説明

シクロプロピルアミド化合物の製造方法

【課題】 工業的生産に適した、3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドの効率的な製造方法、該製造方法に有用な中間体化合物及び該中間体化合物の製造方法の提供。
【解決手段】 3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミドを、金属アジドと反応させ、3−アジド−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドを得た後、これを還元し、3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドを製造する。3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミドは、3−プロピルオキシランカルボン酸とシクロプロピルアミンと反応させることにより製造する。光学活性な3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドを製造するには、ジアステレオマー法で得られる光学活性な(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸を出発原料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロプロピルアミド化合物、具体的には下式(1):

で表される3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドの製造方法、該シクロプロピルアミドの製造に有用な新規化合物及び該新規化合物の製造方法に関する。また本発明は3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドの特定の光学活性体の製造に有用な、(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸の製造方法等にも関する。
【背景技術】
【0002】
3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドは医薬化合物の中間体等として有用な化合物であり、例えば、その光学活性体(2S,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドは、C型肝炎薬として知られている下式(7):

で表される化合物(特許文献1参照)の中間体として有用な化合物であることが知られている(特許文献2及び3、非特許文献1参照)。
【0003】
3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドの製造方法としては、3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸のアミノ基を保護し、カルボン酸部位のアミド化を行った後、保護基を除去する方法が知られている(特許文献2参照)。ここで、3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸は、例えばノルバリンを出発原料とし、カルボン酸部位のアルデヒドへの還元、ヒドロシアノ化、加水分解を経て製造する方法が開示されているが(特許文献2及び3参照)、非常に多くの工程を要するため調製が必ずしも容易ではない。
【特許文献1】国際公開第98/17679号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2002/18369号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開2005/197301号明細書
【非特許文献1】S.-H. Chenら、レターズ・イン・ドラッグ・デザイン・アンド・ディスカバリー、2巻、118頁、2005年(Letters in Drug Design & Discovery 2005, 2, 118)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、工業的生産に適した、3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドの効率的な製造方法、該製造方法に有用な中間体化合物及び該中間体化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミドが3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドの製造に有用であることを見出した。すなわち、3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミドを金属アジドと反応させてアジド体とし、これを還元することで容易に3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミドが得られることを見出した。また3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミドは新規化合物であるが、本発明者らは、該化合物が3−プロピルオキシランカルボン酸とシクロプロピルアミンとを反応させることで容易に製造できることを見出した。
【0006】
更に、本発明者らは、これらの方法で3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドの光学活性体である(2S,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドを製造する場合に、出発物質となる(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸を、ジアステレオマー法で容易に得る方法を見出した。(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸の製造方法としては、2−ヘキセン−1−オールをシャープレス不斉エポキシ化して得られるオキシランカルビノールを酸化する方法が知られていた(L. Vaccaroら、ジャーナル・オブ・オルガニック・ケミストリー、68巻、7041頁、2003年(J. Org. Chem. 2003, 68, 7041)参照)。しかしながら、オキシランカルビノールからオキシランカルボン酸への酸化は、ルテニウム触媒存在下、過ヨウ素酸を用いる方法(J.-N. Denisら、ジャーナル・オブ・オルガニック・ケミストリー、51巻、46頁、1986年(J. Org. Chem. 1986, 51, 46)参照)、又はクロム酸を用いる方法(Y Ohfuneら、ジャーナル・オブ。ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー、108巻、6041頁、1986年(J. Am. Chem. Soc. 1986, 108, 6041)参照) など、毒性の強い試薬を用いる必要があるため工業的な観点から必ずしも満足できる方法とは言えない。
【0007】
本発明者らは以上の知見に基づき本発明を完成させた。すなわち本発明は以下の内容を含むものである。
[1] 下式(1):

で表される3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミドを、金属アジドと反応させ、式(2):

で表される3−アジド−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドを得た後、これを還元することを特徴とする、式(3):

で表される3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドの製造方法。
[2] 下式(1):

で表される3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミド。
[3] 下式(2):

3−アジド−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミド。
[4] 下式(4):

で表される3−プロピルオキシランカルボン酸を、シクロプロピルアミンと反応させることを特徴とする、式(1):

で表される3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミドの製造方法。
[5] 下式(5):

で表される(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸の製造方法であって、(2R,3S)−3−プロピルオキシランカルボン酸を不純物として含む(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸を、光学活性アミン化合物と反応させ、生成したジアステレオマー塩を分割することを特徴とする、(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸の製造方法。
[6] 光学活性アミン化合物がブルシンである、上記[5]記載の製造方法。
[7] 分割が、溶媒中でジアステレオマー塩を晶析により分離した後、該塩を中和し、(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸を単離することにより行なわれる、上記[5]又は[6]に記載の製造方法。
[8] 下式(6):

で表される(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸のブルシン塩。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミド及びその製造中間体を工業的生産に適した方法で効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0010】
式(1)で表される3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミドを、金属アジドと反応させ、式(2)で表される3−アジド−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドを製造する方法について説明する。なお、3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミド及び3−アジド−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドは新規化合物である。
【0011】
金属アジドとしては、例えば、アジ化カリウム、アジ化ストロンチウム、アジ化セシウム、アジ化ナトリウム、アジ化鉛、アジ化バリウム、アジ化リチウム、アジ化ルビジウム等が挙げられる。特に、アジ化ナトリウム、アジ化リチウムが好ましい。金属アジドの使用量は、3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミド1モルに対して、通常1〜5モル当量、好ましくは1〜2モル当量である。
【0012】
目的の3位に、選択的にアジド基を導入するために、添加物として塩を加えておくのが好ましい(F. Fringuelliら、ジャーナル・オブ・オルガニック・ケミストリー、66巻、4719頁、2001年(J. Org. Chem. 2001, 66, 4719)及びF. Fringuelliら、ジャーナル・オブ・オルガニック・ケミストリー、68巻、7041頁、2003年(J. Org. Chem. 2003, 68, 7041)参照)。塩としては、例えば、塩化アルミニウム、塩化インジウム、塩化コバルト(II)、塩化ジルコニウム、硝酸亜鉛、硝酸銅(II)、硝酸ニッケル(II)、硫酸コバルト(II)、硫酸マグネシウム等が挙げられる。特に硝酸銅(II)が好ましい。塩の使用量は、3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミド1モルに対して、通常0.001〜1モル当量、好ましくは0.01〜0.2モル当量である。
【0013】
反応溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N’−ジメチルホルムアミド及びこれらの任意の混合溶媒等が挙げられる。特に水を含む混合溶媒及び水が好ましい。反応温度は、好ましくは−10〜70℃である。反応時間は、通常10分から50時間程度である。反応終了後、適当な有機溶媒で抽出する等の処理により精製を行うのが好ましい。得られた3−アジド−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドは、晶析、クロマトグラフィー等の当業者に公知の方法により固体として単離することができるが、単離せずに次の反応に用いてもよい。
【0014】
次に、式(2)で表される3−アジド−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドを還元し、式(3)で表される3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドを製造する方法について説明する。還元は接触還元により、又は適当な還元剤を用いて行なうことができる。
【0015】
接触還元は当業者に公知の方法に従うことができる。接触還元に使用する触媒としては、例えば、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、白金及びニッケル等が挙げられる。これらは通常、活性炭、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の担体に担持されて使用される。触媒は水を含んでいてもよい。触媒としては特にパラジウムが好ましく、パラジウム炭素等のように好ましくは担体に担持されて用いられる。触媒の使用量は、3−アジド−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドに対して、通常0.1〜50質量%、好ましくは0.1〜25質量%である。
【0016】
接触還元に使用する溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、酢酸エチル、テトラヒドロフラン及びこれらの任意の混合溶媒等を挙げることができる。接触還元時の水素圧は、好ましくは1〜10気圧である。反応温度は、通常0℃〜60℃、好ましくは10℃〜40℃である。反応時間は、通常10分から50時間程度である。反応終了後、触媒は濾過等により、系より分離することができる。
【0017】
適当な還元剤で還元する場合、例えば、ジボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリブチルスズなどが挙げられる。反応溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、tert−ブタノール、エーテル、テトラヒドロフラン及びこれらの任意の混合溶媒等を挙げることができる。反応温度は、好ましくは−10〜30℃である。反応時間は、通常10分から50時間程度である。
【0018】
得られた3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドは、晶析、クロマトグラフィー等の当業者に公知の方法により精製及び単離することができる。
【0019】
本発明において、式(1)で表される3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミド、式(2)で表される3−アジド−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミド及び式(3)で表される3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドは、それぞれラセミ体でも光学活性体でもよい。
【0020】
次に、新規化合物である、式(1)で表される3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミドを製造する方法について説明する。3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミドは、式(4)で表される3−プロピルオキシランカルボン酸をシクロプロピルアミンと反応させることにより製造することができる。反応は、適当な縮合剤及び塩基の存在下に行うことができる。また、3−プロピルオキシランカルボン酸を、塩基存在下、アシル化試薬により混合酸無水物に変換した後、シクロプロピルアミンと反応させることによっても行なうことができる。式(4)で表される3−プロピルオキシランカルボン酸は、ラセミ体でも光学活性体でもよい。
【0021】
3−プロピルオキシランカルボン酸を、適当な縮合剤及び塩基の存在下、シクロプロピルアミンと反応させる場合、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾールなどを存在させ、反応系中で活性エステルを生成させてもよい。
【0022】
縮合剤としては、ペプチド合成に使用される縮合剤を広く用いることができ、例えば、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスファート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスファート、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリスピロリジノホスホニウム ヘキサフルオロホスファート、ブロモトリピロリジノホスホニウム ヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。縮合剤の使用量は、3−プロピルオキシランカルボン酸1モルに対して、通常1〜3モル当量、好ましくは1〜1.5モル当量である。
【0023】
塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピリジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、4−ピコリン、N−エチルピペリジン、N,N’−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基が挙げられる。塩基の使用量は、3−プロピルオキシランカルボン酸1モルに対して、通常1〜3モル当量、好ましくは1〜1.5モル当量である。シクロプロピルアミンの使用量は、3−プロピルオキシランカルボン酸1モルに対して、通常1〜3モル当量、好ましくは1〜1.5モル当量である。
【0024】
反応溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、トルエン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、N,N’−ジメチルホルムアムド、1−メチル−2−ピロリドン及びこれらの任意の混合溶媒等が挙げられる。反応温度は、好ましくは−10〜30℃である。反応時間は、通常10分〜50時間程度である。
【0025】
3−プロピルオキシランカルボン酸を、塩基存在下、反応系中においてアシル化試薬を作用させ混合酸無水物に変換した後、シクロプロピルアミンと反応させる場合、アシル化試薬としては、例えば、塩化ピバロイル、クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸イソブチル等が挙げられる。アシル化試薬の使用量は、3−プロピルオキシランカルボン酸1モルに対して、通常1〜3モル当量、好ましくは1〜1.5モル当量である。
【0026】
塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピリジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、4−ピコリン、N−エチルピペリジン、N,N’−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基が挙げられる。塩基の使用量は、3−プロピルオキシランカルボン酸1モルに対して、通常1〜3モル当量、好ましくは1〜1.5モル当量である。
【0027】
シクロプロピルアミンの使用量は、3−プロピルオキシランカルボン酸1モルに対して、通常1〜3モル当量、好ましくは1〜1.5モルである。反応溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、トルエン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、N,N’−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン及びこれらの任意の混合溶媒等が挙げられる。
【0028】
混合酸無水物は比較的不安定であるため、−30〜10℃で調製することが好ましい。混合酸無水物の調製後、反応混合物に対してシクロプロピルアミンを添加し反応させることによって、3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミドが得られる。反応温度は、好ましくは−30〜30℃である。反応時間は、通常10分〜50時間程度である。反応終了後、反応液に塩酸、硫酸等の酸を加え、適当な有機溶媒で抽出する等の処理により精製を行なうのが好ましい。得られた3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミドは、蒸留、クロマトグラフィー等の当業者に公知の方法により単離することができるが、単離せずに次の反応に用いてもよい。
【0029】
式(4)で表される3−プロピルオキシランカルボン酸として光学活性な3−プロピルオキシランカルボン酸を用いた場合、本発明の製造方法で得られる式(1)〜(3)の化合物においてもその光学活性が保持される。下記スキームに示されるように、例えば、3−プロピルオキシランカルボン酸として、式(5)で表される(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸を用いれば、前記式(7)で表されるC型肝炎薬の中間体として有用な、下式(3’)で表される(2S,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドを製造することができる。
【0030】

【0031】
3−プロピルオキシランカルボン酸は、trans−2−ヘキセン酸を酸化することにより容易に製造することができる(例えば、P. F. Coreyら、ジャーナル・オブ・オルガニック・ケミストリー、51巻、1925頁、1986年(J. Org. Chem. 1986, 51, 1925参照)。
【0032】
酸化剤としては、例えば、過酸化水素水、m−クロロ過安息香酸、オキソンTM過硫酸塩化合物などが挙げられる。オキソンTM 過硫酸塩化合物が特に好ましい。酸化剤の使用量は、trans−2−ヘキセン酸1モルに対して、通常1〜3モル当量、好ましくは1〜2モル当量である。反応溶媒としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、水及びこれらの任意の混合溶媒等が挙げられる。特にアセトンと水の混合溶媒が好ましい。反応の際、pHを6以上に制御することが好ましく、3−プロピルオキシランカルボン酸1モルに対して、2〜5モル当量の炭酸水素ナトリウムを存在させ、pHを6以上に制御することが特に好ましい。反応温度は、好ましくは0〜70℃である。反応時間は、通常10分〜50時間程度である。反応終了後、反応液に塩酸、硫酸等の酸を加え、適当な有機溶媒で抽出する等の処理により精製を行なうのが好ましい。得られた3−プロピルオキシランカルボン酸は、晶析、クロマトグラフィー等の当業者に公知の方法により固体として単離することができるが、単離せずに次の反応に用いてもよい。
【0033】
上記の方法で得られる、3−プロピルオキシランカルボン酸は、通常、(2R,3S)−3−プロピルオキシランカルボン酸及び(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸を含むラセミ体となる。該ラセミ体は、光学活性アミン化合物を用いたジアステレオマー法により光学分割でき、光学活性な3−プロピルオキシランカルボン酸を得ることができる。
【0034】
光学活性な3−プロピルオキシランカルボン酸として、(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸を目的物として得る場合を例に挙げて説明する。光学分割を行なう3−プロピルオキシランカルボン酸は、典型的にはラセミ体が挙げられるが、光学純度の低い(例えば、光学純度が60%e.e.以下の)、(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸を、その光学純度を高めるために使用することもできる。すなわち、(2R,3S)−3−プロピルオキシランカルボン酸を不純物として含む(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸が、本発明の光学分割に用いられる。
【0035】
(2R,3S)−3−プロピルオキシランカルボン酸を不純物として含む(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸を、光学活性アミン化合物を反応させ、生成したジアステレオマー塩を分割することで、光学純度の高い(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸を得ることができる。
【0036】
反応は通常有機溶媒中で行われる。有機溶媒としては、アルコール系有機溶媒が好適に使用される。アルコール系有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、tert−ブタノール及びこれらの任意の混合溶媒等が挙げられる。また、これらアルコール系有機溶媒と、水又は非アルコール系有機溶媒とを混合して用いてもよい。非アルコール系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、tert−ブチルメチルエーテル、イソブチルメチルケトン、酢酸ブチル、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、アセトン、エチルメチルケトン、アセトニトリル及びこれらの任意の混合溶媒等が挙げられる。本発明における有機溶媒としては、特に95%エタノール水溶液が好ましい。有機溶媒の使用量は、3−プロピルオキシランカルボン酸に対して通常1〜30倍質量、好ましくは2〜20倍質量である。
【0037】
光学活性アミン化合物の使用量は、3−プロピルオキシランカルボン酸1モルに対して、通常0.5〜1.5モル当量、好ましくは0.5〜1.0モル当量である。反応温度は、40〜70℃、好ましくは50〜60℃である。反応時間は、通常0.1〜2時間、好ましくは0.5〜1時間程度である。
【0038】
生成したジアステレオマー塩の分割は、通常、分離した後、該塩を中和し、(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸を単離することにより行なわれる。晶析溶媒は反応溶媒と同様の溶媒を用いることができる。晶析は、例えば以下のような条件にて行うことができる。反応終了後、まず反応液を冷却する。冷却は、通常1〜10時間、好ましくは2〜5時間かけて徐々に冷却する。冷却到達温度は0〜30℃、好ましくは15〜25℃である。冷却到達温度で反応液を撹拌し、晶析を行う。晶析時間は通常0.5〜24時間、好ましくは1〜5時間程度である。析出したジアステレオマー塩の結晶は、濾過や遠心分離等の操作により、反応液から分離することができる。
【0039】
ジアステレオマー塩を結晶として得た後、該塩を中和し、(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸を単離する。中和及び単離は、ジアステレオマー塩を、酸性条件下、非プロトン性有機溶媒で抽出することにより行うことができる。
【0040】
抽出は公知の方法で行うことができる。例えば、有機相として、エーテル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、トルエン等の有機溶媒、水相として、塩酸水溶液、硫酸水溶液等の酸性水溶液を使用し、ジアステレオマー塩を、有機層側に抽出する。酸性水溶液のpHは、通常pH0.5〜3、好ましくは1〜2である。有機層を水等で洗浄した後、濃縮することにより、光学純度の高い(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸を得ることができる。例えば、ラセミ体の3−プロピルオキシランカルボン酸を使用した場合、本発明によれば、光学純度80%e.e.以上の光学活性体の(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸を得ることができる。
【0041】
本発明における好ましい光学活性アミン化合物としては、(1R,2S)-(+)-cis-1-アミノ-2-インダノール、(1S,2R)-(-)-cis-1-アミノ-2-インダノール、(1R,2S)-(-)-2-アミノ-1,2-ジフェニルエタノール、(1S,2R)-(+)-2-アミノ-1,2-ジフェニルエタノール、(1R,2R)-(-)-2-アミノ-1-(4-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール、(1S,2S)-(+)-2-アミノ-1-(4-ニトロフェニル)-1,3-プロパンジオール、(1R,2R)-(-)-2-アミノ-1-フェニル-1,3-プロパンジオール、(1S,2S)-(+)-2-アミノ-1-フェニル-1,3-プロパンジオール、(1R,2S)-(-)-エフェドリン、キニジン、キニン、(-)-シンコニジン、(+)-シンコニン、(-)-ストリキニーネ、デヒドロアビエチルアミン、(R)-(+)-1-(p-トリル)エチルアミン、(S)-(-)-1-(p-トリル)エチルアミン、4-ニトロフェニル-2-アミノプロパン-1,3-ジオール、(1R,2S)-(-)-ノルエフェドリン、(1S,2R)-(+)-ノルエフェドリン、(S)-1-フェニル-2-(p-トリル)エチルアミン、(R)-(+)-1-フェニルエチルアミン、(S)-(-)-1-フェニルエチルアミン、ブルシン、(R)-(+)-N-ベンジル-1-フェニルエチルアミン、モルヒネの各光学活性体からなる群より選択される1種以上を挙げることができる。特に好ましい光学活性アミン化合物としては、ブルシンを挙げることができる。
【0042】
本発明の製造方法によって得られる、式(6)で表される(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸のブルシン塩は新規化合物である。
【0043】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。もちろん本実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0044】
<参考例1>
(2S*,3R*)-2,3-エポキシヘキサン酸の光学純度の決定
(2S*,3R*)-2,3-エポキシヘキサン酸の光学純度は、トリメチルシリルジアゾメタンで (2S*,3R*)-2,3-エポキシヘキサン酸メチルへと誘導した後に、CP Chirasil-DEX-CBカラム(内径0.25 mm、長さ25 m、Varian社)を用いてガスクロマトグラフィーにより分析することによって決定した[キャリアーガス:ヘリウム、検出方法:水素炎イオン化検出、初期温度:80℃、初期温度を維持する時間:5分、昇温速度:1℃/分、最終温度:150℃、最終温度を維持する時間:30分、注入口温度:200℃、検出器温度:200℃。 (+)-(2S,3R)体の保持時間;15.3分。(-)-(2R,3S)体の保持時間;14.8分]。(2S*,3R*)-2,3-エポキシヘキサン酸の絶対配置は、メチルエステルに変換した後、旋光度を測定して文献値より決定した(Chem. Ber. 1986, 119, 2178)。
【0045】
<参考例2>
(±)-(2S*,3R*)-2,3-エポキシヘキサン酸の合成
trans-2-ヘキセン酸(7.35 g, 64.5 mmol)のアセトン(64.5 ml)溶液に炭酸水素ナトリウム(21.7 g, 258 mmol)を加えた。水(64.5 ml)を滴下した後、オキソンTM 過硫酸塩化合物(39.7 g, 64.5 mmol)及びエチレンジアミンテトラ酢酸 二ナトリウム塩(29 mg, 0.078 mmol)の水(194 ml)溶液を加えた。室温で18時間攪拌した後、6 M塩酸(17 ml)を加えてpHを1.8に調整した。酢酸エチルで抽出した後、飽和食塩水で有機層を洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で溶媒を留去して、(±)-(2S*,3R*)-2,3-エポキシヘキサン酸(8.29 g, 63.7 mmol, 99%)を無色オイルとして得た。
1H-NMR (CDCl3)δ 0.98 (t, J= 7.3 Hz, 3H), 1.45-1.70 (m, 4H), 3.18 (ddd, J= 1.9, 4.9, 6.4 Hz, 1H), 3.27 (d, J= 1.9 Hz, 1H); ESI MASS m/z 129.0 (M-H-).
【0046】
<参考例3>
(2S*,3R*)-2,3-エポキシヘキサン酸メチルの合成
(2S*,3R*)-2,3-エポキシヘキサン酸(71 mg, 0.546 mmol)をメタノール(1 ml)に溶解し、トリメチルシリルジアゾメタン0.6 Mヘキサン溶液(0.92 ml)を加えた。淡黄色が消失するまで酢酸を加えた後、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、エーテルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で溶媒を留去して、メチル (2S*,3R*)-2,3-エポキシヘキサノアート(25.9 mg, 0.180 mmol, 33%)を無色オイルとして得た。
1H-NMR (CDCl3)δ 0.98 (t, J= 7.3 Hz, 3H), 1.45-1.65 (m, 4H), 3.17 (ddd, J= 1.9, 4.8, 6.1 Hz, 1H), 3.23 (d, J= 1.9 Hz, 1H), 3.78 (s, 3H); ESI MASS m/z 145 (MH+).
【実施例1】
【0047】
(+)-(2S,3R)-エポキシヘキサン酸 ブルシン塩の合成
(±)-2,3-エポキシヘキサン酸(207 mg, 1.59 mmol)の95%エタノール(1.0 ml)溶液とブルシン(627 mg, 1.59 mmol)の95%エタノール(1.0 ml)溶液を、60℃にて混合した。60℃で30分間攪拌した後、徐々に室温に冷却したところ、白色結晶が析出した。得られた結晶を濾取し、真空中で50℃にて乾燥して、(+)-(2S,3R)-エポキシヘキサン酸 ブルシン塩(262 mg, 0.499 mmol, 31%)を得た。生成物の光学純度を参考例1記載の方法に基づき決定したところ、84%e.e.であることが確認された。
1H-NMR (CDCl3)δ 0.99 (t, J= 7.2 Hz, 3H), 1.37 (dt, J= 10.4, 3.1 Hz, 1H), 1.49-1.70 (m, 5H), 1.99 (dd, J= 6.1, 13.3 Hz, 1H), 2.11 (dt, J= 7.7, 13.3 Hz, 1H), 2.54 (dt, J= 15.0, 4.3 Hz, 1H), 2.67 (dd, J= 3.1, 17.6 Hz, 1H), 2.99-3.18 (m, 4H), 3.19 (d, J= 2.1 Hz, 1H), 3.29 (brs, 1H), 3.71 (dd, J= 7.9, 11.5 Hz, 1H), 3.89 (s, 3H), 3.91 (s, 3H), 3.94 (d, J= 10.5 Hz, 1H), 4.06-4.12 (m, 2H), 4.22 (dd, J= 7.0, 14.0 Hz, 1H), 4.31-4.36 (m, 2H), 6.20-6.25 (m, 1H), 6.79 (s, 1H), 7.80 (s, 1H).
【実施例2】
【0048】
(+)-(2S,3R)-エポキシヘキサン酸の合成
(+)-(2S,3R)-エポキシヘキサン酸 ブルシン塩(105 mg, 0.200 mmol)にエーテル(4.0 ml)と1M塩酸(1 ml)を加えて攪拌し、分層した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去し、(+)-(2S,3R)-エポキシヘキサン酸(22.5 mg, 0.173 mmol, 86%)を無色オイルとして得た。生成物の光学純度を参考例1記載の方法に基づき決定したところ、84%e.e.であることが確認された。
【実施例3】
【0049】
(±)-(2S*,3R*)-2,3-エポキシヘキサン酸 シクロプロピルアミドの合成
(±)-(2S*,3R*)-2,3-エポキシヘキサン酸(213 mg, 1.64 mmol)及びトリエチルアミン(0.251μl, 1.80 mmol)をジクロロメタン(2.5 ml)に溶解し、-10℃に冷却した後、塩化ピバロイル(0.222μl, 1.80 mmol)のジクロロメタン(1.0 ml)溶液を加えた。-10℃で30分攪拌した後、シクロプロピルアミン(0.125μl, 1.80 mmol) のジクロロメタン(1.0 ml)溶液を加えた。さらに-10℃で3時間攪拌した後、水(10 ml)を加えた。ジクロロメタンで抽出した後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣にエーテルを加えた後、1M 塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、及び飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(20-50%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、(±)-(2S*,3R*)-2,3-エポキシヘキサン酸 シクロプロピルアミド(121 mg, 0.712 mmol, 43%)を無色オイルとして得た。
1H-NMR (CDCl3)δ 0.44-0.54 (m, 2H), 0.73-0.83 (m, 2H), 0.97 (t, J= 7.2 Hz, 1H), 1.43-1.70 (m, 4H), 2.65-2.73 (m, 1H), 2.88-2.92 (m, 1H), 3.20 (d, J= 2.2 Hz, 1H), 6.28 (brs, 1H); 13C-NMR (CDCl3)δ 5.4, 5.4, 12.8, 18.1, 20.9, 32.7, 54.4, 58.6, 169.1; ESI MASS m/z 170.2 (MH+).
【実施例4】
【0050】
(±)-(2S*,3S*)-3-アジド-2-ヒドロキシヘキサン酸 シクロプロピルアミドの合成
(±)-(2S*,3R*)-2,3-エポキシヘキサン酸 シクロプロピルアミド(65.4 mg, 0.386 mmol)を水(386μl)と混合した後、アジ化ナトリウム(37.7 mg, 0.580 mmol)を加えた。混合物に対して硝酸銅(II)三水和物(9.4 mg, 0.039 mmol)の水(0.386 mmol)溶液を加えた後、65℃で16時間攪拌した。水を加えた後、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(4%メタノール/ジクロロメタン)で精製し、(±)-(2S*,3S*)-3-アジド-2-ヒドロキシヘキサン酸 シクロプロピルアミド(27.1 mg, 0.128 mmol, 33%)を白色結晶として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ 0.48-0.61 (m, 2H), 0.78-0.86 (m, 2H), 0.95 (t, J= 7.1 Hz, 3H), 1.35-1.67 (m, 4H), 2.72-2.79 (m, 1H), 3.00 (d, J= 4.7 Hz, 1H), 3.71 (dt, J= 9.6, 3.7 Hz, 1H), 4.20 (t, J= 4.4 Hz, 1H), 6.65 (bs, 1H); 13C-NMR (CDCl3)δ 6.9, 6.9, 14.2, 19.8, 22.7, 31.0, 65.0, 74.2, 172.0; ESI MASS m/z 213.3 (MH+).
【実施例5】
【0051】
(±)-(2S*,3S*)-3-アミノ-2-ヒドロキシヘキサン酸 シクロプロピルアミドの合成
(±)-(2S*,3S*)-3-アジド-2-ヒドロキシヘキサン酸 シクロプロピルアミド(18.1 mg, 0.0851 mmol)のメタノール(1.0 ml)溶液に10% Pd/C (wet, 50wt%)(4.7 mg)を加え、水素置換した。室温で2時間30分攪拌した後、Pd/Cを濾去しメタノールで洗浄した。減圧下で溶媒を留去し、(±)-(2S*,3S*)-3-アミノ-2-ヒドロキシヘキサン酸 シクロプロピルアミド(12.0 mg, 0.0644 mmol, 76%)を白色結晶として得た。
1H-NMR (CD3OD)δ 0.50-0.56 (m, 2H), 0.69-0.77 (m, 2H), 0.91 (t, J= 7.1 Hz, 3H), 1.25-1.53 (m, 4H), 2.65-2.70 (m, 1H), 2.97-3.02 (m, 1H), 3.95 (d, J= 3.9 Hz, 1H); 13C-NMR (CD3OD)δ 6.8, 6.9, 14.9, 20.8, 23.4, 35.0, 55.2, 76.6, 177.3; ESI MASS m/z 187.3 (MH+).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1):

で表される3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミドを、金属アジドと反応させ、式(2):

で表される3−アジド−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドを得た後、これを還元することを特徴とする、式(3):

で表される3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミドの製造方法。
【請求項2】
下式(1):

で表される3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミド。
【請求項3】
下式(2):

3−アジド−2−ヒドロキシヘキサン酸シクロプロピルアミド。
【請求項4】
下式(4):

で表される3−プロピルオキシランカルボン酸を、シクロプロピルアミンと反応させることを特徴とする、式(1):

で表される3−プロピルオキシランカルボン酸シクロプロピルアミドの製造方法。
【請求項5】
下式(5):

で表される(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸の製造方法であって、(2R,3S)−3−プロピルオキシランカルボン酸を不純物として含む(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸を、光学活性アミン化合物と反応させ、生成したジアステレオマー塩を分割することを特徴とする、(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸の製造方法。
【請求項6】
光学活性アミン化合物がブルシンである、請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
分割が、溶媒中でジアステレオマー塩を晶析により分離した後、該塩を中和し、(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸を単離することにより行なわれる、請求項5又は6に記載の製造方法。
【請求項8】
下式(6):

で表される(2S,3R)−3−プロピルオキシランカルボン酸のブルシン塩。

【公開番号】特開2009−132621(P2009−132621A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67342(P2006−67342)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】