル酸の生合成に関与する2つのタンパク質は、NeuCおよびNeuBである。NeuCは、UDP−GlcNAc2−エピメラーゼを加水分解してManNAcを生成する。NeuBは、ManNAcとホスホエノールピルベートとを合わせてシアル酸を形成する合成酵素である。neu経路の他のタンパク質は、ポリシアル酸被膜中にシアル酸を取り込む。2つのシアル酸生合成経路は、nan系およびneu系の酵素から操作された。第1の操作される経路は、異化NanAEKタンパク質を含んだ。NanAはインビトロで、過剰のピルビン酸の存在下でシアル酸を合成することが示されているので、nanAEK経路は、代謝的に操作されたE.coli細胞の培養物に過剰のGlcNAcを供給することにより、逆転され得ることが仮説された。GlcNAcはE.coli細胞により容易に取り込まれ、そして細胞内GlcNAcは、NanEKタンパク質の補助を介して、ManNAcに返還されることが期待された。次いで、ManNAcの高い細胞内濃度は、NanA触媒を介するシアル酸合成を駆動する。シアル酸産生はBRL01(lac−制御性T7 RNAポリメラーゼ遺伝子を保有するnanTE.coli株)/nanAEKの振盪フラスコ実験から観察されず、結果として、nanAEK経路は、シアル酸産生に効果がないと結論づけられた。
【0027】
第2の操作された経路は、N.meningitidisB群のNeuCタンパク質およびNeuBタンパク質に焦点が当てられ、これは以下に考察される。この経路の利点は、NeuCの基質特異性であり、これは、図2において見られるように、共通の細菌代謝物、UDP−GlcNAcを、ManNAcに変換する。NeuC、加水分解UDP−GlcNAc2−エピメラーゼ、はまた、エピマー化を駆動するために、加水分解反応からのエネルギーを共役するその能力に起因して、ある他のエピメラーゼよりも効果的である。その後の反応を駆動するために、第1の反応から放出されたエネルギーを使用するその能力を有するそのエネルギー効率に起因して、UDP−GlcNAc2−エピメラーゼは、本発明に従うシアル酸産生に好ましい。
【0028】
neuBC経路の直接的な基質として、細胞内UDP−GlcNAcプールは、代謝流動をシアル酸合成経路に制御し、シアル酸力価を制御する。図5は、UDP−GlcNAcプールの維持に関与される経路を示す。UDP−GlcNAcプールが増加すると、シアル酸生産性および培養力価が増加する。UDP−GlcNAcは、細菌細胞壁生合成の重要な成分であり、そしてglm経路(これはフルクトース−6−リン酸(Fru−6P)をUDP−GlcNAcに変換する)、およびnag経路(これは加水分解されたUDP−GlcNAcをFru−6Pに変換する)による中央代謝に連結される。これらの2つの経路は、細菌の中央代謝と、細胞壁合成およびシアル酸産生とをエネルギー的に共役する。本発明は、UDP−GlcNAcプールを増加するために、glm経路を介して流動を増強するための、および/またはnag経路を介して流動を減少するための方法を提供し、それによりシアル酸生産性が改善される。重要な代謝のかなめのFru−6PとUDP−GlcNAcとの間のクロストークの程度および方向を制御することは、シアル酸生産性が最適化されることを可能にする。本発明により提供されるように、glmおよび/またはnag経路の制御、および野生型株に比較してUDP−GlcNAcレベルの増加は、シアル酸の効率的な量産に不可欠である。
【0029】
本発明の実施態様によれば、E.coliは、シアル酸、複合体、医薬およびバイオテクノロジーの両方において重大な適用を有する生物学的に重要な分子、を産生するように首尾よく操作された。代謝的に操作されたE.coliからのシアル酸産生のコストは、化学合成のコストよりも実質的に低く、そして酵素的合成とは異なり、代謝的に操作されたE.coliはより容易に産業生産に拡張可能である。
【0030】
低細胞密度振盪フラスコ培養から、シアル酸産生は、最大1.5gl−1を達成した。本発明に従う、この代謝的に操作された株の高細胞密度発酵への取り込みは、リットル当たり数グラムに、シアル酸産生を増加するようである。事実、シアル酸産生の10倍の増加が、高密度細胞培養から可能であり、例えば、15gl−1よりも多い。産業レベルの産生にて、本発明の方法は、シアル酸についてのコスト効率的な供給源として作用し、医薬界、バイオテクノロジー界、および科学界の絶えず増加する需要を満たすのに十分なシアル酸を供給する。
【0031】
本発明のある実施態様において、シアル酸産生はさらに、既存の操作されたneuBCglmS経路を改変することにより増強され得る。例えば、グルコサミン合成においてより高い代謝回転速度を有し、より細胞質可溶性であるGlmSタンパク質を操作することが、行われ得る。
【0032】
本発明の別の重要な局面は、細胞質から培地へのシアル酸の予期されない流出である。生物学的な膜を横切る糖の輸送に関する当該分野における標準的な教示は、酸性糖は膜を渡り得ないことを示唆する。それらの高いレベルの親水性が、それらの負電荷と伴って、それらの膜を不浸透性にする。このことは、リン酸化糖および硫酸化糖について十分に立証されている。シアル酸およびそのアナログのようなノヌロソン酸は、酸性糖であり、そしてそのように、当該分野における教示は、これらの化合物は膜を渡り得ないことを示す。従って、当該分野における教示によれば、本発明において生じるように、シアル酸が細胞内で産生される場合、これは細胞を離れ得ず、そして培地に入り得ない。しかし、本発明に従って産生されるシアル酸についてこれは事実ではない。本発明は、シアル酸を産生するための微生物および方法を提供し、ここでは高レベルのシアル酸が細胞質において産生され、そしてここではシアル酸は膜を渡り、そして培地に入る。産生細胞はシアル酸を放出するために死亡および溶菌する必要がなく、むしろシアル酸を放出し得、そしてより多くの産物を産生し続け得るので、この膜輸送は、系の生産性を劇的に増加する。従って、本発明の好ましい実施態様において、シアル酸を産生するために使用される微生物は、シアル酸を細胞外に輸送し得る。
【0033】
本発明の実施態様に従う、代謝的に操作されたE.coliにおけるシアル酸産生の拡張は、有意な量におけるシアル酸アナログ(非天然のシアル酸)の生合成および産生にある。シアル酸アナログは、細胞性相互作用におけるプローブ、インビボで細胞表面を可視化するにおける薬剤、および医薬品中の成分として使用される。現在、シアル酸アナログは、広範な、誘導体化されたマンノサミン糖から合成され、そして細胞内表面に操作される。対照的に、本発明に従う代謝的に操作されたE.coliからのシアル酸アナログ産生は、グルコサミン誘導体を利用し、これはそれらのマンノサミン等価物よりも安価である。シアル酸アナログを含む下流プロセスは、そのマンノサミン前駆体よりも、シアル酸アナログに対する直接的な接近を伴って、より効果的に達成される。それゆえ、本発明に従う、代謝的に操作されたE.coliからのシアル酸産生は、シアル酸、およびN−アシルシアル酸アナログのようなその類似体を合成するたに、コスト効率的であり、そして直接的な経路である。N−アシルシアル酸アナログの例としては、N−アジドアセチルシアル酸、N−レブリノイルシアル酸、およびN−ブタノイルシアル酸が挙げられるが、これらに制限されない。
【0034】
本発明のある実施態様において、N−アシルシアル酸アナログを産生する方法は、以下の工程:遺伝子操作された微生物を提供する工程であって、ここで微生物は、微生物におけるシアル酸輸送体をコードする第1のDNA分子における不活化変異と;微生物におけるシアル酸アルドラーゼをコードする第2のDNA分子における不活化変異と;および微生物における第1の酵素をコードする組換えDNA分子とを含み、ここで第1の酵素をコードする組換えDNA分子は、シアル酸合成酵素およびUDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼからなる群より選択される酵素をコードする、工程;ならびに細胞内UDP−N−アシルグルコサミンが生成されるような試薬の存在下で微生物を培養する工程を包含する。任意のN−アシルグルコサミン炭素供給源のような任意の適切な試薬が使用され得る。好ましくは、試薬はN−アシルグルコサミンアナログである。アシルトランスフェラーゼはまた、試薬の形成または細胞内UDP−N−アシルグルコサミンの生成を容易にするために使用され得る。
【0035】
本発明の利点は、以下の実施例により説明される。しかし、これらの実施例において引用される特定の材料およびその量、ならびに他の条件および詳細は、当該分野において広く適用すると解釈されるべきであり、そして本発明を、過度に制限および限定すると、いかようにも解釈されるべきでない。
【実施例1】
【0036】
本実施例は、nanTがシアル酸輸送体であり、シアル酸取り込みを担うので、nanTE.coli変異体を作製するための、重要なE.coli遺伝子、nanTの欠失に関する。
【0037】
FB21071と命名されたnanTノックアウトE.coli K−12株 MG1655を、Wisconsin大学、Madison WIのBlattner研究室から依頼した。この株は、nanT遺伝子中にカナマイシン耐性を付与するTn5挿入を有する。T7lac−プロモータープラスミドからの遺伝子発現を許容するために、lac−プロモーター下のT7 RNAポリメラーゼ遺伝子を、λDE3溶原化キット(Novagen、San Diego、California)を使用してFB21071の染色体に挿入して、BRL01株を作製した。
【実施例2】
【0038】
本実施例は、上述で考察されるように、操作されたneuBC経路に関し、その発現はT7lacプロモーターにより制御される。この実験は、lac制御性T7 RNAポリメラーゼ遺伝子を保有するnanTE.coli株BRL01への、操作されたneuBC経路の導入を記載する。
【0039】
本明細書中に考察されるように、nanTE.coli株BRL01株に導入された、Neisseria meningitidisB群のneuCおよびneuB遺伝子は、シアル酸生合成遺伝子である。NeuCは、細菌における共通の代謝物、UPD‐N‐アセチルグルコサミン(UDP‐GlcNAc)をManNAcに変換する加水分解エピメラーゼである。Neisseria meningitidisBの被膜多糖に関与するsiaA遺伝子は、N−アシルグルコサミン−6−リン酸2−エピメラーゼ活性をコードする。ManNAcは続いて、図2においてみられるように、NeuB触媒を介して、ホスホエノールピルビン酸と縮合されて、シアル酸を生成する。
【0040】
Neisseria meningitidis ATCC(登録商標)BAA−335DからのゲノムDNAを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に使用した。Pfu Turbo(登録商標)DNAポリメラーゼ(Stratagene、La Jolla、California)および熱サイクラーMastercycler(登録商標)personal(Eppendorf、Hamburg、Germany)を全てのPCR反応に使用した。neuBおよびneuC遺伝子を、N.meningitidis MC58 B群のゲノムDNAからPCRにより増幅した。neuC遺伝子およびneuB遺伝子をクローニングするために使用した操作された反応部位を伴うプライマー配列(以下に太字で列挙される)は、PCR反応あたり0.1μMにて使用した。列挙される切断部位は、それぞれの遺伝子をベクターpKH22にクローン化するために使用した切断部位であった。制限部位を伴う、PCRに使用したneuBプライマーおよびneuCプライマーは以下のようである:
neuB(切断部位−NdeI/EcoRI)
cgcacatatgcaaaacaacaacgaatttaaaattgg(正方向、配列番号1)
cagcgaattcttattcaatatcagtttttttgatttgagca(逆方向、配列番号2)
neuC(切断部位−NheI/EcoRI)
cgcagctagcaaaaggattctttgcattacaggtacc(正方向、配列番号3)
cagcgaattcctagtcataactggtggtacatt(逆方向、配列番号4)
【0041】
タッチダウンおよびホットスタートPCRを、全ての増幅について行い、そして熱サイクラー条件は、以下のようであった:95℃5分間の1サイクル、95℃で30秒間、72℃〜57℃で30秒間(1サイクルあたり−1℃)、および72℃で90秒間の15サイクル、95℃で30秒間、57℃で30秒間、および72℃で90秒間の15サイクル、ならびに72℃で10分間の1サイクル。
【0042】
neuBおよびneuCについてのPCR産物は、製造業者の指示に従ってpCR−Blunt(Invitrogen、Carlsbad、California)にクローン化した。クローン化遺伝子を配列決定した。neuBにおける内部EcoRI部位を、Quikchange(登録商標)部位特異的変異誘発キット(Qiagen、Valencia、California)を介して除去した。遺伝子を、続いて、標準的な分子クローニング技術を使用して、ベクターpKH22のT7lac−プロモーター下にサブクローン化して、プラスミドpBRL22(pKH22−neuBneuC)を作製した。プラスミドはアンピシリン耐性マーカーを有する。
【0043】
プラスミドpBRL22を、nanTE.coli株 BRL01に挿入して、BRL01/pBRL22を形成し、ここでは当該分野において周知の、および受容される方法を使用して、neuC遺伝子およびneuB遺伝子を過剰発現した。
【0044】
nanTE.coli宿主BRL01は、これが培地からシアル酸を取り込むことができないので、任意のシアル酸産物を異化し得ないことが仮説されたが、BRL01/pBRL22(BRL01/neuBC)を含む振盪フラスコ実験は、炭素供給源として0.5% GlcNAcの単回供給を伴って、低いが、検出可能な量のシアル酸を、20mgl−1にて生成した。
【0045】
低収率は、内因性NanAによる分解に起因する。それゆえ、シアル酸収率を増加するために、以下の実施例において考察されるように、BRL01においてnanA遺伝子を、ラムダRed系を使用して欠失して、BRL02株を作製した。
【0046】
あるいは、別の微生物(例えば、別のE.coli株)のシアル酸アルドラーゼをコードする遺伝子における不活化変異(例えば、nanA遺伝子の不活化変異または欠失)がシアル酸を産生するために使用され得、ここでは微生物は、実施例5および6において考察されるように、機能的なシアル酸輸送体を有する。
【実施例3】
【0047】
本実施例は、BRL02株を作製するために遺伝子置換え戦略を使用した、BRL01のnanA遺伝子の欠失、およびその後の、BRL02/pBRL22を形成するための、BRL02への実施例2のプラスミドpBRL22の取り込みを記載する。
【0048】
nanTnanAE.coli変異体の作製は、nanT遺伝子がシアル酸取り込みに関与し、およびnanA遺伝子がシアル酸分解に関与するので重要である。NanTは、前記されるように、シアル酸輸送体であり、およびシアル酸取り込みを担い、そしてNanAは、シアル酸を、ピルビン酸とN−アセチルマンノサミン(ManNAc)とに切断するアルドラーゼである。nanA遺伝子およびnanT遺伝子の除去は、図2において見られるように、シアル酸異化を無効にする。
【0049】
シアル酸分解を完全に排除し、そしてシアル酸力価を増加するために、ラムダRed系を使用して、BRL01のnanA遺伝子をノックアウトして、nanTnanAE.coli変異体、BRL02を作製した。
【0050】
簡潔には、テトラサイクリン耐性をコードするカセットを、プライマー
5′-atggcaacgaatttacgtggcgtaatggctgcactcctgactccttttgatcatgtttgacagcttatcatcgat-3′(配列番号5)
および
5′-tcacccgcgctctgcatcaactgctgggccagcgccttcagttctggcatccaattcttggagtggtgaatccg-3′(配列番号6)
を使用して、ベクターpBR322(New England Bio Labs、Ipswich、Massachusetts)から増幅した。プライマーは、nanAとの50ヌクレオチド相同性(下線)およびテトラサイクリン耐性遺伝子との25ヌクレオチド相同性(下線されず)からなった。使用した熱サイクラー条件は、実施例2において上記された条件と同一であった。テトラサイクリン耐性カセットを、PCR反応からゲル精製し、次いでエタノール沈殿により濃縮した。pKD46で形質転換されたBRL01は、組換えに必要なラムダRedタンパク質を保有し、Luria−Bertani(LB)培地中で、30℃にて、振盪、150rpm、を伴ってOD600=0.1まで増殖された。次いで、ラムダRed遺伝子の発現を0.1%アラビノースで誘導し、そして誘導された細胞は、0.5のOD600が達成されるまで、増殖を継続した。細胞をエレクトロコンピテントにし、そして(50μl細胞あたり100ngDNA)のテトラサイクリン耐性カセットで形質転換した。形質転換細胞を、LB中で1時間、37℃にて、振盪を伴って回復させ、次いでカナマイシン(50μg ml−1)およびテトラサイクリン(10μg ml−1)を補充したLB培地上に播種した。形質転換体を、PCRにより、nanA欠失およびnanT欠失についてスクリーニングした。
【0051】
実施例2のプラスミドpBRL22を、nanTnanAE.coli株、BRL02に挿入して、BRL02/pBRL22を形成し、ここでは当該分野において周知の、および受容される方法を使用して、neuC遺伝子およびneuB遺伝子を過剰発現した。
【実施例4】
【0052】
本実施例は、BRL02/pBRL22株に関する単回供給の振盪フラスコ実験を記載する。BRL02/pBRL22株を、グリセロール、マルトース、グルコース、フルクトース、およびGlcNAcを含む炭素供給源原料を、シアル酸産生についてスクリーニングするために使用した。これらの単回供給の実験のために、最初の単回炭素供給源を0.5%にて培地に供給した。培養物を、導入後48時間増殖させ、そしてシアル酸力価を決定した。
【0053】
リットル当たり、6.62g KHPO、3.0g KHPO、4.0g NHSO、170.5mg MgSO、および0.5%の、以前に記載されるような濾過滅菌された炭素供給源からなるF1最少培地を、全ての振盪−フラスコ実験に使用した。そうでないと記載しない限り、全ての培地を、適切な抗生物質:カナマイシン(50μg ml−1)、カルベンシリン(50μg ml−1)、およびテトラサイクリン(10μg ml−1)で補充した。すべての実験を三連で行った。複製あたり、10ml開始培養物を、37℃にて18時間、振盪、250rpmを伴って、LB培地中で増殖した。開始培養物からの細胞を採集し、そして250−ml Erlenmeyerフラスコ中で50mlのF1に希釈した。接種された培養物を、30℃にて、振盪、150rpmを伴って増殖し、そしてそれらがOD600=0.6〜0.8の時、0.1mM イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導した。誘導された培養物を48時間増殖し、1mlのサンプルを、間隔をおいて採取した。細胞を遠心分離によりサンプルから除去し、そして上清を10分間、煮沸した。
【0054】
シアル酸の産生を、Bruker 300MHz装置を使用して、DO中のプロトンNMRにより確認した。シアル酸を、記載されるように、遠心分離を介して細胞を除去し、次いでイオン交換クロマトグラフィーにより上清中のシアル酸を単離することにより、培養ブロスから精製した。
【0055】
煮沸した上清を、説明されるように、NanA/LDHアッセイによりシアル酸活性について定量した。簡潔には、シアル酸濃度を、記載されるように、シアル酸アルドラーゼ−乳酸脱水素酵素(NanA/LDH)アッセイを使用して決定した。LDHは、Roche(Penzberg、Germany)から購入し、そしてNanAを組換えE.coliから単離した。吸光度を、GENESYS 20分光光度計(Thermo Electron Corporation、Madison、Wisconsin)において測定した。アッセイのダイナミックレンジは0.035〜0.002mg ml−1(0.11〜0.006mmol l−1)シアル酸であることが見出された。反応条件は、100mM Tris緩衝液(pH8.0)、0.15mM NADH、2.5μg ml−1 LDH、5μg ml−1 NanA、および0.010〜0.030mg ml−1のシアル酸からなった。反応を、NanA以外は上述の全ての成分を用いて、37℃にて1時間行った。次いで、340nmでの最初の吸光度を記録した。次いでNanAを反応に添加し、そして反応を、37℃にて3時間、インキュベートした。最終的な吸光度を測定し、そして最初の吸光度値と最後の吸光度値との間の差異を標準曲線に対して近似して、サンプル中のシアル酸濃度を定量した。
【0056】
これらの単回供給実験の結果は図3に示され、そしてmg l−1において以下のようである:GlcNAc、103;グルコース、87;グリセロール、57;フルクトース、40;マルトース、19。
【0057】
NanAの不在は、実施例2において記載された結果と比較して、力価を5倍に増加した。驚くことではないが、原料としてGlcNAcは、最も高いシアル酸力価を生じた;細胞内GlcNAcは、UDP−GlcNAc、重要な細胞壁前駆体、に変換され、従って、その結果、これはneuBC経路の基質である。
【0058】
より安価な原料のフルクトース、グリセロール、およびグルコースは、図2においてみられるように、これらが、最初にGlcNAc生合成経路に組み込まれなければならないので、GlcNAcの力価ほど高い力価を生じなかった。E.coliにおけるGlcNAc生合成は、グルコサミン合成酵素GlmSの作用による、グルコサミンへのフルクトースの変換とともに開始され、これはGlcNAc代謝において重要な酵素である。従って、以下の実施例は、E.coliのglmS遺伝子の、neuBC経路への、過剰発現に関連する。
【実施例5】
【0059】
本実施例は、機能的NanTを発現し、そして機能的NanAを欠損するE.coliにおいてシアル酸を産生するために必要とされる試薬の構築を記載する。シアル酸輸送体、NanTをコードする遺伝子を、XL1Blue E.coliのゲノムDNAから、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した。PCRに使用したプライマーは
5′-GACGCATATGGGCATCGCCCACCG-3′(配列番号7)
および
5′-GACGTTAACTTTTGGTTTTGACTAAATCGT-3′(配列番号8)
であった。導入されたNdeI部位は斜体で示される。増幅したnanT PCR産物を、ゲル精製し、そして製造業者の指示に従ってpCR Blunt(Invitrogen)中にクローン化して、pBRL50を作製した。nanTにおける最初のEcoRI部位を、QuikChangeを使用して除去して、プラスミドpBRL54を作製した。nanT遺伝子を、続いて、標準的な分子クローニング手順を使用して、pKH22のNdeIおよびEcoRI部位にクローン化して、プラスミドpBRL55を作製した。プラスミドpBRL55を、Avr IIおよびXbaIで消化し、そしてAvr II−XbaI nanTフラグメントを、pBRL47のAvr II部位に正方向においてクローン化した。これは、多シストロン性転写因子(5′−3′方向)neuB−neuC−glmS−nanTをコードする、プラスミドpBRL57を作製した。
【実施例6】
【0060】
本実施例は、機能的なNanTを発現し、および機能的なNanAを欠損するE.coliにおけるシアル酸の産生を記載する。BRL02/pBRL47細胞またはBRL02/pBRL57細胞を、250mL振盪フラスコにおいて、30℃/150r.p.m.にて、50μg mL−1カルベニシリン、50μg mL−1カナマイシン、10μg mL−1テトラサイクリン、および0.5%(w/v)グルコースを補充した50mLのF1最少培地中で増殖した。光学密度(OD600)が0.7〜0.9であった時、培養物を0.1mM IPTGで誘導し、そして72時間増殖させた。さらなる用量の0.5%(w/v)グルコースを、誘導後、t=0、12、24、36、48時間にて添加した。定期的にサンプルを回収し、そして確立されたNanA/LDHアッセイによりシアル酸力価についてアッセイした。簡潔には、細胞を遠心分離により取り除き、そして上清を10分間煮沸し、そして続いてアッセイした。
【0061】
BRL02/pBRL57細胞は、315mg L−1のシアル酸の、シアル酸平均力価を生じ、一方BRL02/pBRL47細胞は、568mg L−1の平均力価を生じた。対照的に、細胞湿重量当たりのシアル酸は、BRL02/pBRL47の、64mg(mg細胞湿重量)−1よりも、BRL02/pBRL57細胞について多く、515mg(mg細胞湿重量)−1であった。
【実施例7】
【0062】
本実施例は、E.coliのグルコサミン合成遺伝子、glmSの、neuBC経路への操作を記載する。特に、本実施例は、グルコースおよびフルクトースを含む、低コストの糖原料から生じるシアル酸を増加するための、E.coliのグルコサミン合成遺伝子、glmS(PCRにより増幅し、そしてpBRL22にクローン化して、プラスミドpBRL47を作製した)の同時過剰発現に関する。Glmsは、UDP−GlcNAc、neuBC経路の基質、の生合成において重要な酵素であり、そしてglmSの過剰発現は、より多くの利用可能な原料の糖を、UDP−GlcNAcの生合成に指向することが期待された。
【0063】
本実施例は、プラスミドpBRL47(pKH22−neuBneuCglmS)を作製するために、neuBおよびneuC遺伝子の増幅およびクローニングに関して、実施例2の方法および材料を組み込み、以下を伴った:XL1 Blue Escherichia coli(Stratagene、La Jolla、California)からのゲノムDNAがPCRに使用された。Pfu Turbo(登録商標)DNAポリメラーゼ(Stratagene、La Jolla、California)および熱サイクラーMastercycler(登録商標)personal(Eppendorf、Hamburg、Germany)を、全てのPCR反応に使用した。glmS遺伝子を、E.coliゲノムDNAからPCRにより増幅した。操作された制限部位を伴うプライマー配列(太字で以下に列挙される)を、glmS遺伝子のクローニングに使用し、PCR反応当たり0.1μMにて使用した。列挙される切断部位は、それぞれの遺伝子をpKH22にクローン化するために使用した。制限部位を伴う、PCRに使用されたglmSプライマーは以下のようである:
glmS(切断部位−NdeI/EcoRI)
gcgccatatgtgtggaattgttggcgcg(正方向、配列番号9)
gcgcgaattcttactcaaccgtaaccgattttgc(逆方向、配列番号10)
【0064】
タッチダウンおよびホットスタートPCRを、全ての増幅に使用し、そして熱サイクラー条件は以下のようであった:95℃5分間の1サイクル、95℃で30秒間、72〜57℃(サイクル当たり−1℃)で30秒間、および72℃で90秒間の15サイクル、95℃で30秒、57℃で30秒間、72℃で90秒間の15サイクル、および72℃で10分間の1サイクル。クローン化遺伝子を配列決定した。遺伝子を、続いて、標準的な分子クローニング技術を使用して、ベクターpKH22のT7lac−プロモーター下にサブクローン化して、プラスミドpBRL47(pKH22−neuBneuCglmS)を作製した。プラスミドpBRL47は、T7lac−プロモーターからのneuBneuCglmS転写産物をコードするので、これは転写のために機能的なT7 RNAポリメラーゼを必要とする。プラスミドはアンピシリン耐性マーカーを有する。
【0065】
プラスミドpBRL47を、nanTnanA E.coli株 BRL02に挿入して、BRL02/pBRL47を形成し、ここでは当該分野において周知の、および受容される方法を使用して、glms遺伝子を、neuC遺伝子およびneuB遺伝子とともに過剰発現した。
【実施例8】
【0066】
BRL02/pBRL47株に関する単回供給の振盪−フラスコ実験のみが、炭素供給源としてフルクトースを用いて行われた以外は、実施例4において記載された全ての材料および方法が、本実施例で組み込まれる。
【0067】
結果は、BRL02/pBRL47の単回のフルクトース供給実験が、130mg l−1のシアル酸力価を生成したことを示す。従って、操作された経路へのglmSの添加を伴って、シアル酸産生の3倍の増加、40から130mg l−1、が、フルクトース供給について観察された。
【0068】
フルクトース供給は、実施例4におけるグルコースのシアル酸力価よりも、有意に低い力価を生じたので(図3を参照のこと)、シアル酸産生のためのBRL02/pBRL47株は、それゆえ、複数のグルコース供給を伴って最適化された(グルコースは、糖新生を介してまずフルクトースに変換されなければならないが)。図4において見られるように、シアル酸産生は、振盪−フラスコ条件下で、グルコース供給を伴って、リットルあたり1.5グラムに最適化された。シアル酸産生を、NanA/LDHアッセイにより測定した(点線)。増殖を、600nmでの光学密度またはOD600を測定することによりモニターした(実線)。BRL02/neuBCglmS細胞に、誘導後、0、12、24、36、および48時間にて、0.5%グルコースおよび水酸化アンモニウム(マーカーにより示される)を供給した。シアル酸産生は、実験期間中、上昇し続けたが、増殖は誘導後48時間にて、停止した。この図は、操作されたE.coli細胞が、増殖要件が満たされる場合、シアル酸を継続的に産生し得たことを示唆する。
【実施例9】
【0069】
本実施例は、グルコースを炭素供給源として用いた、BRL02/pBRL47株に関する複数回の供給のみの振盪−フラスコ実験を記載する。単回のグルコース供給により、実施例6において列挙される力価に匹敵する、シアル酸力価が生じることが予期された。本実施例で、以下の節において注記する以外は、振盪フラスコ実験、シアル酸の産生の確認、およびシアル酸濃度の測定を含む、同じ方法および材料を、実施例6におけるように追従し、そして使用した。
【0070】
炭素供給源としてグルコースの複数回の供給を介して、シアル酸産生を、BRL02/pBRL47について最適化した。0.5%グルコースおよび水酸化アンモニウムの用量を、誘導後、0、12、24、36、および48時間にて添加し、そして誘導されたBRL02/pBRL47細胞を98時間増殖し(実施例4において記載される48時間とは対照的に)、そしてシアル酸力価を決定した。水酸化アンモニウムは、pH6.9〜7.1を維持するように、そして窒素供給源として作用した。
【0071】
グルコースの複数回の供給を伴うBRL02/pBRL47(neuBCglmS)細胞に関するこれらの実験の結果は、1.5g l−1の最大のまたは最適化されたシアル酸力価を示した。さらに、この結果は、図4において見られるように、0.5%グルコースの合計6回の供給を伴って得られた(1.5gのシアル酸当たり30.0gのグルコース)。この結果は、BRL02におけるneuBCとglmSとの同時過剰発現は、低コストの糖原料からのシアル酸産生を3倍に増加したことを示す。
【0072】
この力価はGlcNAcの複数回の供給を伴いBRL02/pBRL22(neuBC)を使用する類似の実験から得られる力価に匹敵し、これは1.4g l−1の力価を生じた。
【実施例10】
【0073】
本実施例は、N−ブタノイルシアル酸、シアル酸のアナログ、の産生に関する。N−ブタノイルシアル酸を産生するために、N−ブタノイルグルコサミンを先ず合成した。グルコサミン塩酸塩(5.0g、23mmol、1.0当量)およびトリエチルアミン(16mL、115mmol、4.8当量)を、室温にてDMF(48mL)中に懸濁した。反応混合物を30分間攪拌し、その時点で無水酪酸(4.5mL、27mmoL、1.2当量)を滴下して添加した。反応を、室温にて18時間攪拌した。酢酸エチルおよびヘキサン(800mL、1:3v:v)を添加して生成物を沈殿した。混合物を30分間攪拌し、濾過し、そして固体をヘキサンで繰り返し洗浄した。固体をメタノール(200mL)中に溶解し、濾過し、そして減圧下で乾燥して、5.1g(20mmol、87%の収率)のN−ブタノイルグルコサミンのα:βアノマーの1:1混合物を得た。
【0074】
BRL02/pBRL47からのN−ブタノイルシアル酸産生を、以前の振盪フラスコ実験において記載されるように行い、そして0.3% グリセロールと、0.3% N−ブタノイルグルコサミンまたはN−アセチルグルコサミン(ネガティブコントロール)のいずれかとの複数回の供給により最適化した。原料および水酸化アンモニウムの用量を、誘導後0、12、24、36、および48時間にて添加し、そして誘導されたBRL02/pBRL47細胞を、98時間増殖した。水酸化アンモニウムは、pH6.9〜7.1を維持するように、および窒素供給源として作用した。シアル酸とN−ブタノイルシアル酸との複合力価を、NanA/LDHアッセイにより決定した。N−ブタノイルグルコサミン供給からの平均複合力価は、67±26mg/Lであった。N−アセチルグルコサミン供給からの平均複合力価は、822±23mg/Lであった。
【実施例11】
【0075】
本実施例は、機能的なNanT酵素、NanA酵素、およびNagA酵素を保有しないE.coli株の構築を記載する。BRL02におけるnagA遺伝子を、Redリコンビナーゼ系を使用して欠失した。クロラムフェニコールカセットを、以下のプライマー
5′-ATGTATGCATTAACCCAGGGCCGGATCTTTACCGGCCACGAATTTCTTGAGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3′(配列番号11)
および
5′-TTATTGAGTTACGACCTCGTTACCGTTAACGATGGTCTTGGTGATTTTAACATATGAATATCCTCCTTAG(配列番号12)
を使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を介して、プラスミドpKD3から増幅した。プライマーは、pKD3に対するプライミング部位(斜体)およびnagAに対する50bpの相同性からなった。PCR増幅したカセットをゲル精製し、エタノール沈殿により濃縮し、そして10mM Tris緩衝液、pH8.0中に、40ng μL−1の濃度に懸濁した。約80ngのクロラムフェニコールカセットを、BRL02/pKD46細胞にエレクトロポレートし、これは文献の手順に従って調製された。クロラムフェニコール耐性クローンを選択し、そしてnagA遺伝子座での置換について、PCRによりスクリーニングし:これはBRL03株を作製した。BRL03におけるクロラムフェニコールマーカーの除去を、FLPリコンビナーゼをコードするプラスミドpCP20での形質転換により行った。形質転換体を、アンピシリン耐性について選択し、そしてクロラムフェニコール耐性については選択しなかった。BRL03/pCP20細胞を、43℃にて18時間、コロニー精製した。クローンを、クロラムフェニコール感受性について試験し、そしてクロラムフェニコールマーカーの除去について、PCRによりスクリーニングした。クロラムフェニコールマーカーの除去は、nagA株のBRL04を作製した。
【実施例12】
【0076】
本実施例は、機能的なNanT酵素、NanA酵素、およびNagA酵素を保有しないE.coli株からのシアル酸の産生を記載する。本研究は、nag経路のダウンレギュレートが、シアル酸力価、および細胞当たりの単位時間当たりのシアル酸生産性を最適化するために使用され得ることを実証する。BRL04細胞を、neuB−neuC−glmSポリシストロン性転写産物をコードするpBRL47で形質転換した。シアル酸産生実験を、三連で行った。BRL4/pBRL47細胞を、16×125mm 滅菌試験管において、100μg mL−1アンピシリン、50μg mL−1カナマイシン、10μg mL−1テトラサイクリン、および0.5%(w/v)グルコースを補充した2mLのF2細胞培地中で増殖した。F2最少培地は、F1最少培地に、前者が2倍濃度のリン酸緩衝液を有する以外は、同一である。培養物を6時間増殖し、0.5mM IPTGで誘導し、そして36時間増殖した。シアル酸力価を、NanA/LDHアッセイを介して、無細胞上清から決定した。BRL04/pBRL47細胞は、1リットルの培養ブロス当たり0.46g L−1のシアル酸の平均力価を生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子操作された微生物であって:
微生物における第1のDNA分子における不活化変異であって、ここで第1のDNA分子はシアル酸輸送体をコードする、不活化変異と;
微生物における第2のDNA分子における不活化変異であって、ここで第2のDNA分子はシアル酸アルドラーゼをコードする、不活化変異と;ならびに
第1の酵素をコードする組換えDNA分子であって、ここで第1の酵素をコードする組換えDNA分子は、シアル酸合成酵素およびUDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼからなる群より選択される酵素をコードする、組換えDNA分子とを含む、微生物。
【請求項2】
第2の酵素をコードする組換えDNA分子をさらに含み、ここで第2の酵素をコードする組換えDNA分子は、シアル酸合成酵素およびUDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼからなる群より選択される酵素をコードする、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
野生型株と比較して増加されたUDP−GlcNAcレベルを提供する、組換えDNA分子またはglmもしくはnag経路におけるDNA分子における変異をさらに含む、請求項1に記載の微生物。
【請求項4】
グルコサミン合成酵素をコードする組換えDNA分子をさらに含む、請求項3に記載の微生物。
【請求項5】
グルコサミン合成酵素をコードする組換えDNA分子がglmS遺伝子である、請求項4に記載の微生物。
【請求項6】
微生物がE.coliである、請求項1に記載の微生物。
【請求項7】
不活化変異がnanT遺伝子およびnanA遺伝子にある、請求項1に記載の微生物。
【請求項8】
第1および第2の酵素をコードする組換えDNA分子がneuC遺伝子およびneuB遺伝子である、請求項2に記載の微生物。
【請求項9】
neuC遺伝子およびneuB遺伝子がNeisseria meningitidisに由来する、請求項8に記載の微生物。
【請求項10】
微生物がシアル酸を細胞外に輸送し得る、請求項1に記載の微生物。
【請求項11】
シアル酸を産生するための、遺伝子操作された微生物を形成する方法であって、以下の工程:
微生物においてシアル酸輸送体をコードする第1のDNA分子に不活化変異を導入する工程;
微生物においてシアル酸アルドラーゼをコードする第2のDNA分子に不活化変異を導入する工程;ならびに
微生物において第1の酵素をコードする組換えDNA分子を導入する工程であって、ここで該第1の酵素をコードする組換えDNA分子は、シアル酸合成酵素およびUDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼからなる群より選択される酵素をコードする、工程、を包含する、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、第2の酵素をコードする組換えDNA分子を導入する工程をさらに包含し、ここで、第2の酵素をコードする組換えDNA分子は、シアル酸合成酵素およびUDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼからなる群より選択される酵素をコードする、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、野生型株と比較して増加されたUDP−GlcNAcレベルを提供する、組換えDNA分子、またはglmもしくはnag経路におけるDNA分子における変異を導入する工程をさらに包含する、方法。
【請求項14】
グルコサミン合成酵素をコードする組換えDNA分子を微生物に導入する工程をさらに包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
微生物がE.coliである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
微生物がシアル酸を細胞外に輸送し得る、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
シアル酸を産生する方法であって、以下の工程:
遺伝子操作された微生物を提供する工程であって、ここで微生物は、微生物におけるシアル酸輸送体をコードする第1のDNA分子における不活化変異と;微生物におけるシアル酸アルドラーゼをコードする第2のDNA分子における不活化変異と;および微生物における第1の酵素をコードする組換えDNA分子とを含み、ここで第1の酵素をコードする組換えDNA分子は、シアル酸合成酵素およびUDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼからなる群より選択される酵素をコードする、工程;ならびに
炭素供給源の存在下で微生物を培養する工程、を包含する、方法。
【請求項18】
微生物が、シアル酸合成酵素およびUDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼからなる群より選択される酵素をコードする第2の酵素をコードする組換えDNA分子をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
微生物が、野生型株と比較して増加されたUDP−GlcNAcレベルを提供する、組換えDNA分子、またはglmもしくはnag経路におけるDNA分子における変異をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
微生物が、グルコサミン合成酵素をコードする組換えDNA分子をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
微生物がE.coliである、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
微生物がシアル酸を細胞外に輸送し得る、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
炭素供給源が、グルコース、グリセロール、フルクトース、およびN−アセチルグルコサミンからなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
遺伝子操作された微生物であって、以下:
微生物におけるDNA分子における不活化変異であって、ここでDNA分子はシアル酸アルドラーゼをコードする、不活化変異と;
第1の酵素をコードする組換えDNA分子であって、ここで第1の酵素をコードする組換えDNA分子はシアル酸合成酵素をコードする、組換えDNA分子と;ならびに
第2の酵素をコードする組換えDNA分子であって、ここで第2の酵素をコードする組換えDNA分子は、UDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼをコードする、組換えDNA分子とを含む、微生物。
【請求項25】
N−アシルシアル酸アナログを産生する方法であって、以下の工程:
遺伝子操作された微生物を提供する工程であって、ここで微生物は、微生物におけるシアル酸輸送体をコードする第1のDNA分子における不活化変異と;微生物におけるシアル酸アルドラーゼをコードする第2のDNA分子における不活化変異と;ならびに微生物における第1の酵素をコードする組換えDNA分子とを含み、ここで第1の酵素をコードする組換えDNA分子は、シアル酸合成酵素およびUDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼからなる群より選択される酵素をコードする、工程:ならびに
細胞内UDP−N−アシルグルコサミンが生成されるような試薬の存在下で微生物を培養する工程、を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−517509(P2010−517509A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530570(P2009−530570)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/079496
【国際公開番号】WO2008/097366
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(509084194)シラキュース ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】