説明

シナピン酸の誘導体の使用およびそのような誘導体を含んでなる組成物

本発明は、特に皮膚美白のための化粧品成分として、また老化肌の兆候に対する化粧剤として使用し得る物質に関する。本発明は、皮膚の色素沈着に関する疾病の治療用薬剤を製造するための、そのような物質の使用にも関する。さらに、本発明は特定の物質に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に皮膚の美白のための化粧品成分としておよび老化肌の兆候に対する化粧剤として使用し得る物質に関する。本発明はまた、皮膚の色素沈着に関連する疾病の治療用薬剤の製造のためのそのような物質の使用に関する。さらに、本発明は特定の物質に関する。
【背景技術】
【0002】
そばかすまたは染みのような異常色素沈着を予防および/または低減する化粧品における美白剤に対して、世界市場の要求がある。これらの色素沈着は、日光の浴び過ぎに起因する色素沈着である。さらに、一部の色黒の人は、特に美の特徴として考えられるより明るい皮膚色を好む。
【0003】
EP1437117A1(Cognis France)は、化粧品成分としてシナピン酸(=3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸、=(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ−フェニル)−3−プロパ−2−エン酸、=シナピン酸(sinapinic acid))およびその誘導体を開示する。該誘導体は、請求項15および段落[0025]で参照される:この段落により得られる誘導体は、シナピン酸の酸機能を介する全ての誘導体である。フェニル基の4−ヒドロキシ基を介する誘導体または酸基に隣接するアルキレン基を介する誘導体は開示されていない。EP1437117は、シナピン酸の不安定性についても言及し、解決法としてマイクロカプセル化を提案する。
【0004】
JP64−013017(ポーラ化成工業)は、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸の誘導体を開示する。開示された全ての誘導体はシナピン酸の酸機能を介する誘導体である。4−ヒドロキシ基またはアルキレン基の誘導体は記載されていない。
【0005】
JP2004175778A(相互薬工株式会社)は、化粧品成分として桂皮酸誘導体を開示する。開示された全ての誘導体は、桂皮酸の酸部分における特定基(2)または(3)を有する。これらの物質は、本発明の物質には含まれない。
【0006】
WO03/027055A(Pacific Corporation)は、3,4,5−トリメトキシフェニル酢酸、3,4,5−トリメトキシ桂皮酸または3,4,5−トリメトキシヒドロ桂皮酸のチミルまたはカルバクリルエステルおよびそれらの美白組成物としての使用を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1437117号明細書
【特許文献2】特開昭64−013017号公報
【特許文献3】特開2004−175778号公報
【特許文献4】国際公開第03/027055号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、化粧品組成物の製造のためにまたは該化粧品組成物において効果的に使用でき、特に皮膚美白および/または皮膚老化の兆候に対する化粧剤として適当な物質を提供することである。化学的に安定し、そのため化粧品組成物に容易に組み込むことができる物質を提供することは、特に興味深い。さらに、これらの物質が、それを塗布する皮膚の炎症を引き起こさないか、または市場で既知の製品に比べて炎症がほとんど広がらないことが望ましい。本発明のさらなる目的は、皮膚の色素沈着に関する障害の治療用薬剤の製造のための物質を提供することである。さらに、本発明は特定の物質に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、皮膚のライトニングおよび/またはホワイトニング用、ならびに/あるいは、色素沈着の低減および/または色素過剰沈着の低減用、ならびに/あるいは、メラニン形成の阻害用、ならびに/あるいは、老化の兆候の予防および/または遅延用、ならびに/あるいは、老化肌の皮膚外観の改善用の化粧品および/または局所性組成物の製造のための、もしくは該化粧品および/または局所性組成物における、少なくとも1つの式(I)の物質の使用に関する。
【化1】

[式中、
−Yは、H、1〜8個の炭素原子を含んでなるアルキル基またはアルケニル基、フェニル基、Na、KまたはNHであり、
−RおよびRは、互いに独立して、H、1〜18個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状、飽和または不飽和アルキル基あるいは−C(=O)−R(式中、Rは、1〜17個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状、飽和または不飽和アルキル基である)であり、かつ、
がHまたはCHの場合、RはHではない。]
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔式(I)で示される物質〕
本発明に適当な物質は、式(I)で示される物質である。
【化2】

[式中、
−Yは、H、1〜8個の炭素原子を含んでなるアルキル基またはアルケニル基、フェニル基、Na、KまたはNHであり、
−RおよびRは、互いに独立して、H、1〜18個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状、飽和または不飽和アルキル基あるいは−C(=O)−R(式中、Rは、1〜17個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状、飽和または不飽和アルキル基である)であり、かつ、
がHまたはCHの場合、RはHではない。]
【0011】
用語「不飽和アルキル基」は、少なくとも1つの二重結合または少なくとも1つの三重結合を有する任意の炭化水素部分を含む。従って、「不飽和アルキル基」は、任意のアルケニル基またはアルキニル基を含めるために用いられる。
【0012】
〔置換基Y〕
Yは、H、1〜8個の炭素原子を含んでなるアルキル基およびアルケニル基、フェニル基、Na、KおよびNHからなる群から選択される。好ましい実施態様において、Yは、Hおよび1〜8個の炭素原子を含んでなるアルキル基およびアルケニル基からなる群から選択される。アルキル基またはアルケニル基は直鎖状または分枝状であってよい。1〜8個の炭素原子を含んでなるアルキル基またはアルケニル基の例は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基(=1−メチルエチル基)、プロペニル基、イソブチル基(2−メチルプロピル基)、sec−ブチル基(=1−メチルプロピル基)、tert−ブチル基(1,1−ジメチルエチル基)、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ブテニル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1−へペンチル基、2−ヘプテニル基、3−ヘプテニル基、4−ヘプテニル基、5−ヘプテニル基、6−ヘプテニル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基である。
【0013】
好ましい実施態様において、Yは、Hおよび1〜3個の炭素原子を含んでなるアルキル基およびアルケニル基、NaおよびKからなる群から選択される。本発明の特に好ましい実施態様において、YはHである。
【0014】
〔置換基RおよびR
およびRは、互いに独立して、H、1〜18個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状の、飽和又は不飽和アルキル基あるいは−C(=O)−R(式中、Rは、1〜17個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状、飽和または不飽和アルキル基である)であり、かつ、RがHまたはCHの場合、RはHではない。
【0015】
好ましい実施態様において、RおよびRは、互いに独立して、H、1〜12個の炭素原子、好ましくは2〜10個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和アルキル基あるいは−C(=O)−R(式中、Rは、1〜11個の炭素原子、好ましくは2〜9個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状、飽和または不飽和アルキル基である)であり、RがHまたはCHの場合、RはHではない。
【0016】
1つの実施態様において、RおよびRは、−C(=O)−R(式中、Rは、1〜17個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状、飽和または不飽和アルキル基である)である。
【0017】
好ましい実施態様において、RおよびRは、−C(=O)−CHである。好ましい実施態様において、RおよびRは、−C(=O)−CHである。
【0018】
好ましい実施態様において、RはC(=O)−Cであり、Rは−C(=O)−CHである。好ましい実施態様において、RはC(=O)−Cであり、Rは−C(=O)−CHである。
【0019】
1〜18個の炭素原子を含んでなる適当なアルキル基またはアルケニル基の例は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基(=1−メチルエチル基)、プロペニル基、イソブチル基(2−メチルプロピル基)、sec−ブチル基(=1−メチルプロピル基)、tert−ブチル基(1,1−ジメチルエチル基)、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ブテニル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1−へペンチル基、2−ヘプテニル基、3−ヘプテニル基、4−ヘプテニル基、5−ヘプテニル基、6−ヘプテニル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基である。
【0020】
好ましい実施態様において、RおよびRは、互いに独立して、−C(=O)−R(式中、Rは、1〜17個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状、飽和または不飽和アルキル基である)であり、RまたはRの少なくとも1つはHである。この実施態様において、RがHであって、Rが−C(=O)−R(式中、Rは、1〜17個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状、飽和または不飽和アルキル基である)であるか、またはRが−C(=O)−R(式中、Rは、1〜17個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状、飽和または不飽和アルキル基である)であって、RがHであるかのいずれかであり、後者の選択肢が好ましい。
【0021】
好ましい実施態様において、Rは−C(=O)−CHまたは−C(=O)−Cであり、RはHである。
【0022】
好ましい実施態様において、RはHであり、RはC(=O)−CHであり、YはCH−CHである。好ましい実施態様において、Rは−C(C=O)−CHであり、RはHであり、YはHである。
【0023】
下記表は、本発明に使用される式(I)で示される物質を例示する。
【表1−1】

【0024】
【表1−2】

【0025】
【表1−3】

【0026】
【表1−4】

【0027】
〔化粧品組成物〕
化粧品組成物は、人体の様々な外部器官(表皮、毛髪組織、爪、唇および外部生殖器)と、または歯および口腔粘膜と、専らまたは主に、これらの器官を洗浄し、香り付けし、外観を変えおよび/または体臭を改善し、および/またはこれらの器官を保護し、または良好な状態に保つことを目的として接触させる任意の製剤を意味する。
【0028】
本発明の化粧品組成物は、例えば、ヘアシャンプー、ヘアローション、フォームバス、シャワーバス、クリーム、ジェル、ローション、アルコール性および水性/アルコール性溶液、エマルション、ワックス/脂肪塊、スティック製剤、粉体または軟膏のような形態であってよい。これらの組成物は、さらなる助剤および添加剤として、低刺激性の界面活性剤、油体、乳化剤、真珠光沢性ワックス、粘稠度調整剤、増粘剤、過脂肪剤、安定化剤、ポリマー、シリコーン化合物、脂肪、ワックス、レシチン、リン脂質、UV保護因子、生体活性成分、抗酸化剤、消臭剤、制汗剤、フケ防止剤、被膜形成剤、膨潤剤、防虫剤、セルフタンニング剤、ヒドロトロープ、可溶化剤、防腐剤、香油、染料などを含有し得る。
【0029】
化粧品および/または局所性組成物において、式(I)で示される物質は、組成物の総重量に基づき0.0001〜10重量%の量、好ましくは組成物の総重量に基づき0.001〜5重量%の量、特に0,01〜3重量%の量で使用され得る。
【0030】
本発明は、式(I)で示される物質および少なくとも1つの皮膚美白活性剤を含んでなる化粧品および/または局所性組成物にも関する。
【0031】
本発明は、式(I)の物質が皮膚美白活性剤として有利に使用されるという研究結果を含む。本発明の請求項2の組成物は、少なくとも1つの式(I)で示される物質(好ましくは皮膚美白剤として)と、式(I)で示される物質とは異なる少なくとも1つの(他の)皮膚美白活性剤を含んでなるということが理解される。この好ましい実施態様において、2つの活性剤は相乗的に働き、より効果的な化粧品組成物を提供し得る。
【0032】
〔皮膚美白活性剤〕
さらなる皮膚美白活性剤は、既知の皮膚美白剤、例えばコウジ酸、ヒドロキノン、α−およびβ−アルブチン、他のヒドロキノングリコシド、デオキシアルブチン、フェルラ酸、ジアセチルボルジン、アゼライン酸、オクタデセン二酸、リノール酸、共役リノール酸、α−リポ酸、グルタチオンおよび誘導体、ウンデシレノイル−フェニルアラニン、ビタミンCおよびL−アスコルビン酸リン酸マグネシウムのような誘導体、ナイアシンアミド、4−n−ブチル−レゾルシノール、α−およびβ−ヒドロキシ酸、エラグ酸、レスベラトロール、トウグサ抽出物、グラブリジンおよび甘草抽出物、インペラトリンおよびイソインペラトリンおよびヨロイグサ抽出物、センタウレイジンおよびノコギリソウ抽出物、ヒナギク抽出物、アンマロク抽出物、クレソン抽出物、アオヤギソウ抽出物、クララ抽出物(Sophora flavescens extracts)、子嚢菌由来メラニン分解酵素などから選択し得る。
【0033】
本発明の1つの実施態様において、さらなる皮膚美白活性剤は、少なくとも1つの植物抽出物である。
【0034】
本発明の1つの実施態様において、さらなる皮膚美白活性剤は、コウジ酸、α−およびβ−アルブチン、他のヒドロキノングリコシド、デオキシアルブチン、フェルラ酸、共役リノール酸、ビタミンCおよびL−アスコルビン酸リン酸マグネシウムのような誘導体、ナイアシンアミドおよび/または甘草抽出物からなる群から選択される。
【0035】
本発明に使用される式(I)で示される物質ならびに請求項6の組成物を、皮膚のライトニングおよび/またはホワイトニングのために、ならびに/あるいは、色素沈着の低減および/または色素過剰沈着の低減および/またはメラニン形成の阻害のために適当に使用し得る。
【0036】
本発明は、式(I)で示される物質ならびに請求項6の組成物を、老化の兆候の予防および/または遅延のために、ならびに/あるいは老化肌の外観改善のために使用し得るという研究結果を含む。
【0037】
さらに、本発明は、皮膚の色素沈着における障害と関連する疾病の治療用薬剤の製造のための、式(I)で示される物質の使用を対象とする。
【0038】
上記の色素過剰沈着疾病としては、例えば肝斑(ホルモン性因子により引き起こされ、日光暴露の影響により増幅するメラニンの分泌過多)、黒子、日光黒子および老年性黒子、デュブーユメラノシス(Dubreuilh melanosis)、肝斑、または異常性メラノシスまたはメラノサイト機能障害の任意の形態がある。
【0039】
式(I)で示される物質のいくつかは新規物質である。従って、本発明のさらなる実施態様は、これらの新規物質を対象にする。
【0040】
〔式(II)で示される物質〕
本発明は、式(II)で示される物質を対象にする。
【化3】

[式中、
−Yは、H、1〜8個の炭素原子を含んでなるアルキル基またはアルケニル基、フェニル基、Na、KまたはNHであり、
−RおよびRは、互いに独立して、H、1〜18個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和アルキル基あるいは−C(=O)−R(式中、Rは1〜17個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和アルキル基である)であり、かつ、
−RがHであり、RがCHである場合、Yは3〜8個の炭素原子を含んでなるアルキル基、フェニル基、Na、KまたはNHであり、
−RがCOCHであり、RがHである場合、Yは3〜8個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和アルキル基、フェニル基、Na、KまたはNHであり、
−RがCHであり、RがCHである場合、Yは3〜8個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和アルキル基、フェニル基、Na、KまたはNHであり、
−RがCHであり、RがCOCHである場合、Yは4〜8個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和アルキル基、フェニル基、Na、KまたはNHであり、
−RがCHであり、Rが−CH−CH=CHである場合、Yは3〜8個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和アルキル基、フェニル基、Na、KまたはNHであり、
−RがHであり、RがCOCHである場合、Yは1個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル基、Na、KまたはNHであり、
−YがHであり、RがCHである場合、Rは直鎖状C14アルキル部分ではなく
−RがCHであり、RがHである場合、YはHまたはフェニル基ではない。]
【0041】
式(II)で示される物質の例は、表1に記載される1b、1d、2a、2d、3a、3b、3c、3d、3e、4b、4c、4d、4e、5a、5b、5c、5d、5e、6b、6c、6d、7a、7c、7e、8a、8b、8c、8d、8e、9b、9c、9d、9e、10a、10b、10c、10d、10e、11b、11d、12a、12c、12e、13a、13b、13c、13d、13e、14b、14c、14d、14e、15a、15b、15c、15d、15e、16a、16b、16d、17°、17b、17c、17e、18a、18b、18c、18d、18e、19a、19b、19c、19d、19e、20a、20b、20c、20d、20eのような物質である。
【0042】
さらに、式(II)で示される物質を、表2に記載する。
【表2】

【0043】
本発明の好ましい実施態様は、式(III)で示される物質を対象にする。
【化4】

[式中、
−Yは、H、1〜8個の炭素原子を含んでなるアルキル基またはアルケニル基、フェニル基、Na、KまたはNHであり、
−RおよびRは、互いに独立して、H、1〜18個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和アルキル基あるいは−C(=O)−R(式中、Rは1〜17個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和アルキル基である)であり、かつ、
−RがHである場合、RはH、−CHまたはCOCHではなく、
−RがCHである場合、RはCH、−CH−CH=CHまたはCOCHではなく、
−RがCOCHである場合、RはHではなく、
−YがHであり、RがCHである場合、Rは直鎖状C14アルキル部分ではなく
−RがCHであり、RがHである場合、YはHまたはフェニル基ではない。]
【0044】
式(III)で示される物質の例は、表1に記載される1b、1d、2a、2d、3a、3b、3c、3d、3e、4b、4c、4d、4e、5a、5b、5c、5d、5e、6b、6d、7a、7c、7e、8a、8b、8c、8d、8e、9b、9c、9d、9e、10a、10b、10c、10d、10e、11b、11d、12a、12c、12e、13a、13b、13c、13d、13e、14b、14c、14d、14e、15a、15b、15c、15d、15e、16b、16d、17a、17c、17e、18a、18b、18c、18d、18e、19b、19c、19d、19e、20a、20b、20c、20d、20eのような物質である。
【0045】
式(II)および(III)で示される物質は、式(I)で示される物質に含まれる。従って、式(I)で示される物質に対してクレームされた用途および化合物は、式(II)および(III)で示される物質に対しても有効である。
【実施例】
【0046】
〔実施例1:アセトキシシナピン酸(=表1の物質4a)の合成〕
別名:3,5−ジメトキシ−4−アセトキシ−シナピン酸
Cas N°:113158−15−9
【化5】

【0047】
バッチ:1)2kg(11モル)のシリンガアルデヒド;2)8.64kgの無水酢酸;3)0.01kgの4−N,N−ジメチルアミノピリジン、4)0.902kgの酢酸ナトリウム、5)3.349kgの無水酢酸
【0048】
手順:1)シリンガアルデヒド、2)無水酢酸および3)4−N,N−ジメチルアミノピリジンを50リットルの容器内中で一緒に攪拌(室温、3時間)した。温度の上昇は、発熱反応を意味する。混合物を20℃で一晩攪拌し、過剰な酢酸および無水酢酸を、0.8mbarで蒸留することにより除去した。3時間後、蒸留を終え、窒素により真空を除去した。4)酢酸ナトリウムを加え、さらに5)新鮮な無水酢酸を加え、該混合物を激しく攪拌しながら140℃の還流温度まで17時間加熱した。80℃まで冷却した後、8kgの水を反応混合物へ加え、該混合物を再び140℃まで加熱し、その後0℃まで冷却した。結晶化生成物をフィルター濾過し、得られる3.650kgの湿潤残分を冷却水により洗浄した。再び、反応容器中に30リットルの濾液を満たし、再び冷却したが、この場合沈殿は生じなかった。反応生成物を真空下で乾燥させ、2.3kgの粗アセチルシナピン酸(収率85%)を得た。この2.3kgの粗物質を、24.4kgのエタノールと8kgの水に懸濁し、該混合物を74℃で還流させ、その間に40gの活性炭を加えた。数分間還流した後、該混合物を70℃でフィルター濾過し、活性炭を除去した。濾液および洗浄水(全37.1kg)を反応容器に戻し、19.9kgの溶剤を真空下で除去した。溶剤中の17.1kgの結晶化生成物をフィルター濾過し、乾燥後に1.660kgの物質が残る2.360kgの純アセチルシナピン酸を得た(収率61.4%、融点195〜202℃)。
【0049】
〔実施例2:シナピルアセトアセテート(=表11の物質11c)〕
【化6】

CAS N°:491851−34−4
50.1g(0.28モル)のシリンガアルデヒドおよび61.2g(0.47モル)のアセト酢酸エチルを容器に投入し、100mlのエタノールおよび2mlのピペリジンを加えた。混合物を還流温度で約2時間加熱した。室温までの冷却中に出現する黄色の結晶をフィルター濾過しエタノールから再結晶化させた。収量は21.2gであった。
【0050】
〔実施例3:メラニン形成阻害分析〕
メラノサイト(B16細胞系)を、ウシ胎児血清(FCS)を含む細胞培養標準培地に入れた。37℃、5%COで3日間培養した後、増殖培地を試験する各化合物の濃度範囲の標準培地および成分を含まないコントロール標準培地と交換した。3日間培養した後、メラニンレベルを吸光度475nmで記録することにより測定した。細胞をバランス塩により洗浄後、0.1MNaOH溶液中で均質化し、生存細胞を細胞内タンパク質のレベルを測定することにより測定した(ブラッドフォード法)。
結果を、2または3分析(各3回)の平均+/−SEM(標準誤差)としてコントロール(化合物を含まない細胞培養培地)に対する%で表す。
【0051】
【表3】

【0052】
結果は、実施例1および2の化合物が、細胞毒性なしで、メラノサイトにおけるメラニン生成率を減少させることを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚のライトニングおよび/またはホワイトニング用、ならびに/あるいは、色素沈着の低減および/または色素過剰沈着の低減および/またはメラニン形成の阻害用、ならびに/あるいは、老化の兆候の予防および/または遅延および/または老化肌の皮膚外観の改善用の化粧品および/または局所性組成物の製造のための、もしくは該化粧品および/または局所性組成物における、少なくとも1つの式(I)の物質の使用。
【化1】

[式中、
−Yは、H、1〜8個の炭素原子を含んでなるアルキル基またはアルケニル基、フェニル基、Na、KまたはNHであり、
−RおよびRは、互いに独立して、H、1〜18個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状、飽和または不飽和アルキル基あるいは−C(=O)−R(式中、Rは、1〜17個の炭素原子を含んでなる直鎖状または分枝状、飽和または不飽和アルキル基である)であり、かつ、
がHまたは−CHの場合、RはHではない。]
【請求項2】
式(I)で示される物質が、組成物の総重量に基づいて0.0001〜10重量%の量で存在する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
式(I)におけるYが、H、メチル基、エチル基、イソプロピル基、NaまたはKであり、好ましくはYがHである、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
式(I)におけるRが−C(=O)−CHであり、RがHである、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
皮膚の色素沈着における障害と関連する疾病の治療用薬剤の製造のための、式(I)で示される物質の使用。
【請求項6】
式(I)で示される物質および少なくとも1つの皮膚美白活性剤を含んでなる化粧品および/または局所性組成物。

【公表番号】特表2010−520243(P2010−520243A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552096(P2009−552096)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001492
【国際公開番号】WO2008/107093
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】