説明

シャフトの製造方法及びその製造装置

【課題】中実丸棒の両端を同時に絞り加工することによりシャフトを製造し、工程数を削減し製造時間の短縮を図ったシャフトを得る。
【解決手段】シャフト製造装置10は、両端が開口された円柱状の第1キャビティ14を有する第1絞り金型12と、一端が開口された円柱状の第2キャビティ34とを有する第2絞り金型32を備え、第1絞り金型12に形成された第1テーパ部20と第1キャビティ14の軸線方向とのなす角度が、第2絞り金型32に形成された第2テーパ部40と第2キャビティ34の軸線方向とのなす角度よりも大きく形成されている。このシャフト製造装置10を用いて、第1開口部16、第3開口部36に挿入された中実丸棒60の両端部を第1テーパ部20及び第1成形ランド部18並びに第2テーパ部40及び第2成形ランド部38によって絞り成形することにより、所望のシャフトを製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトの製造方法及びその製造装置に関し、詳細には長尺で且つ力の伝達に適したシャフトを製造する方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車用のシャフトは、エンジンからの動力伝達経路の一部として用いられ、すなわち、エンジンの回転運動を回転駆動力として駆動輪等へと伝達している。このシャフトに対しては、車両の燃費向上を図るために軽量化が求められ、また、振動を低減し静粛性の向上を図るために高剛性化が求められている。
【0003】
軽量化を目的としたシャフトの製造方法としては、特許文献1に示すような方法が知られている。この製造方法では、中空円管100の一端の端部102を金型104のキャビティ106に押し込んで、絞り加工により縮径した後に(図10A参照)、端部102の開口部にマンドレル108を押し込み、キャビティ106の内周面とマンドレル108の外周面との間で端部102に対してしごき成形を施し、中空円管100の一端の端部102の加工を終了し(図10B参照)、次いで、前記中空円管100の他端を同じ工程で加工することによりシャフトが製造される。
【0004】
また、シャフトの高剛性化を目的としたシャフトの製造方法としては、特許文献2に示すように、高周波焼入をした炭素鋼を用いる製造方法が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−247835号公報(図1)
【特許文献2】特開平10−036937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示されたシャフトは中空のシャフトであって、肉厚が薄く、強度の点から中空円管100の両端部を同時に加工することは難しい。従って、両端を同時に加工することにより、工程数を削減し製造時間の短縮を図ることは困難であった。
【0007】
また、特許文献2に示されたシャフトは表面硬さが大きく、中実丸棒の両端部を同時に旋盤によりレース加工することは難しく、結局工程数を削減し製造時間の短縮を図ることは不可能である。
【0008】
本発明は、上記の課題を考慮してなされたものであって、中実丸棒の両端部を同時に絞り加工することにより簡便にシャフトを製造することが可能であり、これによって工程数を削減し製造時間を短縮するとともに品質に優れたシャフトの製造方法及びその製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るシャフトの製造方法は、両端が開口された円柱状の第1キャビティを有する第1絞り金型と一端が開口された円柱状の第2キャビティを有する第2絞り金型とを備え、前記第1キャビティの第1開口部及び第2開口部の直径は、前記第1キャビティに形成された第1成形ランド部の直径よりも大きく形成され、且つ前記第2キャビティの第3開口部及び奥部の直径は、第2キャビティ内に形成された第2成形ランド部の直径よりも大きく形成され、前記第1開口部から前記第1成形ランド部にかけて第1テーパ部が形成され、且つ前記第3開口部から前記第2成形ランド部にかけて第2テーパ部が形成され、前記第1テーパ部と前記第1キャビティの軸線方向とのなす角度は、前記第2テーパ部と前記第2キャビティの軸線方向とのなす角度よりも大きく形成され、中実丸棒を前記第1開口部及び前記第3開口部に挿入する工程と、前記第1開口部と前記第3開口部が互いに近づく方向に前記第1絞り金型と前記第2絞り金型の少なくともいずれか一方を、前記第3開口部に挿入された前記中実丸棒の一端部が前記第2キャビティの奥部の奥端部に当接するまで移動し、前記一端部を前記第2テーパ部及び前記第2成形ランド部によって絞り成形する工程と、前記第1開口部と前記第3開口部が互いに近づく方向に前記第1絞り金型と前記第2絞り金型の少なくともいずれか一方を移動し、前記中実丸棒の他端部を前記第1テーパ部及び前記第1成形ランド部によって絞り成形する工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、中実丸棒の両端部を簡便に絞り成形できることにより、シャフトの製造工程を削減し製造時間の短縮を図ることができる。
【0011】
また、他の本発明に係るシャフト製造装置は、両端が開口された円柱状の第1キャビティを有する第1絞り金型と一端が開口された円柱状の第2キャビティを有する第2絞り金型とを備え、前記第1キャビティの第1開口部及び第2開口部の直径は、前記第1キャビティに形成された第1成形ランド部の直径よりも大きく形成され、且つ前記第2キャビティの第3開口部及び奥部の直径は、第2キャビティ内に形成された第2成形ランド部の直径よりも大きく形成され、前記第1開口部から前記第1成形ランド部にかけて第1テーパ部が形成され、且つ前記第3開口部から前記第2成形ランド部にかけて第2テーパ部が形成され、前記第1テーパ部と前記第1キャビティの軸線方向とのなす角度は、前記第2テーパ部と前記第2キャビティの軸線方向とのなす角度よりも大きく形成され、中実丸棒を前記第1開口部及び前記第3開口部に挿入した後に前記第1開口部と前記第3開口部が互いに近づく方向に前記第1絞り金型と前記第2絞り金型の少なくともいずれか一方を、前記第3開口部に挿入された前記中実丸棒の一端部が前記第2キャビティの奥部の奥端部に当接するまで移動し、前記一端部を前記第2テーパ部及び前記第2成形ランド部によって絞り成形した後に、さらに前記第1開口部と前記第3開口部が互いに近づく方向に前記第1絞り金型と前記第2絞り金型の少なくともいずれか一方を移動し、前記中実丸棒の他端部を前記第1テーパ部及び前記第1成形ランド部によって絞り成形することを特徴とする。
【0012】
さらに、前記第1絞り金型と前記第2絞り金型のいずれか一方が固定されていてもよい。
【0013】
さらにまた、前記第1絞り金型と前記第2絞り金型の間に、前記シャフトを貫通するための貫通孔が形成されたガイド金型を設けることにより、中実丸棒の両端部を同時に絞り成形する際に中実丸棒に生じ得る座屈や据え込みを防ぎ、品質の優れたシャフトを得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、中実丸棒の両端部を簡便に絞り成形できることにより、シャフトの製造工程を削減し製造時間の短縮を図ることができる。また、第1絞り金型と第2絞り金型との間にガイド金型を設けることにより、中実丸棒の両端部を同時に絞り成形する際に中実丸棒に生じ得る座屈や据え込みを防ぎ、品質の優れたシャフトを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るシャフト製造装置10の概略説明図である。
【0016】
シャフト製造装置10は、柱状の第1絞り金型12と第2絞り金型32を備える。第1絞り金型12には、両端が開口された円柱状の第1キャビティ14が形成されており、第1キャビティ14の一端の第1開口部16から成形素材である中実丸棒60が挿入される。第1キャビティ14には、中実丸棒60を絞り成形するための第1成形ランド部18と、前記第1開口部16から第1成形ランド部18にかけて形成された第1テーパ部20と、中実丸棒60を絞り成形した後に逃がすための第2開口部22が形成されている。第1開口部16の直径は、中実丸棒60の直径とほぼ等しく、且つ第1成形ランド部18の直径よりも大きく形成されている。第1テーパ部20は、第1キャビティ14の軸線方向となす角度が所定の角度αとなるように形成されている(図2A参照)。また、第2開口部22の直径は、第1成形ランド部18の直径よりも大きく形成されている。
【0017】
第2絞り金型32には、一端が開口され、他端が閉塞された円柱状の第2キャビティ34が形成されており、第2キャビティ34の開口端である第3開口部36から成形素材である中実丸棒60が挿入される。第2キャビティ34には、中実丸棒60を絞り成形するための第2成形ランド部38と、前記第3開口部36から第2成形ランド部38にかけて形成された第2テーパ部40と、中実丸棒60を絞り成形した後に逃がすための奥部42が形成されている。第3開口部36の直径は、中実丸棒60の直径とほぼ等しく、且つ第2成形ランド部38の直径よりも大きく形成されている。第2テーパ部40は、第2キャビティ34の軸線方向となす角度が所定の角度βとなるように形成されている(図2B参照)。また、奥部42の直径は、第2成形ランド部38の直径よりも大きく形成されている。
【0018】
なお、第1テーパ部20が第1キャビティ14の軸線方向となす角度αは、第2テーパ部40が第2キャビティ34の軸線方向となす角度βよりも大きくなるように形成されている。このように、角度αが角度βより大きくすることにより、中実丸棒60の両端部を絞り成形する際に、第2絞り金型32に挿入した中実丸棒60の端部から成形を始めることができる。また、この角度α、βは特に限定されるものではないが、角度αは15度から25度、角度βは10度から20度であることが好ましい。さらに、角度αは、角度βよりも3度〜9度、好ましくは5度〜7度の範囲で大きい方が好ましい。
【0019】
次に、前記第1実施形態に係るシャフト製造装置10を用いたシャフトの製造方法について説明する。
【0020】
まず、固定された第1絞り金型12に対して、第2絞り金型32を第1開口部16と第3開口部36が対向するように配設し、中実丸棒60を第1開口部16及び第3開口部36に挿入し、第2絞り金型32が第1絞り金型12に近づく方向(矢印X方向)に第2絞り金型32を移動する(図3A参照)。上述したように、第1テーパ部20の角度αは、第2テーパ部40の角度βよりも大きいので、第1開口部16に挿入された中実丸棒60の端部62A(他端部)が第1テーパ部20と当接し、第3開口部36に挿入された中実丸棒60の端部62B(一端部)が第2テーパ部40と当接した場合、端部62Aと第1テーパ部20が接することにより生じる摩擦力が、端部62Bと第2テーパ部40が接することにより生じる摩擦力よりも大きい。従って、第2絞り金型32を矢印X方向に移動すると、端部62Aはほとんど絞り成形されないが、端部62Bは、第2テーパ部40及び第2成形ランド部38によって絞り成形される。端部62Bの絞り成形は、端部62Bが奥部42の閉塞端である奥端部44と当接するまで行われる(図3B参照)。
【0021】
次いで、端部62Bと奥端部44が当接すると、端部62Aと第1テーパ部20との間の摩擦力よりも、奥端部44と接触する端部62Bを通じて第2絞り金型32を矢印X方向に移動する力の方が大きいために、端部62Aが矢印X方向に移動し、第1テーパ部20及び第1成形ランド部18によって絞り成形される(図3C参照)。
【0022】
端部62Aの所望の範囲で絞り成形が終了した後に、第2絞り金型32を第1絞り金型12から離間する方向に移動して中実丸棒60から第2絞り金型32を外した後に、第1絞り金型12から中実丸棒60を外すことにより、中央部が両端部よりも拡径した形状の所望のシャフト64が得られる(図3D参照)。
【0023】
上記のシャフトの製造方法では、第1絞り金型12を固定し、第2絞り金型32を第1絞り金型12に近づける方向に移動させていたが、第2絞り金型32を固定し、第1絞り金型12を第2絞り金型32に近づける方向に移動させることにより中実丸棒60の両端部を絞り成形することもできる。
【0024】
かかる場合には、まず、固定された第2絞り金型32に対して、第1絞り金型12を第1開口部16と第3開口部36が対向するように配設し、中実丸棒60を第1開口部16及び第3開口部36に挿入し、第1絞り金型12が第2絞り金型32に近づく方向(矢印Y方向)に第2絞り金型32を移動する(図4A参照)。上述したように、第1テーパ部20の角度αは、第2テーパ部40の角度βよりも大きいので第1絞り金型12を移動しても、端部62Aの絞り成形はほとんど行われずに、端部62Bが矢印Y方向に移動し、第2テーパ部40及び第2成形ランド部38によって絞り成形される。端部62Bの絞り成形は、端部62Bが奥部42の奥端部44と当接するまで行われる(図4B参照)。
【0025】
次いで、端部62Bと奥端部44が当接した後に、さらに第1絞り金型12を矢印Y方向に移動することにより、端部62Aが第1テーパ部20及び第1成形ランド部18によって絞り成形される(図4C参照)。
【0026】
端部62Aの所望の範囲で絞り成形が終了した後に、第1絞り金型12を第2絞り金型32から離間する方向に移動して中実丸棒60から第1絞り金型12を外した後に、第2絞り金型32から中実丸棒60を外すことにより、中央部が両端部よりも拡径した形状の所望のシャフト64が得られる。
【0027】
以上説明したように第1実施形態に係るシャフトの製造方法及び装置では、両端が開口された円柱状の第1キャビティ14を有する第1絞り金型12と、一端が開口され、他端が閉塞された円柱状の第2キャビティ34を有する第2絞り金型32とを用いている。この場合、第1キャビティ14の第1開口部16及び第2開口部22の直径は、第1成形ランド部18の直径よりも大きく形成され、且つ第2キャビティ34の第3開口部36及び奥部42の直径は、第2成形ランド部38の直径よりも大きく形成されている。しかも、第1開口部16から第1成形ランド部18にかけて第1テーパ部20が形成され、第3開口部36から第2成形ランド部38にかけて第2テーパ部40が形成され、第1テーパ部20と第1キャビティ14の軸線方向とのなす角度αは、第2テーパ部40と第2キャビティ34の軸線方向とのなす角度βよりも大きく形成される。このシャフト製造装置10を用いて、中実丸棒60を第1開口部16及び第3開口部36に挿入し、第1開口部16と第3開口部36が互いに近づく方向に第1絞り金型12と第2絞り金型32の少なくともいずれか一方を、第3開口部36に挿入された中実丸棒60の端部62Bが第2キャビティ34の奥部42の奥端部44に当接するまで移動し、端部62Bを第2テーパ部40及び第2成形ランド部38によって絞り成形し、さらに第1開口部16と第3開口部36が互いに近づく方向に第1絞り金型12と第2絞り金型32の少なくともいずれか一方を移動し、中実丸棒60の端部62Aを第1テーパ部20及び第1成形ランド部18によって絞り成形することにより、所望のシャフトを製造することができる。
【0028】
図5は、本発明の第2実施形態に係るシャフト製造装置50の概略説明図である。この場合、第1実施形態と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。この第2実施形態に係るシャフト製造装置50では、シャフト製造装置10に対して第1絞り金型12と第2絞り金型32との間にガイド金型52が介装されている。
【0029】
柱状のガイド金型52には、中実丸棒60を挿入し誘導するための貫通孔54が形成されている。貫通孔54の直径は、図6に示すように貫通孔54への中実丸棒60の挿入を容易にするために、中実丸棒60を前記貫通孔54へ挿入した場合に所定のクリアランス56が形成されるように、中実丸棒60直径よりも大きい。
【0030】
次に、第2実施形態のシャフトの製造方法について、第2実施形態に係るシャフト製造装置50との関連で以下説明する。
【0031】
まず、ガイド金型52に中実丸棒60を挿入し、固定された第1絞り金型12に対して、第1絞り金型12の第1開口部16とガイド金型52の貫通孔54の位置が合うように第1絞り金型12を配設する(図5参照)。次いで、第1絞り金型12にガイド金型52の端部が当接した状態で中実丸棒60を貫通孔54を介して、第1絞り金型12の第1開口部16に挿入し、さらに中実丸棒60を第3開口部36に挿入し、第2絞り金型32が第1絞り金型12に近づく方向(矢印X方向)に第2絞り金型32を移動する(図7A参照)。上述したように、第1テーパ部20の角度αは、第2テーパ部40の角度βよりも大きいので第2絞り金型32を移動しても、端部62Aの絞り成形はほとんど行われずに、端部62Bが矢印X方向に移動し、第2テーパ部40及び第2成形ランド部38によって絞り成形される。端部62Bの絞り成形は、端部62Bが奥部42の奥端部44と当接するまで行われる(図7B参照)。
【0032】
次いで、端部62Bと奥端部44が当接した後に、さらに第2絞り金型32を矢印X方向に移動することにより、端部62Aが第1テーパ部20及び第1成形ランド部18によって絞り成形される(図7C参照)。
【0033】
端部62Aの所望の範囲で絞り成形が終了した後に、第2絞り金型32を第1絞り金型12から離間する方向に移動して中実丸棒60から第2絞り金型32を外した後に、第1絞り金型12及びガイド金型52から中実丸棒60を外すことにより、中央部が両端部よりも拡径した形状の所望のシャフト64が得られる。
【0034】
上記のシャフトの製造方法では、第1絞り金型12を固定し、第2絞り金型32を第1絞り金型12に近づける方向に移動させていたが、第2絞り金型32を固定し、第1絞り金型12を第2絞り金型32に近づける方向に移動させることにより中実丸棒60の両端部を絞り成形することもできる。
【0035】
かかる場合には、まず、ガイド金型52に中実丸棒60を挿入し、固定された第2絞り金型32に対して、第2絞り金型32の第3開口部36とガイド金型52の貫通孔54の位置が合うように第2絞り金型32を配設する(図8参照)。次いで、第2絞り金型32にガイド金型52の端部が当接した状態で中実丸棒60を貫通孔54を介して、第2絞り金型32の第3開口部36に挿入し、さらに中実丸棒60を第1開口部16に挿入し、第1絞り金型12が第2絞り金型32に近づく方向(矢印Y方向)に第1絞り金型12を移動する(図9A参照)。上述したように、第1テーパ部20の角度αは、第2テーパ部40の角度βよりも大きいので第1絞り金型12を移動しても、端部62Aの絞り成形はほとんど行われずに、端部62Bが矢印Y方向に移動し、第2テーパ部40及び第2成形ランド部38によって絞り成形される。端部62Bの絞り成形は、端部62Bが奥部42の奥端部44と当接するまで行われる(図9B参照)。
【0036】
次いで、端部62Bと奥端部44が当接した後に、さらに第1絞り金型12を矢印Y方向に移動することにより、端部62Aが第1テーパ部20及び第1成形ランド部18によって絞り成形される(図9C参照)。
【0037】
端部62Aの所望の範囲で絞り成形が終了した後に、第1絞り金型12を第2絞り金型32から離間する方向に移動して中実丸棒60から第1絞り金型12を外した後に、第2絞り金型32及びガイド金型52から中実丸棒60を外すことにより、中央部が両端部よりも拡径した形状の所望のシャフト64が得られる。
【0038】
なお、第2実施形態に係るシャフト製造装置50では、第1絞り金型12又は第2絞り金型32とガイド金型52とを別体としていたが、このガイド金型52を第1絞り金型12又は第2絞り金型32と一体形成してもよい。また、前記第2実施形態では、第1絞り金型12と第2絞り金型32の間に1のガイド金型52を配置していたが、これらの第1絞り金型12と第2絞り金型32との間に2以上のガイド金型52を挟んでもよい。
【0039】
以上説明したように第2実施形態に係るシャフトの製造方法及びその装置では、ガイド金型52とガイド金型52の間に設けられた第2絞り金型32に形成された貫通孔54に中実丸棒60を挿入した後に、中実丸棒60の両端部を絞り成形することにより、中実丸棒60が相当長い場合であっても、中実丸棒60に生じうる座屈や据え込みを防ぐことができる。
【0040】
なお、第1及び第2実施形態に係るシャフト製造装置では、第1絞り金型12又は第2絞り金型32の一方のみを移動していたが、第1絞り金型12及び第2絞り金型32を固定せずに、第1絞り金型12と第2絞り金型32が互いに近づく方向に移動することにより中実丸棒60の両端部を絞り成形することもできる。
【0041】
また、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態に係るシャフト製造装置の概略説明図である。
【図2】図2A、図2Bは、中実丸棒を挿入する前の絞り金型の一部省略断面説明図である。
【図3】図3A〜図3Cは、図1のIIIA−IIIA線断面図であって、シャフト製造装置に中実丸棒を挿入した状態における製造工程の説明図であり、図3Dは、本発明の第1実施形態によって製造されたシャフトの外観図である。
【図4】図4A〜図4Cは、本発明の第1実施形態において、第2絞り金型を固定し、シャフト製造装置に中実丸棒を挿入した状態における製造工程の説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るシャフト製造装置の概略説明図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】図7A〜図7Cは、図5のVIIA−VIIA線断面図であって、シャフト製造装置に中実丸棒を挿入した状態における製造工程の説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るシャフト製造装置において、第2絞り金型を固定した場合の概略説明図である。
【図9】図9A〜図9Cは、図8のIXA−IXA線断面図であって、本発明の第2実施形態において、第2絞り金型を固定し、シャフト製造装置に中実丸棒を挿入した状態における製造工程の説明図である。
【図10】図10A、図10Bは、従来のシャフトの製造方法の説明図である。
【符号の説明】
【0043】
10…シャフト製造装置 12…第1絞り金型
14…第1キャビティ 16…第1開口部
18…第1成形ランド部 20…第1テーパ部
22…第2開口部 32…第2絞り金型
34…第2キャビティ 36…第3開口部
38…第2成形ランド部 40…第2テーパ部
42…奥部 44…奥端部
50…シャフト製造装置 52…ガイド金型
54…貫通孔 56…クリアランス
60…中実丸棒 62A、62B…端部
64…シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口された円柱状の第1キャビティを有する第1絞り金型と一端が開口された円柱状の第2キャビティを有する第2絞り金型とを用いたシャフトの製造方法であって、
前記第1キャビティの第1開口部及び第2開口部の直径は、前記第1キャビティに形成された第1成形ランド部の直径よりも大きく形成され、且つ前記第2キャビティの第3開口部及び奥部の直径は、第2キャビティ内に形成された第2成形ランド部の直径よりも大きく形成され、
前記第1開口部から前記第1成形ランド部にかけて第1テーパ部が形成され、且つ前記第3開口部から前記第2成形ランド部にかけて第2テーパ部が形成され、
前記第1テーパ部と前記第1キャビティの軸線方向とのなす角度は、前記第2テーパ部と前記第2キャビティの軸線方向とのなす角度よりも大きく形成され、
中実丸棒を前記第1開口部及び前記第3開口部に挿入する工程と、
前記第1開口部と前記第3開口部が互いに近づく方向に前記第1絞り金型と前記第2絞り金型の少なくともいずれか一方を、前記第3開口部に挿入された前記中実丸棒の一端部が前記第2キャビティの奥部の奥端部に当接するまで移動し、前記一端部を前記第2テーパ部及び前記第2成形ランド部によって絞り成形する工程と、
前記第1開口部と前記第3開口部が互いに近づく方向に前記第1絞り金型と前記第2絞り金型の少なくともいずれか一方を移動し、前記中実丸棒の他端部を前記第1テーパ部及び前記第1成形ランド部によって絞り成形する工程とを備えることを特徴とするシャフトの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のシャフトの製造方法において、
前記中実丸棒を前記第1開口部及び前記第3開口部に挿入する工程は、前記第1絞り金型と前記第2絞り金型の間に設けられたガイド金型に形成された貫通孔に前記中実丸棒を挿入する工程を有することを特徴とするシャフトの製造方法。
【請求項3】
両端が開口された円柱状の第1キャビティを有する第1絞り金型と一端が開口された円柱状の第2キャビティを有する第2絞り金型とを用いたシャフト製造装置であって、
前記第1キャビティの第1開口部及び第2開口部の直径は、前記第1キャビティに形成された第1成形ランド部の直径よりも大きく形成され、且つ前記第2キャビティの第3開口部及び奥部の直径は、第2キャビティ内に形成された第2成形ランド部の直径よりも大きく形成され、
前記第1開口部から前記第1成形ランド部にかけて第1テーパ部が形成され、且つ前記第3開口部から前記第2成形ランド部にかけて第2テーパ部が形成され、
前記第1テーパ部と前記第1キャビティの軸線方向とのなす角度は、前記第2テーパ部と前記第2キャビティの軸線方向とのなす角度よりも大きく形成され、
中実丸棒を前記第1開口部及び前記第3開口部に挿入した後に前記第1開口部と前記第3開口部が互いに近づく方向に前記第1絞り金型と前記第2絞り金型の少なくともいずれか一方を、前記第3開口部に挿入された前記中実丸棒の一端部が前記第2キャビティの奥部の奥端部に当接するまで移動し、前記一端部を前記第2テーパ部及び前記第2成形ランド部によって絞り成形した後に、さらに前記第1開口部と前記第3開口部が互いに近づく方向に前記第1絞り金型と前記第2絞り金型の少なくともいずれか一方を移動し、前記中実丸棒の他端部を前記第1テーパ部及び前記第1成形ランド部によって絞り成形することを特徴とするシャフト製造装置。
【請求項4】
請求項3記載のシャフト製造装置において、
前記第1絞り金型と前記第2絞り金型のいずれか一方が固定されていることを特徴とするシャフト製造装置。
【請求項5】
請求項3又4記載のシャフト製造装置において、
前記第1絞り金型と前記第2絞り金型の間に、前記シャフトを貫通するための貫通孔が形成されたガイド金型を有することを特徴とするシャフト製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−202750(P2008−202750A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42243(P2007−42243)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】