説明

シュリンクフィルムおよびシュリンクラベル

【課題】ポリスチレン系樹脂とポリエステル系樹脂の異種ポリマーの積層シュリンクフィルムにおいて、層間剥離しないシュリンクフィルムを提供する。また、該シュリンクフィルムを用いたシュリンクラベルを提供する。
【解決手段】本発明のシュリンクフィルムは、非晶性芳香族ポリエステル系樹脂を主成分とし、非晶性芳香族ポリエステル系樹脂100重量部に対して可塑剤0.5〜20重量部を含有する樹脂組成物から構成される表面層(A層)、および、スチレン−共役ジエン共重合体及び/又はその水添物を主成分とする樹脂組成物から構成される中心層(B層)が、A層/B層/A層の順に積層された少なくとも3層積層構造を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層間剥離しない、異種積層シュリンクフィルムに関する。また、該シュリンクフィルムに印刷層を設けたシュリンクラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、お茶や清涼飲料水等の飲料用容器として、PETボトル(ポリエチレンテレフタレート製ボトル)などのプラスチック製ボトルや、ボトル缶等の金属製ボトル等が広く用いられている。これらの容器には、表示や装飾性、機能性の付与のためプラスチックラベルを装着する場合が多く、近年、容器に対する追従性が良好であり、表示面積を増大できる等のメリットから、水蒸気や熱風により収縮させることにより容器に追従・装着させる熱収縮性プラスチックフィルム(シュリンクフィルム)が広く使用されている。
【0003】
上記シュリンクフィルムの分野においては、剛性、高収縮性、収縮加工性、美麗な仕上がり、低密度などの様々な特性を両立するため、またフィルムに印刷性、耐熱性、耐摩耗性や耐薬品性などの機能を付与する目的で、異なる樹脂素材を積層した異種積層フィルムが広く用いられている。例えば、ポリエステル系樹脂とポリスチレン系樹脂を積層させたシュリンクフィルムなどが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記ポリスチレン系樹脂層、ポリエステル系樹脂層および接着層からなる積層フィルムは、センターシール工程では十分なシール強度を発揮するが、シュリンク加工(収縮加工)によりボトルに装着した場合には、センターシール部分が層間剥離する問題が生じていた。即ち、異種積層のシュリンクフィルムにおいて、実用上十分な層間強度(フィルム層間の接着強度)を有するシュリンクフィルムは得られていないのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特開2006−15745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ポリスチレン系樹脂とポリエステル系樹脂の異種ポリマーの積層シュリンクフィルムにおいて、層間剥離しないシュリンクフィルムを提供することにある。また、該シュリンクフィルムを用いたシュリンクラベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、非晶性の芳香族ポリエステル系樹脂および可塑剤を特定配合量で含有する表面層(A層)、および、スチレン−共役ジエン共重合体及び/又はその水添物を主成分とする中心層(B層)が、A層/B層/A層の順に積層された少なくとも3層の積層構造を有するシュリンクフィルムとすることにより、優れた層間強度を有する異種積層フィルムを得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、非晶性芳香族ポリエステル系樹脂を主成分とし、非晶性芳香族ポリエステル系樹脂100重量部に対して可塑剤0.5〜20重量部を含有する樹脂組成物から構成される表面層(A層)、および、スチレン−共役ジエン共重合体及び/又はその水添物を主成分とする樹脂組成物から構成される中心層(B層)が、A層/B層/A層の順に積層された少なくとも3層積層構造を有することを特徴とするシュリンクフィルムを提供する。
【0009】
さらに、本発明は、接着性樹脂層(C層)を有し、A層/C層/B層/C層/A層の順に積層された少なくとも5層積層構造を有する前記のシュリンクフィルムを提供する。
【0010】
さらに、本発明は、前記可塑剤がフタル酸エステル、アジピン酸エステル、ポリエステル系可塑剤から選ばれた少なくとも1つである前記のシュリンクフィルムを提供する。
【0011】
さらに、本発明は、前記C層が、極性基を有するスチレン系樹脂より構成される前記のシュリンクフィルムを提供する。
【0012】
さらに、本発明は、前記のシュリンクフィルムの少なくとも一方の面側に印刷層を設けたシュリンクラベルを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシュリンクフィルムは、表面層であるポリエステル系樹脂層の収縮応力を低減し、中心層との収縮応力の差を小さくしたため、シュリンク加工を施した後にも層間剥離によるトラブルが生じない。このため、PETボトルなどの容器に装着するシュリンクラベルとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明のシュリンクフィルムについて、さらに詳細に説明する。
【0015】
本発明のシュリンクフィルムは、非晶性の芳香族ポリエステル系樹脂を主成分とし、さらに可塑剤を含有する樹脂組成物から構成される表面層(以下、「A層」と称する)、スチレン−共役ジエン共重合体及び/又はその水添物を主成分とする樹脂組成物から構成される中心層(以下、「B層」と称する)を少なくとも有する。さらに、接着性樹脂層(以下、「C層」と称する)を有していてもよい。なお、本発明にいう「主成分とする」とは、特に限定がない限り、それぞれの樹脂組成物中の含有量が、樹脂組成物の総重量に対して50重量%以上であることをいい、より好ましくは60重量%以上であることをいう。
【0016】
本発明のシュリンクフィルムは、上記A、B層が、A層(表面層)/B層(中心層)/A層(表面層)の順に積層された2種3層の積層構造を少なくとも有している。なお、上記A層とB層は、他の層を介さずに積層されていてもよいし、C層(接着性樹脂層)やその他の層を介して積層されていてもよい。本発明のシュリンクフィルムがC層を含む場合には、A層/C層/B層/C層/A層の順に積層された3種5層の積層構造であることが好ましい。なお、B層の両側に設けられたA層、C層は、それぞれ同一の樹脂組成からなる層であってもよいし、異なる組成の層(例えば、A1層とA2層)であってもよい。本発明のシュリンクフィルムは、さらに上記積層フィルムの製膜工程でインラインで設けることができる層であれば、上記A〜C層以外の層を有していてもよい。このような層としては、例えば、アンカーコート層、易接着層、帯電防止剤層などのコーティング層が挙げられる。
【0017】
[表面層(A層)]
本発明のシュリンクフィルムにおける表面層(A層)は、非晶性の芳香族ポリエステル系樹脂を主成分し、さらに可塑剤を少なくとも含有する樹脂組成物(以下、「樹脂組成物A」と称する場合がある)から構成される。
【0018】
上記非晶性の芳香族ポリエステル系樹脂(以下、単に「非晶性ポリエステル系樹脂」と称する場合がある)は、実質的に非晶性であれば、特に限定されず、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分とで構成される種々のポリエステルが挙げられる。なお、芳香族ポリエステル系樹脂であるため、全ジカルボン酸成分中の50モル%以上(好ましくは70モル%以上)が芳香族ジカルボン酸、および/または、全ジオール成分中の50モル%以上(好ましくは70モル%以上)が芳香族ジオールである必要がある。
【0019】
ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、5−t−ブチルイソフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トランス−3,3’−スチルベンジカルボン酸、トランス−4,4’−スチルベンジカルボン酸、4,4’−ジベンジルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,2,6,6−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインデン−4,5−ジカルボン酸、1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、及びこれらの置換体等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、イコサン二酸、ドコサン二酸、1,12−ドデカンジオン酸、及びこれらの置換体等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、シス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及びこれらの置換体等の脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0020】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2,4−ジメチル−1,3−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族ジオール;1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール等の脂環式ジオール;2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシジフェニル)プロパン、ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン等のビスフェノール系化合物のエチレンオキシド付加物、キシリレングリコール等の芳香族ジオールなどが挙げられる。これらのジオール成分は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0021】
上記非晶性ポリエステル系樹脂は、上記以外にも、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸等のオキシカルボン酸;安息香酸、ベンゾイル安息香酸等のモノカルボン酸;トリメリット酸等の多価カルボン酸;ポリアルキレングリコールモノメチルエーテル等の1価アルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールなどの構成単位を含んでいてもよい。
【0022】
非晶性ポリエステル系樹脂としては、上記の中でも、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコール(EG)を用いたポリエチレンテレフタレート(PET)において、ジカルボン酸成分及び/又はジオール成分の一部を他のジカルボン酸成分及び/又はジオール成分に置き換えた変性PETが好ましく例示される。上記変性PETに用いられるジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、イソフタル酸などが挙げられる。また、ジオール成分としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、ネオペンチルグリコール(NPG)、ジエチレングリコールなどが挙げられる。
【0023】
上記変性PETとしては、具体的には、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてEGを主成分、CHDMを共重合成分として用いた共重合ポリエステル(以後、CHDM共重合PET又はCHDM変性PETという)やネオペンチルグリコール(NPG)を共重合成分として用いた共重合ポリエステル(以後、NPG共重合PET又はNPG変性PETという)が、コスト、生産性等の観点で好ましい。さらに、低温収縮性向上の観点で、ジエチレングリコールを共重合していてもよい。
【0024】
上記変性PETにおいて、変性に用いる共重合成分の共重合比率(全ジカルボン酸成分に対する共重合ジカルボン酸成分の比率、または、全ジオール酸成分に対する共重合ジオール酸成分の比率)は、層間強度を一層向上させる観点から、15モル%以上(例えば、15〜40モル%)が好ましい。中でも、例えば、CHDM共重合PETの場合、CHDMの共重合の割合は、ジオール成分中(即ち、テレフタル酸100モル%に対して)、20〜40モル%(EGが60〜80モル%)が好ましく、さらに好ましくは25〜35モル%(EGが65〜75モル%)である。また、NPG共重合PETの場合、ジオール成分中、15〜40モル%(EGが60〜85モル%)が好ましい。また、さらにEG成分の一部(好ましくは、10モル%以下)をジエチレングリコールに置き換えてもよい。
【0025】
上述のように、ポリエステルを変性し非晶性とすることにより、A層とB層又はC層の溶融温度での流動挙動を近づけることができるため、層の成型性及び層間強度が向上する。
【0026】
上記非晶性ポリエステル系樹脂の、示差走査熱量測定(DSC)法(10℃/分の昇温スピードで測定)により測定した結晶化度は、15%以下が好ましく、より好ましくは10%以下である。さらに、上記DSC法による融点(融解ピーク)がほとんど見うけられないもの(すなわち、結晶化度0%)が最も好ましい。上記、結晶化度は、DSC測定より得られる結晶融解熱の値から、X線法等により固定した結晶化度の明確なサンプルを標準として、算出することができる。なお、結晶融解熱は、例えば、セイコーインスツルメンツ社製DSC(示差走査熱量測定)装置を用い、試料量10mg、昇温速度10℃/分で、窒素シールを行い、一度融点以上まで昇温し、常温まで降温した後、再度昇温したときの融解ピークの面積から求めることができる。結晶化度は、単一の樹脂から測定されることが好ましいが、混合状態で測定される場合には、混合される樹脂の融解ピークを差し引いて、対象となるポリエステル系樹脂の融解ピークを求めればよい。
【0027】
上記非晶性ポリエステル系樹脂の重量平均分子量は、溶融挙動を好ましい範囲に制御する観点から、50000〜90000が好ましく、より好ましくは60000〜80000である。さらに、NPG共重合PETの場合、50000〜80000が好ましく、より好ましくは60000〜70000である。
【0028】
上記非晶性ポリエステル系樹脂のIV値(固有粘度)は、層間強度の観点から、0.70(dl/g)以上が好ましく、より好ましくは0.7〜0.9(dl/g)、さらに好ましくは0.75〜0.85(dl/g)である。また、非晶性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、収縮適性の観点から、70〜100℃が好ましく、より好ましくは70〜85℃である。
【0029】
上記の非晶性ポリエステル系樹脂としては、既存品を用いることも可能であり、例えば、Eastman Chemical社製「Eastar Copolyester」、「EMBRACE」(以上、CHDM共重合PET);ベルポリエステルプロダクツ(株)製「ベルペット」(NPG共重合PETなど)等が市場で入手できる。
【0030】
本発明のA層を構成する樹脂組成物(樹脂組成物A)の総重量に対する上記非晶性ポリエステル系樹脂の含有量は、収縮性及び印刷適性の観点から、50〜99.5重量%が好ましく、より好ましくは80〜99.5重量%である。
【0031】
上記可塑剤は、ポリエステル系樹脂に通常用いられるものを使用可能で、特に限定されないが、例えば、フタル酸エステル、アセチル化モノグリセリド、アジピン酸エステル、ポリエステル系可塑剤などが例示される。中でも、柔軟性、相溶性の観点から、好ましくはフタル酸エステル、アジピン酸エステルである。フタル酸エステルとしては、例えば、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジブチル(DBP)などが挙げられる。アジピン酸エステルとしては、例えば、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)などが挙げられる。ポリエステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸成分と脂肪族ジオール成分から構成されるポリエステルなどが挙げられる。
【0032】
A層に用いられる芳香族ポリエステル系樹脂は、B層又はC層を形成するスチレン−共役ジエン共重合体などのポリスチレン系樹脂に比べて、一般的に収縮応力が大きく、これに起因してシュリンク加工の際にA層とB層又はC層間に収縮応力の差が生じて、層間強度が低下しやすくなる。A層中に上記可塑剤を添加することにより、A層を形成する樹脂に柔軟性を付与し収縮応力を低下させることができるため、層間強度が向上する。
【0033】
上記可塑剤のA層中の含有量は、A層に用いられる非晶性芳香族ポリエステル系樹脂100重量部に対して、0.5〜20重量部であり、好ましくは10〜20重量部、さらに好ましくは12〜18重量部である。含有量が0.5重量部未満の場合には層間強度向上の効果が小さく、20重量部を超えると可塑剤がフィルム表面にブリードしてブロッキングや印刷性低下を招く。
【0034】
A層には、必要に応じてその他の添加剤、例えば、滑剤、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、ピニング剤(アルカリ土類金属)等を含んでいてもよい。
【0035】
[中心層(B層)]
本発明のシュリンクフィルムにおける中心層(B層)は、スチレン−共役ジエン共重合体及び/又はその水添物を主成分とする樹脂組成物(以下、「樹脂組成物B」と称する場合がある)から構成される。
【0036】
上記スチレン−共役ジエン共重合体は、スチレン系単量体および共役ジエンを必須の単量体成分として構成される共重合体である。
【0037】
上記スチレン系単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−イソブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどが挙げられる。中でも、強度、成型性などの物性の観点から、スチレンが特に好ましい。なお、これらスチレン系単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
上記共役ジエンとしては、特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、クロロプレンなどが挙げられる。中でも、脆性改良、柔軟性付与の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。なお、これら共役ジエンは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
上記スチレン−共役ジエン共重合体において、上記スチレン系単量体の含有量は、単量体成分の全重量に対して、60〜95重量%が好ましく、より好ましくは70〜85重量%である。一方、上記共役ジエンの含有量は、単量体成分の全重量に対して、5〜40重量%以上が好ましく、より好ましくは15〜30重量%である。スチレン系単量体の含有量が60重量%未満の場合(または、共役ジエンの含有量が40重量%を超える場合)には、フィルムに腰がなくなる場合や自然収縮が大きくなる場合があり、共役ジエンの含有量が5重量%未満の場合(または、スチレン系単量体の含有量が95重量%を超える場合)には、脆くなる場合や伸度が低くなる場合がある。
【0040】
上記スチレン−共役ジエン共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記スチレン系単量体、共役ジエン以外の単量体成分を含有していてもよい。このような単量体成分としては、例えば、ビニル系モノマー、重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0041】
本発明のシュリンクフィルムにおけるB層には、上記スチレン−共役ジエン共重合体とともに、または、スチレン−共役ジエン共重合体にかえて、上記スチレン−共役ジエン共重合体に水素添加した水添物を用いてもよい。
【0042】
上記スチレン−共役ジエン共重合体の共重合の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体など、特に限定されないが、ブロック共重合体が好ましく、スチレンブロック(S)−共役ジエンブロック(D)型、S−D−S型、D−S−D型、S−D−S−D型等が挙げられる。また、当該共重合体の水添物であってもよい。
【0043】
上記スチレン−共役ジエン共重合体またはその水添物としては、具体的には、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−イソプレンブロック共重合体(SBIS)、スチレン−エチレン・ブタジエンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン共重合体(SEPS)などが例示される。中でも、最も好ましくは、SBS、SBISである。
【0044】
上記スチレン−共役ジエン共重合体またはその水添物のメルトフローレート(MFR)(JIS K 7210 :温度200℃/荷重49N)は、1〜20g/10分が好ましく、より好ましくは3〜10g/10分である。
【0045】
上記スチレン−共役ジエン共重合体またはその水添物としては、市販品を用いてもよく、例えば、旭化成(株)製「アサフレックス」、「タフテック」;電気化学工業(株)製「クリアレン」;クラレ(株)製「セプトン」などが挙げられる。
【0046】
本発明のB層を構成する樹脂組成物(樹脂組成物B)の総重量に対する、上記スチレン−共役ジエン共重合体及び/又はその水添物の含有量は、50重量%以上であり、好ましくは70〜100重量%である。なお、2種以上のスチレン−共役ジエン共重合体及び/又はその水添物を用いる場合には、それらの合計量が上記の関係を満たしておればよい。
【0047】
樹脂組成物Bには、高収縮性、腰の強さの向上と自然収縮の防止のために、石油樹脂などの粘着付与剤(タッキファイヤ)を含んでいてもよい。上記粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂(ロジン、重合ロジン、水添ロジン及びそれらの誘導体、樹脂酸ダイマーなど)、テルペン系樹脂(テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペン−フェノール樹脂など)、石油樹脂(脂肪族系、芳香族系、脂環族系)などが挙げられる。中でも、石油樹脂が好ましい。粘着付与剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。粘着付与剤を添加する場合の添加量は、樹脂組成物Bの総重量に対して、5〜30重量%が好ましく、より好ましくは10〜25重量%である。添加量が30重量%を超えると、シュリンクフィルムが脆くなる場合がある。また、5重量%未満では添加の効果が小さい場合がある。
【0048】
[接着性樹脂層(C層)]
本発明のシュリンクラベルにおいて、必要に応じて用いられる接着性樹脂層(C層)は、極性基を有するポリスチレン系樹脂から構成されることが好ましい。
【0049】
上記極性基は、ポリエステルのエステル結合部分と反応または相互作用(水素結合など)する官能基であることが好ましく、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基(カルボン酸無水物も含む)、水酸基、オキサゾリン基、イソシアネート基、エポキシ基などが挙げられる。中でも、層間強度向上の観点から、ジカルボン酸無水物基(無水ジカルボン酸変性)、エポキシ基(エポキシ変性)が好ましく、マレイン酸無水物基(無水マレイン酸変性)が特に好ましい。上記の極性基は、ポリスチレン系ポリマーの主鎖にグラフト化されていても良いし、共重合によりポリマー主鎖中に導入されていてもよい。上記「変性」という場合には、「反応性官能基がポリマー主鎖にグラフト化により導入されたもの」及び「共重合により導入されたもの」の両方を含むものとする。
【0050】
上記極性基を有するポリスチレン系樹脂のポリマーの主鎖骨格を構成するポリスチレン系樹脂としては、特に限定されず、スチレンの単独重合体である一般ポリスチレン(GPPS)、スチレン系単量体の単独又は共重合体、スチレン−共役ジエン共重合体、スチレン−重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体、スチレン−共役ジエン−重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0051】
中でも、スチレン系単量体および共役ジエンを必須の単量体成分として構成されるスチレン系熱可塑性エラストマーやその水添物を変性し、上記極性基を導入した変性物が好ましい。上記スチレン系単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−イソブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどが挙げられる。中でも、強度、成型性などの物性の観点から、スチレンが特に好ましい。上記共役ジエンとしては、特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、クロロプレンなどが挙げられる。中でも、弾性付与、極性付与の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。さらに、ビニル系モノマー、重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体などの他の共重合成分を含んでいてもよい。なお、これらスチレン系単量体や共役ジエンなどの単量体成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記スチレン系熱可塑性エラストマーの共重合の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体など、特に限定されないが、ブロック共重合体が好ましい。上記スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−イソプレンブロック共重合体(SBIS)などが例示され、水添スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−エチレン・ブタジエンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン共重合体(SEPS)などが例示される。
【0052】
上記スチレン系熱可塑性エラストマーにおいて、上記スチレン系単量体の含有量は、単量体成分の全重量に対して、10〜60重量%であり、好ましくは20〜50重量%、より好ましくは20〜45重量%である。一方、上記共役ジエンの含有量は、単量体成分の全重量に対して、40〜90重量%であり、好ましくは50〜80重量%、より好ましくは55〜80重量%である。
【0053】
上記極性基を有するポリスチレン系樹脂の重量平均分子量は、層形成時の流動性の観点から、10万〜50万が好ましく、より好ましくは20万〜40万である。
【0054】
上記極性基を有するポリスチレン系樹脂としては、具体的には、無水マレイン酸変性SEBS、無水マレイン酸変性SEPS、エポキシ変性SEBS、エポキシ変性SEPSなどが好ましく例示される。これらは、市販品を用いてもよく、例えば、旭化成(株)製「タフテックM」、クレイトン(株)製「クレイトンFG」などが挙げられる。
【0055】
本発明のC層を構成する樹脂組成物(樹脂組成物C)の総重量に対する上記極性基を有するポリスチレン系樹脂の含有量は、5〜100重量%であり、接着性(層間強度)の観点から、好ましくは20〜100重量%である。上記含有量が5重量%未満の場合には、接着強度が不足し、デラミ(層間剥離)が生じる場合がある。
【0056】
樹脂組成物Cには、耐熱性向上のために、石油樹脂などの粘着付与剤(タッキファイヤ)を含んでいてもよい。上記粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂(ロジン、重合ロジン、水添ロジン及びそれらの誘導体、樹脂酸ダイマーなど)、テルペン系樹脂(テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペン−フェノール樹脂など)、石油樹脂(脂肪族系、芳香族系、脂環族系)などが挙げられる。中でも、石油樹脂が好ましい。粘着付与剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。粘着付与剤を添加する場合の添加量は、樹脂組成物Cの総重量に対して、5〜30重量%が好ましく、より好ましくは10〜25重量%である。
【0057】
[シュリンクフィルム]
本発明のシュリンクフィルムは、前述のとおり、A層(表面層)/B層(中心層)/A層の順に、A層およびB層が積層された2種3層の積層構造を少なくとも含んだ積層構成である。好ましくは、A層/C層(接着性樹脂層)/B層/C層/A層の3種5層の積層構成である。
【0058】
上記積層構造は共押出により形成される。上記共押出の一般的方法(A層/C層/B層/C層/A層の3種5層積層の場合を例に説明する)は、それぞれ所定の温度に設定した複数の押出機に樹脂組成物A〜Cをそれぞれ投入し、Tダイ、サーキュラーダイなどから共押出する方法である。この際、マニホールドや合流ブロックを用いて、所定の積層構成とすることが好ましい。また必要に応じて、ギアポンプを用いて供給量を調節してもよく、さらにフィルターを用いて、異物を除去するとフィルム破れが低減できるため好ましい。なお、押出温度は、用いる樹脂組成物A〜Cの種類によっても異なり、特に限定されないが、各樹脂組成物の成型温度領域が近接していることが好ましい。具体的には、樹脂組成物A(A層)の押出温度は210〜250℃が好ましく、樹脂組成物B(B層)は180〜220℃、樹脂組成物C(C層)は190〜220℃が好ましい。上記共押出したポリマーを、冷却ドラムなどを用いて急冷することにより、未延伸積層フィルム(シート)を得ることができる。
【0059】
本発明のシュリンクフィルムは、収縮特性の観点から、1軸又は2軸に配向したフィルムである。シュリンクフィルムがA層、B層からなる2種3層構成の場合には、A層、B層のいずれもが、また、A〜C層からなる3種5層構成の場合には、A〜Cの全ての層(5層)が配向している必要がある。全ての層が配向していない場合には、良好な収縮性を得ることができない。配向は1軸配向、2軸配向など特に限定されないが、フィルム幅方向(ラベルを筒状にした場合に周方向となる方向)に強く配向した、実質的に幅方向の1軸配向が好ましい。また、フィルムの長手方向(幅方向と直交する方向)に強く配向した実質的に長手方向の1軸配向フィルムであってもよい。
【0060】
上記1軸配向、2軸配向などの配向フィルムは、未延伸積層フィルムを延伸することにより作製できる。延伸としては、所望の配向に応じて選択でき、長手方向(縦方向;MD方向)および幅方向(横方向;TD方向)の2軸延伸でもよいし、長手、または、幅方向の1軸延伸でもよい。また、延伸方式は、ロール方式、テンター方式、チューブ方式の何れの方式を用いてもよい。延伸条件としては、用いる樹脂組成物A〜Cの種類によっても異なり、特に限定されないが、一般的には70〜110℃の範囲で、長手、幅の各方向に1.01〜8倍程度の倍率で行うことが好ましい。例えば、長手方向に1.01〜1.5倍(好ましくは1.05〜1.3倍)程度に延伸した後、幅方向に2〜8倍(好ましくは3〜6倍)程度延伸することが好ましい。
【0061】
本発明のシュリンクフィルムにおいて、A層の厚み(1層分)は、特に限定されないが、2〜10μmが好ましく、より好ましくは3〜5μmである。A層厚みが10μmを超えるとA層の収縮応力が大きくなり、層間剥離しやすくなる場合があり、2μm未満では耐溶剤性が低下する場合がある。
【0062】
本発明のシュリンクフィルムにおいて、B層の厚み(1層分)は、特に限定されないが、10〜40μmが好ましく、より好ましくは20〜30μmである。B層厚みが40μmを超えるとA層の収縮に追従しにくくなる場合があり、10μm未満ではB層とA層の収縮応力が極端に異なるため、層間剥離しやすくなる場合がある。
【0063】
本発明のシュリンクフィルムにおいて、C層を設ける場合のC層の厚み(1層分)は、特に限定されないが、2〜10μmが好ましく、より好ましくは3〜5μmである。C層厚みが10μmを超えると収縮が不均一となる場合があり、2μm未満では接着機能を発揮できない場合がある。
【0064】
本発明のシュリンクフィルムの厚みは、特に限定されないが、20〜60μmが好ましく、より好ましくは35〜55μm、さらに好ましくは30〜50μmである。
【0065】
本発明のシュリンクフィルムにおいて、全体厚みを100%とした場合、A層の厚み比(全A層の合計)は5〜40%、B層の厚み比(全B層の合計)は50〜90%、C層の厚み比(全C層の合計)は5〜40%が好ましい。各層厚みを上記範囲に制御することにより、各層の収縮量、収縮応力のバランスを調整し、層間剥離を防止できるため好ましい。
【0066】
本発明のシュリンクフィルムにおいて、表面層(A層)は、ポリエステル系樹脂を主成分とするため、高収縮性であり、また表面に耐摩耗性、耐薬品性を付与することができる。これに対して中心層(B層)に用いられるスチレン−共役ジエン共重合体またはその水添物はラベルの急激な収縮を抑え収縮挙動を緩やかにすることができる。また、必要に応じて設けられる接着性樹脂層(C層)は、A層及びB層の両層と密着性が高く、層間強度をより一層向上させる役割を担う。
【0067】
しかしながら、上記のような異種素材を積層した積層フィルムでは、接着層を設けることなどにより、シュリンクフィルム製造工程、センターシール工程などでは十分な層間強度を発揮させることができるものの、センターシールを施しシュリンク加工(収縮加工)によりボトルに装着した後には、センターシール部分で層間剥離が生じるという問題が生じていた。上記問題は、ポリエステル系樹脂層とスチレン−共役ジエン共重合体などのポリスチレン系樹脂は加熱した場合の収縮応力が異なるため、シュリンク加工(加熱)を施した場合には、各フィルム層間に収縮応力の差が生じ、それによって層間剥離が発生すると推定される。特にセンターシール部分は、フィルムの一方の面側がシールにより固定されているため、上記フィルム層間の収縮応力の差が顕著にあらわれると推定される。
【0068】
これに対して、本発明のシュリンクフィルムにおいては、B層やC層の樹脂に比べて、収縮応力の大きいA層のポリエステル系樹脂に可塑剤を特定量添加することによって、A層の収縮応力を低減することにより、層間に生じる収縮応力差を低減し、層間剥離の発生を抑止している。また、各層を共押出により積層させることにより、フィルム層同士の密着を向上させて層間強度を高めている。さらに、各層の厚み、厚み比を上記の範囲に制御することにより、収縮応力差をより一層低減して層間剥離を抑制することができる。なお、延伸配向を低くすることにより収縮応力差を低減することもできるが、その場合には収縮特性(収縮率など)も低下するため好ましくない。
【0069】
本発明のシュリンクフィルムにおけるA層(単層)の収縮応力(85℃、主配向方向)は、3〜10MPaが好ましく、より好ましくは4〜6MPaである。A層の収縮応力が10MPaを超える場合にはB層、C層との収縮応力の差が大きくなり層間剥離を生じやすくなる。3MPa未満ではラベル収縮(シュリンク加工時)に容器形状に追従できなくなる場合がある。B層(単層)の収縮応力(85℃、主配向方向)は、2〜10MPaが好ましく、より好ましくは3〜5MPaである。B層の収縮応力が10MPaを超える場合にはC層との収縮差が大きくなり剥離しやすくなる。2MPa未満ではA層との収縮応力の差が大きくなり層間剥離を生じやすくなる。C層(単層)の収縮応力(85℃、主配向方向)は、2〜8MPaが好ましく、より好ましくは3〜4MPaである。B層の収縮応力が8MPaを超える場合には接着特性が低下する。2MPa未満ではA層との収縮応力の差が大きくなり層間剥離を生じやすくなる。上記「主配向方向」とは、「主に延伸処理を施した方向」のことをいう。1軸延伸フィルムであれば延伸方向、2軸延伸フィルムであれば、配向のより大きな延伸方向をいう。筒状シュリンクラベル用のシュリンクフィルムの場合は、一般的に、装着される際に容器の周方向となる方向(フィルムの幅方向)が主配向方向であることが多い。
【0070】
なお、上記の各層(単層)の収縮応力は、各層樹脂からなる、TD方向に幅15mm、長さ100mmの試験片を作製し、チャック間50mmにて、85℃の湯浴に10秒間浸漬し応力を測定することにより求める。上記収縮応力はシュリンク加工を行う前の各層の収縮応力を表す値である。
【0071】
A層とB層の収縮応力差(絶対値)、B層とC層の収縮応力差(絶対値)、C層とA層の収縮応力差(絶対値)は、層間剥離抑制の観点から、3MPa未満が好ましく、より好ましくは2MPa未満である。
【0072】
本発明のシュリンクフィルムの収縮応力(85℃)は、2〜13MPaが好ましく、より好ましくは2〜8MPa、さらに好ましくは2〜5MPaである。収縮応力が2MPa未満の場合には、印刷層のシュリンク加工追従性が低下し、仕上がりが低下する場合がある。13MPaを超えると容器の変形を引き起こしたり、開封時に内容物があふれたりするおそれがある。
【0073】
本発明のシュリンクフィルムは優れた層間強度を有する。層間強度(延伸配向後のシュリンクフィルム(シュリンク加工前)の層間強度)は、1N/15mm以上が好ましく、より好ましくは2N/15mm以上である。層間強度(延伸配向後のシュリンクフィルム(シュリンク加工後)の層間強度)は、1N/15mm以上が好ましく、より好ましくは2N/15mm以上である。層間強度が上記範囲未満の場合には、加工工程や製品化した後に、フィルム層同士がはがれて、生産性を低下させたり、品質上の問題となる場合がある。
【0074】
本発明のシュリンクフィルム(シュリンク加工前)の90℃10秒(温水処理)における主配向方向(主に延伸処理を施した方向)の熱収縮率は、15%以上が好ましく、より好ましくは25〜80%、さらに好ましくは30〜70%である。熱収縮率が15%未満の場合には、ラベルを容器に熱で密着させる工程において、収縮が十分でないため、容器の形に追従困難となり、特に複雑な形状の容器に対して仕上がりが悪くなることがある。
【0075】
なお、本発明のシュリンクフィルム(シュリンク加工前)の90℃10秒(温水処理)における上記主配向方向と直交する方向の熱収縮率は、−5〜15%が好ましい。
【0076】
本発明のシュリンクフィルム(シュリンク加工前)の圧縮強度(厚み40μm:JIS P 8126)は、2N以上が好ましく、より好ましくは3.5N以上、さらに好ましくは5N以上である。なお、圧縮強度が2N未満の場合には、ラベルの腰が弱くなり、円筒状にしたシュリンクラベルを、容器に装着する工程でラベルが挫屈しやすくなる。
【0077】
本発明のシュリンクフィルムの透明度(透明性)(ヘイズ値:JIS K 7105、厚み40μm換算)(単位:%)は、10未満が好ましく、より好ましくは5.0未満、さらに好ましくは2.0未満である。ヘイズ値が10以上の場合には、シュリンクフィルムの内側(ラベルを容器に装着した時に容器側になる面側)に印刷を施し、フィルムを通して印刷を見せるシュリンクラベルの場合、製品とした際に、印刷が曇り、装飾性が低下することがある。ただし、ヘイズが10以上の場合であっても、フィルムを通して印刷を見せる上記用途以外の用途においては十分に使用可能である。
【0078】
[シュリンクラベル]
本発明のシュリンクフィルムを基材として、その少なくとも一方の面側に印刷層を設けることによりシュリンクラベルとして好ましく用いることができる。また、上記シュリンクラベルとしては、印刷層の他にも、保護層、アンカーコート層、プライマーコート層、接着剤層(感圧性、感熱性など)などの樹脂層、コーティング層を設けてもよく、さらに、不織布、紙等の層を設けてもよい。本発明のシュリンクラベルの具体的構成としは、例えば、印刷層/A/B/A、印刷層/A/B/A/印刷層、印刷層/A/C/B/C/A、印刷層/A/C/B/C/A/印刷層などの層構成が好ましく例示される。なお、本発明のシュリンクフィルムは、印刷層を設けない場合にも、それ自体でシュリンクラベル用途として用いることも可能である。
【0079】
本発明のシュリンクラベルは、少なくとも一方の表面に印刷層(例えば、商品名やイラスト、取り扱い注意事項等を表示した層)を有する。上記印刷層は、印刷インキを塗布することにより形成する。塗布の方法は、生産性、加工性などの観点から、フィルム製膜後に公知慣用の印刷手法などを用いて塗布を行うオフラインコートによって設けることが好ましい。印刷手法としては、慣用の方法を用いることができるが、グラビア印刷またはフレキソ印刷が最も好ましい。印刷層の形成に用いられる印刷インキは、例えば顔料、バインダー樹脂、溶剤、その他の添加剤等からなる。上記バインダー樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系、ウレタン系、ポリアミド系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系、セルロース系、ニトロセルロース系などの樹脂を単独あるいは併用して使用できる。上記顔料としては、酸化チタン(二酸化チタン)等の白顔料、銅フタロシアニンブルー等の藍顔料、カーボンブラック、アルミフレーク、雲母(マイカ)、その他着色顔料等が用途に合わせて選択、使用できる。また、顔料として、その他にも、光沢調製などの目的で、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、アクリルビーズ等の体質顔料も使用できる。上記溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒や水など通常用いられるものを使用できる。
【0080】
上記印刷層は、特に限定されないが、可視光、紫外線、電子線などの活性エネルギー線硬化性の樹脂層であってもよい。過剰の熱によるフィルムの変形を防ぐ場合などに有効である。例えば、紫外線による硬化の場合、紫外線(UV)ランプ、紫外線LEDや紫外線レーザーなどを用い、波長300〜460nmの紫外線(又は近紫外線)で、照射強度150〜1000mJ/cm2、照射時間0.1〜3秒程度の条件で行うことができる。活性エネルギー線硬化性の印刷層である場合には、印刷インキには、上記の他に、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤などの光重合開始剤を添加することが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、アセトフェノン系、アシルフォスフィン系重合開始剤等が挙げられ、光カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、シラノール/アルミニウム錯体、スルホン酸エステル、イミドスルホネートなどが挙げられる。これら光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、印刷インキ全体に対して、0.5〜7重量%が好ましく、より好ましくは1〜5重量%である。さらに、印刷インキには、生産効率を高める観点から、必要に応じて、増感剤を添加してもよい。その場合の増感剤は、例えば、脂肪族、芳香族アミン、ピペリジンなど窒素を環に含むアミンなどのアミン系増感剤;アリル系、o−トリルチオ尿素などの尿素系増感剤;ナトリウムジエチルジチオホスフェートなどのイオウ化合物系増感剤;アントラセン系増感剤;N,N−ジ置換−p−アミノベンゾニトリル系化合物などのニトリル系増感剤;トリ−n−ブチルホスフィンなどのリン化合物系増感剤;N−ニトロソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物などの窒素化合物系増感剤;四塩化炭素などの塩素化合物系増感剤などが挙げられる。増感剤の含有量としては、特に限定されないが、印刷インキ全体に対して、0.1〜5重量%が好ましく、特に好ましくは0.3〜3重量%である。
【0081】
上記印刷層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1〜10μm程度である。厚みが0.1μm未満である場合には、印刷層を均一に設けることが困難である場合があり、部分的な「かすれ」が起こったりして、装飾性が損なわれたり、デザイン通りの印刷が困難となる場合がある。また、厚みが10μmを超える場合には、印刷インキを多量に消費するため、コストが高くなったり、均一に塗布することが困難となったり、印刷層がもろくなって、剥離しやすくなったりする。また、印刷層の剛性が高くなり、シュリンク加工時にフィルムの収縮に追従しにくくなる場合がある。
【0082】
[加工]
本発明のシュリンクラベルは、例えば、ラベル両端を溶剤や接着剤でシールし筒状にして容器に装着されるタイプの筒状ラベルや、ラベルの一端を容器に貼り付け、ラベルを巻き回した後、他端を一端に重ね合わせて筒状にする巻き付け方式のラベルとして好適に用いることができる。中でも、筒状シュリンクラベルとして好ましく用いられる。この筒状ラベルのセンターシール強度は、2N/15mm以上が好ましい。シール強度が2N/15mm未満の場合には、加工工程や製品化した後に、シール部分がはがれて、生産性を低下させたり、ラベル脱落の原因となる場合がある。
【0083】
上記筒状ラベルの製造方法は、特に限定されないが、例えば下記の通りである。本発明のシュリンクラベルは、長尺状のシュリンクフィルムに印刷した後、所定の幅にスリットして、ロール状に巻回し、ラベルが長尺方向に複数個連なったロール状物とされた後、加工に用いられる。これらロール状物のひとつを繰り出しながら、フィルムの主延伸方向(例えば幅方向)が円周方向となるように円筒状に成形する。具体的には、長尺状のシュリンクラベルを筒状に形成し、ラベルの一方の側縁部に、長手方向に帯状に約2〜4mm幅で、テトラヒドロフラン(THF)などの溶剤や接着剤(以下溶剤等)を内面に塗布し、筒状に丸めて、該溶剤等塗布部を、他方の側縁部から5〜10mmの位置に重ね合わせて、他方の側縁部外面に接着(センターシール)し、長尺筒状のラベル連続体(長尺筒状シュリンクラベル)を得る。なお、ラベル切除用のミシン目を設ける場合は、所定の長さ及びピッチのミシン目を長手方向に形成する。ミシン目は慣用の方法(例えば、周囲に切断部と非切断部とが繰り返し形成された円板状の刃物を押し当てる方法やレーザーを用いる方法等)により施すことができる。ミシン目を施す工程段階は、印刷工程の後や、筒状加工工程の前後など、適宜選択することができる。
【0084】
本発明のシュリンクラベルは、容器に装着し、ラベル付き容器として用いられる。このような容器には、例えば、PETボトルなどのソフトドリンク用ボトル、宅配用牛乳瓶、調味料などの食品用容器、アルコール飲料用ボトル、医薬品容器、洗剤、スプレーなどの化学製品の容器、カップ麺容器などが含まれる。容器の形状としても、円筒状、角形のボトルや、カップタイプなど様々な形状が含まれる。また、容器の材質としても、PETなどのプラスチック製、ガラス製、金属製などが含まれる。
【0085】
上記ラベル付き容器は、長尺筒状シュリンクラベルを切断後、所定の容器に装着し、加熱処理によって、ラベルを収縮、容器に追従密着させることによって作製できる。具体的には、ロール状にされた上記長尺筒状シュリンクラベルを、自動ラベル装着装置(シュリンクラベラー)に供給し、必要な長さに切断し、筒状シュリンクラベルとした後、該筒状シュリンクラベルを内容物を充填した容器に外嵌し、所定温度の熱風トンネルやスチームトンネルを通過させたり、赤外線等の輻射熱で加熱して熱収縮させ、容器に密着させて、ラベル付き容器を得る。上記加熱処理としては、例えば、80〜100℃のスチームで処理する(スチームおよび湯気が充満した加熱トンネルを通過させる)ことなどが例示される。
【0086】
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
(1)層間強度(シュリンク加工前)
シュリンクフィルムを用いて評価を行う。
長手方向(シュリンクフィルムの製膜方向)に15mmの幅で、幅方向(長手方向と直交方向)に長い短冊状のサンプル(200mm(シュリンクフィルム幅方向)×15mm(シュリンクフィルム長手方向))を採取した。以下で、サンプル幅方向とはシュリンクフィルムの長手方向をさす。
サンプルの長辺方向(シュリンクフィルムの幅方向)を測定方向として、下記の条件でT型剥離試験(JIS K 6854−3に準拠)を行い、層間の剥離荷重を測定する。
剥離荷重の平均値をもって層間強度(N/15mm)とし、以下の基準で評価する。
1N/15mm以上 : ○(良好な層間強度)
1N/15mm未満 : ×(層間強度が劣る)
(測定条件)
測定装置 : 島津製作所(株)製オートグラフ(AG−IS:ロードセルタイプ500N)
温湿度 : 温度23±2℃、湿度50±5%RH(JIS K 7000標準温度状態2級)
初期チャック間隔 : 40mm
サンプル幅 : 15mm
試験回数 : 3回
引張速度 : 200mm/分
前半削除範囲 : 50mm
感度 : 1
なお、上記層間強度は、積層構造の中で最も層間強度の弱い層間について評価するものとする。
【0087】
(2)層間強度(シュリンク加工後)
得られたシュリンクフィルムを、治具を用いて、85℃にて30%フィルムを収縮させた後に評価に用いる。
上記サンプルを用いて、上記(1)の評価と同様の評価方法で層間強度を測定し、同様の基準で評価する。
【0088】
(3)熱収縮率(90℃10秒)
シュリンクフィルム(シュリンク加工前)から、測定方向(主配向方向:基材フィルムの長手方向または幅方向)に長さ120mm(標線間隔100mm)、サンプルの幅5mmの長方形のサンプル片を作製する。
サンプル片を90℃の温水中で、10秒熱処理(無荷重下)し、熱処理前後の標線間隔の差を読み取り、以下の計算式で熱収縮率を算出する。
収縮率(%) = (L0−L1)/L0×100
0 : 熱処理前のサンプルの寸法(主配向方向:長手方向又は幅方向)
1 : 熱処理後のサンプルの寸法(L0と同じ方向)
【0089】
(4)圧縮強度(リングクラッシュ法)
シュリンクフィルム(シュリンク加工前)を用いて評価を行う。
JIS P 8126に準拠して、シュリンクラベルの圧縮強度を、以下の条件で、測定する。測定方向は長手方向である。
測定装置 : 島津製作所(株)製オートグラフ(AGS−50G:ロードセルタイプ500N)
サンプルサイズ : 15mm(長手方向)×152.4mm(幅方向)
試験回数: 5回
【0090】
(5)透明度(ヘイズ値)
シュリンクフィルム(厚み40μm)を用いて、JIS K 7105に準じて測定を行う。なお、厚みが異なるフィルムの場合には40μm厚みに換算すればよい。
【実施例】
【0091】
以下に、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0092】
実施例1
樹脂組成物Aとして、非晶性芳香族ポリエステル樹脂(Eastman Chemical社製、商品名「Embrace」)100重量部と、可塑剤としてフタル酸ジオクチル(DOP)20重量部の混合樹脂を用いた。
また、樹脂組成物Bとして、SBS(旭化成(株)製、商品名「アサフレックス 830」)60重量部と、SBIS(旭化成(株)製、商品名「アサフレックス i−100」)40重量部の混合樹脂を用いた。
さらに、樹脂組成物Cとして、無水マレイン酸変性した水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成(株)製、商品名「タフテック M」)100重量部を用いた。
210℃に加熱した押出機aに上記樹脂組成物A、210℃に加熱した押出機bに上記樹脂組成物B、210℃に加熱した押出機cには上記樹脂組成物Cを投入した。上記3台の押出機を用いて、溶融押出を行った。押出機bから押出される樹脂が中心層、押出機cから押出される樹脂が中心層の両側となり、押出機aから押出される樹脂がさらにその両側となるように合流ブロックを用いて合流させ、Tダイ(スリット間隔0.7mm)より押出した後、25℃に冷却したキャスティングドラム上で急冷して、3種5層積層未延伸フィルムを得た。
次に、厚みを調整した未延伸フィルムを、幅方向に90℃で5.6倍延伸することにより、主に1軸方向に収縮する2軸延伸フィルムを得た。製膜速度を調節して、フィルムの総厚みが50μm(層厚み比:(2/1/8/1/2)のシュリンクフィルムを得た。
また、得られたシュリンクフィルムに、大日本インキ工業(株)製「ファインラップNTV」をグラビア印刷し、5μmの厚みで印刷層を形成し、シュリンクラベルを得た。
得られたシュリンクフィルムおよびシュリンクラベルは、90℃の熱水中に10秒浸漬して熱収縮させて層間剥離の有無を確認した。フィルム及びラベルは共に、層間剥離のない層間密着性に優れたものであった。
【0093】
実施例2
A層に用いる可塑剤をアジピン酸ジオクチル(DOA)に変更した以外は、実施例1と全く同様にして、シュリンクフィルムおよびシュリンクラベルを得た。
得られたシュリンクフィルムおよびシュリンクラベルは、90℃の熱水中に10秒浸漬して熱収縮させて層間剥離の有無を確認した。フィルム及びラベルは共に、層間剥離のない層間密着性に優れたものであった。
【0094】
比較例1
A層に可塑剤を用いなかった以外は、実施例1と全く同様にして、シュリンクフィルムおよびシュリンクラベルを得た。
得られたシュリンクフィルムおよびシュリンクラベルは、90℃の熱水中に10秒浸漬して熱収縮させて層間剥離の有無を確認した。フィルム及びラベルは共に、層間剥離があり層間密着性の劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶性芳香族ポリエステル系樹脂を主成分とし、非晶性芳香族ポリエステル系樹脂100重量部に対して可塑剤0.5〜20重量部を含有する樹脂組成物から構成される表面層(A層)、および、スチレン−共役ジエン共重合体及び/又はその水添物を主成分とする樹脂組成物から構成される中心層(B層)が、A層/B層/A層の順に積層された少なくとも3層積層構造を有することを特徴とするシュリンクフィルム。
【請求項2】
さらに、接着性樹脂層(C層)を有し、A層/C層/B層/C層/A層の順に積層された少なくとも5層積層構造を有する請求項1に記載のシュリンクフィルム。
【請求項3】
前記可塑剤がフタル酸エステル、アジピン酸エステル、ポリエステル系可塑剤から選ばれた少なくとも1つである請求項1または2に記載のシュリンクフィルム。
【請求項4】
前記C層が、極性基を有するスチレン系樹脂より構成される請求項1〜3のいずれかの項に記載のシュリンクフィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの項に記載のシュリンクフィルムの少なくとも一方の面側に印刷層を設けたシュリンクラベル。

【公開番号】特開2009−178887(P2009−178887A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18660(P2008−18660)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】