説明

シリコーンアクリルハイブリッドポリマーを基剤とする接着剤

シリコーンポリマーと、シリコーン樹脂と、シリル含有アクリルポリマーとを相互に反応させることによって調製したシリコーンアクリルハイブリッド組成物は、接着剤組成物において有用であり、皮膚接触用途において有用であることが見出された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンアクリルハイブリッドポリマーと、該ハイブリッドポリマーを含有する感圧接着剤組成物およびそれらの最終用途に関する。特に、本発明は、皮膚接触用途に対して理想的に適する接着剤と、医療テープおよび経皮ドラッグデリバリーシステムの製造において使用できる接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
感圧接着剤(PSA)組成物は、感圧接着剤テープの製造において使用されている。このようなテープは、一般に支持基材とPSA組成物を含有する。
【0003】
PSA組成物が幅広く使用される1分野は、医療区分、例えば種々のテープ、包帯およびドラッグデリバリーデバイスである。例えば皮膚プラスターなどの多くの用途において、PSA組成物と患者の皮膚とを直接接触させる場合がある。皮膚に対して施される接着剤は、室温で恒久的に粘着性であり、軽い圧力で皮膚に対して接着物を保持でき、痛みを伴わずまたは接着剤残余を付着させることなく容易に除去できるべきである。
【0004】
医療用途の場合、皮膚のかぶれ及びアレルギー反応を避ける必要があるので、PSA組成物に課される要求は特に厳しい。さらに、このような接着剤は、気候が暑い場合の発汗中、または排液性創傷の条件下においても、人間の皮膚に対して良好に接着する必要がある。
【0005】
連続して制御される経皮(すなわち皮膚を介する)ドラッグデリバリーは、他の投与法と比較して多くの利点を有する。経皮ドラッグデリバリーは、快適、便利であり、また、ドラッグデリバリーの他の方法(経口による、一定の時間間隔で薬剤を導入する方法、または皮下注射法など)に比べ非侵襲性の代替法である。経皮ドラッグデリバリーシステムは、持続した放出様式で薬剤放出を制御できるだけでなく、副作用(例えば胃腸刺激)を低減し、肝初回通過による不活性化を防ぎ、消化管からの乏しい吸収もしくは不規則な吸収を防ぎ、胃腸液による不活化を防ぐことができる。経皮ドラッグデリバリーは、任意所望の薬剤の血中濃度を高度に制御することもできる。これらの利点は、患者の薬剤服用順守を向上させると共に、薬剤の安全性および効能を向上させる。
【0006】
経皮ドラッグデリバリーシステムの場合、薬剤は、感圧接着剤を介して皮膚へ施されるパッチから供給される。連続的な経皮ドラッグデリバリーデバイスに関する既知の利点は、種々の薬剤の投与に関する経皮ドラッグデリバリーシステムの発展を促進している。
【0007】
アクリレートを基剤とするPSAは、経皮ドラッグデリバリーシステムにおいて幅広く使用されている。何故ならば、他のPSAと比べて比較的安価であり、多くの種類の機能性薬剤と可溶性であり、多種多様な表面に対して良好に接着し、所望により、表面に接着性を形成させることができるからである。アクリレートを基剤とするPSAの欠点は、乏しい高温性能、乏しい低温性能、低い表面エネルギーを備える表面への接着が不可能であること、医療用テープ用途の場合、皮膚に対する過度の接着性をもたらす可能性があり、その結果、使用者からの除去に苦痛をもたらし得ることである。
【0008】
シリコーンを基剤とする接着剤は、良好な高温性能および低温性能を示し、優れた化学的不活性と、電気絶縁性、生体適合性および低い表面エネルギー基材への接着性を有する。シリコーンを基剤とするPSAの主な欠点は、他の技術と比べてそれらのコストが高いことである。必要であるとすれば、他の制限は、アクリレートを基剤とするPSAと比べて、より低い粘着性と限られた接着性を含むことである。
【0009】
皮膚へ適用されるシリコーン接着剤とアクリル接着剤は、当該技術分野において既知であり使用されている。医療用途、特にドラッグデリバリー用途において使用できる改良されたPSAについて、継続した要求と連続的な必要性が生じている。経皮ドラッグデリバリー用途の場合、薬学的に活性な原料は、シリコーンPSAマトリックス中で、通常、極めて低い溶解性を有する一方で、アクリルPSAマトリックス中での溶解性は、通常より高い。特定用途に対するデリバリーシステムを最適化するために、中程度の溶解性をもたらすことが望まれる場合もある。ノーブン・ファーマシューティカルズ社(Noven Pharmaceutical)により採用された単純な方法は、米国特許第5474783号明細書、同5656286号明細書、同6024976号明細書、同6221383号明細書、同6235306号明細書、同6465004号明細書および同6638528号明細書において開示され、該方法はシリコーンとアクリルPSAの単純ブレンドを調製することである。薬剤溶解性の最適化はこのやり方により達成できるが、非相溶ポリマーのこのようなブレンドは、熱力学的に不安定である。このことは、巨視的な相分離をもたらし、時間と共に接着特性を変化させる。ダウ・コーニング社は、アクリルグラフト化シリコーンPSAを調製することで、この問題に打ち勝つための試みをおこなっており、WO2007/145996号明細書に開示されている。該方法は、下記の3段プロセスを使用する:まず、シリコーンPSAをゴムと樹脂で増粘させることにより調製し、次いで、このPSAをフリーラジカル的な反応性試薬でキャップし、最後に、アクリルモノマーを添加し、次いで、キャップしたPSAの存在下でフリーラジカル的に反応させる。この複合過程は、より問題のある、モノマー残渣の除去を要する。高濃度のアクリルモノマーは、皮膚に接触させる用途において受け入れられない。さらに、シリコーンとアクリルポリマーのフリー・ラジカルグラフトは比較的制御されずにおこなわれる。このやり方の更なる欠点は、高い凝集を得るために、外部架橋剤および/または高濃度の酸コモノマーを必要とすることである。高い凝集は、接着剤にパッチの端部からの低温流れをもたらす有効成分または他の添加剤(例えば、皮膚浸透向上剤など)の可塑化効果に打ち勝つために必要であり、またパッチの除去後に皮膚上に接着剤が残存することを防ぐために必要である。外部添加剤、例えば過酸化ジベンゾイル、金属アセチルアセトネートまたはオルトアルキルチタネートは、それらの分解または薬剤との相互作用の結果、所望でない副生成物の形成を生じさせる。高濃度の酸も薬剤との相互作用をもたらす恐れがあるので望ましくない。
【0010】
シリコーンとアクリレートの物理的ブレンドは既知であるが、このような物理的ブレンドは熱力学的に不安定であり、巨視的な相分離をもたらし、時間と共に接着特性を変化させ得る。また、成分の残りが相互に共有グラフト化されたとしても、未反応のシリコーンおよびアクリル成分は混和性でないので、このことは、時間と共に相分離をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5474783号明細書
【特許文献2】米国特許第5656286号明細書
【特許文献3】米国特許第6024976号明細書
【特許文献4】米国特許第6221383号明細書
【特許文献5】米国特許第6235306号明細書
【特許文献6】米国特許第6465004号明細書
【特許文献7】米国特許第6638528号明細書
【特許文献8】WO2007/145996号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
予め重合させたアクリルポリマー(ただし、反応性基を含有する)を用い、該ポリマーとシリコーンPSAの前駆体とを結合させることによる、シリコーンとアクリルの新規な共有グラフト化をもたらす方法を開示する。アクリルにおけるこれらの反応性基を、「増粘」工程として既知のその最終反応段階の間に、シリコーンPSAへ好ましくグラフト化させることにより、シリコーンゴムおよびシリコーン樹脂における反応性基を縮合させて共有結合を形成させる。アクリルの反応性基は、自己架橋すると共に、この増粘工程に関与できるようなものである。したがって、より制御された反応を介する単一工程で、アクリルを最終的なシリコーンPSAへグラフト化させる。この方法により、アクリルモノマーを除去する必要がなく、外部架橋剤または高濃度の酸コモノマーを用いることなく、高水準の剪断を得ることができる。
【0013】
本発明は、先行技術に固有の欠点を備えることなく、アクリレートを基剤とする接着技術とシリコーンを基剤とする接着技術の特徴を共に示すPSA技術に関する要求に応える。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、直接使用でき、または医療用途において使用するために配合できるポリマーおよび接着剤組成物を提供するとともに、経皮ドラッグデリバリーシステムにおけるそれらの使用を含む。
【0015】
本発明による1態様は、ハイブリッドシリコーンポリマーを対象とする。本発明によるハイブリッドポリマーは、シリコーンポリマー成分、シリコーン樹脂成分およびアクリルポリマー成分を反応させることにより調製される。1実施態様においては、ハイブリッドポリマーを、シリコーンポリマー成分、シリコーン樹脂成分およびアクリルポリマー成分を相互に化学的に反応させることにより調製し、アクリルポリマー成分は、共有結合的に自己架橋され、シリコーンポリマーおよび/またはシリコーン樹脂成分を共有結合的に結合れてなるハイブリッドシリコーンアクリレートポリマーを形成させる。本発明による第2態様によると、ハイブリッドポリマーを、シリコーンポリマー成分、シリコーン樹脂成分およびアクリルポリマー成分を相互に化学的に反応させることにより調製し、シリコーン樹脂成分がトリオルガノシロキシ単位RSiO1/2(式中、Rは有機基である)と、テトラ官能性シロキシル単位SiO4/2(各SiO4/2に対して0.1〜0.9RSiO1/2単位のモル比で存在する)を含有するシリコーン樹脂を有するハイブリッドシリコーンアクリレートポリマーを形成させる。1つの好ましい実施態様において、アクリルポリマーは、約90wt%よりも高いアルキル(メタ)アクリレート成分と、約0.2wt%よりも高いアルコキシシリル官能性モノマーと、ハロシラン含有モノマー、および/またはポリシロキサン含有モノマーとを含有する。第2の態様において、アクリルポリマーは末端キャップされたアルコキシリル官能基および/またはポリシロキサン末端封鎖マクロマーを含有する。
【0016】
本発明による別の態様は、逐次縮合反応(sequential condensation reaction)を用いることによりハイブリッドポリマーを形成する方法に関する。まず、シリコーンポリマー成分をシリコーン樹脂成分と反応させ、合成シリコーンPSAを形成させ、次いで、この合成シリコーンPSAを、反応性官能基を含有するアクリルポリマーと反応させて、ハイブリッドシリコーンアクリルポリマーを形成させる。
【0017】
別の態様においては、まず、シリコーン樹脂成分を、反応性官能基を含有するアクリルポリマーと反応させて中間体を形成させ、次いで、シリコーンポリマー成分をこの中間体と反応させてハイブリッドシリコーンアクリルポリマーを形成させる。
【0018】
別の態様においては、まず、シリコーンポリマー成分を、反応性官能基を含有するアクリルポリマーと反応させて中間体を形成させ、次いで、シリコーン樹脂成分をこの中間体と反応させてハイブリッドシリコーンアクリルポリマーを形成させる。
【0019】
上記反応においては、酸触媒、塩基触媒または有機金属触媒(例えば、スズ、チタン、アルミニウム、ビスマスの有機塩など)、有機金属反応剤(例えば、有機リチウム反応剤およびグリニャール試薬)またはこれらの混合物の存在下において、有機溶媒中で成分を反応させる。
【0020】
本発明の別の態様は、本発明によるハイブリッドポリマーを使用して調製した感圧接着剤および感圧接着剤物品に関する。接着剤は、医療用途または工業用途での使用に関する感圧接着剤物品を調製するのに、有利に使用できる。接着剤は、皮膚に対して接着して密着させる物品(例えばプラスター、包帯およびテープなど)の製造においても使用できる。一般的に、本発明に係る物品は、接着剤によって表面の少なくとも一方がコートされる支持基材を含有する。1実施態様において、物品は、感圧接着剤と治療薬を含有する。好ましい実施態様において、接着剤は生理活性剤用のキャリアとして機能する。一般に、接着剤は、20%よりも高いシリコーンポリマー成分と、20%よりも高いシリコーン樹脂成分と、60%未満のアクリルポリマー成分を含有するハイブリッドポリマーを含有する。
【0021】
本発明の更に別の態様は、感圧接着剤で表面の少なくとも一方がコートされる支持基材と生理活性剤を含有する物品を患者の体表に施すことを含む、患者への治療薬の投与法に関する。1実施態様において、物品は、投与される薬剤を内部に包含する接着剤層と、末梢支持基材と隣接する放出層を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、先行技術によるシリコーンアクリルブレンド(-◇-)の機械的挙動と、本発明に係るシリコーンアクリレートハイブリッド(-□-)および(-△-)の機械的挙動を比較したDMAグラフである。
【図2】図2は、逐次反応法において反応させたハイブリッドシリコーンアクリルポリマーの機械的挙動を示すDMAグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
他に記載のない限り、重量パーセントは乾燥重量パーセントを意味する。
【0024】
本発明は、シリコーンポリマー成分と、シリコーン樹脂成分と、およびアクリルポリマー成分の混合物を反応させることにより調製されるハイブリッドポリマーを提供する。また、本発明は、該ハイブリッドポリマーを含有する感圧接着剤を提供する。本発明による接着剤は、工業的に適した性能を示すと共に、ドラッグデリバリー、化粧品および敏感な肌と接触する用途に適した性能も示す。
【0025】
触媒、例えば塩基触媒、酸触媒および/または有機金属触媒、例えば、スズ、チタン、アルミニウム、ビスマスの有機塩など、有機リチウム、グリニャール試薬、またはこれらの混合物の存在下において、ハイブリッドポリマーを調製するのに使用される成分を有機溶媒中で反応させる。
【0026】
本発明による実施において使用できる有用なシリコーンポリマー成分は、有機置換ポリシロキサンを含有するシリコーンポリマーを含む。ジオルガノ置換基には、例えばジメチル、メチルビニル、メチルフェニル、ジフェニル、メチルエチルおよび(3,3,3-トリフルオロプロピル)メチルが含まれる。1実施態様において、ジオルガノ置換基はジメチルである。一般的に、シリコーンポリマーは、例えばヒドロキシル、アルコキシル、水素化物、ビニル官能基などの官能基で末端キャップされる。1実施態様において、末端キャップ官能基はヒドロキシル基である。ポリジオルガノシロキサンの分子量は、一般的に、約50,000〜約1,000,000の範囲、好ましくは約80,000〜約300,000の範囲である。他に規定のない限り、以下、分子量は、重量平均分子量(MW)で表わされる。
【0027】
本発明による実施において使用できる有用なシリコーン有用なシリコーン樹脂成分は、0.05〜5重量パーセントのケイ素結合ヒドロキシル基と、RSiO1/2で表わされるトリオルガノシロキシル単位とSiO4/2で表わされるテトラ官能性シロキシル単位を、各SiO4/2に対してRSiO1/2単位を0.1〜0.9のモル比、好ましくは0.6〜0.9のモル比で含有するMQシリコーン樹脂を含む。それらは、固体として使用でき、または有機溶媒、例えばトルエンまたはキシレンなどの溶液中で使用できる。シリコーン樹脂の好ましい有機R基は、ビニル、メチル、フェニルなどの基およびそれらの混合基である。1つの好ましいR基はメチル基である。さらに、樹脂を、例えばMeSiOSiMe、ViMeSiOSiMeVi、MeViPhSiOSiPhViMe、MeSiNHSiMeまたはトリオルガノシラン、例えばMeSiCl、MeViSiClまたはMeViPhSiClで処理することにより、樹脂中のOH量を減少させることができる(式中、Me=メチル、Vi=ビニルおよびPh=フェニルを表わす)。
【0028】
本発明による実施において使用できる有用なアクリルポリマー成分は、少なくともアルコキシシリル官能性モノマー、ポリシロキサン含有モノマー、ハロシリル官能性モノマー、またはアルキオキシ(alkyoxy)ハロシリル官能性モノマーを含有するアクリルポリマーを含む。アクリルポリマー骨格に一旦取り込まれたアルコキシシリル官能性モノマーは、触媒の存在下で、シリコーン樹脂またはシリコーンポリマーのOH官能基と、縮合反応する。アクリルポリマーのアルコキシシリル官能基は、縮合反応の間、水/水分および触媒の存在下、自己架橋もできる。この架橋反応は、最終的な接着フィルムにおける結合力に寄与する、架橋アクリルポリマーの安定領域をもたらす。このようなアクリルポリマー領域も、薬剤分子を溶解および貯蔵するための多くの小貯蔵部(small reservoir)として機能する。ポリシロキサン鎖は、鎖開裂し、酸または塩基触媒を介して、ハイブリッド系における他の成分と再結合する。約0.2wt%よりも多いアルコキシシリル官能性モノマーを含有するポリマーが、本発明によるハイブリッド接着剤組成物において特に適しており、支持材料、例えば紙、布またはプラスチックフィルムなどに対して接着剤または接着剤組成物を施すことにより接着物(例えば接着テープおよび接着シートなど)の製造に使用できることが見出されている。
【0029】
アルコキシシリル官能性モノマーの例には、トリアルコキシルシリルおよびジアルコキシシリル官能性アクリレート若しくはメタクリレートが含まれる。好ましいアルコキシシリル官能性モノマーは、トリメトキシルシリルおよびジメトキシメチルシリル官能性アクリレート若しくはメタクリレートである。
【0030】
ポリシロキサン含有モノマーの例には、ポリジメチルシロキサンモノアクリレート若しくはモノメタクリレートが含まれる。
【0031】
他の有用なシリル官能性モノマーには、トリエトキシルシリルおよびジエトキシメチルシリル官能性アクリレート若しくはメタクリレートが含まれる。
【0032】
一般的に、シリル官能性モノマーは、アクリルポリマーの0.2〜20wt%の量で使用され、より好ましくは、シリル官能性モノマー量は、アクリルポリマーの約1.5〜約5重量パーセントの範囲である。
【0033】
一般的に、ポリシロキサン含有モノマーの量は、アクリルポリマーの1.5〜50重量パーセントの量で使用され、より好ましくは、ポリシロキサン含有モノマーはアクリルポリマーの量は、5〜15重量パーセントの範囲である。
【0034】
本発明による実施において有利に使用できる他のアクリルポリマー成分は、末端キャップアルコキシシリル官能基またはポリシロキサンでブロックまたはグラフト化されたコポリマーを含有するアクリルポリマーである。末端キャップアルコキシ官能基の例は、トリアルコキシル、ジアルコキシシリル官能基が含まれる。好ましい末端キャップアルコキシシリル官能基は、トリメトキシルシリル、ジメトキシメチルシリル、トリエトキシルシリルおよび/またはジエトキシメチルシリル官能基である。このようなポリマーの例は、カネカ社製のSAポリマーである。ブロックコポリマーもまた有用である。ポリシロキサンブロックコポリマーの例は、ポリジメチルシロキサン-アクリルブロックコポリマーである。シロキサンブロックの好ましい量は、ブロックポリマー全体の10〜50重量パーセントである。
【0035】
アクリルポリマー成分はアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含有する。本発明の実施において使用できる好ましいアルキル(メタ)アクリレートは、アルキル基に最大約18個の炭素原子を有し、好ましくはアルキル基に1〜約12個の炭素原子を有する。これらのアクリルポリマー成分は、低いガラス転移温度(Tg)のアルキルアクリレートモノマーを含有し得る。低Tgモノマーは、約0℃未満のTgを示すホモポリマーを有するモノマーである。本発明において使用される、好ましい低Tgアルキルアクリレートは、アルキル基に約4〜約10個の炭素原子を有し、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、デシルアクリレート、それらの異性体およびそれらの組み合わせを含む。特に好ましくは、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートおよびイソオクチルアクリレートである。必ずしもそうではないが、低Tgアクリレートモノマーが好ましく、アクリルポリマーの総モノマー重量に基づき約40wt%よりも多い量で存在する。アクリルポリマー成分は、高いガラス転移温度を有する(メタ)アクリレートモノマーを更に含有できる。限定されない例は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレートおよびイソブチルメタクリレートを含む。モノマーの選択は接着特性、他の接着剤マトリックス成分との相溶性、薬剤溶解度などを考慮して決定されることが、当業者によって理解される。従って、モノマーのTgは、任意所望のポリマー設計において考慮される種々の変数の1つにすぎない。
【0036】
アクリルポリマー成分は、ポリイソブチレン基を更に含有して、得られる接着剤の低温流動性を改良させてもよい。
【0037】
ハロシリルまたはアルコキシ-ハロシリル官能性モノマーを含有するアクリルポリマーの例は、3-メタクリルオキシプロピルジメチルクロロシラン、3-メタクリルオキシプロピルジクロロシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリクロロシラン、3-アクリルオキシプロピルジメチルクロロシラン、3-アクリルオキシプロピルジクロロシランおよび3-アクリルオキシプロピルトリクロロシランを共重合させることにより得ることができる。
【0038】
アクリルポリマー成分は、窒素含有極性モノマーを含有できる。例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ターシャリ−オクチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−ターシャリ−ブチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、シアノエチルアクリレート、N-ビニルアセトアミドおよびN-ビニルホルムアミドが含まれる。
【0039】
アクリルポリマー成分は、1または複数のヒドロキシル含有モノマー、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートおよび/またはヒドロキシプロピルメタクリレートなどを含有できる。このようなヒドロキシ官能性モノマーは、一般に、アクリルポリマーの総モノマー重量に基づき、最大約40wt%、より好ましくは約0.5〜約10wt%の量で使用される。
【0040】
所望により、アクリルポリマー成分は、カルボキシル酸含有モノマーを含む。好ましくは、有用なカルボン酸は、約3〜約6個の炭素原子を含有し、とりわけ、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、β-カルボキシエチルアクリレートなどを含む。アクリル酸が特に好ましい。このようなカルボキシ官能性モノマーは、一般に、アクリルポリマーの総モノマー重量に基づき、最大約25wt%、より具体的には約0.5〜約10wt%の量で使用される。
【0041】
他の有用な、既知のコモノマーには、酢酸ビニル、スチレン、シクロヘキシルアクリレート、アルキルジ(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレートおよびアリルグリシジルエーテル、ならびにマクロマー、例えばポリ(スチリル)メタクリレートなどが含まれる。
【0042】
本発明の実施において使用できる、1つのアクリルポリマー成分は、約90〜約99.5wt%のブチルアクリレートと約0.5〜約10wt%のジメトキシメチルシリルメタクリレートを含有するアクリルポリマーである。
【0043】
実施例において具体的な重合法が開示されるが、本発明によるアクリルポリマー成分は、当業者に既知の常套の重合方法によっても調製できる。これらの方法に限定されないが、これらの方法には、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法および乳化重合法が含まれる。本発明の実施においては、当該技術分野において既知および常套の方法を用いて重合の後に、残存するモノマー成分を低減し、または溶媒および/または他の揮発性物質を除去若しくはそれらの濃度を減少させることも有効である。接着剤は有機溶液として、水性分散液としてまたは溶融状態で施すことが出来る。
【0044】
ハイブリッド感圧接着剤組成物は、シリコーンポリマー、シリコーン樹脂およびアクリルポリマーに存在する反応性基に基づき、任意の適当な方法を用いて調製できる。ハイブリッドポリマーは、一段階反応を用いて都合良く調製できる。好ましい方法において、接着剤は、シリコーンポリマー成分、シリコーン樹脂成分およびアクリル成分の混合物を縮合反応させることにより調製される。反応は、触媒を用いずにおこなうことができ、あるいは/およびより好ましくは、触媒の存在下でおこなわれる。
【0045】
触媒の例には、金属、例えばスズ、チタン、アルミニウム、ビスマスなどの有機金属塩、有機金属反応剤(例えば、有機リチウム反応剤およびグリニャール試薬)、有機および無機酸、例えばメタンスルホン酸など、硫酸、酸性クレー、酸性Amberlyst(登録商標)イオン交換樹脂(ローム アンド ハース)、有機および無機塩基、例えば、KOH、NaOH、(NHCO、カルバミン酸アンモニウム、および有機塩基、例えばトリエチルアミン、トリエタノールアミンが含まれる。アクリルポリマーにおけるハロシラン等の反応性基は、触媒の使用を必要とせずにシリコーンポリマーおよび/またはシリコーン樹脂と縮合反応できる。縮合反応を室温でおこなうことができるが、1つの好ましい方法は、50〜160℃に加熱しながら縮合反応を行うことである。有機溶媒、例えば、トルエン、ヘプタンまたはキシレンを反応溶媒として使用できる。他の有機溶媒、例えば脂肪族炭化水素、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、メチルエチルケトンなども、反応溶媒または共溶媒として使用できる。縮合は、好ましくは、少なくとも縮合副生成物(例えば水およびアルコール)が十分に除去されるまで行うことができる。加熱は、所望の物理特性、例えば粘度、粘着性および接着力が得られるまで継続される。一般的に、混合物を、約1〜約24時間かけて反応させることができる。
【0046】
塩基性薬剤との相溶性のために、シリコーンポリマー、MQ樹脂およびアクリルポリマー成分の縮合反応後に、残存するケイ素結合ヒドロキシル基をキャップすることが望ましい場合もある。このことは、例えば、ヘキサメチルジシラザンの存在下で溶液をさらに加熱することにより、好都合に行なえる。他の適当な化学的後処理は、米国特許第4655767号明細書(ダウコーニング社)において教示されており、これらを参照することにより本書に組み込まれる。末端キャップ化は、薬剤または活性剤が粘着性の減少をもたらす遊離ヒドロキシル基の更なる縮合を触媒することを防ぐための手段である。また、末端キャップ化は、遊離ヒドロキシル基が存在する場合でも、配合物の粘性を安定させるために極めて重要である。PSA配合物の粘性を安定させるために、残留塩基(例えばKOH、NaOHまたは有機アミンなど)を除去し、遊離ヒドロキシル基の更なる縮合を妨げることも必要であるかもしれない。このことは、カルボン酸(例えば酢酸など)または長鎖脂肪酸(例えばオレイン酸、ステアリン酸など)、またはポリマー酸(例えば酸性のアンバーリスト(登録商標))などで中和することにより行うことができる。長鎖脂肪酸を使用する場合、得られる塩は混合物中に界面活性剤として残存し、薬剤透過性促進剤として機能し得る。
【0047】
縮合反応が完了した際に、得られるハイブリッド感圧接着剤組成物の固形分は、溶媒を添加または除去することにより調整できる。存在する溶媒を完全に除去し、異なる有機溶媒をハイブリット感圧接着剤製品に添加できる。有機溶媒溶液中にハイブリッド感圧接着剤組成物を有することが好ましく、この場合、有機溶媒は、成分混合物の総量の約30重量パーセント〜約90重量パーセントを構成する。
【0048】
外部物質を必要とせずに、自己架橋を付与することにより凝集を向上させることが、本発明の目的ではあるが、本発明による感圧接着剤を、成分ポリマー上のビニル基を介して、過酸化物により更に架橋させることができるのは当業者にとって明かであろう。同様に、所望により、有機金属化合物などの既知の架橋剤を添加することにより、アクリル相の更なる後重合-架橋も行なえる。
【0049】
本明細書において使用されるように、用語「感圧接着剤」は、わずかな圧力を施すことにより大部分の基材に対して瞬間的に接着し、持続的に粘着性を残存させる粘弾性材料を表わす。粘着付与剤、可塑剤または他の添加剤と混合させることにより、とりわけ、感圧接着剤の性能を有するか、感圧接着剤としての機能を有する場合、本明細書において使用される意義の範囲内で、ポリマー組成物は、感圧接着剤であることができる。
【0050】
適当な粘着付与剤は、当技術分野において既知のものであり、以下のものが含まれる:(1)脂肪族炭化水素、(2)脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素の混合物、(3)芳香族炭化水素、(4)置換芳香族炭化水素、(5)水素添加エステル、(6)ポリテルペン、(7)ロジンエステル、および(8)ウッドレジンまたはロジンおよびそれらの水素添加形態。粘着付与剤の有用な粘度は、接着剤組成物の総重量に基づき、一般に約1wt%〜約30wt%である。
【0051】
本発明による接着剤は、ブレンドされたポリマーを含有することにより、必要に応じて、接着剤ポリマーマトリックス中の薬剤の溶解度を更に上昇または減少させてもよい。本発明の接着剤ポリマーと混合するために有用なポリマーの例には以下のものが含まれる(ただし、これらに限定されない):他のアクリレート、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリプロピレンオキシド、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレンブロックポリマーなど。スチレンブロックコポリマーには、以下のものが含まれる(ただし、これらに限定されない):スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー(SBS)、スチレン-エチレンブテン-スチレンコポリマー(SEBS)およびそれらのジブロック類似物。
【0052】
本発明による組成物は、当業者に既知の別の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤には以下のものが含まれる(ただし、これらに限定されない):顔料、充填剤、蛍光添加剤、フローおよびレベリング添加剤、湿潤剤、界面活性剤、消泡剤、レオロジー改質剤、透過促進剤、安定剤、および酸化防止剤。
【0053】
一般に、酸化防止剤を単独でまたは組合せて添加して、接着剤組成物を調製および使用する間の分解から成分を保護すると共に、長期に亘る熱安定性を確保する。一般に、最大1重量%の1種または複数種の酸化防止剤が接着剤組成物中に含有され、通常、約0.1重量%〜約0.5重量である。
【0054】
本発明による感圧接着剤は、あらゆる用途、例えばラベルなどにおいて使用できるが、該接着剤は、医療用途における使用において特に良好である。感圧接着剤は、他の製品の被着剤として製品、例えばオストミーシール、接着テープ、および包帯、排膿接着シール、創傷被覆材などにおいて使用され、該感圧接着剤は、人間の皮膚に対して接着し、湿潤環境においても接着性を残存させる。本発明による感圧接着剤は、工業用テープおよび種々の他のPSA用途においても使用できる。
【0055】
本発明による接着剤は、経皮ドラッグデリバリー用途における使用に特に良好に適している。本発明による感圧接着剤は、例えば皮膚炎を治療するために、患者の皮膚へ、治療上効果的な量の生成物を供給するように設計された経皮ドラッグデリバリーデバイス内へ組み込まれるか、患者の皮膚を通過させて、治療上効果的な量の薬剤を供給する経皮ドラッグデリバリーデバイス内へ組み込まれる。「経皮」という用語は、局所適用による薬剤投与の入り口として皮膚を使用するか、または血液化学の監視などの診断方法に関する入り口として皮膚を使用することを表わす。局所的に施した薬剤は皮膚内へ導入されおよび/または皮膚を通過する。従って、「経皮」という用語は本明細書において幅広く使用され、局所的(すなわち皮膚表面または皮膚内)において作用する薬剤の局所投与、例えば、座瘡の治療に使用される傷用パッチに関連し、また、皮膚を通過して拡散し血流に浸入することにより全身に作用する薬剤の局所注入にも関連する。
【0056】
本発明による経皮ドラッグデリバリーデバイスは、供給される薬剤を内部に包含する担体(例えば液体、ゲル、または固体マトリックス、あるいは感圧接着剤)と、末端支持基材および隣接する放出層を含有する。患者が、接着剤から剥離ライナーを剥がしてパッチを貼り付けると、薬剤が角質層(外皮層)内へ分配し、上皮および真皮を介して浸透する。
【0057】
好ましくは、薬剤含有ポリマー層は、本発明による皮膚接触型の感圧接着剤であり、該接着剤は、パッチを製造または貯蔵する間に薬剤と反応可能な官能基(例えば反応性水素基または他の基)を含有しない薬剤的に許容可能な材料であるか、または予期せぬ化学反応の結果、貯蔵の際に接着特性が変化しないものである。経皮パッチ用の担体接触接着剤として使用されようが、オーバーレイ接触接着剤として使用されようが、本発明による接着剤は、非刺激性であり、貼り付けが容易であり、除去が簡単である。
【0058】
「薬剤」という用語は、本明細書において、治療的有用性の付与を目的とする任意物質を意味する、広義の表現であると解釈される。該物質は、薬剤的に活性であってもよく、活性でなくてもよいが、人体において効果を示すという意味では「生物活性」であり得る。該物質を治療に用いてもよく、または病理学的状態、すなわち疾患に応じて条件を変更してもよい。「薬剤」、「生物活性剤」「調合液」「薬物」「治療薬」「生理学的物質」および「医薬品」は、本明細書において区別せずに用いられ、診断、治療、緩和、停止、治療または病気もしくは疾患の予防における材料も含み、身体構造若しくは機能に作用する。例えば肌を軟化および肌に潤いを与えるなどの、健康な皮膚向けの物質もこの用語に含まれる。「治療」という用語は、予防、変化、治癒、および疾患を制御することも広義に包含する。
【0059】
薬剤は、治療効果のある量、すなわち、本発明に係る調製品を貼り付ける病気の治療において、ほぼ所望の治療結果をもたらす有効量で、本発明によるドラッグデリバリーデバイス中に存在する。薬剤の有効量は毒性を示さないことを意味するが、一定期間に亘り、選択された効果を付与する薬剤の十分な量を意味する。治療効果のある量は、デバイス内に取り込まれる具体的な薬剤、治療する疾患、選択される薬剤と共に投与される任意の薬剤、所望の処置時間、配置されるデバイスに対する皮膚の表面積、およびドラッグデリバリーデバイスの他の要素に応じて変化する。このような量は、当業者によって容易に決定できる。
【0060】
本発明によるドラッグデリバリーシステムは、薬剤に加えて、有効量の浸透促進剤を有利に含有しても良い。浸透促進剤の有効量は、膜透過性、投与速度および投与される薬剤量の選択増加をもたらす量を意味する。適当な促進剤は、例えば、E.H.スミス、H.I.マイバッハによる「経皮浸透促進剤」、CRCプレス、ニューヨーク(1995年)に記載されている。
【0061】
本発明によるデバイスは皮膚上に配置され、目的とする治療効果を維持するまたは達成するのに十分な時間、滞在することができる。十分な時間の選定は、本発明によるデバイスの流動速度と、処置される疾患を考慮して、当業者により選択することができる。
【0062】
本発明による経皮デリバリーシステムは、テープ、パッチ、シート、包帯および当業者に既知の他の形態の製品を製造できる。投与系は、任意所望の単位系で製造され得る。円形は、皮膚から容易に剥離され得る角を含まないので便利であり、一方、正方形若しくは長方形形状は、ロールまたはシートから切断する際に廃棄物を最小限にする。種々の形状を有することに加えて、投薬量単位も種々の量で調製できる。
【0063】
パッチの構造および処置される疾患(例えば、バースコントロール、疼痛処理、高血圧、禁煙、皮膚疾患)に応じて、パッチは、1時間未満またはそれ以上、または最大約1週間、皮膚上に滞在する。好ましい実施態様において、パッチは、約24時間、適用部位における皮膚上に滞在するように設計され、毎日更新される。別の好ましい実施態様においては、パッチは、週に1、2回置換えられる。好ましくは、パッチは、以前に使用したパッチの位置とは異なる部位の皮膚上に配置される。
【0064】
本明細書において、患者という用語には、動物、人間および人間以外の動物を含み、ペット(例えば犬、猫および馬)および家畜(牛および豚)が含まれる。農業および園芸に関する用途にも予定される。
【0065】
本発明によるデリバリーデバイスが利用される治療分野、および本発明によるデバイス中に組み込むことができる薬剤製品の例には、以下のものが含まれる:失禁の治療(例えばオキシブチニン)、中枢神経系疾患(例えばメチルフェニデート、ロチゴチン)、ホルモン療法およびバースコントロール(例えば、エストラジオール、テストステロン、プロゲスチン、プロゲステロン、レボノルゲストレル)、循環器系(例えば、ニトログリセリン、クロニジン)、および強心剤(例えば、ジギタリス、ジゴキシン)、疼痛処理もしくは抗炎症(例えば、フェンタニル、スフェンタニル、リドカイン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン)、化粧品(例えば、過酸化ベンゾイル、サリチル酸、ビタミンC、ビタミンE、芳香油)、制嘔吐剤(例えば、スコポラミン、グラニセトロン)、禁煙(例えば、ニコチン)、抗炎症性疾患、およびステロイド(例えば、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン)および非ステロイド処置(例えば、ナプロキセン、ピロキシカム)、抗菌(例えば、ペニシリン(例えばペニシリンVなど)、セファロスポリン(例えばセファレキシンなど)、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ゲンタマイシン、スルファチアゾール、ニトロフラントイン、およびキノロン、たとえば、ノルフロキサシン、フルメキン、およびイバフロキサシン)、抗原虫薬(たとえば、メトロニダゾール)、抗真菌薬(たとえば、ナイスタチン)、カルシウムチャネル遮断薬(たとえば、ニフェジピン、ジルチアゼム)、気管支拡張薬(たとえば、テオフィリン、ピルブテロール、サルメテロール、イソプロテレノール)、酵素インヒビター、たとえば、コラゲナーゼインヒビター、プロテアーゼインヒビター、エラスターゼインヒビター、リポキシゲナーゼインヒビターおよびアンジオテンシン変換酵素インヒビター(たとえば、カプトプリル、リシノプリル)、他の降圧剤(たとえば、プロプラノロール)、ロイコトリエン拮抗薬、H2拮抗薬などのような抗潰瘍薬、抗ウイルス薬および/または免疫調節薬(たとえば、1−イソブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4アミン、1−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4アミン、およびアシクロビル)、局所麻酔薬(たとえば、ベンゾカイン、プロポホール)、鎮咳薬(たとえば、コデイン、デキストロメトルファン)、抗ヒスタミン薬(たとえば、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、テルフェナジン)、麻薬性鎮痛薬(たとえば、モルヒネ、フェンタニル、スフェンタニル)、心作用生成物、たとえば、アトリオペプチド、抗けいれん薬(たとえば、カルバマジン)、免疫抑制薬(たとえば、サイクロスポリン)、精神治療薬(たとえば、ジアゼパム)、鎮静剤(たとえば、フェノバルビタール)、抗凝血薬(たとえば、ヘパリン)、鎮痛剤(たとえば、アセトアミノフェン)、抗偏頭痛薬(たとえば、エルゴタミン、メラトニン、スマトリプタン)、抗不整脈薬(たとえば、フレカイニド)、悪心抑制剤(たとえば、メトクロプラミド、オンダンセトロン)、抗癌剤(たとえば、メトトレキサート)、抗不安薬などのような神経薬、止血薬、抗肥満薬等、ならびに医薬品的に許容できる塩類およびそれらのエステル類、溶媒化合物およびそれらのクラスレート。
【0066】
本発明による経皮ドラッグデリバリーを用いることにより、獣医用医薬品、ならびに農業および園芸用途にも容易に施すことができる。獣医用途および園芸用途において、経皮ドラッグデリバリーがより正確な投薬を可能とし、食物/かんがい用水を用いる投与と比べ廃棄物が少ないということが高く評価される。
【0067】
本発明によるドラッグデリバリーデバイスは、常套の方法を用いて、支持基材へ適当なキャリアを施すことにより調製できる。例えば、マトリックスデバイスは、接着剤溶液と薬剤および任意の添加剤を溶媒中で混合して均質溶液または懸濁液を生成することによりコーティング配合物を調製して、次いで、既知のロール、ナイフ、バーまたはダイコーティング法を用いて、得られた配合物を基材(指示基材または剥離ライナー)へ塗布し、次いで、被覆された基材を乾燥し溶媒を除去し、次いで、剥離ライナーまたは支持基材へ露出面を貼り合せることにより製造できる。
【0068】
本発明は、説明を目的とする下記実施例において更に記載されるが、決して、本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0069】
実施例2〜6で使用した、シリコーンポリマー(130,000-160,000)とメチルMQ樹脂(M/Q比は約0.8であった)とを先行技術(M.ブルック著「ケイ素 イン オーガニック,有機金属とポリマーケミストリー」、US2676182号明細書、およびUS2814601号明細書)に記載の方法に従い調製した。実施例10〜12において使用したシリコーンポリマーとメチルMQを市販の原料から得た。
【0070】
実施例1
90.0gのブチルアクリレート、7.0gのメチルメタクリレート、3.0gのトリメトキシシリルプロピルアクリレート、0.17gの2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(重合開始剤)、および100.0gの酢酸エチル(溶媒)を含有する初期充填物を混合し、次いで、ステンレススチール製の撹拌機と、温度計と、凝縮器と、水浴と、低速添加漏斗(slow addition funnel)を備える、1リットルの4つ首丸底フラスコ内へ充填した。攪拌しながら、初期充填物を加熱して還流させた。還流の開始後15分の地点から、270gのブチルアクリレートと、21.0gのメチルメタクリレートと、9.0gのトリメトキシシリルプロピルアクリレートを含有するモノマー混合物を、2時間かけて均一に添加した。また、還流の開始後15分の地点から、51.15gの酢酸エチルと1.20gのAIBNを同時に、4時間かけて均一に添加した。添加の終了時から、フラスコ内容物を還流状態で1時間保持した。保持期間の終了時から、内容物を室温まで冷却し、ポリマー溶液を排出した。酢酸エチル溶媒を、真空条件下、回転式蒸発器を用いて除去し、次いで新しいキシレンを添加し、固形分を50%に調整した。
【0071】
実施例2
シリコーンポリマーとしてのポリジメチルシロキサン(MW130,000、トルエン中で48%、90g)と、アクリルポリマーとしてのカネカ社製SA-100S(トルエン中50%、40g)と、塩基触媒(NHCO(1.0g)を、60℃にて2時間攪拌した。メチルMQ樹脂(トルエン中で32.0%、135g)を添加し、反応混合物を60℃で12時間攪拌させた。次いで、得られた反応混合物を、低速で窒素ガスを供給しながら、2時間、115℃まで加熱した。ヘキサメチルジシラザン(5.0g)を添加し、反応を115℃にて2時間継続させた。生成物を室温まで冷却し、試験用に、ガラス瓶に充填した。
【0072】
実施例3
シリコーンポリマーとしてのポリジメチルシロキサン(MW160,000、キシレン中で48%、100.0g)と、実施例1に従い調製したアクリルポリマー(MW230,000、キシレン中で50.0%、43.0g)と、メチルMQ樹脂(キシレン中で55.3%、50g)および酢酸(0.5g)の混合物を、50℃で3時間攪拌し、次いで135℃で3時間攪拌した。生成物を室温まで冷却し、ガラス瓶に充填した。
【0073】
実施例4
シリコーンポリマーとしてのポリジメチルシロキサン(MW160,000、キシレン中で48%、100.0g)と、実施例1に従い調製したアクリルポリマー(MW230,000、キシレン中で50.0%、43.0g)と、メチルMQ樹脂(キシレン中で55.3%、50g)および塩基触媒(NHCO(1.0g)の混合物を、60℃で6時間攪拌し、次いで115℃で2時間攪拌した。ヘキサメチルジシラザン(5.0g)を添加し、反応を115℃にて2時間継続させた。生成物を室温まで冷却し、試験用に、ガラス瓶に充填した。
【0074】
実施例5
シリコーンポリマーとしてのポリジメチルシロキサン(MW160,000、キシレン中で48%、100.0g)と、実施例1に従い調製したアクリルポリマー(MW230,000、キシレン中で50.0%、43.0g)と、メチルMQ樹脂(キシレン中で55.3%、50g)およびKOH粉末(0.05g)の混合物を、室温で6時間攪拌し、次いで140℃で2時間攪拌した。ヘキサメチルジシラザン(5.0g)を添加し、反応を140℃にて2時間継続させた。生成物を室温まで冷却し、試験用に、ガラス瓶に充填した。反応混合物を室温まで冷却した後、酸性のアンバーリスト(登録商標)イオン交換樹脂(5g)を添加し、KOHを中和した。生成物を濾過することにより、あらゆる固形粒子を取り除き、ガラス瓶に充填した。
【0075】
実施例6
シリコーンポリマーとしてのポリジメチルシロキサン(MW160,000、キシレン中で48%、100.0g)と、実施例1に従い調製したアクリルポリマー(MW230,000、キシレン中で50.0%、43.0g)と、メチルMQ樹脂(キシレン中で55.3%、50g)およびアンバーリスト(登録商標)イオン交換樹脂(1.0g)の混合物を、80℃で6時間攪拌した。生成物を濾過することにより、あらゆる固形粒子を取り除き、ガラス瓶に充填した。
【0076】
実施例7(比較例)
100.0gのブチルアクリレート、0.5gの2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)および100.0gの酢酸エチルを含有する初期充填物を調製し、ステンレススチール製の撹拌機と、温度計と、凝縮器と、水浴と、低速添加漏斗を備える、1リットルの4つ首丸底フラスコ内へ充填した。攪拌しながら、初期充填物を加熱して還流させた。還流の開始後30分の地点から、30gの酢酸エチルと0.5gのAIBNを、2時間に亘って添加した。添加の終了時から、フラスコ内容物を還流状態で1時間保持した。保持期間の終了時から、酢酸エチル溶媒を、真空条件下、回転式蒸発器を用いて除去し、次いで新しいトルエンを添加し、固形分を50%に調整した。
【0077】
実施例8
98.0gのブチルアクリレートと、2.0gの(3-アクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシランと、0.5gの2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)および100.0gの酢酸エチルを含有する初期充填物を調製し、ステンレススチール製の撹拌機と、温度計と、凝縮器と、水浴と、低速添加漏斗を備える、1リットルの4つ首丸底フラスコ内へ充填した。攪拌しながら、混合物を加熱して還流させた。還流の開始後30分の地点から、30gの酢酸エチルと0.5gのAIBNを、2時間に亘って添加した。添加の終了時から、フラスコ内容物を還流状態で1時間保持した。保持期間の終了時に、酢酸エチル溶媒を、真空条件下、回転式蒸発器を用いて除去し、次いで新しいトルエンを添加し、固形分を50%に調整した。
【0078】
実施例9
90.0gのブチルアクリレートと、7.0gのモノメタクリルオキシプロピル-末端化ポリジメチルシロキサン(MCR-M17、グレスト社)と、3.0gの(3-アクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシランと、0.4gの2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)および100.0gの酢酸エチルを含有する初期充填物を調製し、ステンレススチール製の撹拌機と、温度計と、凝縮器と、水浴と、低速添加漏斗を備える、1リットルの4つ首丸底フラスコ内へ充填した。攪拌しながら、混合物を加熱して還流させた。還流の開始後30分の地点から、30gの酢酸エチルと0.4gのAIBNを、2時間に亘って添加した。添加の終了時から、フラスコ内容物を還流状態で1時間保持した。保持期間の終了時に、酢酸エチル溶媒を、真空条件下、回転式蒸発器を用いて除去し、次いで新しいトルエンを添加し、固形分を50%に調整した。
【0079】
実施例10(比較例)
シリコーンポリマーとしてのポリジメチルシロキサン(18.7g)と、メチルMQ樹脂(17.0g)と、(NHCO(0.5g)と、キシレン(100mL)の混合物を、60℃で2時間攪拌し、次いで115℃で2時間攪拌した。ヘキサメチルジシラザン(5.0g)を添加し、反応を115℃にて2時間継続させた。実施例7に従い調製したアクリルポリマー(キシレン中で50.0%、18.0g)を添加し、よく攪拌させた。生成物を室温まで冷却し、試験用に、ガラス瓶に充填した。
【0080】
実施例11
シリコーンポリマーとしてのポリジメチルシロキサン(18.7g)と、メチルMQ樹脂(17.0g)と、(NHCO(0.5g)と、実施例8に従い調製したアクリルポリマー(キシレン中で50.0%、18.0g)およびキシレン(100mL)の混合物を、60℃で2時間攪拌し、次いで115℃で2時間攪拌した。ヘキサメチルジシラザン(5.0g)を添加し、反応を115℃にて2時間継続させた。生成物を室温まで冷却し、試験用に、ガラス瓶に充填した。生成物を室温まで冷却し、試験用に、ガラス瓶に充填した。
【0081】
実施例12
シリコーンポリマーとしてのポリジメチルシロキサン(18.7g)と、メチルMQ樹脂(17.0g)と、KOH粉末(0.03g)と、実施例8に従い調製したアクリルポリマー(キシレン中で50.0%、18.0g)およびキシレン(100mL)の混合物を、140℃で2時間攪拌した。ヘキサメチルジシラザン(5.0g)を添加し、反応を115℃にて2時間継続させた。生成物を室温まで冷却し、試験用に、ガラス瓶に充填した。生成物を除去し、室温まで冷却し、試験用に、ガラス瓶に充填した。
【0082】
実施例13
シリコーンポリマーとしてのポリジメチルシロキサン(3.9g)と、メチルMQ樹脂(3.9g)と、(NHCO(0.2g)と、実施例9に従い調製したアクリルポリマー(1.95g)およびトルエン(20mL)の混合物を、60℃で12時間攪拌し、次いで115℃で2時間攪拌した。ヘキサメチルジシラザン(0.7g)を添加し、反応を115℃にて2時間継続させた。生成物を室温まで冷却し、試験用に、ガラス瓶に充填した。生成物を除去し、室温まで冷却し、試験用に、ガラス瓶に充填した。
【0083】
実施例14
ブチルアクリレート(BA)(BASF社製)196.0gと、3-アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン(3-APMDS)(Gelest社製)4.0gのモノマー混合物を、ヘプタン中で調製し、添加漏斗(addition funnel)へ移した。ヘプタン80.0g中の過酸化ラウロイル(シグマ-アルドリッヒ社)1.0gの初期溶液を調製し、添加漏斗へ移した。20%のモノマー混合物、ヘプタン160.0g、および過酸化ラウロイル0.2gから成る初期充填物を、バナナ形状片を有するステンレススチール製の撹拌機と、温度計と、凝縮器と、油浴と、添加漏斗を備える1リットルの4つ首丸底フラスコ中に秤量した。攪拌しながら、初期充填物を加熱して還流させた。還流状態を5分間保持した後、還流を保持しながら、モノマー混合物と初期溶液を、それぞれ2時間および3時間かけて連続的にゆっくりと添加した。添加が完了した後、還流させながら、フラスコ内容物を2時間攪拌した。ヘプタン22.0g中にt-アミルペルオキシピバレート(t-APP75%)(Akzo Nobel)2.0gを混合させることにより捕捉溶液(scavenger solution)を調製し、次いで、還流させながら1時間に亘りゆっくりと添加した。添加の後、混合物を2時間攪拌した。2時間の保持が終了した後、フラスコ内容物を室温まで冷却し固形分を解析した。
【0084】
実施例15
ブチルアクリレート(BA)(BASF社製)196.0gと、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン(Gelest社製)4.0gのモノマー混合物を、ヘプタン中で調製し、添加漏斗へ移した。ヘプタン80.0g中の過酸化ラウロイル(シグマ-アルドリッヒ社)1.0gの初期溶液を調製し、添加漏斗へ移した。20%のモノマー混合物、ヘプタン160.0g、および過酸化ラウロイル0.2gから成る初期充填物を、バナナ形状片を有するステンレススチール製の撹拌機と、温度計と、凝縮器と、油浴と、添加漏斗を備える1リットルの4つ首丸底フラスコ中に秤量した。攪拌しながら、初期充填物を加熱して還流させた。還流状態を5分間保持した後、還流を保持しながら、モノマー混合物と初期溶液を、それぞれ2時間および3時間かけて連続的にゆっくりと添加した。添加が完了した後、還流させながら、フラスコ内容物を2時間攪拌した。ヘプタン22.0g中にt-アミルペルオキシピバレート(t-APP75%)(Gelest社製)2.0gを混合させることにより捕捉溶液を調製し、次いで、還流させながら1時間に亘りゆっくりと添加した。添加の後、混合物を2時間攪拌した。2時間の保持が終了した後、フラスコ内容物を室温まで冷却し固形分を解析した。
【0085】
実施例16
シリコーンポリマーとしてのポリジメチルシロキサン18.0g(Mw130,000)と、メチルシリコーン樹脂(MQ)18.0gと、ヘプタン77.8gを、バナナ形状片を有するステンレ製の撹拌機と、温度計と、凝縮器と、油浴と、添加漏斗を備える250mLの4つ首丸底フラスコ中に秤量した。混合物を室温で攪拌した。塩基触媒1N KOH 0.12gをフラスコに添加し、5〜6時間、攪拌させながら、混合物を加熱して還流させた。翌日、アクリルポリマー(実施例14)9.0gを、攪拌させながら混合物へ添加し、加熱して、5〜6時間還流させた。ヘキサメチルジシラザン(ダウ・コーニング社)3.05gを添加し、更に2時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却し固形分および粘度について解析した。
【0086】
実施例17
シリコーンポリマーとしてのポリジメチルシロキサン18.0g(Mw130,000)と、メチルシリコーン樹脂(MQ)18.0gと、ヘプタン77.8gを、バナナ形状片を有するステンレ製の撹拌機と、温度計と、凝縮器と、油浴と、添加漏斗を備える250mLの4つ首丸底フラスコ中に秤量した。混合物を室温で攪拌した。塩基触媒1N KOH 0.12gをフラスコに添加し、5〜6時間、攪拌させながら、混合物を加熱して還流させた。翌日、アクリルポリマー(実施例14)9.0gを、攪拌させながら混合物へ添加し、加熱して、5〜6時間還流させた。オレイン酸(シグマアルドリッヒ社)2.44gを攪拌しながら添加し、加熱して、2時間還流させた。ヘキサメチルジシラザン(ダウ・コーニング社)3.05gを添加し、更に2時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却し固形分および粘度について解析した。
【0087】
実施例18
シリコーンポリマーとしてのポリジメチルシロキサン18.0g(Mw130,000)と、メチルシリコーン樹脂(MQ)18.0gと、ヘプタン77.8gを、バナナ形状片を有するステンレ製の撹拌機と、温度計と、凝縮器と、油浴と、添加漏斗を備える250mLの4つ首丸底フラスコ中に秤量した。混合物を室温で攪拌した。塩基触媒1N KOH 0.12gをフラスコに添加し、5〜6時間、攪拌させながら、混合物を加熱して還流させた。翌日、アクリルポリマー(実施例15)9.0gを、攪拌させながら混合物へ添加し、加熱して、5〜6時間還流させた。ヘキサメチルジシラザン(ダウ・コーニング社)3.05gを添加し、更に2時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却し固形分および粘度について解析した。
【0088】
実施例19
メチルシリコーン樹脂(MQ)18.0g、アクリルポリマー(実施例14のもの)9.0gおよびヘプタン77.8gを、バナナ形状片を有するステンレ製の撹拌機と、温度計と、凝縮器と、油浴と、添加漏斗を備える250mLの4つ首丸底フラスコ中に秤量した。混合物を室温で攪拌した。塩基触媒1N KOH 0.12gをフラスコに添加し、5〜6時間、攪拌させながら、混合物を加熱して還流させた。翌日、シリコーンポリマーとしてのポリジメチルシロキサン18.0g(Mw130,000)を、攪拌させながら混合物へ添加し、加熱して、5〜6時間還流させた。ヘキサメチルジシラザン(ダウ・コーニング社)3.05gを添加し、更に2時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却し固形分および粘度について解析した。最終的な生成物は安定溶液であった。
【0089】
実施例20
シリコーンポリマーとしてのポリジメチルシロキサン18.0g(Mw130,000)、アクリルポリマー(実施例14のもの)9.0gおよびヘプタン77.8gを、バナナ形状片を有するステンレ製の撹拌機と、温度計と、凝縮器と、油浴と、添加漏斗を備える250mLの4つ首丸底フラスコ中に秤量した。混合物を室温で攪拌した。塩基触媒1N KOH 0.12gをフラスコに添加し、5〜6時間、攪拌させながら、混合物を加熱して還流させた。翌日、メチルシリコーン樹脂(MQ)18.0gを、攪拌させながら混合物へ添加し、加熱して、5〜6時間還流させた。ヘキサメチルジシラザン(ダウ・コーニング社)3.05gを添加し、更に2時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却し固形分および粘度について解析した。
【0090】
実施例21
耐剥離性に関する感圧テープ評価試験法PSTC-16と、ループタックに関するPSTC-101と、22℃および50%の相対湿度における剪断抵抗に関するPSTC-107に従い、ステンレススチール(SS)パネルおよび低密度ポリエチレン(LDPE)パネル上での接着特性について、実施例2-6、12、16、17および21に従い調製したシリコーン-アクリレートハイブリッドポリマーを評価した。表1は、BIO-PSA(登録商標)の品番7-4202および7-4302としてダウ・コーニング社から入手可能な、2種類の純粋なシリコーン感圧接着剤と比較した、種々のシリコーン-アクリルハイブリッド接着剤の試験結果をまとめたものである。
【0091】
【表1】

【0092】
これらのシリコーンおよびシリコーン-アクシリコーンブリッド接着剤のプローブタックを、保持時間無しまたは10秒の保持時間で、TAインスツールメント社製のTexture Analyzer(登録商標)を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
表1および表2のデータによると、本発明は、幅広い範囲の感圧特性を備える接着剤をもたらすことが判る。1つの好ましい組成物である実施例12は、極めて高い耐剥離性、ループタックおよび剪断抵抗を備え、比較として示される市販の純粋なシリコーンPSAと比べて優れている。
【0095】
実施例22
比較例10のシリコーン-アクリルブレンド接着剤と、シリコーン-アクリルハイブリッド接着剤(実施例11および12)に関する性能を分析した。表3は、実施例10、11および12の組成物に関する、上記のように定義された耐剥離性、ループタックおよび剪断抵抗データを示す。比較例10と、実施例11および12の動的機械分析(DMA)は、図1において示されるように、異なる機械的挙動を示した。シリコーン-アクリル未反応ブレンドとシリコーンアクリル反応ハイブリッドの間の最も注目すべき違いは、貯蔵弾性率曲線において見受けられる。シリコーン-アクリルブレンドの貯蔵弾性率(比較例10)は温度増加に伴い減少し、平衡弾性率を示さない。しかしながら、シリコーン-アクリルハイブリッド(実施例11および12)の貯蔵弾性率は、温度増加に伴い、ガラス転移領域の通過後に水平状態となる。シリコーン-アクリルハイブリッドポリマーに関する平衡弾性率は、アクリルポリマーにおけるシラン官能基がシリコーンポリマーおよび/またはMQ樹脂と反応し、全体の架橋密度が増加したことを明確に示す。
【0096】
図1におけるDMAデータによると、実施例11と比べて実施例12の平衡弾性率がより高いことを根拠として、より弱い塩基(炭酸アンモニウム、実施例11)と比べてより強い塩基(KOH、実施例12)が、3成分間での反応度をより高くすることも示す。また、より強い塩基に起因する促進反応は、優れた耐剥離性、ループタックおよび剪断抵抗をもたらす(実施例11および12に関する、表3のデータを比較する)。
【0097】
【表3】

【0098】
図2において示されるように、実施例16は注目すべき機械的挙動を示す。各成分を逐次的に添加することにより調製したシリコーン-アクリルハイブリッドの貯蔵弾性率は、温度増加に伴い、ガラス転移領域の通過後に水平状態となる。この平衡弾性率は、アクリルポリマーにおけるシラン官能基がシリコーンポリマーおよび/またはMQ樹脂と反応し、全体の架橋密度が増加したことを明確に示す。
【0099】
実施例16に従い調製した幾つかのシリコーン-アクリルハイブリッドポリマーを、相分離試験に付した。サンプルを試験管中に導入し、2つの異なる相へ分離するまでに要する日数を、表4に記載した。表4におけるデータによると、逐次的な方法により調製したハイブリッドポリマーは、相変わらず、30日よりも多くの期間が経過しても可視的な相分離を示さないことが判る。
【0100】
【表4】

【0101】
実施例16のサンプルの相安定性を、ベックマン・コールター社製のAllegra X-12 遠心分離機を用いておこなった。実施例16におけるハイブリッドポリマーの約8オンスを瓶に注入し、該瓶をカップホルダーに挿入した。次いで、実施例16のサンプルを2000RPMで30分間回転させた。遠心後であっても相分離は生じず、サンプルは、1ヶ月よりも長い期間、均質のままであった(相分離しなかった)。
【0102】
本発明の種々の改良および変形を、本発明の意図および範囲から逸脱することなく行なうことができ、このことは、当業者にとって明かである。本明細書に記載される具体的な実施態様は、ほんの一例として示すにすぎない。また、この請求項は、同等の全ての範囲にも権利が及ぶと共に、本発明は添付の請求項の用語によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンポリマー成分と、シリコーン樹脂成分と、アクリルポリマー成分とを相互に化学的に反応させて、ハイブリッドシリコーンアクリレートポリマーを形成させることによって調製されるハイブリッドポリマーであって、
該アクリルポリマー成分は、共有結合的に自己架橋され、該シリコーンポリマー成分および/または該シリコーン樹脂成分と共有結合的に結合されてなる該ハイブリッドポリマー。
【請求項2】
シリコーンポリマー成分と、シリコーン樹脂成分と、アクリルポリマー成分とを相互に化学的に反応させて、ハイブリッドシリコーンアクリレートポリマーを形成させることによって調製されるハイブリッドポリマーであって、
該シリコーン樹脂成分が、トリオルガノシロキシ単位RSiO1/2(式中、Rは有機基である)と、テトラ官能性シロキシル単位SiO4/2とを、各SiO4/2に対して、RSiO1/2単位を0.1〜0.9のモル比で含むシリコーン樹脂を含有する、該ハイブリッドポリマー。
【請求項3】
シリコーンポリマーが、有機二置換ポリシロキサンを含有する請求項1または2に記載のハイブリッドポリマー。
【請求項4】
シリコーンポリマーが、ジメチル、メチルビニル、メチルフェニル、ジフェニル、メチルエチル、(3,3,3-トリフルオロプロピル)メチルおよびそれらの混合物から成る群から選択されるジオルガノ置換基を含有する請求項3に記載のハイブリッドポリマー。
【請求項5】
シリコーンポリマーが、メチル基のみを有するジオルガノ置換基を含有する請求項4に記載のハイブリッドポリマー。
【請求項6】
シリコーンポリマーが、ヒドロキシル基、アルコキシ基、水素化物基、ビニル基またはそれらの混合物から成る群から選択される官能基で末端キャップされる請求項3に記載のハイブリッドポリマー。
【請求項7】
シリコーンポリマーが、ヒドロキシル官能基で末端キャップされる請求項6に記載のハイブリッドポリマー。
【請求項8】
シリコーンポリマーが、50,000g/モル〜1,000,000g/モルの分子量を有する請求項3に記載のハイブリッドポリマー。
【請求項9】
シリコーンポリマーが、100,000g/モル〜300,000g/モルの分子量を有する請求項8に記載のハイブリッドポリマー。
【請求項10】
シリコーン樹脂成分が、トリオルガノシロキシ単位RSiO1/2(式中、Rは有機基である)と、テトラ官能性シロキシル単位SiO4/2とを、各SiO4/2に対して、RSiO1/2単位を0.6〜0.9のモル比で含むシリコーン樹脂を含有する、請求項1または2に記載のハイブリッドポリマー。
【請求項11】
Rがビニル、メチル、ヒドロキシルおよびそれらの混合物から成る群から選択される請求項2または10に記載のハイブリッドポリマー。
【請求項12】
シリコーン樹脂が、0.05〜10重量%のケイ素結合ヒドロキシル基を含有する請求項1から11のいずれかに記載のハイブリッドポリマー。
【請求項13】
アクリルポリマーが、少なくとも1つのアルコキシシリル官能性モノマーおよび/またはハロシラン官能性モノマーを含有する請求項1から11のいずれかに記載のハイブリッドポリマー。
【請求項14】
アクリルポリマーが、0.2〜20重量%のアルコキシシリル官能性モノマーおよび/またはハロシラン官能性モノマーを含有する請求項13に記載のハイブリッドポリマー。
【請求項15】
アクリルポリマーが、トリアルコキシルシリル(メタ)アクリレート、ジアルコキシアルキルシリル(メタ)アクリレートおよびそれらの混合物から成る群から選択されるアルコキシシリル官能性モノマーから調製される請求項13に記載のハイブリッドポリマー。
【請求項16】
アクリルポリマーが、ポリシロキサン含有モノマーを含有する混合物から調製される請求項1から11のいずれかに記載のハイブリッドポリマー。
【請求項17】
アクリルポリマーが、1.5〜50重量%のポリシロキサン含有モノマーを含有する請求項16に記載のハイブリッドポリマー。
【請求項18】
アクリルポリマーが、ポリジメチルシロキサンモノ(メタ)アクリレートを含有する混合物から調製される請求項16に記載のハイブリッドポリマー。
【請求項19】
アクリルポリマーが、末端キャップアルコキシシリル官能基を含有する請求項13に記載のハイブリッドポリマー。
【請求項20】
末端キャップアルコキシシリル官能基が、トリメトキシルシリル基、ジメトキシメチルシリル基、トリエトキシルシリル基、ジエトキシメチルシリル基およびそれらの混合物から成る群から選択される請求項19に記載のハイブリッドポリマー。
【請求項21】
アクリルポリマーがアクリルとポリシロキサンのブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーを含有する請求項1に記載のハイブリッドポリマー。
【請求項22】
ブロックまたはグラフトコポリマーが、ブロックポリマーの重量に基づき5〜50重量%のポリシロキサンを含有する請求項21に記載のハイブリッドポリマー。
【請求項23】
アクリルポリマーが、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t-オクチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシルプロピルメタアクリレートおよびそれらの混合物から成る群から選択されるモノマーから調製される請求項1または2に記載のハイブリッドポリマー。
【請求項24】
シリコーンポリマー成分と、シリコーン樹脂成分と、アクリルポリマー成分との反応後に残存するケイ素結合ヒドロキシル基が末端キャップされている請求項1または2に記載のハイブリッドポリマー。
【請求項25】
請求項1から24のいずれかに記載のハイブリッドポリマーを含有する感圧接着剤。
【請求項26】
請求項1から24のいずれかに記載のハイブリッドポリマーを含有する感圧接着剤組成物の溶液。
【請求項27】
溶媒が、キシレン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ヘプタンおよびハロゲン含有炭化水素から成る群から選択される請求項26に記載の溶液。
【請求項28】
可塑剤、粘着付与剤、透過促進剤、治療薬および/またはそれらの組合せを更に含有する請求項26に記載の溶液。
【請求項29】
請求項26から28のいずれかに記載の溶液を用いて調製する物品。
【請求項30】
接着により皮膚へ接着させる請求項29に記載の物品。
【請求項31】
物品がテープ、プラスター、包帯、または経皮ドラッグデリバリーデバイスである請求項30に記載の物品。
【請求項32】
物品が経皮ドラッグデリバリーデバイスである請求項31に記載の物品。
【請求項33】
a)シリコーンポリマー成分と、シリコーン樹脂成分とを反応させて反応生成物を生成させること、
b)a)で得られた該反応生成物と、反応性官能基を含有するアクリルポリマーとを反応させること、を含み、該成分を有機溶媒中で反応させることを特徴とする、請求項1または2に記載のシリコーンアクリルハイブリッドポリマーの調製方法。
【請求項34】
a)シリコーン樹脂成分と、反応性官能基を含有するアクリルポリマーとを反応させて反応生成物を生成させること、
b)a)で得られた該反応生成物と、シリコーンポリマー成分とを反応させること、を含み、該成分を有機溶媒中で反応させることを特徴とする、請求項1または2に記載のシリコーンアクリルハイブリッドポリマーの調製方法。
【請求項35】
a)シリコーンポリマー成分と、反応性官能基を含有するアクリルポリマーとを反応させて反応生成物を生成させること、
b)a)で得られた該反応生成物と、シリコーン樹脂成分とを反応させることを含み、該成分を有機溶媒中で反応させることを特徴とする、請求項1または2に記載のシリコーンアクリルハイブリッドポリマーの調製方法。
【請求項36】
工程a)および/または工程b)において触媒を更に含有する請求項33から35に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−524835(P2012−524835A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507419(P2012−507419)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/032206
【国際公開番号】WO2010/124187
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【Fターム(参考)】