説明

シフトレバー装置及びシフトレバーの衝撃吸収方法

【課題】シフトレバーに衝撃荷重が入力したときの反力を緩和する。
【解決手段】シフトレバー11のピボット部25を支持する揺動支持部27を、シフトレバー11に規定以上の衝撃荷重が入力したときに脱落するような構造とする。シフトレバー11に連結具31を介して接続されるシフトケーブル33を、揺動支持部27よりも車両後方に配置する。シフトレバー11が衝撃荷重入力を受けてベースブラケット13から脱落すると、シフトレバー11は、シフトケーブル33のインナケーブル35と連結具31との接続部41を支点として前方へ倒れこむように回転移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃荷重吸収機能を備えたシフトレバー装置及びシフトレバーの衝撃吸収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変速機用のシフトレバーに所定の荷重が作用したときに、該シフトレバーを揺動可能とするピボット部を支持する保持部材がその結合を解除し、シフトレバーをインストルメントパネルの内側に没入するようにしたものが知られている(下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−67245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記した従来のシフトレバー装置では、シフトレバーに接続するシフトケーブルがシフトレバー(ピボット部)よりも車両前方側に位置し、該シフトケーブルの上端部をシフトレバーの下端から前方に延びる釣り針状の部分の先端に接続している。
【0004】
このため、車両の衝突時などにシフトレバーの上端の操作部に、後方斜め上方から荷重が作用して前記ピボット部による結合が解除されたときに、下方に移動したシフトレバーが、車両前方側に位置するシフトケーブルを釣り針状の部分を介して下方に移動させつつその移動が規制された(ロックされた)時点で、シフトレバーは、シフトケーブルの上端部の釣り針状の部分との接続部を支点として車両後方に回転するようにして移動し、この後方に移動するシフトレバーによる反力が大きくなる恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、シフトレバーに荷重が入力したときの反力を緩和することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、インストルメントパネルに設けたシフトレバーを揺動可能に支持する揺動支持部が、シフトレバーに規定以上の荷重が作用したときにその支持を解除する支持解除手段を備え、シフトレバーの揺動支持部よりも下部に一端を連結した連結具の他端を、揺動支持部よりも車両後方側に配置して、該連結具の他端に、シフトレバーの前後の動きに伴って連結具を介して上下に移動するシフトケーブルの端部を接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シフトケーブルを、シフトレバーの揺動支持部より車両後方側にて連結具を介してシフトレバーに接続することで、シフトレバーへの規定以上の荷重入力により揺動支持部による支持が解除されてシフトレバーの下方への移動に伴うシフトケーブルの下方への移動が規制された時点で、シフトレバーは、シフトケーブルの連結具に対する接続部を支点として車両前方へ回転するようにして移動するので、シフトレバーに入力した荷重は効率よく吸収され、シフトレバーに荷重入力したときの反力を緩和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係わるシフトレバー装置1を示す斜視図で、このシフトレバー装置1は、手動変速機に対応するもので、図2に示すような自動車における車室内の前部に位置するインストルメントパネル3の車幅方向中央下部に設定してある。インストルメントパネル3の車幅方向中央上部には、ナビゲーション装置のディスプレイ5や、空調装置の車室内へのエア噴出し口7などを備え、これらの下部の車室後方に向けて突出した膨出部9に前記したシフトレバー装置1を配置している。
【0010】
図1に示すように、シフトレバー装置1は、変速機用のシフトレバー11をベースブラケット13に取り付け、このベースブラケット13は車体側の図示しない部材に固定する。ベースブラケット13は、上記図示しない車体側の部材に対して四隅を固定する固定部15を備え、この固定部15から矢印Rで示す車体後方側に突出する中空の突出部17の上部にレバー取付部19を備えている。
【0011】
レバー取付部19は、固定部15と反対の車両後方側が同前方側より上下方向下部となるよう傾斜しており、この傾斜部に、シフトレバー11の操作部である操作ノブ21と反対の基端側が挿入される貫通孔19aを設けてある。
【0012】
図1のシフトレバー装置1の車両左側から見た一部断面を含む側面図である図3に示すように、上記した貫通孔19aは、シフトレバー11の長手方向に沿って、突出部17の内部に向けて延在する筒状部分23を有し、この筒状部分23に、シフトレバー11の基端側に設けてある球状のピボット部25を揺動可能に支持する揺動支持部27を設けてある。
【0013】
揺動支持部27は、シフトレバー11の球状のピボット部25を回転摺動可能に収容して支持する凹状の球面受部27aを内部に備え、シフトレバー11の操作ノブ21と反対の下部側の基端部29は、揺動支持部27からさらに前方(下方)に突出し、連結具31の一端31aに連結固定している。
【0014】
このようにしてベースブラケット13に取り付けてあるシフトレバー11は、前記したレバー取付部19の傾斜部にほぼ直交する方向に交差するようにして延設され、したがって操作ノブ21側がピボット部25よりも車両後方となるよう傾斜することになる。この状態でシフトレバー11は、図2に示すように、インストルメントパネル3における膨出部9の傾斜している上面に形成した開口部9aから上方に向けて突出した状態となる。
【0015】
ここで、上記した揺動支持部27は、図3に示すように、シフトレバー11の操作ノブ21の上部からその長手方向の下方に向けて規定以上の衝撃荷重Fが作用したときに破壊し、シフトレバー11が上記衝撃荷重Fの入力方向に移動してベースブラケット13から脱落するものとする。
【0016】
揺動支持部27が破壊する構造としては、適宜荷重入力試験を行って、規定の荷重入力時にシフトレバー11が脱落するような素材を使用するかもしくは形状とすればよく、これにより揺動支持部27は支持解除手段を備えていることになる。
【0017】
なお、支持解除手段としては、上記の構造に限るものではなく、例えば揺動支持部27自体がベースブラケット13の筒状部分23から脱落するような取付構造であってもよい。要するにシフトレバー11が、規定以上の衝撃荷重Fの作用を受けたときにベースブラケット13から脱落すればよい。
【0018】
また、上記した衝撃荷重Fとしては、例えば車両衝突時に車室内の荷物が前方に移動して操作ノブ21に接触して発生する。
【0019】
シフトレバー11の基端部29を連結している連結具31は、車両後方かつ上方に延出するように屈曲形成し、その他端31bを揺動支持部27よりも車両後方に位置させている。そして、この連結具31の他端31bを、プッシュプルケーブルからなるシフトケーブル33のインナケーブル35の端部35aに回転支持ピン37及び端末金具39を介して接続し、接続部41を構成する。
【0020】
シフトケーブル33のアウタケーシング39は、ベースブラケット13の突出部17の下端部にて下方に向けて突出する下方突出部17aの下部に、止め金具41を介して固定している。
【0021】
したがって、シフトレバー11をニュートラル位置から前方に倒すよう揺動操作すると、連結具31を介してインナケーブル35が上方に向けて移動し、このとき変速機としては例えば3速が選択される。逆に、シフトレバー11を上記ニュートラル位置から後方に倒すよう揺動操作すると、連結具31を介してインナケーブル35が下方に向けて移動し、このとき変速機としては例えば4速が選択される。
【0022】
また、本実施形態のシフトレバー装置1は、前述したように手動変速機用のものに対応しているので、上記したシフトケーブル33のほかに、シフトレバー11を左右に揺動させることで、上下に移動するセレクトケーブル43を備えている。
【0023】
セレクトケーブル43は、シフトケーブル33と同様にプッシュプルケーブルで構成してあり、そのインナケーブル45の上端部を端末金具47及び回転支持ピン49を介して揺動アーム51の車両後方側の一端に接続している。揺動アーム49の車両前方側の他端は、ベースブラケット13に取り付けてあるアーム支持軸53に回転可能に連結支持させる。
【0024】
なお、セレクトケーブル43のアウタケーシングについては、図示していないがシフトケーブル33のアウタケーシング39と同様にベースブラケット13の下方突出部17aの下部に取り付けてある。
【0025】
一方、シフトレバー11のピボット部25の車両右側には、図3のシフトケーブル33及びセレクトケーブル43などの一部を省略したA矢視図である図4に示すように、作動アームとなるボールスタッド55を突出させて設けている。そしてこのボールスタッド55の先端を、前記した揺動アーム51の長方向ほぼ中央位置に連結する。
【0026】
したがって、シフトレバー11を例えば3速と4速との間のニュートラル位置から左方の1速と2速との間に倒すよう揺動操作すると、ボールスタッド55を介して揺動アーム51が、アーム支持軸53を中心としてセレクトケーブル43側が上方に回転移動するよう変位する。逆に、シフトレバー11を上記ニュートラル位置から右方に倒すよう揺動操作すると、揺動アーム51がアーム支持軸53を中心としてセレクトケーブル43側が下方に回転移動するよう変位する。
【0027】
このような構造のシフトレバー装置において、例えば車両が衝突することによって車室内の荷物が、前方に移動することでシフトレバー11に干渉して前記図3に示すように衝撃荷重Fが下方に向けて作用し、このときの衝撃荷重Fが規定値以上となった場合に、揺動支持部27が破壊する。
【0028】
これによりシフトレバー11は、ベースブラケット13から脱落するが、この脱落による下方への移動により、連結具31を介してシフトケーブル33も下方に移動する。そしてこのシフトケーブル33の下方への移動が規制されてロックされた状態となったときに、シフトレバー11は、連結具31とシフトケーブル33との接続部41を支点として車両前方へ倒れこむように回転しつつ移動する。
【0029】
この結果、シフトレバー11に入力した衝撃荷重Fは、シフトレバー11の前方への移動によって効率よく吸収されることになり、シフトレバー11に衝撃荷重Fが入力したときの反力を緩和することが可能となる。
【0030】
なお、シフトレバー11が脱落して下方に移動する際には、ボールスタッド55と揺動アーム51もしくはピボット部25との連結が外れるので、セレクトケーブル43によってシフトレバー11の下方への移動が規制されることはない。
【0031】
また、上記実施形態では、手動変速機に対応するシフトレバー装置1を例にとって説明したが、自動変速機に対応するシフトレバー装置であっても本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係わるシフトレバー装置を示す斜視図である。
【図2】図1のシフトレバー装置を備えた自動車における車室内の斜視図である。
【図3】図1のシフトレバー装置の車両左側から見た一部断面を含む側面図である。
【図4】図3のシフトケーブル及びセレクトケーブルなどの一部を省略したA矢視図である。
【符号の説明】
【0033】
3 インストルメントパネル
11 シフトレバー
27 揺動支持部(支持解除手段)
31 連結具
31a 連結具の一端
31b 連結具の他端
33 シフトケーブル
35a インナケーブルの端部(シフトケーブルの端部)
41 シフトケーブルと連結具との接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルに変速機用のシフトレバーを設け、このシフトレバーを揺動可能に支持する揺動支持部が、該シフトレバーの上部に規定以上の荷重が下方に向けて作用したときにその支持を解除する支持解除手段を備え、前記シフトレバーの前記揺動支持部よりも下部に連結具の一端を連結し、この連結具の他端を前記揺動支持部よりも車両後方側に配置して、該連結具の他端に、前記シフトレバーの前後の動きに伴って該連結具を介して上下に移動するシフトケーブルの端部を接続したことを特徴とするシフトレバー装置。
【請求項2】
インストルメントパネルに設けた変速機用のシフトレバーが、その上部から下方に向けて規定以上の荷重を受けたときに、シフトレバーを揺動可能に支持する揺動支持部が、その支持を解除し、前記シフトレバーの前記揺動支持部よりも下部に一端を連結した連結具の他端を前記揺動支持部よりも車両後方側に配置して、前記揺動支持部の支持解除の後に、前記シフトレバーの前後の動きに伴って前記連結具を介して上下に移動するシフトケーブルの端部の、前記連結具の他端に対する接続部を支点として前記シフトレバーを車両前方へ移動させることを特徴とするシフトレバーの衝撃吸収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−286347(P2009−286347A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143102(P2008−143102)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】