説明

シランブレンド

本発明は、少なくとも2種のフルオロシランと少なくとも1種のアミノシランとを含む組成物、該フルオロシランと該アミノシランとの縮合生成物、およびそれらから作製される表面保護剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2種の異なるフルオロシランと少なくとも1種のアミノシランとを含む組成物、該フルオロシランと該アミノシランとの縮合生成物、およびそれらから作製される表面保護剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シラン類は、大理石、砂岩、コンクリート、花こう岩、砂質石灰石、テラコッタ、クリンカー、割り肌ブロック(split-face block)またはレンガなどの基材に対する防食剤、落書き防止剤および撥水剤として建造物保護に用いられている。そのような適用のためには、処理製品は好ましくは水ベースで、僅かに酸性であることが必要である。
【0003】
フッ素化シラン類は、同時に存在する撥水性および撥油性に関して最高の性能を示す。そのようなフッ素化シラン類は、今までのところいくつかの欠点を有する。まず第一に、20℃で30を超える誘電定数を有する溶剤と安定な溶液、エマルジョンまたは分散液を容易に形成しない。第二に、建造物保護に用いられるフッ素化シラン類はペルフルオロオクタン酸(PFOA)を放出することがあり、それが動物・人組織生体内に存続・蓄積し、かつ肝臓に蓄積することが分かった。そこでは、甲状腺ホルモン変換について必須であるセレンタンパク質、グルタチオン・ペルオキシダーゼを阻害し、それによりガンを引き起こす(Occup Environ Med 60(10):722-9(2003);Int J Cancer 78(4):491-5(1998))。
【0004】
米国特許第6,054,601号は、水媒体中で反応する長鎖過フッ素化シランおよびアミノシランの組成物を開示する。
【0005】
欧州特許出願公開第0738771号は、長鎖過フッ素化シランおよびアミノシランを含む水性組成物を開示する。90%未満の水を含む組成物は貯蔵不安定性を有すると記載されている。
【0006】
米国特許第5,442,011号は、水媒体中で反応する長鎖過フッ素化シランおよびアミノシランの組成物を開示する。
【0007】
国際公開第2007/048745号は、フルオロシランおよびアミノシランの混合物を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の根底にある課題は、高誘電定数を有する溶剤系で提供可能な、良好な撥水・撥油性をもたらす安定な、非毒性表面保護剤を最終的に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の実施態様では、本発明の根底にある課題は、
(a)少なくとも2種の異なるフルオロシランであって、それぞれが同じ一般式I
tf−SiX3 (式I)
[式中、Xは、アルコキシ、ハライド、オキシム、カルボキシル、フェノキシドおよびポリエーテルの群から選ばれ、
tfは一般式IIまたはIII
−Y−Rf (式II)または
−Y−(SiR12O)xSiR12−Y−Rf (式III)
(式中、Yは、−(CH2n−、−CO2−、−O−、−CONH−、−Ph−、−SO2−および−SO2NH−の群から選ばれる二価有機部分であり、式中nは1〜30の整数であり、
fは、C2〜C7の直鎖状または分岐状ペルフルオロアルキレン基であり、ここで該フルオロシランは、Rf中の炭素原子数で少なくとも2個異なり、
1およびR2は、独立して一価有機残基から選ばれ、
xは0〜5の整数である)
を有する直鎖状、分岐状または環状残基である]
を有するフルオロシランと、
(b)一般式IV
a−SiR345 (式IV)
(式中、Raは、1〜7個の炭素原子および少なくとも1個の第一級、第二級、第三級または第四級アミノ基、好ましくはプロトン化されたアミノ基を含む直鎖状、分岐状または環状アルキル残基であり、
3およびR4は、独立して−Ra、−OR6および/または−R6であり、
5は、−OR6であり、かつ
6は1〜3個の炭素原子を含む直鎖状、分岐状または環状アルキル残基である)
を有する少なくとも1種のアミノシランと
を含む反応性組成物、特に、それらからなる反応性組成物により解決される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】異なるランク付けに対する染みの例を示す。
【0011】
本発明の意味でのプロトン化とは必ずしも窒素原子上の正電荷を意味していない。それは、少なくとも1個の水素原子が窒素原子に結合していることを意味する。
【0012】
2種の異なるフルオロシランは、炭素原子数のより少ないRf基を有するフルオロシランと炭素原子数のより多いRf基を有するフルオロシランとの重量比が0.7〜1.3の間で存在することが有利である。意外にも、フルオロシランのそのような混合物が予想よりも非常により良好な疎水性および撥油性を生じることが分かった。
【0013】
今まで、例えばC613であるRfを有する本発明によるフルオロシランが、C49であるRfを有する本発明によるフルオロシランよりもずっと良く機能することが知られていた。しかしながら、偶数の炭素原子を有するフルオロシランは、炭素鎖が長くなるにつれて高価になることもまた知られている。フルオロシラン混合物の疎水性・撥油性の性能に関しては、その性能は異なるシランの重量比に依存して直線的に挙動することが予想されるはずである。
【0014】
意外にも、発明者らは、例えばRfがC613である本発明によるフルオロシランとRfがC49である本発明によるフルオロシランとの等重量の混合物でさえ、RfがC613である本発明によるフルオロシラン単独と同じくらい良好に、かつ両シランの予想される性能水準の中間よりもずっと良好に機能することを見出した。これらの発見は「実施例」の項で実施、報告された数々の実験で確認された。
【0015】
好ましくは、Rfは直鎖状ペルフルオロアルキレン基であり、かつそれから独立して、少なくとも2種の異なるシランについてそれぞれC4の基およびC6の基である。
【0016】
本発明の組成物は、好ましくは非水系である。本発明の意味での「非水系」とは追加の水が一切加えられないという意味である。これは、出発材料中に含まれる通常の微量水を排除していないが、反応系への水の添加を排除している。特許請求は追加の水を含まない非希釈組成物に関連する。これは後の段階での水の添加を排除していない。これには、先行技術の組成物を上回る重量の軽減および取り扱いの容易性の長所がある。それら公知の組成物は水の希釈なしには得ることができないからである。さらに、意外にも製品の有効期間が水の添加なしにずっと良好であることが見出された。
【0017】
好ましくは、組成物は1重量%未満の水、特に好ましくは0.1重量%未満の水を含む。これは、水を含む組成物が非加水分解性縮合生成物および表面保護剤をもたらすことを見出したので、特に利点である。欧州特許出願公開第0738771号の発見と比較すると、欧州特許出願公開第0738771号の組成物のような、フッ素化鎖中少なくとも8個の炭素原子を有するフルオロシランの安定な水溶液と比較して、本発明の非水系組成物は、低水含量のために、8個未満の炭素原子の炭素鎖長を有するフッ素化アルキルシランで、高い安定性と製品有効期間を示すことが意外にも見いだされた。
【0018】
5およびR6は好ましくは同じか異なっている。そのような基の例としては、C1〜C30の直鎖状または分岐状アルキレン基、芳香族含有基、アミノアルキル含有基、およびフルオロアルキル含有基である。
【0019】
Xは、フッ素、臭素、塩素およびヨウ素の群から選ばれるハライド、アルコキシドOR7(式中、R7は、C1〜C22の直鎖状もしくは分岐状アルキレン基である)、オキシムR89C=N−O(式中、R8およびR9は、独立してC1〜C30の直鎖状もしくは分岐状アルキレン基であり、R8およびR9は、同じでも異なっていてもよい)、カルボキシル残基R10CO2(式中、R10は、C1〜C30の直鎖状もしくは分岐状アルキレン基である)、フェノキシドM−Ph−O−(式中、Mは、水素もしくは一価有機基である)、または1個以上の繰返し構造単位(CH2CH2O)qもしくは(CH3CHCH2O)q(式中、qは1〜100の範囲の値である)を含有するポリアルキレンオキシドの群から選ばれ、C1〜C30の直鎖状もしくは分岐状アルキレン基で末端化されたポリエーテルであることが有利である。
【0020】
好ましくは、Yは、−(CH2o−、−CO2−、−(CH2o−CO2−(CH2m−、−(CH2o−O−(CH2m、−(CH2o−CONH−(CH2m、−(CH2o−Ph−(CH2m、−(CH2o−SO2−(CH2m、−(CH2o−SO2NH−(CH2m、−SO2−O−、−SO2NH−、−CH2=CH−、および−CH2=CH−(CH2o−(式中、oは1〜30の範囲の数であり、mは0〜30の範囲の数であり、特にここで二価有機基がさらに分岐状アルキレン基を含んでもよい)の群から選ばれる部分である。
【0021】
Y−Rfは、好ましくは出発オレフィンの単位を含み、好ましくは
(CH22f、CH2=CH−Rf、(CH26f、CH2=CH(CH24f、(CH23O(CH22f、CH2=CHCH2O(CH22f、(CH210CO2(CH22f、CH2=CH(CH28CO2(CH22f、(CH2)NHCORfおよびCH2=CHCH2NHCORfの群から選ばれる残基である。
【0022】
fは、C2〜C7の直鎖状または分岐状ペルフルオロアルキレン基であり、特にCF3CF2、CF3(CF23−、(CF32CF−、C49−もしくはC613−の群から選ばれる。好ましくはRfは3〜7個の炭素原子を含む。
【0023】
本発明は、Rfが各フルオロシランでそれぞれ4個および6個の炭素原子を含むときが、得られる表面保護剤がPFOAを間違いなく放出しないこと、また撥油性がその範囲で最善であることが分かったことから、特に有益である。
【0024】
好ましくは、組成物において式IのRf基と式IVに存在するアミノ基とのモル比が2:1〜6:1の範囲、特に2.5:1〜4:1の範囲である。そのようなモル比では、20℃で測定された誘電定数が少なくとも30である溶剤の溶液で特に安定であることが分かった。
【0025】
aは、好ましくは該フルオロシランの最も長鎖残基と同じくらいの炭素原子数を少なくとも含む。それは最も安定な溶液、エマルジョンまたは分散液を生じることが分かっているからである。
【0026】
好ましくは、残基Xの多くても1個、特に残基Xのいずれも、Rfもしくは−CH2−CH2−Rfではなく、および/またはR3、R4およびR5の多くても1個、特にR3、R4およびR5のいずれも、Raではない。処理された表面材料の高疎水性が処理溶液、エマルジョンもしくは分散液の良好な安定性とともに達成し得るからである。
【0027】
該フルオロシランは有利には40〜75重量%の範囲で組成物中に存在し得る。また該アミノシランは有利には10〜30重量%の範囲で組成物中に存在し得る。
【0028】
好ましくは、本発明による組成物は、少なくとも1種の酸を、1〜90重量%の範囲、より好ましくは20〜50重量%の範囲、最も好ましくは30〜40重量%の範囲で含む。
【0029】
本発明による組成物は、単一の溶剤または溶剤の混合物を含む追加の溶剤系を含み得る。ここで溶剤系は20℃で測定した誘電定数が少なくとも30である。具体的には、アルコール、アセトン、水、エーテルもしくはN−メチルホルムアミドの群から選ばれる溶剤または溶剤混合物が好都合である。該溶剤系は好ましくは4〜20重量%の範囲で組成物中に存在し得る。
【0030】
X、R3、R4および/またはR5は、好ましくはアルコキシ基、特にエトキシまたはメトキシ基である。得られる縮合生成物が該フルオロシランと該アミノシランとの間の良好な架橋により高い安定性を示すからである。
【0031】
該アミノ基はその残基が環状でないときは好ましくは末端基である。すなわち、アミノ基は他の炭素原子に一つの結合しか有さない第1級炭素原子に結合している。アミノ基は好ましくは−NH2であり、または特に1個もしくは2個の−CH2CH2NH2、フェニル基もしくはシクロヘキシル基で置換されてもよい。好ましくは、アミノ基は直鎖アルキル鎖に結合している。これらの特性が特に安定な溶液、エマルジョンまたは分散液をもたらす。
【0032】
本発明による該アミノシランは、好ましくは完全体の分子で、4〜17個の炭素原子、1〜4個の窒素原子、2〜5個の酸素原子、および13〜37個の水素原子を含む。その分子量が170〜270g/モルの範囲であるのに対して、その沸点は好ましくは100〜280℃の範囲にある。その引火点は好ましくは70〜120℃の範囲である。そのようなアミノシランは、通常の取扱い中火災の原因となるものを有さないので、有利であり、同時にフルオロシランとの組合せにより得られるコーティングの最適な疎水性をもたらす。
【0033】
さらなる実施態様では、本発明の根底にある課題は、本発明の組成物による該フルオロシランおよび該アミノシランそれぞれを組み合わせ、続いて酸処理を行うことによって、反応性組成物を製造する方法により解決される。プロトン化の反応時間は、1〜20分の範囲、さらに好ましくは5〜15分の範囲である。反応温度は好ましくは40〜80℃の範囲、さらに好ましくは60〜75℃の範囲である。
【0034】
さらなる実施態様では、本発明の根底にある課題は、一般式IIおよび/またはIIIで定義される残基を有する一般式Iのフルオロシランと一般式IVのアミノシラン(マスターバッチ)との縮合生成物(該フルオロシランおよび該アミノシランの混合物を触媒的に促進された処理で、特に酸処理により得られる)により解決される。
【0035】
好ましくは、この縮合生成物は非水系である。好ましくは、縮合生成物は、1重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満の水を含む化学系で存在する。意外にも、非水系反応生成物だけが後の段階(例えば、表面保護剤の一部として)で水加水分解性であることが分かった。また、そのような反応生成物が水系で生産された縮合生成物と比較してずっとより安定であることが分かった。
【0036】
好ましくは、該縮合生成物は透明で、最大で10%のヘーズ値を示す。ヘーズはASTM D 1003(溶液の10mm厚サンプル、すなわちキュベットを用いて)に従って測定され得る。
【0037】
1種以上のフルオロシランがさらなる親水性シランの存在下で縮合反応するなら特に有利である。1種以上のフルオロシランが追加水の非存在下、つまり非水系で縮合反応するならまた特に有利である。好ましくは、この親水性シランは少なくとも5の誘電定数を有する極性物質である。好ましくはこのシランはエポキシド基などの一価有機基Zも含み得る。該フルオロシランと該親水性シランとのモル比は好ましくは20〜1の範囲である。該親水性シランは、一般式
1112MeSi−Y−Z (式VI)
(式中、R11およびR12は、独立してR3またはMeの群から選ばれ、
Zは極性一価有機基である)
に一致する。
【0038】
本発明による該縮合生成物は、互いに架橋されたフルオロシランおよびアミノシランのため化学環境に対し高い安定性を示し、同時にその溶液、エマルジョンまたは分散液の高い安定性をもたらし、さらにそのような縮合生成物で処理された高い疎水性および撥油性表面材料を供給する。
【0039】
好ましくは、用いる酸は3〜7の範囲、特に3.5〜5.5の範囲のpKa値を示す。pKa値が低すぎると、架橋度が非常に高くなり、大きすぎる粒径の不溶性または不分散性の粒子が形成される。pKa値が高すぎると、架橋度が安定な溶液、エマルジョンまたは分散液を形成するに不十分である。
【0040】
該酸は、好ましくはホウ酸、アセト酢酸、クエン酸、クロトン酸、ギ酸、フマル酸、グリセリン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、および/または酢酸から選ばれるルイス酸またはブレンステッド酸である。
【0041】
該縮合生成物の形状は好ましくは粒子、特に1〜1000nmの範囲、特に5〜100nmの範囲の中位の粒径を有する粒子である。縮合生成物の単分散性は好ましくは1〜15nmの範囲である。粒径が大きすぎると被覆される基材への浸透が悪くなる。また、例えば好ましい粒子よりも大きいのを含有する表面保護剤の形態での分散の安定性は劣っている。
【0042】
該縮合生成物は好ましくは溶剤系内で存在する。この溶剤系は好ましくは4〜5の範囲のpHを示す。このpHは好ましくはルイス酸またはブレンステッド酸の添加により達成される。
【0043】
さらなる実施態様では、本発明の根底にある課題は、少なくとも本発明により酸を組成物に添加する工程を含むことを特徴とする、本発明による縮合生成物を得る方法により解決される。
【0044】
好ましくは、この方法は非水系プロセス、すなわち追加水を一切加えない方法である。
【0045】
好ましくは、本発明による組成物に添加される酸の重量比は1:1〜1:4の範囲、具体的には1:1.5〜1:2.5の範囲である。発熱架橋反応を考慮して、さらなる加熱は、組成物中に存在する敏感な成分の劣化を防ぐために酸の添加中または前に加えられない。
【0046】
さらなる実施態様では、本発明の根底にある課題は、式IIおよび/またはIIIで規定される残基を有する式Iによるフルオロシランの製造方法により解決される。それは不飽和炭素−炭素または炭素−酸素結合のヒドロシリル化の工程およびヒドロシリル化後のケイ素原子に結合している残基のアルコキシ化置換に進むことにより特徴付けられる。
【0047】
さらなる実施態様では、本発明の根底にある課題は、本発明による当該組成物および/または本発明による縮合生成物を含み、さらに表面保護剤用の通常の添加剤を含む表面保護剤により解決される。
【0048】
高い極性溶剤系に適するフルオロシランを含む表面保護剤が初めて供給される。
【0049】
好ましくは、本発明による表面保護剤は20〜40重量%の範囲で活性成分を含む。活性成分は好ましくは本発明による縮合生成物である。
【0050】
本発明による該表面保護剤は好ましくは溶剤または溶剤の混合物を含み、その溶剤または複数の混合溶剤は20℃で少なくとも30の誘電定数を有する。アルコール、アセトン、水、エーテルもしくはN−メチルホルムアミドの群から選ばれる溶剤または溶剤混合物であるのが特に有利である。そのような高誘電定数溶剤系が、例えばコンクリートまたは石灰岩のような最大の極性を有する表面材料に吸収および浸透することが分かった。好ましくは、その溶剤または溶剤の混合物は60〜80重量%の範囲の量で表面保護剤中に存在する。
【0051】
この目的のために、本発明による表面保護剤は20℃で測定される誘電定数が最高29である溶剤を多くても5重量%含み、同時に20℃で測定される誘電定数が少なくとも30の溶剤を少なくとも10重量%、特に少なくとも90重量%含む。
【0052】
該表面保護剤は、好ましくは、含浸される表面材料の疎水性および撥油性の改善とともに表面材料への良好な接着性のために、シリコーン/シロキサン、アクリル化合物、メラミン誘導体およびワックスの群から選ばれる化合物またはこれらの化合物の混合物などの公知の添加剤を0.1〜10重量%を含む。
【0053】
好ましくは、本発明による表面保護剤は、例えば砂岩、石灰岩またはコンクリートなどの基材との最善の相溶性や効率性を有するために3〜6.5の範囲のpH値を示す。
【0054】
本発明は、添加剤がアクリル、ワックス、シリコーン、増量剤、およびポリウレタンの群から選ばれるとき、特に有利である。好ましくは、添加剤は性能全体を改善するために0.5〜5重量%の量で存在する。
【0055】
該表面保護剤は、好ましくは、含浸された表面材料の最善の疎水性および撥油性のために、本発明による組成物および/または縮合生成物の希釈された溶液、エマルジョン、または分散液を含む。さらに同時に安定な溶液、エマルジョンまたは分散液として表面保護剤を提供する。好ましくは、該表面保護剤は、フッ素化化合物、すなわち該フルオロシランもしくはそのマスターバッチ、または本発明による組成物もしくは縮合生成物を、0.1〜15、好ましくは1〜7重量%の量で含む。
【0056】
本発明の意味での安定な溶液、エマルジョンまたは分散液とは、室温、標準圧力で7日間、好ましくは5週間(有効期間)保存中に著しい沈殿または相分離を示さない溶液、エマルジョンまたは分散液をさす。
【0057】
さらなる実施態様では、本発明の根底にある課題は、当該組成物または縮合生成物を、20℃で測定される誘電定数が少なくとも30である溶剤系および追加添加物と混合する工程を少なくとも含む、本発明による表面保護剤を得る方法により解決される。
【0058】
最後の実施態様では、本発明の根底にある課題は、本発明による当該表面保護剤で処理された表面材料により解決される。
【0059】
当該表面材料は、好ましくは天然石、大理石、砂岩、コンクリート、花こう岩、砂質石灰岩、テラコッタ、クリンカー、割り肌ブロック(split-face block)またはれんがの群から選ばれる。
【0060】
本発明による組成物は、天然もしくは人造石、壁などの装飾的要素、家庭用品、織布、不織布もしくはカーペットなどの繊維材料、皮革、プラスチック、ガラス、金属(例えば、離型コーティング)、セラミック、木材、または紙へのコーティング(例えば、耐油、食物剥離、洗浄容易、防染み、撥油または撥水効果を有する)用に用いられ得る。本発明による表面保護剤は建造物保護剤として特に有用である。
【0061】
処理された表面材料の撥油性および疎水性は接触角測定を用いて評価される。処理された表面材料上での空気に対する水の接触角が少なくとも100°であるのに対して、処理された表面材料上での空気に対する亜麻仁油の接触角は少なくとも50°である。接触角は、室温、標準圧力で、DSA 100(Kruess GmbH)にて0.5mlの滴容積の液滴測定を用いて、測定し得る。
【実施例】
【0062】
略称:
FTS=3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン(Rf=C613
3958=ノナフルオロヘキシル−1,1,2,2,−H−トリメトキシシラン(Rf=C49
AMMO=3−アミノプロピルトリメトキシシラン
HAC=酢酸(100% 氷酢酸)
B2858=へプタフルオロイソヘキシル−1,1,2,2,3,3−H−トリメトキシシラン
FPM938=48重量%の3958、16重量%のAMMOおよび36重量%のHACを含む
BPS939=48重量%のFTS、16重量%のAMMOおよび36重量%のHAC
【0063】
FPM938、BPS939およびそれらの混合物の異なる10バッチがそれらの疎水性および撥油性性能に関して比較される。
【0064】
一般的指針として、前記バッチはおおよそ、94.9gの脱塩水、2.5gのフルオロシラン、1.3gの真珠岩および1.3gのPlextolからなる。
【0065】
真珠岩は、種々の供給元から入手可能であり、火山ガラスである。
【0066】
Plextolは、熱可塑性アクリルポリマーの水系懸濁液である。
【0067】
以下の表はシランの異なるバッチの組成を示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
灰砂れんがのコーティングについて、それらをまずほこりを払い落す。れんが上に三つに均等に分割されたエリア(8cm×11cm)を決める。各れんがに、BPS339バッチ、FPM338バッチおよび混合バッチを塗布する。各バッチについて、2個のれんがを同じバッチで塗布する。各バッチはれんが上に2回塗布する。1回の塗布の間に、4.2g〜7.2gの量が塗装用はけを用いて塗布される。5分後に2回目の塗布で、0.9g〜3.0gの量が塗装用はけでれんが上に塗布される。
【0072】
以下の表は実験を説明する。欄「数字」は各バッチの2個の異なるれんがを命名する。下記の欄は、1回目及び2回目の塗布バッチの重量を表示する2個の異なる重量を常に含む。
【0073】
【表4】

【0074】
室温で24時間保存後、性能試験を行った。
【0075】
水3滴およびひまわり油3滴を各れんが上の三つのエリアのそれぞれに置いた。5分後、布またはペーパータオルで滴を吸い上げて除去した。各滴の残りを次のようにランク付けした:
0 冠の目に見える染み、湿った外観
1 ほとんど冠のない目に見える染み、湿った外観
2 目に見える染み、冠のない
3 れんがの部分的変色
4 ほとんど変色のない
5 目に見える染みが一切ない
【0076】
異なるランク付けに対する染みの例を図1に示す。各染みのランク付けの合計を計算する。3滴は、水について達成可能な点最大15およびひまわり油について達成可能な点最大15を意味する。各バッチの総得点は水ランク付けおよび油ランク付けの合計である。
【0077】
以下がすべてのバッチの結果の表である。欄「数字」はれんがを意味する。表の以下のセルのそれぞれ三つの数字は各滴のランク付けを表す。
【0078】
【表5】

【0079】
以下の表は各バッチの最終得点を示す:
【0080】
【表6】

【0081】
この表から、混合は再現性よくBPS339単独と同じくらいであり、異なるシラン両方のおよそ1:1混合物から予想されるよりもずっと良好に機能することが見られ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも2種の異なるフルオロシランであって、それぞれが同じ一般式I
tf−SiX3 (式I)
[式中、Xは、アルコキシ、ハライド、オキシム、カルボキシル、フェノキシドおよびポリエーテルの群から選ばれ、
tfは一般式IIまたはIII
−Y−Rf (式II)または
−Y−(SiR12O)xSiR12−Y−Rf (式III)
(式中、Yは、−(CH2n−、−CO2−、−O−、−CONH−、−Ph−、−SO2−および−SO2NH−の群から選ばれる二価有機部分であり、式中nは1〜30の整数であり、
fは、C2〜C7の直鎖状または分岐状ペルフルオロアルキレン基であり、ここで該フルオロシランは、Rf中の炭素原子数で少なくとも2個異なり、
1およびR2は、独立して一価有機残基から選ばれ、
xは0〜5の整数である)
を有する直鎖状、分岐状または環状残基である]
を有するフルオロシランと、
(b)一般式IV
a−SiR345 (式IV)
(式中、Raは、1〜7個の炭素原子および少なくとも1個の第一級、第二級、第三級または第四級アミノ基、好ましくはプロトン化されたアミノ基を含む直鎖状、分岐状または環状アルキル残基であり、
3およびR4は、独立して−Ra、−OR6および/または−R6であり、
5は、−OR6であり、かつ
6は、1〜3個の炭素原子を含む直鎖状、分岐状または環状アルキル残基である)
を有する少なくとも1種のアミノシランと
を含む反応性組成物。
【請求項2】
前記2種の異なるフルオロシランが、炭素原子数の少ないRf基を有するフルオロシランと炭素原子数の多いRf基を有するフルオロシランとの重量比0.7〜1.3の間で、存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも2種の異なるシランについて、RfがそれぞれC4の基およびC6の基であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
Xは、
フッ素、臭素、塩素およびヨウ素の群から選ばれるハライド、
アルコキシドOR7(式中、R7は、C1〜C22の直鎖状もしくは分岐状アルキレン基である)、
オキシムR89C=N−O(式中、R8およびR9は、独立してC1〜C30の直鎖状もしくは分岐状アルキレン基であり、R8およびR9は、同じでも異なっていてもよい)、
カルボキシル残基R10CO2(式中、R10は、C1〜C30の直鎖状もしくは分岐状アルキレン基である)、
フェノキシドM−Ph−O−(式中、Mは、水素もしくは一価有機基である)、または
1個以上の繰返し構造単位(CH2CH2O)qもしくは(CH3CHCH2O)q(式中、qは1〜100の範囲の値である)を含有するポリアルキレンオキシドの群から選ばれ、C1〜C30の直鎖状もしくは分岐状アルキレン基で末端化されたポリエーテル
であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
Yが、−(CH2o−、−CO2−、−(CH2o−CO2−(CH2m−、−(CH2o−O−(CH2m、−(CH2o−CONH−(CH2m、−(CH2o−Ph−(CH2m、−(CH2o−SO2−(CH2m、−(CH2o−SO2NH−(CH2m、−SO2−O−、−SO2NH−、−CH2=CH−および−CH2=CH−(CH2o−(式中、oは1〜30の範囲の数であり、mは0〜30の範囲の数であり、特にここで二価有機基がさらに分岐状アルキレン基を含んでもよい)の群から選ばれる部分であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
fが、
(a)CF3CF2−、CF3(CF23−、C37−、(CF32CF−、C49−、C511−もしくはC613−の群から選ばれるか、または
(b)一般式Vの過フッ素化ポリエーテル
F−(CF2r−(OC36s−(OC24t−(OCF2u (式V)
(式中、rは1〜3の範囲の値であり、s、tおよびuは、独立して0〜200の範囲の整数である)
であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
1またはR2が、C1〜C30の直鎖状または分岐状アルキレン基、芳香族含有基、アミノアルキル含有基およびフルオロアルキル含有基の群から独立して選ばれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
X、R3、R4および/またはR5が、アルコキシ基、特にエトキシ基またはメトキシ基の群から独立して選ばれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
式IのRf基と式IVに存在するアミノ基とのモル比が2:1〜6:1の範囲、特に2.5:1〜4:1の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、一般式
1112MeSi−Y−Z (式VI)
(式中、R11およびR12は、R3またはMeの群から独立して選ばれ、Zは極性一価有機基である)
と一致する親水性シランをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、20〜50重量%の範囲、好ましくは30〜40重量%の範囲の酸を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の非水系組成物。
【請求項13】
請求項1にそれぞれ記載のフルオロシランおよびアミノシランを混合し、その後酸処理することにより反応性組成物を製造する方法。
【請求項14】
前記フルオロシランおよび/または前記アミノシランがプロトン化形態で反応することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
非水の反応系での請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
一般式IIおよび/またはIIIで定義される残基を有する一般式Iのフルオロシランと一般式IVのアミノシランとの混合物の触媒促進化処理により得られる、該フルオロシランと該アミノシランとの縮合生成物。
【請求項17】
前記酸が3〜7の範囲、特に4〜5.5の範囲のpKa値を示すことを特徴とする請求項16に記載の縮合生成物。
【請求項18】
請求項1に記載の組成物および/または請求項16に記載の縮合生成物を含み、表面保護剤用の通常の添加剤をさらに含む表面保護剤。
【請求項19】
前記表面保護剤が、シリコーン/シロキサン、アクリル化合物、メラミン誘導体およびワックスの群から選ばれる化合物または該化合物の混合物を0.5〜5重量%含むことを特徴とする請求項18に記載の表面保護剤。

【図1】
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【公表番号】特表2012−505937(P2012−505937A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531444(P2011−531444)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063054
【国際公開番号】WO2010/043529
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】