説明

シクロデキストリンを基材とした物質、組成物及びこれらと関連する用途

本発明は、薬剤及び他の活性剤、例えば核酸を運ぶためのシクロデキストリン変性物質を開示する。また、制御された条件下でこのような活性剤を放出させるシクロデキストリン変性物質の組成物も開示する。また、本発明は、薬剤をその作用部位に送達させるために生体認識分子にカップリングされたシクロデキストリン変性重合体キャリアーの組成物も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロデキストリンを基材として物質、組成物及びこれらと関連する用途に関する。
【背景技術】
【0002】
“糖重合体”として知られる、糖部分を側基として有する重合体(Bioconj.Chem.、3:256(1992))は、近年、主として、生物学的に重要な炭水化物分子の多価表示体のための骨格として多くの興味を引き付けてきた。これらの糖重合体は、ウイルス−宿主細胞の結合及び白血球−内皮細胞の癒着の有力な阻害剤として使用された(FEBS、272:209(1990);Can.J.Microbiol.、37:233(1991);J.Am.Chem.Soc.、119:3161(1997))。また、糖重合体は、目標の薬剤及び遺伝子を送達するためのビヒクルとして(J.Hepatology、21:806(1994))及び細胞癒着のための人工基材として(J.Cell Biol.、115:485(1991))研究された。生体適合性の移植材料としての糖重合体の好適性は、比較的研究されていず、例えば、Microbiol.Phys.、195:3597(1994)に記載された数例に限られている。
【0003】
生体適合性の移植材料として使用される重合体にとっては、それらの性質、特に表面組成が非常に重要である。そのような試みとして、生体適合性成分を本体組織及びそれらの表面に導入することが挙げられる。例えば、J.Colloid Interface Sci.、149:84(1992)に記載された研究では、共有結合した中性多糖類と共に本体又は表面に側基のグルコース単位を有する共重合体が血小板癒着の減少及び蛋白質の吸着を表わすことが示された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、容易に製造される生体適合性重合体物質は、薬剤の送達及びその他の生医学的用途のために有用であろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、包接ホスト(例えば、シクロデキストリンのような)を持つ重合体を、包接ゲストとしてこの包接ホストと包接錯体を形成する少なくとも2個の官能基を持つリンカー分子と架橋させることによって形成される物質を提供する。シクロデキストリンが包接ホストである重合体に対して、包接ゲストの例として、ナフトール、アダマンタン、コレステリン及びこれらの誘導体が含まれる。ある具体例では、重合体が包接ゲストを持ち、シクロデキストリンのような包接ホストを持つリンカー分子が重合体を架橋させるのに使用される。上記の説明に従う物質は、治療剤、例えば蛋白質、核酸及び医薬品を送達するために使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
I.概説
シクロデキストリンは、バスケット様の形状を持つ環構造を有する。この形状は、シクロデキストリンをして多くの種類の分子をその内部間隙に包接させる。例えば、チェジトリの“シクロデキストリン及びそれらの包接錯体”(Akademiai Klado、ブダペスト、1982)及びベンダー他の“シクロデキストリン化学”(スプリンガー・フェルラーク社、ベルリン、1978)を参照されたい。シクロデキストリンは、例えば、医薬品、ペスチサイド、除草剤及び戦争用薬品を含めて一連の有機分子と包接錯体を形成することができる。テンジャルラ他、J.Pharm.Sci.、87:425−429(1998);ジュグル他、Pharm.Dev.Technol.、3:43−53(1998);アルベルズ他、Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.、12:311−337(1995)を参照されたい。
【0007】
以前、線状のシクロデキストリン基材重合体(CDP)がインビトロで(多くの異なった細胞系統で)及びインビボで(ゴンザレス他、1999、Bioconjugate Chem.、10:1068−1074及びワング他、2001、Bioconjugate Chem.、12(2):280−290)共に低い毒性を有することが示された。本発明は、少なくとも一部は、シクロデキストリン部分を持ち又は含有する重合体であって、しかも、図1に示すように、線状ストランドをシクロデキストリンと包接錯体を形成する部分を2個以上持つリンカー分子と架橋させることによって形成される重合体を基材とした生体適合性の物質に関する。更に、当業者ならば、この概念が、シクロデキストリン以外の包接ホストをこの包接ホストと包接錯体を形成する包接ゲストを持つリンカー分子と共に持ち又は含有する重合体まで、或いは包接ゲストをこの包接ゲストと包接錯体を形成する包接ホストを持ち又は含有するリンカー分子と共に持つ重合体まで、当然に及び得るを認識しよう。シクロデキストリン及び関連シクロアミロース以外の包接ホストの例としては、ペルヒドロトリフェニレン(これはポリエチレンと包接錯体を形成する。)、尿素/チオ尿素(これは米国特許第4,776,984号及び同5,106,542号及び同4,170,601号に記載のように脂肪酸及び関連分子と包接錯体を形成する。)、シクロファン(例えば、米国特許第4,116,955号に記載のもの)並びに米国特許第4,841,081号、同4,367,072号及び同4,898,654号に記載のものが含まれる(これらの特許は参照の対象としてそれらの全部をここに含めるものとする。)。
【0008】
本発明のある具体例、例えば、後記の例19に記載するような例では、重合体は、包接ホストと包接ゲストの双方を持ち、従って同じ重合体連鎖上のホストとゲストの間で及び(又は)隣接重合体連鎖上のホストとゲストの間で包接錯体を形成することによってそれ自体で架橋する。架橋が達成される条件は、これらの二つのタイプの包接錯体の間のバランスに影響しよう。例えば、高希釈度で錯化を達成すれば分子内錯体の形成が有利になるが、高濃度で錯化を達成すれば、多くの場合にカテナン−及びロタキサン−型構造を含めて、分子間錯体の形成が有利になる。このような具体例では、高い度合の分子間相互作用が物質の剛性、融点及び強度を増大させる。
【0009】
本発明のためには、重合体は、重合体連鎖内にシクロデキストリンのような包接ホストを有することによって包接ホストを“組み入れる”。例えば、重合体からの包接ホストの除去は重合体連鎖の切断を要しよう。このような重合体の例は、上記した線状のシクロデキストリン基材重合体である。シクロデキストリン部分を“持つ”重合体は、包接ホストが結合する重合体連鎖を有する。例えば、包接ホストは別の重合体連鎖に付加される。本明細書に記載するようなポリエチレンイミンCD重合体は、このタイプの重合体の例である。包接ホストを“含有する”重合体は、包接ホストを“持ち”又は“組み入れ”又は持ち且つ組み入れるような重合体、或いは重合体連鎖の一部として包接ホストを共有結合したような重合体である。本発明では、包接ホストを含有する任意の重合体を使用することができる。ある具体例では、包接ホストを組み入れる重合体は、線状の(即ち、非分岐状の)重合体である。ある具体例では、例えば重合体に組み入れられ又はその上に持たれた包接ホストは、重合体全体に又はそれに沿って規則的に間隔をおいて配置される。
【0010】
生じた物質の物性は、変化する強度の包接錯体を形成する部分を選択することによって変えることができ、錯体が強いほど、生じる物質は耐久性であり且つ剛性である。同様に、2個よりも多いこのような部分を持つリンカー分子を使用すれば、架橋の度合が増大することにより物質の強度及び剛性は増大し、また重合体本体に対するリンカー分子の割合も増大する。また、物質の物性は、リンカー分子自体の融通性を変えることによって、又はシクロデキストリン重合体自体内でリンカーの融通性を変えることによって変動できる。
【0011】
更に、マトリックスのインビボでの性質は、生理学的条件下で不安定である結合をマトリックス内に使用することによって変化させることができる。例えば、重合体ストランド、架橋分子又はその両者は、生理学的条件下で不安定である結合、例えばエステル及びペプチド結合を含むことができる。これらの結合は、ある物理的環境に置いた後は、徐々に解裂し始めて、段階的分解及び構造的一体性の喪失を生じる。不安定で抵抗性の架橋分子を色々な割合で結合させ又は異なった強度を持つ異なった不安定結合を選択することによって、重合体ストランドにおける上記のような結合の頻度を変化させることによって広い範囲にわたる性質を得ることができる。例えば、ペプチド結合は、一般に、エステル結合よりも解裂に抵抗するが、後者はチオエステル結合よりも不安定ではない。
【0012】
治療剤、ウイルス、補助剤などのような化合物及び物質を、通常の生体適合性重合体において周知であるように、包接錯体を形成させることによって、又は包接錯体を形成させることなく単なる混合若しくはカプセル化によって重合体と処方することができる。
【0013】
物質の治療効能を増大させる化合物、例えば、シグナルペプチド、細胞移動を容易にさせるその他の部分、又は補助剤は、図2に示すように、包接錯体ゲストを物質の全体に抱合させ、この抱合体を架橋物質に包含させることによって架橋物質中に組み入れることができる。抱合体は、架橋過程の前に、その間に又はその後に包含させることができる。また、治療化合物も、この態様で、好ましくは、薬剤と包接ゲスト/ホストとの間の結合が例えばエステル結合のように生理学的条件下で不安定である場合に、包含させることができる。米国特許出願公開第20030008818号及び同20030017972号を参照されたい。
【0014】
II.定義
簡便にするために、明細書、実施例及び請求の範囲において使用するある種の用語を以下に集める。
【0015】
用語“補助剤”は、本明細書において使用するときは、それ自身で治療価値をほとんど又は全く有しないがしかし治療剤の有効性を向上させる化合物である。補助剤の例としては、放射線増感剤、トランスフェクション向上剤(例えば、クロロキン又はその類似体)、走化剤及び化学誘引物質,細胞癒着及び/又は細胞移動度を調節するペプチド、細胞透過化剤、多剤抵抗性及び/又は流出ポンプの阻害剤などが挙げられる。
【0016】
重合体に関連して使用するときの用語“生体適合性重合体”及び“生体適合性”は斯界において認められいる。例えば、生体適合性重合体は、ホスト(例えば、動物又は人間)に対してそれ自体毒性でないか、又は単量体若しくはオリゴマーサブ単位又は他の副生物をホスト中に有毒濃度で生成する速度で分解しない(もしも重合体が分解するならば)重合体を包含する。本発明のある具体例では、生分解は、一般には、重合体が生物中において例えばその単量体サブ単位に分解することを包含する(これは、効果的には無毒性であることが知られているかもしれない)。しかしながら、このような分解から生じる中間オリゴマー生成物は異なる毒物学的特性を有する可能性があり、又は生分解は重合体の単量体サブ単位以外の分子を生成する酸化若しくは他の生化学反応を包含することができる。従って、ある具体例では、患者への移植又は注射のようなインビボでの使用に向けられた生分解性重合体の毒性学は、1回又はそれ以上の毒性分析後に決定されることができる。すべての課題組成物が生体適合性と認められるべき100%の純度を有することは必要でない。それ故に、課題組成物は、例えばここに記載した重合体及び他の物質及び賦形剤を含めて99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、80%、75%又はそれ以下さえの生体適合性重合体を含むことができ、そしてなお生体適合性になりうる。
【0017】
重合体又は他の物質が生体適合性であるかどうかを決定するために、毒性分析を行うのが必要になるかもしれない。このような検定は斯界において周知である。このような検定の1つの例は、GT3TKB腫瘍細胞のような活癌種を用いて次の態様で行うことができる。即ち、試料を1MのNaOH中において37℃で完全分解が認められるまで分解させる。次いで、この溶液を1MのHClで中和する。約200μLの種々濃度の分解試料生成物を96ウエル組織培養皿に置き、そして人間の胃癌細胞(GT3TKB)を104/ウエル密度で播種する。分解試料生成物をGT3TKB細胞と共に48時間培養する。検定の結果は、組織−培養ウエルにおける分解試料の相対成長%対濃度としてプロットすることができる。加えて、本発明の重合体及び処方物は、それらが皮下移植部位において有意レベルの刺激又は炎症を引き起こさないことを確認するためにラットにおいて皮下移植のような周知のインビボでの試験によって評価することもできる。
【0018】
用語“生分解性”は斯界において認められており、そして使用中に分解する傾向があるここに記載のような重合体、組成物及び処方物を包含する。生分解性重合体は、典型的には、非生分解性重合体とは前者が使用中に分解されうるという点で異なる。ある具体例では、このような使用はインビボでの治療のようなインビボでの使用を包含し、そして他のある具体例ではこのような使用はインビトロでの使用を包含する。一般には、生分解性に起因する分解は、生分解性重合体が分解してその成分サブ単位になること、又はその重合体が例えば生化学プロセスによって消化してより小さい非重合体サブ単位になることを包含する。ある具体例では、一般には2種の異なるタイプの生分解を確認することができる。例えば、1つのタイプの生分解は重合体主鎖中にある結合(共有でも又は他のものでも)の開裂を包含することができる。このような生分解では、典型的には単量体及びオリゴマーが生じ、そしてより典型的にはこのような分解が重合体のサブ単位のうちの1個以上を連結する結合の開裂によって引き起こされる。これとは対称的に、他のタイプの生分解は、側鎖の内部にある又は側鎖を重合体主鎖に連結する結合(共有でも又は他のものでも)の開裂を包含することができる。例えば、重合体主鎖に側鎖として結合された治療剤又は他の化学部分は生分解によって離脱されることができる。ある具体例では、重合体の使用中に一方若しくは他方又は両方の一般的なタイプの生分解が起こりうる。
【0019】
本明細書において用語“生分解”を用いるときには、それは、両方の一般的なタイプの生分解を包含する。生分解性重合体の分解速度は、しばしば、すべての分解に対して応答性の結合の化学的同一性、このような重合体の分子量、結晶度、生物安定性及び架橋度、移植片の物理的特性(例えば、形状及び寸法)、並びに 投与の方式及び位置を含めて、様々の因子に一部分左右される。例えば、分子量が大きくなる程、結晶度が高くなり、及び(又は)生物安定性が大きくなる程、すべての生分解性重合体の生分解が一般により遅くなる。用語“生分解”は、“生物侵食性”とも称される物質及びプロセスを包含する。
【0020】
生分解性重合体がそれに結合された治療剤又は他の物質をも有するようなある具体例では、このような重合体の生分解速度は、このような物質の離脱速度によって特徴づけられることができる。このような事情下において、生分解速度は、重合体の化学的同一性及び物理的特性のみならず、そこに組み込んだ物質の種類にも左右される場合がある。課題組成物の分解は、例えば酸化及び/又は加水分解による分子内結合の開裂のみならず、異物包接ホストとの競争的錯体形成によるホスト/ゲスト錯体の解離のような分子間結合の破断も包含する。
【0021】
ある具体例では、本発明の重合体処方物は、所望の用途において許容できる期間内に分解する。インビボでの治療のようなある具体例では、このような分解は、6〜8のpH及び25〜37℃の温度を有する生理学的溶液への暴露時に、通常、約5年、1年、6ヶ月、3ヶ月、1ヶ月、15日、5日、3日又は1日未満さえの期間で生じる。他の具体例では、重合体は、所望の用途に依存して約1時間〜数週間の期間で分解する。
【0022】
生加水分解性結合(例えば、エステル、アミド、カーボネート、カルバメート又はイミド)とは、生理学的条件下に開裂される重合体(例えば、エステルは開裂されてヒドロキシル及びカルボン酸を生成する)を意味する。生理学的条件は、消化器官(例えば、胃、腸など)の酸性及び塩基性環境、腫瘍、酵素開裂、物質代謝及び他の生物学的プロセスの酸性環境を包含し、そして好ましくは哺乳動物のような脊椎動物における生理学的条件をいう。
【0023】
用語“ヘルスケアプロバイダー”は、人、コミュニティなどにヘルスケアサービスを提供する個人又は組織体を意味する。“ヘルスケアプロバイダー”の例としては、医師、病院、長期ケア老人コミュニティ、熟練看護施設、準緊急ケア施設、クリニック、多専門クリニック、自立歩行センター、ホームヘルス代理業、及びHMOが挙げられる。
【0024】
“説明書”を用いるときは、それは、キットに関する適切な資料又は方法を説明する文書を意味する。これらの資料としては、背景情報、成分のリスト又はそれらの入手情報(購買情報など)、キットの使用、トラブル解決、参照、技術サポートなどのための簡単又は詳細なプロトコルの任意の組み合わせ、及び任意の他の関連する文書を挙げることができる。説明書は、キットと共に、又は、紙の形態か若しくはコンピューターの読取メモリー装置上で供給でき若しくはインターネットウエブサイトからダウンロードすることができる電子の形態にある別個の部分コンポーネントとして、又は記録された表示として供給されることができる。説明書は、1つ又は複数の文書を含むことができ、そして更なるアップデートを含むことが意味される。
【0025】
“キット”を用いるときには、それは、キットを構成する少なくとも2種の成分の集合体を意味する。一緒になって、これらの成分は所定目的のための機能性単位を構成する。個々の構成成分は、一緒に又は別個に物理的に包装することができる。例えば、使用説明書を含むキットは、他の個々の構成成分と共に説明書を含むことができ又は物理的に含む必要がない。その代わり、説明書は、紙の形態か若しくは若しくはコンピューターの読取メモリー装置上で供給でき若しくはインターネットウエブサイトからダウンロードすることができる電子の形態にある別個の部分コンポーネントとして、又は記録された表示として供給されることができる。
【0026】
用語“RNAi構築物”とは、本明細書で使用するときは、短鎖干渉RNA(siRNA)、ヘアピンRNA、及びインビボで解裂してsiRNAを形成できるその他のRNA種を含めての遺伝子用語である。また、ここでいうRNAi構築物は、細胞内にdsRNA若しくはヘアピンRNAを形成する転写物及び(又は)インビボでsiRNAを生成できる転写物をもたらすことができる発現ベクター(RNAi発現ベクターとも称する。)も包含する。
【0027】
本発明の主題の治療方法に関して、主題化合物の“有効量”とは、所望の投薬計画の一部として適用されたときに、特別の疾患の治療又は予防のための臨床的に許容し得る標準に従って利益を与える製剤中の治療剤の量をいう。
【0028】
本発明の主題の方法によって処理されるべき“患者”又は“主体”は、動物、好ましくは人間を含めて哺乳動物である。
【0029】
用語“予防又は治療”処置は、斯界において認められており、本発明の組成物のうちの1種又はそれ以上をホストに投与することを包含する。もしもそれが望まれない状態(例えば、ホスト動物の病気又は他の望まれない状態)の臨床的発現前に投与されるならば、その処置は予防であり、即ち、それは望まれない状態の発現に対してホストを保護し、これに対して、もしもそれが望まれない状態の発現後に投与されるならば、その処置は治療である(即ち、それは、既存の望まれない状態又はその副作用を減少、改善又は安定化することを意図する)。
【0030】
用語“防止”は、斯界において認められており、そして局部再発(例えば、痛み)のような状態、癌のような病気、心不全のような症候群コンプレックス又は任意の他の医学的状態に関して使用したときには斯界において十分に理解されており、本発明の組成物を受けていない患者に対して医学的状態の徴候の頻度を減少し又はその発症を遅らせる組成物を投与することを包含する。かくして、癌の予防は、例えば、統計学的及び/又は臨床学的有意量によって、未処置対照母集団と比較して予防処置を受けた患者の母集団における検出しうる癌成長の数を減少させ、及び/又は処置母集団対未処置対照母集団における検出しうる癌成長の発現を遅らせることを包含する。伝染病の予防は、例えば、処置母集団対未処置母集団における伝染症候の数を減少させ、及び/又は処置母集団対未処置対照母集団における伝染症候の発生を遅らせることを包含する。痛みの防止は、例えば、処置母集団対未処置対照母集団において患者が経験する痛みの感じの頻度を減少させ又はその感じを遅らせることを包含する。
【0031】
用語“治療剤”を用いるときには、それは、有機体(人間又は非人間の動物)に投与したときに局部的及び/又は全身的作用によって所望の薬理学的、免疫原性的及び/又は生理的効果を誘発する任意の合成若しくは天然産の生物学的活性化合物又は組成物を包含する。それ故に、この用語は、たん白質、ペプチド、ホルモン、核酸、遺伝子構成物などのような分子を含めて、薬剤、ワクチン及び生物薬剤と慣例的に認められるような化合物又は化学薬品を包含する。より具体的に言えば、用語“治療剤”は、主な治療領域のすべてに使用するための化合物又は組成物を包含し、例えば、限定するものではないが、次のもの、補助剤、抗生物質や抗ウイルス薬のような抗感染薬、鎮痛薬及び鎮痛薬の組み合わせ、抗無食欲薬、抗炎症薬、抗てんかん薬、局部及び全身麻酔薬、睡眠薬、鎮静薬、抗精神病薬、神経遮断薬、抗うつ薬、不安緩解薬、アンタゴニスト、ニューロンブロッキング薬、抗コリン作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、ムスカリン様作用薬、抗アドレナリン作用薬、抗不整脈薬、抗高血圧症薬、ホルモン、栄養薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗痙れん剤、抗ヒスタミン薬、制吐薬、抗新生物薬、止痒薬、解熱薬、鎮痙薬、心臓血管作用薬(カルシウムチャンネルブロッカー、ベータブロッカー、ベータアゴニスト及び抗不整脈薬を含めて)、抗高血圧症薬、利尿薬、血管拡張薬、中枢神経系刺激薬、咳及び風邪調合薬、充血除去薬、診断薬、ホルモン、骨成長刺激薬及び骨吸収抑制薬、免疫抑制薬、筋弛緩薬、精神興奮薬、鎮静薬、精神安定薬、たん白質、ペプチド及びそれらの断片(天然産、化学的合成又は再結合生成のどれでも)、核酸分子(二本鎖−及び単鎖分子、遺伝子構成物、発現ベクター、アンチセンス分子などを含めて、リボヌクレチド(RNA)又はデオキシリボヌクレオチド(DNA)のどちらかの2個又はそれ以上のヌクレオチドの重合体形態のもの)、小分子(例えば、ドキソルビシン)、並びに、例えば、たん白質及び酵素のような他の生物学的活性マクロ分子が挙げられる。この剤は、家畜病治療用途を含めた医薬において、植物で使用する如き農業及び他の分野において使用される生物学的活性剤であってよい。また、用語“治療剤”は、限定するものではないが、医薬、ビタミン、鉱物性補助剤、病気又は病弊の処置、予防、診断、治療又は緩和のために使用される物質、又は体の構造若しくは機能に影響を及ぼす物質、又はあらかじめ定めた物理学的環境中に置かれた後に生物学的活性に若しくはより活性になるプロドラッグも包含する。
【0032】
用語“治療指数”は、LD50/ED50として規定される薬剤の治療指数をいう。
【0033】
“アシル”は、アミド又はカルバメートを形成するように窒素原子を、ケトンを形成するように炭素原子を、チオエステルを形成するように硫黄原子を、又はエステル基を形成するように酸素原子をアシル化するのに好適な基、例えば、−C(=O)−部分に結合した炭化水素をいう。好ましいアシル基には、ベンゾイル、アセチル、t−ブチルアセチル、ピバロイル、トリフルオルアセチルがある。更に好ましいアシル基はアセチル及びベンゾイルである。最も好ましいアシル基はアセチルである。
【0034】
用語“アシルアミノ”は、斯界で認められており、好ましくは、次の一般式:
【化1】

(ここで、R9及びR'11はそれぞれ独立して水素又は炭化水素置換基、例えばアルキル、複素アルキル、アリール、複素アリール、炭素環式脂肪族及び複素環式脂肪族を表わす。)
により表わされ得る部分をいう。
【0035】
用語“アミン”及び“アミノ”は、斯界で認められており、非置換及び置換アミン並びにアンモニウム塩の両者をいい、例えば、次の一般式:
【化2】

(ここで、R9、R10及びR'10はそれぞれ独立して水素又は炭化水素置換基を表わすか、或いはR9とR10はこれらが結合しているN原子と一緒になって環構造に4〜8個の原子を有する複素環を完成する。)
により表わすことができる。好ましい具体例では、R9、R10及びR'10のどれもアシルではなく、例えば、R9、R10及びR'10は水素、アルキル、複素アルキル、アリール、複素アリール、炭素環式脂肪族及び複素環式脂肪族から選ばれる。用語“アルキルアミン”は、本明細書で使用するときは、少なくとも1個の置換又は非置換アルキルが結合している上で定義したようなアミン基を意味する。正に帯電しているアミノ基(例えば、R'10が存在する。)は、“アンモニウム”基と称される。アンモニウム基以外のアミノ基において、アミンは好ましくは塩基性であり、例えばその共役酸は7以上のpKaを有する。
【0036】
用語“アミド”は、アミノ置換カルボニルとして、例えば、次の一般式:
【化3】

(ここで、R9及びR10は上で定義したとおりである。)
により表わすことができる部分として斯界で認められている。
【0037】
“アルキル”は、1〜18個、好ましくは1〜12個、更に好ましくは1〜6個、更に好ましくは1〜4個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の炭化水素鎖をいう。アルキル鎖は直鎖状(例えば、n−ブチル)又は分岐状(例えば、sec−ブチル、イソブチル又はt−ブチル)であってよい。好ましい分岐状アルキルは、1又は2個の分岐を、好ましくは1個の分岐を有する。好ましいアルキルは飽和である。不飽和のアルキルは1個以上の二重結合及び(又は)1個以上の三重結合を有する。好ましい不飽和アルキルは、1若しくは2個の二重結合又は1個の三重結合を、好ましくは1個の二重結合を有する。アルキル鎖は、非置換であるか又は1〜4個の置換基により置換されていてよい。好ましいアルキルは非置換である。好ましい置換アルキルは一、二又は三置換されている。好ましいアルキルの置換基として、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アリール(例えば、フェニル、トリル、アルコキシフェニル、アルコキシカルボニルフェニル、ハロフェニル)、複素シクリル及び複素アリールが挙げられる。
【0038】
用語“アルケニル”及び“アルキニル”は、前記したアルキルと鎖長が類似し且つ置換基を有し得るが、ただし少なくとも1個の二重結合又は三重結合をそれぞれ含有する不飽和の脂肪族基をいう。別に示してなければ、用語“アルケニル”及び“アルキニル”は、好ましくは、それぞれ低級アルケニル及び低級アルキニル基をいう。用語“アルキル”が用語“アルケニル”及び“アルキニル”と共にリストに存在するときは、用語“アルキル”はアルケニル及びアルキニルを除いた飽和アルキルをいう。
【0039】
用語“アルコキシル”及び“アルコキシ”は、本明細書で使用するときは、−O−アルキル基をいう。代表的なアルコキシル基には、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、t−ブトキシなどが含まれる。“エーテル”は、酸素により共有結合された2個の炭化水素である。従って、炭化水素をエーテルにさせる該炭化水素の置換基は、アルコキシル又は他の部分、例えば、−O−アリール、−O−複素アリール、−O−複素アルキル、−O−アラルキル、−O−複素アラルキル、−O−炭素環式脂肪族若しくは−O−複素環式脂肪族であることができる。
【0040】
用語“アルキルチオ”は、−S−アルキル基をいう。代表的なアルキルチオ基には、メチルチオ、エチルチオなどが含まれる。“チオエーテル”は、2個の炭化水素置換基により結合された硫黄原子をいい、例えば、酸素が硫黄により置き換えられたエーテルである。従って、炭素原子上のチオエーテル置換基は、炭化水素置換硫黄原子置換基、例えばアルキルチオ又はアリールチオなどをいう。
【0041】
用語“アラルキル”は、本明細書で使用するときは、アリール基により置換されたアルキル基をいう。
【0042】
“アリール環”は、芳香族炭化水素環系をいう。芳香族環は、単環式又は縮合二環式系、例えばフェニル、ナフチルなどである。単環式芳香族環は、環内に約5〜約10個の炭素原子、好ましくは5〜7個の炭素原子、最も好ましくは5〜6個の炭素原子を含有する。二環式芳香族環は、環内に8〜12個の炭素原子、好ましくは9又は10個の炭素原子を含有する。また、用語“アリール環”は、環の一方のみが芳香族であり、例えば他方の環がシクロアルキル、シクロアルケニル又は複素シクリルである二環式環系も包含する。芳香族環は、非置換であるか又は環上に1〜約5個の置換基が置換していてもよい。好ましい芳香族環の置換基としては、ハロ、シアノ、低級アルキル、複素アルキル、ハロアルキル、フェニル、フェノキシ、又はこれらの任意の組合せが挙げられる。更に好ましい置換基には、低級アルキル、シアノ、ハロ及びハロアルキルがある。
【0043】
“炭素環式脂肪族環”は、飽和又は不飽和の炭化水素環をいう。炭素環式脂肪族環は非芳香族である。炭素環式脂肪族環は、単環式であるか又は縮合、スピロ若しくは架橋二環式環系である。単環式炭素環式脂肪族環は、環内に約4〜約10個の炭素原子、好ましくは4〜7個の炭素原子、最も好ましくは5〜6個の炭素原子を含有する。二環式炭素環式脂肪族環は、環内に8〜12個の炭素原子、好ましくは9〜10個の炭素原子を含有する。炭素環式脂肪族環は、非置換であるか又は環上に1〜約4個の置換基が置換していてもよい。好ましい炭素環式脂肪環の置換基としては、ハロ、シアノ、アルキル、複素アルキル、ハロアルキル、フェニル、フェノキシ、又はこれらの任意の組合せが挙げられる。更に好ましい置換基はハロ及びハロアルキルがある。好ましい炭素環式脂肪族環には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル及びシクロオクチルがある。更に好ましい炭素環式脂肪族環としては、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルが挙げられる。
【0044】
用語“カルボニル”は、斯界で認められており、次の一般式:
【化4】

(ここで、Xは結合であり又は酸素若しくは硫黄を表わし、R11は水素、炭化水素置換基又は製薬上許容できる塩を表わし、R'11は水素又は炭化水素置換基を表わす。)
により表わすことができるような部分が含まれる。Xが酸素であり且つR11又はR'11が水素でない場合に、該式は“エステル”を表わす。Xが酸素であり且つR11が上で定義した通りである場合に、該部分はここではカルボキシル基といい、特に、R11が水素である場合に、該式は“カルボン酸”を表わす。Xが酸素であり且つR'11が水素である場合に、該式は“ホーメート”を表わす。一般に、上記の式の酸素原子が硫黄で置き換えられると該式は“チオカルボニル”基を表わす。Xが硫黄であり且つR11又はR'11が水素でない場合に、該式は“チオエステル”を表わす。Xが硫黄であり且つR11が水素である場合に、該式は“チオカルボン酸”を表わす。Xが硫黄であり且つR'11が水素である場合に、該式は“チオホーメート”を表わす。他方、Xが結合であり、R11が水素ではなく且つカルボニルが炭化水素に結合する場合に、上記の式は“ケトン”基を表わす。Xが結合であり、R11が水素であり且つカルボニルが炭化水素に結合する場合に、上記の式は“アルデヒド”又は“ホルミル”基を表わす。
【0045】
“Ciアルキル”は、i個の員原子を有するアルキル鎖である。例えば、C4アルキルは、4個の炭素員原子を含有する。C4アルキルは、飽和であっても、或いは1若しくは2個の二重結合(cis−若しくはtrans−)又は1個の三重結合により不飽和であってもよい。好ましいC4アルキルは飽和である。好ましい不飽和C4アルキルは1個の二重結合を有する。C4アルキルは、非置換であるか又は1若しくは2個の置換基で置換されていてもよい。好ましい置換基は、低級アルキル、低級複素アルキル、シアノ、ハロ及びハロアルキルがある。
【0046】
“ハロゲン”は、フルオル、クロル、ブロム又はヨード置換基をいう。好ましいハロはフルオル、クロル及びブロムである。更に好ましいのはクロル及びフルオルである。
【0047】
“ハロアルキル”は、1個以上のハロ置換基により置換された直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素をいう。好ましいハロアルキルはC1〜C12である。更に好ましいのはC1〜C6である。もっと更に好ましいのはC1〜C3である。好ましいハロ置換基はフルオル及びクロルである。最も好ましいハロアルキルはトリフルオルメチルである。
【0048】
“複素アルキル”は、炭素原子と少なくとも1個の複素原子の飽和又は不飽和の鎖であって2個の複素原子が隣接していないものである。複素アルキル鎖は、鎖内に1〜18個の員原子(炭素原子及び複素原子)、好ましくは1〜12個、更に好ましくは1〜6個、最も好ましくは1〜4個の員原子を含有する。複素アルキル鎖は直鎖状又は分岐鎖状であってよい。好ましい分岐鎖状複素アルキルは、1又は2個の分岐、好ましくは1個の分岐を有する。好ましい複素アルキルは飽和である。不飽和複素アルキルは、1個以上の二重結合及び(又は)1個以上の三重結合を有する。好ましい不飽和複素アルキルは、1若しくは2個の二重結合又は1個の三重結合を有し、更に好ましくは1個の二重結合を有する。複素アルキル鎖は、別の述べてなければ、非置換であるか又は1〜約4個の置換基により置換されていてもよい。好ましい複素アルキルは非置換である。好ましい複素アルキルの置換基としては、ハロ、アリール(例えば、フェニル、トリル、アルコキシフェニル、アルコキシカルボニルフェニル、ハロフェニル)、複素シクリル、複素アリールである。例えば、下記の置換基で置換されたアルキル鎖が複素アルキルがある。即ち、アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ)、アリールオキシ(例えば、フェノキシ、クロルフェノキシ、トリルオキシ、メトキシフェノキシ、ベンジルオキシ、アルコキシカルボニルフェノキシ、アシルオキシフェノキシ)、アシルオキシ(例えば、プロピオニルオキシ、ベンゾイルオキシ、アセトキシ)、カルバモイルオキシ、カルボキシ、メルカプト、アルキルチオ、アシルチオ、アリールチオ(例えば、フェニルチオ、クロルフェニルチオ、アルキルフェニルチオ、アルコキシフェニルチオ、ベンジルチオ、アルコキシカルボニルフェニルチオ)、アミノ(例えば、アミノ、モノ−及びジ−C1〜C3アルキルアミノ、メチルフェニルアミノ、メチルベンジルアミノ、C1〜C3アルキルアミド、カルバマアミド、ウレイド、グアニジノ)である。
【0049】
“複素原子”は、多価の炭素でない原子、例えば硼素、燐、珪素、窒素、硫黄又は酸素原子をいい、好ましくは窒素、硫黄又は酸素原子をいう。1個よりも多い複素原子を含有する基は、異なった複素原子を含有できる。
【0050】
“複素アリール環”は、環内に炭素原子と1〜約4個の複素原子を含有する芳香族環系をいう。複素芳香族環は、単環式又は縮合二環式環系である。単環式複素芳香族環は、環内に約5〜約10個、好ましくは5〜7個、最も好ましくは5〜6個の員原子(炭素原子及び複素原子)を含有する。二環式複素芳香族環は、環内に8〜12個の員原子、好ましくは9又は10個の員原子を含有する。また、用語“複素アリール環”は、環の一方のみが芳香族であり、例えば他方の環がシクロアルキル、シクロアルケニル又は複素シクリルである二環式環系も包含する。複素芳香族環は、非置換であるか又は環上に1〜約4個の置換基が置換していてもよい。好ましい複素芳香族環の置換基としては、ハロ、シアノ、低級アルキル、複素アルキル、ハロアルキル、フェニル、フェノキシ、又はこれらの任意の組合せが挙げられる。好ましい複素芳香族環には、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、ピロリル、プリニル、ピリミジル、ピリジル及びフラニルがある。更に好ましい複素芳香族環はチエニル、フラニル及びピリジルである。
【0051】
“複素環式脂肪族環”は、環内に炭素原子と1〜約4個の複素原子を含有する非芳香族の飽和又は不飽和環であって、2個の複素原子が環内で隣接していず、好ましくは複素原子に結合した環における炭素にはヒドロキシル、アミノ又はチオールが結合していないようなものである。複素環式脂肪族環は、単環式であるか又は縮合した若しくは架橋した二環式環系である。単環式複素環式脂肪族環は、環内に約4〜約10個の員原子(炭素原子及び複素原子)、好ましくは4〜7個、最も好ましくは5〜6個の員原子を含有する。二環式複素環式脂肪族環は、環内に8〜12個の員原子、好ましくは9又は10個の員原子を含有する。複素環式脂肪族環は、非置換であるか又は環上に1〜約4個の置換基が置換していてもよい。好ましい複素環式脂肪族環の置換基としては、ハロ、シアノ、低級アルキル、複素アルキル、ハロアルキル、フェニル、フェノキシ、又はこれらの任意の組合せが挙げられる。更に好ましい置換基はハロ及びハロアルキルがある。複素シクリル基には、例えば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、ヒダントイン、オキサゾリン、イミダゾリントリオン、トリアゾリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロジリン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、ラクタム、例えばアゼチジノン及びピロリジノン、サルタム、サルトンなどが挙げられる。好ましい複素環式脂肪族環には、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル及びピペリジルがある。また、複素環は多環であることができる。
【0052】
用語“ヒドロキシル”は、−OHを意味する。
【0053】
“低級アルキル”は、1〜5個、好ましくは1〜4個の炭素員原子、更に好ましくは1又は2個の炭素員原子からなるアルキル鎖をいう。低級アルキルは飽和又は不飽和であってよい。好ましい低級アルキルは飽和である。低級アルキルは、非置換であるか又は1若しくは約2個の置換基により置換されていてよい。低級アルキル上の好ましい置換基としては、シアノ、ハロ、トリフルオルメチル、アミノ及びヒドロキシルが挙げられる。明細書の全体を通じて、好ましいアルキル基は低級アルキルである。好ましい具体例では、本明細書においてアルキルとして表わす置換基は低級アルキルである。同様に、“低級アルケニル”及び“低級アルキニル”も類似の鎖長を有する。
【0054】
“低級複素アルキル”は、1〜4個、好ましくは1〜3個の員原子、更に好ましくは1〜2個の員原子からなる複素アルキル鎖をいう。低級複素アルキルは、1又は2個の非隣接複素原子員原子を含有する。好ましい低級複素アルキルは、1個の複素原子員原子を含有する。低級複素アルキルは飽和又は不飽和であってよい。好ましい低級複素アルキルは飽和である。低級複素アルキルは、非置換であるか又は1若しくは約2個の置換基により置換されていてよい。低級複素アルキル上の好ましい置換基としては、シアノ、ハロ、トリフルオルメチル及びヒドロキシルが挙げられる。
【0055】
“Mi複素アルキル”は、i個の員原子を有する複素アルキル鎖である。例えば、M4複素アルキルは、1又は2個の非隣接複素原子員原子を含有する。1個の複素原子員原子を含有するM4複素アルキルは、飽和であるか又は1個の二重結合(cis又はtrans)若しくは1個の三重結合により不飽和であってもよい。2個の複素原子員原子を含有する好ましい不飽和M4複素アルキルは飽和である。好ましい不飽和M4複素アルキルは1個の二重結合を有する。M4複素級アルキルは、非置換であるか又は1若しくは2個の置換基により置換されていてよい。好ましい置換基としては、低級アルキル、低級複素アルキル、シアノ、ハロ及びハロアルキルが挙げられる。
【0056】
“イソシアネート”は、−NCO基をいう。
【0057】
“員原子”は、鎖又は環の一部を構成する該鎖又は環系における多価原子(例えば、C、O、N又はS原子)をいう。例えば、クレゾールでは、6個の炭素原子が環の員原子であり、メチル置換基の酸素原子及び炭素原子は環の員原子ではない。
【0058】
用語“ニトロ”は、本明細書で使用するときは、−NO2を意味する。
【0059】
“製薬上許容できる塩”は、任意の酸性(例えば、ヒドロキサム酸又はカルボン酸)の基で形成される陽イオン性の塩、又は任意の塩基性(例えば、アミノ又はグアニジノ)の基で形成される陰イオン性の塩をいう。このような塩は斯界で周知である。例えば、1987年9月11日に公告されたWO87/05297(ジョンストン他)を参照されたい(これは参照によってここに含める。)。このような塩類は、通常の当業者に知られた方法により製造される。当業者ならば、溶解度、安定性、形成の容易さ、価格などを改善させるためにある塩を他の塩と比べて選定できることが認識される。このような塩類の決定及び最適化は、当業者の実施の範囲内である。好ましい陽イオンには、アルカリ金属(例えば、ナトリウム及びカリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム及びカルシウム)及び有機陽イオン(例えば、トリメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなど)が含まれる。好ましい陰イオンには、ハロゲン化物(例えば、塩化物)、スルホン酸塩、カルボン酸塩、燐酸塩などが挙げられる。このような塩類に明らかに意図されるのは、何も無かった場合に光学中心を与えることができる付加塩である。例えば、キラルな塩を本発明の化合物から製造することができる。従って、この定義には、このようなキラルな塩も包含される。
【0060】
“フェニル”は、1〜5個の置換基により置換されれても又は非置換であってもよい6員の単環式芳香族環である。置換基は、フェニル環のo−、m−若しくはp−位置に又はこれらの任意の組合せで位置することができる。好ましいフェニルの置換基としては、ハロ、シアノ、低級アルキル、複素アルキル、ハロアルキル、フェニル、フェノキシ、又はこれらの任意の組合せが挙げられる。フェニル環上の更に好ましい置換基は、ハロ及びハロアルキルである。最も好ましい置換基はハロである。
【0061】
用語“ポリシクリル”及び“多環式基”は、2個以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素アリール、アリール及び(又は)複素シクリル)であって、一方の環の2個以上の員原子が第二の環の員原子であるようなものをいう。非隣接原子により結合される環は“架橋された”環といい、隣接原子により結合される環は“縮合環”である。
【0062】
用語“小有機分子”は、約2500amu未満、好ましくは1500amu未満の有機化合物をいう。この用語は、蛋白質又は核酸ではない大部分の医薬品を包含する。
【0063】
用語“スルフヒドリル”は−SHを意味し、用語“スルホニル”は−SO2−を意味する。
【0064】
小有機分子上の“置換”又は“置換基”は、一般に、水素以外の部分に結合した多価原子上の位置、例えば、鎖又は環の員原子を除いた該鎖又は環上の位置についていう。このような部分としては、斯界で知られているように、本明細書で定義するもの及びその他のものが挙げられ、例えば、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アジド、ハロアルキル、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、ケトン又はアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテート又はチオホーメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、アミン、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、シリル、エーテル、シクロアルキル、複素シクリル、複素アルキル、複素アルケニル、複素アルキニル、複素アラルキル、アラルキル、アリール又は複素アリールである。当業者には、ある種の置換基、例えば、アリール、複素アリール、ポリシクリル、アルコキシ、アルキルアミノ、アルキル、シクロアルキル、複素シクリル、アルケニル、アルキニル、複素アルキル、複素アルケニル及び複素アルキニルが適当ならばそれ自体で置換され得ることが理解される。本発明は、有機化合物の許容できる置換基により如何なる態様においても限定されるものではない。“置換”又は“置換された”は、このような置換が置換された原子と置換基との許容された原子価に従うこと並びにその置換が安定な化合物、例えば例えば転移、環化、脱離、加水分解などのような変換を自発的に受けない化合物を生じさせることという暗に含まれた留保を包含するものと理解される。
【0065】
表現、例えば、アルキル、m、nなどのそれぞれの定義は、本明細書で使用するときに、任意の構造においてそれが二度以上現われるときは、その構造式のどこにおいてもその定義と独立しているものとする。
【0066】
略号:Me、Et、Ph、Tf、Nf、Ts及びMsは、それぞれ、メチル、エチル、フェニル、トリフルオルメタンスルホニル、ノナフルオルブタンスルホニル、p−トルエンスルホニル及びメタンスルホニルを表わす。通常の知識の有機化学者によって用いられる略号のより包括的なリストは、Journal of Organic Chemistryの各巻の最初の号に見られる。このリストは、略号の標準リストと題する表に典型的に提示されている。該リストに含まれる略号及び通常の知識の有機化学者によって利用されるすべての略語をここに参照の対象として記載する。
【0067】
用語“o−、m−及びp−”は、それぞれ1,2−、1,3−及び1,4−二置換ベンゼンに適用する。例えば、命名:1,2−ジメチルベンゼンとo−ジメチルベンゼンは同義である。
【0068】
用語:トリフリル、トシル、メシル及びノナフリルは、斯界で認められており、それぞれ、トリフルオルメタンスルホニル、p−トルエンスルホニル、メタンスルホニル及びノナフルオルブタンスルホニル基についていう。用語:トリフレート、トシレート、メシレート及びノナフレートは斯界で認められており、それぞれ、トリフルオルメタンスルホン酸エステル、p−トルエンスルホン酸エステル、メタンスルホン酸エステル及びノナフルオルブタンスルホン酸エステル官能基並びに該基を含有する分子をいう。
【0069】
語句“保護基”は、本明細書で使用するときは、潜在的に反応性の官能基を望まない化学的変換から保護する一時的な置換基を意味する。このような保護基の例としては、カルボン酸のエステル、アルコールのシリルエステル並びにアルデヒド及びケトンのそれぞれアセタール及びケタールがある。保護基化学の分野が概説されている(T.W.グリーン、P.G.M.ウッツ、“有機合成における保護基”第2版、ウイリー社、NY、1991;P.J.コシエンスキー、“保護基”、ゲオルグ・チエム・ヘルラーク社、NY、1994)。
【0070】
用語“プロドラッグ”は、生理学的条件下で本発明の治療活性薬剤に変換される化合物を包含するつもりである。プロドラッグを作るための普通の方法は、生理学的条件下で加水分解されて所望の分子を表出させる選定された部分、例えばエステル又はケタールを包含させることである。他の具体例では、プロドラッグは宿主動物の酵素活性により転化される。
【0071】
本発明のためには、化学元素は、“Handbook of Chemistry and Physics”、第67版、1986−87の中表紙に記載の“元素の周期律表”CASバージョンに従って確認される。また、本発明のためには、用語“炭化水素”は、少なくとも1個の炭素−水素結合を有する許容できる化合物又は部分の全てを包含することが意図される。許容できる炭化水素は、広義には、非環式及び環式の、分岐状及び非分岐状の、炭素環式及び複素環式の、芳香族及び非芳香族の有機化合物を包含し、これらは置換されても又は非置換であってもよい。
【0072】
上記した化合物の意図される均等物には、他の点で対応し且つ同じ有用な特性を有する化合物であって、化合物の効能に悪影響を及ぼさない1個以上の簡単な置換基の変更がなされている化合物が包含される。一般的には、本発明の化合物は、例えば、以下に記載するような一般的な反応式に示される方法によって、又は入手容易な出発物質、反応剤及び慣用の合成操作を使用するその変法によって製造することができる。これらの反応では、それ自体知られているがしかしここには記載しない変法を利用することも可能である。
【0073】
III.方法及び組成物の適用の例
本発明に従う治療用組成物は、治療剤と本発明の物質、例えばシクロデキストリンを基材とした物質を含有する。治療剤は、斯界で知られたものを含めて、合成の又は天然産の生物活性治療剤のどれであってもよい。好適な治療剤の例としては、抗生物質、ステロイド、ポリヌクレオチド(例えば、ゲノムDNA、cDNA、mRNA及びアンチセンスオリゴヌクレオチド)、プラスミド、蛋白質、ポリペプチド、ペプチド断片、小分子(例えば、ドクソルビシン)及びその他の生物活性マクロ分子、例えば、蛋白質及び酵素が挙げられるが、これらに限定されない。ある具体例では、治療剤は、送達系と結合することができ、例えば、核酸をウイルスに含有させることができ、又は治療剤をリポソーム若しくはミクロ級体内に担持することができ、また送達系は物質全体に分散される。
【0074】
本発明の治療用組成物は、斯界で知られた手段によって製造することができる。好ましい具体例では、本発明の物質、例えばシクロデキストリンを基材とした物質が前記したような治療剤と混合され又はその存在下に製造される。本発明によれば、この物質は、治療剤のための送達ビヒクルとして作用する。治療剤(及び(又は)補助剤)と物質が、当業者に認められた手段、例えば、静電的相互作用、水素結合、疎水性相互作用、包接ホストとの包接錯体の形成、又は重合体への共有結合、好ましくはエステル若しくはカーボネートのような可逆的結合によるものによって会合される。ある具体例では、治療剤及び(又は)補助剤が、包接ホスト、例えばシクロデキストリンと包接錯体を形成部分に、随意に可逆的結合により、共有結合することができる。会合の程度は、例えば、蛍光研究、DNA移動度研究、光散乱、電子顕微鏡を含めて当業者に知られた技術によって決定することができ、勿論治療剤によって変化する。送達の方法として、例えば、本発明の物質とDNAを含有する本発明の治療用組成物は、トランスフェクション、即ち、動物(例えば、人間)細胞へのDNAの取り込みを助成するように使用することができる(O.ブシフ、Proc.of the National Academy of Science、92:7297−7301(1995);ザンタ他、Bioconjugate Chemistry、8:839−844(1997))。
【0075】
ある具体例では、本発明の治療用組成物は注射用に好適な形であり、他の具体例では、組成物は局所適用に好適なものである。本発明の治療用組成物の投与方法の他の態様としては、治療用組成物の状態に依存するが、斯界で知られた方法、例えば、経口投与、非経口的、静脈内、鼻内、眼内、頭内又は腹腔内注射が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
使用する治療剤のタイプにもよるが、本発明の治療用組成物は、遺伝的又は後天的疾患、例えば胞性線維症、ガウチェ病、筋ジストロフィー、AIDS、癌(例えば、多発性骨髄腫、白血病、メラノーマ及び卵巣癌)、心臓血管状況(例えば、進行性心不全、再狭窄及び血友病)、神経学的状況(例えば、脳損傷)の治療のために種々の治療法(例えば、DNAワクチン、抗生物質、抗ウイルス剤)に使用することができる。他の具体例では、主題の組成物は、創傷、例えば切開、糖尿病性潰瘍、床ずれ、裂傷、火傷などの治療に使用することができる。
【0077】
治療剤は、核酸(例えば、ベクター、RNAi構築物又はアンチセンスオリゴヌクレオチド)又は蛋白質から小有機分子まで及ぶことができる。ある具体例では、治療剤は、抗癌剤(例えば、カンプトテシン又は関連誘導体)、抗菌剤、抗細菌剤、抗真菌剤又は抗ウイルス剤である。ある具体例では、治療剤は受容体アゴニストである。ある具体例では、治療剤は受容体アンタゴニストである。ある具体例では、治療剤はプロテアーゼ阻害剤である。更に、本発明の重合体は、1種の治療剤を含有し、又は2種以上の治療剤を含有することができる。例えば、2種以上の異なった癌用の薬剤、即ち抗癌剤と免疫抑制剤、又は抗生物質と抗炎症剤を組成物に含有させることができる。
【0078】
使用する治療剤のタイプによるが、本発明の治療用組成物は、遺伝的又は後天的疾患、例えば胞性線維症、ガウチェ病、筋ジストロフィー、AIDS、癌(例えば、多発性骨髄腫、白血病、メラノーマ及び卵巣癌)、心臓血管状況(例えば、進行性心不全、再狭窄及び血友病)、神経学的状況(例えば、脳損傷)の治療のために種々の治療法(例えば、DNAワクチン、抗生物質、抗ウイルス剤)に使用することができる。
【0079】
ある特別の具体例では、本発明の組成物は、創傷を治療するのに、即ち、創傷の治癒を促進するのに使用することができる。マトリックス単独は創傷のシール剤として有用であるかも知れないが、このような組成物は、例えば、PDGF−B若しくは目標細胞にPDGF−Bを産生させるための発現ベクター、細胞増殖又は分化の調節剤、幹細胞若しくは先祖細胞、及び(又は)治癒、感染の抑止などを促進させるのに有効であることが知られたその他の化合物を含有することができる。
【0080】
他の具体例では、本発明の組成物は、癌の治療に使用することができる。このような組成物には、化学療法剤、脈管形成阻害剤、細胞増殖阻害剤、放射線増感剤及び(又は)癌の治療に有用な任意の他の薬剤が挙げられる。
【0081】
例えば、癌の治療のために主題の組成物に処方することができる化合物には、下記のものがある。アミノグルテチマイド、アムサクリン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、bcg、ビカルタマイド、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カンポテシン、カペチタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、コルヒチン、シクロホスファミド、サイプロテロン、サイタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエンストロール、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドクソルビシン、エピルビシン、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エクゼメスタン、フィルグラスチン、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムチタビン、ゲニステイン、ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イフォスファマイド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、イロノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロライド、レバミソール、ロムスチン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、ミトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタマイド、ノコダゾール、オクトレオタイド、オキリサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトリキセド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、スラミン、タモキシフェン、テモゾロマイド、テニポシド、テストステロン、チオグアニン、チオテパ、チタノセンジクロリド、トポテカン、トラスツズマブ、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン。
【0082】
これらの化学療法剤は、それらの作用機序によって例えば下記の群に分類できる。抗代謝剤/抗癌剤:例えば、ピリミジン類似体(5−フルオルウラシル、フロクスウリジン、カペチタビン、ゲムチタビン及びサイタラビン)及びプリン類似体、葉酸塩又はエステルアンタゴニスト及び関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン及び2−クロルデオキシアデノシン(クラドリビン));抗増殖/抗有糸分裂剤、例えばビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビン)のような天然産物質、タキサン(プクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロン及びナベルビンのような微小管破裂剤、エピジポドフィロトキシン(テンニポシド)、DNA鎖損傷剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレノマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロルアンブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、サイトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミンオキサリプラチン、イホスファマイド、メルファラン、メルコレタミン、ミトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソ尿素、プリカマイシン、プロカルバジン、テニポシド、トリエチレンチオホスホルアミド及びエトポシド(VP16))など;抗生物質、例えばダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びミトマイシン;酵素(L−アスパラギンを系統的に代謝し且つそれ自体アスパラギンを合成する能力のない細胞を奪うL−アスパラギナーゼ);抗血小板薬剤;抗増殖/抗有糸分裂性アルキル化剤、例えば、窒素マスタード(メクロルエタミン、シクロホスファミド及び類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミン及びメチルメラミン(ヘキサメチルメラミン及びチオテパ)、スルホン酸アルキル−ブスルファン、ニトロソ尿素(カルムスチン(BCNU)及び類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン−ダカルバジン(DTIC);抗増殖/抗有糸分裂性抗代謝剤、例えば葉酸類似体(メトトレキセート);白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチマイド;ホルモン、ホルモン類似体(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタマイド、ニリタマイド)及びアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝固薬(ヘパリン、合成ヘパリン塩及び他のトロンビン阻害剤);フィブリン溶解剤(例えば、組織プラスミノゲン活性剤、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼ)、アスピリン、COX−2阻害剤、ジプリダモール、チクロピジン、クロピトグレル、アブチキミマブ;抗移動剤;抗分泌薬(ブレベルジン);免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリマス(FK−506)、シロリマス(ラパマイシン)、アザチオプリン、マイコフェノレートモフェチル);抗脈管形成性化合物(TNP−470、ゲニステイン)及び成長因子抑制剤(脈管内皮成長因子(VEGF)抑制剤、線維芽細胞成長因子(FGF)抑制剤);アンギオテンシン受容体遮断剤;酸化窒素ドナー;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ);細胞周期阻害剤及び分化阻害剤(トレチノイン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン及びミトキサントロン、トポテカン及びイリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニソロン、プレドニソン及びプレニソロン);成長因子情報伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能障害誘発因子及びカスパーゼ活性剤;クロマチン崩壊剤。
【0083】
本発明によれば、治療法は、治療的に有効な量の本発明の治療用組成物を投与することからなる。治療的に有効な量は、当業者により認めれているように、ケース毎に決定される。考慮されるべき因子には、治療すべき疾患及び疾患を患っている主体の物理的特徴があるが、これらに限定されない。
【0084】
本発明の他の具体例は、農業上の効能を有する少なくとも1種の生物活性化合物と本発明の線状シクロデキストリン基材重合体又は線状酸化シクロデキストリン変性重合体を含有する組成物である。農業上の生物活性化合物は、斯界で知られたものが包含される。例えば、好適な農業上の生物活性化合物としては、殺菌剤、除草剤、殺虫剤及び殺かび剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
IV.組成物の例
ある具体例では、基礎をなす重合体は線状のシクロデキストリン含有重合体であり、例えば、重合体主鎖はシクロデキストリン部分を包含する。例えば、この重合体は、正確に2個の位置のそれぞれに1個の反応性部位を持つように変性された少なくとも1種のシクロデキストリン誘導体を準備し、そのシクロデキストリン誘導体に該反応性部位と共有結合を形成することができる正確に2個の反応性部位を有するリンカーを、該反応性部位と反応性部分との反応を促進して該リンカーとシクロデキストリン誘導体との間で共有結合を形成するような重合条件下に反応させ、これによってシクロデキストリン誘導体とリンカーとの交互単位を含む線状重合体が生成させるようにすることによって製造される水溶性の線状シクロデキストリン重合体であってよい。種々の好適な重合体が米国特許出願第20020151523号及び同10/656,838に記載されている。別法として、重合体は、線状重合体主鎖を有する水溶性線状シクロデキストリン重合体であってよく、この重合体は、線状重合体主鎖中に複数の置換又は非置換シクロデキストリン部分とリンカー部分を含み、ここで重合体鎖の末端におけるシクロデキストリン部分以外のシクロデキストリン部分のそれぞれは該リンカー部分の2つに結合され、しかも各リンカー部分は2個のシクロデキストリン部分を共有結合している。更に他の具体例では、重合体は、複数のシクロデキストリン部分が複数のリンカー部分によって一緒に共有結合されてなる水溶性線状シクロデキストリン重合体であって、重合体鎖の末端におけるシクロデキストリン部分以外の各シクロデキストリン部分が2個のリンカー部分にされて線状シクロデキストリン重合体を形成しているものである。
【0086】
リンカー基は、アルキレン鎖、ポリエチレングリコール(PEG)鎖、ポリこはく酸無水物、ポリ−L−グルタミン酸、ポリ(エチレンイミン)、少糖類、アミノ酸鎖、又は任意の他の適当な結合であってよい。ある具体例では、リンカー基それ自体はアルキレン鎖のように生理学的条件下に安定であってよく、又はそれは、例えば酵素(例えば、結合は、ペプチダーゼに対する基質であるペプチド序列を有する。)若しくは加水分解(例えば、結合はエステル又はチオエステルのちうな加水分解性基を含有する。)により生理学的条件下に開裂可能であってよい。リンカー基は、PEG、ポリグリコール酸若しくはポリ乳酸のように生物学的不活性であってよく、又は、その部分から開裂したときにレセプターを結合して酵素を不活性化するなどのオリゴ−又はポリペプチドのように生物学的活性であってよい。生体適合性及び/又は生物侵食性である種々のオリゴマーリンカー基は斯界において知られており、その結合の選択は、それが移植されたときに耐久性であるかどうか、それが移植後に徐々に変形若しくは収縮するかどうか、又はそれが徐々に分解して身体によって吸収されるかどうかのように物質の最終特性に影響を及ぼす可能性がある。リンカー基は、炭素−炭素結合、エステル、エーテル、アミド、アミン、カーボネート、カルバメート、スルホンアミドなどを含めて任意の適当な結合又は官能基によって各部分に結合されることができる。
【0087】
一具体例では、物質を形成するのに使用されるシクロデキストリン重合体は、シクロデキストリンとポリエチレングリコール(PEG)との共重合体である。このような重合体は、斯界で周知の技術によって、例えば、下記の方程式:
【化5】

(ここで、台形は、以下に詳細に説明するようなシクロデキストリン部分であり、nは1〜20、好ましくは2〜12の整数である。)
により例示される反応によって製造することができる。この重合体は、例えば、生理学的条件下で解裂できるリンカーを介して、治療剤部分の共有結合によって変性することができる。
【0088】
このような重合体においては、シクロデキストリン部分は、該共重合体の重量の少なくとも2%、好ましくは、該共重合体の重量の少なくとも5%又は10%、或いは20%、40%、50%、60%、80%又は90%ほどに多くを占めることができる。
【0089】
ある具体例では、物質を形成するのに使用されるシクロデキストリン重合体は、次式:
【化6】

(ここで、
Rは、現われる毎に独立して、H、低級アルキル、シクロデキストリン部分又は次式:
【化7】

の基を表わし、
mは、現われる毎に独立して、2〜10,000、好ましくは10〜5,000、又は100〜1,000の整数を表わす。)
の構造を有する。このタイプの好適な重合体が、米国特許出願第10/372,723号及びPCT出願WO03/072637に詳細に検討されている。
【0090】
ある具体例では、Rは、シクロデキストリン部分を除いて、第一アミン(Hを表わすRが2度現われる。)であろう窒素原子の少なくとも約1%、好ましくは少なくとも約3%、そして約5%、10%、20%、35%又は50%までについてシクロデキストリン部分を表わす。
【0091】
ある具体例では、シクロデキストリン部分は、重量でシクロデキストリン変性重合体の少なくとも約2%、3%又は4%、或いは重量で5%、7%又は10%までさえも構成する。
【0092】
ある具体例では、重合体中のエチレンイミンサブ単位の重量で少なくとも約2%、3%又は4%、或いは重量で5%、7%又は10%までもがシクロデキストリン部分で変性される。
【0093】
シクロデキストリン部分による誘導体化を受けやすい求核性アミノ置換基を持つポリ(エチレンイミン)の共重合体も、本発明の範囲内でデキストリン変性重合体を製造するのに使用することができる。
【0094】
シクロデキストリン部分の例としては、6〜9個の糖類部分から本質的になる環構造体、例えばシクロデキストリン及び酸化シクロデキストリンが挙げられる。シクロデキストリン部分は、環状構造と重合体主鎖との間で、好ましくは、連鎖中に1〜20個の原子を有する共有結合を形成するリンカー部分、例えば、アルキル鎖(ジカルボン酸誘導体、例えばグルタル酸誘導体、こはく酸誘導体などを含めて)及び複素アルキル鎖(例えばオリゴエチレングリコール鎖)を随意に含む。シクロデキストリン部分は、更に、直接的に(即ち、炭水化物結合により)又はリンカー基を介して環状コア部に結合する1個以上の炭水化物部分、好ましくはガラクトースのような単純炭化水素部分を含むことができる。
【0095】
シクロデキストリンは、天然産D−(+)−グルコピラノース単位をα−(1,4)結合で含有する環状多糖類である。最も一般的なシクロデキストリンは、アルファ(α)−シクロデキストリン、ベータ(β)−シクロデキストリン及びガンマ(γ)−シクロデキストリン(これらは、それぞれ、6、7又は8個のグルコピラノース単位を含有する。)である。構造的には、シクロデキストリンの環状性は、内部非極性又は疎水性空隙を有する円環体又はドーナツ様の形状を形成し、そしてその第二ヒドロキシル基がシクロデキストリン円環体の一方の側に位置し、そして第一ヒドロキシル基が他方の側に位置している。かくして、一例として(β)−シクロデキストリンを用いると、シクロデキストリンはしばしば次のように図示される。
【化8】

【0096】
第二ヒドロキシル基が位置する側は、第一ヒドロキシル基が位置する側よりも広い直径を有する。シクロデキストリン内部空隙の疎水性は、種々の化合物の含接を可能にする(J.L.アットウッド他編、“総合超分子化学”第3巻、プレガモン・プレス社(1996);T.チェルハチ、Analytical Biochemistry、225:328−332(1995);フセイン他、Applied Spectroscopy、46:652−658(1992);FR2665169)。重合体を変性するための追加的な方法は、J.スー及びY.ノー、Bioorg.Med.Chem.Lett.、1998、8:1327−1330に開示されている。
【0097】
シクロデキストリンは、シクロデキストリンの疎水性空隙中に適合できる種々の薬剤と包接錯体を形成させることによって又はオリゴヌクレオチド及びその誘導体のような他の生物活性分子と共有結合でない会合錯体を形成させることによって種々の治療用化合物の送達ビヒクルとして使用された。例えば、米国特許第4,727,064号、同5,608,015号、同5,276,088号及び同5,691,316号を参照されたい。種々のシクロデキストリン含有重合体並びにそれらの製造方法も斯界で知られている。J.L.アットウッド他編、“総合超分子化学”第3巻、プレガモン・プレス社(1996)。シクロデキストリン重合体は、シクロデキストリンを又はシクロデキストリンと他の炭水化物との混合物を重合性反応剤、例えばエピクロルヒドリン、ジイソシアネート、ジエポキシドと結合させ又は架橋させることによって製造された(“不溶性シクロデキストリン重合体ビーズ”、Chem.Adstr.、No.222444m、102:94;ザドシ及びフェニビシ、“シクロデキストリンに関する第1回国際シンポジウム”、J.チェジトリ編、、D.ライデル・パブリッシング社、ボストン、p.327−336;フェニベシ他、Ann.Univ.Budapest、Section Chem.、1979、15:1322;ウイーデンホフ他、Die Strike、1969、21:119−123)。これらの重合性反応剤は、6、2及び3位の第一及び第二ヒドロキシル基と反応することができる。シクロデキストリン変性重合体キャリアーは、薬剤のその作用部位への送達を目標とするため生体認識分子にカップリングさせることができる。米国特許第6,180,739号、同5,981,740号、同5,929,131号、同5,910,551号及び同5,792,821号(重合性のシクロデキストリン誘導体を開示する。)、同6,048,736号(シクロデキストリン重合体を使用する薬剤の送達を検討している。重合性のシクロデキストリン誘導体を開示する。)、同5,856,416号及び同5,593,768号(シクロデキストリン部分を持つ単量体及び重合体を開示する。)、同5,608,015号(重合性のシクロデキストリン誘導体の製造方法を開示する。)、同5,516,766号(シクロデキストリン重合体の用途を記載する。)も参照されたい。
【0098】
架橋分子は、一般に、シクロデキストリン又は他の包接ホストと包接錯体を形成する2個以上の部分を含み、ここに該部分はこれを0.5〜50nm、好ましくは1〜30nm離間させる原子の連鎖によって共有結合されている。該部分は、シクロデキストリンのような包接ホストと包接錯体を形成する任意の分子から、例えばフェニル環、アダマンタンポリシクリル、コレステリン、ナフト−ル誘導体などから選ぶことができる。例えば、チェジトリ、“シクロデキストリン及びそれらの包接錯体”、アカデミアイ・クラド社、ブダペスト、1982及びベンダー他、“シクロデキストリン化学”、スプリンガー・フェルラーク社、ベルリン、1978を参照されたい。シクロデキストリンは、例えば、薬剤、農薬及び除草剤を含めて一連の有機分子と包接錯体を形成することができる。テンジャルラ他、J.Pharm.Sci.、87:425−429(1998);ジュガル他、Pharm.Dev.Technol.、3:43−53(1998);アルベルズ他、Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.、12:311−337(1995)を参照されたい。架橋分子における該部分は同一であっても異なっていてもよく、また異なった架橋分子を単一の物質に同時に使用することができる。
【0099】
該部分と部分との間の共有結合は、任意の好適な結合、例えばアルキレン鎖、ポリエチレングリコール(PEG)鎖、ポリ(エチレンイミン)、少糖類、アミノ酸鎖又は任意の好適な結合であってよい。該結合は、例えばアルキレン鎖のように、生理学的条件下で安定であることができ、或いは結合は、生理学的条件下で、例えば酵素により(例えば、結合がペプチダーゼに対する基質であるペプチド序列を含有する。)又は加水分解により(例えば、結合がエステル又はチオエステルのような加水分解性の基を含有する。)解裂することができる。該結合は、例えばPEG、ポリグリコール酸若しくはポリ乳酸のように、生物学的に不活性であることができ、又は、該部分から解裂されるときに、受容体に結合して酵素などを失活させる少糖類若しくは多糖類のように、生物学的に活性であることができる。生体適合性及び(又は)生物侵食性である種々のオリゴマー性の結合が斯界で知られており、この結合の選択は本発明の物質の最終的性質に、例えば、移植したときに耐久性であるかどうか、移植後に徐々に変形し又は収縮するかどうか、徐々に分解して身体により吸収されるかどうかということに影響する可能性がある。該結合は、炭素−炭素結合、エステル、エーテル、アミド、アミン、カーボネート、カルバメート、スルホンアミドなどを含めて任意の好適な結合又は官能基により該部分に結合できる。
【0100】
一具体例では、架橋性分子は、生物活性であり且つ生理学的条件下で加水分解する結合によって結合された生物活性薬剤である部分を含む。移植した後に、該結合は徐々に解裂して、活性薬剤を放出し、本発明の物質の構造を部分的に減成する。シクロデキストリンを保持する重合体も生分解性であるならば、本発明の物質は徐々に崩壊して、その中に錯化していた生物活性薬剤をゆっくりと放出する。このような具体例においては、治療効果を得るように物質内に追加の治療剤を含有させることができる(必ずしもその必要はないが)。
【0101】
本発明の物質は、更に、1種以上の生物活性剤を含むことができる。このような活性剤もシクロデキストリンと包接錯体を形成でき、又は物質全体にわたってただ分散できるだけでよい。このような活性剤の例として、核酸、ウイルス、ポリペプチド、ポリプレックス、医薬品、小有機分子、抗体又は任意の他の治療剤が挙げられる。
【0102】
ある具体例では、主題の組成物は、例えばRNA干渉(RNAi)を使用して標的遺伝子のノックダウンをもたらすためのRNAi構築物を含む。RNAi構築物は、標的遺伝子の発現を特異的に阻害することができ、且つ、主題の組成物を使用する送達のために好適である二本鎖RNAを含む。RNAiは、遺伝子発現を試験管内又は生体内で抑制する有用な方法を与える。RNAi構築物は、該標的核酸配列に一致する若しくは実質的に一致するdsRNAの長いストレッチ又は該標的核酸配列のうちある種の領域にのみ一致する若しくは実質的に一致するdsRNAの短いストレッチのいずれかを含むことができる。
【0103】
随意として、RNAi構築物は、抑制されるべき遺伝子(即ち「標的」遺伝子)に対するmRNA転写物の少なくとも一部分のヌクレオチド配列に細胞の生理的条件下でハイブリダイズする核酸配列を含む。この二本鎖RNAは、RNAiを仲介することのできる天然RNAに十分に類似することのみを必要とする。従って、本発明は、遺伝子突然変異、株多型又は進化的分岐のために予期され得る配列の変異を許容できるという利点を有する。標的配列とRNAi構築物配列との間の許容されるヌクレオチドミスマッチの数は、5塩基対中1以下、又は10塩基対中1以下、又は20塩基対中1以下、又は50塩基対中1以下である。siRNA二重鎖の中心におけるミスマッチが最も重要であり、しかもこれは標的RNAの開裂を本質的になくすことができる。対照的に、標的RNAに相補的なsiRNA鎖の3'末端でのヌクレオチドは、該標的物の認識の特異性に有意には寄与しない。配列の同一性は、斯界に知られている配列比較及びアラインメントアルゴリズムによって(Gribskov及びDevereux,Sequence Analysis Primer,Stockton Press,1991及びこれに引用された文献を参照されたい。)、及び、例えばデフォルトパラメーターを使用するBESTFITソフトフェアプログラムで実行されるようなスミス−ウォーターマンアルゴリズム(例えば、ウィスコンシン大学ジェネティックコンピューティンググループ)によりヌクレオチド配列間のパーセントを算出することによって最適化できる。抑制性RNAと標的遺伝子のその部分との間で、90%以上の配列同一性又はさらに100%の配列同一性が好ましい。また、RNAの二重鎖領域は、機能上、標的遺伝子転写物の一部分とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列であると定義できる(例えば、400mMのNaCl、40mMのPIPES(pH6.4)、1mMのEDTA、12〜16時間にわたる50℃又は70℃のハイブリダイゼーション、その後の洗浄)。
【0104】
二本鎖構造は、単一の自己相補RNA鎖又は2つの相補RNA鎖によって形成され得る。RNA二重鎖の形成は、細胞内又は細胞外のいずれかで開始され得る。このRNAは、細胞当たり少なくとも1コピーの送達を可能にする量で導入され得る。二本鎖材料のさらに高い用量(例えば、細胞当たり少なくとも5、10、100、500又は1000コピー)は、より効果的な抑制を生じさせ得るが、より低い用量も特定の用途にとっては有用であり得る。抑制は、RNAの二重鎖領域に相当するヌクレオチド配列が遺伝的抑制のための標的となるという点で配列特異的である。
【0105】
主題のRNAi構築物は、「短鎖干渉RNA」又は「siRNA」であることができる。これらの核酸は、ほぼ19〜30ヌクレオチドの長さであり、より好ましくは21〜23ヌクレオチドの長さである。このsiRNAは、ヌクレアーゼ複合体を補充し、且つ、特異的な配列への対合によって該複合体を標的mRNAに誘導すると考えられている。結果として、標的mRNAは、該蛋白質複合体中のヌクレアーゼによって分解される。特定の具体例では、21〜23ヌクレオチドのsiRNA分子は、3'ヒドロキシル基を含む。ある具体例では、siRNA構築物は、例えば、酵素ダイサーの存在下でのさらに長い二本鎖RNAのプロセシングによって生成され得る。一具体例では、ショウジョウバエの試験管内系が使用される。この具体例では、dsRNAをショウジョウバエの胚から得られる可溶性抽出物と混合し、それによって結合体を生じさせる。この結合体は、dsRNAが約21〜約23ヌクレオチドのRNA分子にまでプロセシングされる条件下で保持される。このsiRNA分子は、当業者に周知の多数の技術を使用して精製できる。例えば、ゲル電気泳動法を使用してsiRNAを精製することができる。別法として、非変性カラムクロマトグラフィーのような非変性方法を使用してsiRNAを精製することができる。さらに、クロマトグラフィー(例えば、寸法排除クロマトグラフィー)、グリセリン勾配遠心分離法、抗体による親和性精製法を使用してsiRNAを精製することができる。
【0106】
RNAi構築物の作製は、化学的合成法又は組換え核酸技術によって実施できる。処理された細胞の内因性RNAポリメラーゼは、生体内で転写を仲介することができ、又は、クローン化RNAポリメラーゼは、試験管内での転写のために使用できる。RNAi構築物は、例えば、細胞性ヌクレアーゼに対する感受性を低減させ、生物学的利用能を改善させ、処方特性を改善させ、及び/又はその他の薬物動態学的特性を変化させるために、ホスフェート−糖骨格又はヌクレオシドのいずれかに修飾を含むことができる。例えば、天然RNAのホスホジエステル結合は、窒素又は硫黄ヘテロ原子の少なくとも一つを含むように修飾され得る。RNA構造内での修飾は、dsRNAへの一般的な応答を阻害しつつ特定の遺伝的抑制を可能にするように調整できる。同様に、塩基もアデノシンデアミナーゼの活性を阻害するように修飾できる。RNAi構築物は、酵素によって又は部分的/全体的な有機合成法によって作製することでき、任意の修飾リボヌクレオチドは、試験管内での酵素的合成法又は有機合成法によって導入できる。RNA分子を化学的に修飾する方法は、RNAi構築物を修飾することにも適合する(例えば、Heidenreich外(1997)Nucleic Acids Res,25:776−780、Wilson外(1994)J Mol Recog 7:89−98、Chen外(1995)Nucleic Acids Res 23:2661−2668、Hirschbein外(1997)Antisense Nucleic Acid Drug Dev 7:55−61)。単なる例示であるが、RNAi構築物の骨格は、ホスホロチオエート、ホスホラミデート、ホスホジチオエート、キメラメチルホスホネート−ホスホジエステル、ペプチド核酸、5−プロピニル−ピリミジン含有オリゴマー又は糖修飾物(例えば、2'−置換リボヌクレオシド、α立体配置)で修飾できる。
【0107】
場合によっては、siRNA分子の少なくとも一方の鎖は、約1〜約6ヌクレオチドの長さの3'オーバーハングを有するが、もっともこれは2〜4ヌクレオチドの長さであってよい。より好ましくは、3'オーバーハングは、1〜3ヌクレオチドの長さである。ある具体例では、一方の鎖は3'オーバーハングを有し、そして他方の鎖は平滑末端化され又はオーバーハングをも有する。このオーバーハングの長さは、それぞれの鎖に対して同一又は異なっていてよい。siRNAの安定性をさらに高めるために、3'オーバーハングを分解に対して安定化させることができる。一具体例では、RNAは、アデノシン又はグアノシンヌクレオチドのようなプリンヌクレオチドを含ませることによって安定化する。また、修飾されたアナログによるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば2'−デオキシチミジンによるウリジンヌクレオチド3'オーバーハングの置換が許容され、しかもこれはRNAiの効率に影響を及ぼさない。2'ヒドロキシルが存在しないことは、組織培養培地中でのオーバーハングのヌクレアーゼ耐性を有意に高め、しかもこのことは生体内で有益であり得る。
【0108】
また、RNAi構築物は、長い二本鎖RNAの形であることもできる。ある具体例では、RNAi構築物は、少なくとも25、50、100、200、300又は400塩基である。ある具体例では、RNAi構築物は、400〜800塩基の長さである。この二本鎖RNAは細胞内で消化されて、例えば、細胞内でsiRNAが生成される。しかしながら、長い二本鎖RNAを生体内で使用するのは、おそらく配列に依存しないdsRNA応答に起因し得る有害な影響のため、常に実用的であるとは限らない。このような具体例では、インターフェロン又はPKRの影響を低減させる局所送達系及び/又は薬剤を使用することが好ましい。
【0109】
別法として、RNAi構築物は、ヘアピン構造の形である(ヘアピンRNAと呼ばれる)。このヘアピンRNAは、外因的に合成でき、又は生体内でのRNAポリメラーゼIIIプロモーターからの転写によって形成できる。このようなヘアピンRNAを作り且つこれをほ乳類細胞内での遺伝子抑制のために使用する例が、例えば、Paddison外,Genes Dev,2002,16:948−58、McCaffrey外,Nature,2002,418:38−9、McManus外,RNA,2002,8:842−50、Yu外,Proc Natl Acad Sci USA,2002,99:6047−52に記載されている。好ましくは、このようなヘアピンRNAは、所望の遺伝子の連続的且つ安定な抑制を保証するように細胞内又は動物内で改良される。斯界では、siRNAが細胞内でヘアピンRNAをプロセシングすることによって作製できることが知られている。
【0110】
PCT出願WO01/77350には、真核細胞内で同一の導入遺伝子のセンス及びアンチセンスRNA転写物の両方を生じさせるための、導入遺伝子の二方向転写用の典型的なベクターが記載されている。従って、ある具体例では、主題の組成物は、最終的な送達のために、次のユニークな特徴を有する組換えベクターを含む:このものは、相反する方向で配置された2個の重複転写単位を有し且つ対象のRNAi構築物のための導入遺伝子を横側に配置するウイルスレプリコンを含み、ここで、この2個の重複転写単位は、宿主細胞内で同一の導入遺伝子フラグメントからセンス及びアンチセンスRNA転写物の両方を生じさせる。
【0111】
V.ビジネス方法
本発明の他の面は、ある種のビジネス実施方法を提供する。特に、本発明の方法は、新規な治療用組成物及びその改善された処方物を使用し実施することを可能にする。この技術工程は、一1つ又はそれ以上の追加的工程と組み合わせると、製薬ビジネス又は好ましくは生命科学ビジネスを実施するための新規な解決策を提供する。例えば、本発明の方法によって調製されたこのような治療様組成物は、様々な疾病モデルにおいて治療薬としての効能について試験することができ、次いで、その可能性ある治療用組成物を毒性及び他の安全面について試験してから、処方し、包装し、そしてその後に得られた処方物を病気の処置のために販売することができる。別法として、このような処方物を開発して販売し又はこのような工程を実施する権利を第三者にライセンス供与して報酬を得ることができる。
【0112】
従って、ある具体例では、本発明は、
a.ここに開示する組成物のいずれかの製薬組成物を含む処方物又はキットを製造し、そして
b.ヘルスケアプロバイダーにこのような処方物又はキットを病気又は疾患の処置に使用するという利益を販売する
ことを含む製薬ビジネスの実施方法を提供する。
【0113】
他の具体例では、本発明は、
a.ここに開示する組成物のいずれかの製薬組成物を販売するための配布ネットワークを準備し、そして
b.患者又は医師に対してその製剤を病気又は疾患の処置で使用するために使用説明書を提供する
ことを含む製薬ビジネスの実施方法を開示する。
【0114】
ある具体例では、本発明は、
a.ここに開示する組成物のいずれかの製薬組成物の適当な処方及び投与量を決定し、
b.工程aで確認された処方の治療学的プロフィリングを動物における効能及び毒性について実施し、そして
c.工程bで許容できる治療学的プロファイルを有するとして確認された製剤を販売するための配布ネットワークを準備する
ことを含む製薬ビジネスの実施方法を提供する。
【0115】
この具体例の追加的な工程は、製剤をヘルスケアプロバイダーに販売するためのセールスグループを準備することを含む。
【0116】
更に他の具体例では、本発明は、
a.ここに開示する組成物のいずかの製薬組成物の適当な処方及び投与量を決定し、そして
b.その処方物の更なる開発及び販売のための権利を第三者にライセンス供与する
ことを含む製薬ビジネスの実施法を提供する。
【実施例】
【0117】
例示
ここに、本発明を一般的に説明したが、本発明は下記の実施例を参照すれば一層容易に理解されよう。これらの実施例は、本発明のある種の観点及び具体例を例示するためのものであり、本発明を制限するものではない。
【0118】
例1
ポリエチレンイミン(PEI)−シクロデキストリン抱合体の合成
(スー他、1992、J.Am.Chem.Soc.、114:7916−7917)
【化9】

【0119】
分岐状PEI(60mg、アルドリッチ社、Mw25,000)をDMSO(4mL)と脱気した水(6mL)との溶媒混合物中に溶解した。この溶液にアルゴン雰囲気下にシクロデキストリンモノトシレート(928mg、シクロデキストリン・テクノロジーズ・デベロップメント社)を添加した。この曇った溶液は、混合物を70℃で約1時間撹拌した後に、透明になった。この溶液は、アルゴン雰囲気下にこの温度で48時間後に僅かに黄色になった。この溶液をSpectra/Por MWCO 25,000膜装置に移し、水に向けて6日間透析した。次いで、凍結乾燥により水を除去した。溶液を透析した後に白色粉末が得られた(134mg)。1HNMRのプロトンインテグレーションに基づいてシクロデキストリン/PEI比を計算した。
【0120】
例2
加水分解性のポリエチレンイミン(PEI)−シクロデキストリン抱合体の合成
(アーン他、2002、Journal of Controlled Release、80:273−282)
【化10】

【0121】
加水分解性のPEI−PEGを、アーン他、2002、Journal of Controlled Release、80:273−282の参考文献に記載のように合成した。生じた加水分解性のPEI重合体をDMSO(4mL)と脱気した水(6mL)との溶媒混合物中に溶解した。この溶液にアルゴン雰囲気下にシクロデキストリンモノトシレート(シクロデキストリン・テクノロジーズ・デベロップメント社)を添加した。次いで、反応混合物を冷ジエチルエーテル中に沈澱させ、そして生成物を終夜真空乾燥した。1HNMRのプロトンインテグレーションに基づいてシクロデキストリン/PEI比を計算した。
【0122】
例3
線状のシクロデキストリン基材ポリエチレングリコール重合体(CD−PEG)の合成
二官能化β−シクロデキストリン単量体(A)と二官能化ポリエチレングリコール単量体(B)を重合させてABAB生成物を生じさせることによりCD−PEG重合体を製造した。この合成操作手順は、文献の操作手順(ゴンザレス他、1999、Bioconjugate Chem.、10:1068−1074及びワン他、2001、Bioconjugate Chem.、12(2):280−290)に従う二官能化β−シクロデキストリン(6A,6D−ジデオキシ−6A,6D−ジ(2−アミノエタンチオ)−β−シクロデキストリン))(ジシステアミン−β−シクロデキストリンと表わす。)の製造を含む。重合工程は、商業的に入手できる二官能化ポリエチレングリコールを使用して行なった。三つの方法を研究した。
【0123】
方法I二酸−ポリエチレングリコールを使用
【化11】

【0124】
合成
種々の分子量(Mw=250、600、3000及び6000)を有する二酸−PEGをフルカ社(ミルウオーキー、WI)から購入した。代表的な実験において、PEG600−(COOH)2(0.096g、0.16ミリモル)を1mLの25mM MES緩衝液(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)(pH6.5)に溶解した。2mLの25mM MES緩衝液(pH6.5)に溶解したジシステアミン−β−シクロデキストリン(0.2g、0.16ミリモル)を添加した。次いで、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(0.612g、3.2ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)とN−ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホ−NHS)(0.026g、0.12ミリモル、ピエールス社、ロックホルド、IL)を添加した。生じた溶液を室温で終夜撹拌させた。次いで、重合体溶液をSpectra/Por 7 MWCO 10,000膜装置(スペクトラム社、ヒューストン、TX)に移し、水に向けて24時間透析した。次いで、溶液を凍結乾燥した。これは272mgの白色固体を与えた(収率:93%)。
【0125】
特徴付け:光散乱及び分子量決定
バウシュ&ロム ABBE−3L屈折率を使用して、燐酸塩緩衝塩水1x(PBS)((セルグロ・メジアテク社、ハーンドン、VA))中で比屈折率の増分dn/dcを測定した。次いで、重合体試料を日立D6000 HPLC装置系で分析した。この装置系は、ERC−7512 RI検出器、精密検出器PD2020/DLS静的光散乱検出器及び溶離液として燐酸塩緩衝塩水1xを0.7mL/分の流量で使用するPLアクアゲル−OH 30(ポリマー・ラボラトリーズ社、アムハースト、MA)カラムを備えた。それぞれの重合体について決定されたdn/dc、重量平均分子量Mw及び多分散性指数Mw/Mnを以下の表に記載する。
【0126】
表1:CD−PEG重合体の静的光散乱及び分子量の決定
【表1】

【0127】
方法IIジスクシンイミジルプロピオネートポリエチレングリコールを使用
【化12】

【0128】
合成
ジスクシンイミジルプロピオネートポリエチレングリコール(PEG3400−(SPA)2)(1.0854g、0.32ミリモル、シェアウオーター・ポリマーズ社、ハンツビル、AL)を5mLのDMSOに溶解してなる溶液を、ジシステアミン−β−シクロデキストリン(0.4g、0.32ミリモル)を2mlのDMSOに溶解してなる溶液に添加した。粘稠な溶液が直ちに形成された。次いで、この反応混合物をアルゴン雰囲気下に室温で終夜撹拌した。ジエチルエーテルを添加して重合体を沈澱させ、次いでピペットで吸い出した。残留エーテルを蒸発させ、重合体を水に再溶解させた。次いで、生じた溶液を10,000 MWCO Spectra/Por膜装置に移し、水に向けて24時間透析した。次いで、溶液を凍結乾燥した。これは1.329gの白色固体を与えた(収率:95%)。
【0129】
特徴付け:光散乱及び分子量決定
この重合体を上で示したのと同じ技術を使用して特徴付けした。dn/dcは0.1316と計算され、重量平均分子量Mwは184,000Daで、2.18の多分散性指数Mw/Mnと決定された。
【0130】
方法IIIジ−ベンゾトリアゾールカーボネートポリエチレングリコールを使用
【化13】

【0131】
合成
ジ−ベンゾトリアゾールカーボネートポリエチレングリコール(PEG3400−(BTC)2)(1g、0.32ミリモル、シェアウオーター・ポリマーズ社、ハンツビル、AL)を5mLのDMSOに溶解してなる溶液を、ジシステアミン−β−シクロデキストリン(0.4g、0.32ミリモル)を2mlのDMSOに溶解してなる溶液に添加した。粘稠な溶液が直ちに形成された。次いで、この反応混合物をアルゴン雰囲気下に室温で終夜撹拌した。ジエチルエーテルを添加して重合体を沈澱させ、次いでピペットで吸い出した。残留エーテルを蒸発させ、重合体を水に再溶解させた。次いで、生じた溶液を10,000 MWCO Spectra/Por膜装置に移し、水に向けて24時間透析した。次いで、溶液を凍結乾燥した。これは1.3gの白色固体を与えた(収率:95%)。
【0132】
例4
CD−PEG重合体の分子量制御
ジシステアミン−β−シクロデキストリン・2HCl(0.577g、0.46ミリモル)を100℃で16時間真空乾燥した。次いで、ジスクシンイミジルプロピオネートポリエチレングリコール(PEG3400−(SPA)2)(1.565g、0.46ミリモル、シェアウオーター・ポリマーズ社、ハンツビル、AL)を添加した。この混合物に乾燥DMSO(8mL)を添加した。10分間攪拌した後、DIEA(176μL、1.01ミリモル)をアルゴン雰囲気下に添加した。重合溶液の一部(1mL)を選ばれた時間(15分、30分、60分、1時間、2時間及び5時間)で取出した。次いで、これらの試料を10,000 MWCO Spectra/Por膜装置に移し、水に向けて24時間透析した。次いで、溶液を凍結乾燥した。生じた固体のMWを前記のように決定した。
図3に示すように、重合体のMWは5時間のコースにわたって約80kDaまで増大した。従って、重合体のMWは50〜80kDaの間で制御することができる。
【0133】
例5
加水分解性の線状のシクロデキストリン基材ポリエチレングリコール重合体(CD−PEG)の合成
方法INHS−HBA−CM−PEG3400−CM−HBA−NHSを使用
【化14】

【0134】
NHS−HBA−CM−PEG3400−CM−HBA−NHS(0.2g、0.06ミリモル、シェアウオーター・ポリマーズ社、ハンツビル、AL)を1.5mLのDMSOに溶解してなる溶液を、ジシステアミン−β−シクロデキストリン(0.074g、0.06ミリモル)を2mLのDMSOに溶解してなる溶液に添加した。次いで、反応混合物をアルゴン雰囲気下に室温で終夜撹拌した。生じた重合体をジエチルエーテルで沈澱させ、ろ過し、真空乾燥した。
【0135】
方法IIPEGスクシンイミジルスクシネート(PEG−(SS)2)を使用
【化15】

【0136】
合成
ジスクシンイミジルスクシネートポリエチレングリコール(PEG3400−(SS)2)(サンバイオ社、980−5、クワン−ヤン・ドン、アニャン市、韓国)(0.3ミリモル)を5mLのDMSOに溶解してなる溶液を、ジシステアミン−β−シクロデキストリン(0.3ミリモル)を2mLのDMSOに溶解してなる溶液に添加した。次いで、反応混合物をアルゴン雰囲気下に室温で終夜撹拌した。生じた重合体をジエチルエーテルで沈澱させ、ろ過し、真空乾燥した。
【0137】
例6
加水分解性の線状のシクロデキストリン基材重合体の合成
【化16】

【0138】
合成
エチレングリコールビス[スクシンイミジルスクシネート](EGS)(0.2ミリモル、ピエールス社、ロックホルド、IL)を2mLのDMSOに溶解してなる溶液を、100℃で終夜真空乾燥したジシステアミン−β−シクロデキストリン(0.2ミリモル)を1.5mLのDMSOに溶解してなる溶液に添加した。次いで、反応混合物をアルゴン雰囲気下に室温で終夜撹拌させた。生じた混合物をアセトンで沈澱させ、ろ過し、真空乾燥した。
【0139】
例7
ジアダマンタン架橋剤:燐酸ビス(2−(1−アダマンチル)エチル)
(チャン他、1997、J.Am.Chem.Soc.、119(7):1676−1681)
【化17】

【0140】
合成
無水ピリジン(10mL、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を氷浴において冷却し、ジクロロ燐酸メチル(1.488g、10ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を滴下した。この混合物を更に15分間冷却したままにした。この間にジクロロ燐酸N−メチルピリジニウムの沈澱が形成された。1−アダマンタンエタノール(4.758g、26.4ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を添加し、密封した混合物を室温で終夜撹拌した。次いで、それを10%NaHCO3(50mL)に注ぎ入れ、ピリジンを真空下に蒸発させた。僅かに黄色の固体を1Lの水に溶解し、エーテルで抽出した(3回、150mLづつ)。水性相を2NのHClによりpH1まで酸性化し、次いで150mLづつのCHCl3:n−BuOH(7:3)で3回抽出した。一緒にした有機層(エーテルとCHCl3:n−BuOH)を水洗し、僅かに黄色の沈澱が混合溶媒中に形成された。この時点で溶媒を真空下に蒸発させた。僅かに黄色の固体が形成され、これをアセトン/ヘキサンから再結晶した。固体を真空乾燥した。収率は60%。
【0141】
特徴付け
生成物を1HNMR及び13CNMRにより特徴付けした。
1HNMR(CDCl3):δ1.45−1.75(m、28H、−CH2−、アダマンチル):1.95(m、6H、C−H、アダマンチル);4.07(q、4H、−CH2−)及び8.60(br、1H、POOH)
13CNMR(CDCl3、500MHz):δ28.59;31.77;37.02;42.52;43.96;44.02;64.21;64.26
また、生成物を質量分光法により特徴付けした。エレクトロスプレーイオン化:421[M−H]-
【0142】
例8
加水分解性のアダマンタン架橋剤の合成
【化18】

【0143】
合成
1−アダマンタンメチルアミン(0.152g、0.92ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を、エチレングリコールビス[スクシンイミジルスクシネート](EGS)(0.2g、0.43ミリモル、ピエールス社、ロックホルド、IL)を10mLの無水ジクロルメタンに溶解してなる溶液に添加した。生じた溶液を室温で5時間撹拌した。次いで、それを0.1NのHClで酸性化し、ジクロルメタンで抽出した。有機相をMgSO4で乾燥し、次いで真空下に濃縮し乾固させた。これは0.22gの固体を与えた(収率90%)。
【0144】
特徴付け
上記の生成物を質量分光法により特徴付けした。エレクトロスプレーイオン化:557[M+H]+、579「M+Na」+、1135[2M+Na]+
【0145】
例9
ジアダマンタンポリエチレングリコール各溶剤の合成
種々の方法を研究した。
【0146】
方法I二酸−ポリエチレングリコールを使用
【化19】

【0147】
1−アダマンタンメチルアミン(0.64ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を、PEG−二酸(0.32ミリモル、フルカ社、ミルウオーキー、WI)のジクロルメタン溶液に添加した。1,3−ジクロルヘキシルカルボジイミド(DCC)(3.2ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を添加し、生じた溶液を室温で終夜撹拌した。沈澱(ジシクロヘキシルイソ尿素DCU)をろ過し、ろ液を18%HClで洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥し、次いで真空下に濃縮乾固させた。生じた固体を水に再溶解させて残っているDCCを沈澱させた。DCCをろ過し、ろ液を凍結乾燥させた。
【0148】
方法IIジスクシンイミジルプロピオネートポリエチレングリコールを使用
【化20】

【0149】
1−アダマンタンメチルアミン(0.1g、0.60ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を、ジスクシンイミジルプロピオネートポリエチレングリコール(PEG3400−(SPA)2)(1.02g、0.30ミリモル、シェアウオーター・ポリマーズ社、ハンツビル、AL)を10mlのジクロルメタンに溶解してなる溶液に添加した。生じた溶液を室温で終夜撹拌した。溶媒を真空下に蒸発させ、残留物を水に溶解し、遠心分離して過剰の1−アダマンタンメチルアミンを除去した。次いで、上積み液を1,000 MWCO Spectra/Por膜装置に移し、水に向けて24時間透析した。次いで、溶液を凍結乾燥した。これは0.88gの固体を与えた(収率:84%)。
【0150】
方法IIIポリエチレングリコールを使用(サンジエ他、2000、Langmuir 16:1634−1642)
【化21】

【0151】
ポリエチレングリコール(Mw=1000)(1g、1ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を70℃で終夜真空下に加熱することによって乾燥した。この乾燥ポリエチレングリコールを無水ジクロルメタン(25mL)に溶解させた後に、これにイソシアン酸1−アダマンチル(0.39g、2.2ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を添加した。次いで、二つの触媒:ジブチル錫ジラウレート(63.2mg、0.1ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)及びトリエチルアミン(10.1mg、0.1ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を添加した。反応混合物を7時間加熱還流した。溶媒を除去した後に、反応生成物を蒸留水に溶解した。この水溶液を活性炭を添加することにより精製し、連続ろ過し、次いで凍結乾燥した。生じた重合体が70%の収率で回収され、1HNMRにより特徴付けした。
【0152】
方法IVジ−ベンゾトリアゾールカーボネートポリエチレングリコールを使用
【化22】

【0153】
1−アダマンタンメチルアミン(0.1g、0.60ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を、ジ−ベンゾトリアゾールカーボネートポリエチレングリコール(PEG3400−(BTC)2)(1.02g、0.30ミリモル、シェアウオーター・ポリマーズ社、ハンツビル、AL)を10mLのジクロルメタンに溶解してなる溶液に添加した。生じた溶液を室温で終夜撹拌した。溶媒を真空下に蒸発させ、残留物を水に溶解し、遠心分離して過剰の1−アダマンタンメチルアミンを除去した。次いで、上積み液を1,000 MWCO Spectra/Por膜装置に移し、水に向けて24時間透析した。次いで、溶液を凍結乾燥した。これは0.88gの固体を与えた(収率:84%)。
【0154】
例10
加水分解性のジアダマンタンポリエチレングリコール架橋剤の合成
種々の方法を研究した。
【0155】
方法Iポリエチレングリコールを使用
【化23】

【0156】
ポリエチレングリコール(Mw=1000)(1ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を70℃で終夜真空下に加熱することによって乾燥した。この乾燥ポリエチレングリコールを無水トルエン(15mL)に溶解させた後に、これに1−アダマンタン酢酸(2.2ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を添加した。次いで、p−トルエンスルホン酸(アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を触媒量で添加した。生じた混合物をジーン・スターク装置を使用して16時間共沸還流した。反応の完了後に、溶媒を真空下に除去し、生じた重合体をエーテルで沈澱させた。
【0157】
方法IIジスクシンイミジルスクシネートポリエチレングリコールを使用
【化24】

【0158】
1−アダマンタンメチルアミン(0.1g、0.60ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を、ジスクシンイミジルスクシネートポリエチレングリコール(PEG3400−(SS)2)(サンバイオ社、980−5、クワン−ヤン・ドン、アニャン市、韓国)(0.30ミリモル)を10mLのジクロルメタンに溶解してなる溶液に添加した。生じた溶液を室温で終夜撹拌した。溶媒を真空下に蒸発させ、生じた重合体をエチルエーテルで沈澱させた。
【0159】
例11
トリアダマンタン架橋剤の合成
【化25】

【0160】
1−アダマンタンメチルアミン(0.212g、1.29ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を、アミノ三酢酸トリス−スクシンイミジル(TSAT)(0.2g、0.41ミリモル、ピエールス社、ロックホルド、IL)を10mLの無水ジメチルホルムアミド(アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)に溶解してなる溶液に添加した。生じた混合物をアルゴン雰囲気下に室温で14時間撹拌した。沈澱をろ過し、質量分光法により特徴付けした。
エレクトロスプレーイオン化:633.4[M+H]+、655.6「M+Na」+、1265.3[2M+H]+、1287.1[2M+Na]+
【0161】
例12
テトラ−アダマンタン架橋剤の合成
【化26】

【0162】
1−アダマンタンメチルアミン(0.212g、1.29ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を、テトラキス(N−スクシンイミジルカルボキシプロピル)ペンタエリトリット(NHS−4)(0.1g、0.12ミリモル、モレキュラー・バイオサイエンス社、ボルドー、CO)を5mLの無水ジメチルホルムアミド(アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)に溶解してなる溶液に添加した。生じた混合物をアルゴン雰囲気下に室温で14時間撹拌した。沈澱をろ過し、質量分光法により特徴付けした。
エレクトロスプレーイオン化:1013.7[M+H]+、1035.8「M+Na」+
【0163】
例13
テトラ−アダマンタンポリエチレングリコール架橋剤の合成
方法Iペンタエリトリットエトキシラート(15/4EO/OH)を使用
【化27】

【0164】
ペンタエリトリットエトキシラート(15/4EO/OH)(Mn=797)(1ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を70℃で終夜真空下に加熱することによって乾燥した。この乾燥重合体を無水ジクロルメタン(25mL)に溶解させた後に、これにイソシアン酸1−アダマンチル(4.4ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を添加した。二つの触媒:ジブチル錫ジラウレート(0.1ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)及びトリエチルアミン(0.1ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を添加した。反応混合物を7時間加熱還流した。溶媒を除去した後に、反応生成物を蒸留水に溶解した。この水溶液を、活性炭を添加し、連続ろ過することによって精製し、次いで凍結乾燥した。
【0165】
方法II4−アームPEGを使用
【化28】

【0166】
4−アームPEG(Mn=10000)(1ミリモル、シェアウオーター・ポリマーズ社、ハンツビル、AL)を70℃で終夜真空下に加熱することによって乾燥した。この乾燥重合体を無水ジクロルメタン(25mL)に溶解させた後に、これにイソシアン酸1−アダマンチル(4.4ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を添加した。二つの触媒:ジブチル錫ジラウレート(0.1ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)及びトリエチルアミン(0.1ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を添加した。反応混合物を7時間加熱還流した。溶媒を除去した後に、反応生成物を蒸留水に溶解した。この水溶液を、活性炭を添加し、連続ろ過することによって精製し、次いで凍結乾燥した。
【0167】
例14
加水分解性のテトラ−アダマンタンポリエチレングリコール架橋剤の合成
方法Iペンタエリトリットエトキシラート(15/4EO/OH)を使用
【化29】

【0168】
ペンタエリトリットエトキシラート(15/4EO/OH)(Mn=797)(1ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を70℃で終夜真空下に加熱することによって乾燥した。この乾燥重合体を無水トルエンに溶解させた後に、これに1−アダマンタン酢酸(4.4ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を添加した。次いで、p−トルエンスルホン酸(アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を触媒量で添加した。生じた混合物をジーン・スターク装置を使用して16時間共沸還流した。反応の完了後に、溶媒を真空下に除去し、生じた重合体をエーテルで沈澱させた。
【0169】
方法II4−アームPEGを使用
【化30】

【0170】
4−アームPEG(Mn=10000)(1ミリモル、シェアウオーター・ポリマーズ社、ハンツビル、AL)を70℃で終夜真空下に加熱することによって乾燥した。この乾燥重合体を無水トルエンに溶解させた後に、これに1−アダマンタン酢酸(4.4ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を添加した。次いで、p−トルエンスルホン酸(アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を触媒量で添加した。生じた混合物をジーン・スターク装置を使用して16時間共沸還流した。反応の完了後に、溶媒を真空下に除去し、生じた重合体をエーテルで沈澱させた。
【0171】
方法III4−アームPEG−スクシンイミジルスクシネート(PEG−SS)4を使用
【化31】

【0172】
1−アダマンタンメチルアミン(0.069g、0.44ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を、1gのジスクシンイミジルスクシネートポリエチレングリコール((PEG10k−SS)4)(サンバイオ社、980−5、クワン−ヤン・ドン、アニャン市、韓国)(0.1ミリモル)を10mLのジクロルメタンに予め溶解してなる溶液に添加した。生じた溶液を室温で終夜撹拌した。溶媒を真空下に蒸発させ、生じた重合体をエーテルで沈澱させた。
【0173】
例15
オクタ−アダマンタンポリエチレングリコール架橋剤の合成
【化32】

【0174】
8−アームPEG(Mn=10000)(1ミリモル、シェアウオーター・ポリマーズ社、ハンツビル、AL)を70℃で終夜真空下に加熱することによって乾燥した。この乾燥重合体を無水ジクロルメタン(25mL)に溶解させた後に、これにイソシアン酸1−アダマンチル(4.4ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を添加した。二つの触媒:ジブチル錫ジラウレート(0.1ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)及びトリエチルアミン(0.1ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を添加した。反応混合物を7時間加熱還流した。溶媒を除去した後に、反応生成物を蒸留水に溶解した。この水溶液を、活性炭を添加し、連続ろ過することによって精製し、次いで凍結乾燥した。
【0175】
例16
加水分解性のオクタ−アダマンタンポリエチレングリコール架橋剤の合成
【化33】

【0176】
8アームPEG(Mn=10000)(1ミリモル、シェアウオーター・ポリマーズ社、ハンツビル、AL)を70℃で終夜真空下に加熱することによって乾燥した。この乾燥重合体を無水トルエンに溶解させた後に、これに1−アダマンタン酢酸(4.4ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を添加した。次いで、p−トルエンスルホン酸(アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を触媒量で添加した。生じた混合物をジーン・スターク装置を使用して16時間共沸還流した。反応の完了後に、溶媒を真空下に除去し、生じた重合体をエーテルで沈澱させた。
【0177】
例17
マルチアダマンタン架橋剤の合成
方法I分岐状PEIを使用
【化34】

【0178】
1−アダマンタン酢酸(アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を、PEI(アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を25mMのMES緩衝液(pH6.5)に溶解してなる溶液に添加した。次いで、この反応混合物に1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を添加した。反応混合物を室温で24時間撹拌し、次いで10,000 MWCO Spectra/Por膜装置に移し、水に向けて24時間透析した。次いで、溶液を凍結乾燥した。
【0179】
方法IIプルランを使用(秋吉他、Macromolecules 26:3062−3068)
【化35】

【0180】
イソシアン酸1−アダマンチル(アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)をピリジン含有の無水DMSO中でプルラン(シグマ−アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)と80℃で8時間反応させ、生じた混合物を4℃で終夜貯蔵した。沈澱を分離し、水に向けて透析することにより精製し、凍結乾燥した。アダマンタン基の置換度を1HNMRにより決定した。
【0181】
例18
加水分解性のマルチアダマンタン架橋剤の合成(砂本他、Macromolecules 25:5665−5670)
【化36】

【0182】
プルラン(シグマ−アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)を無水DMFに60℃で溶解させた。無水DMFに溶解させた塩化1−アダマンタンカルボニル(アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)と無水ピリジンを添加した。生じた混合物を60℃で2時間、室温で更に1時間撹拌した。この混合物をエタノールに注いだ。沈澱を集め、エタノールで、次いでジエチルエーテルで洗浄した。固体を50℃で2時間真空乾燥した。アダマンタン基の置換度を1HNMRにより決定した。
【0183】
例19
自己架橋重合体の合成
シクロデキストリン官能基とアダマンタン官能基を含有する重合体の合成を次の三つの工程で実施した。
【0184】
1.工程1:単量体6A,6D−ビス(2−アミノ−2−カルボキシエチルチオ)−6A,6D−ジデオキシ−β−シクロデキストリン(CD−ビスCys)の合成
【化37】

【0185】
磁気攪拌棒、凝縮器及びセプタを備えた500mLの二口丸底フラスコ中で167mLの0.1M炭酸ナトリウム緩衝液を45分間脱気した。この溶液に、1.96g(16.2ミリモル)のL−システインと10.0g(73.8ミリモル)のジヨード−β−シクロデキストリン(ゴンザレス他、1999、Bioconjugate Chem.、10:1068−1074及びワング他、2001、Bioconjugate Chem.、12(2):280−290;H.ゴンザレス、S.J.ワング及びM.E.デービス、(2000)“線状シクロデキストリン共重合体”、WO001734A1)を添加した。生じた懸濁液を還流温度で4.5時間、その溶液が透明無色になるまで、加熱した。次いで、それを室温まで冷却し、1NのCHlを使用してpH3まで酸性化した。アセトン(溶液の3倍の重量比)をゆっくりと添加することにより生成物を砕いた。これにより、9.0g(収率90.0%)のCD−ビスCysが得られた。生じた固体を、0〜0.4Mの重炭酸アンモニウム溶液の勾配溶出を使用して、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーに付した。
ESI/MS(m/z):1342[M]+、1364[M+Na]+
CD−ビスCysの純度はHPLCにより確認された。
【0186】
2.工程2:CD−ビスCys−PEG3400共重合体の合成
【化38】

【0187】
CD−ビスCys(2g、1.49ミリモル)とSPA−PEG3400−SPA(5.07g、1.49ミリモル、シェアウオーター社)を乾燥DMSO(40mL)に溶解した。10分後に、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、0.571mL、2.2当量、アルドリッチ社)をアルゴン雰囲気下に添加した。反応混合物をアルゴン雰囲気下に2〜6日間撹拌した。重合時間の関数として粘度の上昇が観察された。重合溶液に激しく撹拌しながら水(200mL)を添加した。次いで、この溶液を25,000 MWCO Spectra/Por7膜装置において、1mLの水当たり約10mgの重合体の濃度で2.5日間透析した。凍結乾燥した後、白色の羽毛状粉末(6.2g、92%の収率)が得られた。
【0188】
特徴付け:光散乱及び分子量決定
バウシュ&ロム ABBE−3L屈折率を使用して、燐酸塩緩衝塩水1x(PBS)((セルグロ・メディアテク社、ハーンドン、VA))中で比屈折率の増分dn/dcを測定した。次いで、重合体試料を日立D6000 HPLC装置系で分析した。この装置系は、ERC−7512 RI検出器、精密検出器PD2020/DLS静的光散乱検出器及び溶離液として燐酸塩緩衝塩水1xを0.7mL/分の流量で使用するPLアクアゲル−OH 30(ポリマー・ラボラトリーズ社、アムハースト、MA)カラムを備えた。dn/dcは0.1348と計算され、重量平均分子量Mwは103,500Daで、1.71の多分散性指数Mw/Mnと決定された。
【0189】
3.CD−ビスCys−PEG3400共重合体へのアダマンタンの抱合
【化39】

【0190】
CD−ビスCys−PEG3400共重合体(0.32ミリモルの反復単位)を乾燥DMSOに溶解し、10分間攪拌した。この重合体溶液に1−アダマンタンメチルアミン(0.76ミリモル、アルドリッチ社、ミルウオーキー、WI)、DIEA(0.76ミリモル)、EDC(0.96ミリモル)及びNHS(0.71ミリモル)を添加した。この混合物を約16時間撹拌した。生じた混合物に水を添加して過剰の1−アダマンタンメチルアミンを除去した。沈澱をろ過した後、溶液を10,000 MWCO Spectra/Por膜装置で水に向けて48時間透析し、次いで凍結乾燥した。アダマンタン基の置換度を1HNMRにより決定した。
【0191】
例20
RGD−変性アダマンタン−PEG誘導体の合成
【化40】

【0192】
工程1VS−PEG5000−AD(2)の合成
ビニルスルホン−PEG5000−NHS(1)(0.147ミリモル、シェアウオーター・ポリマーズ社)を撹拌棒を備えた丸底フラスコに添加し、5mlのDMSOに溶解した。これにアダマンタンメチルアミン(0.147ミリモル、アルドリッチ社)を添加した。生じた溶液を室温で1時間撹拌した。生じた混合物を3500MWCO膜装置(Spectra Por)で終夜透析した。次いで、その溶液を凍結乾燥してビニルスルホン−PEG5000−AD(2)を得た。
【0193】
工程2RGDpep−PEG−AD抱合体の合成
コック他によりBioconjugate Chem.(2000)、13(1):128−135に記載のようにして合成したRGDpep−SHをPBS(燐酸塩緩衝塩水)1x(pH7.2)に溶解した。次いで、RGDpep−SH溶液にビニルスルホン−PEG5000−AD(2)を添加した。生じた溶液を室温で2時間撹拌した。次いで、重合体溶液をSpectra/Por7 MWCO3500膜装置(スペクトラム社、ヒューストン、TX)に移し、水に向けて24時間透析した。次いで、この溶液を凍結乾燥してRGDpep−PEG5000−AD(3)を得た。
【0194】
例21
物質の製造
包接ホストを持つ重合体(例1〜6)をPBS(燐酸塩緩衝塩水)1x(pH7.2)に100mg/mLで溶解した。次いで、架橋剤(例7〜18)(アダマンタン/シクロデキストリンの比:1/1又は1/2)を添加した。生じた混合物を激しく混合して架橋剤を溶液状にした。約10分間で粘度上昇が観察された。
【0195】
例22
イオン型物質の製造
多価イオンを使用
包接ホストとカルボキシル基を持つ重合体(例19の工程2を参照。)を0.1MのCaCl2水溶液に100mg/mLで溶解し、次いで架橋剤(例7〜18)の混合物(アダマンタン/シクロデキストリンの比:1/1又は1/2)を入れた小瓶に添加した。生じた混合物を激しく混合して架橋剤とジアミノ化合物を溶液状にした。粘度上昇が観察された。
ジアミノ化合物を使用
包接ホストとカルボキシル基を持つ重合体(例19の工程2を参照。)を水に100mg/mLで溶解し、次いで架橋剤(例7〜18)の混合物(アダマンタン/シクロデキストリンの比:1/1又は1/2)とジアミノ化合物様のPEG3400−(NH22(シェアウオーター・ポリマーズ社)又はCn2n−(NH22(NH2/COO-の比:1/1又は1/2)を入れた小瓶に添加した。生じた混合物を激しく混合して架橋剤とジアミノ化合物を溶液状にした。粘度上昇が観察された。
ポリ陽イオンを使用
包接ホストとカルボキシル基を持つ重合体(例19の工程2を参照。)を水に100mg/mLで溶解し、次いで架橋剤(例7〜18)の混合物(アダマンタン/シクロデキストリンの比:1/1又は1/2)とポリ陽イオン様のポリリジン又はポリエチレンイミンを入れた小瓶に添加した。生じた混合物を激しく混合して架橋剤とポリ陽イオンを溶液状にした。粘度上昇が観察された。
【0196】
例23
ウイルス又は蛋白質を含有する物質の製造
包接ホストを持つ重合体(例1〜6)を、蛋白質又はウイルスを所望の濃度で含有するPBS(燐酸塩緩衝塩水)1x(pH7.2)に溶解して重合体溶液を100mg/溶液mLの最終濃度で得た。次いで、架橋剤(例7〜18)(アダマンタン/シクロデキストリンの比:1/1又は1/2)を添加した。生じた混合物を激しく混合して架橋剤を溶液状にした。約10分間で粘度上昇が観察された。
【0197】
例24
シグナルペプチドを含有する物質の製造
包接ホストを持つ重合体(例1〜6)をPBS(燐酸塩緩衝塩水)1x(pH7.2)(所望のときは、蛋白質、ウイルス又は多の薬剤若しくは薬剤送達系を含有する。)に溶解して重合体溶液を100mg/溶液mLの最終濃度で得た。次いで、架橋剤(例7〜18)(アダマンタン/シクロデキストリンの比:1/2)とシグナルペプチド(例20)(アダマンタン/シクロデキストリンの比:1/2)を添加した。生じた混合物を激しく混合して架橋剤を溶液状にした。約10分間で粘度上昇が観察された。
【0198】
例25
マトリックスを介する細胞の移動度に関する研究
a.マトリックス(0.2mL、CD−PEG3400と燐酸ビス(2−(1−アダマンチル)エチル)とからなる。)を例21に記載のように製造し、FluoroBlockインサート(24個のウエル構成、ファルコン カタログ#351152)の底部に添加した。
b.CCD細胞をPBSですすぎ、次いで5μMのカルセイン−AM(蛍光マーカー)に15〜30分間曝露した。
c.次いで、CCD細胞をトリプシン処理し、インサート内のマトリックスの頂部に0.5mLの培地中10,000個の細胞/インサートで置いた。
d.次いで、10ng/mLのヒトPDGF蛋白質を含有する培地の1mLを下方の室に添加した。
e.マトリックスから下方の室への細胞の移動度を蛍光顕微鏡法により3日間モニターした。図5に示すように、マトリックスを介してインサートを通り過ぎる上首尾の移動が、平板培養の72時間後に蛍光顕微鏡法により観察される下方の室での細胞の存在によって立証された。
【0199】
例26
マトリックスで処方されたCD−PEIポリプレックスによるCCD線維芽細胞についてのトランスフェクション研究
24個のウエルからなるプレートのウエルの底部に〜0.2mLの下記の物質を被覆した。
a.被覆なし(対照例)。
b.マトリックス。
c.1μgのルシフェラーゼ遺伝子含有プラスミドを含有するマトリックス。
d.CDPポリプレックスを含有するマトリックス。
e.CDPEIポリプレックスを含有するマトリックス。
f.被覆なし。遊離のCDPEIポリプレックス(積極的な対照例I:伝統的トランスフェクション操作手順)。
g.被覆なし。遊離のCDPポリプレックス(積極的な対照例II:伝統的トランスフェクション操作手順)。
【0200】
CCD(線維芽細胞、ATCC)を24個のウエルからなるプレートにおいて40,000個の細胞/ウエルでもって平板培養した。細胞を平板培養して24時間後に、培地を取り除き、細胞をPBSですすぎ、溶解させた。細胞溶解物をルシフェラーゼアッセイ法を使用してルシフェラーゼ蛋白質活性について分析した。結果をRLU/ウエルとして記録した。この実験は、細胞がマトリックス中に上首尾で移動でき及びマトリックス中に含有されたポリプレックスによってトランスフェクションされることを立証している。トランスフェクション効率は、培地中にポリプレックスがない場合によるトランスフェクションよりもごくわずかに低い。
【0201】
註:該マトリックスは、ジアダマンタン架橋剤(燐酸ビス(2−(1−アダマンチル)エチル)、合成操作については例7を参照。)で架橋されたCD−PEG(合成操作については例3の方法IIを参照。)からなる。マトリックス処方の手順は例21に記載した。ポリプレックスがマトリックス中に包含されるときは、そのポリプレックスは、10μLの重合体溶液を10μLのルシフェラーゼ遺伝子含有プラスミド溶液(0.1mg/mL)に最適な装入比で添加することによって製造した。ポリプレックスは、マトリックスのCD−PEG成分及び例21に記載のように処方されたマトリックスを溶解するのに使用される緩衝剤溶液に含有させた。
積極的な対照例実験のために、ポリプレックスを、説明した通りに製造し、細胞の培地に直接添加する。
【0202】
例27
本発明の物質は、図1に概略的に画かれるように、シクロデキストリン(CD)含有重合体(A)と、このシクロデキストリン含有重合体と包接錯体を形成することができる分子を末端基とする二官能性又は多官能性リンカー(B)との自己組立によって製造することができる。物質(P)は、蛋白質、細胞、ウイルス、ポリプレックス、又はその他の治療剤若しくは治療剤含有送達系を含有するように処方することができる。
【0203】
次式:
【化41】

のリンカーの例は、ブレスロー及びチャン、JACS(1996)、118:8495−8496並びにチャン及びブレスロー、JACS(1993)、115:9353−9354に記載されたプロトコルに従って製造することができる。当業者ならば、斯界で一般に知られた技術に照らして、リンカーという用語が使用されるときに、このリンカー分子として使用できる広範な異なったリンカーに至るように、上記のプロトコルを容易に修正できるであろう。二官能性リンカー又はシクロデキストリン含有重合体は、治療剤の放出及び(又は)物質の減成を容易にするために生分解性結合を含有することができる。
【0204】
物質の治療効能を増大させる化合物、例えば、シグナルペプチド又は他の細胞移動を容易にさせる部分を、図2に記載するように、包接錯体ゲストを関心のある物体に抱合させ且つその抱合体を物質内に包含させることによって物質中に組み入れることができる。抱合体は、架橋プロセスの前に、その間に又はその後に含有させることができる。
【0205】
例えば、次式:
【化42】

を有する反復サブ単位からできた重合体、例えば、単量体のMWがほぼ4800であるものを、PBS(燐酸塩緩衝塩水)1x(pH7.2)中の100mg/mLの重合体溶液として製造することができる。その際に、混合物を遠心分離し、次いで重合体を可溶化させるように溶液を撹拌することが望ましいであろう。33.3μL量の次式:
【化43】

のリンカー分子のジクロルメタン溶液(132mg/mL)を小瓶に入れて室温で又は37℃のオーブンでジクロルメタンを蒸発させることができる。次いで、1mLの重合体溶液を残留リンカーに添加し、随意に、溶解を容易にさせるためにすり砕くことができる。次いで、この溶液を静置し、一定の時間後に、例えば10分後に、この溶液は粘稠になろう。この架橋した重合体中に治療剤又はウイルス粒子のような外部物質を包含させるためには、この物質は最終静置期間の前に溶液中に存在できる。例えば、この物質は、シクロデキストリン重合体を溶解させるのに使用した溶媒中に又はリンカー分子の初期溶液中に存在でき、或いは架橋反応の前に成分か又は最終溶液のいずれかに添加することができる。
【0206】
例28
方法及び結果
マトリックス1(例3の方法IIに従って製造した60kD重合体及び例9の方法IIに従って製造した架橋剤)及びマトリックス2(例3の方法IIに従って製造した80kD重合体及び例9の方法IIに従って製造した架橋剤)を使用した。
インビボでの60kDマトリックスの適用
300μLの60kDマトリックスを1ccの注射器中に吸い上げ、注射器のプランジャーを上下に動かして気泡の全部を除去した。若干圧力を要したが、23Gの針がマトリックスを通過させるのに十分な大きさであった。20Gの針は、マトリックスを容易に通過させるのに十分な大きさであった。
雄のスプラグ−ダウレイラットを犠牲にし、毛を剃り、それらの背側領域に8mmの創傷を作った。20Gの針を付けた1ccの注射器を使用して、100μLの容積が残るまで過剰の60kDマトリックスを追い出した。次いで、マトリックスを8mmの創傷穴に溢れることなく適用した。同じ操作手順を、150μLのマトリックス1を除いて、達成したが、これはラットの背中の皮膚における8mmの穴創傷から溢れた。
切開創傷へのマトリックスの適用の可能性を探求した。長さがほぼ2インチの全厚切開をラットの背中に作った。注射器に200μLの60kDマトリックを満たし、20Gの針を使用して切開部位で首尾良く皮内注射された。
80kDマトリックスの適用
2個の全厚が8mmの皮膚の穴をラットの背中に作った。1個の穴を1ccの注射器と20Gの針を使用して100μLの80kDマトリックスにより処理した。この容量は穴を均等に満たした。しかし、60kDマトリックスと比べて、80kDマトリックスを送出させるのに多くの力を要した。150μLの80kDマトリックスは8mmの皮膚の穴に溢れるまでになった。200μLの80kDマトリックスは、注射を完了するのに相当な力が要求されたが、皮内注射により首尾良く送出された。
【0207】
例29
ジ−アダマンタン−PEG(36.5mg/mL)(例9の方法II)による架橋の前後におけるCD−PEG3400マトリックス(100mg/mL)(例3の方法II)の初期流体力学的データを得るための研究を行なった。これらのデータを、予備臨床モデルの開発に使用された標準処方物の一つであるコラーゲンマトリックスと2.4mg/mLで比較した。
【0208】
結果
CD−PEG3400重合体を100mg/mLで架橋剤なしで使用して最初の一連の実験を行なった。種々の一定の歪みの下で周波数掃引を行なった。
図7は、37℃での周波数掃引を示す。G”はG’よりも大きく、ほぼ3.2のtanδを生じる。予期されるように、この重合体溶液はほとんど粘性の挙動を示す。これは、周波数の関数としてのG’の勾配により確認される。純粋に粘性の流体については2の理論勾配が予期されるが、純粋に弾性の流体についてはある周波数範囲にわたって0の勾配が予期される。構造上のレベルでは、これらの結果の説明は、重合体分子がある種の弱い相互作用によって互いに相互作用するということである。物質に加えられたエネルギーは、相互作用(回転、絡み合い)の点を動かすことによって分子によって弾性的に蓄えることができる。次いで、このエネルギーの大部分は熱により消散される。この重合体溶液の測定された複素粘度は、10.0rad/秒で0.27Pasであった。
図8は、20℃での同じ物質を示す。10rad/秒で1.46Pasの粘度上昇が観察された。この値は、37℃での粘度よりもほぼ7倍高い。
図9は、36.5mg/mLのジ−アダマンタン−PEGにより架橋されたCD−PEG3400重合体についての周波数掃引を示す。架橋剤の添加は、マトリックスの粘度をほぼ33.1Pasまで100倍以上上昇させた。同時に、tanδは1.2の値までほぼ3倍減少し、G’の勾配は0.58に減少した。これらの結果は、弾性的挙動の上昇と一致する。構造的には、物質内の重合体の運動は拘束され、加えられたエネルギーは網状構造の点と点の間で一層限られた態様で蓄えることができる。この挙動は、浸漬された物体が表面から引き去られるときに架橋したマトリックスが長い糸を引く傾向があるという観察によっても確認される。全体的には、粘性力が依然として優勢である(tanδ>1)(図11を参照)。
図10は、20℃での架橋した重合体を示す。粘度はほぼ50Pasまで更に上昇したが、その他の特徴の全ては類似のままであった。
比較として、図11は、2.4mg/mLでのコラーゲンマトリックスについての周波数掃引を示す。その硬化状態(即ち、37℃での)のコラーゲンマトリックスは、tanδが0.14の低い値で及びG’の勾配が0.07で、典型的なゲルの挙動を示す。構造的には、これは永久的で規則的に配列された網状構造を表わすものである。加えられたエネルギーは、網状構造の点と点の間で限られた程度まで蓄えることができるだけで、大いに回復される。この物質の複素粘度は12.8Pasであった。
【0209】
例30
インビトロでの生体適合性の実験
方法
例3の方法IIに従って製造された58kDシクロデキストリン(CD)重合体及び例9の方法IIからの架橋剤を使用して、マトリックスを製造した。マトリックスが処方されたならば、pEGFP DNA又はGFCBウイルスのいずれかをマトリックスと一緒に混合した。少量のDNA又はウイルス及び多量のDNA又はウイルスDNA又はウイルスを共に処方した。種々の処理グループを表2にリストする。58kDシクロデキストリンマトリックスの最終濃度は、全てのグループについて100mg/mLであった。それぞれの各剤のほぼ100μLをピペットにより48個のウエルの平底プレートに移した。それぞれのグループを2回試験した。試験処方物を入れた48個のウエルのプレートを室温でほぼ30分間静置した。2.5×104個のCCD−1074sk細胞(ヒト皮膚線維芽細胞)を、10%の胎児牛血清(FBS)を含有する200μL容量のDMEM培地中の架橋したマトリックス処方物の頂部に置いた。CCD−1074sk細胞系統は、細胞計数時に、トリパンブルー染色により95%よりも大きい細胞生育可能性で、ほぼ70%融合性であった。グループ1〜8を含有するそれぞれのウエルを倒立顕微鏡でもって細胞生育可能性及びGFP蛍光シグナルについて毎日検査した。実験を開始して4日及び8日目にウエルのそれぞれに200μLの新鮮な培地を添加した(置き換えなかった)。プレートを37℃で5%のCO2でインキュベーションした。
【0210】
CD−lPEIの合成
【化44】

【0211】
線状のPEI25,000(500mg、ポリサイエンス社)及び6−モノトシル−β−シクロデキストリン(3.868g、シクロデキストリン・テクノロジーズ・デブロープメント社)を36mLのDMSOに溶解した。生じた混合物を70℃で6日間撹拌した。この溶液は淡黄色に変化した。次いで、溶液をSpectra/Por MWCO 10,000膜装置に移し、水に向けて6日間透析した。次いで、水を凍結乾燥により除去して僅かに着色した固体とした。シクロデキストリン/PEI比を、1HNMRのプロトンインテグレーションに基づいて計算した。
(Varian、300MHz、D2O)δ:5.08ppm(s、br、CDのC1H、);3.3−4.1ppm(m、br、CDのC2H−C6H);2.5−3.2ppm(m、br、PEIのCH2
【0212】
β−シクロデキストリン重合体(CDP−イミダゾール)
【化45】

【0213】
β−CDPを、前記した操作手順(H.ゴンザレス、S.ワング&M.デービス、(1999)Bioconjugate Chem.、10:1068−1074)に従って合成した。重合体の末端にある第一アミンを4−イミダゾール酢酸(アルドリッチ社、セントルイス、MO)でアミド化することによってイミダゾールをβ−CDPに抱合させた(D.セーガル&I.ビジェイ、(1994)Anal.Biochem.、218:87−91)。代表的な実験において、200mg(33.3μモル)のβ−CDPを800μLの25mMのMES(pH6.5)緩衝液に溶解し、これに4−イミダゾール酢酸、ナトリウム塩水和物(49.3mg、0.333ミリモル)を添加した。この溶液を使用して1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)(0.128g、0.666ミリモル)を溶解させた。次いで、200μLの25mMのMES(pH6.5)緩衝液に溶解したN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(3.83mg、33.3μモル)を前記の重合体溶液に直ちに添加した。生じた溶液を室温で24時間撹拌し、次いでSpectra/Por MWCO 1000膜装置において水に向けて透析した。溶液を凍結乾燥した。イミダゾール含有量をTNBSアッセイ法(G.T.ハーマンソン、(1996)“バイオコンジュゲート技術”、p132、アカデミックプレス社、ロックホルド、IL)により決定し、次いでUV測定により未反応重合体の末端基の量を定量した。イミダゾールの抱合は73%であった。
【0214】
表2:処理グループ/ウエル(48個のウエルの平底プレート)
【表2】

【0215】
結果
1日目:グループ1〜4は乾燥し始めた。それらはプレートから離昇し始めていた。CCD−1074sk細胞は形態学的に“丸くなり”、浮遊していた。グループ5〜8は健全に見えた。細胞はプレートに結び付き、形態学的に“伸びていた”(線維芽細胞の典型的な状態)。しかし、グループのどれもこの時点でGFPの発現がなかった。図12を参照されたい。
2日目:グループ5〜8は健全に見えた。CCD−1074sk細胞はプレートに結び付き、“伸びていた”。グループ5〜6(GFCBグループ)は、GFPの発現に対して陽性であった。高い薬量(グループ5)のGFCBは、低い薬量のGFCB(グループ6)よりもGFPの発現が多かった。グループ1、3及び4は、この時点で完全に死んでいるように見えた。しかし、連結細胞はグループ2(58kDシクロデキストリン中の0.025mg/mLのpEGFP+CDP−イミダゾール)において生きていた。グループ1〜4では検知できるGFPの発現はなかった。
4日目:グループ1〜4におけるCCD−1074sk細胞は死んでいるように見えた。細胞は浮遊していた。これらのグループのいずれもGFPの発現は検知できなかった。グループ5〜8は健全であった。グループ5〜6はGFPの発現に対して陽性であり、発現は2日目よりも鮮明であるように見えた。
5日目:グループ1〜4においてCCD−1074sk細胞は死んでいて、GFPの発現は見られなかった。グループ5〜8は健全であった。グループ5〜6はGFPの発現に対して陽性であり、その発現のレベルは前日よりも鮮明であるように見えた。
6日目:グループ1〜4においてCCD−1074sk細胞は死んでいて、GFPの発現は見られなかった。細胞をもはやモニターしなかった。グループ5〜8は健全であった。グループ5〜6は依然としてGFPを発現し、その発現のレベルは前日よりも鮮明であるように見えた。
8日目:グループ5〜8におけるCCD−1074sk細胞は依然として健全に見えた。形態学的には、それらは6日目から異なっているように見えなかった。それらは依然としてGFPを発現しており、最も鮮明に観察された強さにあると思われた。
12日目:グループ5〜8におけるCCD−1074sk細胞は健全であった。細胞の計数は、8日目よりも多かったように思えた。しかし、GFPの発現は減少しているように思われた。
13日目:グループ5〜8におけるCCD−1074sk細胞は健全であるように見えたが、GFPの発現は減少し始めた。
【0216】
例29
方法
インサート製薬会社からの説明書に従ってマトリックスA及びマトリックスBのための成分を処方した。マトリックスAは、pH7.2のPBS中の100mg/mLのβ−シクロデキストリン−PEG3400重合体(例3の方法II)と4.4mg/mLのジ−アダマンタン化合物架橋剤(例9の方法II)であった。二つの成分を秤量し、使用するまで別々に置いた。マトリックスBは、pH7.2のPBS中の100mg/mLのβ−シクロデキストリン−PEG3400重合体と36.5mg/mLのジ−アダマンタンPEG3400化合物架橋剤であった。成分を秤量し、使用するまで別々に置いた。
次の異なった送達方法を試験した。
【0217】
1)外科用包帯を使用する創傷部位へのマトリックスAの送達並びに外科用包帯でカバーする前の創傷部位へのマトリックスBの送達
ICRマウスをケタミン及びキシラジンで麻酔させた。背側領域の毛を剃り、2個の8mmの皮膚の穴を作った。少量の染料を含有する50μL(最終調節容量)のマトリックスAを混合し、次いでオプサイト(OpSite)包帯の四角い小片上に置いた。マトリックスを約2分間でゲル化させた。この期間中に、マウスの左の創傷穴をマスチゾル(Masutisol)包帯接着剤によって準備した。次いで、混合マトリックスAを含有するオプサイト包帯をめくり(“粘着”面を下にして)、左の創傷穴上に置いた。右の創傷穴をマスチゾルによって準備した。少量の染料を含有するマトリックスBも50μLの最終調節容量として作り、右の創傷穴上に直接置いた。これを約2分間でゲル化させ、次いでオプサイト包帯でカバーした。この動物を外科術から回復させ、4日後に犠牲にした。
【0218】
2)予備混合によるマトリックスA及び予備混合なしのマトリックスBの、前もって当てた外科用包帯を通しての創傷部位への送達
ICRマウスをケタミン及びキシラジンで麻酔させた。背側領域の毛を剃り、2個の8mmの皮膚の穴を作った。2個の創傷部位をマスチゾル接着剤によって準備し、オプサイト包帯の1枚を創傷上に置いた。少量の染料を含有する50μLの全注入容量とするようにマトリックスAを調製した。このマトリックスを1ccの注射器内に吸い上げ、注射器に23Gの針を付けた。ほぼ50μLが残るまで、過剰のマトリックスを注射器から追い出した。
次いで、この物質をオプサイト包帯を通して左の創傷床に注入させた。右側の創傷のために、マトリックスBを100μLまでの全注入容量となるように調製した。23Gの針を付けた1ccの注射器を使用してほぼ82μLのマトリックスBを吸い上げた。次いで、注射器内に小さいエアポケットを吸い上げた。次いで、ほぼ18μLの付随の架橋剤を同じ注射針中に吸い上げた。次いで、別の小さいエアポケットを注射器内に吸い上げた。最後に、少量(2〜4μLまで)の染料を注射器内に吸い上げた。27Gの針を右の創傷部位の一端に置いて包帯を通して空気をカバーした創傷部位から排気した。マトリックスBの別々の成分を含有する23Gの針を付けた注射器を包帯を通して(成分の予備混合なしに)置き、物質を創傷部位に注入させた。27Gの針は、注射器内の小さいエアポケットを排気させた。動物を外科術後に回復させ、4日後に犠牲にした。
【0219】
3)種々のゲージの針を使用する、PVAスポンジ中へのマトリックスA及びBの注入
HSDラットをケタミン及びキシラジンで麻酔させ、PVAスポンジをラットの腹側に皮下移植した。切開部を創クリップで閉じ、動物を4日間回復させた。マトリックスAを染料(2〜4μLまで)によって200μLまでの調節注入容量となるように処方した。マトリックス混合物を22Gの針を付けた1ccの注射器内に吸い上げ、注射器内で混合した。過剰の気泡を除去するように試みた。混合されたマトリックスを犠牲にした動物のPVAスポンジの中心に注入した。数分後に、創傷部位を開き、スポンジを検査した。
マトリックスBを200μLまでの注入をするように準備した。このマトリックスは少量の染料を含有し、22Gの針を使用して1ccの注射器内に吸い上げ、22Gの針を取除き、注入のために小さい23Gの針で置き換えた。物質を注射器内で混合し、過剰の気泡を除去するように試みた。マトリックスをPVAスポンジの中心に注入し、数分間放置し、次いで注入されたスポンジを検査するために動物を開いた。
【0220】
結果
1)外科用包帯を使用する創傷部位へのマトリックスAの送達並びに外科用包帯でカバーする前の創傷部位へのマトリックスBの送達
50μLのマトリックスA(最終調節容量)を少量の染料と混合し、オプサイト包帯の四角い小片上に置き、短期間(2分まで)でゲル化させ、次いで包帯をめくり(“粘着”面を下にして)、左の創傷部位に置いた。外科術の4日後に動物を犠牲にすると、創傷は乾燥しているように見え、動物は困難なしにマトリックスAに耐えたことが観察された。マトリックスは、送達時におけるその元の位置に、即ち、周囲の損傷してない若干の組織を含む創傷部位の頂部に留まっているように見えた。創傷部位に残ったマトリックスは、見掛けだけで、外科術の日よりも多くなかった。創傷部位には著しい炎症の出現は見られなかった。図12A−12Bを参照されたい。
また、少量の染料を含有するマトリックスBを50μLの最終調節容量で作り、右の創傷部位に直接置き、次いでオプサイト包帯でカバーした。動物を4日後に犠牲にしたときに、創傷は乾燥しているように見られ、動物はマトリックスBによく耐えたように見えた。創傷部位の周囲には炎症も他の悪影響も全体として見られなかった。マトリックスは外科術後に周囲の組織に分散せず、むしろ元の創傷部位に留まっていた。犠牲時に創傷部位に残ったマトリックスは、外面にあり、外科術の日におけるよりも多くなかった。図12A−12Bを参照されたい。
【0221】
2)予備混合によるマトリックスA及び予備混合なしのマトリックスBの、前もって当てた外科用包帯を通しての創傷部位への送達
50μLのマトリックスA(最終調節容量)を少量の染料と混合し、次いでオプサイト包帯の下で且つ左の創傷部位の上に直接注入した。マトリックスは、創傷部位に局在化して残り、周囲の損傷してない組織に分散しなかった。注射器内のエアポケットのために、投薬容量の正確な測定はできなかった。外科術の4日後に動物を犠牲にすると、創傷は乾燥しているように見られ、また動物は観察できる悪影響もなくマトリックスAによく耐えた。マトリックスは、送達時におけるその元の位置に、即ち、周囲の損傷してない若干の組織を含む創傷部位に留まっていた。マトリックスは、外科術後に他の周囲組織に分散しなかった。しかし、マトリックスは、創傷の表面上にだけ存在し、外科術の時点よりも多くなかった。全体を検査すると、創傷部位には炎症は見られなかった。図13A及び13Bを参照されたい。
少量の染料を含有する100μLの最終容量のマトリックスBを注射器内に吸い上げた。マトリックスの種々の成分(重合体、架橋剤及び染料)を注射器内に、個々の成分をエアポケットで分離するようにして、個々に吸い上げた。注射器内のエアポケットを除去するための排気用の針を包帯を通して創傷の一端に置き、またマトリックスBの分離された成分を、予備混合なしで、オプサイト包帯を通して右の創傷部位に直接注入した。この方法は、創傷部位にマトリックスを首尾良く注入するために最小量の加圧並びに皮膚の下のエアポケットを除去するように働く排気用の針を要求する。マトリックスBの成分の全てが創傷部位に送達されたならば、マトリックスは目視的な除去及び接触によって迅速にゲル化し、マトリックスは包帯から漏れ出なかった。マトリックスは創傷床に局在化して残り、周囲の組織に大きく拡散しなかった。動物を4日後に犠牲にしたときに、創傷は乾燥しているように見られ、動物は大きな悪影響なしにマトリックスBに耐えたように見えた。創傷部位の周囲には炎症も他の悪影響も見られず、マトリックスは局部的な創傷の領域に留まるように見えた。マトリックスは創傷部位に、しかも最初の注入時におけるよりも低い量で、局在化していた。図13A及び13Bを参照されたい。
【0222】
3)種々のゲージの針を使用する、PVAスポンジ中へのマトリックスA及びBの注入
マトリックスAを少量の染料を使用して調製し、1ccの注射器内に22Gの針より吸い上げた。ほぼ200μLのマトリックスをPVAスポンジ中に注入し、数分間放置し、次いで検査のために開いた。スポンジを検査すると、マトリックスは局在化したままであるように思われ、周囲の組織への分散は最小であった。
マトリックスBを調製し、少量の染料と混合し、22Gの針を付けた1ccの注射器内に吸い上げた。22Gの針(1.5インチ)をこれよりも小さい23Gの針(1インチ)で置き換えた。ほぼ200μLのマトリックスをPVAスポンジ中に注入に注入し、数分間放置し、次いで動物を検査のために開いた。スポンジを検査すると、マトリックスは局在化したままであるように思われ、周囲の組織への分散は最小であった。
【0223】
結論
マトリックスAとマトリックスBは、共に極めて迅速にゲル化し、非常に粘稠で濃かった。これらのマトリックスを皮下に及びPVAスポンジ中に注入することが可能でさえあるが、最も容易な送達方法は、マトリックスの種々の成分を別個に(小さいエアポケットによって分離させて)注射器中に吸い上げ、次いで23Gの針を使用してカバーされた皮膚穴に直接注入することであった。この方法では、第二の小さいゲージの針が創傷の包帯の下から過剰の空気を除去するのを助けることができる。
【0224】
例30
血小板由来の成長因子B(PDGF−B)が、線維芽細胞の増殖及び細胞外マトリックスの合成を刺激することが示された。PDGF−Bの発現を、ラットのPVAスポンジモデルにおいてシクロデキストリンマトリックス及びコラーゲンマトリックスについてRT−PCRによって比較した。
【0225】
【表3】

【0226】
方法
雄のハーラン・スプラグ−ダウレイラットの腹側に6個の小さい切開(0.5cm)を行い、ポリビニルアルコル(PVA、M−PACT(登録商標))を皮下移植した。移植してから4日後に、試験物質及び対照例物質をvPBS及び液状コラーゲン(コーヘジョン・ラボラトリーズ社、登録商標)又は前記のような58kDシクロデキストリン(CD)−アダマンタンマトリックスで希釈し、PVAスポンジ中に注入した。最終コラーゲン処方物は、1.8mg/mLで、NaOHによりpH調節し、vPBSにより一定容量にした。最終58kDシクロデキストリン(CD)−アダマンタンマトリックス処方物は100mg/mLであった。全容量が200μLの試験物質をそれぞれのスポンジ中に送出させた。動物を犠牲にし、注入の2日後にスポンジを取出した。スポンジを3個の小片に切断し、スポンジの大部分(70〜80%程度)を液体窒素中で凍結させ、QPCR及びQRT−PCR分析のために−80℃に貯蔵した。スポンジの一部分を4%PFA中で4℃で18時間固定させ、パラフィンで包封し、切片化した(5μm)。それぞれの切片をマッソンのトリクロム法(細胞=黒、血管系=赤、コラーゲン=青)及びヘマトキシリン−エオシン法を使用して染色させた。組織切片を二人の別の研究者により全体の組織について顕微鏡により分析した。
【0227】
結果
移植したPVAスポンジをコラーゲン、シクロデキストリンマトリックス(CD)、コラーゲン中の2×1010PNのPGCB、CD中の2×1010PNのPGCB、CD中の50μgのpCTK−PD+L−PEI又はCD中の50μgのpCTK−PD+CDイミダゾールのいずれかにより処理した。処理してから48時間後にスポンジを取り出し、ヒトPDGF−B RNA及びウイルスDNAについてそれぞれQRT−PCR及びQPCR法によりアッセイした。また、全体の形態学的検査のために、それぞれのスポンジの一部を固定し、包封し、切片化し、マッソンのトリクロム法を使用して染色した。
【0228】
ヒトPDGF−B RNAの発現についてのQRT−PCR(定量的RT−PCR)分析は、CD中の2×1010PNのPGCBで処理されたスポンジが7.0×108MEQのPDGF−B/検査スポンジという最高の平均RNA含有量を有したことを示した(図14)。コラーゲン中の2×1010PNのPGCBで処理されたスポンジは、3.2×108MEQのPDGF−B/検査スポンジで類似の平均PDGF−B RNAレベルを有した。CD中の50μgのpCTK+L−PEI及びCD中の50μgのpCTK−PD+CDイミダゾールで処理されたスポンジは、それぞれ、6.8×105及び9.1×104MEQのPDGF−B/検査スポンジというPDGF−B RNAレベルを有した。最後に、コラーゲン又はシクロデキストリンのいずれかで処理されたスポンジは、PDGF−B RNAの検知できるレベルを示さなかった(図14、表3)。学生によるt−試験分析は、全てのスポンジ処理グループが、コラーゲン中の2×1010PNのPGCBとCD中の2×1010PNのPGCBとの間のスポンジの比較を除いて、統計学的に異なっている(p≦0.05)ことを示した(表4)。また、RNAの特質及び試料当たりの全RNAをモニターするためにGAPDH QRT−PCRコントロールアッセイ法も行なった。これらの結果は、全ての処理グループについて1.9×107〜6.9×107MEQの間のGAPDH/検査スポンジという一致したRNA量を示した(図15)。
【0229】
表3:hPDGF−B RNAの検出についてのQRT−PCRの結果
【表4】

BQL=定量化のレベルよりも下(<2×103MEQのPDGF−B/検査スポンジ)
MEQ=分子当量は、積極的な対照例の希釈係数を基にした任意に割り当てられた数である。
【0230】
表4:処理グループの間のhPDGF−B RNAの統計学的分析
【表5】

註:統計学的分析は、コラーゲン及び58kD CDによる処理グループについては実施することができなかった。
【0231】
ヒトPDGF−B DNAについてのQPCR(定量的PCR)分析は、CD中の50μgのpCTK−PD+L−PEI及びCD中の50μgのpCTK−PD+CDイミダゾールで処理されたスポンジがそれぞれ2.4×1012及び1.7×1012MEQのPDGF−B/検査スポンジという最高の平均レベルを有することを示した(図16、表5)。コラーゲン中の2×1010PNのPGCB及びCD中の2×1010PNのPGCBで処理されたスポンジは、それぞれ4.5×1010及び4.1×1010MEQのPDGF−B/検査スポンジという平均ヒトPDGF−B DNAレベルを有した。しかし、コラーゲン又はシクロデキストリンで処理されたスポンジは、それぞれ9.8×108及び1.3×108MEQのPDGF−B/検査スポンジという正のPDGF−B DNAレベルを有した。学生によるt−試験分析は、全てのグループが、コラーゲンとシクロデキストリンとの処理グループの間並びにコラーゲン中の2×1010PNのPGCBとCD中の2×1010PNのPGCBとの処理グループの間のスポンジの比較を除いて、統計学的に異なっている(p≦0.05)ことを示した(表6)。DNAの特質及びDNAインプットの等量を確実にするためにマウスGAPDHの定量化を実施したが、結果は9.4×108〜2.8×109MEQのGAPDH/検査スポンジの範囲であった(図17)。
【0232】
表5:スポンジ内のウイルスPDGF−Bの検出についてのPCRの結果
【表6】

【0233】
表6:スポンジ内のヒトPDGF−B DNA含有量の統計学的分析
【表7】

【0234】
QPCRの結果は、コラーゲン及びシクロデキストリン対照例スポンジにおいて検出された有意のPDGF−B DNAレベルを示した。この観察についての寄与の根源は完全に決定されなかったが、ヘクソンQPCRの結果(これはアデノウイルスに含まれるヘクソン序列を検出するだけである。)は、対照例スポンジで検出されたDNAがPCTK−PDプラスミドから由来したことを示した(図18)。PDGF−B RNAが対照例スポンジで検出されなかったので、これは、汚染がスポンジの採取時に又はその後に多分起こったことを示唆している。
【0235】
表7:PVAスポンジの形態学的分析の要約
【表8】

【0236】
5μmのマッソンのトリクロム法染色切片を二人の別の観察者によって分析した。スポンジの特徴は、カプセルサイズを除いて、全てのカテゴリーにつき次の基準により定性評価した:最低<少ない<中程度<多い<非常に多い。カプセルサイズの評価については次の基準を使用した:薄い<中程度<厚い<非常に厚い。
【0237】
宿主免疫応答を評価するためにスポンジの形態学的分析を行なった。この研究は主な最終目的として遺伝子発現及び炎症によって計画されたが、肉芽化組織の形成、コラーゲンの付着及び新生血管形成もあるときは分析した。採取したときに、CD中の2×1010PNのPGCBで処理されたスポンジは、観察可能な多量のスポンジ内及びその周囲への滲出物を有した(表7、図19)。また、これらのスポンジは、他のグループよりも大きさがずっと大であった。全体的な組織学的検査は、CD中の2×1010PNのPGCBで処理されたスポンジが、厚いカプセル及び細胞浸潤物の存在を特徴とする激しい免疫応答を有することを明らかにした。また、肉芽化組織、コラーゲン及び新生血管形成も観察された。また、コラーゲン中の2×1010PNのPGCBで処理されたスポンジは、肉芽化組織の形成、コラーゲンの付着及び新生血管形成を示したが、免疫応答は、CD中のPGCBで処理されたスポンジほどに激しくなかった。シクロデキストリンのみ、CD中の50μgのpCTK−PD+L−PEI及びCD中の50μgのpCTK−PD+CDイミダゾールで処理されたスポンジは全て類似の結果を有し、最低量の肉芽化組織を有した。これらの処理グループにおいて見出された全体の免疫応答は、コラーゲン中のPGCBで処理されたスポンジグループと類似していた。最後に、コラーゲンのみで処理されたスポンジは、最低量の組織、コラーゲン又は血管系並びに最低の免疫応答を有することが分かった。
【0238】
これまでに引用した参考文献及び刊行物は、参照することによってここに組み入れるものとする。
当業者ならば、上で説明した発明の特定の具体例と均等の多くの発明を認識しようし、又はせいぜい日常の実験を使用して確認することができできよう。このような均等例は、請求の範囲によって包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0239】
【図1】本発明の架橋重合体マトリックスを図示する。
【図2】治療剤部分を包含する本発明のマトリックスを例示する。
【図3】重合時間の関数としてのCD−PEG3400の分子量を示す。
【図4】トランスフェクション実験の結果を示す。
【図5】ここに記載したマトリックスを介しての細胞移動を示す。
【図6】架橋剤なしのCD−PEG3400重合体の動的周波数掃引を示す。濃度はPBS中で100mg/mLであり、温度は37℃であり、歪みは0.5%であった。
【図7】架橋剤なしのCD−PEG3400重合体の動的周波数掃引を示す。濃度はPBS中で100mg/mLであり、温度は20℃であり、歪みは0.5%であった。
【図8】36.5mg/mLのジ−アダマンタン−PEG架橋剤を含むCD−PEG3400重合体(100mg/mL)の動的周波数掃引を示す。温度は37℃であり、歪みは0.5%であった。
【図9】36.5mg/mLのジ−アダマンタン−PEG架橋剤を含むCD−PEG3400重合体(100mg/mL)の動的周波数掃引を示す。温度は20℃であり、歪みは0.5%であった。
【図10】2.4mg/mLのウシコラーゲンマトリックスの動的周波数掃引を示す。
【図11−1】前記したマトリックスを使用するインビトロでのアッセイ法の結果を例示する。
【図11−2】前記したマトリックスを使用するインビトロでのアッセイ法の結果を例示する。
【図12】本発明の主題の組成物で創傷を処理した結果を示す。12Aは、マトリックスA(左の創傷)及びマトリックスB(右の創傷)で処理されたICRマウスである。示した動物は、外科術の4日後の犠牲である。紫色のインクは、外科術用ペンのマークであり、マトリックスに使用した染料(暗青色/黒色)ではない。実際の創傷部位には染料はほとんど残っていないが、しかし、残っている染料は、滲出や、創傷用包帯を当てた後に起こる周囲の損傷していない組織へのマトリックスの塗布から生じる。12Bは、マトリックスA(左の創傷)及びマトリックスB(右の創傷)で処理されたICRマウスである。示した動物は、外科術の4日後の犠牲である。左及び右の創傷は、マトリックスA及びマトリックスBがそれぞれ注入後に周囲の組織に拡がらなかったことを示す。
【図13】本発明の主題の組成物で創傷を処理した結果を示す。13Aは、マトリックスA(左の創傷)及びマトリックスB(右の創傷)で処理されたICRマウスである。示した動物は、外科術の4日後の犠牲である。自然な創傷の収縮を左と右の両創傷に見ることができる。元の注入から残った少量の染料が見られるが、しかし、周囲の損傷していない組織に存在する染料はない。13Bは、マトリックスA(左の創傷)及びマトリックスB(右の創傷)で処理されたICRマウスである。示した動物は、外科術の4日後の犠牲である。左及び右の創傷は、マトリックスA及びマトリックスBがそれぞれ注入後に周囲の組織に拡がらなかったことを示す。
【図14】処理されたスポンジ内のPDGF−Bの発現を示す。QRT−PCRは、それぞれの処理グループからの個々のスポンジ試料について行なった。データは、6個の検査スポンジ±標準偏差として表わされる。
【図15】処理グループ内のGAPDH RNAレベルを例示する。
【図16】処理されたスポンジ内のウイルスPDGF−B DNAレベルを示す。QPCRアッセイ法は、それぞれの処理グループからのスポンジ試料について行なった。PCRプライマーはヒトPDGF−B序列の特異的発現を目標にし、ラットPDGF−B DNAと交差反応しない。
【図17】スポンジ内のGAPDH DNA含有量を示す。
【図18】スポンジ処理グループ内のウイルスヘクソンDNAを示す。
【図19】PVAスポンジの形態学的分析を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の包接ホストを包含する線状の生体適合性重合体と、複数のリンカー分子であってそれぞれのリンカー分子が該包接ホストと包接錯体を形成する部分を少なくとも2個含有するものとを含み、そして該リンカー分子が該重合体を架橋させるものである重合体組成物。
【請求項2】
包接ホストがシクロデキストリン部分である請求項1に記載の重合体組成物。
【請求項3】
少なくとも1種の生物活性化合物又はそのプロドラッグ形を更に含む請求項1に記載の重合体組成物。
【請求項4】
生物活性化合物が核酸である請求項3に記載の重合体組成物。
【請求項5】
核酸がウイルス、重合体及びリポソームから選ばれる送達系に備えられる請求項4に記載の重合体組成物。
【請求項6】
細胞を請求項4に記載の重合体組成物と接触させることからなる、細胞に核酸をトランスフェクションさせるための方法。
【請求項7】
生物活性化合物がポリペプチド又は小有機分子である請求項3に記載の重合体組成物。
【請求項8】
患者に請求項3に記載の重合体組成物を投与することからなる生物活性化合物の投与方法。
【請求項9】
生物活性化合物が蛋白質又はポリペプチドである請求項3に記載の重合体組成物。
【請求項10】
生物活性化合物又はそのプロドラッグ形が送達系に備えられる請求項3に記載の重合体組成物。
【請求項11】
送達系がミクロ粒子及びリポソームから選ばれる請求項10に記載の重合体組成物。
【請求項12】
生物活性化合物が、包接ホストと包接錯体を形成する部分に共有結合される請求項3に記載の重合体組成物。
【請求項13】
少なくとも1種の補助剤を更に含む請求項1に記載の重合体組成物。
【請求項14】
生物活性化合物の有効性を増大させる補助剤を更に含む請求項3に記載の重合体組成物。
【請求項15】
複数の包接ホストを包含する生体適合性で生分解性の重合体と、複数のリンカー分子であってそれぞれのリンカー分子が該包接ホストと包接錯体を形成する部分を少なくとも2個含有するものとを含み、そして該リンカー分子が該重合体を架橋させるものである重合体組成物。
【請求項16】
複数の包接ホストを包含する生体適合性重合体と、複数のリンカー分子であってそれぞれのリンカー分子が該包接ホストと包接錯体を形成する部分を少なくとも3個含有するものとを含み、そして該リンカー分子が該重合体を架橋させるものである重合体組成物。
【請求項17】
複数のシクロデキストリン部分を包含する生体適合性重合体と、複数のリンカー分子であってそれぞれのリンカー分子が該シクロデキストリン部分と包接錯体を形成する部分を少なくとも2個含有するものとを含み、そしてそれぞれのシクロデキストリン部分が重合体主鎖に対する結合を2個のみ有し、該リンカー分子が該重合体を架橋させるものである重合体組成物。
【請求項18】
a)複数の包接ホストを包含する生体適合性重合体、b)複数のリンカー分子であってそれぞれのリンカー分子が該包摂ホストと包接錯体を形成する部分を少なくとも2個含有するもの及びc)治療剤を含み、そして該リンカー分子が該重合体を架橋させるものである治療組成物。
【請求項19】
複数の包接ホストを包含する線状の生体適合性重合体を、複数のリンカー分子であってそれぞれのリンカー分子が該包接ホストと包接錯体を形成する部分を少なくとも2個含有するものと結合させることからなる、架橋重合体の製造方法。
【請求項20】
包接ホストがシクロデキストリンである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
重合体とリンカー分子が生物活性剤の存在下に結合される請求項19に記載の方法。
【請求項22】
生物活性剤が、包接ホストと包摂錯体を形成する部分に共有結合される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
複数の包接ゲストを包含する重合体を、複数のリンカー分子であってそれぞれのリンカー分子が該包接ゲストと包接錯体を形成する包摂ホストを少なくとも2個含有するものと結合させることからなる、架橋重合体の製造方法。
【請求項24】
包摂ホストがシクロデキストリンである請求項23に記載の方法。
【請求項25】
重合体とリンカー分子を生物活性剤の存在下に結合させる請求項23に記載の方法。
【請求項26】
疾病を治療するに当たり、該疾病の治療に好適な薬剤を請求項1に記載の重合体組成物と共に患者に投与することからなる疾病の治療方法。
【請求項27】
疾病が癌である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
創傷に請求項1に記載の重合体組成物を適用することからなる創傷の治療方法。
【請求項29】
組成物が更に治療剤を含む請求項28に記載の方法。
【請求項30】
治療剤がPDGF−Bをコードする核酸である請求項29に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2006−513992(P2006−513992A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543586(P2004−543586)
【出願日】平成15年10月8日(2003.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2003/031991
【国際公開番号】WO2004/032862
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(503220244)インサート セラピューティクス インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】