説明

シリコン貫通ビア(TSV)ウエハの研磨用研磨組成物およびその使用方法

【課題】シリコン貫通ビア(TSV)研磨用の研磨組成物およびそれを用いたTSVウエハの研磨方法を提供する。
【解決手段】この研磨組成物は、有機アルカリ化合物、酸化剤、キレート化剤、酸化ケイ素研磨材粒子、および溶媒を含んでいる。この研磨組成物を用いることによって、シリコンと導電材料を同時に研磨することができ、TSVウエハの研磨に必要な作業時間費用を有意に節約することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨組成物、特には、シリコン貫通ビア(TSV)ウエハの研磨用研磨組成物に関する。また、本発明は、その研磨組成物を用いてTSVウエハを研磨する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、TSVウエハ1の元々の構造を示しており、それは集積回路層11、集積回路層11上に配置されたシリコンウエハ層12、および導電材料13を含んでいる。導電材料13は、シリコンウエハ層12中に埋め込まれており、シリコンウエハ層12の表面121に対して概ね垂直であり、そして集積回路層11に接続されている。一般には、研磨されていないTSVウエハ中の導電材料13の末端表面131は、シリコンウエハ層12の表面121から約200マイクロメートルにある。
【0003】
表面121は、次いで研削によって研磨され、それによってシリコンウエハ層12は、迅速に薄くされ、そしてして従って導電材料13の末端表面131とシリコンウエハ層12との間の距離は、約数十マイクロメートルにまで低減される。
【0004】
シリコンウエハ層12を研削し、そして薄くした後に、図2中に示されるように、損傷した層14が表面121の近傍に形成される。従って、研削工程の後に、表面121は、化学機械研磨(CMP)で精密研磨に掛けられて、仕上げをし、そして損傷した層14を取り除き、そして更にTSVウエハ1を所望の状態にまで研磨しなければならない。
【0005】
精密に研磨されたTSVウエハ1の理想的な状態は、次工程の要求によって変わる。例えば、導電材料13の末端表面131およびそれを取り囲むシリコンウエハ層12の上面の表面121は、図3に示されているように同一平面上にあるか、または末端表面131は、図4に示されているように上面の表面121から突き出ている。
【0006】
実際的な操作では、TVSウエハがCMPプロセスに掛けられる場合には、このシリコンウエハ層12および導電材料13は、通常は同時に研磨される。従って、TSVウエハの有意な量を研磨する必要がある製造者とっては、シリコンウエハ層12と導電材料13の両方を同時に、そして迅速に除去して、好適な状態することができるならば、製造プロセスにおいて、非常に多額の作業時間コストを節約することができる。しかしながら、商業的に入手可能な研磨組成物は、シリコンまたは導電材料のいずれかの、単に唯一の材料で構成される一般的なシリコンウエハ用に主に設計されており、そしてTSVウエハを直接研磨するには好適ではない。
【0007】
米国特許第4,169,337号明細書は、コロイド状酸化ケイ素(SiO)研磨材粒子またはシリカゲル、および水溶性アミンを含むシリコンウエハ用研磨組成物に向けられている。米国特許第5,230,833号明細書は、コロイド状酸化ケイ素研磨材粒子、有機塩基および殺生物剤を含む、シリコンウエハ用の他の研磨組成物に向けられている。最近では、酸化ケイ素研磨材粒子および有機塩基を含む研磨組成物は、シリコンに有意な研磨効果を有しているというのが、産業界の見解である。
【0008】
米国特許第5,225,034号明細書は、HO,固体研磨材、および硝酸銀(AgNO)、硝酸(HNO),および硫酸(HSO)、ならびにそれらの混合物からなる群から選ばれる第3成分を含んだ、主に銅を含有する金属層用の研磨組成物に向けられている。一般に、工業界で通常用いられている導電材料用の研磨組成物は、通常は酸性成分を含んでいる。
【0009】
上記の研磨組成物は、特定の単一の物質、例えばシリコンまたは導電材料の研磨用には好適である。シリコンおよび導電材料を同時に研磨する場合には、これらの2つの物質の除去速度は、互いに非常に異なっており、従って、研磨組成物中の1つの特定の成分の量を増加することによってシリコンと導電材料の研磨速度を同時に増大させることは困難である。例えば、研磨組成物中の有機塩基、例えばエチレンジアミンの濃度を増大させた場合には、シリコン除去速度が、導電材料除去速度を有意に凌駕する。すなわち、シリコン除去速度は、10000オングストローム/分超であり、一方で、導電材料除去速度は、わずかに約1000オングストローム/分である可能性がある。
【0010】
同様に、過酸化水素(H)、研磨組成物中で広範囲に用いられている酸化剤もまた、導電材料の研磨用に有用であるが、しかしながら、これはシリコンを容易に酸化して、硬質のシリカにしてしまう可能性がある。従って、研磨組成物中の過酸化水素の量を増加させる場合には、導電材料除去速度もまた増加するが、しかしながらシリコン除去速度は有意に減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,169,337号明細書
【特許文献2】米国特許第5,230,833号明細書
【特許文献3】米国特許第5,225,034号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、過酸化水素は、シリコンと導電材料の同時研磨用の研磨組成物の成分としては好適であるとは考えられない。シリコンと導電材料の両方を含むTSVウエハの研磨用に好適であり、かつ研磨されるTSVウエハ上のシリコンと導電材料とを安定して、そして同時に除去することもできる、半導体工業における使用のための研磨組成物への要求が存在している。更に、この研磨組成物の成分は、容易に入手できなければならない。また、関連した研磨方法も提供されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、研磨組成物の成分として、酸化剤としての亜塩素酸塩または臭素酸塩を、有機アルカリ化合物ならびにキレート化剤と組み合わせて用いることを試みた。驚くべきことには、この配合された研磨組成物は、シリコンと導電材料の両方に優れた研磨効果を示す。
【0014】
従って、本発明の目的は、TSVウエハ研磨用の研磨組成物を提供することである。この研磨組成物は、有機アルカリ化合物、酸化剤、キレート化剤、酸化ケイ素研磨材粒子および溶媒を含んでいる。
【0015】
本発明の更なる目的は、上記の研磨組成物を用いて、研磨されるTSVウエハ上の導電材料とシリコンを同時に、そして安定して取り除くことができる研磨方法を提供することである。この研磨方法は、TSVウエハの表面を研磨組成物での研磨処理に掛けて、TSVウエハ上のシリコンと導電材料を同時に除去することを含んでいる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の研磨組成物およびそれを用いた研磨方法によって、TSVウエハ上のシリコンと導電材料は、過酸化水素を用いることなく、より容認できる速度で、同時に除去される。また、TSVウエハのCMPプロセス用の、新規で信頼できる研磨組成物および研磨方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、研磨されていないTSVウエハの当初の構造を示す図である。
【図2】図2は、研削の前後の、TSVウエハ中のそれぞれの要素の対応する状態を示す図である。
【図3】図3は、CMP研磨後の導電材料の末端表面を表す図であり、シリコンウエハ層の表面と同一平面上にある。
【図4】図4は、CMP研磨後の導電材料の末端表面を表す図であり、シリコンウエハ層の表面から突き出ている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、TSVウエハ研磨用の研磨組成物を提供する。本発明によれば、研磨組成物のpH値および、それぞれの成分の種類と濃度は、特には限定されない。しかしながら、当工業界における実施に関連した研磨組成物の費用および研磨効果の両方を考慮して、それぞれの成分の種類と量は、以下の説明において更に説明および示唆される。
【0019】
本発明の研磨組成物では、有機アルカリ化合物は、好ましくは、ジアミン、トリアミン、テトラアミンおよびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。好適な有機アルカリ化合物としては、例えばエチレンジアミン、N−(−2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、またはそれらの組み合わせが挙げられる。下記の例では、例示される有機アルカリ化合物はエチレンジアミンおよび1,2−ジアミノプロパンである。
【0020】
有機アルカリ化合物は、好ましくは本発明の研磨組成物中に、約0.01質量%〜約25質量%、より好ましくは約0.1質量%〜約20質量%で、存在している。下記の例では、有機アルカリ化合物の例示された濃度は、約0.5質量%〜約15質量%の範囲である。
【0021】
本発明によれば、研磨組成物中に含まれる酸化剤は、亜塩素酸塩、臭素酸塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。例えば、この酸化剤は、アルカリ金属亜塩素酸塩、アンモニウム亜塩素酸塩、アルカリ金属臭素酸塩、アンモニウム臭素酸塩およびそれらの組み合わせからなる群から選ぶことができる。好ましくは、この酸化剤は、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸アンモニウム、亜塩素酸テトラメチルアンモニウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、臭素酸セシウム、臭素酸アンモニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。本発明の好ましい態様によっては、研磨組成物は、酸化剤として、亜塩素酸ナトリウムおよび/または臭素酸カリウムを含んでいる。
【0022】
好ましくは、本発明の研磨組成物は、酸化剤を、ClOおよびBrOの合計の濃度として、約0.005質量モル濃度〜約1質量モル濃度、より好ましくは約0.01質量モル濃度〜約0.5質量モル濃度の範囲で含んでいる。すなわち、本発明の研磨組成物の1000g中に、ClOおよびBrOの合計のモルが、好ましくは約0.005〜約1モル、そしてより好ましくは約0.01〜約0.5モルの範囲である。従って、本発明の態様によっては、酸化剤は亜塩素酸塩であり、そして研磨組成物中に、約0.02質量モル濃度〜約0.4質量モル濃度の範囲のClO濃度で存在しているか、または約0.03質量モル濃度〜約0.3質量モル濃度の範囲の、BrO濃度での臭素酸塩である。
【0023】
本発明による研磨組成物は、更にキレート化剤を含んでいる。理論によって拘束されはしないが、キレート化剤の添加は、シリコンの除去速度を維持するのに有用である。特に、シリコンと導電材料の両方を含むTSVウエハを研磨する場合には、シリコンの除去速度は影響を受けて、そして徐々に低下する。その理由は、研磨機械および用具が、研磨の間に発生された導電材料のイオンによって汚染されるためである可能性がある。本発明者らは、驚くべきことに、研磨組成物中のキレート化剤が、導電材料のイオンの除去を促進することができる、すなわち、キレートを形成して、それによってTSVウエハ上のシリコンの除去速度の低下を抑制することができることを見出した。
【0024】
本発明によれば、好適なキレート化剤は、一般には式(R)n2−R−(R)n1を有しており、ここでRはC〜Cアルキレン、C〜CアルケニレンまたはC〜C12芳香族環であり、非置換もしくは、−C(O)OH、−OH、−(CH)P(O)(OH)およびC〜Cアルキルからなる群から選ばれる置換基によって置換されていて、ここでxは0、1、2もしくは3であり、そしてC〜CアルキレンおよびC〜Cアルケニレン中の1個もしくは2個以上の炭素原子は、O、NおよびSから選ばれるヘテロ原子で置換されていてもよく;それぞれのRは独立して、−C(O)OHまたは−(CH)P(O)(OH)であり、ここでxは0、1、2もしくは3であり;それぞれのRは、独立してH、−C(O)OHまたは−(CH)P(O)(OH)であり、ここでxは0、1、2もしくは3であり;そしてn1およびn2は独立して1もしくは2である。好ましくは、式(R)n2−R−(R)n1中で、Rは、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、>N(CH)NH(CH)N<、またはフェニルであり、非置換か、もしくは−C(O)OH、−OH、−(CH)P(O)(OH)およびメチルからなる群から選ばれる置換基によって置換されている。
【0025】
例えば、キレート化剤は、クエン酸、サリチル酸、DL−酒石酸、マレイン酸、コハク酸、アクリル酸、乳酸、アジピン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMPA、例えばDequest(登録商標)2010S)、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP、例えばDequest(登録商標)2010)およびそれらの組み合わせからなる群から選ぶことができ、そして好ましくは、サリチル酸、アクリル酸、DL−酒石酸、HEDP、乳酸、クエン酸、アジピン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMPA)およびそれらの組み合わせから選ばれる。
【0026】
このキレート化剤は、研磨組成物中に、約0.01質量%〜約15質量%、そして好ましくは約0.1質量%〜約10質量%で、存在している。下記の例では、例示されたキレート化剤は、本発明の研磨組成物中に、約0.5質量%〜約8質量%で存在している。
【0027】
更に、溶媒は、下記の例中で例示されているように、水であることができる。
【0028】
酸化ケイ素研磨材粒子は、コロイド状シリカ、フュームドシリカ、沈降シリカおよびそれらの組み合わせからなる群から選ぶことができる。下記の例では、例示された酸化ケイ素研磨材粒子は、コロイド状シリカである。
【0029】
酸化ケイ素研磨材粒子は、本発明の研磨組成物中に、好ましくは約0.01質量%〜約30質量%、そしてより好ましくは約0.1質量%〜約15質量%で存在している。下記の例では、酸化ケイ素研磨材粒子の例示された濃度は、約0.5質量%〜約10質量%の範囲である。
【0030】
本発明による研磨組成物のpH範囲は、好ましくは9超であり、そしてより好ましくは10超である。
【0031】
また、本発明は、上記の研磨組成物を用いた、TSVウエハの研磨のための方法を提供する。特に、本発明による方法は、TSVウエハの1つの表面を、上記の本発明の研磨組成物での研磨処理に掛けるものである。研磨処理の間には、TSVウエハが、研磨パッドと、研磨圧力で接触するのと同時に、研磨組成物は、研磨パッドとTSVウエハの間の場所に向かって、所定の流動速度で流動する。このTSVウエハと研磨パッドは、それぞれの回転速度を有していて、TSVウエハを研磨する。
【0032】
「TSVウエハの表面」は、TSVウエハの、集積回路層11から最も遠い表面を意味しており、そしてシリコンウエハ層の表面121であることができ(図1に示されているように)、または導電材料の末端表面131を包含していてもよい(図3中に示されているように)ことを最初に明確にしておかなければならない。
【0033】
このような操作によって、研磨されるTSVウエハ上のシリコンの除去速度の低下は抑制することができ、そしてTSVウエハ上のシリコンと導電材料は、同時に除去される。導電材料は、好ましくは、銅、タングステン、アルミニウムおよび多結晶シリコンから選ばれる。下記の例示された導電材料は、銅で作られている。
【0034】
本発明の方法は、種々の研磨機械における構成要素設計または使用者の操作方法に応じて調整することができることに注目しなければならない。これらの成分は、最初に混合して本発明の研磨組成物を形成して、そして次いで研磨機械から流動するか、またはそれぞれの成分が同時に、そして別々に、研磨機械の異なる管を経由して導入されて、そしてそれらが混合されて本発明の研磨組成物を形成するのと同時に、この機械から流動することができるかの、いずれかであることができる。更に、組成物の安定性および輸送、あるいは使用者の貯蔵の利便性のために、本発明の研磨組成物は、個別にもしくは混合して、濃縮溶液へと配合することができる。下記の例では、研磨組成物は、「これらの成分は混合されて、好適な濃度を備えた研磨組成物を与え、そしてこの組成物は次いで研磨機械から流動する」という操作方法によって例示される。
【実施例】
【0035】
本発明の態様および効果が、例および比較例で説明され、そしてそれらの研磨組成物の成分の種類および量が、表1中に示されている。これらの例および比較例は、以下の化学薬品および装置を用いた。これらの例は、例示のためを意図したものであり、そして本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【0036】
特に断りのない限り、例(Ex.)および比較例(cEx.1)中の研磨方法は、大気温度および大気圧で行なった。それぞれの研磨組成物は、溶媒として水を用いて調製し、そして第1のベアシリコンウエハ、ブランケット銅ウエハ、および第2のベアシリコンウエハを、予め定めた継続時間で、それぞれ研磨するのに用いた。シリコンと銅の研磨速度は、研磨前後のウエハの厚さを測定して、そして結果の値を計算することによって得た。例と比較例の研磨方法は、同じ機械パラメータ(すなわち、研磨圧力=21kPa(3psi)、研磨ヘッドの回転速度(TSVウエハの回転速度)=87rpm、研磨パッドの回転速度=93rpm、研磨組成物の流量=200mL/分、研磨継続時間=1分間)を用いて行なった。
【0037】
成分および装置としては、(1)研磨機械:G&P Inc.(韓国)から商業的に入手可能なPOLI-500;(2)研磨パッド:Cabot Microelectronics Corporation(米国)から商業的に入手可能なEPIC D100研磨パッド;(3)ベアシリコンウエハ:Silicon Valley Microelectronics, Inc.(米国)から商業的に入手可能な一般的なベアシリコンウエハ;(4)ブランケット銅ウエハ:SKW Associates, Inc.から商業的に入手可能な、1.5μmの銅膜を備えたブランケット銅ウエハ;(5)酸化ケイ素研磨材粒子:Akzo Nobel Inc.(オランダ国アムステルダム)から商業的に入手可能なBINDZIL SP599L;(6)例えば、Sigma-Aldrich(米国、ミズーリ州)、Alfa Aesar(米国マサチューセッツ州)、ACROS(ベルギー国、へール)、MERCK KGaA(独国、ダルムシュタット)、Showa Chemical(日本国、東京)、および(スイス国、ツーク)を含めた幾つかの供給先から商業的に入手可能な純度99%以上の以下の化学試薬:エチレンジアミン(EDA)、1,2−ジアミノプロパン(DAP)、亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、臭素酸カリウム(KBrO)、サリチル酸、DL−酒石酸、クエン酸一水和物、アクリル酸、乳酸、Dequest(登録商標)2060S(ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMPA)、Dequest(登録商標)2010(ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、HEDP)、およびアジピン酸、が挙げられる。
【0038】
【表1】

【0039】
例1〜15は、本発明によるTSVウエハの研磨方法は、TSVウエハ上の導電材料とシリコン材料を同時に研磨することを可能にすることを示している。比較例1(キレート化剤の添加なし)に比べると、例1〜15における第1のベアシリコンウエハと第2のベアシリコンウエハの除去速度の低下度は、比較例1に比べてより良好であることがわかる。TSVウエハの研磨の間のシリコン除去速度の低下は、キレート化剤の添加によって適切に抑制することができる。
【0040】
従って、本発明による研磨組成物およびTSVウエハの研磨方法は、TSVウエハの現在のCMP分野において、作業時間コストを有意に節約する一方で、シリコン材料と導電材料を同時に、安定して研磨するための解決策を与える。
【0041】
ここに引用された文献、特許出願、および特許を含めた全ての参照文献を、それぞれの参照文献が、参照することによって本明細書の内容とされるように、個々に、そして具体的に述べられ、そしてその全体を個々に説明されていたのと同様に、参照することによって本明細書の内容とする。
【0042】
本発明を説明するのに関連した(特に特許請求の範囲に関連した)用語「1つ」および「該」および類似の用語の使用は、本明細書中に特に断りのない限り、もしくは文脈から明確に否定されない限り、単数および複数の両方を包含すると理解されるべきである。用語「含む」、「有する」および「包含する」は、特に断りのない限り、非制限語句(すなわち、「含むが、それらには限定されない」との意味)として理解されなければならない。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書中で特に断りのない限り、その範囲に入るそれぞれの別個の値を個々に参照する簡便な方法としての役割を果たすことを意図しており、そしてそれぞれの別個の値は、それが本明細書中に個々に引用されているように、明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載された全ての方法は、本明細書中で特に断りのない限り、もしくは文脈によって明確に否定されない限り、いずれかの好適な順番で実施することができる。いずれかの、もしくは全ての例の使用、または本明細書中の例示的な言葉(例としては、「例えば」)は、本発明をよりよく説明することを単に意図したものであり、そして特に断りのない限り、本発明の範囲に限定を与えるものではない。本明細書中の言葉は、いずかれの特許請求していない要素が、本発明の実施に必要であることを表すと解釈してはならない。
【0043】
本発明の好ましい態様が、本明細書中に記載されており、本発明の実施のために発明者らによって知られているベストモードを含んでいる。これらの好ましい態様の変形が、前記の説明を読んだ当業者には明らかであることができる。本発明者らは、当業者が、そのような変形を適切に使用することを期待するものであり、そして本発明者らは、本明細書中に記載された発明が、本明細書中に具体的に記載されたものとは別様に実施されることを意図している。従って、本発明は、適用される法律によって許されるように、添付の特許請求の範囲の中に列挙された主題の全ての変更および均等物を包含している。更に、上記の要素の全ての可能な変化における上記の要素のいずれかの組み合わせも、特に断りのない限り、またはさもなければ文脈によって明確に否定されない限り、本発明によって包含される。
【0044】
本発明の要旨は、次の通りである。
(1)有機アルカリ化合物、酸化剤、キレート化剤、酸化ケイ素研磨材粒子および溶媒を含んでなる、シリコン貫通ビア(TSV)ウエハ研磨用の研磨組成物であって、該酸化剤は、亜塩素酸塩、臭素酸塩およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、かつ該キレート化剤は、式(R)n2−R−(R)n1を有しており、ここで
Rは、C〜Cアルキレン、C〜CアルケニレンまたはC〜C12芳香族環であり、非置換もしくは、−C(O)OH、−OH、−(CH)P(O)(OH)およびC〜Cアルキルからなる群から選ばれた置換基によって置換されていて、ここでxは0、1、2もしくは3であり、そしてC〜CアルキレンおよびC〜Cアルケニレン中の1個もしくは2個以上の炭素原子は、O、NおよびSから選ばれるヘテロ原子で置換されていてもよく;
それぞれのRは独立して、−C(O)OHもしくは−(CH)P(O)(OH)であり、ここでxは0、1、2もしくは3であり;
それぞれのRは、独立してH、−C(O)OHもしくは−(CH)P(O)(OH)であり、ここでxは0、1、2もしくは3であり;
n1およびn2は独立して1もしくは2である、
TSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(2)前記有機アルカリ化合物が、ジアミン、トリアミン、テトラアミンおよびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、上記(1)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(3)前記有機アルカリ化合物が、エチレンジアミン、N−(−2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、1,2−ジアミノプロパン、ジエンチレントリアミン、トリエチレンテトラアミンおよびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、上記(2)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(4)前記有機アルカリ化合物が、エチレンジアミンである、上記(3)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(5)前記有機アルカリ化合物が、前記研磨組成物中に、約0.01質量%〜約25質量%存在している、上記(1)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(6)前記有機アルカリ化合物が、前記研磨組成物中に、約0.1質量%〜約20質量%存在している、上記(5)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(7)前記有機アルカリ化合物が、前記研磨組成物中に、約0.5質量%〜約15質量%存在している、上記(6)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(8)前記酸化剤が、アルカリ金属亜塩素酸、アンモニウム亜塩素酸、アルカリ金属臭素酸塩、アンモニウム臭素酸塩およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、上記(1)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(9)前記酸化剤が、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸アンモニウム、亜塩素酸テトラメチルアンモニウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、臭素酸セシウム、臭素酸アンモニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、上記(8)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(10)前記酸化剤が亜塩素酸ナトリウム、臭素酸カリウムおよびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、上記(9)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(11)前記研磨組成物が、前記酸化剤を、ClOおよびBrOの合計の濃度として、約0.005質量モル濃度〜約1質量モル濃度の範囲で含む、上記(1)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(12)前記研磨組成物が、前記酸化剤を、ClOおよびBrOの合計の濃度として、約0.01質量モル濃度〜約0.5質量モル濃度で含む、上記(1)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(13)前記酸化剤が、亜塩素酸塩であり、かつ前記研磨組成物中に、約0.02質量モル濃度〜約0.4質量モル濃度の範囲のClO濃度で存在しているか、または約0.03質量モル濃度〜約0.3質量モル濃度の範囲のBrO濃度の臭素酸塩である、上記(12)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(14)前記酸化ケイ素研磨材粒子が、前記研磨組成物中に、約0.01質量%〜約30質量%で存在している、上記(1)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(15)前記酸化ケイ素研磨材粒子が、前記研磨組成物中に、約0.1質量%〜約15質量%で存在している、上記(14)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(16)前記酸化ケイ素研磨材粒子が、前記研磨組成物中に、約0.5質量%〜約10質量%で存在している、上記(15)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(17)前記溶媒が、水である、上記(1)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(18)Rが、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、>N(CH)NH(CH)N<、またはフェニルであり、置換されていないか、もしくは−C(O)OH、−OH、−(CH)P(O)(OH)およびメチルからなる群から選ばれる置換基によって置換されている、上記(1)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(19)前記キレート化剤が、クエン酸、サリチル酸、DL−酒石酸、マレイン酸、コハク酸、アクリル酸、乳酸、アジビン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMPA)、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、上記(18)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(20)前記キレート化剤が、サリチル酸、アクリル酸、DL−酒石酸、HEDP、乳酸、クエン酸、アジビン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMPA)およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、上記(19)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(21)前記キレート化剤が、前記研磨組成物中に、約0.01質量〜約15質量%で存在している、上記(1)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(22)前記キレート化剤が、前記研磨組成物中に、約0.1質量%〜約10質量%で存在している、上記(21)1記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(23)前記キレート化剤が、前記研磨組成物中に、約0.5質量〜約8質量%で存在している、上記(22)記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
(24)シリコン貫通ビア(TSV)ウエハの研磨方法であって、TSVウエハの表面を、上記(1)〜(23)のいずれかに記載の研磨組成物での研磨処理に掛けて、該TSVウエハ上のシリコンと導電材料を同時に取り除く工程を含む、TSVウエハの研磨方法。
(25)前記導電材料が、銅で作られている、上記(24)記載のTSVウエハの研磨方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機アルカリ化合物、酸化剤、キレート化剤、酸化ケイ素研磨材粒子および溶媒を含んでなる、シリコン貫通ビア(TSV)ウエハ研磨用の研磨組成物であって、該酸化剤は、亜塩素酸塩、臭素酸塩およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、かつ該キレート化剤は、式(R)n2−R−(R)n1を有しており、ここで
Rは、C〜Cアルキレン、C〜CアルケニレンまたはC〜C12芳香族環であり、非置換もしくは、−C(O)OH、−OH、−(CH)P(O)(OH)およびC〜Cアルキルからなる群から選ばれた置換基によって置換されていて、ここでxは0、1、2もしくは3であり、そしてC〜CアルキレンおよびC〜Cアルケニレン中の1個もしくは2個以上の炭素原子は、O、NおよびSから選ばれるヘテロ原子で置換されていてもよく;
それぞれのRは、独立して、−C(O)OHもしくは−(CH)P(O)(OH)であり、ここでxは0、1、2もしくは3であり;
それぞれのRは、独立してH、−C(O)OHもしくは−(CH)P(O)(OH)であり、ここでxは0、1、2もしくは3であり;
n1およびn2は独立して1もしくは2である、
TSVウエハ研磨用の研磨組成物。
【請求項2】
前記有機アルカリ化合物が、ジアミン、トリアミン、テトラアミンおよびそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、前記酸化剤が、アルカリ金属亜塩素酸、アンモニウム亜塩素酸、アルカリ金属臭素酸塩、アンモニウム臭素酸塩およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
【請求項3】
前記有機アルカリ化合物が、エチレンジアミン、N−(−2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、前記酸化剤が、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸アンモニウム、亜塩素酸テトラメチルアンモニウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、臭素酸セシウム、臭素酸アンモニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項2記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
【請求項4】
前記有機アルカリ化合物が、エチレンジアミンであり、前記酸化剤が亜塩素酸ナトリウム、臭素酸カリウムおよびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項3記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
【請求項5】
前記有機アルカリ化合物が、前記研磨組成物中に、0.01質量%〜25質量%存在しており、前記研磨組成物が、前記酸化剤を、ClOおよびBrOの合計の濃度として、0.005質量モル濃度〜1質量モル濃度の範囲で含む、請求項1記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
【請求項6】
前記有機アルカリ化合物が、前記研磨組成物中に、0.1質量%〜20質量%存在しており、前記研磨組成物が、前記酸化剤を、ClOおよびBrOの合計の濃度として、0.01質量モル濃度〜0.5質量モル濃度の範囲で含む、請求項5記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
【請求項7】
前記酸化ケイ素研磨材粒子が、前記研磨組成物中に、0.01質量%〜30質量%で存在している、請求項1記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
【請求項8】
前記溶媒が、水である、請求項1記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
【請求項9】
Rが、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、>N(CH)NH(CH)N<、またはフェニルであり、置換されていないか、もしくは−C(O)OH、−OH、−(CH)P(O)(OH)およびメチルからなる群から選ばれる置換基によって置換されている、請求項1記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
【請求項10】
前記キレート化剤が、クエン酸、サリチル酸、DL−酒石酸、マレイン酸、コハク酸、アクリル酸、乳酸、アジビン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMPA)、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項9記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
【請求項11】
前記キレート化剤が、サリチル酸、アクリル酸、DL−酒石酸、HEDP、乳酸、クエン酸、アジビン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMPA)およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項10記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
【請求項12】
前記キレート化剤が、前記研磨組成物中に、0.01質量%〜15質量%で存在している、請求項1記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
【請求項13】
前記キレート化剤が、前記研磨組成物中に、0.1質量〜10質量%で存在している、請求項12記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
【請求項14】
前記キレート化剤が、前記研磨組成物中に、0.5質量〜8質量%で存在している、請求項13記載のTSVウエハ研磨用の研磨組成物。
【請求項15】
シリコン貫通ビア(TSV)ウエハの研磨方法であって、TSVウエハの表面を、請求項1〜14のいずれか1項記載の研磨組成物での研磨処理に掛けて、該TSVウエハ上のシリコンと導電材料を同時に取り除く工程を含む、TSVウエハの研磨方法。
【請求項16】
前記導電材料が、銅で作られている、請求項15記載のTSVウエハの研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−199507(P2012−199507A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187224(P2011−187224)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(511211106)エポック マテリアル カンパニー,リミティド (1)
【Fターム(参考)】