説明

シクロプロパン化方法

不飽和アルコラートのシクロプロパン化によるシクロプロピルカルビノール類の製造方法であって、(A)マグネシウム金属およびジブロモメタンならびに(B)ジブロモメタンおよび第三グリニャール試薬から選択される試薬系を用い、前記シクロプロパン化をエーテル溶媒の存在下で行う、前記方法。当該方法は、例えばフレーバーおよびフレグランス産業のための成分を調製するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロプロパンカルビノールをアリルアルコラートから調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロプロパンカルビノールは、数種の産業、例えばフレグランスおよびフレーバー産業に所望される化合物である。したがって、それらの効率的な生産における関心がある。1つの可能な方法は、アリルアルコールのシクロプロパン化によるものである。(以下の記載において、用語「アリルアルコール」はホモアリルアルコールを含み、用語「シクロプロパンカルビノール」は2−シクロプロピル−エタノールを含む)。
【0003】
アリルアルコールは、種々の方法によりシクロプロパン化されており、それは最近の概説、例えばA.B.Charette, A.Beauchemin, Organic Reactions 58, 1 - 416, 2001およびM.Regitz, Carbenoids, Methoden der organischen Chemie, Houben-Weyl, (Georg Thieme Verlag Stuttgart - New York, Vol. E19b, 179〜212頁、1989)に記載されている。当該反応は、アリルアルコラートおよびカルベノイドの生成により進行すると考えられる。
【0004】
これらの方法の中で最も好都合かつ効率的なものは、金属もしくは金属混合物(Zn、Cu、SmおよびHg)または有機金属試薬(ZnEt、AlEtもしくはiPrMgCl)をヨード化されたカルベノイド前駆体(CHまたはClCHI)と共に用いるものである。これらの試薬から、カルベノイド、即ちタイプX−M−CH−X(M=金属、X=ハロゲン化物)の中間体が生成する。アリルアルコールまたはアリルアルコラートの存在下で、カルベノイドのCH基は分子内でアリル二重結合上に向けられ、シクロプロパン化をもたらす(この機構を記載している最近の概説は、A. H. Hoveyda, D. A. Evans, G. C. Fu Chem. Rev. 93, 1307 - 1370, 1993によるものである)。
【0005】
ヨード化ジハロメタンよりむしろジブロモメタンを用いることが、それがより安価であり、より安定であり、所望されないヨウ素廃棄物を回避するためより効率的である。しかし、ジブロモメタンはこの反応においてジヨードメタンより反応性が低い。これを、亜鉛−銅対で活性化させ、続いて超音波によりシクロプロパン化することにより(E. C. Friedrich, J. M. Domek, R. Y. Pong, J. Org. Chem. 50, 4640 - 4642, 1985)、または添加剤、例えばハロゲン化銅およびハロゲン化アセチルで活性化することにより(E. C. Friedrich, F. Niyati-Shirkhodaee, J. Org. Chem. 56, 2202 - 2205, 1991)克服することができる。しかし、これらの方法は共に、環境に悪影響を及ぼす亜鉛および銅をベースとする廃棄物の生成をもたらす。
【発明の概要】
【0006】
ここで、アリルアルコラート類をジブロモメタンで、グリニャールまたはバルビエ条件下で好都合には0℃〜70℃にて効率的にシクロプロパン化することが可能であることが見出された。したがって、式I:
【化1】

で表される化合物の調製方法であって、
式II
【化2】

で表されるアルコラートの生成、続くこのアルコラートと(A)マグネシウム金属およびジブロモメタン、ならびに(B)ジブロモメタンおよび第三グリニャール試薬から選択される試薬系とのシクロプロパン化(ここで該シクロプロパン化は、エーテル溶媒の存在下で行う)を含み、Cα、Cβ、CγおよびQは可能性(a)および(b):
【0007】
(a)Cα、Cβ、Cγは、プロトン化されているか、または3個の炭素原子すべてについて合計5つまでの置換基で置換されていてもよい炭素原子を表し、該置換基はアルキル、アルケニル、シクロアルキルおよびシクロアルケニル基からなる群から選択され;Qは、
(i)1〜6個の炭素原子、好ましくは1個の炭素原子を有し、該炭素原子はプロトン化されているかまたは置換されており、該置換基はCα、Cβ、Cγの置換基のいずれかから選択される、飽和または不飽和の炭素鎖;および
(ii)CαとCβとを結合させる1つの共有結合
から選択される部分を表す;
および;
(b)Cα、Cβ、CγおよびQの全体または一部は、一緒にシクロアルキルまたはシクロアルケニル環を形成する;
に従って選択され、および
(c)Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属またはアルカリ土類金属一ハロゲン化物(monohalide)である、
前記方法を提供する。
【0008】
α、Cβ、CγおよびQ上に存在し得る任意の置換基は、それら自体官能基、例えばアルコール、エーテル、アミン、アルキルアミン、アルケン、アルキン、シクロアルカンおよびシクロアルケン(しかしこれらには限定されない)で置換されていてもよい。
【0009】
式IIで表されるアルコラートを、多種の前駆体から、および多種の方法により調製することができる。そのようなアルコラートの調製は当該分野に十分知られており、ここでさらに詳細に記載しないが、以下に示すアリルアルコラートに特有の一般的なスキーム(置換基R、Rα、Rβ、RγおよびM=Na、LiまたはMgX(式中X=ハロゲン化物)、上記で記載した通り)は、いくつかの可能性を例示する。このスキームは例示のみの目的のためであり、いかなる方法においても当該方法の範囲を限定するべきものであるとは解釈するべきではないことを念頭に置くべきである。
【0010】
【化3】

【0011】
いかなる方法においても本発明の範囲を限定せずに、上記で規定した条件下で、X−Mg−CH−Brタイプのカルベノイドが試薬系から生成し、このカルベノイドのCH基は式IIで表される化合物の二重結合上に達し、シクロプロパンカルビノールを生成すると考えられる。このカルベノイドにおいて、Xはほぼ常にClである。
【0012】
ジブロモメタンおよび有機マグネシウム試薬から誘導されるカルベノイドは、−50℃より高温にて不安定であると報告されているため(J. Villieras, Comptes Rendues 261, 4137 - 4138, 1965)、これは驚くべきことであり、つい最近になって、アリルアルコールの対応するシクロプロパンカルビノールへの低い変換(19%)が、そのような条件(塩化イソプロピルマグネシウム、ジブロモメタン、−70℃、3日)下で観察された(C. Bolm, D. Pupowicz, Tetrahedron Lett. 38, 7349 - 7352, 1997)。
【0013】
反応は、エーテル溶媒の存在下で行う。特定の態様において、エーテル溶媒(それは1種の溶媒またはそのような溶媒の混合物であり得る)は最初から存在するが、他の態様において、それを、試薬系を加えるのと同時にまたはその直前に加える。エーテル溶媒は、溶媒として有用であると知られている任意のエーテルであってよく、特定の例には、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテルおよびメチルt−ブチルエーテルが含まれる。
【0014】
特定の態様において、試薬系を、ホモアリルアルコール、即ち上記の式IIにおいてQがそれぞれ単結合および1個の炭素原子であるアルコール、を含むアリルアルコールと共に用いる。したがって、またシクロプロピルカルビノールの調製方法であって、アリルアルコラートの生成および続くこのアリルアルコラートと(A)マグネシウム金属およびジブロモメタン(以下「系A」)ならびに(B)ジブロモメタンおよび第三グリニャール試薬(以下「系B」)から選択される試薬系とのシクロプロパン化(ここで該シクロプロパン化はエーテル溶媒の存在下で行う)を含む、前記方法を提供する。マグネシウム金属は、通常削り屑または粉末の形態にある。
【0015】
系Bを用いるこの方法の態様において、第三グリニャール試薬は商業的に入手できる物質または当該方法においてそれを用いる前に調製したものであってもよい。グリニャール試薬は式RCMgXで表され、部分RはC〜Cアルキルから選択され、したがってRCにおける炭素原子の数は4〜22である。さらに、部分Rの1つまたは2つ以上は、Cと共に少なくとも1個の環系の一部を形成し得る。特定の態様において、RCはtert−ブチルまたはtert−アミルであり、ハロゲン化物Xは特にClである。
【0016】
系AおよびBの両方がすべての場合において機能する一方、式IIで表される化合物の性質に依存して有効性に差異があることに留意するべきである。例えば、Qが2個または3個以上の炭素原子を有する(即ちアリルまたはホモアリルアルコラートではない)場合において、系Aは、二重結合が、式IIのα−C原子から1個よりも多い炭素原子によって隔てられてある場合(即ちQが少なくとも2個の炭素原子である場合)には、二重結合をシクロプロパンに変換することに関して系Bよりも有効である。
【0017】
Qが単結合を表す場合には、アリルアルコールは、好ましくはそれらのα,γもしくはβ,γ位において二置換されているか、それらのα,β,γ位において三置換されているか、α,β,γ,γ位において四置換されているかまたはそれらのα,α,β,γ,γ位において五置換されている。より少数の置換基および/または他の位置における置換基もまた可能であるが、それらはより低い百分率の変換をもたらす(即ち、より多量の試薬が完全な変換のために必要である)。
【0018】
系Aを用いるシクロプロパン化反応を受ける、同一の分子中に遠隔のアルケンを含むアルコールの特定の例には、以下の構造を有するものが含まれる:
【化4】

【0019】
これらの場合において、Qは式IIIにおいては1個の炭素原子であり、式IV、VおよびVIにおいては1つの共有結合である。しかし、式VおよびVIの場合において、各々の分子は、少なくとも2個の炭素原子のQに対応する位置において追加の二重結合を有する。この場合において、これらのより遠隔の二重結合のシクロプロパン化もまた起こるが、このシクロプロパン化は部分的であるに過ぎない。完全な変換は、プロセスを数回繰り返すことによってのみ可能である。
【0020】
そのような遠隔のシクロプロパン化の例は、3つのシクロプロパン化サイクルおよびバルビエ反応条件におけるnor-Radjanol(登録商標)(式V)のJavanol(登録商標)への、およびゲラニオール(式VI)のそのビスシクロプロパン化されたゲラニオール類似体への完全な変換である。
【0021】
【化5】

【0022】
系Bを用いるシクロプロパン化反応を受けるアリルアルコール(ここでQは単結合を表す)の例には、以下の構造を有するものが含まれる:
【化6】

【0023】
系Bとの反応を受けるホモアリルアルコール(ここでQは1個の炭素原子を表す)の例には、以下の構造を有するものが含まれる:
【化7】

【0024】
系Bを用いる場合には、プロセスの特定の例には以下のものが含まれる:
・2〜5(特に≦3)当量のジブロモメタン中のアリルアルコールを、エーテル溶媒中の2〜5(特に≦3)当量の第三(α−三置換)グリニャール試薬RCMgXを10〜20℃にて(X=Cl、Br)ゆっくりと加えることによりシクロプロパン化する;
・2〜5(特に≦3)当量のジブロモメタンおよび2〜5(特に≦3)当量の第三(α−三置換)グリニャール試薬RCMgXを、エーテル溶媒中のアリルアルコールに、分割して、または連続的に、しかし別個に加える。
【0025】
これらの第三グリニャール試薬が第二グリニャール試薬、例えば塩化イソプロピルマグネシウム(C. Bolm, D. Pupowicz, Tetrahedron Lett. 38, 7349 - 7352, 1997により用いられる)よりもはるかに効率的なシクロプロパン化をもたらすことを示すことが、可能である。
【化8】

【0026】
この場合において、グリニャール試薬の最初の1当量が脱プロトン試薬として作用し、したがって式IIで表されるアリルアルコラートを生成し、他の3当量がシクロプロパン化をもたらすと考えられる(決して本発明を限定するものではない)。他の試薬、例えばNaH、LiH、有機リチウム試薬および他のグリニャール試薬を、脱プロトンのために用いることができる。収量および選択性は、系Bのより強烈でない条件下で、一般的にバルビエ条件下で得られるものよりも高い。例えば、アリルアルコラートが遠隔のアルケンも含む場合には(即ち2個よりも多い炭素原子がヒドロキシ基とアルケンとの間にある)、アリルアルコールアルケンはほぼ例外なくシクロプロパン化される。
【0027】
このプロセスの他の態様において、上記のスキームに示すタイプの共役アルデヒド、ケトン、酸およびエステル、ならびにアリルエステル、炭酸アリルおよびビニルオキシランを、連続的な(タンデム)反応において、即ち精製操作の前にin−situでアルキル化およびシクロプロパン化してもよい。すべてのこれらの基質のアルキル化によりアリルアルコラートが得られ、それを上記で記載した方法に従ってさらにシクロプロパン化する。このタンデムシクロプロパン化もまた、飽和アルデヒド、ケトンおよびエステルから生成したアリルアルコラートを用いてアルケニルマグネシウムハロゲン化物を加えることにより可能である。
【0028】
時には「ワンポット」反応と呼ばれる連続またはタンデム反応は、2つまたは3つ以上の連続的な分子変化を、中間体を単離することを必要とせずに行うことができる化学的プロセスである。反応は連続的な様式で進行し、新たな結合および立体中心が第2のまたはその後の段階において生成する。そのような反応により、より単純な分子からの複雑な分子の構築における合成効率が増強される。(G. H. Posner, Chem. Rev. 86, 831, 1986. L. F. Tietze, U. Beifuss, Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 32, 131, 1993. T.-L. Ho, Tandem Organic Reactions; Wiley: New York, 1992)。
【0029】
共役アルデヒド(即ち単結合を介してりエチレン二重結合に結合したアルデヒド)を、先ず適切な有機マグネシウム(RMgX)または有機リチウム(RLi)試薬で1,2−アルキル化し(カルボニル基において)、続いて(A)マグネシウムを加え、その後還流においてCHBrでシクロプロパン化するか、または(B)ジブロモメタンおよびtert−ブチルマグネシウムクロリド(tBuMgCl)で10℃〜20℃にてシクロプロパン化する。
【0030】
対応するシン配置シクロプロパンカルビノールへのこの連続的な反応を受ける共役アルデヒドの例には、以下の変化におけるものが含まれる:
【0031】
【化9】

【0032】
共役ケトンを先ず、≧1当量の適切な有機マグネシウム(RMgX)または好ましくは有機リチウム(RLi)試薬で冷却下で1,2−アルキル化し(カルボニル基において)、続いてジブロモメタンおよびtert−ブチル−MgClで0℃〜5℃にてシクロプロパン化する。同様のタンデム反応、MeLiの共役ケトンへの添加、続いてシモンズ−スミスシクロプロパン化は、T.Cohen et al., Organic Letters, 3, 2121, 2001により報告されている。しかし、グリニャール条件下でのアリルオキシリチウム中間体とジブロモメタンとのその後のシクロプロパン化は、新規であり、より効率的である。
【0033】
対応するシス配置シクロプロパンカルビノール類へのこの連続的な反応を受ける共役ケトン類の例には、以下の変化におけるものが含まれる:
【0034】
【化10】

【0035】
共役エステルを先ず、≧2当量の適切な有機マグネシウム(RMgX)または好ましくは有機リチウム(RLi)試薬で冷却下でアルキル化し、続いてジブロモメタンおよびtert−ブチル−MgClで0℃〜5℃にてシクロプロパン化する。
この連続的な反応を受ける共役エステルの例には、以下の変化におけるものが含まれる:
【0036】
【化11】

【0037】
1−ハロゲン化アルケニルを、先ず対応する1−アルケニルマグネシウム試薬に既知の手順により変換し(K.NutzelによりMethoden der organischen Chemie, Houben-Weyl, (G.Thieme Verlag, Stuttgart), Vol 13/2a, 47〜529頁、1973に記載されているように)、続いてアルデヒドまたはケトンを加え、続いてアリルオキシマグネシウム中間体の(A)Mg/CHBrまたは(B)CHBr/tBuMgClシクロプロパン化を行う。あるいはまた、ハロゲン化アルケニルを、対応するアルケニルリチウム試薬に既知の方法により変換し(U. SchollkopfによりMethoden der organischen Chemie, Houben-Weyl, Vol 13/2a, 47〜529頁、1973に記載されているように)、続いてアルデヒドを加え、続いてこのようにして生成したアリルオキシリチウム中間体の(A)Mg/CHBrまたは(B)CHBr/tBuMgClシクロプロパン化を行う。あるいはまた、アルケニル−リチウム試薬をケトンに加え、続いてこのようにして生成したアリルオキシリチウム中間体のCHBr/tBuMgClシクロプロパン化を行うことができる。
【0038】
対応するシクロプロパンカルビノールへのこの連続的な反応を受けるハロゲン化アルケニルの例には、以下の変化が含まれる:
【化12】

【0039】
アリルエステルまたはホモアリルエステルおよびアリルカーボネートまたはホモアリルカーボネートを、適量のグリニャール試薬(RMgX)または有機リチウム(RLi)試薬で切断し、続いて(A)マグネシウムを加え、その後還流においてCHBrでシクロプロパン化するか、または(B)ジブロモメタンを加え、その後10〜20℃にて第三グリニャール試薬でシクロプロパン化する。これらの連続的な反応の例を、以下の変化により示す:
【化13】

【0040】
ビニルオキシランを、先ず追加の塩基を伴って、または伴わずに適切な有機リチウム(RLi)試薬でアルキル化して、選択性を調整し、続いて(A)マグネシウムを加え、その後還流においてCHBrでシクロプロパン化するか、または(B)10℃〜20℃にてジブロモメタンおよびtert−ブチル−MgClでシクロプロパン化する。酸化イソプレンの有機リチウム試薬(RLi)でのS2’選択的開環は、Tetrahedron Lett. 22, 577, 1980に記載されている。この連続的な反応の例を、以下の変化により示す:
【0041】
【化14】

【0042】
シクロプロパン化プロセスの上記の態様は、フレーバーおよびフレグランス成分の比較的容易かつ安価な製造を含む多くの使用を有する。
【0043】
この方法により調製される化合物の数種は、新規である。したがって、また以下の化合物を開示する:
【化15】

【0044】
ここで、本発明を、以下の非限定的例を参照してさらに記載する。
【0045】
例1:(1−メチル−2−(((1S,3R,5R)−1,2,2−トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル)メチル)−シクロプロピル)メタノール(Javanol(登録商標))
【化16】

系A:テトラヒドロフラン中の(E)−2−メチル−4−(2,2,3−トリメチルシクロペンタ−3−エニル)ブタ−2−エン−1−オール(J. A. Bajgrowicz, I. Frank, G. Frater, M. Hennig, Helv. Chim. Acta. 81, 1349 - 1358, 1998)(200g、1mol)および水素化リチウム(10g、1.24mol)を、水素の発生が停止するまで強力な撹拌およびアルゴンの下で6時間65℃にて加熱する。削り屑状マグネシウム(100g、4.1mol)および1900mlのテトラヒドロフランを、25℃にて加える。ジブロモエタン(8.5g、50mmol)を加えた後、混合物を65℃に加熱し、そこでジブロモメタン(280ml、4mol)を7時間にわたり加える。65℃にてさらに1時間後、懸濁液を冷却下で2MのHClでクエンチする。tert−ブチルメチルエーテル抽出、pH7までのHOでの有機相の洗浄、MgSOでの乾燥および濃縮により、粗製の(65%に相当)モノおよびビスシクロプロパン混合物(75:20)が得られ、それにより、さらに2つの反応サイクルの後、蒸留(100℃/0.05Torr)の後に95g(43%)の純粋なJavanolが得られ、その分析データ(NMR、MS、IR、臭気)は、この化合物について文献(J. A. Bajgrowicz, G.Frater, EP 801049, 優先日1997年4月9日、Givaudan-Roureに対して)に記載されているものと整合している。
【0046】
系B:(E)−2−メチル−4−((1S,3S,5R)−1,2,2−トリメチルビシクロ−[3.1.0]ヘキサン−3−イル)ブタ−2−エン−1−オール(5g、24mmol)(F. Schroeder、Givaudanに対するWO 2006066436、優先日2005年12月20日)を、過冷却し、撹拌しながらテトラヒドロフラン中3Mの塩化メチルマグネシウム(8ml、24mmol)に窒素の下で加える。ジブロモメタンおよびtert−ブチルマグネシウムクロリドを、10℃〜20℃の温度にて加える。ジブロモメタンおよびtert−ブチルマグネシウムクロリドを、それぞれ3部に分けて加え、1部のジブロモメタン(4.2g、24mmol)の後に1部のtert−ブチルマグネシウムクロリド(12ml、24mmol)が続く。各組(72mmol)を加えた後に、混合物を適切な時間室温にて撹拌する。GCによりチェックして完全であるかまたはほぼ完全な変換に達した際に、濃NHClを加えることにより混合物をクエンチする。tert−ブチルメチルエーテル抽出、pH7までのHOでの有機相の洗浄、MgSOでの乾燥および濃縮により、16.6gの油状残留物が得られ、それを120℃/0.07Torrにてバルブ・ツー・バルブ(bulb-to bulb)蒸留し、4.7g(89%)のJavanol(dr=1:1)を得、その分析データはこの化合物について文献(J. A. Bajgrowicz, G. Frater, EP 801049, 優先日1997年4月9日、Givaudan-Roureに対して)に記載されているものと整合している。
【0047】
例2:(トランス)−(1−メチル−2−(((R)−2,2,3−トリメチルシクロペンタ−3−エニル)メチル)シクロプロピル)−メタノール。
【化17】

例1(系B)に記載したように、nor-Radjanol(12.6g、65mmol)(J. A. Bajgrowicz, I. Frank, G. Frater, M. Hennig, Helv. Chim. Acta 81, 1349 - 1358, 1998)、テトラヒドロフラン中3Mのメチルマグネシウムクロリド(22ml、65mmol)、ジブロモメタン(3×10g、0.17mol)およびジエチルエーテル中2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(3×28ml、0.17mol)から調製する。精製操作および110℃/0.1Torrにおけるバルブ・ツー・バルブ蒸留により、12.5g(93%)の無色油(dr=1:1)が得られ、その分析データ(NMR、MS、IR、臭気)はこの化合物について文献(J. A. Bajgrowicz, I. Frank, G. Frater, M. Hennig, Helv. Chim. Acta 81, 1349 - 1358, 1998)に記載されているものと整合している。
【0048】
例3:(シン、トランス)−1−(2−エチル−1−メチルシクロプロピル)ヘキサン−1−オール。
【化18】

この化合物を、例1の系AおよびBの両方を用いて調製した。
【0049】
系A:n−ブチルリチウム(11ml、17mmol)を、冷却下で(E)−4−メチルデカ−3−エン−5−オール(R. Kaiser, D. Lamparsky, EP 45453, Givaudan, 1980)(3g、17mmol)に滴下して加える。マグネシウム粉末(2.6g、0.1mol)を加え、バルビエ反応を数滴のジブロモメタン(18g、0.1mol)で開始し、それを次に60℃にて1時間にわたり加える。60℃にて18時間後、混合物を上記のように精製操作する。55℃/0.05mbarにおけるバルブ・ツー・バルブ蒸留により、2.15g(68%に相当)の無色油(シン/アンチ=97:3)が得られる。
【0050】
系B:(E)−4−メチルデカ−3−エン−5−オール(R. Kaiser, D. Lamparsky, EP 45453, Givaudan 1980)(25g、0.15mol)を、冷却および撹拌下で、窒素の下でテトラヒドロフラン中の3Mのメチルマグネシウムクロリド(49ml、0.15mol)に加える。あるいは、ハロゲン化(E)−デカ−3−エン−5−オレートマグネシウムを、(E)−2−メチルペンタ−2−エナール(12.6g、0.15mol)およびジエチルエーテル中の2Mの臭化ペンタン−マグネシウム(75ml、0.15mol)から調製する。ジブロモメタン(77g、0.44mol)を、グリニャール生成物に加え、続いてジエチルエーテル中の2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(220ml、0.44mol)を10℃〜20℃にて滴下して加える。25℃にて16時間後、2MのHClを加える。tert−ブチルメチルエーテル抽出、有機相の濃NaHCO、HOおよび濃NaClでの洗浄、MgSOでの乾燥、濾過および濃縮により、30.3gの油状残留物が得られ、それを45℃/0.03Torrにて蒸留し、24.4g(90%)の生成物を無色油として得る。
【0051】
臭気:グリーン、フレッシュ、香辛料様、チョコレート。
【化19】

【0052】
例4:(シス、シン)−1−(−2−エチルシクロプロピル)プロパン−2−オール。
【化20】

系A:例3に記載したように、(Z)−ヘプタ−4−エン−2−オール(S. C. Watson, D. B. Malpass, G. S. Yeargin, DE 2430287 , Texas Alkyls Inc.USA, 1975)(3g、26mmol)、n−ブチルリチウム(16.5ml、26mmol)、マグネシウム粉末(3.8g、0.16mol)およびジブロモメタン(27g、0.16mol)から調製した。60℃にて18時間後、精製操作および55℃/0.05mbarにおけるバルブ・ツー・バルブ蒸留により、2.1g(57%に相当)の無色油(シン/アンチ=73:27)が得られる。
【0053】
系B:例7に記載のとおり、しかし2つの反応サイクルにおいて、(Z)−ヘプタ−4−エン−2−オール(4g、35mmol)およびジエチルエーテル中のジブロモメタン(2×18.2g、0.2mol)から、ジエチルエーテル中の2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(2×52ml、0.2mol)を10℃〜20℃にて滴下することにより調製した。18時間後に25℃にて精製操作することにより、5.7gの粗製の油が得られ、それを45℃/12mbarにて蒸留し、2.5g(55%)の無色油(純度97%、シン/アンチ=83:17)が得られた。
【0054】
【化21】

【0055】
例5:(トランス)−(2−メチル−2−(4−メチルペンタ−3−エニル)シクロプロピル)メタノール。
【化22】

例1(系A)に従って、(E)−ゲラニオール(50g、0.32mol)、テトラヒドロフラン(350ml)中の水素化リチウム(3.4g、0.4mol)、マグネシウム粉末(31.5g、1.3mol)およびジブロモメタン(225g、1.3mol)から調製した。4時間後の65℃における精製操作およびバルブ・ツー・バルブ蒸留により、36g(66%)の無色油が得られ、その分析データはこの化合物について文献(G. A. Molander, L. S. Harring, J. Org. Chem. 54, 3525 - 3532, 1989)に記載されているものと整合している。
【0056】
例6:(トランス)−(2−(2−(2,2−ジメチルシクロプロピル)エチル)−2−メチルシクロプロピル)メタノール。
【化23】

例5において得た(2−メチル−2−(4−メチルペンタ−3−エニル)シクロプロピル)メタノールに、例24におけるのと同一の量の試薬を用いて例1(系A)の条件下でさらに2つの反応サイクルを施し、精製操作および蒸留の後に15g(ゲラニオールから25%)の無色油を得、その分析データはこの化合物について文献(H. Sakauchi, H. Asao, T. Hasaba, S. Kuwahara, H. Kiyota, Chemistry & Biodiversity, 3, 544 - 552, 2006)に記載されているものと整合している。
【0057】
例7:(シス)−{2−[2−(2,3−ジメチル−トリシクロ[2.2.1.0(2,6)]ヘプタ−3−イル)−エチル]−1−メチル−シクロプロピル}−メタノール。
【化24】

例1(系B)に記載したように、(E)−2−メチル−4−((1S,3S,5R)−1,2,2−トリメチルビシクロ[3.1.0]−ヘキサン−3−イル)ブタ−2−エン−1−オール(M. Tamura, G. Suzukamo, Tetrahedron Lett. 22, 577, 1981)(5.3g、24mmol)、テトラヒドロフラン中の3Mのメチルマグネシウムクロリド(8ml、24mmol)、ジブロモメタン(2×6.3g、72mmol)およびジエチルエーテル中の2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(2×18ml、72mmol)から調製した。18時間後の精製操作およびバルブ・ツー・バルブ蒸留により、3.85gの無色油(68%)が得られる。臭気:ウッディー、クリーム様、弱い。
【0058】
【化25】

【0059】
例8:(RS)−1−((1RS,6SR)−5,5−ジメチルビシクロ[4.1.0]ヘプタン−1−イル)エタノール。
【化26】

例1(系B)に記載したように、1−(3,3−ジメチルシクロヘキサ−1−エニル)エタノール(A. T. Levorse、IFFに対するUS 5234902、優先日1992年2月28日)(3.7g、24mmol)、テトラヒドロフラン中の3Mの塩化メチルマグネシウム(8ml、24mmol)、ジブロモメタン(2×6.3g、72mmol)およびジエチルエーテル中の2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(2×18ml、72mmol)から調製した。20時間後の25℃における精製操作およびバルブ・ツー・バルブ蒸留により、3.2g(82%)の生成物(シン/アンチ=97:3)が得られる。臭気:田舎様、強力。
【0060】
【化27】

【0061】
例9:(シン、トランス)−1−((E)−2−メチル−2−(4−メチルペンタ−3−エニル)シクロプロピル)エタノール。
【化28】

この例は、以下の4つの初期段階(a)〜(d)の1つを用いる前述の化合物の調製を示す:
【0062】
a)(E)−4,8−ジメチルノナ−3,7−ジエン−2−オール(EP 0743297、Givaudanに対して)(3.6g、24mmol)およびテトラヒドロフラン中の3Mの塩化メチルマグネシウム(8ml、24mmol)。
b)(E)−シトラール(4g、24mmol)およびテトラヒドロフラン中の3Mの塩化メチルマグネシウム(8ml、24mmol)。
c)酢酸4,8−ジメチルノナ−3,7−ジエン−2−イル(V. K. Agarwal, T. K. Thappa, S. Agarwal, M. S. Mehra, K. L. Dhar, C. K. Atal, Indian Perfumer 27, 112-118, 1983)(5g、24mmol)およびテトラヒドロフラン中の3Mのメチルマグネシウムクロリド(19ml、60mmol)。
d)4,8−ジメチルノナ−3,7−ジエン−2−イルエチルカルボナート(J.-P. Barras, B. Bourdin, F. Schroeder, Chimia 60, 574 - 579, 2006)(6g、24mmol)およびテトラヒドロフラン中の3Mの塩化メチルマグネシウム(25ml、60mmol)。
【0063】
各々の場合において、その後のシクロプロパン化を、(例1、方法Bに従って)ジブロモメタン(3×4.2g、72mmol)およびジエチルエーテル中の2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(3×12ml、72mmol)を用いて行う。16時間後の25℃における精製操作およびバルブ・ツー・バルブ蒸留により、3.7g(86%)の生成物が得られる。臭気:柑橘様、弱い。分析データは、この化合物について報告されているもの(G. A. Molander, L. S. Harring, J. Org. Chem. 54, 3525 - 3532, 1989)と同一であった。シン配置をCDCl中でCOSY、HSQC、NOESYにより確認した。
【0064】
例10:(シン、トランス)−1−(2−tert−ブチルシクロプロピル)エタノール。
【化29】

ジエチルエーテル中の2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(13ml、26mmol)をおよび10℃〜20℃にてジブロモメタン(4.6g、26mmol)中の(E)−5,5−ジメチルヘキサ−3−エン−2−オール(P. Jacob III, H. C. Brown, J. Org. Chem. 42, 579, 1977)(0.7g、5.3mmol)に滴下して加える。25℃にて24時間後、2MのHClを加える。tert−ブチルメチルエーテル抽出、有機相の濃NaHCOおよび濃NaClでの洗浄、MgSOでの乾燥、濾過および濃縮により、1.8gの油性残留物が得られ、それをシリカゲル(ヘキサン/tert−ブチルメチルエーテル勾配95:5〜80:20)上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、0.6g(80%)の無色液体が得られる。
【0065】
【化30】

【0066】
例11:(シン)−ジスピロ[4.0.4.1]ウンデカン−4−オール。
【化31】

例8に記載したように、2−シクロペンチリデン−シクロペンタノール(A. Martin, EP 770671, 優先日1996年10月30日、Quest International B.V.に対して)(5g、32mmol)、テトラヒドロフラン(20ml)中のジブロモメタン(23g、0.13mol)から、ジエチルエーテル中の2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(66ml、0.13mol)を用いて10℃〜20℃にて調製した。25℃における16時間後の精製操作およびシリカゲル(ヘキサン/tert−ブチルメチルエーテル3:1)上のフラッシュクロマトグラフィーにより、3.4g(64%)の生成物が無色油として得られる。臭気:動物様(animalic)、田舎様、強力。
【0067】
【化32】

【0068】
例12:((11S,5aS,6aR,7aR,7bS)−2,2,5a,7a−テトラメチルデカヒドロ−1H−ジシクロプロパ[b,d]ナフタレン−6a−イル)メタノール。
【化33】

例1(系B)に記載したように、((11S,5aS,8aS)−2,2,5a,8−テトラメチル−1,2,3,4,5,5a,6,8a−オクタヒドロシクロプロパ[d]ナフタレン−7−イル)メタノール(P. C. Traas, H. Boelens, Recueil des Travaux Chimiques des Pays-Bas 92, 985 - 995, 1973)(1g、4.4mmol)、ジブロモメタン(5×0.75g、21mmol)およびジエチルエーテル中の2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(5×2.1ml、21mmol)から調製した。18時間後の精製操作およびシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/tert−ブチルメチルエーテル9:1→1:1)により、0.75g(70%)の白色結晶が得られる。融点、ヘキサンから93℃。
【0069】
【化34】

【0070】
例13:(シス)−3−イソプロピル−6−メチルビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−オール。
【化35】

例10に記載したように、テルピネン−4−オール(2g、13mmol)およびジエチルエーテル中のジブロモメタン(9.15g、52mmol)から、ジエチルエーテル中の2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(26ml、52mmol)を10℃〜20℃にて滴加することにより調製した。16時間後の25℃における精製操作およびバルブ・ツー・バルブ蒸留により、2.1g(85%)の無色油が得られた。臭気:田舎様。
【0071】
【化36】

【0072】
例14:(トランス,シン)−1−((1−メチル−2−((2,2,3−トリメチルシクロペンタ−3−エニル)メチル)−シクロプロピル)エタノール。
【化37】

例1(系B)に記載したように、nor-Radjaldehyde(US 4052341、Givaudan Corp.に対して)(4.6g、24mmol)、テトラヒドロフラン中の3Mの塩化メチルマグネシウム(8ml、24mmol)、ジブロモメタン(2×6.3g、72mmol)およびジエチルエーテル中の2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(2×18ml、72mmol)から調製した。5時間後の25℃における精製操作および蒸留により、3.5g(65%)の無色油(シン、dr=1:1)が得られる。臭気:ビャクダン、グリーン。
【0073】
【化38】

【0074】
例15:(シン)−1−(2−プロピルシクロプロピル)エタノール。
【化39】

例1(系B)に記載したように、E−ヘキサ−2−エナール(2.35g、24mmol)、テトラヒドロフラン中の3Mのメチルマグネシウムクロリド(8ml、24mmol)、ジブロモメタン(3×5.5g、96mmol)およびジエチルエーテル中の2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(3×16ml、96mmol)から調製した。18時間後の25℃における精製操作およびバルブ・ツー・バルブ蒸留により、2.8g(90%)の無色油(シン/アンチ=87:13)が得られる。
【0075】
【化40】

【0076】
例16:(シン)−1−(2−メチル−シクロプロピル)−オクタン−1−オール。
【化41】

例3(系B)に記載したように、ヘプチルマグネシウムブロミド(臭化ヘプチル(26g、0.14mol)およびテトラヒドロフラン(68ml)中のマグネシウム(3.43g、0.14mol)から70℃にて調製した)、E−クロトンアルデヒド(8.4g、0.12mol)、ジブロモメタン(62.5g、0.36mol)およびジエチルエーテル中の2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(3×60ml、0.36mol)から10℃〜20℃にて調製した。精製操作および60℃/0.04Torrにおける蒸留により、24.4g(86%)のトランス異性体が無色油として得られた。
【0077】
この化合物をまた、オクタナール(18g、0.14mol)と、臭化E/Z−1−プロペニルマグネシウム(マグネシウム(3.8g、0.14mol)、テトラヒドロフラン(60ml)中の1−ブロモ−プロペン(17g、0.14mol)から60℃にて調製した)とのグリニャール反応、続いてタンデムシクロプロパン化および例14の最初の部において記載した精製操作により調製し、23.5g(83%)の生成物(シス/トランス=1:1)が得られた。
【0078】
臭気:グリーン、土壌様、持続性。
【化42】

【0079】
例17:(シン,トランス)−シクロペンチル(2−イソプロピルシクロプロピル)メタノール。
【化43】

例3(系B)に記載したように、ジエチルエーテル中の2Mの臭化シクロペンチルマグネシウム(5ml、10mmol)、E−4−メチル−2−ペンテナール(1g、10mmol)、ジブロモメタン(5.2g、30mmol)およびジエチルエーテル中の2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(15ml、30mmol)から、0℃〜10℃にて調製した。精製操作および0.05mbarにおけるバルブ・ツー・バルブ蒸留により、1g(50%)の無色油(シン/アンチ=99:1)が得られた。
【0080】
【化44】

【0081】
例18:(シン,トランス)−1−(2−フェニル−シクロプロピル)−エタノール。
【化45】

例1(系B)に記載したように、E−シナモンアルデヒド(3.2g、24mmol)、テトラヒドロフラン中の3Mの塩化メチルマグネシウム(8ml、24mmol)、ジブロモメタン(2×6.3g、72mmol)およびジエチルエーテル中の2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(2×18ml、72mmol)から調製した。
18時間後の25℃における精製操作およびバルブ・ツー・バルブ蒸留により、3.3g(83%)の無色油(シン/アンチ=82:18)が得られ、その分析データはこの化合物について文献(Charette, A. B.; Lebel, H. J. Org. Chem. 60, 2966 - 2967, 1995)に記載されているものと同一である。
【0082】
例19:(RS)−1−((1RS,2SR)−2−((E)−ヘキサ−1−エニル)シクロプロピル)エタノール。
【化46】

例1(系B)に記載したように、テトラヒドロフラン中の3Mの塩化メチルマグネシウム(7.3ml、21mmol)、(2E,4E)−ノナ−2,4−ジエナール(3g、21mmol)、ジブロモメタン(15g、87mmol)およびジエチルエーテル中の2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(43ml、87mmol)から、0℃〜10℃にて調製した。18時間後の精製操作および80℃/0.05mbarにおけるバルブ・ツー・バルブ蒸留により、3.1g(77%)の無色油(シン/アンチ=83:17)が得られた。臭気:フルーティ、セイヨウナシ、グリーン。
【0083】
【化47】

【0084】
例20:(シス)−1−ヘキシル−2−メチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オール。
【化48】

ジエチルエーテル中の1.6Mのメチルリチウム(4ml、7mmol)を、ジエチルエーテル(4ml)中の2−ヘキシルシクロペンタ−2−エノン(Isojasmone B11)(1g、6mmol)に−78℃にて滴加する。0℃〜5℃にて、ジブロモメタン(3×0.6ml、24mmol)およびジエチルエーテル中の2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(3×4ml、24mmol)を加える。18時間後の25℃における精製操作(例1に記載した通り)およびバルブ・ツー・バルブ蒸留により、0.7g(60%)の無色油(シス/トランス=93:7)が得られる。
【0085】
【化49】

【0086】
例21:(シス)−5−イソプロピル−2−メチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オール。
【化50】

例20に記載したように、3−イソプロピルシクロペンタ−2−エノン(V. Jurkauskas, J. P. Sadighi, S. L. Buchwald, Org. Lett. 5, 2417-2420, 2003)(0.5g、4mmol)、ジエチルエーテル中の1.6Mのメチルリチウム(2.8ml、4.5mmol)、ジブロモメタン(2.8g、16mmol)およびジエチルエーテル中の2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(8ml、16mmol)から、0℃〜10℃にて調製した。6時間後の精製操作(例1に記載した通り)およびシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/tert−ブチルメチルエーテル3:1)により、0.23g(45%)の無色油が得られた。MS (EI): m/z (%) 196 (M+, 5), 139 ([M - 15]+, 14), 136 ([M - 18]+, 29), 121 (38), 107 (12), 93 (100), 71 (60), 55 (34), 43 (85).NMRおよびIRデータは、シス−サビネン水和物について文献(D. Cheng, K. R. Knox, T. Cohen, J. Am. Chem. Soc. 122, 412 - 413, 2000)に記載されているものと同一であった。
【0087】
例22:(シス)−5−エチル−1,2−ジメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オール
【化51】

例20(系B)に記載したように、3−エチル−2−メチルシクロペンタ−2−エノン(4g、32mmol)(G. Berube, A. G. Fallix, Can.J.Chem. 69, 77 - 78, 1991)から、−20℃にてジエチルエーテル中の1.6Mのメチルリチウム(28ml、45mmol)、ジブロモメタン(2×8.4g、97mmol)およびジエチルエーテル中の2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(2×24ml、97mmol)を加えて調製した。18時間後の25℃における精製操作(例1に記載した通り)およびバルブ・ツー・バルブ蒸留により、3g(60%)のろう質の帯黄色固体が得られる。
【0088】
【化52】

【0089】
例23:(E)−2−(2−フェニルシクロプロピル)プロパン−2−オール
【化53】

ジエチルエーテル中の1.6Mのメチルリチウム(27.5ml、44mmol)を、ジエチルエーテル(15ml)中の(E)−ケイ皮酸エチル(3g、19mmol)に−10℃にて滴加した。0℃〜5℃にて、ジブロモメタン(3×4.5g、75mmol)およびジエチルエーテル中の2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(3×13ml、75mmol)を、分割して加える。例1に記載した18時間後の25℃における精製操作および高度の真空下でのバルブ・ツー・バルブ蒸留により、2.2g(65%)の無色油が得られ、その分析データはこの化合物について文献(例えばA. Mordini et al., Tetrahedron 61, 3349, 2005による)に記載されているものと整合している。
【0090】
例24:(トランス)−2−(2−ヘキシルシクロプロピル)プロパン−2−オール
【化54】

例23に記載したように、ジエチルエーテル中の1.6Mのメチルリチウム(7.4ml、12mmol)およびジエチルでエーテル(10ml)中の(E)−ノナ−2−エン酸メチル(ネオホリオン)(1g、6mmol)から−78℃にて、続いてジブロモメタン(5×1g、30mmol)およびジエチルエーテル中の2Mのtert−ブチルマグネシウムクロリド(5×3ml、30mmol)から0℃〜5℃にて調製した。18時間後の25℃における精製操作および高度の真空下でのバルブ・ツー・バルブ蒸留により、0.8g(74%)の無色油が得られる。
【0091】
【化55】

【0092】
例25:((シス)−1−メチル−2−ペンチルシクロプロピル)メタノール。
【化56】

2−メチル−2−ビニルオキシラン(1g、11mmol)を、ジエチルエーテル(20ml)中のヘキサン中の1.6Mのn−ブチルリチウム(7ml、11mmol)に−78℃にて滴加する。−78℃にて1時間後、溶液を室温までゆっくりと加温する。ジブロモメタン(7.7g、45mmol)を加え、続いてtert−ブチルマグネシウムクロリド(23ml、45mmol)を10℃〜20℃にて滴加する。25℃にて24時間後、混合物を2MのHCl上に注入する。tert−ブチルメチルエーテルでの抽出、有機相の濃NaHCO、濃NaClでの洗浄、MgSOでの乾燥、濾過および溶媒の蒸発により、2.3gの残留物が得られ、それを50℃/0.06mbarにてバルブ・ツー・バルブ蒸留により精製し、1.45g(83%)の無色油(シス/トランス=85:15)が得られる。
【0093】
【化57】

【0094】
例26:((シス)−2−イソブチル−1−メチルシクロプロピル)メタノール。
【化58】

例25に記載したように、2−メチル−2−ビニルオキシラン(1g、11mmol)、ペンタン中の0.7Mのイソプロピルリチウム(16ml、11mmol)、ジブロモメタン(7.7g、45mmol)およびtert−ブチルマグネシウムクロリド(23ml、45mmol)から調製した。精製操作および45℃/0.06mbarにおけるバルブ・ツー・バルブ蒸留により、1.3g(84%)の無色油(シス/トランス=75:25)が得られた。
【0095】
【化59】

【0096】
例27:(1SR,3RS,4RS)−1−ペンチルスピロ[2.7]デカン−4−オール
【化60】

例24に記載したように、1−ビニル−9−オキサビシクロ[6.1.0]ノナン(特開昭49-47345号公報、高砂香料工業株式会社)(3g、18mmol)、ヘキサン中の1.6Mのn−ブチルリチウム(11ml、18mmol)、ジブロモメタン(12.5g、72mmol)およびtert−ブチルマグネシウムクロリド(36ml、72mmol)から調製した。精製操作および98℃/0.05mbarにおけるバルブ・ツー・バルブ蒸留により、2.6g(65%)の無色油(dr=93:7)が得られた。
【0097】
【化61】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

で表される化合物の調製方法であって、
式II
【化2】

で表されるアルコラートの生成、続くこのアルコラートと(A)マグネシウム金属およびジブロモメタン、ならびに(B)ジブロモメタンおよび第三グリニャール試薬から選択される試薬系とのシクロプロパン化(ここで該シクロプロパン化はエーテル溶媒の存在下で行う)を含み、Cα、Cβ、CγおよびQは、可能性(a)および(b):
(a)Cα、Cβ、Cγは、プロトン化されているか、または3個の炭素原子すべてについて合計5つまでの置換基で置換されていてもよい炭素原子を表し、該置換基はアルキル、アルケニル、シクロアルキルおよびシクロアルケニル基からなる群から選択され;
およびQは、
(i)1〜6個の炭素原子、好ましくは1個の炭素原子を有し、当該炭素原子がプロトン化されているかまたは置換されており、当該置換基がCα、Cβ、Cγの置換基のいずれかから選択される、飽和または不飽和の炭素鎖;および
(ii)CαとCβとを結合させる1つの共有結合
から選択される部分を表す;
および;
(b)Cα、Cβ、CγおよびQの全体または一部は、一緒にシクロアルキルまたはシクロアルケニル環を形成する;
に従って選択され、ならびに
(c)Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属またはアルカリ土類金属一ハロゲン化物である、
前記方法。
【請求項2】
シクロプロピルカルビノールの製造方法であって、アリルアルコラートの生成およびこのアリルアルコラートと(A)マグネシウム金属およびジブロモメタンならびに(B)ジブロモメタンおよび第三グリニャール試薬から選択される試薬系とのシクロプロパン化(ここで該シクロプロパン化はエーテル溶媒の存在下で行う)を含む、前記方法。
【請求項3】
Qが単結合を表し、アリルアルコールの置換が、以下の可能性(i)それらのα,γまたはβ,γ位において二置換されている、(ii)それらのα,β,γ位において三置換されている、(iii)α,β,γ,γ位において四置換されている、(iv)それらのα,α,β,γ,γ位において五置換されている、から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アルキル化およびシクロプロパン化を連続的な反応において行う、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
エーテル溶媒が、THF、MTBEおよびジエチルエーテルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第三グリニヤール試薬がtert−ブチルマグネシウムクロリドまたは塩化tert−アミルマグネシウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
フレーバーまたはフレグランス成分の製造であって、アリルアルコラートを請求項1または2に記載の方法によりシクロプロパン化することを含む、前記製造。
【請求項8】
(1−メチル−2−(1,2,2−トリメチルビシクロ[3.1.0]−ヘキサ−3−イルメチル)シクロプロピル)メタノールの製造方法であって、2−エチル−4(2,2,3−トリメチルシクロペンチル−3−エニル)ブタ−2−エン−1−オールと、リチウム試薬ならびに次にマグネシウムおよびジブロモメタンとを、エーテル溶媒の存在下で反応させることを含む、前記方法。
【請求項9】
以下の化合物:1−(2−エチルシクロプロピル)プロパン−2−オール;1−(5,5−ジメチル−ビシクロ[4.1.0]ヘプタン−1−イル)エタノール;ジスピロ[4.0.4.1]ウンデカン−4−オール;2,2,5a,7a−テトラメチルデカヒドロ−1H−ジシクロプロパ[b,d]ナフタレン−6a−イル)メタノール;5−エチル−1,2−ジメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−オール。

【公表番号】特表2010−536802(P2010−536802A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521276(P2010−521276)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【国際出願番号】PCT/CH2008/000352
【国際公開番号】WO2009/023980
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】