シェルアンドプレート式熱交換器
【課題】シェルアンドプレート式熱交換器の製造時に、溶接箇所の変質や、熱劣化、熱歪、熱応力の発生を防止して、溶接不良をなくし、かつプレート重合体の剛性を高める。
【解決手段】CO2液化器(シェルアンドプレート式熱交換器)10は中空容器12と中空容器12の内部に収容されたプレート重合体14とで構成されている。プレート重合体14は表裏面にNH3とCO2の通路が形成された多数のプレート16で構成されている。プレート外周縁16aを構成する環状の平坦な板状体はテーパ面46を有し、孔22、24を形成するプレート内周縁22a、24aを構成する環状の平坦な板状体はテーパ面48を有する。テーパ面46のテーパ角を1.5〜2.0度とし、テーパ面48のテーパ角を0.1〜1.0度とする。これによって、板状体の逆そり52をなくし、溶接不良を無くすと共に、プレート重合体14の剛性を高めることができる。
【解決手段】CO2液化器(シェルアンドプレート式熱交換器)10は中空容器12と中空容器12の内部に収容されたプレート重合体14とで構成されている。プレート重合体14は表裏面にNH3とCO2の通路が形成された多数のプレート16で構成されている。プレート外周縁16aを構成する環状の平坦な板状体はテーパ面46を有し、孔22、24を形成するプレート内周縁22a、24aを構成する環状の平坦な板状体はテーパ面48を有する。テーパ面46のテーパ角を1.5〜2.0度とし、テーパ面48のテーパ角を0.1〜1.0度とする。これによって、板状体の逆そり52をなくし、溶接不良を無くすと共に、プレート重合体14の剛性を高めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルを構成する冷凍装置の蒸発器等に適用されて好適であると共に、プラズマアーク溶接に適したプレート端の形状をもつシェルアンドプレート式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒循環路に蒸発器、圧縮機、凝縮器及び膨張装置が介設されて冷凍サイクルを構成する冷凍装置においては、オゾン層破壊、地球温暖化防止の観点から、自然冷媒であるNH3やCO2等が注目されている。特に、NH3は冷凍能力が大きいため、大型冷凍装置によく用いられている。しかし、NH3は毒性があるため、NH3を用いた冷凍サイクル構成機器に対して、CO2を冷却負荷側の二次冷媒として用いる二次冷媒系を組み合わせた冷凍装置が多く用いられている。かかるNH3/CO2冷凍装置は、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0003】
NH3/CO2冷凍装置においては、カスケードコンデンサとして用いられるCO2液化器の長手方向のサイズが大きくなり、冷凍ユニットのサイズもこれに合わせて大きくならざるを得ない。そのため、CO2液化器は、搬入・据付け時に、冷蔵倉庫等のエレベータに乗せられないことがあり、その搬入・据付けに支障をきたすことがある。
【0004】
一方、シェルアンドプレート式熱交換器は、表裏両面に特定の凹凸パターンをもつ多数のプレートを表裏交互に重ねることにより、表裏面に幾何学的構造の流路を形成させる。これにより、プレートの表裏面に2つの熱交換流体の該流路を交互に形成させ、2つの熱交換流体間でプレートを介して熱交換させるように構成されている。該流路では、流れる流体の強力な乱流が形成される。そのため、シェルアンドプレート式熱交換器は、優れた熱交換効率が得られると共に、長手方向のサイズを短縮でき、設置スペースを低減できる利点があり、冷凍装置の蒸発器や凝縮器等によく用いられている。以下、特許文献3(図4)に開示されたシェルアンドプレート式熱交換器の一構成例を図12に基づいて説明する。
【0005】
図12において、このシェルアンドプレート式熱交換器100は、中空容器102の内部にプレート重合体104が収容されている。プレート重合体104は、多数の伝熱エレメントであるプレート106が重ね合わされて構成されている。プレート相互間には、中空容器102の内部空間s1に対して開放された通路Aと、該内部空間s1に対して閉じられた通路Bとが交互に形成されている。中空容器102の底部に設けられた入口管108から内部空間s1に第1の熱交換流体aが流入し、通路Aを通って出口管110から中空容器102の外部に排出される。
【0006】
各プレート106には、プレート外周縁近傍で中心点に対して180度位相が異なる位置に、2個の孔112及び114が穿設され、これら孔を通して、プレート重合体104を貫通する方向に2本の流路が形成される。孔112に相対する位置の中空容器102の側壁に入口管116が設けられ、入口管116とは反対側の側壁で、孔114に相対する位置の側壁に出口管118が設けられている。第2の熱交換流体bが入口管116から流入し、第2の熱交換流体bは、孔112から通路Bを経て孔114に到り、出口管118から流出する。
【0007】
第1の熱交換流体aは、通路Aを流れるとき、第2の熱交換流体bと熱交換してその一部が気化し、気液二相状態の第1の熱交換流体aは、セパレータ120で気液分離される。第2の熱交換流体bは、通路Bを流れるとき、第1の熱交換流体aと熱交換して凝縮し、アフタークーラ122で凝縮液と不凝縮性ガスに分離される。なお、プレート106の
外形は、通常、角形又は円形を有している。
【0008】
図13は、円形のプレートを用いたプレート重合体の構成例を示す。図13において、円形のプレート130には、波形断面を有する直線状の波形凹凸132が形成されている。プレート130には、プレート外周縁136の近傍に、中心に対して180度位相を異ならせた2個の孔134,134が穿設されている。プレート130の外周縁136及び孔134の内周縁138は、波形凹凸132に連なった狭い環状の平坦面に形成されている。外周縁136の平坦面を形成する板状体と内周縁138の平坦面を形成する板状体とは、波形凹凸132の山と谷の段差分だけ高低差が設けられている。
【0009】
2枚のプレート130を互いの裏面同士を相対させて(凹凸パターンを背合わせにして)重ね合わせ、互いに当接した孔134の内周縁138同士を矢印uで示すように周溶接して、ペアプレート140を製造する。このとき、プレート130の外周縁136間は、プレート130に形成された波形凹凸132の山と谷の段差の2倍の隙間sを形成する。次に、多数のペアプレート140を重ね合わせ、各ペアプレート140の外周縁136同士を当接させ、当接面を矢印vで示すように周溶接する。こうして、プレート重合体142が形成される。プレート重合体142は、中空容器の内部に支持具によって固定される。
【0010】
このように、プレート重合体142は、プレート130の外周縁136と孔134の内周縁138とが、選択的に溶接される。即ち、重合方向に向かって外周縁と内周縁とが交互に溶接される。これによって、各プレート間に、中空容器の内部空間に開放された第1の流路と、中空容器の内部空間に対して遮断されると共に、孔134に連通し、孔134から中空容器の外部に連通した第2の流路が形成される。そして、第1の流路と第2の流路を流れる2つの熱交換流体をプレートを介して熱交換させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4188971号特許公報
【特許文献2】特許第4465686号特許公報
【特許文献3】特開昭64−88099号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述のように、NH3/CO2冷凍装置に組み込まれるCO2液化器の長手方向のサイズが大きくなり、冷凍ユニットのサイズがこれに制約されて小型化できないという問題がある。そのため、CO2液化器の搬入・据付け時に、冷蔵倉庫等のエレベータに乗せられないことがあり、その搬入・据付けに支障をきたすことがある。
【0013】
この問題を解決するため、長手方向のサイズが短く、設置スペースを低減できるシェルアンドプレート式熱交換器を用いるとよい。しかし、シェルアンドプレート式熱交換器は、プレート重合体を構成するプレート間を溶接する溶接箇所が多く、溶接工数が多くなる。そのため、どこかの溶接箇所に溶接不良が発生すると、熱交換流体の漏洩が生じるので、溶接時に、溶接不良を発生させないように注意する必要がある。
【0014】
しかし、プレートは複雑な形状にプレス成形されるので、プレス成形後に歪が発生しやすく、この歪に起因して起こる変形により、プレート重合体の剛性が低下するおそれがある。また、スプリングバックが発生して、プレート外周縁又はプレート内周縁を形成する板状体に逆そりが発生し、該板状体間に隙間が発生するおそれがある。板状体間に隙間が発生すると、アーク溶接等を施す場合、アークによる材料への入熱が不安定となり、溶接不良が発生するおそれがある。
【0015】
また、プレートの材料として、通常、耐食性があるステンレス鋼が用いられている。しかし、TIG溶接等を用いると、TIG溶接は熱集中性がそれほど良くなく、入熱量が多いため、材料によっては、プレートの母材が変質したり、あるいは熱劣化や、熱歪、熱応力が発生して、プレート重合体の強度が低下するおそれがある。
【0016】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、シェルアンドプレート式熱交換器を製造する際に、プレートのプレス成形後の歪やスプリングバック等に起因した溶接不良や、プレート母材の変質による劣化をなくすと共に、プレート重合体の強度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
かかる目的を達成するため、本発明のシェルアンドプレート式熱交換器は、
中空容器と、該中空容器の内部に配設され、表裏面に流路形成用凹凸を有する多数のプレートが重ね合わされたプレート重合体とを備え、
各プレートの同一部位に穿設された孔によってプレート重合体を貫通する流路が形成され、プレート外周縁及び該孔を形成するプレート内周縁を各プレート間で選択的に接合し、中空容器の内部空間に連通した第1の流体通路と、該内部空間に対して閉鎖され前記貫通流路に連通した第2の流体通路を各プレート間に交互に形成してなり、
中空容器の内部空間から第1の流体通路を通る第1の流体と、前記貫通流路から第2の流体通路を通る第2の流体とをプレートを介して熱交換させるようにしたシェルアンドプレート式熱交換器において、
プレート外周縁及びプレート内周縁が前記流路形成用凹凸を形成した部位と一体の平坦な環状の板状体で構成され、
隣接したプレートに形成され対面した位置にあって互いに接合される板状体が、端側に向かって互いに接近する方向に傾斜したテーパ面が形成され、該板状体の端側が互いに固着されてなるものである。
【0018】
本発明装置では、プレートの外周縁や内周縁を形成する板状体に端側に向かって互いに接近する方向にテーパ面をもたせ、端側の固着時に、端側が確実に互いに当接し合い、かつ押圧し合うようにしたものである。これによって、プレートに発生した歪を押え込むことができ、かつスプリングバック等に起因した板状体の逆そりを解消できる。そのため、溶接不良をなくすことができると共に、板状体をテーパ面としたことにより、板状体が平行面である場合より、プレート重合体の剛性を高めることができる。
【0019】
本発明装置において、プレート外周縁で板状体のテーパ面のテーパ角がプレート面に対して1.5〜2.0度であり、プレート内周縁で板状体のテーパ面のテーパ角がプレート面に対して1.0度以下であるとよい。プレート外周縁で板状体のテーパ角を1.5〜2.0度とすることにより、板状体に発生する逆そり防止効果が大きく、また、プレート重合体の剛性付与効果も大きくなる。一方、テーパ角が2.0度を超えると、溶接時に、板状体を押え冶具を用いて固定する際に、板状体を過荷重で圧接する必要が生じる。そのため、固着不良が生じやすくなると共に、不適合変形による残留応力が発生しやすい。
【0020】
プレート内周縁は、周長も短く、プレート内周縁周辺では歪の発生は少ないと考えられ、逆そり防止のみを考慮すればよい。そのため、板状体のテーパ角を1.0度以下とすることで、逆そりを効果的に防止でき、かつ板状体にテーパ角を付与することで、プレート重合体の剛性を増大できる。なお、逆そりが発生しなければ、テーパ角が零度でもよいが、逆そりを確実に防止するためには、テーパ角を0.1〜1.0度としたほうがよい。一方、プレート内周縁で、板状体のテーパ角が1.0度を超えると、プレート外周縁と同様の不具合いが生じる。
【0021】
本発明装置において、プレート外周縁で板状体のプレート半径方向幅が2mm以上であり、かつプレート直径に対する該プレート半径方向幅の寸法比(プレート半径方向幅/プレート直径)が0.004〜0.009であるとよい。プレート半径方向幅を2mm以上とし、該寸法比≧0.004とすることにより、プレート外周縁の固着に必要な強度と固着性能を板状体に与えることができると共に、プレート重合体の剛性を高めることができる。一方、プレート外周縁の固着強度及び固着性能の面では、寸法比>0.009とする必要はなく、逆に、0.009を超えると、プレート間に形成される波形凹凸の形成領域が小さくなるので、流体間の熱伝達性能が低下する。
【0022】
本発明装置において、プレート外周縁及びプレート内周縁の板状体の端部がプラズマアーク溶接によって固着されているとよい。プラズマアーク溶接は、TIG溶接等と比べて、アークの指向性が高く、アークをピンポイントで集中できる。そのため、ビード幅が狭く、熱集中性が良いため、溶接不良が発生せず、かつ高速溶接が可能である。また、溶接歪が少ないという利点がある。プレート重合体は、多数の溶接箇所があるので、プラズマアーク溶接を用い、高速溶接が可能になることで、プレート重合体の製造工期を短縮できるという利点がある。
【0023】
また、プレートは複雑な形状に鍛造されるため、歪が発生する。そのため、溶接歪の発生が少ないプラズマアーク溶接を採用することで、歪の蓄積をなくすことができる。さらに、プラズマアーク溶接は、TIG溶接等と比べて、入熱量が少ないので、母材の熱歪、熱応力の発生や、変質、劣化を低減できるという利点がある。
【0024】
本発明装置において、第1の流体が液体であり、中空容器の内部空間に第1の流体が貯留され、前記プレート重合体の下部が第1の流体に浸漬するように配置され、中空容器の内部でプレート重合体の上方に第1の流体の少なくとも一部をプレート重合体に向けて散布する散布ノズルが配設されているとよい。この散布ノズルを設けることで、第1の流体と第2の流体との熱伝達性能を高めることができる。
これによって、中空容器への第1の流体の充填量を低減できる。また、本発明装置では、プレート外周縁にテーパ角を付与しているので、プレート表面に第1の流体の濡れ面が形成しやすくなり、これによって、一層熱伝達性能を向上できる。
【0025】
本発明装置において、第1の流体が冷媒液であり、冷媒循環路に圧縮機、凝縮器、減圧装置及び蒸発器が介設されて、冷凍サイクルを構成する冷凍装置に、満液式蒸発器として組み込まれているとよい。本発明のシェルアンドプレート式熱交換器は、熱伝達性能を向上できるので、冷凍サイクルを構成する冷凍装置に満液式蒸発器として用いれば、冷凍装置のCOPを向上できる。
また、満液式蒸発器は、飽和状態の冷媒ガスを圧縮機に送るため、蒸発器出口側の冷媒の過熱度調整を必要としない。そのため、温度式膨張弁等の自動膨張弁を備える必要がなく、設備コストを低減できる。
【0026】
前記冷凍装置において、冷媒液がNH3であるとよい。NH3は比熱比κ(=cp/cv)が1.31と他の冷媒より大きいため、過熱されると、膨張し、単位体積当りの循環重量が減少する。そのため、冷却性能が低下する。しかし、満液式蒸発器を備えた冷凍装置では、満液式蒸発器の出口側でNH3が過熱されないので、NH3の劣化が生じない。また、本発明装置を用いれば、NH3の循環量を低減しても、熱伝達性能を高く維持できるので、NH3の循環量減少の影響を抑制できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明装置によれば、中空容器と、該中空容器の内部に配設され、表裏面に流路形成用凹凸を有する多数のプレートが重ね合わされたプレート重合体とを備え、各プレートの同一部位に穿設された孔によってプレート重合体を貫通する流路が形成され、プレート外周縁及び該孔を形成するプレート内周縁を各プレート間で選択的に接合し、中空容器の内部空間に連通した第1の流体通路と、該内部空間に対して閉鎖され前記貫通流路に連通した第2の流体通路を各プレート間に交互に形成してなり、中空容器の内部空間から第1の流体通路を通る第1の流体と、前記貫通流路から第2の流体通路を通る第2の流体とをプレートを介して熱交換させるようにしたシェルアンドプレート式熱交換器において、プレート外周縁及びプレート内周縁が前記流路形成用凹凸を形成した部位と一体の平坦な環状の板状体で構成され、隣接したプレートに形成され対面した位置にあって互いに接合される板状体が、端側に向かって互いに接近する方向に傾斜したテーパ面を有するように形成され、該板状体の端側が互いに固着されてなるので、端側の固着時に、端側が確実に互いに溶接し合い、かつ押圧し合うようになり、これによって、プレートのプレス成形時に発生する歪や残留応力を押え込むことができ、かつ板状体の逆そりをなくすことができる。そのため、板状体の端部間の固着を常に問題なく行なうことができると共に、板状体にテーパ角をもたせることにより、プレート重合体の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明装置の一実施形態に係るシェルアンドプレート式熱交換器の正面視断面図である。
【図2】前記シェルアンドプレート式熱交換器の側面視断面図である。
【図3】前記シェルアンドプレート式熱交換器のプレート外周縁を示す断面図である。
【図4】前記シェルアンドプレート式熱交換器のプレート内周縁を示す断面図である。
【図5】プレート外周縁又はプレート内周縁の溶接手順を示す説明図である。
【図6】プレートの溶接端で逆そりが発生した状態を示す説明図である。
【図7】プレート外周縁又はプレート内周縁のテーパ角が過大な場合を示す説明図である。
【図8】前記シェルアンドプレート式熱交換器のプレート外周縁の実験データを示す線図である。
【図9】前記シェルアンドプレート式熱交換器のプレート内周縁の実験データを示す線図である。
【図10】前記シェルアンドプレート式熱交換器の別な実験データを示す線図である。
【図11】前記シェルアンドプレート式熱交換器の別な実験データを示す線図である。
【図12】従来のシェルアンドプレート式熱交換器の一構成例を示す断面図である。
【図13】プレート重合体の製造手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0030】
本発明装置をNH3/CO2冷凍装置のCO2液化器に適応した一実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。まず、図1及び図2により、本実施形態に係るCO2液化器10の構成を説明する。CO2液化器10は、NH3/CO2冷凍装置に満液式蒸発器(カスケードコンデンサ)として組み込まれている。このCO2液化器10では、一次冷媒であるNH3と、二次冷媒であるCO2とが熱交換され、NH3が吸熱して蒸発し、一方CO2が液化する。
【0031】
図1及び図2において、円筒形状を有する中空容器12の内部にプレート重合体14が収容されている。プレート重合体14は、円板状の多数のプレート16が重合されて円筒形状に形成されている。中空容器12の底部に、NH3冷媒液が流入する入口管18が設けられ、中空容器12の頂部に、気化したNH3冷媒ガスが流出する出口管20が設けられている。
【0032】
図13に示すプレート130のように、プレート16の外形は、円形をなし、波形断面を有する直線状の凹凸が並列に形成されている。また、プレート16は、その外周縁16aの近傍で、かつ中心点から180°位相がずれた位置に、孔22及び24が穿設されている。各プレート16の外周縁16a及び孔22、24の内周縁22a、24aは平坦な環状の板状体に形成され、これらを除く領域は、波形凹凸16bが形成されている。プレート重合体14は、かかるプレート16が多数重合されて構成されている。
【0033】
各プレート16の同一部位に孔22及び24が穿設され、これら孔の内周縁22a、24aが互いに接合されるため、プレート重合体14には、プレート重合体14を貫通する方向に流路26及び28が形成されている。中空容器12の側壁には、孔22に相対する位置に、CO2冷媒が流入する入口管30が設けられ、入口管30は、中空容器12の側壁を貫通して直接貫通流路26に接続されている。また、孔24に相対する位置にCO2冷媒液が流出する出口管32が設けられ、出口管32は中空容器12の隔壁を貫通して貫直接通流路28に接続されている。プレート重合体14は、図示省略の支持具によって中空容器14の内部に固定されている。
【0034】
図13のプレート重合体142と同様に、各プレート16間には、中空容器12の内部空間s1に開放された通路と、入口管30から貫通流路26、28を経て出口管32に至り、内部空間s1に対して閉鎖された通路とが交互に形成されている。
【0035】
中空容器14の内部空間s1の上部領域には、中空容器12の長手方向にノズル管36が配設され、該ノズル管36の下部に、長手方向に配置され下方に開口した多数のノズル口38が穿設されている。ノズル口38が中空容器12の外部に導出された管路40には、NH3冷媒液管42が接続されている。また、入口管18とNH3冷媒液管42とを接続したNH3冷媒液管44が設けられている。
【0036】
かかる構成において、図示省略のNH3/CO2冷凍装置の凝縮器から出たNH3冷媒液は、NH3冷媒液管42及び管路40を介してノズル管36に供給される。凝縮器の下流側のNH3冷媒循環路に中間冷却器やエコノマイザー冷却器が設けられている冷凍装置の場合には、これらの冷却器から出たNH3冷媒液が、NH3冷媒液管42を介してノズル管36に供給される。NH3冷媒液を、一旦NH3冷媒液管44を介して中空容器12の内部空間s1に供給し、内部空間s1の下方領域に貯留されたNH3冷媒液Nを、NH3冷媒液管44及び42を介してノズル管36に循環するようにしてもよい。ノズル管36に供給されたNH3冷媒液は、ノズル口38からプレート重合体14に噴霧される。
【0037】
ノズル口38からプレート重合体14に噴霧されたNH3冷媒液は、内部空間s1に開放されたプレート16間の通路を通る。一方、CO2冷媒は、入口管30から貫通流路26に流入し、内部空間s1に対して閉鎖されたプレート16間の通路を通り、貫通流路28を経て出口管32から流出する。NH3冷媒液とCO2冷媒とは、プレート16を介して互いに熱交換し、NH3冷媒液は吸熱して気化し、出口管20から流出する。一方、CO2冷媒は液化し、出口管32から流出する。
【0038】
次に、図3及び図4により、プレート重合体14の構成を説明する。図3は、先端部が互いに溶接されるプレート16の外周縁16aを示す。外周縁16aは波形凹凸16bと一体の平坦な環状の板状体をなす。該板状体は、プレート外方に向かって互いに接近するテーパ面46を形成している。テーパ面46は、プレート面に平行な面hに対して、テーパ角αをもつ。
【0039】
図4は、先端が互いに接合されるプレート16の内周縁22a又は24aを示す。内周縁22a又は24aは、波形凹凸16bと一体の平坦な環状の板状体をなすと共に、孔22又は24側に向かって互いに接近するテーパ面48を形成している。テーパ面48は、プレート面に平行な面hに対して、テーパ角βをもつ。
【0040】
図5に、外周縁16a又は内周縁22a、24aの溶接手順を示す。図5において、互いに接合される外周縁16a又は内周縁22a、24aを両側からプレート押え冶具50,50で挟み押圧する。そして、テーパ面46、46同士又はテーパ面48、48同士を接触させ固定した状態で、プラズマアーク溶接により、板状体の端部wを溶接する。
【0041】
プラズマアーク溶接は、TIG溶接等と比べて、アークの指向性が高く、アークをピンポイントで集中できる。そのため、ビード幅が狭く、熱集中性が良いため、溶接不良がなく、かつ高速溶接が可能であると共に、歪の少ない溶接が可能になる。プレート重合体14は、溶接箇所が多数あるので、プラズマアーク溶接を用い、高速溶接が可能になることで、プレート重合体14の製造工期を短縮できるという利点がある。
【0042】
また、プレート16は複雑な形状に鍛造されるため、歪が発生しやすい。そのため、溶接歪が発生しにくいプラズマアーク溶接を採用することで、歪を低減できるという利点がある。さらに、プラズマアーク溶接は、TIG溶接等と比べて、入熱量が少ないので、母材の熱歪、熱応力の発生や、変質、劣化を低減できるという利点がある。
【0043】
従来、図6に示すように、プレート16は、プレス成形後に発生する歪やスプリングバック等によって、板状体に逆そり52が発生し、板状体間に隙間が発生する場合があった。プラズマアーク溶接は、アークがピンポイントで集中するため、逆そり52が発生すると、アークによる材料への入熱が不安定となり、溶接不良が発生しやすい。
本実施形態では、プレート外周縁16a又は内周縁22a、24aをテーパ面46又は48とし、溶接時に、プレート押え冶具50,50で両側から押圧し、端部wを互いに当接かつ押圧し合うようにすることにより、この逆そり52をなくすことができる。
【0044】
即ち、プレート外周縁16aでは、板状体のテーパ角αを1.5度以上とすることで、外周縁16aの板状体端部w間の接触を確実にし、逆そり52を確実に防止できる。これによって、溶接不良を無くすことができる。また、テーパ面46を形成することで、並行面の場合よりもプレート重合体14の剛性を高めることもできる。
【0045】
図7に示すように、テーパ角αが2.0度を超えると、溶接時に、プレート押え冶具50,50により、事前に板状体を過荷重で圧着する必要が生じる。このとき、板状体の押圧固定が不良になり、これによって、接着不良が生じたり、あるいは不適合変形による残留応力が発生するおそれがある。そのため、テーパ角αを1.5〜2.0度にするのがよい。
【0046】
また、テーパ面46のプレート半径方向幅Wを少なくとも2mm確保し、かつプレート面直径に対するプレート半径方向幅Wの寸法比P(プレート半径方向幅W/プレート直径)が、P=0.004〜0.009となるように設定している。プレート半径方向幅Wを2mm以上とし、P≧0.004とすることにより、プレート外周縁16aの溶接に必要な強度と溶接による良好な接着性を付与することができると共に、プレート重合体14の剛性を高めることができる。一方、外周縁16aの強度の面では、P>0.009とする必要はなく、逆に、P>0.009とすると、プレート間に形成される冷媒通路の領域が小さくなるので、冷媒間の熱伝達性能が低下する。
【0047】
プレート16の内周縁22a、24aは、周長も短く、プレート成形後の歪は少ない。そのため、テーパ面48のテーパ角βは、1.0度以下とすることで、溶接時の逆そり52を無くすことができる。逆そり52が発生しなければ、テーパ角β=0でもよい。しかし、プレート成形後の歪等を考慮すれば、逆そり52を確実に無くすためには、テーパ角βを0.1以上とするのがよい。また、テーパ角βが1,0度を超えると、外周縁16aと同様に、前述した不具合いが生じるので、テーパ角β≦1.0とするのがよい。
【0048】
また、本実施形態では、中空容器12の内部空間s1で、ノズル口38からNH3冷媒液をプレート重合体14に向けて噴射するようにしているので、NH3冷媒液Nを中空容器12の内部空間s1に貯留するだけの方式より、NH3冷媒液とCO2冷媒との熱交換効率を向上できる。さらに、本実施形態では、プレート16の外周縁16aにテーパ面46が形成されているので、平行面の場合よりもプレート16にNH3冷媒液の濡れ面を形成しやすくなると共に、付着時間を長期化できる。そのため、NH3冷媒液とCO2冷媒との熱交換効率をさらに向上できる。
【0049】
また、本実施形態では、一次冷媒としてNH3を用い、CO2液化器10を満液式蒸発器としている。満液式蒸発器は、飽和冷媒ガスを圧縮機に送るので、蒸発器出口側の冷媒の過熱度調整を必要としない。そのため、温度式膨張弁等の自動膨張弁を備える必要がなく、設備コストを低減できる。
【0050】
また、NH3は比熱比κ(=cp/cv)が1.31と他の冷媒より大きい。そのため、NH3は過熱されると、膨張し、単位体積当りの循環重量が減少すると共に、冷却性能が低下する。本実施形態では、CO2液化器10が満液式であるため、NH3が過熱されない。そのため、NH3冷媒の劣化が生じない。また、前述のように、NH3冷媒の循環重量が低減しても、熱伝達性能を高く維持できるので、NH3冷媒の循環量低減の影響を抑制できる。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
プレート16がステンレス製(SUS316L)であり、プレート16の直径が500mm、貫通流路26,28の直径が100mm、厚さ0.8mmであり、このプレートを用いて、逆そり発生率及び溶接不良発生率を計測した結果を、図8及び図9に示す。図8はプレート外周縁の計測結果であり、図9はプレート内周縁の計測検出結果である。
【0052】
図8及び図9において、曲線イは逆そり発生率を示し、曲線ロは溶接不良発生率を示す。図8において、テーパ角αが1.8度以下では、テーパ角αの増加に対して、逆そり発生率及び溶接不良発生率は低下するが、テーパ角αが1.8度以上では、溶接不良発生率が増加し始めている。この理由は、テーパ角αが大きいと、溶接時にプレート押え冶具50による板状体の固定に不良が発生し、これが溶接不良発生率の増加をもたらしているものと思料される。図8から、テーパ角α=1.5〜2.0度のときに、溶接不良発生率を最も低減できることがわかる。
【0053】
図9も図8と略同様の傾向を示している。即ち、テーパ角βが0.6度以下では、テーパ角βの増加に対して、逆そり発生率及び溶接不良発生率は低下するが、テーパ角βが0.6度以上では、溶接不良発生率が増加し始めている。この理由は、プレート外周縁の場合と略同様の理由によると思料される。図9から、テーパ角β=0.1〜1.0度のときに、溶接不良発生率を最も低減できることがわかる。
【0054】
(実施例2)
図10は、実施例1と同じプレートを用い、このプレートで製造したプレート重合体14において、前記寸法比P(プレート半径方向幅W/プレート直径D)の値と剛性との関係を実験により求めた結果を示す線図である。この実験データは、NH3冷媒液の充填量を60kgとし、潤滑油としてPN(相溶性油)を用い、蒸発温度が−12〜―13℃、凝縮温度が33〜35℃であり、連続30分運転の平均値を求めたものである。
【0055】
剛性の求め方は、図3に示すように、ペアプレートの両側から荷重Fを加え、波形凹凸の山部mを互いに接触させた時に測定した力Fの値をもって剛性の指標とした。
図10から、寸法比P=0.004〜0.009のときに、プレート重合体14の剛性及び熱伝達性能が、共に優れていることがわかる。
【0056】
(実施例3)
図11は、NH3/CO2冷凍装置の満液式CO2液化器において、熱伝達量を測定した結果を示す。図11において、直線ハが、本実施形態のように、NH3冷媒液の下部給液と上部散布を併用した場合であり、直線ニが下部給液のみの場合を示す。
図から、熱伝達性能が同一としたときの、必要冷媒充填重量の差を求める。例えば、熱伝達量K値がある量K1(w/m2k)であるとき、必要冷媒充填重量は、上部散布併用の場合が57kgであり、下部給液のみの場合が60kgとなる。そのため、本実施形態のように、上部散布併用の場合、冷媒充填重量を5%削減できる。
なお、図2において、XがNH3冷媒液の充填重量が60kgのときの冷媒液面を示し、Yが充填重量が50kgのときの冷媒液面を示す。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、溶接不良をなくし、剛性を高めたシェルアンドプレート式熱交換器を実現でき、特に、冷凍サイクルを構成する冷凍装置の蒸発器や凝縮器等に適用されて好適である。
【符号の説明】
【0058】
10,100 CO2液化器
12,102 中空容器
14,104,142 プレート重合体
16,106,130 プレート
16a、136 プレート外周縁
16b、132 波形凹凸
18,30,108,116 入口管
20、32,110,118 出口管
22,24,112,114,134 孔
22a、24a、138 プレート内周縁
26,28 貫通流路
36 ノズル管
38 ノズル口
40 管路
42,44 NH3冷媒液管
46,48 テーパ面
50 プレート押え冶具
52 逆そり
120 セパレータ
122 アフタークーラ
140 ペアプレート
F 荷重
N NH3冷媒液
P 寸法比
X、Y NH3冷媒液面
W テーパ面幅
a 第1の熱交換流体
b 第2の熱交換流体
m 山部
s 隙間
w 板状体端部
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルを構成する冷凍装置の蒸発器等に適用されて好適であると共に、プラズマアーク溶接に適したプレート端の形状をもつシェルアンドプレート式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒循環路に蒸発器、圧縮機、凝縮器及び膨張装置が介設されて冷凍サイクルを構成する冷凍装置においては、オゾン層破壊、地球温暖化防止の観点から、自然冷媒であるNH3やCO2等が注目されている。特に、NH3は冷凍能力が大きいため、大型冷凍装置によく用いられている。しかし、NH3は毒性があるため、NH3を用いた冷凍サイクル構成機器に対して、CO2を冷却負荷側の二次冷媒として用いる二次冷媒系を組み合わせた冷凍装置が多く用いられている。かかるNH3/CO2冷凍装置は、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0003】
NH3/CO2冷凍装置においては、カスケードコンデンサとして用いられるCO2液化器の長手方向のサイズが大きくなり、冷凍ユニットのサイズもこれに合わせて大きくならざるを得ない。そのため、CO2液化器は、搬入・据付け時に、冷蔵倉庫等のエレベータに乗せられないことがあり、その搬入・据付けに支障をきたすことがある。
【0004】
一方、シェルアンドプレート式熱交換器は、表裏両面に特定の凹凸パターンをもつ多数のプレートを表裏交互に重ねることにより、表裏面に幾何学的構造の流路を形成させる。これにより、プレートの表裏面に2つの熱交換流体の該流路を交互に形成させ、2つの熱交換流体間でプレートを介して熱交換させるように構成されている。該流路では、流れる流体の強力な乱流が形成される。そのため、シェルアンドプレート式熱交換器は、優れた熱交換効率が得られると共に、長手方向のサイズを短縮でき、設置スペースを低減できる利点があり、冷凍装置の蒸発器や凝縮器等によく用いられている。以下、特許文献3(図4)に開示されたシェルアンドプレート式熱交換器の一構成例を図12に基づいて説明する。
【0005】
図12において、このシェルアンドプレート式熱交換器100は、中空容器102の内部にプレート重合体104が収容されている。プレート重合体104は、多数の伝熱エレメントであるプレート106が重ね合わされて構成されている。プレート相互間には、中空容器102の内部空間s1に対して開放された通路Aと、該内部空間s1に対して閉じられた通路Bとが交互に形成されている。中空容器102の底部に設けられた入口管108から内部空間s1に第1の熱交換流体aが流入し、通路Aを通って出口管110から中空容器102の外部に排出される。
【0006】
各プレート106には、プレート外周縁近傍で中心点に対して180度位相が異なる位置に、2個の孔112及び114が穿設され、これら孔を通して、プレート重合体104を貫通する方向に2本の流路が形成される。孔112に相対する位置の中空容器102の側壁に入口管116が設けられ、入口管116とは反対側の側壁で、孔114に相対する位置の側壁に出口管118が設けられている。第2の熱交換流体bが入口管116から流入し、第2の熱交換流体bは、孔112から通路Bを経て孔114に到り、出口管118から流出する。
【0007】
第1の熱交換流体aは、通路Aを流れるとき、第2の熱交換流体bと熱交換してその一部が気化し、気液二相状態の第1の熱交換流体aは、セパレータ120で気液分離される。第2の熱交換流体bは、通路Bを流れるとき、第1の熱交換流体aと熱交換して凝縮し、アフタークーラ122で凝縮液と不凝縮性ガスに分離される。なお、プレート106の
外形は、通常、角形又は円形を有している。
【0008】
図13は、円形のプレートを用いたプレート重合体の構成例を示す。図13において、円形のプレート130には、波形断面を有する直線状の波形凹凸132が形成されている。プレート130には、プレート外周縁136の近傍に、中心に対して180度位相を異ならせた2個の孔134,134が穿設されている。プレート130の外周縁136及び孔134の内周縁138は、波形凹凸132に連なった狭い環状の平坦面に形成されている。外周縁136の平坦面を形成する板状体と内周縁138の平坦面を形成する板状体とは、波形凹凸132の山と谷の段差分だけ高低差が設けられている。
【0009】
2枚のプレート130を互いの裏面同士を相対させて(凹凸パターンを背合わせにして)重ね合わせ、互いに当接した孔134の内周縁138同士を矢印uで示すように周溶接して、ペアプレート140を製造する。このとき、プレート130の外周縁136間は、プレート130に形成された波形凹凸132の山と谷の段差の2倍の隙間sを形成する。次に、多数のペアプレート140を重ね合わせ、各ペアプレート140の外周縁136同士を当接させ、当接面を矢印vで示すように周溶接する。こうして、プレート重合体142が形成される。プレート重合体142は、中空容器の内部に支持具によって固定される。
【0010】
このように、プレート重合体142は、プレート130の外周縁136と孔134の内周縁138とが、選択的に溶接される。即ち、重合方向に向かって外周縁と内周縁とが交互に溶接される。これによって、各プレート間に、中空容器の内部空間に開放された第1の流路と、中空容器の内部空間に対して遮断されると共に、孔134に連通し、孔134から中空容器の外部に連通した第2の流路が形成される。そして、第1の流路と第2の流路を流れる2つの熱交換流体をプレートを介して熱交換させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4188971号特許公報
【特許文献2】特許第4465686号特許公報
【特許文献3】特開昭64−88099号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述のように、NH3/CO2冷凍装置に組み込まれるCO2液化器の長手方向のサイズが大きくなり、冷凍ユニットのサイズがこれに制約されて小型化できないという問題がある。そのため、CO2液化器の搬入・据付け時に、冷蔵倉庫等のエレベータに乗せられないことがあり、その搬入・据付けに支障をきたすことがある。
【0013】
この問題を解決するため、長手方向のサイズが短く、設置スペースを低減できるシェルアンドプレート式熱交換器を用いるとよい。しかし、シェルアンドプレート式熱交換器は、プレート重合体を構成するプレート間を溶接する溶接箇所が多く、溶接工数が多くなる。そのため、どこかの溶接箇所に溶接不良が発生すると、熱交換流体の漏洩が生じるので、溶接時に、溶接不良を発生させないように注意する必要がある。
【0014】
しかし、プレートは複雑な形状にプレス成形されるので、プレス成形後に歪が発生しやすく、この歪に起因して起こる変形により、プレート重合体の剛性が低下するおそれがある。また、スプリングバックが発生して、プレート外周縁又はプレート内周縁を形成する板状体に逆そりが発生し、該板状体間に隙間が発生するおそれがある。板状体間に隙間が発生すると、アーク溶接等を施す場合、アークによる材料への入熱が不安定となり、溶接不良が発生するおそれがある。
【0015】
また、プレートの材料として、通常、耐食性があるステンレス鋼が用いられている。しかし、TIG溶接等を用いると、TIG溶接は熱集中性がそれほど良くなく、入熱量が多いため、材料によっては、プレートの母材が変質したり、あるいは熱劣化や、熱歪、熱応力が発生して、プレート重合体の強度が低下するおそれがある。
【0016】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、シェルアンドプレート式熱交換器を製造する際に、プレートのプレス成形後の歪やスプリングバック等に起因した溶接不良や、プレート母材の変質による劣化をなくすと共に、プレート重合体の強度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
かかる目的を達成するため、本発明のシェルアンドプレート式熱交換器は、
中空容器と、該中空容器の内部に配設され、表裏面に流路形成用凹凸を有する多数のプレートが重ね合わされたプレート重合体とを備え、
各プレートの同一部位に穿設された孔によってプレート重合体を貫通する流路が形成され、プレート外周縁及び該孔を形成するプレート内周縁を各プレート間で選択的に接合し、中空容器の内部空間に連通した第1の流体通路と、該内部空間に対して閉鎖され前記貫通流路に連通した第2の流体通路を各プレート間に交互に形成してなり、
中空容器の内部空間から第1の流体通路を通る第1の流体と、前記貫通流路から第2の流体通路を通る第2の流体とをプレートを介して熱交換させるようにしたシェルアンドプレート式熱交換器において、
プレート外周縁及びプレート内周縁が前記流路形成用凹凸を形成した部位と一体の平坦な環状の板状体で構成され、
隣接したプレートに形成され対面した位置にあって互いに接合される板状体が、端側に向かって互いに接近する方向に傾斜したテーパ面が形成され、該板状体の端側が互いに固着されてなるものである。
【0018】
本発明装置では、プレートの外周縁や内周縁を形成する板状体に端側に向かって互いに接近する方向にテーパ面をもたせ、端側の固着時に、端側が確実に互いに当接し合い、かつ押圧し合うようにしたものである。これによって、プレートに発生した歪を押え込むことができ、かつスプリングバック等に起因した板状体の逆そりを解消できる。そのため、溶接不良をなくすことができると共に、板状体をテーパ面としたことにより、板状体が平行面である場合より、プレート重合体の剛性を高めることができる。
【0019】
本発明装置において、プレート外周縁で板状体のテーパ面のテーパ角がプレート面に対して1.5〜2.0度であり、プレート内周縁で板状体のテーパ面のテーパ角がプレート面に対して1.0度以下であるとよい。プレート外周縁で板状体のテーパ角を1.5〜2.0度とすることにより、板状体に発生する逆そり防止効果が大きく、また、プレート重合体の剛性付与効果も大きくなる。一方、テーパ角が2.0度を超えると、溶接時に、板状体を押え冶具を用いて固定する際に、板状体を過荷重で圧接する必要が生じる。そのため、固着不良が生じやすくなると共に、不適合変形による残留応力が発生しやすい。
【0020】
プレート内周縁は、周長も短く、プレート内周縁周辺では歪の発生は少ないと考えられ、逆そり防止のみを考慮すればよい。そのため、板状体のテーパ角を1.0度以下とすることで、逆そりを効果的に防止でき、かつ板状体にテーパ角を付与することで、プレート重合体の剛性を増大できる。なお、逆そりが発生しなければ、テーパ角が零度でもよいが、逆そりを確実に防止するためには、テーパ角を0.1〜1.0度としたほうがよい。一方、プレート内周縁で、板状体のテーパ角が1.0度を超えると、プレート外周縁と同様の不具合いが生じる。
【0021】
本発明装置において、プレート外周縁で板状体のプレート半径方向幅が2mm以上であり、かつプレート直径に対する該プレート半径方向幅の寸法比(プレート半径方向幅/プレート直径)が0.004〜0.009であるとよい。プレート半径方向幅を2mm以上とし、該寸法比≧0.004とすることにより、プレート外周縁の固着に必要な強度と固着性能を板状体に与えることができると共に、プレート重合体の剛性を高めることができる。一方、プレート外周縁の固着強度及び固着性能の面では、寸法比>0.009とする必要はなく、逆に、0.009を超えると、プレート間に形成される波形凹凸の形成領域が小さくなるので、流体間の熱伝達性能が低下する。
【0022】
本発明装置において、プレート外周縁及びプレート内周縁の板状体の端部がプラズマアーク溶接によって固着されているとよい。プラズマアーク溶接は、TIG溶接等と比べて、アークの指向性が高く、アークをピンポイントで集中できる。そのため、ビード幅が狭く、熱集中性が良いため、溶接不良が発生せず、かつ高速溶接が可能である。また、溶接歪が少ないという利点がある。プレート重合体は、多数の溶接箇所があるので、プラズマアーク溶接を用い、高速溶接が可能になることで、プレート重合体の製造工期を短縮できるという利点がある。
【0023】
また、プレートは複雑な形状に鍛造されるため、歪が発生する。そのため、溶接歪の発生が少ないプラズマアーク溶接を採用することで、歪の蓄積をなくすことができる。さらに、プラズマアーク溶接は、TIG溶接等と比べて、入熱量が少ないので、母材の熱歪、熱応力の発生や、変質、劣化を低減できるという利点がある。
【0024】
本発明装置において、第1の流体が液体であり、中空容器の内部空間に第1の流体が貯留され、前記プレート重合体の下部が第1の流体に浸漬するように配置され、中空容器の内部でプレート重合体の上方に第1の流体の少なくとも一部をプレート重合体に向けて散布する散布ノズルが配設されているとよい。この散布ノズルを設けることで、第1の流体と第2の流体との熱伝達性能を高めることができる。
これによって、中空容器への第1の流体の充填量を低減できる。また、本発明装置では、プレート外周縁にテーパ角を付与しているので、プレート表面に第1の流体の濡れ面が形成しやすくなり、これによって、一層熱伝達性能を向上できる。
【0025】
本発明装置において、第1の流体が冷媒液であり、冷媒循環路に圧縮機、凝縮器、減圧装置及び蒸発器が介設されて、冷凍サイクルを構成する冷凍装置に、満液式蒸発器として組み込まれているとよい。本発明のシェルアンドプレート式熱交換器は、熱伝達性能を向上できるので、冷凍サイクルを構成する冷凍装置に満液式蒸発器として用いれば、冷凍装置のCOPを向上できる。
また、満液式蒸発器は、飽和状態の冷媒ガスを圧縮機に送るため、蒸発器出口側の冷媒の過熱度調整を必要としない。そのため、温度式膨張弁等の自動膨張弁を備える必要がなく、設備コストを低減できる。
【0026】
前記冷凍装置において、冷媒液がNH3であるとよい。NH3は比熱比κ(=cp/cv)が1.31と他の冷媒より大きいため、過熱されると、膨張し、単位体積当りの循環重量が減少する。そのため、冷却性能が低下する。しかし、満液式蒸発器を備えた冷凍装置では、満液式蒸発器の出口側でNH3が過熱されないので、NH3の劣化が生じない。また、本発明装置を用いれば、NH3の循環量を低減しても、熱伝達性能を高く維持できるので、NH3の循環量減少の影響を抑制できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明装置によれば、中空容器と、該中空容器の内部に配設され、表裏面に流路形成用凹凸を有する多数のプレートが重ね合わされたプレート重合体とを備え、各プレートの同一部位に穿設された孔によってプレート重合体を貫通する流路が形成され、プレート外周縁及び該孔を形成するプレート内周縁を各プレート間で選択的に接合し、中空容器の内部空間に連通した第1の流体通路と、該内部空間に対して閉鎖され前記貫通流路に連通した第2の流体通路を各プレート間に交互に形成してなり、中空容器の内部空間から第1の流体通路を通る第1の流体と、前記貫通流路から第2の流体通路を通る第2の流体とをプレートを介して熱交換させるようにしたシェルアンドプレート式熱交換器において、プレート外周縁及びプレート内周縁が前記流路形成用凹凸を形成した部位と一体の平坦な環状の板状体で構成され、隣接したプレートに形成され対面した位置にあって互いに接合される板状体が、端側に向かって互いに接近する方向に傾斜したテーパ面を有するように形成され、該板状体の端側が互いに固着されてなるので、端側の固着時に、端側が確実に互いに溶接し合い、かつ押圧し合うようになり、これによって、プレートのプレス成形時に発生する歪や残留応力を押え込むことができ、かつ板状体の逆そりをなくすことができる。そのため、板状体の端部間の固着を常に問題なく行なうことができると共に、板状体にテーパ角をもたせることにより、プレート重合体の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明装置の一実施形態に係るシェルアンドプレート式熱交換器の正面視断面図である。
【図2】前記シェルアンドプレート式熱交換器の側面視断面図である。
【図3】前記シェルアンドプレート式熱交換器のプレート外周縁を示す断面図である。
【図4】前記シェルアンドプレート式熱交換器のプレート内周縁を示す断面図である。
【図5】プレート外周縁又はプレート内周縁の溶接手順を示す説明図である。
【図6】プレートの溶接端で逆そりが発生した状態を示す説明図である。
【図7】プレート外周縁又はプレート内周縁のテーパ角が過大な場合を示す説明図である。
【図8】前記シェルアンドプレート式熱交換器のプレート外周縁の実験データを示す線図である。
【図9】前記シェルアンドプレート式熱交換器のプレート内周縁の実験データを示す線図である。
【図10】前記シェルアンドプレート式熱交換器の別な実験データを示す線図である。
【図11】前記シェルアンドプレート式熱交換器の別な実験データを示す線図である。
【図12】従来のシェルアンドプレート式熱交換器の一構成例を示す断面図である。
【図13】プレート重合体の製造手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0030】
本発明装置をNH3/CO2冷凍装置のCO2液化器に適応した一実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。まず、図1及び図2により、本実施形態に係るCO2液化器10の構成を説明する。CO2液化器10は、NH3/CO2冷凍装置に満液式蒸発器(カスケードコンデンサ)として組み込まれている。このCO2液化器10では、一次冷媒であるNH3と、二次冷媒であるCO2とが熱交換され、NH3が吸熱して蒸発し、一方CO2が液化する。
【0031】
図1及び図2において、円筒形状を有する中空容器12の内部にプレート重合体14が収容されている。プレート重合体14は、円板状の多数のプレート16が重合されて円筒形状に形成されている。中空容器12の底部に、NH3冷媒液が流入する入口管18が設けられ、中空容器12の頂部に、気化したNH3冷媒ガスが流出する出口管20が設けられている。
【0032】
図13に示すプレート130のように、プレート16の外形は、円形をなし、波形断面を有する直線状の凹凸が並列に形成されている。また、プレート16は、その外周縁16aの近傍で、かつ中心点から180°位相がずれた位置に、孔22及び24が穿設されている。各プレート16の外周縁16a及び孔22、24の内周縁22a、24aは平坦な環状の板状体に形成され、これらを除く領域は、波形凹凸16bが形成されている。プレート重合体14は、かかるプレート16が多数重合されて構成されている。
【0033】
各プレート16の同一部位に孔22及び24が穿設され、これら孔の内周縁22a、24aが互いに接合されるため、プレート重合体14には、プレート重合体14を貫通する方向に流路26及び28が形成されている。中空容器12の側壁には、孔22に相対する位置に、CO2冷媒が流入する入口管30が設けられ、入口管30は、中空容器12の側壁を貫通して直接貫通流路26に接続されている。また、孔24に相対する位置にCO2冷媒液が流出する出口管32が設けられ、出口管32は中空容器12の隔壁を貫通して貫直接通流路28に接続されている。プレート重合体14は、図示省略の支持具によって中空容器14の内部に固定されている。
【0034】
図13のプレート重合体142と同様に、各プレート16間には、中空容器12の内部空間s1に開放された通路と、入口管30から貫通流路26、28を経て出口管32に至り、内部空間s1に対して閉鎖された通路とが交互に形成されている。
【0035】
中空容器14の内部空間s1の上部領域には、中空容器12の長手方向にノズル管36が配設され、該ノズル管36の下部に、長手方向に配置され下方に開口した多数のノズル口38が穿設されている。ノズル口38が中空容器12の外部に導出された管路40には、NH3冷媒液管42が接続されている。また、入口管18とNH3冷媒液管42とを接続したNH3冷媒液管44が設けられている。
【0036】
かかる構成において、図示省略のNH3/CO2冷凍装置の凝縮器から出たNH3冷媒液は、NH3冷媒液管42及び管路40を介してノズル管36に供給される。凝縮器の下流側のNH3冷媒循環路に中間冷却器やエコノマイザー冷却器が設けられている冷凍装置の場合には、これらの冷却器から出たNH3冷媒液が、NH3冷媒液管42を介してノズル管36に供給される。NH3冷媒液を、一旦NH3冷媒液管44を介して中空容器12の内部空間s1に供給し、内部空間s1の下方領域に貯留されたNH3冷媒液Nを、NH3冷媒液管44及び42を介してノズル管36に循環するようにしてもよい。ノズル管36に供給されたNH3冷媒液は、ノズル口38からプレート重合体14に噴霧される。
【0037】
ノズル口38からプレート重合体14に噴霧されたNH3冷媒液は、内部空間s1に開放されたプレート16間の通路を通る。一方、CO2冷媒は、入口管30から貫通流路26に流入し、内部空間s1に対して閉鎖されたプレート16間の通路を通り、貫通流路28を経て出口管32から流出する。NH3冷媒液とCO2冷媒とは、プレート16を介して互いに熱交換し、NH3冷媒液は吸熱して気化し、出口管20から流出する。一方、CO2冷媒は液化し、出口管32から流出する。
【0038】
次に、図3及び図4により、プレート重合体14の構成を説明する。図3は、先端部が互いに溶接されるプレート16の外周縁16aを示す。外周縁16aは波形凹凸16bと一体の平坦な環状の板状体をなす。該板状体は、プレート外方に向かって互いに接近するテーパ面46を形成している。テーパ面46は、プレート面に平行な面hに対して、テーパ角αをもつ。
【0039】
図4は、先端が互いに接合されるプレート16の内周縁22a又は24aを示す。内周縁22a又は24aは、波形凹凸16bと一体の平坦な環状の板状体をなすと共に、孔22又は24側に向かって互いに接近するテーパ面48を形成している。テーパ面48は、プレート面に平行な面hに対して、テーパ角βをもつ。
【0040】
図5に、外周縁16a又は内周縁22a、24aの溶接手順を示す。図5において、互いに接合される外周縁16a又は内周縁22a、24aを両側からプレート押え冶具50,50で挟み押圧する。そして、テーパ面46、46同士又はテーパ面48、48同士を接触させ固定した状態で、プラズマアーク溶接により、板状体の端部wを溶接する。
【0041】
プラズマアーク溶接は、TIG溶接等と比べて、アークの指向性が高く、アークをピンポイントで集中できる。そのため、ビード幅が狭く、熱集中性が良いため、溶接不良がなく、かつ高速溶接が可能であると共に、歪の少ない溶接が可能になる。プレート重合体14は、溶接箇所が多数あるので、プラズマアーク溶接を用い、高速溶接が可能になることで、プレート重合体14の製造工期を短縮できるという利点がある。
【0042】
また、プレート16は複雑な形状に鍛造されるため、歪が発生しやすい。そのため、溶接歪が発生しにくいプラズマアーク溶接を採用することで、歪を低減できるという利点がある。さらに、プラズマアーク溶接は、TIG溶接等と比べて、入熱量が少ないので、母材の熱歪、熱応力の発生や、変質、劣化を低減できるという利点がある。
【0043】
従来、図6に示すように、プレート16は、プレス成形後に発生する歪やスプリングバック等によって、板状体に逆そり52が発生し、板状体間に隙間が発生する場合があった。プラズマアーク溶接は、アークがピンポイントで集中するため、逆そり52が発生すると、アークによる材料への入熱が不安定となり、溶接不良が発生しやすい。
本実施形態では、プレート外周縁16a又は内周縁22a、24aをテーパ面46又は48とし、溶接時に、プレート押え冶具50,50で両側から押圧し、端部wを互いに当接かつ押圧し合うようにすることにより、この逆そり52をなくすことができる。
【0044】
即ち、プレート外周縁16aでは、板状体のテーパ角αを1.5度以上とすることで、外周縁16aの板状体端部w間の接触を確実にし、逆そり52を確実に防止できる。これによって、溶接不良を無くすことができる。また、テーパ面46を形成することで、並行面の場合よりもプレート重合体14の剛性を高めることもできる。
【0045】
図7に示すように、テーパ角αが2.0度を超えると、溶接時に、プレート押え冶具50,50により、事前に板状体を過荷重で圧着する必要が生じる。このとき、板状体の押圧固定が不良になり、これによって、接着不良が生じたり、あるいは不適合変形による残留応力が発生するおそれがある。そのため、テーパ角αを1.5〜2.0度にするのがよい。
【0046】
また、テーパ面46のプレート半径方向幅Wを少なくとも2mm確保し、かつプレート面直径に対するプレート半径方向幅Wの寸法比P(プレート半径方向幅W/プレート直径)が、P=0.004〜0.009となるように設定している。プレート半径方向幅Wを2mm以上とし、P≧0.004とすることにより、プレート外周縁16aの溶接に必要な強度と溶接による良好な接着性を付与することができると共に、プレート重合体14の剛性を高めることができる。一方、外周縁16aの強度の面では、P>0.009とする必要はなく、逆に、P>0.009とすると、プレート間に形成される冷媒通路の領域が小さくなるので、冷媒間の熱伝達性能が低下する。
【0047】
プレート16の内周縁22a、24aは、周長も短く、プレート成形後の歪は少ない。そのため、テーパ面48のテーパ角βは、1.0度以下とすることで、溶接時の逆そり52を無くすことができる。逆そり52が発生しなければ、テーパ角β=0でもよい。しかし、プレート成形後の歪等を考慮すれば、逆そり52を確実に無くすためには、テーパ角βを0.1以上とするのがよい。また、テーパ角βが1,0度を超えると、外周縁16aと同様に、前述した不具合いが生じるので、テーパ角β≦1.0とするのがよい。
【0048】
また、本実施形態では、中空容器12の内部空間s1で、ノズル口38からNH3冷媒液をプレート重合体14に向けて噴射するようにしているので、NH3冷媒液Nを中空容器12の内部空間s1に貯留するだけの方式より、NH3冷媒液とCO2冷媒との熱交換効率を向上できる。さらに、本実施形態では、プレート16の外周縁16aにテーパ面46が形成されているので、平行面の場合よりもプレート16にNH3冷媒液の濡れ面を形成しやすくなると共に、付着時間を長期化できる。そのため、NH3冷媒液とCO2冷媒との熱交換効率をさらに向上できる。
【0049】
また、本実施形態では、一次冷媒としてNH3を用い、CO2液化器10を満液式蒸発器としている。満液式蒸発器は、飽和冷媒ガスを圧縮機に送るので、蒸発器出口側の冷媒の過熱度調整を必要としない。そのため、温度式膨張弁等の自動膨張弁を備える必要がなく、設備コストを低減できる。
【0050】
また、NH3は比熱比κ(=cp/cv)が1.31と他の冷媒より大きい。そのため、NH3は過熱されると、膨張し、単位体積当りの循環重量が減少すると共に、冷却性能が低下する。本実施形態では、CO2液化器10が満液式であるため、NH3が過熱されない。そのため、NH3冷媒の劣化が生じない。また、前述のように、NH3冷媒の循環重量が低減しても、熱伝達性能を高く維持できるので、NH3冷媒の循環量低減の影響を抑制できる。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
プレート16がステンレス製(SUS316L)であり、プレート16の直径が500mm、貫通流路26,28の直径が100mm、厚さ0.8mmであり、このプレートを用いて、逆そり発生率及び溶接不良発生率を計測した結果を、図8及び図9に示す。図8はプレート外周縁の計測結果であり、図9はプレート内周縁の計測検出結果である。
【0052】
図8及び図9において、曲線イは逆そり発生率を示し、曲線ロは溶接不良発生率を示す。図8において、テーパ角αが1.8度以下では、テーパ角αの増加に対して、逆そり発生率及び溶接不良発生率は低下するが、テーパ角αが1.8度以上では、溶接不良発生率が増加し始めている。この理由は、テーパ角αが大きいと、溶接時にプレート押え冶具50による板状体の固定に不良が発生し、これが溶接不良発生率の増加をもたらしているものと思料される。図8から、テーパ角α=1.5〜2.0度のときに、溶接不良発生率を最も低減できることがわかる。
【0053】
図9も図8と略同様の傾向を示している。即ち、テーパ角βが0.6度以下では、テーパ角βの増加に対して、逆そり発生率及び溶接不良発生率は低下するが、テーパ角βが0.6度以上では、溶接不良発生率が増加し始めている。この理由は、プレート外周縁の場合と略同様の理由によると思料される。図9から、テーパ角β=0.1〜1.0度のときに、溶接不良発生率を最も低減できることがわかる。
【0054】
(実施例2)
図10は、実施例1と同じプレートを用い、このプレートで製造したプレート重合体14において、前記寸法比P(プレート半径方向幅W/プレート直径D)の値と剛性との関係を実験により求めた結果を示す線図である。この実験データは、NH3冷媒液の充填量を60kgとし、潤滑油としてPN(相溶性油)を用い、蒸発温度が−12〜―13℃、凝縮温度が33〜35℃であり、連続30分運転の平均値を求めたものである。
【0055】
剛性の求め方は、図3に示すように、ペアプレートの両側から荷重Fを加え、波形凹凸の山部mを互いに接触させた時に測定した力Fの値をもって剛性の指標とした。
図10から、寸法比P=0.004〜0.009のときに、プレート重合体14の剛性及び熱伝達性能が、共に優れていることがわかる。
【0056】
(実施例3)
図11は、NH3/CO2冷凍装置の満液式CO2液化器において、熱伝達量を測定した結果を示す。図11において、直線ハが、本実施形態のように、NH3冷媒液の下部給液と上部散布を併用した場合であり、直線ニが下部給液のみの場合を示す。
図から、熱伝達性能が同一としたときの、必要冷媒充填重量の差を求める。例えば、熱伝達量K値がある量K1(w/m2k)であるとき、必要冷媒充填重量は、上部散布併用の場合が57kgであり、下部給液のみの場合が60kgとなる。そのため、本実施形態のように、上部散布併用の場合、冷媒充填重量を5%削減できる。
なお、図2において、XがNH3冷媒液の充填重量が60kgのときの冷媒液面を示し、Yが充填重量が50kgのときの冷媒液面を示す。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、溶接不良をなくし、剛性を高めたシェルアンドプレート式熱交換器を実現でき、特に、冷凍サイクルを構成する冷凍装置の蒸発器や凝縮器等に適用されて好適である。
【符号の説明】
【0058】
10,100 CO2液化器
12,102 中空容器
14,104,142 プレート重合体
16,106,130 プレート
16a、136 プレート外周縁
16b、132 波形凹凸
18,30,108,116 入口管
20、32,110,118 出口管
22,24,112,114,134 孔
22a、24a、138 プレート内周縁
26,28 貫通流路
36 ノズル管
38 ノズル口
40 管路
42,44 NH3冷媒液管
46,48 テーパ面
50 プレート押え冶具
52 逆そり
120 セパレータ
122 アフタークーラ
140 ペアプレート
F 荷重
N NH3冷媒液
P 寸法比
X、Y NH3冷媒液面
W テーパ面幅
a 第1の熱交換流体
b 第2の熱交換流体
m 山部
s 隙間
w 板状体端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空容器と、該中空容器の内部に配設され、表裏面に流路形成用凹凸を有する多数のプレートが重ね合わされたプレート重合体とを備え、
各プレートの同一部位に穿設された孔によってプレート重合体を貫通する流路が形成され、プレート外周縁及び該孔を形成するプレート内周縁を各プレート間で選択的に接合し、中空容器の内部空間に連通した第1の流体通路と、該内部空間に対して閉鎖され前記貫通流路に連通した第2の流体通路を各プレート間に交互に形成してなり、
中空容器の内部空間から第1の流体通路を通る第1の流体と、前記貫通流路から第2の流体通路を通る第2の流体とをプレートを介して熱交換させるようにしたシェルアンドプレート式熱交換器において、
前記プレート外周縁及びプレート内周縁が前記流路形成用凹凸を形成した部位と一体の平坦な環状の板状体で構成され、
隣接したプレートに形成され対面した位置にあって互いに接合される板状体が、端側に向かって互いに接近する方向に傾斜したテーパ面を有するように形成され、該板状体の端側が互いに固着されてなることを特徴とするシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項2】
前記プレート外周縁で板状体のテーパ面のテーパ角がプレート面に対して1.5〜2.0度であり、前記プレート内周縁で板状体のテーパ面のテーパ角がプレート面に対して1.0度以下であることを特徴とする請求項1に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項3】
前記プレート外周縁で板状体のプレート半径方向幅が2mm以上であり、かつプレート直径に対する該プレート半径方向幅の寸法比が0.004〜0.009であることを特徴とする請求項2に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項4】
前記板状体の端部がプラズマアーク溶接によって固着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項5】
前記第1の流体が液体であり、前記中空容器の内部空間に第1の流体が貯留され、前記プレート重合体の下部が第1の流体に浸漬するように配置され、
中空容器の内部でプレート重合体の上方に第1の流体の少なくとも一部をプレート重合体に向けて散布する散布ノズルが配設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項6】
前記第1の流体が冷媒液であり、冷媒循環路に圧縮機、凝縮器、減圧装置及び蒸発器が介設されて、冷凍サイクルを構成する冷凍装置に、満液式蒸発器として組み込まれていることを特徴とする請求項5に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項7】
前記冷媒液がNH3であることを特徴とする請求項6に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項1】
中空容器と、該中空容器の内部に配設され、表裏面に流路形成用凹凸を有する多数のプレートが重ね合わされたプレート重合体とを備え、
各プレートの同一部位に穿設された孔によってプレート重合体を貫通する流路が形成され、プレート外周縁及び該孔を形成するプレート内周縁を各プレート間で選択的に接合し、中空容器の内部空間に連通した第1の流体通路と、該内部空間に対して閉鎖され前記貫通流路に連通した第2の流体通路を各プレート間に交互に形成してなり、
中空容器の内部空間から第1の流体通路を通る第1の流体と、前記貫通流路から第2の流体通路を通る第2の流体とをプレートを介して熱交換させるようにしたシェルアンドプレート式熱交換器において、
前記プレート外周縁及びプレート内周縁が前記流路形成用凹凸を形成した部位と一体の平坦な環状の板状体で構成され、
隣接したプレートに形成され対面した位置にあって互いに接合される板状体が、端側に向かって互いに接近する方向に傾斜したテーパ面を有するように形成され、該板状体の端側が互いに固着されてなることを特徴とするシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項2】
前記プレート外周縁で板状体のテーパ面のテーパ角がプレート面に対して1.5〜2.0度であり、前記プレート内周縁で板状体のテーパ面のテーパ角がプレート面に対して1.0度以下であることを特徴とする請求項1に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項3】
前記プレート外周縁で板状体のプレート半径方向幅が2mm以上であり、かつプレート直径に対する該プレート半径方向幅の寸法比が0.004〜0.009であることを特徴とする請求項2に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項4】
前記板状体の端部がプラズマアーク溶接によって固着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項5】
前記第1の流体が液体であり、前記中空容器の内部空間に第1の流体が貯留され、前記プレート重合体の下部が第1の流体に浸漬するように配置され、
中空容器の内部でプレート重合体の上方に第1の流体の少なくとも一部をプレート重合体に向けて散布する散布ノズルが配設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項6】
前記第1の流体が冷媒液であり、冷媒循環路に圧縮機、凝縮器、減圧装置及び蒸発器が介設されて、冷凍サイクルを構成する冷凍装置に、満液式蒸発器として組み込まれていることを特徴とする請求項5に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【請求項7】
前記冷媒液がNH3であることを特徴とする請求項6に記載のシェルアンドプレート式熱交換器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−57900(P2012−57900A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203658(P2010−203658)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】
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