説明

シクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンの製造方法

【課題】再現性よく、安定的に、シクロアルカンを良好な転化率で酸化して、シクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを良好な選択率で製造しうる方法を提供すること。
【解決手段】メソポーラスシリカの存在下に、シクロアルカンを酸素で酸化してシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを製造する方法であって、(1)前記メソポーラスシリカは、少なくとも1種の遷移金属を含有し、(2)前記メソポーラスシリカの細孔分布において、2〜50nmの細孔径を有するメソポーラスシリカ粒子の合計細孔容積に対する3〜50nmの細孔径を有するメソポーラスシリカ粒子の合計細孔容積の比率が50%以上であり、かつ(3)前記メソポーラスシリカは、有機ケイ素化合物で接触処理されていることを特徴とするシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロアルカンを酸素で酸化して、シクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メソポーラスシリカの存在下にシクロアルカンを酸素で酸化してシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを製造する方法において、該メソポーラスシリカとして、例えば、金及びコバルトを含有するメソポーラスシリカ(非特許文献1)や、金を含有するメソポーラスシリカ(非特許文献2)、コバルトを含有するメソポーラスシリカ(非特許文献3)を用いる方法が知られている。
【非特許文献1】Yingyong・Huagong(Applied Chemical Industry)、(中国)、2006年、第35巻、p.161−163
【非特許文献2】Gongye・Cuihua(INDUSTRIAL CATALYSIS)、(中国)2006年、第14巻、p.56−60
【非特許文献3】コリアン・ジャーナル・オブ・ケミカル・エンジニアリング(Korean Journal of Chemical Engineering)、(韓国)、1998年、第15巻、p.510−515
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の方法では、シクロアルカンの転化率やシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンの選択率の点で、必ずしも充分ではないことがあった。そこで、本発明の目的は、再現性よく、安定的に、シクロアルカンを良好な転化率で酸化して、シクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを良好な選択率で製造しうる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
メソポーラスシリカは、その調製法により様々な細孔径を有し、それに応じた細孔分布を示すところ、所定値以上の比較的大きな細孔径を有するメソポーラス粒子を所定割合以上含むメソポーラスシリカに、少なくとも1種の遷移金属を含有させ、かつ有機ケイ素化合物で接触処理して得られるものを前記酸化反応に存在させ、該反応を行うことにより、上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明は、メソポーラスシリカの存在下に、シクロアルカンを酸素で酸化してシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを製造する方法であって、
(1)前記メソポーラスシリカは、少なくとも1種の遷移金属を含有し、
(2)前記メソポーラスシリカの細孔分布において、2〜50nmの細孔径を有するメソポーラスシリカ粒子の合計細孔容積に対する3〜50nmの細孔径を有するメソポーラスシリカ粒子の合計細孔容積の比率が50%以上であり、かつ
(3)前記メソポーラスシリカは、有機ケイ素化合物で接触処理されていること
を特徴とするシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、再現性よく、安定的に、シクロアルカンを良好な転化率で酸化して、シクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを良好な選択率で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明ではシクロアルカンを原料に用い、これを所定のメソポーラスシリカの存在下に酸素(分子状酸素)で酸化して、対応するシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを製造する。
【0008】
原料のシクロアルカンとしては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、シクロオクタデカンのような、単環式で環上に置換基を有しないシクロアルカンの他、デカリンやアダマンタンのような多環式のシクロアルカン、メチルシクロペンタンやメチルシクロヘキサンのような環上に置換基を有するシクロアルカン等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0009】
酸素源には通常、酸素含有ガスが用いられる。この酸素含有ガスは、例えば、空気であってもよいし、純酸素であってもよいし、空気又は純酸素を、窒素、アルゴン、ヘリウムのような不活性ガスで希釈したものであってもよい。また、空気に純酸素を添加した酸素富化空気を使用することもできる。
【0010】
本発明におけるメソポーラスシリカは、(1)少なくとも1種の遷移金属を含有し、(2)その細孔分布において、2〜50nmの細孔径を有するメソポーラスシリカ粒子の合計細孔容積に対する3〜50nmの細孔径を有するメソポーラスシリカ粒子の合計細孔容積の比率が50%以上であり、かつ(3)有機ケイ素化合物で接触処理されているものである。ここでいう遷移金属は、原料であるシクロアルカンを酸化させうるものであればよいが、好ましくは、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ルテニウム、パラジウムが挙げられる。中でもコバルトがより好ましい。これら遷移金属は、必要に応じて2種類以上を使用してもよい。遷移金属の含有率は、メソポーラスシリカに対する重量比で表して、通常0.01〜20%であり、好ましくは0.05〜10%であり、さらに好ましくは0.1〜5%である。また、上記金属は、メソポーラス構造を構成するシリカ骨格中に組み込まれていてもよく、上記細孔中に組み込まれていてもよく、シリカ骨格表面に担持されていてもよい。
【0011】
本発明におけるメソポーラスシリカは、その細孔分布において、2〜50nmの細孔径を有するメソポーラスシリカ粒子の合計細孔容積に対する3〜50nmの細孔径を有するメソポーラスシリカ粒子の合計細孔容積の比率が50%以上である。このように、細孔径の比較的大きい粒子が多く存在するメソポーラスシリカを採用することにより、再現性よく、安定的に、シクロアルカンを良好な転化率で酸化して、シクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを良好な選択率で製造することができる。前記比率は、70%以上であるのが好ましく、85%以上であるのがより好ましい。
【0012】
このようなメソポーラスシリカとしては、例えば、水熱合成の際に構造規定剤としてジェミニ界面活性剤を用いることにより調製されるSBA−3型、水熱合成の際に構造規定剤として長鎖アルキルアミンを用いることにより調製されるHMS型、水熱合成の際に構造規定剤としてオレイル デカオキシエチレン(Oleyl decaoxyethylene)を用いることにより調製されるMSU−X型、水熱合成の際に構造規定剤としてポリエチレンオキシドを用いることにより調製されるSBA−12型、水熱合成の際に構造規定剤としてトリブロックコポリマー(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシド共重合体)を用いることにより調製されるSBA−15型やSBA−16型などが挙げられる。中でも、SBA−12型、SBA−15型、SBA−16型が好ましく、SBA−15型がより好ましい。
【0013】
上記メソポーラスシリカの細孔分布は、液体窒素温度(77K)での容量法吸着等温線のBarrett−Joyner−Halenda(BJH)解析から細孔径と細孔容積を算出して導出することができる。そして、この細孔分布から2〜50nmの細孔径を有するメソポーラスシリカ粒子の合計細孔容積に対する3〜50nmの細孔径を有するメソポーラスシリカ粒子の合計細孔容積の比率を算出することができる。
【0014】
本発明におけるメソポーラスシリカの比表面積は、通常600〜1500m/g程度である。
【0015】
また、本発明におけるメソポーラスシリカは、有機ケイ素化合物で接触処理されているものである。この有機ケイ素化合物としては、メソポーラスシリカと反応してその表面に結合可能なものであるのが好ましく、典型的には次の式(I)で示すことができる。
【0016】
Si(R1)x(R2)4-x (1)
【0017】
(式中、R1はアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、又はトリアルキルシリルアミノ基を表し、R2はアルコキシ基、アルキル基、アリル基、アリール基又はアラルキル基を表し、xは1〜3の数を表す。)
【0018】
式(1)で示される有機ケイ素化合物としては、中でもトリアルコキシアルキルシランや、テトラアルコキシシランがより好ましく用いられる。
【0019】
次に、本発明におけるメソポーラスシリカの調製法について説明する。本発明では、テトラアルコキシシラン、所定の構造規定剤及び水を含む混合物を水熱合成反応に付して生じた結晶(メソポーラス構造を有するシリカ)を焼成した後、前記有機ケイ素化合物で接触処理することにより得ることができる。本発明では、遷移金属を含む化合物(以下、金属化合物ということがある。)をメソポーラスシリカに含有させるべく、該金属化合物を、テトラアルコキシシラン、所定の構造規定剤及び水と共に混合して、該混合物を水熱合成反応に付してもよく、上記結晶に担持させてもよく、上記結晶を焼成した後これに担持させてもよい。中でも、テトラアルコキシシラン、所定の構造規定剤及び水を含む混合物を水熱合成反応に付して生じた結晶を焼成した後、遷移金属を含む化合物を担持させ、次いで有機ケイ素化合物で接触処理する方法が好ましい。
【0020】
前記水熱合成反応に付す混合物には、テトラアルコキシシラン、所定の構造規定剤及び水が含まれる。ここで、メソポーラスシリカの細孔分布において、2〜50nmの細孔径を有するメソポーラスシリカ粒子の合計細孔容積に対する3〜50nmの細孔径を有するメソポーラスシリカ粒子の合計細孔容積の比率が50%以上となるように、所定の構造規定剤が適宜選択される。例えば、SAB−3型のメソポーラスシリカを調製する場合には、キャタリシス・コミュニケーションズ(Catalysis Communications)、(オランダ)、2008年、第9巻、第13号、p.2287−2290に記載されているように、構造規定剤としてジェミニ界面活性剤〔C2n+1(CH(CH(CH2m+1 。式中、n、S、mは整数を表す。〕が選択され、HMS型のメソポーラスシリカを調製する場合には、アプライド・キャタリシス・A:ジェネラル(Applied Catalysis A: General)、(オランダ)、2008年、第347巻、p.133−141に記載されているように、構造規定剤として長鎖アルキルアミン〔C2n+1NH 。式中、nは整数を表す。〕が選択され、MSU−X型のメソポーラスシリカを調製する場合には、ミクロポーラス・アンド・メソポーラス・マテリアルズ(Microporous and Mesoporous Materials)、(オランダ)、2008年、第109巻、p.199−209に記載されているように、構造規定剤としてオレイル デカオキシエチレン(Oleyl decaoxyethylene)が選択され、SBA−12型のメソポーラスシリカを調製する場合には、ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー・B(Journal of Physical Chemistry B)、(米国)アメリカ、2002年、第106巻、p.3118−3123に記載されているように、構造規定剤としてポリエチレンオキシドが選択され、SBA−15型のメソポーラスシリカを調製する場合には、サイエンス(Science)、(米国)、第279巻、p.548−552や、ミクロポーラス・アンド・メソポーラス・マテリアルズ(Microporous and Mesoporous Materials)、(オランダ)、2006年、第91巻、p.156に記載されているように、構造規定剤としてトリブロックコポリマー(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシド共重合体)が選択され、SBA−16型のメソポーラスシリカを調製する場合には、ミクロポーラス・アンド・メソポーラス・マテリアルズ(Microporous and Mesoporous Materials)、(オランダ)、2007年、第105巻、p.15−23に記載されているように、構造規定剤としてトリブロックコポリマー(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシド共重合体)が選択される。
【0021】
上述した構造規定剤において、中でも、ポリエチレンオキシドやトリブロックコポリマー(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシド共重合体)のようなポリアルキレンオキシドが好ましい。ここでいうポリアルキレンオキシドの分子量は通常500〜15000程度である。また、上述したトリブロックコポリマーの重合体単位は、重量比でポリエチレンオキシド:ポリプロピレンオキシド:ポリエチレンオキシド=5:70:5〜110:70:110程度である。
【0022】
構造規定剤の使用量は、テトラアルコキシシラン1モルに対し、通常0.1〜1.0モル、好ましくは0.2〜0.5モルである。また水の使用量は、テトラアルコキシシラン1重量部に対し、通常5〜30重量部、好ましくは10〜15重量部である。また、必要に応じて、塩酸(塩化水素の水溶液)、硫酸の如き無機酸、酢酸、クエン酸の如き有機酸などの酸類や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの塩基類を前記混合物に加えて水熱合成反応を行ってもよい。
【0023】
水熱合成反応の反応温度は、通常20〜200℃、好ましくは20〜150℃である。また、反応時間は、通常0.1〜400時間、好ましくは1〜200時間である。
【0024】
メソポーラスシリカに遷移金属を含有させる方法としては、例えば、上述した水熱合成反応に付す混合物に、上記金属のハロゲン化物、硝酸塩、カルボン酸塩、オキソ酸塩の如き金属化合物を添加して水熱合成反応を行う方法や、水熱合成反応により得られる結晶に、上記金属化合物の溶液を含浸させる方法、前記結晶を、上記金属化合物の溶液に浸漬して、該金属化合物を該結晶に吸着させたり、該金属化合物の金属カチオンを該結晶のカチオンとイオン交換したりする方法等が挙げられる。また、前記結晶を焼成して得られる焼成体に、上述した金属化合物の含浸や浸漬を行ってもよい。なお、該金属化合物の使用量は、上記金属の含有率となるように適宜調整される。
【0025】
上述した焼成は、水熱合成反応により生じる結晶に対して行われるが、焼成を行う前にろ過、乾燥を行ってもよい。また、該焼成の焼成温度は通常500〜600℃程度であり、焼成時間は通常1〜20時間である。
【0026】
本発明におけるメソポーラスシリカは、上述したとおり、有機ケイ素化合物で接触処理されたものである。該接触処理方法としては、例えば、有機ケイ素化合物を含む液体に、上記焼成後の結晶(メソポーラス構造を有するシリカ)を浸漬する方法や、上記焼成後の結晶(メソポーラス構造を有するシリカ)に、有機ケイ素化合物を含む気体を接触させる方法等が挙げられる。
【0027】
有機ケイ素化合物の使用量は、該化合物による接触処理前のシリカ100重量部に対し、通常1〜10000重量部、好ましくは5〜2000重量部、さらに好ましくは10〜1500重量部である。
【0028】
有機ケイ素化合物による接触処理の温度は、通常0〜300℃、好ましくは30〜250℃である。また、該接触処理の時間は、通常0.1〜50時間、好ましくは1〜20時間である。
【0029】
かくして、所望のメソポーラスシリカを得ることができる。そして、このメソポーラスシリカの存在下に、シクロアルカンを酸素で酸化する。該メソポーラスシリカの使用量は、シクロアルカン100重量部に対し、通常0.01〜50重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0030】
反応温度は通常0〜200℃、好ましくは50〜170℃であり、反応圧力は通常0.01〜10MPa、好ましくは0.1〜2MPaである。反応溶媒は必要に応じて用いることができ、例えば、アセトニトリルやベンゾニトリルのようなニトリル溶媒、酢酸やプロピオン酸のようなカルボン酸溶媒等を用いることができる。
【0031】
酸化反応後の後処理操作については、特に限定されないが、例えば、反応混合物を濾過して触媒を分離した後、水洗し、次いで蒸留する方法等が挙げられる。反応混合物中に原料のシクロアルカンに対応するシクロアルキルヒドロペルオキシドが含まれる場合、アルカリ処理や還元処理等により、目的とするシクロアルカノールやシクロアルカノンに変換することができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。尚、反応液中のシクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール及びシクロヘキシルヒドロペルオキシドの分析はガスクロマトグラフィーにより行い、この分析結果から、シクロヘキサンの転化率、並びにシクロヘキサノン、シクロヘキサノール及びシクロヘキシルヒドロペルオキシドの各選択率を算出した。
【0033】
また、本実施例中、メソポーラスシリカの細孔分布は、液体窒素温度(77K)での容量法吸着等温線のBJH解析より求めた。その測定方法は以下のとおりである。
【0034】
ガラス製試料管(容積4ml、管内径6mm)を日本ベル社製BELPREP−vacIIにセットして真空排気した後、風袋計量し、続いて粉体試料約0.05gを試料管に充填し、再度BELPREP−vacIIにて試料管を150℃、3時間真空前処理した後、再度試料管を計量し、風袋重量を差し引くことで真の粉体試料量を求めた。次に真空前処理後の試料管を日本ベル社製BELPREP−miniにセットし、各試料管に固有の容積(死容積)を測定し、続いて窒素の飽和蒸気圧を測定した後、吸着平衡圧の測定を行った。これらの操作を吸着平衡圧力と初圧の比である相対圧が0.99まで繰り返し、吸着等温線を得た。細孔分布は、シリンダー状細孔を仮定した上で窒素ガスの毛管凝縮を利用するBarrett−Joyner−Halenda(BJH)の理論から細孔径と細孔容積を算出して導出した。
【0035】
製造例1
〔SBA−15型メソポーラスシリカの製造〕
サイエンス(Science)、(米国)、第279巻、p.548−552に記載された方法に基づいて、構造規定剤としてトリブロックコポリマー(プルロニックP123)を用い、次のとおりSBA−15型のメソポーラスシリカを合成した。プルロニックP123(アルドリッチ社製)4gを水30gに入れ分散させた後、該分散液を攪拌しながらこれに7重量%の塩酸(塩化水素の水溶液)120g、硝酸コバルト0.3g及びクエン酸0.4gを添加した。次に、テトラエトキシシラン(オルトケイ酸エチル、和光純薬株式会社製)8.5gを添加し、60℃で41時間攪拌した後、100℃で2日間水熱合成した。得られた混合物をろ過し、ろ残を水で洗浄した後、60℃で一晩乾燥した。得られた乾燥物を、空気流通下、500℃で7時間焼成した。焼成して得られた粉体(SBA−15型メソポーラスシリカ)について、上述した方法により分析したところ、2〜50nmの細孔径を有するメソポーラスシリカ粒子の合計細孔容積に対する3〜50nmの細孔径を有するメソポーラスシリカ粒子の合計細孔容積の比率は、85%であった。
【0036】
製造例2
〔SBA−15型メソポーラスシリカへのコバルト担持〕
製造例1で得られた粉体0.2g、水25.2g、7.5重量%の硝酸アンモニウム水溶液1.11g、25重量%のアンモニア水1.7g、酢酸コバルト四水和物0.042gを混合し、室温で2時間した。得られた混合物をろ過し、ろ残を水で洗浄した後、110℃で12時間乾燥して、コバルトを含有するSBA−15型メソポーラスシリカを得た。
【0037】
製造例3
〔コバルトを含有するSBA−15型メソポーラスシリカのトリメトキシプロピルシラン接触処理〕
製造例2で得られたコバルトを含有するSBA−15型メソポーラスシリカ0.2g及びトリメトキシプロピルシラン(東京化成工業株式会社製)2.0gをナスフラスコに入れ、窒素雰囲気下、90℃で7.5時間攪拌した。得られた混合物を室温まで冷却した後、エタノールを加えて攪拌し、次いでろ過した。ろ残をエタノールで洗浄した後、室温で一晩乾燥して、コバルトを含有するSBA−15型メソポーラスシリカのトリメトキシプロピルシラン接触処理品(以下、メソポーラスシリカAということがある。)を得た。
【0038】
製造例4
〔コバルトを含有するMCM−41型メソポーラスシリカの製造〕
アプライド・キャタリシス・A:ジェネラル(Applied Catalysis A: General)、(オランダ)、2004年、第272巻、p.257−266に記載の方法を参考にして、構造規定剤としてヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドを用い、次のとおりコバルトを含有するMCM−41型メソポーラスシリカを合成した。ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(和光純薬株式会社製)17.6g、水327.1g、エタノール(和光純薬株式会社製)106.9g、テトラエトキシシラン(オルトケイ酸エチル、和光純薬株式会社製)33.8g、25重量%のアンモニア水(和光純薬株式会社製)119.3g、及び、酢酸コバルト(II)四水和物(和光純薬株式会社製)0.042gを1Lビーカーに入れ、室温で2時間攪拌した後、ろ過し、ろ残を水で洗浄した後、100℃で12時間乾燥した。その後、空気流通下、550℃で7時間焼成した。焼成して得られた粉体(コバルトを含有するMCM−41型メソポーラスシリカ)について、上述した方法により分析したところ、2〜50nmの細孔径を有するメソポーラスシリカ粒子の合計細孔容積に対する3〜50nmの細孔径を有するメソポーラスシリカ粒子の合計細孔容積の比率は、11%であった。
【0039】
製造例5
〔コバルトを含有するMCM−41型メソポーラスシリカのトリメトキシプロピルシラン接触処理〕
製造例4で得られたコバルトを含有するMCM−41型メソポーラスシリカ0.3g及びトリメトキシプロピルシラン(東京化成工業株式会社製)3.0gをフラスコに入れ、窒素雰囲気下、90℃で7.5時間攪拌した。得られた混合物を室温まで冷却した後、エタノールを加えて攪拌し、次いでろ過した。ろ残をエタノールで洗浄した後、室温で一晩乾燥して、コバルトを含有するMCM−41型メソポーラスシリカのトリメトキシプロピルシラン接触処理品(以下、メソポーラスシリカBということがある。)を得た。
【0040】
実施例1
1Lオートクレーブに、シクロヘキサン300g(3.6モル)及び製造例3で得られたメソポーラスシリカA0.2gを入れ、室温にて系内を窒素で0.70MPaまで昇圧した後、140℃に昇温し、次いで、空気を200ml/minで供給し、3.5時間反応を行った。
【0041】
反応開始から1.5時間の時点で、シクロヘキサンの転化率は4.2%であり、シクロヘキサノンの選択率は35.3%、シクロヘキサノールの選択率は48.6%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は7.2%であった(合計選択率91.1%)。反応開始から2.5時間の時点で、シクロヘキサンの転化率は6.9%であり、シクロヘキサノンの選択率は38.5%、シクロヘキサノールの選択率は45.5%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は5.1%であった(合計選択率89.1%)。また、反応開始から3.5時間の時点(終了時)で、シクロヘキサンの転化率は9.4%であり、シクロヘキサノンの選択率は41.3%、シクロヘキサノールの選択率は42.3%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は3.5%であった(合計選択率87.1%)。
【0042】
比較例1
製造例3で得られたメソポーラスシリカAに代えて、製造例2で得られたコバルトを含有するSBA−15型メソポーラスシリカ(有機ケイ素化合物による接触処理未実施)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0043】
反応開始から1.5時間の時点で、シクロヘキサンの転化率は3.7%であり、シクロヘキサノンの選択率は31.3%、シクロヘキサノールの選択率は51.1%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は6.3%であった(合計選択率88.7%)。反応開始から2.5時間の時点で、シクロヘキサンの転化率は6.5%であり、シクロヘキサノンの選択率は36.0%、シクロヘキサノールの選択率は46.3%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は5.1%であった(合計選択率87.4%)。また、反応開始から3.5時間の時点(終了時)で、シクロヘキサンの転化率は8.8%であり、シクロヘキサノンの選択率は40.1%、シクロヘキサノールの選択率は42.8%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は3.3%であった(合計選択率86.2%)。
【0044】
比較例2
製造例3で得られたメソポーラスシリカAに代えて、製造例5で得られたメソポーラスシリカBを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0045】
反応開始から1.5時間の時点で、シクロヘキサンの転化率は4.2%であり、シクロヘキサノンの選択率は30.4%、シクロヘキサノールの選択率は53.3%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は4.8%であった(合計選択率88.5%)。反応開始から2.5時間の時点で、シクロヘキサンの転化率は7.0%であり、シクロヘキサノンの選択率は36.0%、シクロヘキサノールの選択率は47.6%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は2.9%であった(合計選択率86.5%)。また、反応開始から3.5時間の時点(終了時)で、シクロヘキサンの転化率は9.6%であり、シクロヘキサノンの選択率は40.2%、シクロヘキサノールの選択率は42.0%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は2.2%であった(合計選択率84.4%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソポーラスシリカの存在下に、シクロアルカンを酸素で酸化してシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを製造する方法であって、
(1)前記メソポーラスシリカは、少なくとも1種の遷移金属を含有し、
(2)前記メソポーラスシリカの細孔分布において、2〜50nmの細孔径を有するメソポーラスシリカ粒子の合計細孔容積に対する3〜50nmの細孔径を有するメソポーラスシリカ粒子の合計細孔容積の比率が50%以上であり、かつ
(3)前記メソポーラスシリカは、有機ケイ素化合物で接触処理されていること
を特徴とするシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンの製造方法。
【請求項2】
前記メソポーラスシリカが、SBA−12型、SBA−15型及びSBA−16型からなる群より選ばれる少なくとも1種のメソポーラスシリカである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
遷移金属が、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ルテニウム及びパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
遷移金属がコバルトである請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記メソポーラスシリカが、テトラアルコキシシラン、ポリアルキレンオキシド及び水を含む混合物を水熱合成反応に付して生じた結晶を焼成した後、前記遷移金属を含む化合物を担持させ、次いで有機ケイ素化合物で接触処理することにより得られるメソポーラスシリカである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
有機ケイ素化合物が次の式(I)
Si(R1)x(R2)4-x (I)
(式中、R1はアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、又はトリアルキルシリルアミノ基を表し、R2はアルコキシ基、アルキル基、アリル基、アリール基又はアラルキル基を表し、xは1〜3の数を表す。)
で示される請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
有機ケイ素化合物がトリアルコキシアルキルシラン又はテトラアルコキシシランである請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
シクロアルカンがシクロヘキサンである請求項1〜7のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2010−95506(P2010−95506A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318118(P2008−318118)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】