説明

シャワー処理装置

【課題】エッチャントをシャワーノズルから吹き付けてフィルムキャリアのウエットエッチングを行う場合に好適な、パターンピッチの微細化に伴う問題点を解決できるシャワー処理装置を提供する。
【解決手段】合成樹脂製フィルムの表面に配線パターン形成用の金属箔が形成されたフレキシブルテープ(フィルムキャリア)1に対して、エッチャントをシャワーノズル6から吹き付けてウエットエッチングを行うシャワー処理装置であって、フィルムキャリア1のシャワーノズル6が配置される側の面に存在するエッチャントに超音波振動を付与する超音波付与手段7を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製フィルムの表面に配線パターン形成用の金属箔が形成されたフィルムキャリアに対して、液体(エッチャント等)をシャワーノズルから吹き付けて処理(ウエットエッチング等)を行うシャワー処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、合成樹脂製フィルムの表面に配線パターン形成用の金属箔が形成されたフィルムキャリアを用いた、半導体チップのパッケージングが行われている。長尺なフィルムキャリア(フレキシブルテープ)を用いたパッケージング方法はTABと称され、この方法で製造されたパッケージはTCPと称されている。
TABでは、先ず、フレキシブルテープの金属箔にフォトリソグラフィおよびエッチングにより配線パターンを形成するが、パターンピッチの微細化に伴って、エッチングの際に、エッチャント(エッチング液)がパターン間に行き渡らなくなったり、パターン間に滞ったりするという問題点がある。
このような問題点を解決するために、下記の特許文献1には、エッチング液に超音波振動を与える方法が記載されている。
【特許文献1】特許第2705295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記特許文献1には、エッチャントをシャワーノズルから吹き付けてフィルムキャリアのウエットエッチングを行う場合に好適な、前記問題点を解決できるシャワー処理装置に関する記載はない。
本発明の課題は、エッチャントをシャワーノズルから吹き付けてフィルムキャリアのウエットエッチングを行う場合に好適な、パターンピッチの微細化に伴う問題点を解決できるシャワー処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、発明1のシャワー処理装置は、フィルムキャリアに対して、液体をシャワーノズルから吹き付けて処理を行うシャワー処理装置であって、前記フィルムキャリアの前記シャワーノズル側の面に存在する前記液体に超音波振動を付与する超音波付与手段を有することを特徴とする。
発明2のシャワー処理装置は、フィルムの表面に金属箔が形成されたフィルムキャリアに対して、エッチャントをシャワーノズルから吹き付けて前記金属箔をウエットエッチングするシャワー処理装置であって、前記フィルムキャリアの前記シャワーノズル側の面に存在する前記エッチャントに超音波振動を付与する超音波付与手段を有することを特徴とする。
【0005】
発明3のシャワー処理装置は、発明1および2のシャワー処理装置において、前記シャワーノズルは、複数個配置され、前記超音波付与手段は、金属を網状に形成した振動伝達部材と、この振動伝達部材に超音波振動を付与する超音波振動子と、からなり、前記振動伝達部材は、前記網をなす格子の各目の中心が、前記複数のシャワーノズルのうち一つのシャワーノズルとオーバーラップする位置に配置されていることを特徴とする。
【0006】
発明4のシャワー処理装置は、発明1および2のシャワー処理装置において、前記シャワーノズルは、平面視でフィルムキャリアの面内に複数個並列に存在するように配置され、前記超音波付与手段は、金属を網状に形成した振動伝達部材と、この振動伝達部材に固定した超音波振動子と、からなり、前記振動伝達部材は、前記網をなす格子の各目の中心を、前記複数のシャワーノズルの各位置に合わせて配置されていることを特徴とする。
【0007】
発明5のシャワー処理装置は、発明3または4のシャワー処理装置において、前記振動伝達部材を構成する金属はチタンであることを特徴とする。
発明1のシャワー処理装置によれば、超音波付与手段からの超音波振動が、前記フィルムキャリアのシャワーノズル側の面に存在する液体に付与されることで、前記面に対する前記液体の作用が促進されるため、前記液体による処理が効果的に行われる。
【0008】
発明2のシャワー処理装置によれば、超音波付与手段からの超音波振動が、前記フィルムキャリアのシャワーノズル側の面に存在するエッチャントに付与されることで、前記面に対する前記エッチャントの作用が促進されるため、ウエットエッチングが効果的に行われる。すなわち、パターンピッチが微細な場合に、エッチャントがパターン間に行き渡らなくなったり、パターン間に滞ったりするといった問題点が解決される。
発明3のシャワー処理装置によれば、網状の振動伝達部材の網をなす格子の各目の中心が、前記複数のシャワーノズルのうち一つのシャワーノズルとオーバーラップする位置に配置されているため、フィルムキャリアのシャワーノズルが配置される側の面に存在する液体(エッチャント)の全面に、均一に超音波振動を付与することができる。
【0009】
発明4のシャワー処理装置によれば、網状の振動伝達部材が、格子の各目の中心を複数のシャワーノズルの各位置に合わせて配置されているため、フィルムキャリアのシャワーノズル側の面に存在する液体(エッチャント)の全面に、均一に超音波振動を付与することができる。
発明5のシャワー処理装置によれば、チタン製の振動伝達部材を用いることで、振動伝達部材がエッチャントで腐食することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、この実施形態の処理装置を示す概略構成図である。
この装置は、フレキシブルテープ(フィルムキャリア)1のコイルを取り付けて払い出す払い出しリール2と、エッチング空間3と、エッチング空間3内でフレキシブルテープ1を所定の長さだけ拡げた状態で搬送する搬送ローラ4と、エッチング空間3を出たフレキシブルテープを巻き取る巻き取りリール5と、からなるエッチング装置である。エッチング空間3内には、上部にシャワーノズル6が配置され、フレキシブルテープ1の例えば10μm上となる位置にチタン製の網(振動伝達部材)7が配置されている。
なお、この実施形態におけるフレキシブルテープ1は、合成樹脂製フィルムの表面に配線パターン形成用の金属箔が形成された長尺なフィルムキャリアである。
【0011】
図2は、エッチング空間3内を示す平面図である。このエッチング空間3には平面視でフレキシブルテープ1の幅方向に3個、移動方向に6個の計18個のシャワーノズル6が配置され、各シャワーノズル6の位置に、チタン製の網7をなす格子の各目の中心が合わせてある。言い換えると、各シャワーノズル6と、チタン製の網7がなす格子の各目の中心がオーバーラップするように、チタン製の網7が配置されている。また、網7をなす棒材のうち、フレキシブルテープ1の幅方向と平行に配置された7本の棒材の中心に配置された棒材71と、その両側に1本空けて配置された棒材72,73の先端に、超音波振動子8が固定されている。
【0012】
このエッチング装置では、金属箔に配線パターン形成のフォトリソグラィ工程が施された状態で、金属箔を外側にしてコイル状に巻かれているフレキシブルテープ1が、払い出しリール2から払い出され、エッチング空間3内で、金属箔側を上に向けて所定の長さだけ拡げた状態で搬送ローラ4により搬送され、巻き取りリール5で巻き取られる。そして、エッチング空間3内で、シャワーノズル6から吹き付けられたエッチャントにより、フレキシブルテープ1の金属箔に対するウエットエッチングが連続的に行われる。
【0013】
その際に、超音波振動子8からの超音波振動がチタン製の網7に伝達され、この伝達された超音波振動がさらに、フレキシブルテープ1の上面(シャワーノズル側の面)に存在するエッチャントの全面に均一に付与される。これにより、フレキシブルテープ1の上面に対するエッチャントの作用が促進されるため、ウエットエッチングが効果的に行われて、パターンピッチが微細な場合でも、エッチャントがパターン間に行き渡り易くなり、パターン間の滞りも生じ難くなる。
【0014】
なお、付与する超音波振動の振動方向を、フレキシブルテープ1の幅方向と長さ方向(搬送方向)のいずれに合わせるかは、パターンの形成状態やエッチャントの滞り易い方向等によって適宜選択する。
また、この実施形態ではエッチング装置について記載されているが、これ以外の液体をシャワーノズルからフィルムキャリアに吹き付けて処理を行うシャワー処理装置にも適用できる。
また、この実施形態では、フレキシブルテープ(フィルムキャリア)1の上側にシャワーノズル6を配置した例が記載されているが、フィルムキャリアの下側にシャワーノズルを配置した場合にも適用できる。その場合には、網状の振動伝達部材をフィルムキャリアの直下に配置する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この実施形態の処理装置を示す概略構成図。
【図2】図1の処理装置を構成するエッチング空間を示す平面図
【符号の説明】
【0016】
1…フレキシブルテープ(フィルムキャリア)、2…払い出しリール、3…エッチング空間、4…搬送ローラ、5…巻き取りリール、6…シャワーノズル、7…チタン製の網(振動伝達部材)、8…超音波振動子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムキャリアに対して、液体をシャワーノズルから吹き付けて処理を行うシャワー処理装置であって、
前記フィルムキャリアの前記シャワーノズル側の面に存在する前記液体に超音波振動を付与する超音波付与手段を有することを特徴とするシャワー処理装置。
【請求項2】
フィルムの表面に金属箔が形成されたフィルムキャリアに対して、エッチャントをシャワーノズルから吹き付けて前記金属箔をウエットエッチングするシャワー処理装置であって、
前記フィルムキャリアの前記シャワーノズル側の面に存在する前記エッチャントに超音波振動を付与する超音波付与手段を有することを特徴とするシャワー処理装置。
【請求項3】
前記シャワーノズルは、複数個配置され、
前記超音波付与手段は、金属を網状に形成した振動伝達部材と、この振動伝達部材に超音波振動を付与する超音波振動子と、からなり、
前記振動伝達部材は、前記網をなす格子の各目の中心が、前記複数のシャワーノズルのうち一つのシャワーノズルとオーバーラップする位置に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載のシャワー処理装置。
【請求項4】
前記シャワーノズルは、平面視でフィルムキャリアの面内に複数個並列に存在するように配置され、
前記超音波付与手段は、金属を網状に形成した振動伝達部材と、この振動伝達部材に固定した超音波振動子と、からなり、
前記振動伝達部材は、前記網をなす格子の各目の中心を、前記複数のシャワーノズルの各位置に合わせて配置されていることを特徴とする請求項1または2記載のシャワー処理装置。
【請求項5】
前記振動伝達部材を構成する金属はチタンであることを特徴とする請求項3または4記載のシャワー処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−223074(P2008−223074A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61953(P2007−61953)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】