説明

シリコン回収方法、及びシリコン回収装置

【課題】無薬注で安定して脱水処理が可能で、且つ高濃縮度でシリコンを回収することができるシリコン回収方法、及びシリコン回収装置を提供すること。
【解決手段】シリコン粒子の粒径分布に2つ以上のピークを有するシリコン粒子群を含む研削或いは研磨排水を、液体サイクロン13等の湿式分級装置で大きい粒径のピークのシリコン粒子群を含む濃縮液(液体サイクロンボトム液W3)と、小さい粒径のピークのシリコン粒子群を含む希薄液(液体サイクロントップ液W2)の2つに分け、濃縮液を脱水乾燥機17で脱水し、高濃度でシリコン粒子を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウエハ製造過程のシリコンインゴットの研削・研磨で発生する排水中に含まれるシリコンの研削屑や研磨屑のシリコン粒子を回収するシリコン回収方法、及びシリコン回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国では年間、約1300tの半導体であるシリコンチップを生産しており、全世界生産量の約60%を占めているが、年々、全世界での生産量が増加しているため原料となる金属シリコンが不足し、日本での単結晶シリコンインゴットの生産量が抑制され、減産を余儀なくされているところもある。一方、シリコンウエハの製造過程での研削・研磨、切断等によって使用されるシリコンインゴットの約70〜80%に相当する約3100tものシリコン屑が廃棄物として排出され、凝縮沈澱や膜濃縮されて、埋め立て処理或いはセメント原料として処分されている。
【0003】
このような背景もあって、高価なシリコン屑を積極的に回収して再利用化を図ることが要望されている。シリコン屑を回収して再利用するためには、無薬注脱水して、好ましくは回収シリカの含水率を50%以下にする必要がある。現状の処分方法では濃縮してもその濃度は20g/L程度で、何らかの方法で脱水する必要がある。しかし、無薬注処理となると脱水機が限定されろ布タイプのフィルタープレス及び類似の脱水機或いはろ過機を使用することになる。ろ過機でろ過する手法として、研削・研磨排水自身でろ過膜をプレコートしてケーキろ過する方法が、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2001−038352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記特許文献1に開示する方法ではシリコン研削・研磨排水をフィルタープレスで脱水する場合、排水のシリコン粒子の粒子径頻度分布にできる2つのピークの内、1μm以下に存在するピークに存在する粒子の割合によってプレコート膜の形成が阻害されたり、該プレコート膜の形成に要する時間が長時間にわたったりするため、確実に脱水するには無機凝集剤やポリマー等により調質して脱水せざるを得なかった。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、無薬注で安定して脱水処理が可能で、且つ高濃縮度でシリコンを回収することができるシリコン回収方法、及びシリコン回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明は、シリコン粒子の粒径分布に2つ以上のピークを有するシリコン粒子群を含む研削或いは研磨排水を、湿式分級装置で大きい粒径のピークのシリコン粒子群を含む濃縮液と、小さい粒径のピークのシリコン粒子群を含む希薄液の2つに分け、濃縮液を脱水装置で脱水し、高濃度でシリコン粒子を回収することを特徴とするシリコン回収方法にある。
【0007】
また、本発明は、上記シリコン回収方法において、脱水装置に前記濃縮液を供給し、該脱水装置のろ過メディアにケーキ膜を形成した後、希薄液を膜ろ過装置に供給し得られた濃縮液を該脱水装置に供給し、脱水して高濃度でシリコン粒子を回収することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記シリコン回収方法において、希薄液及び脱水装置のろ液を膜ろ過装置でろ過して、そのろ液を研削・研磨用液として再利用することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記シリコン回収方法において、湿式分級装置は液体サイクロンであり、該液体サイクロンのボトム液が濃縮液であり、トップ液が希薄液であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記シリコン回収方法において、液体サイクロンのトップ液とボトム液の液量比がトップ液量50%以上、ボトム液量3%以上であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記シリコン回収方法において、膜ろ過装置はセラミックフィルターであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、シリコン粒子の粒径分布に2つ以上のピークを有するシリコン粒子群を含む研削或いは研磨排水を大きい粒径のピークのシリコン粒子群を含む濃縮液と、小さい粒径のピークのシリコン粒子群を含む希薄液の2つに分ける湿式分級装置と、湿式分級装置からの濃縮液を脱水装置で脱水し、高濃度でシリコン粒子を回収する脱水装置と、を備えたことを特徴とするシリコン回収装置にある。
【0013】
また、本発明は、上記シリコン回収装置において、湿式分級装置からの希薄液及び脱水装置からのろ液をろ過濃縮する膜ろ過装置を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、シリコン回収装置において、湿式分級装置は液体サイクロンであり、濃縮液がボトム液であり、希薄液がトップ液であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記シリコン回収装置において、膜ろ過装置は、セラミックフィルターであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記シリコン回収装置において、湿式分級装置からの濃縮液と膜ろ過装置からの濃縮液とを脱水装置に切換えて別々に供給する切換え供給手段を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記シリコン回収装置において、脱水装置がフィルタープレスであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、上記シリコン回収装置において、脱水装置がフィルタープレスであって、該フィルタープレスに温水を循環することにより該フィルタープレス内にシリコンを加温する加熱機構を備え、更にろ室内を真空雰囲気とし該ろ室内のシリコンを真空乾燥可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るシリコン回収方法、及びシリコン回収装置によれば、シリコンの研削屑、研磨屑のシリコン粒子を含むシリコン研削・研磨排水を、大きい粒径のシリコン粒子群を含む濃縮液と小さい粒径のシリコン粒子群を含む希薄液に分け、大きい粒径のシリコン粒子群を含む濃縮液のみ脱水すること、或いは大きい粒径のシリコン粒子群を含む濃縮液を脱水装置に供給することで、脱水装置のろ過メディアにケーキ膜を形成した後、希薄液を膜ろ過装置に供給して得られた小さい粒径のシリコン粒子の濃縮液を脱水装置に供給し、脱水するため、シリコン粒子がろ液側に漏れることなく、確実に無薬注での脱水が可能となる。その結果、高濃度のシリコンを回収できると共に、研削・研磨用水の回収が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本願発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係るシリコン回収方法を実施するシリコン回収装置のシステム構成を示す図である。図示するように、本シリコン回収装置10は、原水貯留槽11、供給ポンプ12、液体サイクロン13、第1濃縮液貯留槽14、第1打ち込みポンプ15、希薄液貯留槽16、脱水乾燥機17、循環ポンプ18、セラミックフィルター19、第2打ち込みポンプ20、及び第2濃縮液貯留槽21を備えている。
【0021】
シリコンウエハを製造する過程で発生するシリコン研削屑及び研磨屑のシリコン粒子を含むシリコン研削・研磨排水W1は、配管101から原水貯留槽11に流入し、貯留される。原水貯留槽11内のシリコン研削・研磨排水W1は供給ポンプ12により配管102を通って液体サイクロン13に送られる。このシリコン研削・研磨排水W1には、シリコン粒子の粒子径分布に、図2に示すように、0.2μm付近と、10μm付近とに2のピークがあり、液体サイクロン13では粒子径の小さい方のピークP1を除去して分級濃縮する。つまりトップ液W2として小さな粒径のピークP1を除去し、大きな粒径のピークP2をボトム液W3として第1濃縮液貯留槽14に引き抜く。一方、トップ液W2は配管103を通って希薄液貯留槽16に貯留される。
【0022】
この時、液体サイクロン13のトップ液W2とボトム液W3の液量比は、トップ液W2が50%以上、ボトム液W3が3%以上であることが好ましく、当然ボトム液W3の比が小さいほうが濃縮液濃度は高くなる。液体サイクロン13のボトム排出ノズル(図示せず)が詰まらない限り、ボトム液W3の比率は小さくしたほうがよく、ボトム液W3の濃縮濃度は少なくとも1%以上が好ましい。その方が後段の脱水乾燥機17の機能(特にろ過速度)が向上する。また、上記シリコン研削・研磨排水W1中に数ミリ径のシリコン屑が混入する場合があるので、配管101等のシリコン研削・研磨排水W1を供給するラインにはこれら数ミリ径のシリコン屑を除去するためのスクリーン(図示せず)を設けることが好ましい。
【0023】
第1濃縮液貯留槽14の濃縮液(ボトム液W3)のシリコン粒子の粒径は概ね10μm以上で、ろ布(膜)をろ過メディアとする容積型脱水機で無薬注脱水が可能となる。第1打ち込みポンプ15で第1濃縮液貯留槽14の濃縮液W3を配管105及び弁V1を通して脱水乾燥機17に圧入して脱水する(この時弁V2は閉じる)。脱水乾燥機17で濃縮液を脱水したケーキは高濃度の回収シリコンとして回収し、そのろ液W4は配管104を通って希薄液貯留槽16に貯留され、シリコン研削・研磨排水W1から用水を回収しない場合は、図4に示すように、液体サイクロン13のトップ液W2及び脱水乾燥機17からのろ液W4は水処理系(水処理設備)へ送られる。
【0024】
更にシリコン回収率を高めたい場合や、シリコン研削・研磨排水W1から用水を回収する場合には、希薄液貯留槽16内の希薄水W5(液体サイクロン13からのトップ液W2と脱水乾燥機17からのろ液W4の混合液)を循環ポンプ18により、配管106、セラミックフィルター19、配管108、希薄液貯留槽16と循環させ、セラミックフィルター19からのろ液W6は用水として回収する。該セラミックフィルター19からの濃縮液W7は配管109を通って第2濃縮液貯留槽21に貯留される。該第2濃縮液貯留槽21内の濃縮液W7は第2打ち込みポンプ20により、配管107及び弁V2を通って脱水乾燥機17に圧入されて脱水される(この時弁V1は閉じる)。
【0025】
上記脱水乾燥機17で第1濃縮液貯留槽14内の濃縮液W3(ボトム液W3)及び第2濃縮液貯留槽21内の濃縮液W7を脱水するときは、第1濃縮液貯留槽14内の濃縮液W3を脱水乾燥機17に送り脱水した後に、第1打ち込みポンプ15を停止し弁V1を閉じ、弁V2を開き第2打ち込みポンプ20を運転して第2濃縮液貯留槽21内の濃縮液W7を脱水乾燥機17に送り脱水する。これは粒径の大きいシリコン粒子を含む濃縮液W3(ボトム液W3)で脱水乾燥機17のろ過メディアにケーキ層を形成し、該ケーキ層でセラミックフィルター19からの濃縮液W7に含まれる細かいシリコン粒子を効果的に捕捉するためである。
【0026】
上記のように本実施形態例では、第1打ち込みポンプ15と第2打ち込みポンプ20を設け、それぞれ第1濃縮液貯留槽14内の濃縮液W3(ボトム液W3)、第2濃縮液貯留槽21内の濃縮液W7を脱水乾燥機17に圧入するようにしているが、図3に示すように、打ち込みポンプ23を1台とし、該打ち込みポンプ23の吸込み側に弁V1を介して第1濃縮液貯留槽14と弁V2を介して第2濃縮液貯留槽21を接続し、弁V1及び弁V2を切り替えることにより、配管105を介して第1濃縮液貯留槽14内の濃縮水W3と第2濃縮液貯留槽21内の濃縮水W7を脱水乾燥機17に圧入するようにしてもよい。この時も第1濃縮液貯留槽14内の濃縮液W3を脱水乾燥機17に送り脱水した後に、第2濃縮液貯留槽21内の濃縮液W7を脱水乾燥機17に送り脱水することにより、セラミックフィルター19からの濃縮液W7に含まれる細かいシリコン粒子も効果的に捕捉できる。
【0027】
上記のように希薄液貯留槽16内の液体サイクロン13からのトップ液W2と脱水乾燥機17からのろ液W4の混合液である希薄水W5を循環ポンプ18によりセラミックフィルター19を通して循環させることにより、ろ液W6は用水として回収できると共に、濃縮液W7を脱水乾燥機17に圧入することにより、シリコン研削・研磨排水W1に含まれるシリコン粒子の略全量を高濃度で回収することができる。
【0028】
上記脱水乾燥機17としては、ろ布(膜)をろ過メディアとする容積型の脱水機が好ましい。図5はろ布(膜)をろ過メディアとする容積型の脱水としてのフィルタープレスの一構成例を示す図である。脱水乾燥機30は、第1濃縮液貯留槽14内の濃縮液W3の脱水乾燥を行うフィルタープレスである。その内部に、後に詳述する隣接する一対のろ枠の間に一対のダイヤフラムとろ布を設け、該ろ布により囲まれたろ室が形成されている。この脱水乾燥機30には、ろ室を二分するように室内に配置した金属製の中空体を備え、その中空体の内部に熱媒体を供給するようにしている。開閉装置でろ枠を締め付けた状態で、ダイヤフラム及びろ布からなるろ室内に第1打ち込みポンプ15で第1濃縮液貯留槽14の濃縮液W3を配管105及び弁V3を通って圧入し、該濃縮液W3を両面から圧搾することで、濃縮液W3の脱水乾燥が行われる。
【0029】
脱水乾燥機30には温水が熱媒体として供給され、この熱媒体により、濃縮液W3の脱水乾燥が促進される。温水ユニット31で温水が造られ、該温水は温水循環ポンプ32により温水循環配管110を通って脱水乾燥機30のヘッダ管30aに導入される。脱水乾燥機30で濃縮液W3の脱水乾燥に使用された温水はヘッダ管30bから温水循環配管110を通り温水ユニット31に戻される。このように、温水ユニット31と脱水乾燥機30との間で温水が循環するようになっていて、脱水乾燥機30の出口側に背圧弁33が配置されている。従って、背圧弁33の調整により、循環する温水の流量及び脱水乾燥機30内の温水の圧力を速やかに調整することが可能である。
【0030】
また、脱水乾燥機30における濃縮液W3の脱水乾燥には真空吸引が用いられる。従って、真空ポンプ37と凝縮槽38とを備え、ろ布とダイヤフラムとの間の減圧雰囲気とすることで、ろ室内部の濃縮液W3の脱水乾燥を促進する。また、圧搾工程と同時に真空ポンプ37を起動し、ダイヤフラムとろ布との間隙を圧縮することにより、ろ布に囲まれたろ室内の濃縮液W3を加圧脱水すると共に、加温減圧乾燥する。
【0031】
センターブロー配管111には、空気弁V4が、センターブロー排水配管112には排水弁V5がそれぞれ設けられ、センターブロー用空気Airはセンターブロー配管111を通って脱水乾燥機30に供給され、センターブロー排水配管112から排出される。脱水乾燥機30に接続されるろ液配管113と真空配管114は弁V6、V7により切り替えられ、真空配管114には、凝縮槽38、真空ポンプ37が接続されている。また、弁V6には、配管104が接続され、ろ液W4は希薄液貯留槽16に貯留される。凝縮槽38には冷却水Wcが循環するようになっている。V8は開放弁である。
【0032】
図6は、フィルタープレスを用いる脱水乾燥機30の要部の構成例を示す図である。図示するように、互いに隣接するろ枠54a、54b、54c、54dの間にもそれぞれダイヤフラム52、52とろ布51、51とが配置されて、ろ布51で囲まれた室55a、55b、55cが形成されている。そして、それぞれのろ室55a、55b、55cを二分するように、金属製の空洞を有する中空体56a、56b、56cが設けられている。本例で示す全体構成は、中空体で2分割されたろ室が3室(56a、56b、56c)の構成となっているが、室数は必要に応じて増やすことができる。
【0033】
ろ枠54a、54b、54c、54dの両側にプレート57、58を備え、図示しない開閉装置によりろ枠54a、54b、54c、54dを開閉するようになっている。即ちシリコン研削・研磨排水W1の脱水乾燥時には図示しない開閉装置によりプレート57、58が両側から締め付けられ、各ろ枠54a、54b、54c、54dが両側から締め付けられるようになっており、ろ枠54aとろ枠54bの間、ろ枠54bとろ枠54cの間、ろ枠54cとろ枠54dの間にそれぞれろ布51、51に取り囲まれたろ室55a、55b、55cが形成されている。そして、各ろ室55a、55b、55cの内部に脱水乾燥対象のシリコン研削・研磨排水W1が導入され、該シリコン研削・研磨排水W1の脱水乾燥が行なわれる。シリコン研削・研磨排水W1の脱水乾燥後は、図示しない開閉装置によりプレート57、58が開かれ、各ろ枠54a、54b、54c、54dがそれぞれ離反するように開かれ、脱水乾燥されたケーキが下方に落下して取り出される。
【0034】
金属製の空洞を有する中空体56a、56b、56cの内部には、温水(熱媒体)が流れ、ろ室55a、55b、55c内に充填されたシリコン研削・研磨排水W1を加熱するようになっている。なお、図5及び図6は脱水乾燥機の一例構成例であり、脱水乾燥機はこの構成に限定されるものではない。
【0035】
上記のように脱水乾燥機17として、フィルタープレスを用い、該フィルタープレスに温水を循環させることによりフィルタープレス内のシリコンを加温する加熱機構を有し、更にろ室内のシリコンを真空下におくように真空発生装置を有することで、脱水と真空乾燥が可能となる。
【0036】
また、セラミックフィルター19に図示は省略するが、セラミック膜モジュールを備え、該セラミック膜モジュールに希薄液貯留槽16内の液体サイクロン13からのトップ液W2と脱水乾燥機17からのろ液W4の混合液である希薄水W5を循環ポンプ18で配管106を通して供給し、配管108を通して希薄液貯留槽16に戻すようになっている。セラミックフィルター19からのろ液W6は用水として回収し、研削・研磨用水として使用される。濃縮液W7は第2濃縮液貯留槽21に貯留される。
【0037】
以下、0.3μm及び13μmの2箇所にピークがある粒子径分布を有するシリコン濃度3.2g/Lの研削・研磨排水を対象とし、実験例と比較例と比較しながら説明する。
【0038】
(比較例)
脱水機としてろ過面積は0.2m2のフィルタープレスを使用し、シリコン粒子を含むシリコン研削・研磨排水を循環(ろ液を原液に戻す)供給して原液自身で比較的目の細かいろ布(通気度200cc/cm2・min)のプレコートを試みたが、微細な粒子がろ布を通過してしまいプレコート膜がなかなかできず、ろ液の濁りは60分以上時間が経過してもとれなかった。
【0039】
(本発明の実験例1)
液体サイクロン13は処理量が10L/minで、液量比はトップ液が93%、ボトム液を7%とした。脱水乾燥機17はフィルタープレスを使用し、ろ過面積は1.52m2である。また、セラミックフィルター19はポアサイズ0.1μm、ろ過面積0.27m2のものを使用した。なお、処理水量は600L/hとした。
【0040】
先ず、液体サイクロン13で排水を分級・濃縮した。トップ液のSS(懸濁物)は1024mg/Lで、ボトム液のSSは31.9g/Lとなった。また、トップ液の粒子径は10μm未満、ボトム液の粒子径は10μm以上と分級した。セラミックフィルター19では約30倍濃縮し、液体サイクロン13のボトム液濃度と同等とした。従って、回収する用水として水量は約540L/hとなった。なお、セラミックフィルター19を使用しない場合は、液体サイクロン13のトップ液は排水処理系へ放流される。
【0041】
また、フィルタープレスを用いた脱水乾燥機17によるシリコン回収では、ろ過時間は脱水性の良い液体サイクロン13のボトム液を10分とし、次いで、セラミックフィルター19の濃縮液W7を10分とした。ボトム液のろ過によりろ布にケーキを形成した後、微細なセラミックフィルター濃縮液をケーキろ過する。更に30分間圧搾脱水することにより高濃度のシリコンを回収した。この時ケーキ含水率は46%で、ろ過速度は1.3kg/m2・hであった。なお、セラミックフィルター19を使用しない場合は、液体サイクロン13のボトム液のみの脱水となる。
【0042】
(本発明の実験例2)
脱水乾燥機17を除いて、使用機器、装置及び使用条件は本発明の実験例1と同様とした。ここでは、脱水乾燥機17にフィルタープレスを使用し、該フィルタープレスに温水を循環することによりフィルタープレス内のシリコンを加温する加熱機構を有し、更にろ室内のシリコンを真空下におくように真空発生装置を有することで脱水と真空乾燥可能とした脱水乾燥装置を用いた。
【0043】
目標の最終含水率を30%とした。そのために必要な乾燥時間は15分であり、その結果、脱水乾燥機17におけるろ過速度は1.1kg/m2hとなった。その時のサイクルタイムは70分となり、その内訳はろ過時間20分、圧搾時間25分、乾燥時間15分、雑時間10分である。
【0044】
実験例2では含水率がその時々により変化するが、本実験例2では熱を加えて真空乾燥するため製品の含水率が安定するというメリットがある。
【0045】
以上、本発明の実施形態例を説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお、直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造であっても、本願発明の作用効果を奏する以上、本願発明の技術範囲である。上記実施形態例では、シリコン研削・研磨排水W1を分級濃縮する湿式分級装置として液体サイクロン13を用いたが、湿式分級装置はこれに限定されるものではない。また、希薄液W5を濃縮する膜ろ過装置としてセラミックフィルター19を用いたが、他の膜ろ過装置でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係るシリコン回収装置の構成例を示す図である。
【図2】シリコン研削・研磨排水のシリコン粒子の粒径分布の一例を示す図である。
【図3】本発明に係るシリコン回収装置の構成例を示す図である。
【図4】本発明に係るシリコン回収装置の構成例を示す図である。
【図5】フィルタープレスの構成例を示す図である。
【図6】フィルタープレスの要部の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
10 シリコン回収装置
11 原水貯留槽
12 供給ポンプ
13 液体サイクロン
14 第1濃縮液貯留槽
15 第1打ち込みポンプ
16 希薄液貯留槽
17 脱水乾燥機
18 循環ポンプ
19 セラミックフィルター
20 第2打ち込みホンプ
21 第2濃縮液貯留槽
23 打ち込みホンプ
30 脱水乾燥機
31 温水ユニット
32 温水循環ポンプ
33 背圧弁
37 真空ポンプ
38 凝縮器
54a〜d ろ枠
55a〜c ろ室
56a〜c 中空体
57 プレート
58 プレート
V1〜8 弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン粒子の粒径分布に2つ以上のピークを有するシリコン粒子群を含む研削或いは研磨排水を、湿式分級装置で大きい粒径のピークのシリコン粒子群を含む濃縮液と、小さい粒径のピークのシリコン粒子群を含む希薄液の2つに分け、
前記濃縮液を脱水装置で脱水し、高濃度でシリコン粒子を回収することを特徴とするシリコン回収方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシリコン回収方法において、
前記脱水装置に前記濃縮液を供給し、該脱水装置のろ過メディアにケーキ膜を形成した後、前記希薄液を膜ろ過装置に供給し得られた濃縮液を該脱水装置に供給し、脱水して高濃度でシリコン粒子を回収することを特徴とするシリコン回収方法。
【請求項3】
請求項2に記載のシリコン回収方法において、
前記希薄液及び前記脱水装置のろ液を膜ろ過装置でろ過して、そのろ液を研削・研磨用液として再利用することを特徴とするシリコン回収方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシリコン回収方法において、
前記湿式分級装置は液体サイクロンであり、該液体サイクロンのボトム液が前記濃縮液であり、トップ液が前記希薄液であることを特徴とするシリコン回収方法。
【請求項5】
請求項4に記載のシリコン回収方法において、
前記液体サイクロンのトップ液とボトム液の液量比がトップ液量50%以上、ボトム液量3%以上であることを特徴とするシリコン回収方法。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1項に記載のシリコン回収方法において、
前記膜ろ過装置はセラミックフィルターであることを特徴とするシリコン回収方法。
【請求項7】
シリコン粒子の粒径分布に2つ以上のピークを有するシリコン粒子群を含む研削或いは研磨排水を大きい粒径のピークのシリコン粒子群を含む濃縮液と、小さい粒径のピークのシリコン粒子群を含む希薄液の2つに分ける湿式分級装置と、
前記湿式分級装置からの濃縮液を脱水装置で脱水し、高濃度でシリコン粒子を回収する脱水装置と、を備えたことを特徴とするシリコン回収装置。
【請求項8】
請求項7に記載のシリコン回収装置において、
前記湿式分級装置からの希薄液及び前記脱水装置からのろ液をろ過濃縮する膜ろ過装置を備えたことを特徴とするシリコン回収装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のシリコン回収装置において、
前記湿式分級装置は液体サイクロンであり、前記濃縮液がボトム液であり、前記希薄液がトップ液であることを特徴とするシリコン回収装置。
【請求項10】
請求項8乃至9のいずれか1項に記載のシリコン回収装置において、
前記膜ろ過装置は、セラミックフィルターであることを特徴とするシリコン回収装置。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか1項に記載のシリコン回収装置において、
前記湿式分級装置からの濃縮液と前記膜ろ過装置からの濃縮液とを前記脱水装置に切換えて別々に供給する切換え供給手段を備えたことを特徴とするシリコン回収装置。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれか1項に記載のシリコン回収装置において、
前記脱水装置がフィルタープレスであることを特徴とするシリコン回収装置。
【請求項13】
請求項7乃至12のいずれか1項に記載のシリコン回収装置において、
前記脱水装置がフィルタープレスであって、該フィルタープレスに温水を循環することにより該フィルタープレス内にシリコンを加温する加熱機構を備え、更にろ室内を真空雰囲気とし該ろ室内のシリコンを真空乾燥可能としたことを特徴とするシリコン回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−69556(P2010−69556A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237915(P2008−237915)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】