説明

シャシーフレーム

【課題】本発明は、FRP製のパイプとFRP製の継手とを効率よく組み合わせた、歪みや捻れのない軽量かつ安価なシャシーフレームを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明のシャシーフレームは、FRP製のパイプとFRP製の継手とを接続してなるシャシーフレームであって、前記継手は、所定形状の芯材にマトリックス樹脂を含浸した複数の強化繊維シートを積層した積層体を加熱硬化してなり、該積層体は金型により型成形されることにより、前記パイプの内周面に嵌合される継手嵌合部の外周面上に、嵌合状態で該内周面に当接する前記マトリックス樹脂よりなり軸方向に延びる複数のリブが形成されていることを特徴する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のシャシーフレームにかかり、特にFRP(繊維強化樹脂)製のパイプとFRP製の継手とを接合してなる車両のシャシーフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に車両のシャシーフレームは、断面コ字形やロ字形の金属部材を溶接などで接合して構成されている。しかし、金属部材は強度や剛性には優れるものの、燃費向上と軽量化の観点からは必ずしも優れているとはいえない。特許文献1には、FRP製の自動車用部材が提案されている。FRPは比強度および比剛性に優れた材料であるので、更なる軽量化を追求する自動車部材には好適な材料である。しかし、従来の金属部材を形状をそのままにして単にFRPで代替する場合には材料コストや製造コストが嵩む虞がある。そこで、更なる軽量化と低コストとを実現するために、シャシーフレームをFRP製のパイプ構造とすることが試みられている。
従来、FRP製のパイプとFRP製の継手とを接続するには、継手の嵌合部をFRP製パイプの内周側に挿入し、嵌合部とパイプとの間に接着剤を介在させて固着するようにしている。ここで、パイプは、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸したプリプレグシートをマンドレルに巻回し、加熱硬化後脱型して形成される。このため、パイプは高い真直度と内周の真円度を有している。しかし、FRP製の継手は、所定形状の芯材にプリプレグシートを積層して積層体となし、その積層体を適宜のバッグに封入して真空引きするなどして所望の形状に成形される。このため、パイプの端部内周と嵌合する継手嵌合部の真円度や真直度はパイプに比べて低く、結果的にFRP製パイプとFRP製の継手とを高い同軸度および真直度で嵌合することができなかった。
また、パイプ内周面と継手嵌合部外周面との隙間は、必要とする接着強度を得るのに十分な量の接着剤が充填されるように、比較的大きく設定されており、パイプと継手との嵌め合いは緩いものとされている。しかし、このような緩い嵌め合いでは、接着剤の硬化を行うために加熱すると、接着剤の粘度が低下して流動しやすくなり、この結果パイプと継手との軸が互いにずれた状態で接着されることになる。また接着剤が流出すると、パイプと継手との軸ズレとともに、接合部の強度も低下することになる。
以上のように、接続に際してパイプと継手との軸線が一致しない(同軸度が低い)場合には、多数のパイプと継手とからなるシャシーフレームを所望の形状に正確に組み立てることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−35045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、接着剤を用いてFRP製パイプとFRP製の継手とを接合してなるシャシーフレームにおいては、パイプと継手との高い同軸度と真直度を維持するとともに、接合部の強度を高めることが重要となる。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、FRP製のパイプと継手とを効率よく組み合わせた、歪みや捻れのない軽量かつ安価なシャシーフレームを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシャシーフレームは、FRP製のパイプとFRP製の継手とを接続してなるシャシーフレームであって、前記継手は、所定形状の芯材にマトリックス樹脂を含浸した複数の強化繊維シートを積層した積層体を加熱硬化してなり、該積層体は金型により型成形されることにより、前記パイプの内周面に嵌合される継手嵌合部の外周面上に、嵌合状態で該内周面に当接する前記マトリックス樹脂よりなり軸方向に延びる複数のリブが形成されていることを特徴する。ここで、前記リブは三角形断面の突条であることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシャシーフレームは、FRP製のパイプとFRP製の継手とを接合して組み立てられている。このため、従来の鋼材やアルミニウムなどの金属材よりなるシャシーフレームに比べて大幅な軽量化を実現できる。また、FRP製のパイプはFRP製の板材に比べて強化繊維の使用量が少なくても所望の強度や剛性を確保することができるので、材料コストの低減が可能となる。
【0008】
本発明のシャシーフレームに係るFRP製の継手は、マトリックス樹脂を含浸した複数の強化繊維シートを積層した未硬化の積層体の状態で金型により型成形されている。これにより継手の寸法精度は向上し、特に、継手嵌合部には高い真円度と真直度とが付与される。また、継手嵌合部には型成形と同時に複数の軸線方向に延びる嵌合状態でパイプ内周面に当接するリブが形成されている。従って、このリブによってパイプと継手との間の相対的な同軸度と真直度とを高い精度で実現することが可能になる。しかも隣り合うリブの間の条溝から接着剤が均一に流入されるので、パイプの内周面に継手を均一且つ強固に接着して固定できる。
【0009】
従って、本発明によれば、寸法精度、特にパイプと継手との同軸度及び真直度に優れしかも高い接着強度を保持した接合が可能であり、歪みや捻れのない軽量で安価なシャシーフレームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態のシャシーフレームを示す斜視図である。
【図2】本実施形態にかかるFRP製継手の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用のシャシーフレームを示している。このシャシーフレーム1は、FRP製のパイプ10の内周側にFRP製の継手20の嵌合部を挿入して接着剤で固着して組み立てられている。
【0012】
本実施形態において、FRP製のパイプ10やFRP製の継手20は、強化繊維とマトリックス樹脂とから構成されるものである。ここで、強化繊維は、引張強度および引張弾性率の高い繊維が望ましく、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、セラミック繊維などの繊維から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。特に比強度及び比剛性に優れ、しかも軽量化の効果の大きい炭素繊維が好ましい。
【0013】
また、このような強化繊維によって強化されるマトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニールエステル樹脂などの熱硬化性樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン6・10、ナイロン6・11、ナイロン6・12)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。好ましくは、取り扱い性に優れたエポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂が使用される。
【0014】
本実施形態のシャシーフレームにおいて、FRP製のパイプ10は、従来用いられている円筒形状のものを使用することができる。すなわち、所望の強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させたプリプレグシートをフィラメントワインド法などにより、マンドレル上に積層し、加熱硬化後に脱型したものである。
【0015】
図2は、継手の一例として、T字型の三方継手20を斜視図で示したものである。継手20は、T字型の基部22と該基部22から軸線に沿ってそれぞれ3方向に伸びる円筒形状の継手嵌合部24とからなる。基部22の外径は継手嵌合部24の外径よりも大きく形成されており、基部22外周と継手嵌合部24外周とは段差部26を介して連続している。段差部26において、基部22の端面22aは継手嵌合部24の外周面24aに直交している。
継手嵌合部24の外周面24aには複数のリブ28が形成されている。リブ28は、断面が三角形状の突条であり、段差部26から嵌合部24の端部24bの間に軸線に沿って延設されている。
図2において、嵌合部24には、その外周を3等分する位置にそれぞれ3個のリブ28が設けられているが、リブ28の数は特に制限されない。好ましくは、3個以上設けるとよい。リブ28の数が3個未満の場合には、パイプ10と継手20とを安定して固定できないので、パイプ10と継手20との同軸度を高い精度で得ることができない。また、設けられるリブ28の付け根(底面)の総面積は接着面面積の1/3以下とすることが好ましい。これを超えると接着面積が低下して接合強度が不足する虞があるからであり、また、同時に重量増加を招き、軽量化の観点からは望ましくない。
図2下に断面を拡大して示すようにリブ28の高さtは、嵌合状態でパイプ10の内周面に当接してきつい嵌合を得るためにパイプ10の内径と継手嵌合部24の外径との差の1/2(例えば、0.3±0.01mm)であることが望ましい。これによりパイプ10と継手嵌合部24との高い同軸度を実現でき、真直度の高い(例えば、0.3±0.02mm)接合部材を得ることができる。
【0016】
リブ28の幅wは、高さtの1/3〜1倍であることが好ましい。幅wが1/3t未満では、強度的に不安定であり、1倍を超えると軽量化の観点からは望ましくない。
リブ28は継手嵌合部24の外周面上において、その軸線方向の全長にわたって設けられることが望ましいが、パイプ10と継手20との固定を損なわない範囲で長さを短くしたり、断続的に形成することもできる。
【0017】
このようなリブ28を有するFRP製の継手20は以下のようにして作製される。
【0018】
まず、継手20用の芯材30を準備する。芯材30の材質としては特に限定はされないが、軽量化のためには発泡材が好ましい。発泡材の材質としては、例えば、ポリウレタンやアクリル、ポリスチレン、ポリイミド、塩化ビニル、フェノールなどの高分子材料のフォーム材などを使用できる。また、さらなる軽量化を図るために、継手20を中空とする場合には、加熱硬化時に溶融可能な低融点材料を用いて芯材30を作製する。このような低融点材料としては、前記の発泡材に加えてスズ合金などの低融点金属を用いることもできる。
【0019】
次に、所定形状とした芯材30の表面に強化繊維と未硬化のエポキシ樹脂とからなるプリプレグシートを積層して継手積層体を作製する。プリプレグシートの積層方法には特に限定はなく、公知のフィラメントワインディング法やハンドレイアップ法などを用いることができる。すなわち、芯材30の形状に沿うように適宜の幅のプリプレグシートを巻回してもよいし、適宜の形状に裁断したプリプレグシートを積層してもよい。また、プリグレグシートの巻回と積層とを交互に繰り返すようにしてもよい。また、型内に設置した強化繊維機材に液状の熱硬化樹脂を注入し、加熱硬化して繊維強化複合材料を得るRTM法(Resin Transfer Molding)を用いてもよい。
【0020】
このようにして得られた継手積層体は従来技術によるものであり、継手嵌合部24の真円度や真直度などの寸法精度は高くない。そこで、この未硬化の継手積層体を金型のキャビティへ配置して型締めし、加圧成形する。これにより、継手積層体の寸法精度は向上する。特に、嵌合部24の外周(段差部26を含む)には高い真円度と同時に高い真直度とが付与される。
ところで、キャビティの継手嵌合部24に対応する部位には、リブ28を形成する凹部が刻設されている。これゆえ、未硬化の継手積層体を金型で加圧成形する際に、強化繊維に含浸されているマトリックス樹脂がこの刻設された凹部に充満して、嵌合部24表面にマトリックス樹脂よりなるリブ28が形成される。なお、マトリックス樹脂からなるリブ28を精度よく形成するために、金型に吸引口を設け、真空ポンプに接続して吸引するようにしてもよい。
【0021】
次に、このように成形された未硬化の継手積層体を加熱硬化する。この時、未硬化の継手積層体を金型に保持したまま金型に内蔵したヒータなどの加熱手段で所定温度に加熱して硬化するようにしてもよいし、成形後の継手積層体を脱型してからオーブンなどで加熱硬化するようにしてもよい。この時の硬化温度は60〜150℃が好ましく、硬化時間は通常10分〜3時間である。従って、硬化温度範囲で溶融する材料を芯材30とした場合には、加熱硬化処理中に芯材30が溶出して中空の継手20を得ることができる。
【0022】
本実施形態において、パイプ10と継手20とを接合する接着剤は液状タイプのものが好ましい。粘度はパイプ10の内周側に継手20を挿入する際の潤滑性、作業性、および硬化時の粘度などを考慮し、室温で100〜1000ポイズの範囲内のものを使用することが好ましい。接着剤としては、例えば、アラルダイト(チバ・ガイギー社製)、ソニーボンド(ソニーケミカル(株)製)、スリーロイ(スリーボンド社製)等が挙げられる。
以上のように構成されるFRP製のパイプ10とFRP製の継手20とを嵌合し、接着剤とともに順次接続してシャシーフレーム1を組み立てる。ここで、パイプ10の端部内周面に継手嵌合部24を嵌入させるには、パイプ10端部の内周面と継手嵌合部24の外周面に適量の接着剤を塗布した後、円周方向に両者を互いに回転させずに、パイプ10に対して軸線を合わせた状態で継手20をゆっくりとパイプ10の内周側へ挿入するようにする。継手20の嵌合部24には、軸線方向に延びるリブ28が形成されているために、挿入時に継手20を回転させると、リブ28によって接着剤の流入を妨げ、塗布された接着剤を掻き取ってしまうために、良好な接着ができなくなる。
【0023】
本実施形態の継手20には、継手嵌合部24に複数の軸方向に延びる嵌合のきついリブ28が円周方向に間隔を隔てて設けられているので、これらのリブ28によりパイプ10を継手20に位置決めして固定し、パイプ10と継手20との間の相互の同軸度と高い真直度とを得ることが可能になる。
従って、かかるパイプ10と継手20とを組み合わせてなるシャシーフレーム1を、歪みや捻れのない構造体とすることができる。また、リブ28は、断面三角形の突条とされているので、パイプ10へ継手嵌合部24を挿入する場合には、リブ28の稜線がパイプ10の内周面と摺接する。このため挿入時の抵抗が小さく嵌合作業が容易であり、シャシーフレーム1の組立作業性の向上も期待できる。また、リブ28はパイプ10の内周面にその稜線のみで当接している。従って、内周面の接着面積が低減されないので、接続部における所望の接合強度を確保することができる。
【0024】
本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更することができる。例えば、前記の実施形態では、マトリックス樹脂よりなるリブ28を三角形断面の直線状の突条としたが、軸方向に断続的に形成される破線状の突条としてもよい。破線状の突条とすることで接着剤による接着面積が増大しさらに高い接着強度を得ると同時に、嵌合部の周方向に接着剤が途切れることなく接合できるので、接合部のシール性の向上も期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、特に軽量化の望まれる自動車車両や鉄道車両などのシャシーフレームやアッパフレームとして好適である。
【符号の説明】
【0026】
1:シャシーフレーム 10:FRP製のパイプ 20:FRP製の継手 22:基部 24:継手嵌合部 26:段差部 28:リブ 30:芯材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FRP製のパイプとFRP製の継手とを接続してなるシャシーフレームであって、
前記継手は、所定形状の芯材にマトリックス樹脂を含浸した複数の強化繊維シートを積層した積層体からなり、
該積層体は、金型により型成形されることにより、前記パイプの内周面に嵌合される継手嵌合部の外周面上に、嵌合状態で該内周面に当接する前記マトリックス樹脂よりなり軸方向に延びる複数のリブが形成されていることを特徴するシャシーフレーム。
【請求項2】
前記リブは三角形断面の突条である請求項1に記載のシャシーフレーム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−213312(P2011−213312A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85674(P2010−85674)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】