説明

シャシフレーム構造

【課題】素材にアルミニウムを用いる場合に適し且つ合理的な組付作業を行なえるシャシフレーム構造を提供する。
【解決手段】キャブ架装用ボルトを受けるスペーサ22、及びステアリングギヤボックス架装用ボルトを受けるスペーサ23が一体的に形成され且つサイドレール1の内側に嵌まり込む前位ブロック16を備え、サイドレール1を構成するアウタレール5に前位ブロック16をキャブ架装用ボルトを介して締結し、また、サイドレール1を構成するインナレール7に前位ブロック16をステアリングギヤボックス架装ボルトを介して締結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシャシフレーム構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3及び図4は従来のシャシフレーム構造の一例であり、車両前後方向に延びる一対のサイドレール1と、該サイドレール1をつなぐクロスメンバ2,3とを備えている。
【0003】
サイドレール1は、車両中心に向けて突き出るフランジ4を上下縁部に形成したアウタレール5に、車両側方に向けて突き出るフランジ6を上下縁部に形成したインナレール7を、当該フランジ6がアウタレール5のフランジ4間に入るように嵌め合わせたもので、その内部には、キャブ架装用ボルトを受ける複数のカラー8とステアリングギヤボックス架装用ボルトを受ける複数のカラー9が組み込んである。
【0004】
各カラー8は、直立するようにリインフォースメント10に溶接され、各カラー9は、横向きになるようにセットプレート11に溶接されている。
【0005】
クロスメンバ2の上下縁部には、車両後方側へ向けて突き出るフランジ12が形成してあり、該フランジ12の車両幅方向端部は、ガセットプレート13を介してアウタレール5のフランジ4前端部にボルト締結されている。
【0006】
次位のクロスメンバ3の車両幅方向端部は、インナレール7に装着したブラケット14にボルト締結されている。
【0007】
更に、サイドレール1を平面的に見るとクロスメンバ3の締結部の直ぐ後側で、左右のサイドレール1の間隔が拡がるように湾曲している。
【0008】
また近年、シャシフレームの素材にアルミニウム合金を用いて車両の軽量化を図ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−314869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のシャシフレーム構造では、複数のカラー8,9をリインフォースメント10やセットプレート11にひとつずつ溶接しているので、組付に要する作業時間が長い。
【0010】
更に、シャシフレーム構造の素材にアルミニウム合金を用いるにしても、特許文献1には、キャブ架装用ボルトやステアリングギヤボックス架装用ボルトを受ける部材についての記載はない。
【0011】
本発明は上述した実情に鑑みてなしたもので、素材にアルミニウムを用いる場合に適し且つ合理的な組付作業を行なえるシャシフレーム構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、キャブ架装用ボルトを受けるスペーサ、あるいは操舵装置架装用ボルトを受けるスペーサのいずれかが一体的に形成され且つサイドレール内側に嵌まり込む前位ブロックを、シャシフレームの構成要素であるサイドレールに締結している。
【0013】
本発明においては、キャブ架装用ボルトや操舵装置架装用ボルトを受けるスペーサを、前位ブロックに一体的に形成して、部品点数を減らす。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、下記のような優れた効果を奏し得る。
【0015】
(1)キャブ架装用ボルトや操舵装置架装用ボルトを受けるスペーサを前位ブロックに一体的に形成したので、部品点数が減って合理的な組付作業が可能になり、生産性が向上し且つコストが低減する。
【0016】
(2)また、前位ブロックをサイドレールに締結するので、キャブ架装用ボルトや操舵装置架装用ボルトを受けるスペーサを溶接によらずにシャシフレームに取り付けることができ、よって、シャシフレームの素材にアルミニウム合金を用いる場合、溶接熱の影響による強度低下が発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0018】
図1及び図2は本発明のシャシフレーム構造の実施の形態の一例を示すもので、図中、図3及び図4と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0019】
このシャシフレーム構造は、車両前後方向に延びる一対のサイドレール1と、該サイドレール1をつなぐクロスメンバ15,3と、サイドレール1前端部の内側に嵌まり込む前位ブロック16と、クロスメンバ3の締結部に対応するようにサイドレール1の内側に設置した次位ブロック17と、当該ブロック16,17間に介在するようにサイドレール1の内側に組み込んだエネルギ吸収材18と、次位ブロック17の後側に位置するようにサイドレール1湾曲部分の内側に設置した補強材19とを備えている。
【0020】
クロスメンバ15の上縁部には、上方へ向けて突き出るフランジ20が形成してあり、また、クロスメンバ15の下縁部には、車両後方側へ向けて突き出るフランジ21が形成してある。
【0021】
前位ブロック16は、金属押出加工、または金属鋳造によって形作られ、キャブ架装用ボルトを受けるスペーサ22、ステアリングギヤボックス架装用ボルトを受けるスペーサ23、及びクロスメンバ取付用ボルトを受けるスペーサ24が一体的に形成されている。
【0022】
スペーサ22には、アウタレール5のキャブ架装用ボルト挿通個所に応じて上下方向に延びるボルト孔25が穿設してある。
【0023】
スペーサ23には、インナレール7のステアリングギヤボックス架装用ボルト挿通個所に応じて車両側方へ横向きに延びるボルト孔26が穿設してある。
【0024】
スペーサ24には、クロスメンバ15のフランジ20のクロスメンバ取付用ボルト挿通個所に応じて車両後方へ延びるボルト孔27と、クロスメンバ15のフランジ21、及びアウタレール5のフランジ4のクロスメンバ取付用ボルト挿通個所に応じて上下に延びるボルト孔28とが穿設してある。
【0025】
つまり、スペーサ22のボルト孔25に挿通されるキャブ架装用ボルト、及びスペーサ24のボルト孔28に挿通されるクロスメンバ取付用ボルトは、アウタレール5に対して前位ブロック16を締結する役割を兼ねる。
【0026】
スペーサ23のボルト孔26に挿通されるステアリングギヤボックス架装用ボルトは、インナレール7に対して前位ブロック16を締結する役割を兼ねる。
【0027】
すなわち、サイドレール1の前端部を構成しているアウタレール5、インナレール7、及び前位ブロック16が固められ、更に、スペーサ24のボルト孔27,28に挿通したクロスメンバ取付用ボルトが、当該サイドレール1に対してクロスメンバ15を直接的に締結するので、シャシフレーム前端部のねじり剛性が高まる。
【0028】
これに加えて、スペーサ22,23,24を前位ブロック16に一体的に形成してあるので合理的な組付作業が可能になり、また、シャシフレームの素材にアルミニウム合金を用いる場合、溶接熱の影響による強度低下が発生しない。
【0029】
次位ブロック17には、アウタレール5のフランジ4のブロック取付用ボルト挿通個所に応じて上下方向に延びるボルト孔29が穿設してある。
【0030】
エネルギ吸収材18は金属押出加工により形作られ、車両前後方向に延びる隔壁30で区分され且つ前後端部が開口した複数の空間31が内部に並んだ形状を呈している。
【0031】
つまり、前位ブロック16と次位ブロック17の間に介在するエネルギ吸収材18は、その金属押出方向がサイドレール1長手方向に沿っている。
【0032】
補強材19は金属押出加工により形成され、上下方向に延びる隔壁32で区分され且つ上下端部が開口した複数の空間33が内部に並んだ形状を呈している。
【0033】
つまり、サイドレール1湾曲部分に設置した補強材19は、その金属押出方向がサイドレール1長手方向に対して直立している。
【0034】
よって万が一、車両が障害物にぶつかったり、前方から他の車両が突入したときには、前位ブロック16と次位ブロック17との間にあるエネルギ吸収材18が車両前後方向へ圧縮変形して、サイドレール1湾曲部分へ加わろうとする衝撃力を緩和し、次位ブロック17の後側の補強材19がサイドレール1を支えて、当該サイドレール1湾曲部分の変形を防ぎ、搭乗者の保護が図られることになる。
【0035】
なお、本発明のシャシフレーム構造は、上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のシャシフレーム構造は、様々な車種に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のシャシフレーム構造の実施の形態の一例を示す分解斜視図である。
【図2】図1に関連するシャシフレームの水平断面図である。
【図3】従来のシャシフレーム構造の一例を示す分解斜視図である。
【図4】図3に関連するシャシフレームの水平断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 サイドレール
16 前位ブロック
22 スペーサ
23 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブ架装用ボルトを受けるスペーサが一体的に形成され且つサイドレール内側に嵌まり込む前位ブロックを備え、該前位ブロックをサイドレールに締結したことを特徴とするシャシフレーム構造。
【請求項2】
操舵装置架装用ボルトを受けるスペーサが一体的に形成され且つサイドレール内側に嵌まり込む前位ブロックを備え、該前位ブロックをサイドレールに締結したことを特徴とするシャシフレーム構造。
【請求項3】
キャブ架装用ボルトを受けるスペーサ、並びに操舵装置架装用ボルトを受けるスペーサが一体的に形成され且つサイドレール内側に嵌まり込む前位ブロックを備え、該前位ブロックをサイドレールに締結したことを特徴とするシャシフレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−103479(P2006−103479A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292185(P2004−292185)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】