説明

シェービングカッタ歯形研削盤の歯形管理システム

【課題】シェービングカッタを刃付けすることによりシェービングカッタの外径及び歯厚が小さくなっても、適切な刃付けができる。
【解決手段】パソコン10では、歯形形状誤差補正用の補正係数(α)及び噛み合わせ位置補正用の補正係数(β)が、刃付け回数毎且つシェービングカッタのカッタ諸元毎に設定されている。そして、目標歯形形状データ(Do)と、目標歯形形状データ(Do)と歯形形状誤差データ(ΔD)との偏差である歯形形状誤差データ(ΔD)と、刃付け回数とカッタ諸元に応じて取り込んだ補正係数(α)及び補正係数(β)を、Dcc=Do+α・ΔD+βという式に適用して、狙い歯形形状データ(Dcc)を求め、狙い歯形形状データ(Dcc)からシェービングカッタ歯形形状データ(ds)を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシェービングカッタ歯形研削盤の歯形管理システムに関し、シェービングカッタに対して最適な刃付けを行うことができるように工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
歯切り盤(ホブ盤や歯車形削り盤)で歯切りした被加工歯車の歯面をさらに精度の高いものに仕上げるために、シェービングカッタを備えた歯車シェービング盤が用いられる。
【0003】
シェービングカッタは、歯車形状をした工具であり、被加工歯車に噛み合わせ、被加工歯車の歯面を微細に切削することにより歯面の仕上げ加工(シェービング加工)を行うものである。このため、シェービングカッタの歯形形状は、シェービング加工をする被加工歯車の狙い形状に対応した形状に形成されている。
【0004】
かかるシェービングカッタにおいては、複数の被加工歯車をシェービング加工した後では、シェービングカッタの歯面が磨耗してしまうので、シェービングカッタの歯形形状を、被加工歯車の狙い形状に対応した形状になるように再生させる必要がある。つまり、摩耗したシェービングカッタに刃付けする必要がある。
【0005】
そこで、シェービングカッタが摩耗した場合には、このシェービングカッタを歯車シェービング盤から取り外す。
そして、このシェービングカッタの歯形形状を、被加工歯車の狙い形状に対応した形状になるように再生するため、シェービングカッタをシェービングカッタ歯形研削盤に取り付けて研削加工することにより再生している。
【0006】
シェービングカッタ歯形研削盤は、シェービングカッタを研削する工具として、回転する円盤状の砥石を有している。このシェービングカッタ歯形研削盤では、円盤状の砥石と噛み合うシェービングカッタに創成運動を与え、シェービングカッタの歯面を研削加工して刃付けをする。
【0007】
シェービングカッタ歯形研削盤では、シェービングカッタの研削加工を行っていくと砥石は磨耗して切れ味が低下するので、複数のシェービングカッタを連続して研削した後は、磨耗した砥石をドレッシングして鋭い歯面を再生または新作する。このドレッシングに用いられるのがドレッサ装置であり、ドレッサ装置を備えたシェービングカッタ歯形研削盤も数多く提供されている。
【0008】
このようにドレッサ装置を備えたシェービングカッタ歯形研削盤では、
(1)砥石によりシェービングカッタを研削する局面と、
(2)ドレッサ装置により砥石をドレッシングする局面とがある。
【0009】
歯形形状の転写の状況をまとめると次のようになる。
シェービングカッタ歯形研削盤において、ドレッサ装置によりドレッシングして所定形状の歯面が形成された砥石の形状が、シェービングカッタに転写される。つまり砥石によりシェービングカッタを研削することにより、シェービングカッタの刃付けが行われる。
このシェービングカッタを歯車シェービング盤に備え、被加工歯車をシェービング加工することにより、シェービングカッタの形状が被加工歯車に転写されることになる。
結局、歯形形状は、シェービングカッタ歯形研削盤の砥石→シェービングカッタ→被加工歯車という順序で転写されていく。
【0010】
上述したように、歯形形状は、シェービングカッタ歯形研削盤の砥石→シェービングカッタ→被加工歯車という順序で転写されていくため、シェービング加工後の歯車の歯形形状が目標とする歯形形状になるように、砥石をドレッシングして砥石の形状を設定している。
しかし、シェービング加工後の歯車の歯形形状が、目標とする歯形形状からずれていた場合には、このずれを解消するようにドレッシングをして砥石形状を修正しなければならない。
【0011】
そこで、シェービング加工後の歯車の歯形形状が、目標とする歯形形状からずれていた場合には、このずれを解消するようにドレッシングをして砥石形状を修正する手法が開発された(例えば特許文献1参照)。
【0012】
特許文献1に示す技術では、砥石形状の修正は、次のようにしていた。
(1)シェービング加工した歯車を測定して、測定歯形形状データ(Dm)を得る。
(2)目標とする歯形形状を示す目標歯形形状データ(Do)と、シェービング加工後の測定歯形形状データ(Dm)との偏差(Do−Dm)である歯形形状誤差データ(ΔD)を求める。
(3)歯形形状誤差データ(ΔD)と目標歯形形状データ(Do)を基に、狙い歯形形状データ(Dc)を得る。
例えば、補正係数をαとした場合に、Dc=Do+α・ΔDという演算をして、狙い歯形形状データ(Dc)を得る。
(4)狙い歯形形状データ(Dc)をデータ変換演算して、シェービングカッタ歯形形状データ(ds)を得る。
(5)シェービングカッタ歯形形状データ(ds)で特定されるシェービングカッタの歯形形状を転写した砥石面形状となるように、ドレッシング装置の制御をして砥石をドレッシングする。
【0013】
このようにして砥石の砥石面形状を修正すれば、この修正した砥石でシェービングカッタを研削して、シェービングカッタを刃付けすれば、シェービングカッタの歯形形状は適正形状となる。このため、適正形状となるよう歯形修正をしたシェービングカッタを歯車シェービング盤に取り付けて、被加工歯車をシェービング加工すれば、シェービング後の被加工歯車の歯形形状が、目標とする歯形形状になる。
【0014】
ところで、砥石でシェービングカッタを研削してシェービングカッタに刃付けするという刃付け作業をするたびに、シェービングカッタの外径及び歯厚が、研削に相当する分だけ小さくなっていく。しかも、刃付けの回数が多くなるにつれて、シェービングカッタの外径及び歯厚の減少量が増加していく。
したがって、特許文献1に示す砥石形状の修正手法だけでは、シェービング加工後の歯車の歯形形状が、目標とする歯形形状からずれてしまうことがあった。特に、刃付けの回数が多くなった状態において、このような問題が大きくなってくる。
【0015】
このため、より正確な歯形形状を得るために、刃付けに伴いシェービングカッタの外径及び歯厚が小さくなることを考慮して、狙い歯形形状データ(Dc)を、刃付けの回数に応じて更に修正して、修正した狙い歯形形状データ(Dc′)を求める必要がある。
そして、修正した狙い歯形形状データ(Dc′)をデータ変換演算してシェービングカッタ歯形形状データ(ds)を求め、このシェービングカッタ歯形形状データ(ds)で特定されるシェービングカッタの歯形形状を転写した砥石面形状となるように、ドレッシング装置の制御をして砥石をドレッシングすることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2006−62026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで従来では、修正した狙い歯形形状データ(Dc′)を求めるために、狙い歯形形状データ(Dc)をどの程度修正するかは、作業者のノウハウにより決定していた。
このため、作業者の能力や熟練程度により修正程度が異なるため、修正した歯形形状データ(Dc′)のデータ値が異なってくる。この結果、作業者の能力や熟練程度によっては、シェービング加工後の歯車の歯形形状の精度にバラツキが生ずるおそれがあった。
したがって、熟練者でない者が、精度の良い歯車の歯形形状となった歯車をバラツキなく製造することは難しいことであった。
【0018】
本発明は、シェービングカッタを刃付けするに伴い、シェービングカッタの外径や歯厚が小さくなっても、作業者のノウハウに頼ることなくシェービングカッタに対して最適な刃付けができる、シェービングカッタ歯形研削盤の歯形管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決する本発明の構成は、
砥石でシェービングカッタを研削することによりこのシェービングカッタに刃付けをする一方、ドレッサ装置により前記砥石の砥石面をドレッシングすることにより前記砥石の砥石面形状を形成するシェービングカッタ歯形研削盤(30)に対する歯形管理システムであって、
シェービングカッタを用いてシェービング加工された歯車を測定して得た測定歯形形状を示す測定歯形形状データ(Dm)と歯車の目標歯形形状を示す目標歯形形状データ(Do)との偏差である歯形形状誤差データ(ΔD)を求める歯形形状誤差演算機能と、補正係数を含む予め決めた演算式に前記目標歯形形状データ(Do)と前記歯形形状誤差データ(ΔD)を適用することにより狙い歯形形状データ(Dcc)を求める狙い歯形形状演算機能と、前記狙い歯形形状データ(Dcc)で特定される歯車の歯形形状を転写した歯形形状となっているシェービングカッタの歯形形状を示すシェービングカッタ歯形形状データ(ds)を求めるシェービングカッタ歯形形状演算機能を有する演算部(10)と、
前記シェービングカッタ歯形形状データ(ds)で特定されるシェービングカッタの歯形形状を転写した砥石面形状となるように、前記ドレッサ装置による前記砥石に対するドレッシングを制御する制御手段(20)とを有し、
前記演算部(10)では、
刃付けに伴い前記シェービングカッタの外径及び歯厚が小さくなることを考慮して前記歯形形状誤差データ(ΔD)を調整する歯形形状誤差補正用の補正係数(α)と、刃付けに伴い前記シェービングカッタの外径及び歯厚が小さくなることを考慮してシェービングカッタと歯車との噛み合わせ位置を調整する噛み合わせ位置補正用の補正係数(β)とが、刃付け回数毎に設定されているデータベースが、シェービングカッタのカッタ諸元毎に設定されており、
前記狙い歯形形状データ(Dcc)を求めるときには、前記シェービングカッタ歯形研削盤(30)にて刃付けするシェービングカッタのカッタ諸元に対応したカッタ諸元のデータベースの中から、前記シェービングカッタの刃付け回数に応じた補正係数(α)及び補正係数(β)を取り込み、取り込んだ補正係数(α)及び補正係数(β)を用いて演算をすることを特徴とする。
【0020】
また本発明の構成は、
前記演算部(10)では、
目標歯形形状データ(Do)と、歯形形状誤差データ(ΔD)と、取り込んだ補正係数(α)及び補正係数(β)を下式に適用して、狙い歯形形状データ(Dcc)を求めることを特徴とする。
Dcc=Do+α・ΔD+β
【0021】
また本発明の構成は、
前記演算部(10)は、
前記データベースに設定されているカッタ諸元ではない新たなカッタ諸元となっているシェービングカッタに対しては、
既に設定されているカッタ諸元の各データベースを基に学習演算をして、新たなカッタ諸元用のデータベースを求めて設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、目標歯形形状データと測定歯形形状データを入力するだけで、作業者のノウハウに頼ることなく、シェービングカッタに対して最適な刃付けができる。しかも、この刃付けは、シェービングカッタを刃付けするに伴いシェービングカッタの外径や歯厚が小さくなっても悪影響を受けることなく、適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例に係るシェービングカッタ歯形研削盤の歯形管理システムを含む、歯車加工システムを示す概略構成図。
【図2】補正演算用データベースDB1〜DBmを示す概念図。
【図3】歯形形状を示す特性図。
【図4】パソコンでの演算処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について、実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の実施例1に係るシェービングカッタ歯形研削盤の歯形管理システムを含む、歯車加工システムを示す概略構成図である。
図1に示すように、パソコン10と、NC装置20と、ドレッサ装置を備えたシェービングカッタ歯形研削盤30と、歯車シェービング盤40と、歯車測定器50により、歯車加工システムが構成されている。そして、パソコン10とNC装置20により、本発明の実施例1に係るシェービングカッタ歯形研削盤の歯形管理システムが構築されている。
【0026】
この歯車加工システムの各装置の役割機能を概説すると、次の通りである。
パソコン10は、演算処理プログラムと補正演算用データベースを有しており、補正演算用データベースを参照しつつ演算処理プログラムに従い演算処理をすることにより、シェービングカッタ歯形形状データdsを求めて出力する。
【0027】
NC装置20は、シェービングカッタ歯形研削盤30のドレッサ装置により砥石をドレッシングする局面では、シェービングカッタ歯形形状データdsを基に、シェービングカッタ歯形研削盤30のドレッサ装置の制御をする。
また、NC装置20は、シェービングカッタ歯形研削盤30の砥石によりシェービングカッタを研削する局面では、砥石の制御をする。
【0028】
シェービングカッタ歯形研削盤30は、NC装置20により制御されて、ドレッサ装置により砥石をドレッシングしたり、砥石によりシェービングカッタを研削してシェービングカッタに刃付けをしたりする。
【0029】
歯車シェービング盤40は、シェービングカッタ歯形研削盤30により刃付けがされたシェービングカッタを用いて、被加工歯車に対してシェービング加工をする。
【0030】
歯車測定器50は、歯車シェービング盤40によりシェービング加工された被加工歯車の歯形形状を測定し、測定歯形形状データDmを得てパソコン10に送る。
【0031】
なお、パソコン10には、図示しない入力装置により、被加工歯車の目標とする歯形形状を示す目標歯形形状データDoが入力される。この目標歯形形状データDoは、被加工歯車の歯車諸元(モジュール,歯数,圧力角,ねじれ角,歯幅など)によって異なるものとなる。
【0032】
次に、パソコン10に記憶した補正演算用データベースDB1〜DBmについて説明する。
パソコン10には、図2に示すような、補正演算用データベースDB1〜DBmが予め記憶されている。各補正演算用データベースDB1〜DBmは、シェービングカッタのカッタ諸元(モジュール,歯数,圧力角,ねじれ角,歯幅など)が異なる各カッタ諸元ごとに設定したものである。つまり例えば、第1のカッタ諸元に対応して補正演算用データベースDB1を設定しており、第2のカッタ諸元に対応して補正演算用データベースDB2を設定しており、第mのカッタ諸元に対応して補正演算用データベースDBmを設定している。
【0033】
ここで補正演算用データベースDB1について、更に説明する。補正演算用データベースDB1では、それぞれの刃付け回数毎に、歯形形状誤差補正用の補正係数α11,α12・・・α1mと、噛み合わせ位置補正用の補正係数β11,β12・・・β1mが設定されている。
【0034】
各補正係数α11,α12・・・α1m及び各補正係数β11,β12・・・β1mは、熟練した作業者が、測定歯形形状データDmと目標歯形形状データDoを基に演算処理をして最適なシェービングカッタ歯形形状データdsを求める際に、各刃付け回数毎に設定した補正係数を採取しデータ化したものである。
【0035】
熟練した作業者は、砥石でシェービングカッタを研削してシェービングカッタに刃付けをするたびにシェービングカッタの外径及び歯厚が研削に相当する分だけ小さくなることを考慮して、補正係数を設定している。
このため、熟練した作業者が設定した補正係数をデータ化して得た各補正係数α11,α12・・・α1m及び各補正係数β11,β12・・・β1mを取り込んで、測定歯形形状データDmと目標歯形形状データDoを基に演算処理をし、シェービングカッタ歯形形状データdsを求めれば、この求めたシェービングカッタ歯形形状データdsは、刃付けに伴いシェービングカッタの外径及び歯厚が小さくなることに影響を受けることなく、最適なデータ値となる。
【0036】
補正係数α11,α12・・・α1mは、被加工歯車の目標歯形形状と測定歯形形状との誤差である歯形形状誤差の大きさを調整する補正係数であり、各補正係数β11,β12・・・β1mはシェービングカッタと被加工歯車との噛み合わせ位置(歯たけ方向の位置)を調整する補正係数である。
【0037】
他の補正演算用データベースDB2〜DBmも、補正演算用データベースDB1と同様にしてデータ化して設定したものである。
したがって、各補正演算用データベースDB2〜DBmの補正係数を取り込んで、測定歯形形状データDmと目標歯形形状データDoを基に演算処理をし、シェービングカッタ歯形形状データdsを求めれば、この求めたシェービングカッタ歯形形状データdsは、刃付けに伴いシェービングカッタの外径及び歯厚が小さくなることに影響を受けることなく、最適なデータ値となる。
【0038】
次に、パソコン10における演算処理について、フローチャートである図4を参照しつつ説明する。
【0039】
刃付けしようとするシェービングカッタが第1のカッタ諸元(モジュール,歯数,圧力角,ねじれ角,歯幅など)である場合には、第1の歯車諸元(モジュール,歯数,圧力角,ねじれ角,歯幅など)を有する被加工歯車の目標歯形形状(図3の(A)参照)を示す目標歯形形状データ(Do)がパソコン10に入力される。
なお、歯車諸元は、シェービングカッタのカッタ諸元に対応したものになっている。
シェービング加工後の第1の歯車諸元(モジュール,歯数,圧力角,ねじれ角,歯幅など)を有する被加工歯車が、歯車測定器50により測定され、この測定された歯車の測定歯形形状(図3の(B)参照)を示す測定歯形形状データDmが、パソコン10に入力される(ステップS1)。
【0040】
そうするとパソコン10では、次のような(1)〜(4)の演算処理をする。
(1)目標歯形形状データDoと測定歯形形状データDmとの偏差(Do−Dm)である歯形形状誤差データΔDを演算する。この歯形形状誤差データΔDは、目標歯形形状と測定歯形形状との誤差である歯形形状誤差(図3の(C)参照)を示すものとなる(ステップS2)。
(2)更に、補正演算用データベースDB1から、歯形形状誤差補正用の補正係数α及び噛み合わせ位置補正用の補正係数βを取り込む。例えば、刃付け回数が1回目であれば補正係数α11,β11が、刃付け回数が2回目であれば補正係数α12,β12が、同様に、刃付け回数がm回目であれば補正係数α1m,β1mを取り込む(ステップS3)。
ここでは、第1回目の刃付けであるとして、補正係数α11,β11を取り込むとして説明を続ける。
【0041】
(3)歯形形状誤差データΔDと目標歯形形状データDと補正係数α11,β11を基に、予め決めた演算式に従い演算して狙い歯形形状データDccを求める(ステップS4)。
例えば、Dcc=Do+α11・ΔD+β11という演算をして、狙い歯形形状データDccを求める。
【0042】
(4)狙い歯形形状データDccをデータ変換演算して、シェービングカッタ歯形形状データdsを演算する(ステップS5)。
演算されたシェービングカッタ歯形形状データdsで表されるシェービングカッタの狙い歯形形状は、例えば図3の(D)において実線で示すものとなる。
図3の(D)において点線で示すものは、図3の(A)に示す歯車の目標歯形形状に対応したシェービングカッタの歯形形状である。結局、図3の(D)において点線で示すシェービングカッタの歯形形状を修正して、図3の(D)において実線で示すシェービングカッタの狙い歯形形状にしている。
なお、図3の(E)は、歯車の狙い歯形形状を示す。図3の(E)に示す歯車の狙い歯形形状は、図3の(D)において実線で示すシェービングカッタの狙い歯形形状を転写したものとなっている。
【0043】
このようにしてパソコン10が、シェービングカッタ歯形形状データdsを演算して出力したら、NC装置20は、シェービングカッタ歯形形状データdsで特定されるシェービングカッタの歯形形状を砥石に対して転写した砥石面形状となるように、シェービングカッタ歯形研削盤30に備えられたドレッシング装置を制御することにより、シェービングカッタ歯形研削盤30に備えた砥石をドレッシングする。
【0044】
シェービングカッタ歯形研削盤30では、上述したドレッシングによりシェービングカッタ歯形形状データdsで特定されたシェービングカッタの歯形形状が転写された砥石面形状が形成された砥石によりシェービングカッタを研削することにより、砥石の形状がシェービングカッタに転写される。
このシェービングカッタを用いて歯車シェービング盤40にて被加工歯車をシェービング加工することにより、刃付けをしてシェービングカッタの外径及び歯厚が研削に相当する分だけ小さくなったとしても、シェービング加工後の歯車の歯形形状が、目標とする歯形形状になる。
【0045】
このように、本実施例では測定歯形形状データDmと目標歯形形状データDoをパソコン10に入力するだけで、自動的に最適なシェービングカッタ形状データdsが求められる。
よって刃付けをしてシェービングカッタの外径及び歯厚が研削に相当する分だけ小さくなったとしても、パソコン10により求めたシェービングカッタ形状データdsで特定されるシェービングカッタの歯形形状を転写した砥石面形状となるように、砥石の砥石面のドレッシングをすれば、歯車シェービング盤40によりシェービング加工して得た被加工歯車の歯形形状が目標形状となる。
【0046】
刃付けしようとするシェービングカッタが第2〜第mのいずれかのカッタ諸元(モジュール,歯数,圧力角,ねじれ角,歯幅など)である場合には、第2〜第mの歯車諸元(モジュール,歯数,圧力角,ねじれ角,歯幅など)の中から対応する被加工歯車の目標歯形形状(図3の(A)参照)を示す目標歯形形状データ(Do)がパソコン10に入力される。
シェービング加工後の歯車諸元が第2〜第mのいずれかの歯車諸元(モジュール,歯数,圧力角,ねじれ角,歯幅など)を有する被加工歯車が、歯車測定器50により測定され、このとき測定された歯車の測定歯形形状(図3の(B)参照)を示す測定歯形形状データDmが、パソコン10に入力される。
【0047】
以降は上述したのと同様な演算処理が行われ、パソコン10により、シェービングカッタ歯形形状データdsが演算され、NC装置20は、シェービングカッタ歯形形状データdsで特定されるシェービングカッタの歯形形状を砥石に対して転写した砥石面形状となるように、シェービングカッタ歯形研削盤30に備えられたドレッシング装置を制御することによりシェービングカッタ歯形研削盤30に備えた砥石をドレッシングする。
【0048】
シェービングカッタ歯形研削盤30では、上述したようにして砥石面形状が形成された砥石の形状がシェービングカッタに転写される。
このシェービングカッタを用いて歯車シェービング盤40にて被加工歯車をシェービング加工することにより、刃付けをしてシェービングカッタの外径及び歯厚が研削に相当する分だけ小さくなったとしても、シェービング加工後の歯車の歯形形状が、目標とする歯車形状になる。
【0049】
このように、シェービングカッタが第2〜第mのいずれかのカッタ諸元(モジュール,歯数,圧力角,ねじれ角,歯幅など)になっているとき、即ち、歯車諸元が第2〜第mのいずれかの歯車諸元(モジュール,歯数,圧力角,ねじれ角,歯幅など)になっているときであっても、測定歯形形状データDmと目標歯形形状データDoをパソコン10に入力するだけで、自動的に最適なシェービングカッタ形状データdsが求められる。
よって刃付けをしてシェービングカッタの外径及び歯厚が研削に相当する分だけ小さくなったとしても、パソコン10により求めたシェービングカッタ形状データdsで特定されるシェービングカッタの歯形形状を砥石に転写した砥石面形状となるように、砥石の砥石面のドレッシングをすれば、歯車シェービング盤40によりシェービング加工して得た被加工歯車の歯形形状が目標形状となる。
【0050】
なお上記実施例では、補正係数α,βは、熟練した作業者が設定した補正係数を採取しデータ化したものであるが、これに限らず、シェービングカッタの外径や歯厚を測定し、測定したシェービングカッタの外径や歯厚に基づいて補正係数α,βを決定するようにしてもよい。
【実施例2】
【0051】
実施例2では、実施例1と同様に、パソコン10には、シェービングカッタのカッタ諸元に応じた補正演算用データベースDB1〜DBmが予め記憶されている。
更に実施例2では、データベースに記憶されていないカッタ諸元(例えば第m+1のカッタ諸元)を有するシェービングカッタを刃付けする場合に、この新カッタ諸元(例えば第m+1のカッタ諸元)に対応する補正演算用データベース(例えばデータベースDm+1)を、学習制御により演算して求める演算機能を有している。
例えばバックプロパゲーション(Backpropagation:誤差逆伝播法)による学習技術を用いて、補正演算用データベースDB1〜DBmを基に演算して、新カッタ諸元m+1に対応する補正係数を求める。
このようにして補正係数を求めた後、刃付け、シェービング加工、被加工歯車の測定をして、良好なシェービング加工ができることを確認したら、この補正係数を登録し、新たなカッタ諸元(例えば第m+1のカッタ諸元)に対応する補正演算用データベース(例えばデータベースDm+1)に登録することで、次回からこの補正係数が実施例1のように使用することができる。
【0052】
したがって実施例2では新カッタ諸元となっているシェービングカッタを用いる場合であっても、刃付けに伴いシェービングカッタの外径及び歯厚が研削に相当する分だけ小さくなることに影響を受けることなく、最適なシェービング加工ができるシェービングカッタの刃付けをすることができる。
【符号の説明】
【0053】
10 パソコン
20 NC装置
30 シェービングカッタ歯形研削盤
40 歯車シェービング盤
50 歯車測定器
Do 目標歯形形状データ
Dm 測定歯形形状データ
ds シェービングカッタ歯形形状データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥石でシェービングカッタを研削することによりこのシェービングカッタに刃付けをする一方、ドレッサ装置により前記砥石の砥石面をドレッシングすることにより前記砥石の砥石面形状を形成するシェービングカッタ歯形研削盤(30)に対する歯形管理システムであって、
シェービングカッタを用いてシェービング加工された歯車を測定して得た測定歯形形状を示す測定歯形形状データ(Dm)と歯車の目標歯形形状を示す目標歯形形状データ(Do)との偏差である歯形形状誤差データ(ΔD)を求める歯形形状誤差演算機能と、補正係数を含む予め決めた演算式に前記目標歯形形状データ(Do)と前記歯形形状誤差データ(ΔD)を適用することにより狙い歯形形状データ(Dcc)を求める狙い歯形形状演算機能と、前記狙い歯形形状データ(Dcc)で特定される歯車の歯形形状を転写した歯形形状となっているシェービングカッタの歯形形状を示すシェービングカッタ歯形形状データ(ds)を求めるシェービングカッタ歯形形状演算機能を有する演算部(10)と、
前記シェービングカッタ歯形形状データ(ds)で特定されるシェービングカッタの歯形形状を転写した砥石面形状となるように、前記ドレッサ装置による前記砥石に対するドレッシングを制御する制御手段(20)とを有し、
前記演算部(10)では、
刃付けに伴い前記シェービングカッタの外径及び歯厚が小さくなることを考慮して前記歯形形状誤差データ(ΔD)を調整する歯形形状誤差補正用の補正係数(α)と、刃付けに伴い前記シェービングカッタの外径及び歯厚が小さくなることを考慮してシェービングカッタと歯車との噛み合わせ位置を調整する噛み合わせ位置補正用の補正係数(β)とが、刃付け回数毎に設定されているデータベースが、シェービングカッタのカッタ諸元毎に設定されており、
前記狙い歯形形状データ(Dcc)を求めるときには、前記シェービングカッタ歯形研削盤(30)にて刃付けするシェービングカッタのカッタ諸元に対応したカッタ諸元のデータベースの中から、前記シェービングカッタの刃付け回数に応じた補正係数(α)及び補正係数(β)を取り込み、取り込んだ補正係数(α)及び補正係数(β)を用いて演算をすることを特徴とするシェービングカッタ歯形研削盤の歯形管理システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記演算部(10)では、
目標歯形形状データ(Do)と、歯形形状誤差データ(ΔD)と、取り込んだ補正係数(α)及び補正係数(β)を下式に適用して、狙い歯形形状データ(Dcc)を求めることを特徴とするシェービングカッタ歯形研削盤の歯形管理システム。
Dcc=Do+α・ΔD+β
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記演算部(10)は、
前記データベースに設定されているカッタ諸元ではない新たなカッタ諸元となっているシェービングカッタに対しては、
既に設定されているカッタ諸元の各データベースを基に学習演算をして、新たなカッタ諸元用のデータベースを求めて設定することを特徴とするシェービングカッタ歯形研削盤の歯形管理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−148022(P2011−148022A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9667(P2010−9667)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】