説明

シリコンウェーハのウェットエッチング方法及びウェットエッチング装置

【課題】一方の濃度を一定に保つことで他方の濃度が一定範囲で変化しても所定のエッチングレートを維持することができることに着目し、一方の酸のみを添加することにより、エッチングレートを一定に維持することが可能なシリコンウェーハのウェットエッチング方法及びウェットエッチング装置を提供すること。
【解決手段】所定のエッチング量を得るためのフッ酸の濃度を第1のフッ酸濃度とし、所定のエッチング量を得るための硝酸の濃度を第1の硝酸濃度としたとき、硝酸の濃度を第1の硝酸濃度よりも高く、フッ酸の濃度を第1のフッ酸濃度とした薬液をエッチングに使用するエッチングステップと、エッチングステップで使用した薬液に、第1のフッ酸濃度よりも高い濃度のフッ酸を添加する添加ステップとを有し、添加ステップの後の薬液を再びエッチングに使用することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体基板、液晶ガラス基板、磁気ディスク等の被処理基板(精密基板)を処理するためのシリコンウェーハのウェットエッチング方法及びウェットエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶ディスプレイ、磁気ディスク等の精密基板の製造において、精密基板は、その厚みの薄化及び表面の加工ダメージ除去のためのウェットエッチングの処理が施されている。これらエッチング処理は、精密基板に処理液を噴射することにより行われており、歩留向上やデバイスの信頼性向上のために不可欠である。近年、半導体ウェハの大口径化、微細化及び三次元化が進行しており、さらに高信頼性、高安定性及び高再現性のエッチング処理が求められている。
シリコンエッチング用の薬液には、酸性薬液(混酸:硝酸、フッ酸)又はアルカリ性薬液が使用される。
なお、シリコンエッチング用の薬液に酸性薬液(混酸)として、硝酸とフッ酸を用いることは従来から行われている(特許文献1、2、3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−20452号公報
【特許文献2】特開2009−182136号公報
【特許文献3】特開2006−86318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸性薬液、特に混酸は、エッチング速度は速いが、ユニフォーミティの改善と薬液を有効に使用するための再利用が必要となる。
混酸を用いたシリコンエッチングでは、シリコンをエッチングするために使用した混酸薬液中の硝酸及びフッ酸は、反応により消費され、硝酸及びフッ酸は、双方ともに濃度が低下する。このため、エッチングレートが低下する。
従って、エッチングに使用した混酸を再度利用する場合には、硝酸濃度及びフッ酸濃度が低下する。
また、枚葉スピンエッチング装置のように、中心部から混酸薬液を供給し、シリコンウェーハ中心部から外周部に薬液を移動させてエッチングする場合には、薬液が供給された中心部に比し、外周部では硝酸濃度及びフッ酸濃度は低下する。
また、エッチングレートを回復するためには、硝酸及びフッ酸を供給する必要があるが、双方の濃度管理を行うことは困難である。
【0005】
そこで本発明は、一方の濃度を一定に保つことで他方の濃度が一定範囲で変化しても所定のエッチングレートを維持することができることに着目し、一方の酸のみを添加することにより、エッチングレートを一定に維持することが可能なシリコンウェーハのウェットエッチング方法及びウェットエッチング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明のシリコンウェーハのウェットエッチング方法は、少なくともフッ酸及び硝酸を含む薬液を用いたシリコンウェーハのウェットエッチング方法であって、所定のエッチング量を得るための前記フッ酸の濃度を第1のフッ酸濃度とし、所定の前記エッチング量を得るための前記硝酸の濃度を第1の硝酸濃度としたとき、前記硝酸の濃度を前記第1の硝酸濃度よりも高く、前記フッ酸の濃度を第1のフッ酸濃度とした前記薬液をエッチングに使用するエッチングステップと、前記エッチングステップで使用した前記薬液に、前記第1のフッ酸濃度よりも高い濃度の前記フッ酸を添加する添加ステップとを有し、前記添加ステップの後の前記薬液を再び前記エッチングに使用することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載のシリコンウェーハのウェットエッチング方法において、前記薬液中の前記硝酸濃度を前記第1の硝酸濃度よりも20%以上高くしたことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載のシリコンウェーハのウェットエッチング方法において、前記添加ステップでは、前記硝酸を添加しないことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載のシリコンウェーハのウェットエッチング方法において、前記添加ステップでは、前記薬液中の前記フッ酸濃度を前記第1のフッ酸濃度とすることを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載のシリコンウェーハのウェットエッチング方法において、前記エッチングステップを第1のエッチングステップとし、前記添加ステップの後に行うエッチングを第2のエッチングステップとしたとき、前記シリコンウェーハの一部分のエッチングを前記第1のエッチングステップで行い、前記シリコンウェーハの他の部分のエッチングを前記第2のエッチングステップで行うことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載のシリコンウェーハのウェットエッチング方法において、前記エッチングステップを第1のエッチングステップとし、前記添加ステップの後に行うエッチングを第2のエッチングステップとしたとき、前記第1のエッチングステップでエッチングする前記シリコンウェーハと前記第2のエッチングステップでエッチングする前記シリコンウェーハとが異なることを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載のシリコンウェーハのウェットエッチング方法において、前記エッチングステップの後にフッ酸濃度の測定を行い、前記硝酸濃度の測定を行わないことを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載のシリコンウェーハのウェットエッチング方法に用いるウェットエッチング装置であって、前記エッチングステップでエッチングを行う前記薬液を吐出する第1の薬液ノズルと、前記第1のフッ酸濃度よりも高い濃度の前記フッ酸又は前記第1のフッ酸濃度よりも高い濃度の前記フッ酸を含む前記薬液を吐出する第2の薬液ノズルとを備え、前記第2の薬液ノズルを、前記第1の薬液ノズルよりも前記薬液の流れの下流側に配置したことを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載のシリコンウェーハのウェットエッチング方法に用いるウェットエッチング装置であって、前記薬液を吐出する薬液ノズルと、前記エッチングで使用した前記薬液を回収する回収部と、前記回収部で回収した前記薬液に前記第1のフッ酸濃度よりも高い濃度の前記フッ酸を添加する再生部とを備え、前記再生部の前記薬液を前記薬液ノズルに供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エッチング反応により混酸中の硝酸及びフッ酸が消費され、硝酸濃度及びフッ酸濃度が低下しても、フッ酸濃度を一定に維持することにより、エッチングレートを回復させ、薬液を繰り返し利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング装置の概略構成図
【図2】本発明の他の実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング装置の概略構成図
【図3】硝酸及びフッ酸の濃度とエッチングレートとの関係を示す特性図
【図4】図2の実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法は、所定のエッチング量を得るためのフッ酸の濃度を第1のフッ酸濃度とし、所定のエッチング量を得るための硝酸の濃度を第1の硝酸濃度としたとき、硝酸の濃度を第1の硝酸濃度よりも高く、フッ酸の濃度を第1のフッ酸濃度とした薬液をエッチングに使用するエッチングステップと、エッチングステップで使用した薬液に、第1のフッ酸濃度よりも高い濃度のフッ酸を添加する添加ステップとを有し、添加ステップの後の薬液を再びエッチングに使用するものである。本実施の形態によれば、シリコンウェーハのエッチングに使用した薬液について、エッチング反応により混酸中の硝酸及びフッ酸が消費され、硝酸及びフッ酸濃度が低下しても、フッ酸のみを添加することにより、エッチングレートを回復させ、薬液を繰り返し利用することが可能となる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法において、薬液中の硝酸濃度を第1の硝酸濃度よりも20%以上高くしたものである。本実施の形態によれば、フッ酸の濃度を維持することで硝酸濃度が高くてもエッチング量を一定に維持することができるため、硝酸濃度を第1の硝酸濃度よりも20%以上高くすることで、硝酸を添加することなく、薬液を再利用することができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法において、添加ステップでは、硝酸を添加しないものである。本実施の形態によれば、フッ酸だけを添加するため、フッ酸の濃度を管理すればよく、薬液の再利用を容易に行うことができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3の実施の形態によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法において、添加ステップでは、薬液中のフッ酸濃度を第1のフッ酸濃度とするものである。本実施の形態によれば、フッ酸濃度を第1のフッ酸濃度に維持することで所定のエッチング量を維持することができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4の実施の形態によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法において、エッチングステップを第1のエッチングステップとし、添加ステップの後に行うエッチングを第2のエッチングステップとしたとき、シリコンウェーハの一部分のエッチングを第1のエッチングステップで行い、シリコンウェーハの他の部分のエッチングを第2のエッチングステップで行うものである。本実施の形態によれば、例えば、スピン枚葉エッチング装置において、ウェーハ面上の中心部付近に混酸薬液を供給し、この薬液がシリコンウェーハをエッチングしながらウェーハの外周部に流れていく混酸薬液のウェーハ面上の下流側に、フッ酸のみを供給することにより、薬液のエッチングレートを低下させず、薬液を供給し続けることができる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第1から第4の実施の形態によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法において、エッチングステップを第1のエッチングステップとし、添加ステップの後に行うエッチングを第2のエッチングステップとしたとき、第1のエッチングステップでエッチングするシリコンウェーハと第2のエッチングステップでエッチングするシリコンウェーハとが異なるものである。本実施の形態によれば、薬液を連続的に再利用することができる。
【0015】
本発明の第7の実施の形態は、第1から第6の実施の形態によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法において、エッチングステップの後にフッ酸濃度の測定を行い、硝酸濃度の測定を行わないものである。本実施の形態によれば、フッ酸濃度のみの測定によってエッチング量を一定に維持することができる。
【0016】
本発明の第8の実施の形態は、第1から第4の実施の形態によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法に用いるウェットエッチング装置において、エッチングステップでエッチングを行う薬液を吐出する第1の薬液ノズルと、第1のフッ酸濃度よりも高い濃度のフッ酸又は第1のフッ酸濃度よりも高い濃度のフッ酸を含む薬液を吐出する第2の薬液ノズルとを備え、第2の薬液ノズルを、第1の薬液ノズルよりも薬液の流れの下流側に配置したものである。本実施の形態によれば、例えば、スピン枚葉エッチング装置において利用することができる。
【0017】
本発明の第9の実施の形態は、第1から第4の実施の形態によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法に用いるウェットエッチング装置において、薬液を吐出する薬液ノズルと、エッチングで使用した薬液を回収する回収部と、回収部で回収した薬液に第1のフッ酸濃度よりも高い濃度のフッ酸を添加する再生部とを備え、再生部の薬液を薬液ノズルに供給するものである。本実施の形態によれば、連続的な再利用を行うことができる。
【実施例】
【0018】
以下に本発明の一実施例を説明する。
図1は、本発明の一実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング装置の概略構成図である。
本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング装置は、硝酸の濃度を第1の硝酸濃度よりも高く、フッ酸の濃度を第1のフッ酸濃度とした薬液を吐出する第1の薬液ノズル11と、第1のフッ酸濃度よりも高い濃度のフッ酸又は第1のフッ酸濃度よりも高い濃度のフッ酸を含む薬液を吐出する第2の薬液ノズル12とを備えている。
シリコンウェーハ10は、ウェハステージ上に載置される。ウェハステージはモータにより回転し、シリコンウェーハ10もウェハステージとともに回転する。第1の薬液ノズル11及び第2の薬液ノズル12は、ウェハステージの上面に近接するように配される。第1の薬液ノズル11及び第2の薬液ノズル12は、シリコンウェーハ10に対して薬液を上方または斜上方から噴射するように配置される。第1の薬液ノズル11は、シリコンウェーハ10の中心部に配置し、第2の薬液ノズル12は、第1の薬液ノズル11よりも外周側に配置している。従って、第2の薬液ノズル12は、第1の薬液ノズル11よりも薬液の流れの下流側に位置する。
【0019】
ここで用いる薬液は、少なくともフッ酸及び硝酸を含む。
所定のエッチング量を得るためのフッ酸の濃度を第1のフッ酸濃度とし、所定のエッチング量を得るための硝酸の濃度を第1の硝酸濃度としたとき、第1の薬液ノズル11から吐出させる薬液は、硝酸の濃度を第1の硝酸濃度よりも高く、フッ酸の濃度を第1のフッ酸濃度としている。ここで、第1の薬液ノズル11から吐出させる薬液中の硝酸濃度は第1の硝酸濃度よりも20%以上高くしている。なお、第1のフッ酸濃度は目標濃度に対して5%程度の許容範囲を持たせた濃度である。
【0020】
第1の薬液ノズル11による薬液の吐出によってシリコンウェーハ10の一部分(中心部)でエッチングが行われる(第1のエッチングステップ)。
第2の薬液ノズル12によるフッ酸又は薬液の吐出によって第1のフッ酸濃度よりも高い濃度のフッ酸が添加される(添加ステップ)。この添加ステップでは、第2の薬液ノズル12によって添加された後の薬液中のフッ酸濃度は、第1のフッ酸濃度を目標濃度とする。なお、添加ステップでは、硝酸は添加しない。
第2の薬液ノズル12の下流側では、フッ酸の濃度が第1のフッ酸濃度に戻ることで薬液のエッチングレートを回復させてシリコンウェーハ10の他の部分(外周部)のエッチングを行うことができる(第2のエッチングステップ)。
【0021】
本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング装置は、スピン枚葉エッチング装置に代表されるものである。
シリコンウェーハ10面上の中心部付近に第1の薬液ノズル11で薬液を供給し、この薬液はシリコンウェーハ10をエッチングしながらシリコンウェーハ10の外周部に流れ、シリコンウェーハ10面上の薬液流れの下流側に、第2の薬液ノズル12によって高濃度のフッ酸のみを供給することにより、薬液のエッチングレートを回復させ(低下させず)、均一なエッチングレートを維持し続けることができる。
これにより、薬液のエッチング反応による消費により、硝酸及びフッ酸の濃度が低下することで、エッチングレートが低下し、このエッチングレートの低下によるユニフォーミティの悪化を防ぐことができる。
なお、シリコンウェーハ10面上を流れた薬液は、シリコンウェーハ10外周から排出され、回収部13に回収される。
【0022】
図2は、本発明の他の実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング装置の概略構成図である。
本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング装置は、薬液を吐出する薬液ノズル21と、エッチングで使用した薬液を回収する回収部22と、回収部22で回収した薬液に第1のフッ酸濃度よりも高い濃度のフッ酸を添加する再生部23とを備えている。そして、再生部23の薬液は、薬液ノズル21に供給して繰り返し利用される。
【0023】
本実施例においても、シリコンウェーハ10は、ウェハステージ上に載置される。ウェハステージはモータにより回転し、シリコンウェーハ10もウェハステージとともに回転する。薬液ノズル21は、ウェハステージの上面に近接するように配される。薬液ノズル21は、シリコンウェーハ10に対して薬液を上方または斜上方から噴射するように配置される。薬液ノズル21は、シリコンウェーハ10の中心部に配置している。
ここで用いる薬液は、少なくともフッ酸及び硝酸を含む。
所定のエッチング量を得るためのフッ酸の濃度を第1のフッ酸濃度とし、所定のエッチング量を得るための硝酸の濃度を第1の硝酸濃度としたとき、薬液ノズル21から吐出される薬液は、硝酸の濃度を第1の硝酸濃度よりも高く、フッ酸の濃度を第1のフッ酸濃度としている。ここで、薬液ノズル21から吐出される薬液中の硝酸濃度は第1の硝酸濃度よりも20%以上高くしている。なお、第1のフッ酸濃度は目標濃度に対して5%程度の許容範囲を持たせた濃度である。
【0024】
薬液ノズル21による薬液の吐出によってエッチングが行われる(エッチングステップ)。
シリコンウェーハ10面上のエッチングを行った薬液は、回収部22で回収され、再生部23に送られ、再生部23にて第1のフッ酸濃度よりも高い濃度のフッ酸が添加される(添加ステップ)。この添加ステップでは、薬液中のフッ酸濃度を第1のフッ酸濃度とする。なお、添加ステップでは、硝酸は添加しない。
再生部23では、フッ酸の濃度が第1のフッ酸濃度に戻ることで薬液のエッチングレートを回復させることができる。
【0025】
本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング装置は、スピン枚葉エッチング装置に代表されるものである。
シリコンウェーハ10面上の中心部付近に薬液ノズル21で薬液を供給し、この薬液はシリコンウェーハ10をエッチングしながらシリコンウェーハ10の外周部に流れ、回収部22で回収され、その後再生部23で高濃度のフッ酸のみを供給することにより、薬液のエッチングレートを回復させ(低下させず)、均一なエッチングレートを維持し続けることができる。
エッチングステップの後の回収部22において、又は再生部23の導入前において、フッ酸濃度の測定を行うことが好ましい。なお、硝酸濃度の測定は行わなくてもよい。
これにより、薬液のエッチング反応による消費により、硝酸及びフッ酸の濃度が低下することでエッチングレートが低下し、このエッチングレートの低下によるユニフォーミティの悪化を防ぐことができる。
本実施例では、硝酸の濃度を第1の硝酸濃度よりも高く、フッ酸の濃度を第1のフッ酸濃度とした薬液をエッチングに使用する第1のエッチングステップと、再生部23による添加ステップの後の薬液を再びエッチングに使用する第2のエッチングステップは、連続的に行うことが好ましく、シリコンウェーハ10を交換することによって、第1のエッチングステップでエッチングするシリコンウェーハ10と第2のエッチングステップでエッチングするシリコンウェーハ10とが異なることになる。
なお、本実施例による再生部23を、図1に示す実施例の回収部13と第1の薬液ノズル11との間に設けてもよい。
【0026】
次に図3に硝酸及びフッ酸の濃度とエッチングレートとの関係を示す。
図3に示すように、硝酸及びフッ酸の濃度とエッチングレートは、硝酸リッチの領域で、硝酸濃度が一定以上になると、エッチングレートが一定になる。
例えば、フッ酸(HF)の濃度が22%から24%程度の範囲の場合には、硝酸(HNO3)の濃度が40%以上になってもエッチングレートはほぼ一定(400um/min)となり、フッ酸の濃度が24%から28%程度の範囲の場合には、硝酸濃度が35%以上になってもエッチングレートはほぼ一定(600um/min)となり、フッ酸の濃度が28%から30%程度の範囲の場合には、硝酸濃度が30%以上になってもエッチングレートはほぼ一定(800um/min)となる。
【0027】
エッチングの反応式は、以下の通りである。
硝酸(HNO)によるシリコン(Si)の酸化反応式
3Si+4HNO→3SiO+4NO+2H
フッ酸(HF)によるシリコン(Si)の酸化物の溶解反応式
3SiO+6HF→HSiF+2H
【0028】
混酸がシリコンをエッチングすると、混酸薬液中の硝酸及びフッ酸は反応により消費され、夫々の濃度は低下する。ここで、硝酸90%、フッ酸24%の混酸を使用してシリコンのエッチングを行った場合、エッチングに使用した混酸のエッチング後の硝酸濃度が低下してもその濃度が40%以上であれば、高濃度のフッ酸を添加し、使用後の混酸中のフッ酸濃度を24%にすれば、エッチングレートは使用前のエッチングレートに戻る。
このことを利用した混酸薬液の供給によりユニフォーミティの改善が可能となる。また、このことを利用し使用後の混酸薬液のエッチングレートを使用前の混酸薬液と同等にすることができ、効率よく再利用することが可能となる。
【0029】
図2の実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法を図4に示す。
本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチングは、硝酸の濃度を第1の硝酸濃度よりも高く、フッ酸の濃度を第1のフッ酸濃度とした薬液を用いてエッチングを行う(ステップ1)。
ステップ1でエッチング処理が行われた後の薬液について、フッ酸濃度を測定する(ステップ2)。
ステップ3において、フッ酸濃度が所定の濃度範囲であると判断されると、あらかじめ定めている所定量の薬液(高濃度フッ酸薬液)を添加し(ステップ4)、ステップ1に戻って再びエッチングを行う。
ステップ3において、フッ酸濃度が所定の濃度範囲でないと判断されると、薬液(高濃度フッ酸薬液)の添加量を変更し(ステップ5)、その後にステップ1に戻って再びエッチングを行う。
【0030】
なお、本実施例では、硝酸の濃度を第1の硝酸濃度よりも高くした薬液を用いることで、硝酸を添加することなく、所定期間エッチングを行うものであるが、ステップ3において硝酸の濃度の測定を合わせて行うことで、エッチングレートの維持を管理することができる。
また、高濃度のフッ酸のみを供給することで均一なエッチングレートを維持し続けることができることを説明したが、反応により低下する硝酸を合わせて供給してもよい。ただし、この場合にも硝酸の濃度管理を行う必要はない。すなわち、硝酸の濃度測定の結果によって添加する硝酸量の変更は行う必要がない。
また、本実施例では、フッ酸の濃度を一定に保つことで硝酸の濃度が一定範囲で変化しても所定のエッチングレートを維持することができることを説明したが、硝酸の濃度を一定に保つことでフッ酸の濃度が一定範囲で変化しても所定のエッチングレートを維持することができる。
従って、硝酸又はフッ酸のどちらか一方のみの濃度を一定に維持し、他方の濃度を過剰な濃度とすることで、混酸薬液のエッチングレートを一定にすることができる。
【0031】
以上のように、本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法は、所定のエッチング量を得るためのフッ酸の濃度を第1のフッ酸濃度とし、所定のエッチング量を得るための硝酸の濃度を第1の硝酸濃度としたとき、硝酸の濃度を第1の硝酸濃度よりも高く、フッ酸の濃度を第1のフッ酸濃度とした薬液をエッチングに使用するエッチングステップと、エッチングステップで使用した薬液に、第1のフッ酸濃度よりも高い濃度のフッ酸を添加する添加ステップとを有し、添加ステップの後の薬液を再びエッチングに使用する。本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法によれば、シリコンウェーハのエッチングに使用した薬液について、エッチング反応により混酸中の硝酸及びフッ酸が消費され、硝酸及びフッ酸濃度が低下しても、フッ酸のみを添加することにより、エッチングレートを回復させ、薬液を繰り返し利用することが可能となる。
【0032】
また、本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法は、薬液中の硝酸濃度を第1の硝酸濃度よりも20%以上高くしている。本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法によれば、フッ酸の濃度を維持することで硝酸濃度が高くてもエッチング量を一定に維持することができるため、硝酸を添加することなく、薬液を再利用することができる。
【0033】
また、本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法は、添加ステップでは硝酸を添加しない。本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法によれば、フッ酸だけを添加するため、フッ酸の濃度を管理すればよく、薬液の再利用を容易に行うことができる。
【0034】
また、本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法は、添加ステップでは、薬液中のフッ酸濃度を第1のフッ酸濃度とする。本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法によれば、フッ酸濃度を第1のフッ酸濃度に維持することで所定のエッチング量を維持することができる。
【0035】
また、本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法は、シリコンウェーハ10の一部分のエッチングを第1のエッチングステップで行い、シリコンウェーハ10の他の部分のエッチングを第2のエッチングステップで行う。本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法によれば、例えば、スピン枚葉エッチング装置において、ウェーハ面上の中心部付近に混酸薬液を供給し、この薬液がシリコンウェーハ10をエッチングしながらウェーハの外周部に流れていく混酸薬液のウェーハ面上の下流側に、フッ酸のみを供給することにより、薬液のエッチングレートを低下させず、薬液を供給し続けることができる。
【0036】
また、本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法は、第1のエッチングステップでエッチングするシリコンウェーハ10と第2のエッチングステップでエッチングするシリコンウェーハ10とを異ならせる。本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法によれば、薬液を連続的に再利用することができる。
【0037】
また、本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法は、エッチングステップの後にフッ酸濃度の測定を行い、硝酸濃度の測定を行わない。本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング方法によれば、フッ酸濃度のみの測定によってエッチング量を一定に維持することができる。
【0038】
また、本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング装置は、エッチングステップでエッチングを行う薬液を吐出する第1の薬液ノズル11と、第1のフッ酸濃度よりも高い濃度のフッ酸又は第1のフッ酸濃度よりも高い濃度のフッ酸を含む薬液を吐出する第2の薬液ノズル12とを備え、第2の薬液ノズル12を、第1の薬液ノズル11よりも薬液の流れの下流側に配置する。本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング装置によれば、例えば、スピン枚葉エッチング装置において利用することができる。
【0039】
また、本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング装置は、薬液を吐出する薬液ノズル21と、エッチングで使用した薬液を回収する回収部22と、回収部22で回収した薬液に第1のフッ酸濃度よりも高い濃度のフッ酸を添加する再生部23とを備え、再生部23の薬液を薬液ノズル21に供給する。本実施例によるシリコンウェーハのウェットエッチング装置によれば、連続的な再利用を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、半導体基板、液晶ガラス基板、磁気ディスク等の被処理基板を処理するためのシリコンウェーハのウェットエッチング方法及びウェットエッチング装置に適用できる。
【符号の説明】
【0041】
10 シリコンウェーハ
11 第1の薬液ノズル
12 第2の薬液ノズル
13 回収部
21 薬液ノズル
22 回収部
23 再生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともフッ酸及び硝酸を含む薬液を用いたシリコンウェーハのウェットエッチング方法であって、
所定のエッチング量を得るための前記フッ酸の濃度を第1のフッ酸濃度とし、所定の前記エッチング量を得るための前記硝酸の濃度を第1の硝酸濃度としたとき、
前記硝酸の濃度を前記第1の硝酸濃度よりも高く、前記フッ酸の濃度を第1のフッ酸濃度とした前記薬液をエッチングに使用するエッチングステップと、
前記エッチングステップで使用した前記薬液に、前記第1のフッ酸濃度よりも高い濃度の前記フッ酸を添加する添加ステップと
を有し、
前記添加ステップの後の前記薬液を再び前記エッチングに使用することを特徴とするシリコンウェーハのウェットエッチング方法。
【請求項2】
前記薬液中の前記硝酸濃度を前記第1の硝酸濃度よりも20%以上高くしたことを特徴とする請求項1に記載のシリコンウェーハのウェットエッチング方法。
【請求項3】
前記添加ステップでは、前記硝酸を添加しないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシリコンウェーハのウェットエッチング方法。
【請求項4】
前記添加ステップでは、前記薬液中の前記フッ酸濃度を前記第1のフッ酸濃度とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のシリコンウェーハのウェットエッチング方法。
【請求項5】
前記エッチングステップを第1のエッチングステップとし、
前記添加ステップの後に行うエッチングを第2のエッチングステップとしたとき、
前記シリコンウェーハの一部分のエッチングを前記第1のエッチングステップで行い、
前記シリコンウェーハの他の部分のエッチングを前記第2のエッチングステップで行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のシリコンウェーハのウェットエッチング方法。
【請求項6】
前記エッチングステップを第1のエッチングステップとし、
前記添加ステップの後に行うエッチングを第2のエッチングステップとしたとき、
前記第1のエッチングステップでエッチングする前記シリコンウェーハと前記第2のエッチングステップでエッチングする前記シリコンウェーハとが異なることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のシリコンウェーハのウェットエッチング方法。
【請求項7】
前記エッチングステップの後にフッ酸濃度の測定を行い、前記硝酸濃度の測定を行わないことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のシリコンウェーハのウェットエッチング方法。
【請求項8】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のシリコンウェーハのウェットエッチング方法に用いるウェットエッチング装置であって、
前記エッチングステップでエッチングを行う前記薬液を吐出する第1の薬液ノズルと、
前記第1のフッ酸濃度よりも高い濃度の前記フッ酸又は前記第1のフッ酸濃度よりも高い濃度の前記フッ酸を含む前記薬液を吐出する第2の薬液ノズルとを備え、
前記第2の薬液ノズルを、前記第1の薬液ノズルよりも前記薬液の流れの下流側に配置したことを特徴とするウェットエッチング装置。
【請求項9】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のシリコンウェーハのウェットエッチング方法に用いるウェットエッチング装置であって、
前記薬液を吐出する薬液ノズルと、
前記エッチングで使用した前記薬液を回収する回収部と、
前記回収部で回収した前記薬液に前記第1のフッ酸濃度よりも高い濃度の前記フッ酸を添加する再生部とを備え、
前記再生部の前記薬液を前記薬液ノズルに供給することを特徴とするウェットエッチング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−65614(P2013−65614A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202040(P2011−202040)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度戦略的基盤技術高度化支援事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(510009533)株式会社プレテックAT (3)
【Fターム(参考)】