説明

シリコン膜用CMPスラリー

【課題】 セルフアライン方式によるコンタクトプラグ形成のためのCMPを1種類のスラリーで実施することができる半導体素子の製造コスト低減が可能なシリコン膜用CMPスラリーを提供する。
【解決手段】 水酸化テトラメチルアンモニウムと、グリシンと、砥粒と、水とを含むCMPスラリーであって、水酸化テトラメチルアンモニウムを0.5質量%以上、グリシンを水酸化テトラメチルアンモニウムに対してモル比(グリシン/水酸化テトラメチルアンモニウム)で0.5〜4.0となる量を含むシリコン膜用CMPスラリー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン膜用CMPスラリーに関する。特にコンタクトプラグ形成に使われるシリコン膜のCMP(Chemical Mechanical Polishing)において、ポリシリコン膜をシリコン窒化膜に対して選択的に研磨し、ウエハー面内均一性を得るのに最適なシリコン研磨用CMPスラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の高集積化のため、特にDRAM、SRAMのようなメモリー素子では、MOSトランジスタのソース及びドレインと上層配線の接続のため、セルフアライン方式によるコンタクトプラグの形成が必須となっている。図1に、セルフアライン方式でコンタクトホールを形成した後、導電材となるポリシリコン膜8をウエハー全面に形成したときの半導体素子の断面の模式図を示す。図1において、1はシリコン基板、2はゲート絶縁膜、3はゲート構造を示す。ゲート構造3は、導電層の上に絶縁膜のゲートキャップ層4を有した構造となっている。ゲートの導電層には、金属シリサイド9とポリシリコン10からなる2層構造が用いられ、ゲートキャップ層4にはシリコン窒化膜が用いられる。5はゲートスペーサー、6はエッチストパーを示し、ゲートスペーサー5及びエッチストパー6にはシリコン窒化膜が用いられる。7は絶縁膜を示し、絶縁膜7にはシリコン酸化膜、BPSG膜(Boron Phosphor Silicate Glass)等が用いられる。
【0003】
コンタクトホールは、フォトレジストを用いたドライエッチングにより、絶縁膜7を除去することで形成される。8はコンタクトプラグの導電材となるポリシリコン膜を示す。
【0004】
コンタクトプラグを形成するためには、ポリシリコン膜8の不要な部分をCMPによって除去し、さらに、コンタクトホール間の短絡を防ぐため、ゲートキャップ層4も一部除去する必要がある。但し、ゲートキャップ層4はCMP後も残す必要があるため、ゲートキャップ層4を構成するシリコン窒化膜の研磨速度は速すぎてはいけない。従って、ポリシリコン膜とシリコン窒化膜の研磨速度比、すなわち、ポリシリコン膜の研磨速度:シリコン窒化膜の研磨速度は40〜100:1が適切である。
【0005】
ゲートキャップ層4の一部を除去し、ポリシリコン膜8の不要な部分を完全に除去するためのオーバー研磨は、絶縁膜7が露出した状態で行われる。この時、絶縁膜7の研磨速度が大きいと、ゲートキャップ層4が消失し、ゲートの導電層まで研磨が進行し、デバイスの歩留まりや信頼性の低下を招く。そのため、絶縁膜7を構成するシリコン酸化膜の研磨速度が、ゲートキャップ層4を構成するシリコン窒化膜に対して十分小さく、CMPがほぼ停止することが必要になる。但し、シリコン酸化膜が全く研磨されないと、逆に平坦性を損ねる。そのため、シリコン酸化膜の研磨速度は、5〜20nm/分が適切である。CMP後の半導体素子の断面図を図2に示す。
【0006】
図1に示すような半導体素子において、ポリシリコン膜8の膜厚は100〜400nm、ゲートキャップ層4の膜厚は10〜100nm程度である。このような場合に、CMPを1種類のスラリーで実施するためには、ポリシリコン膜の研磨速度は100〜600nm/分、シリコン窒化膜の研磨速度は5〜20nm/分が適切であり、ポリシリコン膜とシリコン窒化膜の研磨速度比、すなわち、ポリシリコン膜の研磨速度:シリコン窒化膜の研磨速度は40〜100:1が適切である。
【0007】
しかし、従来の技術では、ポリシリコン膜、シリコン窒化膜に対して、1種類のスラリーでは上記の研磨速度と研磨速度比が得られるスラリーはなかった。そのため、2種類のスラリーを用いて2段階のCMPを行うなどの方法が必要であり、プロセスコストの増大が問題になっていた。
【0008】
米国特許出願公開第2006/0105569号明細書には、ポリシリコン膜の研磨速度:シリコン窒化膜の研磨速度が、1:1〜4:1となるCMP条件で1種類のスラリーでCMPを行う方法が示されている。しかし、この方法では、ポリシリコン膜とシリコン窒化膜の研磨速度比、すなわち、ポリシリコン膜とシリコン窒化膜の研磨速度比が1〜4:1と小さいため、シリコン窒化膜がCMPの停止層にならず、研磨量の制御が難しいと考えられる。
【0009】
特許第3457144号公報には、塩基性有機化合物を含むポリシリコン研磨用組成物を用いる方法が示されている。この方法では、ポリシリコン膜とシリコン酸化膜の研磨速度比が大きいが、シリコン窒化膜の研磨速度が遅いため、コンタクトプラグ形成のCMPを1種類で実施することはできない。
【0010】
特許第3190742号公報には、燐酸を含む研磨剤を用いてシリコン窒化膜を研磨する方法が示されている。この方法では、シリコン窒化膜の研磨速度は120nm/分であるが、ポリシリコン膜の研磨速度が70nm/分と遅い。そのため、この場合も、コンタクトプラグ形成のCMPを1種類のスラリーで実施することはできない。このように、コンタクトプラグ形成のCMPを1種類のスラリーで実施可能なCMPスラリーは従来技術では得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0105569号明細書
【特許文献2】特許3457144号公報
【特許文献3】特許3190742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、ポリシリコン膜に対しては良好な研磨速度を示し、さらに、ポリシリコン膜以外の別の膜種に対する研磨速度比を大きくすることが可能なCMPスラリーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、水酸化テトラメチルアンモニウム及びグリシンを用いることで上記課題を解決するシリコン膜用CMPスラリーに関する。また、本発明の別の側面としては、砥粒、水酸化テトラメチルアンモニウム、グリシン及び水を含有し、pHを最適範囲に調整してなるシリコン膜用CMPスラリーに関する。
【0014】
より具体的には、本発明は以下の通りである。
1. 水酸化テトラメチルアンモニウムと、グリシンと、砥粒と、水とを含むCMPスラリーであって、水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHと略すことがある)を0.5質量%以上、グリシンを水酸化テトラメチルアンモニウムに対してモル比(グリシン/水酸化テトラメチルアンモニウム)で0.5〜4.0となる量を含むシリコン膜用CMPスラリー。
2. pHが9.0〜11.5である上記1に記載のシリコン膜用CMPスラリー。
3. 砥粒の量が、0.5〜5.0%である上記1又は上記2に記載のシリコン膜用CMPスラリー。
4.砥粒が、コロイダルシリカを含有する上記1〜3のいずれか一項に記載のシリコン膜用CMPスラリー。
5. 水酸化テトラメチルアンモニウムを0.5〜1.5質量%含む上記1〜4のいずれか一項に記載のシリコン膜用CMPスラリー。
6. グリシンを0.2〜5.0質量%含む上記1〜5のいずれか一項に記載のシリコン膜用CMPスラリー。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシリコン膜用CMPスラリーによれば、ポリシリコン膜とポリシリコン膜以外の別の膜種を適切な研磨速度と研磨速度比でCMPすることができるため、例えば、半導体素子のセルフアラインコンタクトプラグ形成のためのCMPを1種類のスラリーで行うことができる。それによって、半導体素子の製造コスト低減ならびに研磨時間の短縮が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】CMP前の半導体素子を示す断面図である。
【図2】CMP後の半導体素子を示す断面図である。
【図3】実施例におけるグリシン/TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)のモル比とポリシリコン膜の研磨速度の関係を示すグラフである。
【図4】実施例におけるCMPスラリーのpHとポリシリコン膜の研磨速度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に発明を実施するための最良の形態について詳述する。
本発明のシリコン膜用CMPスラリーは、その実施形態の一つとして、水酸化テトラメチルアンモニウムと、グリシンと、砥粒と、水とを含有するものであり、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜などのシリコン膜のCMPに有用である。特に、ポリシリコン膜、シリコン窒化膜に対して、1種類のスラリーで上述の研磨速度と研磨速度比が得られるスラリーを提供することができる。
【0018】
本発明で用いられる砥粒は、特に制限はなく、具体的には例えば、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア等が挙げられ、中でもシリカが好ましく、特にコロイダルシリカは粒径が小さい砥粒を低コストで得られ、研磨傷を低減できる点で好ましい。
【0019】
研磨傷の発生はLSIの歩留まりを低下させるため、微細化したLSIほど研磨傷の要求が厳しくなっている。従って、砥粒の平均粒径として、CMPスラリー作製前の砥粒の二次粒子の平均粒径は、好ましくは10〜200nm、より好ましくは20〜150nmである。また、CMPスラリー作製後の砥粒の二次粒子の平均粒径は、好ましくは10〜250nm、より好ましくは20nm〜200nmである。CMPスラリー作製前後おける二次粒子の平均粒径が上記範囲にある場合は、研磨傷を抑制しやすくなる傾向がある。ここで、CMPスラリー作製後とは、CMPスラリー作製から約24時間経過後を指す。また、砥粒の二次粒子の平均粒径は、動的光散乱法により測定できる。具体的には、ベックマンコールター社製のサブミクロン粒子アナライザーN5などにより測定することができる。
【0020】
シリコン膜用CMPスラリー中の砥粒の濃度(量)は、好ましくは0.5〜5.0質量%、より好ましくは1.0〜3.0質量%である。前記砥粒の濃度が0.5質量%以上である場合はシリコン膜の研磨速度が速くなる傾向にあり、5.0質量%以下である場合は研磨傷やCMPスラリーの凝集を抑制しやすくなる傾向にある。
【0021】
本発明において、水酸化テトラメチルアンモニウムを0.5質量%以上添加することで、pHを塩基性領域にするとともに、pH緩衝材としてグリシンを水酸化テトラメチルアンモニウムに対してモル比(グリシン/水酸化テトラメチルアンモニウム)で0.5〜4.0を含有させることにより、pHの著しい上昇を抑えてpHを制御する。
【0022】
水酸化テトラメチルアンモニウムの添加量を0.5質量%以上とすることで、ポリシリコン膜の研磨速度が十分に得られ、また、ウエハー面内均一性を高めることができる。
【0023】
本発明に於いて、グリシンと水酸化テトラメチルアンモニウムのモル比(グリシン/水酸化テトラメチルアンモニウム)は0.5〜4.0とする。前記モル比を0.5以上とすることで、グリシンがpH緩衝材としての効果を十分に発揮でき、pHを9.0〜11.5以内に保つことができる。このような観点で、グリシンと水酸化テトラメチルアンモニウムのモル比(グリシン/水酸化テトラメチルアンモニウム)は、0.7以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましい。一方、グリシンと水酸化テトラメチルアンモニウムのモル比(グリシン/水酸化テトラメチルアンモニウム)を4.0以下とすることで、pHを9.0以上にしつつ、安定性を確保することができる。このような観点で、前記モル比は、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましい。
【0024】
pHが11.5より小さい場合には、研磨部以外でのエッチングの発生を抑制でき、又は粒子の凝集が抑制され組成物の安定性が保たれるため好ましい。pHが9.0以上の場合には、シリコン膜の研磨速度が速く、シリコン窒化膜の研磨速度に対するシリコン膜の研磨速度比が大きくなるので好ましい。
【0025】
シリコン膜用CMPスラリー中の水酸化テトラメチルアンモニウムの量は、0.5〜1.5質量%であることが好ましい。
前記水酸化テトラメチルアンモニウムの量が0.5質量%以上の場合は、シリコン膜の研磨速度が速くなり、シリコン窒化膜の研磨速度に対するシリコン膜の研磨速度比が高くなる傾向にあり、この観点で、0.7質量%以上がより好ましい。また、1.5質量%以下の場合には、pHが著しく大きくなることはなく、それに伴ってpH緩衝材のグリシンの添加量を増量する必要がなく、結果的に砥粒の凝集を抑制でき、CMPスラリーの保存安定性を向上させることができる傾向があり、この観点で、1.2質量%以下であることがより好ましい。
【0026】
シリコン膜用CMPスラリー中のグリシンの量は、0.2〜5.0質量%であることが好ましい。前記グリシンの量が0.2質量%以上の場合は、塩基である水酸化テトラメチルアンモニウムのpH緩衝材としての働きが十分であり、pHを制御することができる。同様の観点で、前記グリシンの量は0.5質量%以上であることがより好ましい。一方、グリシンの量が5.0質量%以下の場合には、pHの低下を抑制でき、シリコン膜の研磨速度の低下を招くことがなく、また、砥粒の凝集を防止でき、CMPスラリーの保存安定性が保つことができる傾向がある。この観点で、前記グリシンの量は4.0質量%以下であることがより好ましい。
【0027】
本発明のシリコン膜用CMPスラリーは、ポリシリコン部材を研磨するためのものである。研磨されるポリシリコン部材としては、任意のものを選択できるが、具体的には、半導体デバイスが挙げられ、特に半導体基盤表面上に施されたキャパシタ、ゲート電極、及びその他に使用されているポリシリコン膜を研磨するのに適している。尚、このような基材に対して本発明のシリコン膜用CMPスラリー(研磨用組成物)を適用して研磨加工を行った場合、ポリシリコン膜とともに二酸化ケイ素膜、金属膜、又は基材材料も研磨されることがある。
【0028】
また、本発明のシリコン膜用CMPスラリーは、水酸化テトラメチルアンモニウム、グリシン、水を含むケミカル成分と、砥粒と水を含む砥粒成分の2液とすることにより、比較的高濃度の原液として調製して貯蔵又は輸送することができ、実際の研磨加工時に希釈して使用することもできる。前述の好ましい濃度範囲は、実際の研磨加工時のものとして記載したのであり、このような使用方法をとる場合、貯蔵又は輸送などをされる状態においてはより高濃度の溶液となることは言うまでもない。また、取り扱い性の観点から、そのような濃縮された形態で製造されることが好ましい。加えて、CMPスラリーのコストをさらに低減させることが可能である。尚、シリコン膜用CMPスラリーについて前述した濃度などは、このような製造時の濃度ではなく、使用時の濃度を記載したものである。
【0029】
セルフアライン方式によるコンタクトプラグ形成時のシリコン膜のCMP工程では、シリコン膜、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜の各膜の厚さに合わせて、各膜の適切な研磨速度及び研磨速度比が得られるように研磨条件を調節する必要がある。しかし、各膜の研磨速度は、膜質や、研磨パッドの種類、研磨装置の種類など様々な要因によって変化すると考えられる。それらの要因に対して、研磨圧力や研磨定盤の回転数などの研磨条件によって調節可能な範囲は限られるため、研磨条件の最適化のみで、各膜の適切な研磨速度及び研磨速度比を得るのは困難である。従って、CMPスラリーによる研磨速度及び研磨速度比を調節することが好ましい。
【0030】
本発明のシリコン膜用CMPスラリーでは、グリシン/水酸化テトラメチルアンモニウムのモル比の調整によって、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の研磨速度はほぼ一定に保ちつつ、シリコン膜の研磨速度のみを調節できるため、各膜の研磨速度比の調節が容易となり、適切な研磨速度と研磨速度比を容易に達成することが可能となる。
【0031】
被研磨膜の研磨は化学機械研磨により行なわれ、具体的には、被研磨面が形成された基板を研磨定盤の研磨布(パッド)上に押圧した状態で、本発明のシリコン膜用CMPスラリーを供給しながら研磨定盤と基板とを相対的に動かすことによって被研磨面を研磨する。
【0032】
研磨する装置としては、例えば研磨布により研磨する場合、研磨される基板を保持できるホルダと、回転数が変更可能なモータ等に接続し、研磨布を貼り付けられる定盤とを有する一般的な研磨装置が使用できる。例えば、アプライドマテリアルズ社製のMirraが使用できる。
【0033】
研磨布としては、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂などが使用でき、特に制限がない。研磨条件には制限はないが、定盤の回転速度は基板が飛び出さないように130rpm以下が好ましい。被研磨面を有する基板の研磨布への押し付け圧力(研磨圧力)が3〜60kPaであることが好ましく、CMP速度の被研磨面内均一性及びパターンの平坦性を満足するためには、6〜40kPaであることがより好ましい。
【0034】
研磨している間、研磨布にはシリコン膜用CMPスラリーをポンプ等で連続的に供給する。シリコン膜用CMPスラリーの供給量に制限はないが、研磨布の表面が常にシリコン膜用CMPスラリーで覆われていることが好ましい。
【0035】
研磨終了後の基板は、流水中でよく洗浄後、スピンドライ等を用いて基板上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。研磨布の表面状態を常に同一にしてCMPを行うために、研磨の前に研磨布のコンディショニング工程を入れることが好ましい。例えば、ダイヤモンド粒子のついたドレッサを用いて少なくとも水を含む液で研磨布のコンディショニングを行う。続いてCMP研磨工程を実施し、さらに、基板洗浄工程を加えることが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
【0037】
実施例1〜4及び比較例1〜3
実施例1〜4及び比較例1〜3の調整は以下のようにして行った。
容量1リットルのポリ容器に、グリシン:10g(和光純薬工業株式会社製)、純水:886.2g、水酸化テトラメチルアンモニウム(和光純薬工業株式会社製、濃度25質量%):28.8g、コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製、濃度20質量%):75gを投入し、室温(25℃)で30分撹拌し、CMP研磨液を作製した。また、グリシンと水酸化テトラメチルアンモニウム量を変化する以外は、同様にしてCMP研磨液を作製した。
【0038】
pHは、pHメータ(東亜ディーケーケー株式会社製の型番HM−21P)で測定した。具体的には、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液pH:4.01(25℃)、中性りん酸塩pH緩衝液pH6.86(25℃)、ホウ酸塩標準液pH:9.18(25℃))を用いて、3点校正した後、電極をCMPスラリーに入れて、10分以上経過して安定した後の値を測定した。
【0039】
CMPスラリー中のコロイダルシリカの濃度は1.5質量%とした。コロイダルシリカの二次粒子の平均粒径はCMPスラリー作製前が90nm程度、スラリー作製後は100nm程度であり、この平均粒径はスラリー作製後1ヶ月室温放置した後も殆ど変化しなかった。平均粒径はサブミクロン粒子アナライザーN5(ベックマンコールター社製)を用いて測定した。
【0040】
ポリシリコン膜、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜が形成された以下に示す各ウエハーを使用し、上記実施例1〜4の各CMPスラリーを定盤に貼り付けたパッドに滴下しながら、下記に示す研磨条件でCMP処理を行った。CMP処理前後の各膜厚を光干渉膜厚計で測定し、その膜厚差と研磨時間とから研磨速度を算出した。その結果を表1に示した。また、図3には、グリシン/水酸化テトラメチルアンモニウムのモル比とポリシリコン膜の研磨速度との関係をプロットしたグラフを示した。さらに、図4には、研磨ペーストのpHとポリシリコン膜の研磨速度との関係をプロットしたグラフを示した。
【0041】
(ウエハ)
ポリシリコン膜のCMP用としては、直径(φ)12インチのシリコンウエハーにシリコン酸化膜100nmを形成後、CVD(Chemical Vapor Deposition)によってポリシリコン膜400nmを形成したウエハーを用いた。
【0042】
シリコン窒化膜のCMP用としては、直径(φ)12インチのシリコンウエハーにCVDによってシリコン窒化膜150nmを形成したウエハーを用いた。
【0043】
シリコン酸化膜のCMP用としては、直径(φ)12インチのシリコンウエハーにTEOS−プラズマCVD法によってシリコン酸化膜500nmを形成したウエハーを用いた。
【0044】
(研磨条件)
研磨装置:定盤寸法 直径600mm、ロータリータイプ
研磨パッド:発泡ポリウレタン樹脂
パッドグルーブ:同心円状のもの
研磨圧力:2.5psi(17.2kPa)
ウエハー基板の回転数:90min−1
研磨定盤の回転数:90min−1
スラリー流量:200ml/min
研磨時間:ポリシリコン膜30秒、シリコン窒化膜120秒、シリコン酸化膜120秒
【0045】
【表1】

上記表中、TMAHは水酸化テトラメチルアンモニウムを示す。
【0046】
CMPスラリーのpHが低い比較例1は、ポリシリコン膜の研磨速度が遅く、シリコン窒化膜に対するポリシリコン膜の研磨速度比が不十分である。CMPスラリーのpHが高い比較例2及び3においても同様にシリコン窒化膜に対するポリシリコン膜の研磨速度が不十分である。これにより、pHが9.5未満又は11.5よりも大きい場合には、適切な研磨速度、研磨速度比が得られないことが分かる。また、グリシン/水酸化テトラメチルアンモニウムが0.5〜4.0となるモル比で研磨速度が大きくなる。
【符号の説明】
【0047】
1:シリコン基板
2:ゲート絶縁膜
3:ゲート構造
4:ゲートキャップ層
5:ゲートスペーサー
6:エッチストパー
7:絶縁膜
8:ポリシリコン膜
9:金属シリサイド
10:ポリシリコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化テトラメチルアンモニウムと、グリシンと、砥粒と、水とを含むCMPスラリーであって、水酸化テトラメチルアンモニウムを0.5質量%以上、グリシンを水酸化テトラメチルアンモニウムに対してモル比(グリシン/水酸化テトラメチルアンモニウム)で0.5〜4.0となる量を含むシリコン膜用CMPスラリー。
【請求項2】
pHが9.0〜11.5である請求項1に記載のシリコン膜用CMPスラリー。
【請求項3】
砥粒の量が、0.5〜5.0質量%である請求項1又は請求項2に記載のシリコン膜用CMPスラリー。
【請求項4】
砥粒が、コロイダルシリカを含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のシリコン膜用CMPスラリー。
【請求項5】
水酸化テトラメチルアンモニウムを0.5〜1.5質量%含む請求項1〜4のいずれか一項に記載のシリコン膜用CMPスラリー。
【請求項6】
グリシンを0.2〜5.0質量%含む請求項1〜5のいずれか一項に記載のシリコン膜用CMPスラリー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−235045(P2012−235045A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104230(P2011−104230)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】